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2013 年度理論言語学講座<br />

講師および講義内容<br />

※ 各講義題目名の右下の、< >で括った表示は、その講義題目がどの講義カテゴリーに属するかを示すも<br />

のです。講義カテゴリーは、受講生が本理論言語学講座の卒業要件を満たすかどうかを判定する際に用い<br />

られます。卒業要件の詳細に関しては事務局にお問い合わせください。<br />

① 生成文法Ⅱ(特論)「ミニマリスト・プログラム――入門と展開・応用」 【通年】<br />

<br />

(月1限・18:00~19:30)<br />

池内 正幸(津田塾大学教授)<br />

本コースでは、前期は、ミニマリスト・プログラム(minimalist program、MP)に拠る生成文法理論の基礎と<br />

技術的詳細を学び、後期は、その経験的展開及び応用について考察します。<br />

前期は、まず、いわゆる GB 理論からの進展・展開を概観し、MP(理論)の基本的な考え方・概念・思考法・<br />

方法論——MP とは何か、その背景にある考え方、GB 理論とは概念的にどう違うのか、強い極小主義の命題(strong<br />

minimalist thesis)、第三要因原理としての演算上の効率性の原理など——について学びます。そして、それらに<br />

基づく基本的な操作・仕組み等——併合、一致、継承、移転、周縁素性など——に拠る技術的な詳細、具体的な分析<br />

を、Chomsky (2008) “On Phases” 及び最新の Chomsky (2012) “Problems of Projection” を中心に解説し<br />

ます。そして、できうる限り実際にそれらの操作・仕組みが使えるようになることを目指します。<br />

後期は、まず、いくつかのトピックを取り上げ、最近の議論を概観・検討します。例えば、labeling、C-T 継<br />

承、ECP、島の制約などを取り上げる予定です。その後、MP 理論の発展的応用の視点から、進化(生物)言語学<br />

の概略及び selected topics——回帰とその前駆体、言語早期発現説など——について解説・考察します。生物言語<br />

学とは何か、言語学はどうなると進化言語学になるのかから始め、最近の成果・動向について概説・考察します。<br />

授業は講義形式で行います。頻繁な板書と共に、噛み砕いた丁寧な説明・議論を心がけたいと思います。受講<br />

者のみなさんからのさまざまな質問、提案、そして、議論・反論を歓迎します。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

生成文法入門程度は終えていることを期待します。ただし、未修の方でも面接ガイダンスのうえ受講を許可す<br />

る場合があります。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

テキストは、特に指定しません。適宜プリントを配布します。基本的文献は第1回目の授業で提示します。そ<br />

の他の関連参考文献については進度に合わせて授業中に随時言及・紹介します。<br />

池内 正幸(いけうち・まさゆき)<br />

津田塾大学学芸学部英文学科教授 博士(文学)<br />

生成文法理論(言語理論、統語論)、進化(生成生物)言語学<br />

1976 東京教育大学大学院博士課程単位取得後退学<br />

1989-91 マサチューセッツ工科大学(MIT)言語・哲学科 Fulbright Visiting Scholar 2007-08 エジンバラ


大学言語進化・計算研究ユニット Visiting Scholar<br />

最近の編著書: Predication and Modification—A Minimalist Approach (Liber Press, 2003 年)、『明日に架<br />

ける生成文法』(共著、開拓社、2005 年)、『言語と進化・変化』(編著、朝倉書店、2009 年)、『ひとのことば<br />

の起源と進化』(開拓社、2010 年)、『生成言語研究の現在 』(共編著、2013 年、ひつじ書房)など。<br />

いま<br />

② 認知言語学Ⅰ -語彙と文法:認知文法の視点- 【後期】<br />

<br />

(月1限・18:00~19:30)<br />

西村 義樹(東京大学教授)<br />

言語の使用を可能にする頭の中にあると想定される何かを言語の知識(大部分は暗黙知)と呼ぶことにすると、<br />

言語の知識は語彙(辞書)と文法という2つの相補的な部門から構成されると考えるのが言語学の常識であった。<br />

語彙の単位は語、イディオム、決まり文句などの丸ごと記憶されている形式(言語音、綴り、手指動作など)と<br />

意味の組み合せ—慣習的な言語記号(語彙項目、lexical items)—であり、複数の語彙項目を組み合せて複合的<br />

な表現(典型的には新規の文)を産出または理解する仕組みが文法であるとすると、語彙と文法を截然と分かれ<br />

た2つの領域と考えるのはごく自然なことのように思われるかもしれない。<br />

しかし、この常識的な見方に反して、R. W. Langacker の認知文法では、草創期以来、語彙(的な知識)と文<br />

法(的な知識)は連続体を構成すると主張してきた。この主張は認知文法に特徴的な他のいくつかの考え方(文<br />

法は記号体系の一環である、言語表現の意味にはその表現の指示対象ないし描写対象に対する特定の捉え方が慣<br />

習的に組み込まれている、意味構造は個別言語に固有である、言語の知識は現実の言語使用を基盤として成立す<br />

る)と密接に関連している。<br />

この講義では、認知文法を初めて学ぶ方々のための導入を行った後、語彙と文法の連続性というこの理論の重<br />

要な主張の内実とその妥当性を多角的に検討してみたい。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

特にありません。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

講義で使う資料のコピーはこちらで準備する。参考文献は講義の中で適宜紹介する。<br />

西村 義樹(にしむら・よしき)<br />

東京大学文学部 言語学研究室 教授<br />

認知言語学、意味論、日英語対照研究<br />

1989年東京大学大学院人文科学研究科博士課程(英語英米文学専攻)中退。『構文と事象構造』(共著、研<br />

究社、1998年)、『認知言語学Ⅰ:事象構造』(編著、東京大学出版会、2002年)など。


③ 日本語文法史 -動詞ラレル形をめぐって― 【前期】<br />

<br />

(月2限・19:40~21:10)<br />

川村 大(東京外国語大学准教授)<br />

日本語における文法事実の歴史的変遷と、その(理論的)解釈について講義する。事実の紹介もさることなが<br />

ら、「文法の歴史を考えることの面白さはどこにあるのか」、あるいは「文法の歴史をどのように考えることが面<br />

白いのか」ということについて、できるだけ考えてみたい。<br />

今年度は、「動詞+レル・ラレル、ル・ラル等」の形(以下、「動詞ラレル形」)とその周辺諸形式(見える、聞<br />

こえる、など)についてやや深く掘り下げて考える。周知のようにこれらの形式は上代以来「受身・自発・可能」<br />

などの意味を表す多義形式であるが、それだけでなく、表す意味ごとに格表示の様式が多様である。この、意味<br />

と格表示の両面にわたる複雑さをどう理解したらよいか。これは重要な問題だが、案外あまり考えられていない。<br />

例えば、いわゆる「受身文」をめぐっては既に膨大な議論が存在するが、近時の議論には動詞ラレル形が多義の<br />

形式だという観点が欠けており、そのことによっていくつかの問題が生じているように思われる。動詞ラレル形<br />

等を多義の形式として捉えるという観点から改めて見直すことによって、いわゆる「受身文」の見なおし等、幾<br />

つかの指摘を行ないたい。日本語を専攻する人だけでなく、他動性、ヴォイスといったことに関心のある他言語<br />

専攻の人にとっても興味が持てる内容になろう。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

日本語学および言語学の入門程度の知識が必要である。古文の知識はそう高度なものを求めない(高校で教わ<br />

った古文の文法の半分程度)。事前に勉強したい人は、日本語史の概説書の「文法史」の章などを読むとよい。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

教科書は使用せず、ハンドアウトを配布する。参考書として、とりあえず下記のものをあげるが、その他にも<br />

随時指定する。<br />

主な参考文献:川村大『ラル形述語文の研究』(くろしお出版、2012)<br />

川村 大(かわむら・ふとし)<br />

東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授<br />

1990 年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学文学部助手、武蔵大学人文学部専任講師、同助<br />

教授、東京外国語大学外国語学部専任講師、同助教授を経て現職。博士(文学)。


④ 言語哲学 -言語学の前提を問いなおす― 【後期】<br />

<br />

(月2限・19:40~21:10)<br />

酒井 智宏(跡見学園女子大学助教)<br />

理論言語学講座とは言語学を学ぶところです。そして、言語学とは言語を研究する学問です。しかし、言語な<br />

んて本当に存在するのでしょうか。たとえば、「猫」「言語」「絆」といった語 (記号) が存在することは、まち<br />

がいないでしょう。毎日のようにこれらの語を見聞きしていることが、これらの語 (記号) が存在することの証<br />

拠です。しかし、これらの語を包括する「日本語」なる言語は、いつ誰が見聞きしたというのでしょうか。われ<br />

われが出会うのは個々の表現であって、「日本語」全体ではありません。「日本語の知識は脳の中に存在する抽象<br />

的対象であり、直接見聞きすることはできない。」本当でしょうか。あなたのまわりには、日本語の通じない困<br />

った人がいませんか。その人とあなたは、「同じ言語」を話しているのか、それとも「異なる言語」を話してい<br />

るのか。「異なる言語」を話しているとすると、その人はいったい何語を話しているのか。いや、あなたこそ、<br />

本当に日本語を話しているのか。いつか脳を解剖すればそれが分かる日が来るのでしょうか。<br />

言語学は、たとえば「日本語」という体系が存在し、日本語話者たちがその体系を共有しているという事実を出<br />

発点とします。これに対して、言語哲学はときに「言語なんて本当に存在するのだろうか」と疑います。言語学<br />

者は、「言語」がなければ、失職します。言語哲学者は、「言語」がなくても、失職しません。<br />

この講義では、他の講義とはちょっと趣向を変えて、言語と称されるものを哲学的なまなざしで眺めてみます。<br />

昨年度から継続して受講する方にとっても、本年度から新たに受講する方にとっても、等しく有意義な講義とな<br />

るように努めます。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

言語学や哲学に関する予備知識は必要としません。特に、たとえば「道徳は大切だ」と言われて、つい「どう<br />

して『道徳は大切だ』と考えられるようになったのだろう」と考えてしまうタイプの方の受講を歓迎いたします。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

特にありません。<br />

酒井 智宏 (さかい・ともひろ)<br />

跡見学園女子大学文学部助教<br />

言語哲学、意味論、語用論、フランス語学<br />

2003 年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士 (学術)<br />

2004 年パリ第 8 大学大学院言語学専攻博士課程修了、Docteur en Sciences du Langage<br />

主要著作: 『トートロジーの意味を構築する―「意味」のない日常言語の意味論―』(単著、くろしお出版、<br />

2012)、『 フランス語学小事典』(共著、駿河台出版社、2011)


⑤ 認知言語学Ⅱ:・・ 【通年】<br />

<br />

(火1限・18:00~19:30)<br />

池上 嘉彦(昭和女子大学教授/東京大学名誉教授)<br />

昭和女子大学 2013.3.31 まで<br />

話者は発話に先立ち自らの言語化しようとする事態について、何を言語化し、何を言語化しないか[WHAT]、言<br />

語化する部分については、それをどのように言語化するか[HOW]、といった認知的な(認知言語学で(construal)と呼ばれる)処理を加える。一般に、どの言語の話者でも、同一の事態をいくつかの違ったやり<br />

方で把握(そして言語化)する能力を有しているというな側面がある一方、いくつかの可能な把握(そ<br />

してそれに基づいての言語化)の仕方のうち、どれを特に選ぶかについては、異なる言語の話者の間で好みが違<br />

いうる(例えば、道を尋ねるとき、日本語話者なら「ココハドコデスカ」、英語話者なら「私ハドコニイマスカ」、<br />

(Where am I?)という言い方をする)というな側面のあることも知られている。<br />

講義では、後者の相対的な側面に特に注目し、一般に日本語話者は的(つまり、、)なスタンスで、他方、英語(そして欧米系の言語)話者は的(つまり、ないし<br />

的)なスタンスでの事態把握をそれぞれ好む傾向とその拡がりを確認したい。は、言語間で<br />

の話者の好む認知スタンスの差が顕在化する場である。翻訳の実践例、特に、同一作品の異なる訳者(母語話者<br />

と非母語話者、初訳者と後の時代の現代語訳者、といった場合も含む)による複数の翻訳を比較、検討し、同じ<br />

事態でありながら、どの程度の変動幅の中での異なる事態把握(そして、それに基づく異なる言語化)が可能な<br />

のか、既成のコードに一応従いつつも、同時にそれを超え、それを組み替えていく人間のを言語使用<br />

の場において確認してみたい。詩的テクストは言語の意味作用の極限が問われる場であるが、一つの事例として<br />

の翻訳についてかなりな時間を充てることになろう。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

講義の内容は、、、といったいくつかの分野に関わるが、具体例を通<br />

して、これらの分野への導入にもなるよう配慮する。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

背景となる理論的著述からの引用や検討する具体例はプリントとして編集、配布する。言語研究の前提となる<br />

言語テクストの細かい読みの勉強にも役立つはず。<br />

池上 嘉彦(いけがみ・よしひこ)<br />

京都市の生まれ。東京大学で英語英文学(B.A., M.A.)、Yale 大学大学院で言語学(M.Phil., Ph.D.)専攻。<br />

現在、東京大学名誉教授、日本認知言語学会名誉会長。この間、Indiana University, Universität München,<br />

Freie Universität Berlin, Universität Tübingen などで客員教授、Humboldt Stiftung, British Council,<br />

Fulbright Foundation, Longman Group Ltd.の客員研究員として独英米の大学に滞在。著作などについては、<br />

昭和女子大学のサイト(3月まで)、『ウィキペディア』(不正確な記述も含む)、などを参照。


⑥ 文法の根拠 【通年】<br />

<br />

(火2限・19:40~21:10)<br />

尾上 圭介(東京大学名誉教授)<br />

「ネズミ!」という文と「ネズミがいる!」「ネズミだ!」という文とは、ほとんど同じ意味を表す(場合があ<br />

る)。なぜだろうか。ほとんど同じ意味が名詞一語文でも述語を持つ文でも表現できるということの奥にどうい<br />

う原理があるのか。そもそも、文に、述語を持つ文(述定文)と持たない文(非述定文)とがあるのはなぜか。<br />

両者がともに文であると了解されるのは、なぜか。<br />

どの言語でも、文の中で、述語を持つ文が圧倒的に多いのはなぜか。述語を持つ文は原理的に(あるいは意味<br />

として)すべて主語を持つ。なぜそうであるのか。述語には、どの言語でも、過去・完了・現在などの時間性を<br />

表す文法形式(動詞の語尾変化や助動詞的な形式)と、推量・意志・論理的可能性・妥当性などを表す文法形式<br />

とがある。それはどうしてか。そもそも、どの言語でも、必ず語類として名詞と動詞があり、名詞が主語になり、<br />

動詞が述語になる。なぜそうであるのか。(各言語を作った諸国の神様が申し合わせたわけでもないのに。)<br />

文を、表現の種類という観点で見れば、無限に多様でかつ連続的である。それとは別に、文の種類(平叙文、<br />

命令文というような)という観点で見れば、どのような種類がどのような原理で立てられるものであろうか。解<br />

答要求をしない疑問文もあり、行動を命令・要求するような平叙文(「さっさと座る!」「下郎め、下がりおろう!」<br />

など)もある。あることばの列が文としての意味を担う、担い方の異質性として、文の種類というものが考えら<br />

れるであろう。<br />

分かりきったことのように見える事実を、人間の世界認識のあり方を基盤として、「なぜ」と論理的に問い詰<br />

めていく。そこにこそ、文法論の面白さが、というより学問的営為の真髄が見出されるに違いない。直感の効く<br />

日本語を材料とし、自分自身を対象として、学問を始めてみませんか。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

ことばというものが好きで、緻密に丁寧に考えていく気力さえあれば、予備知識は何も要らない。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

参考文献は講義の中でそのつど紹介し、必要に応じてコピーを配布する。<br />

尾上 圭介(おのえ・けいすけ)<br />

東京大学名誉教授。博士(文学)。専攻は日本語学(文法論・文法史・意味論)。日本笑い学会理事。東京大学<br />

大学院人文科学研究科国語国文学専門課程修士課程修了。<br />

著書に、『文法と意味Ⅰ』(くろしお出版、2001 年)、『大阪ことば学』(創元社・1999 年、講談社文庫・2004<br />

年、岩波現代文庫・2010 年)、『朝倉日本語講座第 6 巻・文法Ⅱ』(編著、朝倉書店、2004 年)。


⑦ 音声学 【通年】<br />

<br />

(水1限・18:00~19:30)<br />

上野 善道(東京大学名誉教授)<br />

音声を正しく聞き取って書き取り、かつそれを発音できるようでなければ、未知の言語・方言の研究は一歩も<br />

進まないと言っても過言ではありません。それだけではなく、英語や日本語などのよく知られている言語でも、<br />

音声学を身につけていないと事実をきちんと観察できないものです。また、歴史・比較研究にも音声学の知識が<br />

不可欠です。現在,日本語のサ行子音は[s]ではなくなってきており,また濁音では声帯の振動開始時間が遅れ<br />

てきていますが,音声学的素養がないとこれらの変化に気付かないものです。<br />

この講義では、音声の理論的な理解はもとより、実践的な習得をも狙いとし、具体的な目標を「国際音声字母」<br />

が使いこなせるようになることに置きます。つまり、「実践音声学」の訓練を行なうので、聞き取りテストと発<br />

音練習はほぼ毎時間当てられるものと思ってください。本を読んで頭で理解するだけでは音声学は身に付かない<br />

からです。<br />

しかし,難しく考える必要はありません。人間は,何語でも話せるようになる能力をもって生まれてきます。音<br />

声に関しても同じで,誰でも,世界中の言語の音声をマスターできるはずなのです。これには能力差はありませ<br />

ん。柔軟な頭と努力あるのみです。母語の枠に固執しない柔軟な対応と日々の練習が必要です。要は,毎日楽し<br />

く実践することです。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

予備知識は必要ありません。ゼロからでも分かるように説明をするつもりです。あとは,日々の努力さえあれ<br />

ば十分です。ただし,恥をかきたくないので人前で発音をするのは嫌だ,と思う人には向いていません。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

風間喜代三・上野善道・松村一登・町田健(2012)『言語学』第2版第7刷(東京大学出版会)と服部四郎(1984)<br />

『音声学』(岩波書店)を併用します。前者は各自用意してください(最新の第2版第7刷が望ましいが、第2<br />

版第5刷以降でも対応可能)。後者は絶版になっているので、対策は別に考えます。<br />

上野 善道(うわの・ぜんどう)<br />

東京大学名誉教授・国立国語研究所客員教授/日本音声学会前会長,日本言語学会元会長。<br />

専門は音声学・音韻論・方言学。特に日本語諸方言のアクセント研究。<br />

"Three types of accent kernels in Japanese" Lingua 122: 1415-1440,「琉球喜界島方言のアクセント――<br />

中南部諸方言の名詞――」『言語研究』142(1): 45-75,「N型アクセントとは何か」『音声研究』16(1): 44-62<br />

(以上 2012) ,『日本語研究の 12 章』(監修,明治書院,2010),『朝倉日本語講座3 音声・音韻』(編著,朝倉<br />

書店,2003)等。


⑧ 認知意味論・語用論 【前期】<br />

<br />

(水1限・18:00~19:30)<br />

大堀 壽夫(東京大学教授)<br />

認知言語学の中でも、特に意味にかかわる部分に重点をおいて講義を行います。導入に続き、前半では基本的<br />

事項(フレーム、カテゴリー、プロトタイプ、メタファー、メトニミー、多義性と意味拡張、自然言語の推論、<br />

等)の解説と検討を行います。後半は「パラダイムの再構築」というテーマで、Taylor の新著をとりあげて、<br />

何章かを読みつつ、認知言語学の目標と方法論の再検討をします。コーパスの利用が言語研究を大きく変えつつ<br />

あることは確かですが、それが認知言語学をどのように組み替えていくかについて考える機会をもてればと思い<br />

ます。<br />

できるだけ実際のデータに即して、演習的なやり方を取り入れつつ、ことばがコミュニケーションの場でもつ<br />

様々な効果についての理解が深まるようにしたいと思います。応用的・発展的な研究について一緒に考えること<br />

で、今後の研究に生かすことができればと考えています。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

講義の前半は入門的なものとするので、特に予備知識は必要としません。わからないことがあったら、いつで<br />

も質問することをすすめます。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

J. Taylor (2012) The Mental Corpus: How Language is Represented in the Mind. Oxford University Press<br />

を取り上げます。加えて、授業のレベルに合った読める入門書としては、松本曜(編)『認知意味論』(大修館書<br />

店)、J.テイラー『認知言語学のための 14 章』(紀伊国屋書店)、F. ウンゲラー&H-J.シュミット『認知言語学<br />

入門』(大修館書店)、大堀壽夫『認知言語学』(東京大学出版会)があります。その他の関連文献は、授業で随<br />

時紹介します。<br />

大堀 壽夫(おおほり・としお)<br />

東京大学大学院総合文化研究科教授 言語学(意味論・機能的類型論)<br />

1992 年カリフォルニア大学バークレー校大学院言語学科修了、Ph.D. 『認知言語学』(東京大学出版会、2002<br />

年)、『認知コミュニケーション論』(編著、大修館書店、 2004 年)、M.トマセロ『心とことばの起源をさぐる』<br />

(共訳、勁草書房、2006 年)など。 理論言語学をやっていますが、流転してゆくことばの生きた姿にも興味を<br />

ひかれます。「認知」、「文化」、「談話」をキーワードに、皆さんとことばについて考えていきたいと思います。


⑨ 言語学入門 【通年】<br />

<br />

(水2限・19:40~21:10)<br />

大津 由紀雄(慶應義塾大学言語文化研究所教授)<br />

「言語学」と聞いて、どんな学問を連想しますか。「「言語」学」というのですから、「言語」を対象にした学<br />

問であろうことは容易に推測できますが、それ以上、立ち入った話になると、案内書なり、案内人が必要になる<br />

でしょう。<br />

この講義では、わたくしが案内人になって、現代言語学の姿をできるだけ正確に、できるだけわかりやすくお<br />

話します。言語学についての知識は不要です。必要なのは、旺盛な好奇心と探究心です。<br />

想定している受講者は、学部生、大学院生、小中高の先生、一般社会人、そして、(夜は遅いのですが)高校<br />

生です。<br />

取り上げる予定のトピックはつぎのとおりです。「言語」とは。なぜ言語を研究するのか。研究の方法。動物<br />

の「言語」とヒトの言語。言語音の世界。語の世界。文の世界。語用の世界。形と意味。言語の獲得。言語理解。<br />

発話。言語の変化。言語と社会。言語の脳科学。言語の起源と進化。言語と教育。など。<br />

基本的には講義形式をとりますが、可能な限り、受講者とのやりとりを大事にしたいと思います。<br />

なお、生成文法入門や認知言語学関連課目と併せて受講するのも効果的だと思います。<br />

ことばは人間だけに許された宝物です。その正体を探ることによって、その価値をきちんと認識し、効果的に<br />

活用することができるようになります。この機会にぜひ言語学への入門を果たしてください。<br />

この課目の受講に関する問い合わせは、oyukio@sfc.keio.ac.jp 宛にお送りください。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

ありません。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

教科書は使いません。必要に応じて、教材をコピー、ないしは、電子メールへの添付書類の形で配布します。<br />

大津 由紀雄(おおつ・ゆきお)<br />

慶應義塾大学言語文化研究所教授(2013 年 3 月時点)<br />

言語の認知科学(生成文法・言語獲得・統語解析)。1981 年マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院博士課程言<br />

語学・哲学研究科修了、Ph.D.『言語の獲得と喪失』(共著、岩波書店、2005 年)、『ことばに魅せられて 対話<br />

篇』(ひつじ書房、2008 年)、『はじめて学ぶ言語学---ことばの世界を探る 17 章』(編著、ミネルヴァ書房、2009<br />

年)など。


⑩ 日英語の意味的・機能的な構文分析【前期】<br />

<br />

(木1限・18:00~19:30)<br />

高見 健一(学習院大学教授)<br />

私達は英語を勉強する際に、日本語と比べて様々な「不思議」に出会います。例えば日本語では、「昨日は楽<br />

しい時間を過ごすことができた」とも、「… 過ごすことができなかった」とも言えますが、「できた/できなか<br />

った」に対応する could/couldn’t を用いると、(1a) は不適格で、(1b) のようにしか言えません。<br />

(1) a. *I could have a good time yesterday.<br />

b. I couldn’t have a good time yesterday.<br />

なぜ (1a) は不適格なのでしょうか。<br />

英語には、日本語にないような表現もあります。例えば次の there 構文や way 構文など、面白い表現ですね。<br />

(3) a. In the ballroom there danced a dozen Scottish girls.<br />

b. The Beatles sang their way around the world.<br />

しかし、同じような表現でも次の文は不適格です。<br />

(4) a. *There danced a dozen Scottish girls in the ballroom.<br />

b. *Lisa sang her way through some complex Schubert songs.<br />

このような構文はどのような場合に適格となるのでしょうか。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

言語学の理論的な背景は、必要な場合に説明を行ないますので、予備知識は必要ありません。英語や日本語の<br />

「不思議」の背後にある規則を探り当てようと思われる学部学生や院生のみなさん、中高大の英語の先生方、社<br />

会人のみなさんなど、幅広い層の方々に受講していただければと思います。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

この授業では、日英語の表現を比較したり、構文を取り上げて、上のような「不思議」を意味的・機能的な観<br />

点から明らかにします。授業は、ハンドアウトを用意し、それに沿って進めますが、関連する参考文献は授業中<br />

に紹介したり、配布します。<br />

高見 健一(たかみ・けんいち)<br />

学習院大学文学部教授<br />

機能的統語論、日英語対照研究<br />

大阪教育大学大学院修士課程修了。文学博士(東京都立大学)。1988-1989 年、1991-1992 年、ハーバード大<br />

学言語学科客員研究員。2003-2004 年、ハーバード大学イエンチェン研究所共同研究員。Preposition Stranding<br />

(Mouton de Gruyter, 1992), 『日英語の自動詞構文』(共著、研究社、2002)、Functional Constraints in Grammar<br />

(共著、John Benjamins, 2004)、『日本語機能的構文研究』(共著、大修館書店、2006)、『受身と使役』(開拓<br />

社、2011)など。


⑪ 日本語音韻論 【後期】<br />

<br />

(木1限・18:00~19:30)<br />

窪薗 晴夫(国立国語研究所教授)<br />

今年度の講義では、日本語のさまざまな語形成過程とアクセント構造との関係を中心に、語形成と音韻構造の<br />

関係を考察する。特に分析したいのが、複合語、混成語、外来語短縮、複合語短縮、アルファベット頭文字語、<br />

愛称語形成などの語形成過程とアクセントの関係であり、(i)語形成過程の出力のアクセント構造がどのような<br />

原理によって決定されるか、(ii)アクセントの構造が語形成の形態的パターンに影響を及ぼすことがあるか、と<br />

いう2点である。できるだけ日本語以外の言語にも目配りして、日本語の研究が一般言語学にどのように貢献で<br />

きるかということも考察したい。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

言語学の基礎知識があれば、音韻論の専門的知識は必ずしも必須ではない。日本語の分析は他の言語の分析に<br />

も重要な視点・テーマを提供してくれるため、日本語以外の言語を専門とする人の受講も歓迎する。<br />

【テキスト】<br />

関連する論文を読む。教材は受講申込者に事前に PDF で配布する予定である。<br />

1. Kubozono, H. 2008. Japanese Accent. The Oxford Handb ok of Japanese Linguistics. pp.165-191. Oxford:<br />

Oxford University Press.<br />

2. Kubozono, H. 2010. Accentuation of alphabetic acronyms in varieties of Japanese. Lingua. 120 (2010)<br />

2323–2335.<br />

3. Kubozono, H. 2010. 「語形成と音韻構造――短縮語形成のメカニズム――」『国語研プロジェクトレビュー』<br />

vol. 1, No. 3. 17-34.<br />

【参考文献】<br />

窪薗晴夫著『語形成と音韻構造』(くろしお出版, 1995)。<br />

最新の文献については講義の中で適宜、追加紹介する。<br />

窪薗 晴夫(くぼぞの・はるお)<br />

国立国語研究所 理論・構造研究系教授<br />

音韻論、音声学<br />

1986 年英国エジンバラ大学大学院(言語学)修了, Ph.D.(1988 年)。The Organization of Japanese Prosody<br />

(くろしお出版, 1993)、『語形成と音韻構造』(くろしお出版, 1995)、『日本語の音声』(岩波書店, 1999)、『ア<br />

クセントの法則』(岩波書店, 2006)、『数字とことばの不思議な話』(岩波書店, 2011)など。


⑫ 言語の脳科学 【前期】<br />

<br />

(木2限・19:40~21:10)<br />

酒井 邦嘉(東京大学教授)<br />

「言語の脳科学」について、予備知識を仮定せずに講義する。言語に規則があるのは、人間が言語を規則的に<br />

作ったためではなく、言語が自然法則に従っているからである。こうしたチョムスキーの言語生得説は激しい賛<br />

否を巻き起こしてきたが、最新の脳科学は、この主張を裏付けようとしている。実験の積み重ねとMRI技術の<br />

向上によって、脳機能の分析は飛躍的な進歩を遂げた。本講義では、失語症や手話の研究も交えて、言語をめぐ<br />

る以下のテーマについて、脳科学の視点から考えることを目標とする。 講義内容は前年度と基本的に同様だが、<br />

題材は適宜、追加・更新するので継続受講が可能である。<br />

1. 脳-心-言語<br />

2. 獲得と学習<br />

3. モジュール仮説<br />

4. 普遍文法と言語獲得装置<br />

5. 言語野と失語<br />

6. 自然言語処理<br />

7. 言語入力の脳メカニズム<br />

8. 文法処理の脳メカニズム<br />

9. 手話への招待<br />

10. 言語獲得の謎<br />

11. 感受性期とは何か<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

特にありません。<br />

【テキスト】<br />

酒井邦嘉『言語の脳科学-脳はどのようにことばを生みだすか』(中公新書 2002)<br />

【参考文献】<br />

D・コグズウェル『チョムスキー』(佐藤雅彦訳,現代書館 2004)<br />

酒井邦嘉『科学者という仕事-独創性はどのように生まれるか』(中公新書 2006)<br />

酒井邦嘉『脳の言語地図』(明治書院 2009)<br />

酒井 邦嘉(さかい・くによし)<br />

東京大学大学院総合文化研究科教授<br />

言語脳科学、脳機能イメージング<br />

1992年 東京大学 大学院理学系研究科 物理学専攻 博士課程修了、理学博士。「 言語の脳科学」(中公新<br />

書) により第 56 回毎日出版文化賞。著書に『科学者という仕事』(中公新書)、『脳の言語地図』『ことばの冒<br />

険』『こころの冒険』(明治書院)、『脳を創る読書』(実業之日本社)などがある。


⑬ 英語史入門 【後期】<br />

<br />

(木2限・19:40~21:10)<br />

児馬 修(立正大学教授)<br />

今年度は、英語史を初めて学ぶ人のための入門講座です。英語やそのほかの外国語を学んでいる人は、英語を<br />

学ぶことの難しさや、あるいは比較的学びやすいところなどにも気づくことがあるかもしれません。このような<br />

英語の特徴の大部分は、この 1500 年ほどの長い年月の間に英語に起こった歴史的な出来事が絡んでいることが<br />

少なくありません(いや、もっと大昔、数千年前の出来事も絡んでいる場合もあります)。歴史的な出来事の中<br />

には、ブリテン島に異民族が侵入するというような「社会的」事件も、また、それに伴って、英語の文字や、語<br />

彙や、発音や、文法などの仕組みがかなり大きく変わるというような「言語的」出来事も含まれます。このよう<br />

な様々な歴史的な背景が、現代の英語の中身に色濃く反映されているため、英語を学んでいる人だけでなく、英<br />

語を教えている人、英語を言語学的に研究している人にとっても、英語の歴史を学ぶことには、とても意義深い<br />

ものがあると考えています。<br />

講義形式で行いますが、初期の英語の細かい事実を体系的にお話しするというよりは、現代英語の事実・事象に<br />

対する深い理解につながるようなことに絞ってお話をしたいと思います。講義中に触れる、初期英語の例文につ<br />

いても、現代英語との関連で触れることが多いので、特に、昔の英語の文献を読んだ経験がなくてもご心配に及<br />

びません。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

取り上げるトピックは文字、発音、意味、語彙、形態論、統語法など、多岐にわたりますが、受講にあたって<br />

は、それぞれの分野の専門的な知識は特に必要としません。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

教科書は特に使用しませんが、毎回、プリントを配布すると同時に参考書等を紹介します。<br />

児馬 修(こま・おさむ)<br />

1976 年東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。金沢大学教養部、東京学芸大学教育学部、慶應義塾大学<br />

医学部を経て現職。専門は英語史・英語学で、主として、英語の文法変化に関心があり、不定詞、動名詞、助<br />

動詞などの研究を手掛けてきた。英語の資料に関しては、中英語から初期近代英語への移行期である 15-16 世<br />

紀頃に興味深い統語論的事象が比較的多く観察されると考えている。2012 年度の本講座では「英語の文法変化」<br />

という題目で、屈折語尾の衰退と、それに伴う統語法の変化について考察した。主な著書として『ファンダメ<br />

ンタル英語史』(ひつじ書房、1996 年)、『歴史的にさぐる現代の英文法』(共著、大修館書店、1990 年)など<br />

がある。


⑭ 生成文法Ⅰ(入門) 【通年】<br />

<br />

(金1限・18:00~19:30)<br />

今西 典子(東京大学教授)<br />

「生成文法」では, たとえば日本語を母語とする人の脳内には日本語の知識(日本語文法)が蓄えられており、<br />

無意識にそれを使ってさまざまな言語活動を行っていると考えます。人間の言語についてこのように考えると、<br />

「人間の言語知識はどのような性質を持ったものであるのか、 また、 他の知識とどのように違っているの<br />

か」、「言語知識は生後脳内にどのように生じて蓄えられていくのか」,「言語知識は理解や発話の過程でどのよ<br />

うに使用されるのか」、「言語知識は脳のどの部分にどのように蓄えられていているのか」、「人間という種に固有<br />

な言語機能はどのようにして人間に生じたのか」というさまざまな問いが生じます。生成文法は、これらの問い<br />

に対して統合的な答えを与えることをめざしており、普遍文法(UG)と言語経験の相互作用の帰結として、個別<br />

言語の文法にみられる共通性と多様性を説明しようと試みています。<br />

このコースでは、主に英語と日本語について、語構造、節構造、受動態、wh 疑問、倒置、外置、照応、削除、<br />

数量詞や否定辞の作用域などの具体的な言語事象をとりあげ、生成文法に基づく記述や説明を概観し,生成文法<br />

の基本的な考え方を学びます。まず、規則の形式や適用方式、派生や表示に課される一般制約など生成文法の基<br />

本概念を学びます。次に、UG と言語間変異・言語獲得という問題に焦点をあて, UG への原理とパラメータのア<br />

プローチについて学びます。X-bar 理論、θ 理論、格理論、束縛理論、有界理論などの諸原理がパラメータとど<br />

のように働き合って言語間変異が記述・説明されうるかを概観します。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

受講には、生成文法理論に関する予備知識は必要としませんが。本講座の言語学入門コースとともに受講され<br />

れば、より理解が深められます。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

授業は、講義・セミナー形式で行い、参考資料は適宜配布し、随時参考文献等を紹介します。<br />

今西 典子(いまにし・のりこ)<br />

東京大学大学院人文社会系研究科教授<br />

理論言語学・英語学(生成文法 (統語論・意味論),言語獲得理論)<br />

1977年東京大学大学院人文科学研究科英語英米文学専門課程(博士課程)単位収得退学<br />

『照応と削除』(共著, 大修館書店,1990),『言語研究入門:生成文法理論を学ぶ人のために』(共著,研究社、<br />

2002)『言語の獲得と喪失』(共著,岩波書店,2005)『はじめて学ぶ言語学』(共著、ミネルヴァ書房、2009)<br />

など。


⑮ 文法原論 【通年】<br />

<br />

(金2限・19:40~21:10)<br />

梶田 優(上智大学名誉大学)<br />

最近数年間の理論言語学研究の実質的な部分を整理、吸収しつつ、動的文法理論の構築を進める。経験的基盤<br />

の一部として、個別言語研究、言語類型論、通時言語学、発達言語心理学、神経言語学などの成果を援用する。<br />

本年度も引き続き以下の諸点に比較的多くの時間をあてる予定。(1)言語類型論からの豊富な資料を真に活用<br />

するためには、静態的・出力説的な一般文法理論に代えて、動態的・過程説的な一般文法理論が必要になること<br />

を示す。(2)即座の行動を規定するオンラインの情報処理と、長期記憶の形成につながるオフラインの情報処<br />

理が、文法の構造にそれぞれどのように反映しているか、動的な視点から考察する。認知心理学、比較動物学か<br />

らの示唆も参考にする。(3)述語構造、論理構造、情報構造、発話行為の四者が統語形式への写像においてど<br />

のように影響し合い、どのような言語間のヴァリエイションをもたらすか、その動態の解明を進める。(4)「部<br />

分から全体へ」と「全体から部分へ」、「末端から中央へ」と「中央から末端へ」という二系列の、それぞれ両方<br />

向性の情報の流れを、矛盾なく、しかも生成能力の過不足なく統合するには、どのような言語モデルが必要か。<br />

そして静態的・出力説的な一般文法理論の枠内でそのようなモデルを想定することは可能か。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

授業は講義形式。「生成文法入門」程度の予備知識が望ましいが、トピックごとに基礎を簡単に復習してから<br />

話を進めるので、入門未修者も(面接ガイダンスのうえ)受講可。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

参考文献については講義中に紹介する。<br />

梶田 優(かじた まさる)<br />

上智大学名誉教授<br />

英語学、言語学<br />

1967 年プリンストン大学 Ph. D.(言語学)。東京教育大学、東京学芸大学、上智大学で英語学、言語学を担当。<br />

『文法論Ⅱ』(共著, 大修館, 1974)、「生成文法の思考法(1)-(48)」(『英語青年』, 研究社, 1977-1981)な<br />

ど。


⑯ 意味論と語用論 -コミュニケーションと意味- 【通年】<br />

<br />

(金2限・19:40~21:10)<br />

西山 佑司(明海大学教授・慶応義塾大学名誉教授)<br />

私たちは、どうして言葉を用いて他人とコミュニケーションができるのであろうか。「それは、発話で用いら<br />

れている言葉の意味を知っているからだ」は答えとして十分であろうか。一般に、発話で用いられる言語表現の<br />

意味は、話し手が相手に伝えようとするメッセージという観点からすれば不完全で断片的である。それにもかか<br />

わらず、聞き手は話し手の意図したメッセージを容易に把握できるが、それはなぜであろうか。妥当なコミュニ<br />

ケーション理論は、この問いに答えなければならない。<br />

この講義では、現代認知語用理論として注目を浴びている関連性理論 (Relevance Theory) の立場からこの問<br />

題を真剣に考えていく。とくに、(i) コミュニケーションと情報伝達とはどこが異なるのか、(ii) 話し手の言<br />

葉が分かるということは、そこで用いられている言語表現の意味を理解することと同じか、 (iii) 話し手が明<br />

示的に言っている内容と暗黙のうちに示唆している内容との違いは何か、(iv) 発話解釈におけるコンテクスト<br />

とは何か、(v) アイロニー、メタファー、メトニミーに対する解釈はいかにして可能か、(vi) 語用論能力と他<br />

人の心を読む能力(mind reading ability)との関係は何か、といった問題を具体例で検討する。本講義を通して、<br />

意味論 (semantics) と語用論 (pragmatics) はいかに区別されるべきかという問題を正しく理解していただ<br />

く。当方でプリントを用意する。<br />

【この課目で前提とされる知識など】<br />

意味論や語用論、コミュニケーション論についての予備知識は必要としない。言葉の意味や解釈に関心をもち、<br />

知的創造の喜びを体験したいと思う受講生を歓迎する。言語データを広く見ると同時に論理的に考える態度が要<br />

求される。<br />

【テキスト・参考文献】<br />

今井邦彦・西山佑司共著『ことばの意味とはなんだろう —— 意味論と語用論の役割 ——』(岩波書店、2012 年)<br />

西山 佑司(にしやま・ゆうじ)<br />

明海大学外国語学部教授・慶應義塾大学名誉教授<br />

意味理論、語用理論、コミュニケーション理論、言語哲学<br />

1974 年マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院博士課程哲学科修了、Ph.D.<br />

『意味論』(英語学大系 5 巻)(共著、大修館書店、1983 年)、『日本語名詞句の意味論と語用論---指示的名詞<br />

句と非指示的名詞句---』(ひつじ書房、2003 年)、『談話と文脈』(言語の科学7巻)(共著、岩波書店、2004<br />

年)、『ことばワークショップ』(共著、開拓社、2011 年)、『ことばの意味とはなんだろう —— 意味論と語用論<br />

の役割 ——』 (共著、岩波書店、2012 年)など。


東京言語研究所 2013 年度 「理論言語学講座」時間割 <br />

1 限<br />

2 限<br />

1 限<br />

2 限<br />

月 火 水 木 金<br />

生成文法Ⅱ(特論)<br />

池内 正幸<br />

史的言語学<br />

川村 大<br />

認知言語学Ⅱ<br />

池上 嘉彦<br />

文法の根拠<br />

尾上 圭介<br />

音声学<br />

上野 善道 言語学特殊講義<br />

入門認知言語学<br />

大堀 壽夫<br />

言語学入門<br />

大津 由紀雄<br />

高見 健一<br />

言語の脳科学<br />

酒井 邦嘉<br />

東京言語研究所 2013 年度 「理論言語学講座」時間割 <br />

生成文法Ⅰ(入門)<br />

今西 典子<br />

文法原論<br />

梶田 優<br />

意味論と語用論<br />

西山 佑司<br />

月 火 水 木 金<br />

生成文法Ⅱ(特論)<br />

池内 正幸 認知言語学Ⅱ<br />

認知言語学Ⅰ<br />

西村 義樹<br />

言語学特殊講義<br />

酒井 智宏<br />

池上 嘉彦<br />

文法の根拠<br />

尾上 圭介<br />

音声学<br />

上野 善道<br />

言語学入門<br />

大津 由紀雄<br />

日本語音韻論<br />

窪薗 晴夫<br />

史的言語学<br />

児馬 修<br />

生成文法Ⅰ(入門)<br />

今西 典子<br />

文法原論<br />

梶田 優<br />

意味論と語用論<br />

西山 佑司

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