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精神科病院で勤務する看護師の身体合併症看護への ... - 大阪医科大学

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大 阪 医 科 大 学 看 護 研 究 雑 誌 第 3 巻 (2013 年 3 月 )表 5 精 神 科 以 外 の 看 護 経 験 がある 看 護 師 の 身 体 合 併 症 看 護 についての 不 安上 位 カテゴリー カテゴリー患 者 の 精 神 症 状に 関 係 する 要 因知 識 や 技 術 の 自信 のなさに 関 係する 要 因精 神 科 病 院 の 特色 に 関 係 する 要因患 者 の 訴 えがなかったり、あったとしても 妄 想がかっていたり、 上 手 く表 現 できなかったりする必 要 な 援 助 について、なかなか 同 意 が 得 られない医 療 行 為 の 介 助 や 看 護技 術 を 実 践 することについて 不 安 があるコード患 者 が「へび」という 表 現 を 使 って 身 体 的 な 不 調 を 訴 える(ID1)耳 の 上 が 腫 れていた 患 者 さんに「どうしたのか?」と 聞 いても、「へびにかまれた」という 返 答 しかしてくれない(ID2)患 者 が「お 腹 にへびがおる」「 妊 娠 しました」とか 言 って、よくよく 調 べたらイレウスだったということがあった(ID2)「つねられている」など 妄 想 めいた 表 現 で 痛 みを 訴 えることがあり、 痛 みの 程 度 を 把 握 することが 難 しい(ID6)患 者 が 幻 聴 の 世 界 に 行 ってしまったりして、 伝 えにくさがある(ID6)「お 腹 に 子 どもがいる」と 訴 えていた 患 者 が 腸 穿 孔 を 起 こしていた(ID9)患 者 が「 痛 い」って 言 ってこないので、 対 応 が 遅 れがちになる(ID1)患 者 はうまく 自 分 の 意 志 を 伝 えられない(ID1)患 者 に 聞 いても 患 者 の 反 応 が 悪 いので、 痛 みの 程 度 が 分 からず、 対 応 が 難 しい(ID3)たばこで 指 間 を 火 傷 して 水 泡 ができたり 表 皮 剥 離 していても、 痛 みに 鈍 感 なせいか、 患 者 は 看 護 師 に訴 えてこない(ID5)普 段 から 振 戦 がある 患 者 がいつもより 少 し 強 めに 震 えていて、 声 をかけたら「いいえ、 別 に」って 言 って、ホールで 誰 かと 話 をしていたけど、 熱 を 測 ってみたら 40 度 くらいあった(ID9)輸 液 ・ 輸 血 について 患 者 の 理 解 が 得 られず、 留 置 針 を 抜 去 してしまうことがある(ID3)統 合 失 調 症 患 者 はケアの 受 け 入 れに 時 間 を 要 すので、 今 すぐにケアをすることにはなかなか 同 意 してもらえない(ID6)患 者 にこだわりがあり、 服 を 着 こんでいて、 観 察 がむずかしい(ID1)便 が 出 ていると 言 ってた 患 者 がイレウスを 発 症 したことがあり、 患 者 は 言 っていることとやっていることが 合 わなかったりする(ID5)看 護 技 術 を 使 う 機 会 が 減 り、ブランクがあると、やや 複 雑 な 処 置 の 介 助 ができる 自 信 がなくなってくる(ID3)以 前 行 っていた 中 心 静 脈 カテーテルを 留 置 する 際 の 介 助 がおぼろげになってくる(ID3)採 血 以 外 の 看 護 技 術 はする 機 会 がないため、 看 護 技 術 に 対 して 不 安 がある(ID6)点 滴 の 機 会 があっても、 最 近 やっていないので 不 安 もあり、 敬 遠 する 感 じになる(ID6)今 の 病 棟 でここ 1、2 年 の 間 に 採 血 を 2、3 度 しただけで 注 射 とか 他 の 処 置 とか 一 切 していないので、看 護 技 術 に 不 安 がある(ID9)身 体 についての 知 識 が レントゲンを 見 てもニボー 像 の 有 無 が 分 からない(ID1)少 なく、フィジカルアセ 身 体 をみる 知 識 量 が 少 ない(ID1)スメントができない血 液 検 査 データの 正 常 値 がとんでいる(を 忘 れている)(ID1)モニターの 波 形 が 読 めない(ID3)身 体 面 への 看 護 についての 知 識 が 少 なく、 自 信のなさから 判 断 が 遅 れる精 神 面 の 観 察 に 比 較 して、 身 体 面 の 観 察 の 優 先度 が 低 い身 体 面 を 看 護 する 機 会が 少 ない身 体 の 病 気 を 勉 強 する機 会 があまりない身 体 のことに 関 しては“ 引 き 出 し”がないので 自 信 がない(ID1)自 信 のなさから 医 師 への 報 告 が 遅 れる(ID1)精 神 的 なことはすぐに 判 断 できても 身 体 的 なことは 1 歩 2 歩 判 断 が 遅 れる(ID1)身 体 看 護 については 学 生 の 時 に 勉 強 した 知 識 や 技 術 のままで、 自 信 のなさ、 自 分 自 身 に 対 する 不 安 がある(ID2)身 体 合 併 症 をみようとするのではなく、どうしても 精 神 症 状 の 観 察 や、 患 者 やスタッフの 安 全 を 守 るために 暴 力 をふるうリスクがないかという 視 線 でみている(ID1)抗 精 神 病 薬 の 副 作 用 以 外 の 身 体 の 観 察 の 優 先 順 位 は 下 位 である(ID1)患 者 の 興 奮 が 強 い 時 は 精 神 の 方 に 目 が 行 きがちになる(ID2)身 体 の 病 気 の 診 断 がついていない 患 者 が、 妄 想 がかった 遠 回 しの 表 現 で 身 体 の 不 調 を 訴 えてきた 場 合 、身 体 の 不 調 というよりも 精 神 の 不 調 と 捉 えてしまう(ID6)レントゲン 写 真 をみる 機 会 が 少 ない(ID1)身 体 をみる 経 験 がないので、 身 体 に 関 して 弱 くなる(ID1)初 めて 遭 遇 する 身 体 疾 患 、それに 伴 う 看 護 については、 経 験 がないので 自 信 がもてない(ID2)身 体 面 の 看 護 について 以 前 は“よし”とされていたことが、 数 年 たって 変 わっているということがあるので 心 配 である(ID9)身 体 の 病 気 を 勉 強 する 機 会 があまりなかった(ID6)身 体 合 併 症 を 主 題 にした 院 内 勉 強 会 はあまりない(ID6)保 護 室 に 入 院 している 患 者 は 身 体 の 不 調 を 訴 えても 他 科 受 診 することが 難 しい(ID9)105


大 阪 医 科 大 学 看 護 研 究 雑 誌 第 3 巻 (2013 年 3 月 )表 6 精 神 科 以 外 の 看 護 経 験 がない 看 護 師 の 身 体 合 併 症 看 護 についての 不 安上 位 カテゴリー カテゴリー知 識 や 技 術 の 自信 のなさに 関 係する 要 因患 者 の 精 神 症 状に 関 係 する 要 因精 神 科 病 院 の 特色 に 関 係 する 要因フィジカルアセスメントと 対 応 が 十 分 できない点 滴 、 吸 引 、 心 電 図 モニター 装 着 といった 看 護技 術 が 未 熟 である観 察 のポイントが 分 からないので、すぐの 対 処ができず、 見 過 ごしてしまう自 己 学 習 しているが、 身体 をみる 自 信 がない患 者 の 訴 えがなかったり、あったとしても 妄 想がかっていたり、 上 手 く表 現 できなかったりする患 者 が 看 護 師 のかかわりや 処 置 を 拒 む看 護 に 用 いる 製 品 が 新しくなっていても、 触 れる 機 会 がないので、その扱 い 方 に 不 安 がある精 神 面 の 観 察 に 比 較 して、 身 体 面 の 観 察 の 優 先度 が 低 いコード心 電 図 の 異 常 波 形 について、 緊 急 度 をどう 判 断 してよいかが 分 からなかった(ID4)経 験 がほとんどないので、 大 量 の 吐 血 の 場 面 では 頭 が 真 っ 白 になる(ID7)心 電 図 モニターの 波 形 の 見 方 が 分 からない(ID8)普 段 から 経 験 していないので、 呼 吸 音 や 腸 蠕 動 音 について 分 かっていない(ID8)患 者 が 発 熱 した 際 、 知 識 がないので 他 の 人 に 聞 いて 助 けてもらおうとしても、 聞 いた 人 も 精 神 科 の 経験 しかなくてやっぱり 分 からなかった(ID10)留 置 針 を 挿 入 する 手 技 に 慣 れていないので、 血 管 が 分 かりづらかったりする(ID4)吸 引 の 手 技 が 未 熟 なので 上 手 に 痰 がとれない(ID4)心 電 図 モニターをつける 時 は、パッパッとつけられず、 説 明 書 をみないと 分 からない(ID7)点 滴 の 準 備 も 他 のスタッフに 聞 かないと 分 からない(ID7)持 続 点 滴 の 際 の 留 置 針 を 挿 入 する 手 技 では、 必 要 物 品 の 準 備 もできないことがいまだにある(ID8)あれっと 異 変 を 感 じても、もうちょっと 様 子 をみようとなって、すぐの 対 処 ではなくなってしまう(ID4)観 察 のポイントが 分 からないので、 医 師 への 報 告 の 必 要 性 についての 判 断 が 難 しい(ID8)身 体 合 併 症 の 症 状 が 分 からず、 観 察 点 が 分 からないので、 見 つけるのが 遅 くなる(ID10)身 体 をみる 時 に、ポイントを 知 っておかないと、 見 過 ごしてしまうことがあるかもしれないから 難 しい(ID10)本 を 読 んだり、スタッフに 聞 いたりしているけど、 身 体 をみる 自 信 が 全 然 ない(ID4)身 体 をみる 自 信 の 無 さが 常 にあり、 精 神 的 に 辛 くなる(ID4)「 腰 におのが 刺 さっている」と 訴 えていた 患 者 は 結 局 腸 骨 骨 折 をしていたが、 発 見 までに 数 週 間 かかった(ID4)統 合 失 調 症 の 患 者 が 吐 血 した 際 に「コーヒーを 吐 いた」と 訴 えてきた(ID7)者 は 自 分 の 身 体 の 変 化 に 関 心 が 向 けられないので、しんどいという 訴 えがない(ID7)痛 みの 表 現 が、 聞 くごとにいろいろ 変 わっていく 患 者 がいる(ID8)排 便 がなくても「1 回 出 ている」と 毎 日 言 う 患 者 がいる(ID8)患 者 が 痛 みを 上 手 に 伝 えることができない(ID10)発 達 障 害 のある 患 者 はコミュニケーションが 上 手 にできず、 言 葉 の 表 し 方 も 患 者 によって 違 うので 痛みの 有 無 や 程 度 を 観 察 するのが 難 しい(ID10)錯 乱 した 患 者 が 吸 引 をさせてくれなかった(ID4)言 葉 のキャッチボールが 続 かず、 患 者 は「いいです」と 断 ってばかりする(ID7)採 血 に 対 して 拒 否 し、 看 護 師 を 蹴 った 患 者 がいる(ID8)留 置 針 の 製 品 が 新 しくなっており、 操 作 にからだがついてこない(ID7)看 護 に 用 いる 製 品 が 新 しくなっていて、それを 使 うことに 不 安 がある(ID7)注 射 針 など 新 しい 製 品 の 説 明 を 聞 いても、それを 実 際 に 触 る 機 会 はない(ID8)いつもは 身 体 的 な 部 分 の 観 察 をしていないことが 多 い(ID10)普 段 は 成 長 発 達 や 社 会 性 の 部 分 をみていることが 多 いので、 身 体 はあまり 見 ていないと 思 う(ID10)身 体 合 併 症 看 護 を 主 題 にした 院 内 研 修 会 はあまりない(ID4)護 への 不 安 の 要 因 を 検 討 した 結 果 ,いずれも【 患者 の 精 神 症 状 に 関 係 する 要 因 】,【 知 識 や 技 術 の 自 信のなさに 関 係 する 要 因 】,【 精 神 科 病 院 の 特 色 に 関 係する 要 因 】の 3 つの 上 位 カテゴリーに 分 類 され, 不安 の 要 因 に 相 違 はみられなかった。 以 下 では, 各 上位 カテゴリーにもとづいて 身 体 合 併 症 看 護 への 不 安の 要 因 について 検 討 する。1)【 患 者 の 精 神 症 状 に 関 係 する 要 因 】これは,< 患 者 の 訴 えがなかったり,あったとしても 妄 想 がかっていたり, 上 手 く 表 現 できなかったりする>,< 必 要 な 援 助 について,なかなか 同 意 が得 られない>,< 患 者 が 看 護 師 のかかわりや 処 置 を拒 む>といったカテゴリーと,「 患 者 にこだわりがあり, 服 を 着 こんでいて, 観 察 がむずかしい」,「 便 が出 ていると 言 ってた 患 者 がイレウスを 発 症 したこと106


大 阪 医 科 大 学 看 護 研 究 雑 誌 第 3 巻 (2013 年 3 月 )Ⅴ. 結 論1. 精 神 科 病 院 で 勤 務 する 看 護 師 の 身 体 合 併 症 看 護への 不 安 は 大 きかった。2. 精 神 科 での 看 護 経 験 が 増 すと 身 体 合 併 症 看 護 への 不 安 が 大 きくなること, 精 神 科 以 外 の 看 護 経 験無 群 が 有 群 よりも 不 安 が 大 きいことが 示 された。3. 精 神 科 病 院 で 勤 務 する 看 護 師 の 身 体 合 併 症 看 護への 不 安 の 要 因 は,【 患 者 の 精 神 症 状 に 関 係 する 要因 】,【 知 識 や 技 術 の 自 信 のなさに 関 係 する 要 因 】,【 精 神 科 病 院 の 特 色 に 関 係 する 要 因 】であった。謝 辞本 研 究 にご 協 力 いただきました 看 護 師 の 皆 様 に 深く 感 謝 申 し 上 げます。なお, 本 研 究 は,2012 年 度 大阪 医 科 大 学 看 護 学 部 共 同 研 究 費 「 研 究 課 題 番 号 10:精 神 疾 患 患 者 の 身 体 合 併 症 を 早 期 に 発 見 する 看 護 師の 看 護 実 践 技 術 について」の 交 付 を 受 けて 実 施 した研 究 成 果 の 一 部 である。文 献荒 木 孝 治 , 瓜 﨑 貴 雄 , 正 岡 洋 子 他 : 統 合 失 調 症 患 者の 身 体 合 併 症 看 護 を 促 進 させるための 体 制 の 整 備について, 大 阪 医 科 大 学 看 護 研 究 雑 誌 , 2, 9-20.橋 本 敏 子 , 池 田 静 子 (2011): 精 神 科 病 棟 における 身体 合 併 症 看 護 からみえた 看 護 師 教 育 の 課 題 ; 術 語身 体 管 理 が 長 期 化 した 認 知 症 患 者 を 通 して, 54 (3),216‐220.清 野 由 美 子 , 中 村 勝 (2012): 精 神 科 病 院 における 身体 合 併 症 看 護 の 現 状 と 課 題 (その 1), 日 本 看 護 学会 論 文 集 ; 精 神 看 護 , 42, 218‐221.Lambert, T., Velakoulis, D. & Pantelis, C. (2003):Medical comorbidity in schizophrenia, Medical Journalof Australia, 178, S67-70.三 浦 善 博 , 久 保 寛 子 , 吉 鶴 淳 子 , 林 田 千 秋 (2006): 精神 身 体 合 併 症 看 護 における 困 難 性 に 対 する 看 護 師の 思 い, 日 本 看 護 学 会 論 文 集 ; 精 神 看 護 , 36,243‐245.Muir-Cochrane, E. (2006):Medical co-morbidity riskfactors and barriers to care for people withschizophrenia, Journal of Psychiatric and MentalHealth Nursing, 13 (4), 447-452.大 川 貴 子 , 中 山 洋 子 (2004): 入 院 精 神 障 害 者 の 身 体合 併 症 の 実 態 とケア 上 の 困 難 さの 分 析 , 日 本 精 神保 健 看 護 学 会 誌 , 13 (1), 63-71.藪 崎 元 浩 , 河 内 俊 二 (2007):イレウスの 早 期 発 見 につなげる 看 護 プロセス; 精 神 情 緒 状 態 や 生 活 行 動の 変 化 と 身 体 合 併 症 の 存 在 を 結 びつける 気 づき,精 神 科 看 護 , 34 (12), 46-52.108

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