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子ども学部 AO入試 小論文(サンプル問題).pdf - 東京成徳大学

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東 京 成 徳 大 学 子 ども 学 部 AO 入 試 小 論 文 サンプル 問 題次 の 文 章 を 読 んで、 以 下 の 問 に 答 えよ。 ( 時 間 90 分 )問 1 本 文 の 内 容 を200 字 以 内 にまとめよ。問 2 子 どもにとってよい 文 化 について、 本 文 の 内 容 を 踏 まえながらあなたの 考 えを600 字 以 内 で述 べよ。子 どもの 文 化 は、「 芸 術 的 な 文 化 」と「 俗 悪 な 文 化 」という 区 分 けで 語 られることが 多 い。この 区分 けは、「いい 文 化 」と「 悪 い 文 化 」という 括 りに 置 き 換 えられることも 多 い。芸 術 的 であることを 標 榜 して 一 九 一 八 年 ( 大 正 七 )に 創 刊 された 児 童 文 芸 雑 誌 『 赤 い 鳥 』 創 刊 にまつわるエピソードは、こうした 区 分 けを 象 徴 したものとなっている。 三 重 吉 自 身 が 語 ったそのエピソードとは 次 のようなものである。『 赤 い 鳥 』を 主 宰 することになる 鈴 木 三 重 吉 に 待 望 の 子 どもが 誕 生 する。すずと 名 付 けた 娘 を 溺 愛した 三 重 吉 は、すずが 成 長 するや、すずに 読 ませるための 本 を 探 しに 書 店 に 立 ち 寄 る。そこで 三 重 吉が 目 にした 現 実 は、 毒 々しい 色 彩 で 彩 られた 表 紙 の 子 ども 向 け 雑 誌 や、 戦 争 の 様 子 を 挿 絵 にした 読 み物 といった、 乱 雑 で 卑 俗 な 子 ども 向 け 読 物 の 氾 濫 であった。あまりに 俗 悪 なそれらの 子 ども 向 け 読 み物 を 前 に、 三 重 吉 はわが 娘 に 読 ませるために 芸 術 的 で 良 質 の 読 み 物 を 出 版 することを 決 意 する―いわゆる「すず 伝 説 」と 呼 ばれるこの 逸 話 は、 今 日 ではその 信 憑 性 に 若 干 の 疑 問 も 持 たれているが、三 重 吉 が 芸 術 的 であることを 標 榜 して 創 刊 した『 赤 い 鳥 』は、 教 員 などの 知 識 階 級 や 当 時 の 社 会 で 増大 しつつあった 新 中 間 階 級 と 呼 ばれるサラリーマン 階 層 の 家 庭 などから 高 く 評 価 されて 受 け 入 れられていく。そして、『 赤 い 鳥 』 創 刊 を 機 に 童 謡 ・ 童 話 を 中 心 とした 児 童 芸 術 運 動 が 一 気 にブームとなっていく。芸 術 的 で 良 質 の 文 化 とされた『 赤 い 鳥 』に 対 して、その 対 極 の 俗 悪 な 子 ども 向 け 読 み 物 として 指 弾されたのは、 巌 谷 小 波 に 代 表 されるお 伽 話 である。 明 治 の 子 ども 向 け 読 物 の 世 界 に 君 臨 した 小 波 は、芸 術 性 よりも 読 み 物 としての 通 俗 的 な 面 白 さと 子 どもに 向 けた 教 訓 的 な 内 容 を 盛 り 込 みながら 作 品 を発 表 し、 子 どもたちから 絶 大 な 支 持 を 得 ていく。小 波 も 小 波 の 門 下 生 たちも、ただ 単 におもしろさのみを 追 求 していたわけではない。 芸 術 的 な 子 ども 向 け 読 み 物 の 必 要 性 を 痛 感 し、そのことを 表 明 してもいた。だが、この 認 識 を 作 品 として 具 現 化 するまでに 至 らないまま、『 赤 い 鳥 』の 出 現 によって 俗 悪 な 読 み 物 との 烙 印 を 捺 されることになってしまう。ただし、こうした 色 分 けは、 文 化 を 提 供 し、 文 化 を 評 価 する 大 人 の 側 が 考 える 価 値 基 準 でしかない。読 者 である 子 どもにとってよい 文 化 ・よい 読 み 物 とは 何 か、あらためて 考 えてみる 必 要 があろう。日 本 PTA 全 国 協 議 会 が 毎 年 実 施 している「 子 どもとメディアに 関 する 意 識 調 査 」では、 保 護 者 たちを 対 象 に「 子 どもに 見 せたい 番 組 」「 子 どもに 見 せたくない 番 組 」を 調 査 し、その 結 果 を 発 表 している。平 成 24 年 の 発 表 では、「 見 せたくない 番 組 」で、「ロンドンハーツ」「クレヨンしんちゃん」「 志 村けんのバカ 殿 様 」が 上 位 を 占 め、「 見 せたい 番 組 」では「 世 界 一 受 けたい 授 業 」「 池 上 彰 の 学 べるニュース」「ダーウィンが 来 た!」が 上 位 を 占 めている。見 せたくない 理 由 には、「 内 容 がばかばかしい」「 言 葉 が 乱 暴 である」「 常 識 やモラルを 極 端 に 逸 脱 し


ている」「いじめや 偏 見 を 助 長 する 場 面 が 多 い」などが 挙 げられている。 見 せたい 理 由 では、「 知 識 が豊 富 になる、 学 習 の 助 けになる」「 内 容 がおもしろい」「 家 族 だんらんの 時 間 が 持 てる」「 自 然 や 地 球 環境 問 題 について 学 べる」などが 挙 げられている。こうした 調 査 結 果 を 見 ていると、 保 護 者 の 意 識 には、 子 どもに 対 する〈 教 育 〉と〈 保 護 〉の 意 識 が強 く 働 きながら、テレビ 番 組 の 評 価 を 行 っていることがわかる。一 方 で、 子 どもたちに 好 きな 番 組 を 聞 くと、「 謎 解 きはディナーのあとで」「ワンピース」「 妖 怪 人 間ベム」「 家 政 婦 のミタ」「ピカルの 定 理 」「しゃべくり007」などが 上 位 を 占 めている。ちなみに、 保護 者 が 見 せたいと 思 っている「 世 界 一 受 けたい 授 業 」は 三 五 位 、 見 せたくない「ロンドンハーツ」は四 三 位 と、 共 に 下 位 に 低 迷 している。この 結 果 は、 子 どもたちが〈 教 育 〉と〈 保 護 〉を 求 めてテレビ 番 組 を 視 聴 しているわけではないことを 如 実 に 示 している。 同 時 に、 保 護 者 が 危 惧 しているような、 乱 暴 な 言 動 や 偏 見 などを 番 組 に 求 め、それらを 楽 しんでいるわけでもないことも 示 している。子 どもたちが 好 きな 理 由 として 挙 げているのは、「 内 容 がおもしろいから」「 友 達 と 共 通 の 話 題 になるから」「 気 分 転 換 やストレスの 解 消 になるから」「 家 族 だんらんの 時 間 が 持 てるから」「 内 容 が 役 に 立つから」の 順 になっている。 中 でも、「 内 容 がおもしろいから」は 八 九 . 四 %と 圧 倒 的 に 高 いポイントを 示 している。 子 どもたちは〈 教 育 〉でもなく〈 保 護 〉でもなく、 何 よりも〈おもしろさ〉を 求 めているのである。では、 子 どもたちが 求 めている〈おもしろさ〉とはどのようなものであろうか。「 気 分 転 換 やストレスの 解 消 になるから」という 回 答 に、 子 どもたちが 求 めている〈おもしろさ〉について 考 える 鍵 が 潜んでいるのではないだろうか。「 気 分 転 換 やストレスの 解 消 」は、 現 実 の 様 々なことがらから 離 れてテレビ 画 面 が 提 供 する 世 界 に没 頭 ・ 集 中 することでなされる。ゲラゲラ 笑 い 転 げることができるような 番 組 は、 現 実 から 離 れる 時間 をもたらしてくれる。また、ドラマやアニメ、ドキュメンタリーなどを 視 聴 して 感 動 で 心 を 震 わせながら 画 面 に 没 頭 する 時 間 も、 現 実 から 遊 離 する 時 間 を 作 り 出 してくれる。さらに、 知 的 好 奇 心 を 刺激 してくれる 番 組 に 没 頭 することは、 現 実 と 異 なる 世 界 への 関 心 の 扉 を 開 き、 未 知 の 世 界 へと 誘 ってくれる。 音 楽 番 組 に 没 頭 することも、 現 実 の 様 々な 問 題 から 離 れて 心 を 解 放 することにつながる。いずれにせよ、 番 組 に 没 頭 ・ 集 中 できることが 重 要 となる。早 稲 田 大 学 の 増 山 均 教 授 は、エデュカシオン( 教 育 )・プロテクシオン( 保 護 )の 他 に、 魂 が 活 性 化 し 生命 が 躍 動 するアニマシオンの 重 要 性 を 指 摘 している。 遊 びや 余 暇 や 文 化 活 動 を 通 して 面 白 さ・ 楽 しさ・歓 びを 追 求 しつつ 精 神 を 活 性 化 させることは、 生 きていく 上 での 根 源 的 なエネルギーを 生 み 出 す 上 で重 要 だという 指 摘 である。テレビという 文 化 の 場 合 も、 教 育 や 保 護 の 観 点 から 見 てよい 番 組 というだけでは、よい 番 組 としての 評 価 において 十 分 とは 言 えない。 没 頭 ・ 集 中 しながら 番 組 を 視 聴 し、 視 聴 している 間 心 を 躍 動 させることができる 番 組 こそ、 子 どもにとってよい 番 組 でありよい 文 化 なのである。日 本 PTA 全 国 協 議 会 の 調 査 結 果 を 話 題 にする 際 に、 子 どもが 感 じるよい 番 組 とは 何 か、あらためて 考 えてみる 必 要 があるのではないだろうか。( 加 藤 理 「いいテレビ 番 組 と 悪 いテレビ 番 組 」(『 子 供 のしあわせ』2013 年 7 月 号 ))

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