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2考 察 資 料


■ノックスの 十 戒・ 第 1 条 。 犯 人 は 物 語 当 初 の 登 場 人 物 以 外 を 禁 ず・ 第 2 条 。 探 偵 方 法 に 超 自 然 能 力 の 使 用 を 禁 ず・ 第 3 条 。 秘 密 の 通 路 の 存 在 を 禁 ず・ 第 4 条 。 未 知 の 薬 物 、 及 び、 難 解 な 科 学 装 置 の 使 用 を 禁 ず・ 第 5 条 。 欠 番・ 第 6 条 。 探 偵 方 法 に 偶 然 と 第 六 感 の 使 用 を 禁 ず・ 第 7 条 。 探 偵 が 犯 人 であることを 禁 ず・ 第 8 条 。 提 示 されない 手 掛 かりでの 解 決 を 禁 ず・ 第 9 条 。 観 測 者 は 自 分 の 判 断 ・ 解 釈 を 主 張 することが 許 される・ 第 10 条 。 手 掛 かりなき 他 の 登 場 人 物 への 変 装 を 禁 ず■ヴァン・ダインの 二 十 則・ 第 1 則 。 手 掛 り 全 ての 揃 わぬ 事 件 を 禁 ず・ 第 7 則 。 死 体 なき 事 件 であることを 禁 ず・ 第 9 則 。 探 偵 が 複 数 あることを 禁 ず・ 第 11 則 。 使 用 人 が 犯 人 であることを 禁 ず・ 第 12 則 。 真 犯 人 が 複 数 であることを 禁 ず■ウィルの 推 理第 1のゲーム「 第 1のゲーム、 第 一 の 晩 。 園 芸 倉 庫 に、6 人 の 死 体 」「 幻 は 幻 に。…… 土 には 帰 れぬ 骸 が、 幻 に 帰 る」「 第 1のゲーム、 第 二 の 晩 。 寄 り 添 いし 二 人 の 骸 は 鎖 で 守 られし 密 室 に」「 幻 は 幻 に。…… 幻 の 鎖 は、 幻 しか 閉 じ 込 めない」「 第 1のゲーム、 第 四 の 晩 。 密 室 書 斎 の 老 当 主 は 灼 熱 の 窯 の 中 に」「 幻 は 幻 に。…… 幻 の 男 は、あるべきところへ」「 第 1のゲーム、 第 五 の 晩 。 杭 に 胸 を 捧 げし 少 年 の 最 後 」「 幻 は 幻 に。…… 幻 想 の 魔 女 と 杭 は、 幻 想 しか 貫 けない」「 第 1のゲーム、 第 六 、 第 七 、 第 八 の 晩 。 歌 う 少 女 の 密 室 に 横 たわる3 人 の 骸 」「 幻 は 幻 に。…… 盲 目 なる 少 女 が 歌 うは 幻 。 密 室 幻 想 」第 2のゲーム「 第 2のゲーム、 第 一 の 晩 。 腹 を 割 かれし6 人 は 密 室 礼 拝 堂 に」「 幻 は 幻 に。…… 黄 金 の 真 実 が、 幻 の 錠 を 閉 ざす」「 第 2のゲーム、 第 二 の 晩 。 寄 り 添 いし 二 人 は、 死 体 さえも 寄 り 添 えない」「 幻 は 幻 に。…… 役 目 を 終 えたる 幻 は、 骸 さえも 残 せない」「 第 2のゲーム、 第 四 、 第 五 、 第 六 の 晩 。 夏 妃 の 密 室 にて 生 き 残 りし 者 はなし」「 土 は 土 に。…… 棺 桶 が 密 室 であることに、 疑 問 を 挟 む 者 はいない」「 第 2のゲーム、 第 七 、 第 八 の 晩 。 赤 き 目 の 幻 想 に 斬 り 殺 されし 二 人 」「 土 は 土 に。 幻 は 幻 に。…… 幻 に 生 み 出 せる 骸 はなし」第 3のゲーム「 第 3のゲーム、 第 一 の 晩 。 連 鎖 密 室 が 繋 ぎし、6 人 の 骸 」「 幻 は 幻 に。…… 輪 になる 密 室 、 終 わりと 始 まりが、 重 なる」「 第 3のゲーム、 第 二 の 晩 。 薔 薇 庭 園 にて 親 子 は 骸 を 重 ねる」「 土 は 土 に。…… 語 られし 最 期 に、 何 の 偽 りもなし」「 第 3のゲーム、 第 四 、 第 五 、 第 六 の 晩 。 屋 敷 にて 倒 れし3 人 の 骸 」「 土 は 土 に。…… 語 られし 最 期 に、 何 の 偽 りもなし」「 第 3のゲーム、 第 七 、 第 八 の 晩 。 夫 婦 二 人 は 東 屋 にて 骸 を 晒 す」「 土 は 土 に。…… 明 白 なる 犯 人 は、 無 常 の 刃 を 振 るいたり」第 4のゲーム「 第 4のゲーム、 第 一 の 晩 。 食 堂 にて 吹 き 荒 れる 虐 殺 の 嵐 」「 幻 は 幻 に。…… 黄 金 の 真 実 が 紡 ぎ 出 す 物 語 は、 幻 に 帰 る」「 第 4のゲーム、 第 二 の 晩 。 二 人 の 若 者 は 試 練 に 挑 み、 共 に 果 てる」「 幻 は 幻 に。…… 黄 金 の 真 実 が 紡 ぎ 出 す 物 語 は、 幻 に 帰 る」「 第 4のゲーム、 第 四 、 第 五 、 第 六 、 第 七 、 第 八 の 晩 。 逃 亡 者 は 誰 も 生 き 残 れはしない」「 土 は 土 に。 幻 は 幻 に。…… 虚 構 に 彩 られし、 物 言 わぬ 骸 」「 第 4のゲーム、 第 九 の 晩 。そして、 誰 も 生 き 残 れはしない」「 土 は 土 に。 幻 は 幻 に。…… 虚 構 は 猫 箱 に 閉 ざされることで、 真 実 となる」ベアトの 心 臓「 私 は、だぁれ……?」「 幻 は、 幻 に。…… 約 束 された 死 神 は、 魔 女 の 意 思 を 問 わずに、 物 語 に 幕 を 下 ろす」3


■ 偽 書 作 家 テストEpisode1 Legend of the golden witch問 01 真 里 亞 の 薔 薇 に 込 められた 意 味 と、 消 失 の 理 由 は?問 02 真 里 亞 が 持 っていた 傘 と 手 紙 を 渡 したのは 誰 ?問 03 夏 妃 の 部 屋 の 扉 に 不 気 味 な 汚 れを 残 した 人 物 と、その 理 由 は?問 04 【 園 芸 殺 し・6 人 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 05 【チェーン 密 室 ・ 絵 羽 & 秀 吉 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 06 【ボイラー 室 ・ 嘉 音 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 07 金 蔵 の 書 庫 内 に 手 紙 を 置 いた 人 物 と 方 法 は?問 08 【 客 間 ・ 源 次 & 南 條 & 熊 沢 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 09 【 玄 関 ホール・ 夏 妃 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 10 EP1のゲーム 盤 の 真 相 は?Episode2 Turn of the golden witch問 01 ゲーム 盤 上 に 登 場 したベアトリーチェの 正 体 は?問 02 楼 座 が 受 け 取 ったベアトリーチェの 封 筒 の 中 身 は?問 03 親 たち7 人 は 深 夜 の 礼 拝 堂 で 何 を 見 た?問 04 【 礼 拝 堂 ・ハロウィンパーティーの6 人 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 05 【 朱 志 香 の 私 室 ・ 朱 志 香 & 嘉 音 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 06 【 使 用 人 控 え 室 ・ 南 條 & 熊 沢 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 07 【 夏 妃 の 私 室 ・ 紗 音 & 譲 治 & 郷 田 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 08 生 き 残 った 人 々は 最 終 的 にどうなった?問 09 EP2のゲーム 盤 の 真 相 は?問 10 ベルンカステルが 語 ったベアトリーチェの 隙 とは?Episode3 Banquet of the golden witch問 01 碑 文 の 謎 の 答 えは?問 02 【 連 鎖 密 室 ・6 人 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 03 【 薔 薇 庭 園 ・ 楼 座 & 真 里 亞 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 04 【 玄 関 ホール・ 留 弗 夫 & 霧 江 & 秀 吉 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 05 譲 治 がゲストハウスから 屋 敷 へ 行 った 方 法 は?問 06 【ゲストハウス・ 蔵 臼 & 夏 妃 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 07 客 間 の 扉 に「07151129」を 書 いた 人 物 と 数 字 の 意 味 は?問 08 【 客 間 ・ 譲 治 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は問 09 【 使 用 人 室 ・ 南 條 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 10 EP3のゲーム 盤 の 真 相 は?Episode4 Alliance of the golden witch問 01 【 食 堂 ・6 人 殺 し&5 人 幽 閉 】の 犯 人 と 方 法 は?問 02 【 朱 志 香 の 私 室 ・ 朱 志 香 殺 し、 薔 薇 庭 園 ・ 譲 治 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 03 【 屋 敷 の 裏 手 と 客 室 ・ 嘉 音 & 紗 音 & 南 條 & 蔵 臼 & 霧 江 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 04 【 園 芸 倉 庫 ・ 郷 田 & 熊 沢 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 05 【 客 間 ・ 真 里 亞 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 06 戦 人 の 罪 とは?問 07 ベアトリーチェの 問 い「 私 は、だぁれ?」の 答 えは?問 08 EP4のゲーム 盤 の 真 相 は?問 09 縁 寿 がマルフク 寝 具 店 で 発 見 したものは?問 10 12 年 後 の 六 軒 島 で 行 われた、 縁 寿 と 須 磨 寺 霞 一 派 の 戦 いの 真 相 は?Episode5 End of the golden witch問 01 親 族 会 議 休 憩 中 、 食 堂 の 扉 をノックして 手 紙 を 置 いた 人 物 とその 方 法 は?問 02 【いとこ 部 屋 ・4 人 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 03 【 使 用 人 室 ・ 源 次 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 04 【 謎 の 場 所 からの 脅 迫 電 話 ・ 蔵 臼 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 05 【 客 室 ・ 秀 吉 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 06 突 如 現 れた 古 戸 ヱリカはどのような 存 在 か?問 07 19 年 前 の 男 の 正 体 は?問 08 作 中 で 示 されたノックス 十 戒 の 意 味 は?問 09 ベアトリーチェに 対 する 戦 人 の 心 証 が 大 きく 変 わった 理 由 は?問 10 EP5のゲーム 盤 の 真 相 は?Episode6 Dawn of the golden witch問 01 【 各 所 で 発 見 される 死 体 ・ 恋 の 試 練 の6 人 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?問 02 ゼパルとフルフルによる 恋 の 試 練 と 決 闘 が 描 かれた 意 味 は?問 03 回 想 シーンで 戦 人 が 女 性 の 好 みを 語 った 相 手 は 誰 ?問 04 「お 母 様 」の 正 体 と、 彼 女 がベアトリーチェに 恋 心 を 託 した 理 由 は?問 05 紗 音 と 嘉 音 はどのような 関 係 ?問 06 いとこ 部 屋 にいたはずの 嘉 音 が 脱 出 した 方 法 は?4


問 07 嘉 音 がチェーンで 閉 ざされた 客 室 から 戦 人 を 助 け 出 し、 消 失 する 方 法 は?問 08 「18 人 目 の 人 間 」「17 人 だ」。ヱリカ 退 場 後 、2つの 赤 字 が 並 び 立 った 理 由 は?問 09 EP6のゲーム 盤 の 真 相 は?問 10 冒 頭 で 部 屋 に 監 禁 されていた 人 物 が、 女 性 めいた 言 葉 を 発 した 理 由 は?Episode7 Requiem of the golden witch問 01 ベアトリーチェ 殺 人 事 件 の 犯 人 (= 彼 女 を 生 み 出 した 人 間 )は?問 02 「 戦 人 が1986 年 の 六 軒 島 に 来 なければ 事 件 は 起 こらなかった」のはなぜ?問 03 戦 人 から 紗 音 への 手 紙 は 本 当 になかった?( 譲 治 が 隠 蔽 したという 説 はあり 得 る?)問 04 ヤスが1986 年 の 六 軒 島 で 行 おうとした 計 画 は?問 05 ヤス、 紗 音 、 嘉 音 、 理 御 、ベアトリーチェ、クレル、それぞれの 関 係 は?問 06 ヤスが 魔 女 になってからの2 年 間 に 何 があったのか?問 07 「 幻 は 幻 に。…… 黄 金 の 真 実 が、 幻 の 錠 を 閉 ざす」の 黄 金 の 真 実 とは?問 08 お 茶 会 で 描 かれた 次 男 夫 婦 による 殺 人 の 真 相 は?問 09 クレルのはらわたで 描 写 されたシーンの 真 相 は?問 10 ウィルの 二 十 の 楔 がベルンカステルに 通 用 しなかった 理 由 は?Episode8 Twilight of the golden witch問 01 「ゲームマスター」と「 作 家 ( 物 語 の 筆 者 )」の 違 いは?問 02 各 EP(1~8)の 作 者 は 誰 ?問 03 ベアトリーチェの 心 臓 とは 何 か?問 04 ヤスの 血 縁 関 係 を 分 かる 範 囲 で 説 明 せよ問 05 真 里 亞 は 事 件 にどのような 影 響 を 与 えた?問 06 赤 字 と 金 字 ( 黄 金 の 真 実 )について 説 明 せよ問 07 八 城 幾 子 &フェザリーヌの 正 体 と 登 場 理 由 は?問 08 ベルンカステル&ラムダデルタの 正 体 は?問 09 「 一 なる 真 実 の 書 」の 内 容 は?問 10 八 城 幾 子 が 真 実 の 書 と 鍵 を 持 つ 理 由 は?問 11 ボトルメールを 流 した 人 物 とその 理 由 は?問 12 12 年 後 の 世 界 やメタ 世 界 は 偽 書 に 書 かれたこと?問 13 八 城 十 八 が 偽 書 を 発 表 した 理 由 は?問 14 3 日 目 の 描 写 の 前 には 何 が 起 こった?問 15 戦 人 とベアトリーチェが 入 水 した 意 味 は?問 16 八 城 十 八 が 寿 ゆかりに 行 った 告 白 の 真 偽 は?問 17 福 音 の 家 の 黄 金 郷 が 意 味 するものは?問 18 魔 法 と 手 品 、 縁 寿 にとってより 良 い 選 択 は?問 19 山 羊 が 世 界 を 食 い 尽 くす 描 写 の 意 味 は?問 20 『うみねこのなく 頃 に』 全 体 の 真 相 は?■ 略 称ベアト=ベアトリーチェ ベルン=ベルンカステル ラムダ=ラムダデルタ ワルギ=ワルギリア 19 男 =19 年 前 の 男 ドラ=ドラノール フェザ=フェザリーヌ すべて=『うみねこのなく 頃 に』のすべて 竜 騎 士 07インタビュー『ファウスト 2011 SUMMER Vol.8』 最 考 散 =『 最 終 考 察 うみねこのなく 頃 に 散 』 真 相 =『 真 相 解明 読 本 』 我 告 =『 我 らの 告 白 』■ 赤 字 ( 適 応 されるEPごとにまとめています)全 EP 共 通 の 赤 字・ 真 実 を 語 る 時 、 赤 を 使 うことにする。(EP2より)・ 礼 拝 堂 の 鍵 は 一 本 しか 存 在 しない。 礼 拝 堂 の 施 錠 は 礼 拝 堂 の 鍵 以 外 では 開 錠 不 可 能 。 礼 拝 堂 の 扉 は、 施 錠 時 には 如 何 なる 方 法 での 出 入 りも 拒 む。(EP2より)・(EP2 以 降 )マスターキーは 使 用 人 たちがそれぞれ 持 つ 一 本 のみ。マスターキーは5 本 しかない。(EP2より)・ 妾 (ベアト)は 約 束 は 守 る。(EP2より)・ 六 軒 島 の 中 には、 九 羽 鳥 庵 という 隠 し 屋 敷 が 実 在 します。 かつて 実 際 にこの 場 所 で、お 二 人 ( 金 蔵 とベアト)はこのような 会 話 をなされました。1967 年 の 六 軒 島 の 隠 し 屋敷 に、 人 間 としてのベアトリーチェさまが 存 在 した。(EP3より)・( 崖 から 落 ちた 九 羽 鳥 庵 のベアトリーチェは) 間 違 いなく 死 んでいる!(EP3より)・ 六 軒 島 に 存 在 する 全 ての 扉 は 鍵 が 通 り 抜 けられる 隙 間 などない。(EP3より)・ 人 間 以 外 の 一 切 の 要 素 は、このゲーム 盤 に 関 与 しない!(EP3より)・ 金 蔵 の 書 斎 以 外 にオートロックの 扉 は 存 在 しない!(EP4より)・ 全 ゲームの 開 始 時 に 金 蔵 はすでに 死 んでいる!(EP4より)・ 全 ての 人 物 は 右 代 宮 金 蔵 を 見 間 違 わない。いかなる 変 装 であったとしても、 右 代 宮 金 蔵 を 見 間 違 わない! (EP4より)・ 妾 (ベアト)はこれまで、この 島 には19 人 以 上 の 人 間 は 存 在 しないと 宣 言 してきた。それを、 金 蔵 の 分 、1 人 減 らす!!この 島 には18 人 以 上 の 人 間 は 存 在 しない!! 以 上とはつまり18 人 目 を 含 めるぞ。つまり、18 人 目 のXは 存 在 しないッ!! これは 全 ゲームに 共 通 することである!!! (EP4より)・ 身 元 不 明 死 体 について、その 身 元 を 全 て 保 証 する。 即 ち、 替 え 玉 トリックは 存 在 しない!(EP4より)・ 俺 ( 戦 人 )の6 年 前 に、ベアトリーチェなどという 人 物 は 存 在 しないのだ。(EP4より)・ 妾 (ベアト)が 今 、そなた( 戦 人 )に 思 い 出 すことを 要 求 している 罪 は、 右 代 宮 戦 人 とベアトリーチェの 間 のものではない。 右 代 宮 戦 人 には 罪 がある。そなたの 罪 で、 人 が 死ぬ。そなたの 罪 により、この 島 の 人 間 が、 大 勢 死 ぬ。 誰 も 逃 さぬ、 全 て 死 ぬ。(EP4より)・ 妾 (ベアト)は 黄 金 の 魔 女 、ベアトリーチェ。そして 右 代 宮 金 蔵 の 孫 、 右 代 宮 戦 人 と 戦 うためにこのゲームを 開 催 した。(EP4より)・ 右 代 宮 戦 人 の 母 は、 右 代 宮 明 日 夢 である。(EP4より)・ 俺 の 名 は 右 代 宮 戦 人 (だ)。(EP4より)・ 右 代 宮 戦 人 は、 右 代 宮 明 日 夢 から 生 まれた。(EP4より)5


・ 俺 ( 戦 人 )は、 右 代 宮 、(「 明 日 夢 から 生 まれた」が 赤 で 言 えない)。(EP4より)・そなた( 戦 人 )は、 右 代 宮 明 日 夢 の 息 子 ではない。(EP4より)・ 右 代 宮 戦 人 は 右 代 宮 明 日 夢 の 息 子 ではないわ。(EP4より)・“ 戦 人 は 明 日 夢 の 息 子 ではない”(そして)“ 金 蔵 の 孫 である 戦 人 にしか(ベアトの) 対 戦 相 手 の 資 格 がない”。(EP4より)・……… 縁 寿 は、…… 俺 ( 戦 人 )の 妹 だ。(EP4より)・このゲームに 決 着 をつけない 限 り、あなた( 戦 人 )が 解 放 されることは 決 してない。(EP5より)・ 碑 文 を 誰 かが 解 くことで、この 子 (ベアト)が 何 かを 得 ることはありません。もともと 黄 金 郷 の 黄 金 はこの 子 のもの。 見 つけさせる 必 要 も、 横 取 りする 必 要 も、 何 もありません。 碑 文 の 謎 が 解 けても 解 けなくても、この 子 にとって 得 るものは 何 もありません。 碑 文 が 解 かれようと 解 かれなかろうと、ベアトが 何 かを 得 ることはない。 恐 怖 を 味 わわせるのが 目 的 ではありません。 誰 かに 復 讐 するためのものでもありません。ベアトは、 快 楽 目 的 で 殺 人 を 行 なっていることはありません。(EP5より)・ベアトは、あなた( 戦 人 )に 解 いて 欲 しいと 願 って、 解 けるようにこのゲームを、……この 物 語 の 謎 を 生 み 出 しました。(EP5より)・ 探 偵 権 限 。…… 探 偵 は 全 ての 現 場 を 検 証 する 権 利 を 持 つ。(EP5より)・これまで(EP1~4)のあなた( 戦 人 )は 探 偵 デシタ! ( 探 偵 である)あなたには 主 観 を 偽 る 権 利 はありマセンッ!!(EP5より)・ 全 ての 死 体 は、 決 して 検 死 を 誤 らぬ。 登 場 人 物 以 外 の 死 体 は 登 場 しない。(EP5より)・ 戦 人 くんは( 全 てのゲームにおいて) 誰 も 殺 してはいません。(EP5より)・ 全 ての 名 は、 本 人 以 外 には 名 乗 れない!!(EP7より)・このゲームに、ハッピーエンドは 与 えない。(EP8より)EP1 赤 字 (EP4より)・( 第 二 の 晩 において) 二 人 ( 絵 羽 と 秀 吉 )は 他 殺 である! 密 室 構 築 後 に 片 方 を 殺 害 の 後 に 自 殺 したのではない! また、 殺 人 は 執 行 者 、 犠 牲 者 が 共 に 同 室 して 行 われた! 執行 者 が 室 外 から 殺 害 する 手 段 は 存 在 しない!・( 第 五 の 晩 において) 全 ての 生 存 者 にアリバイがある! さらに 死 者 も 含 めようぞ!! つまり、 島 の 如 何 なる 人 間 にも 死 者 にも、 嘉 音 は 殺 せなかった!・ 嘉 音 は 自 殺 ではない。 嘉 音 は 事 故 死 ではない!・ 同 室 していた 真 里 亞 は( 三 人 を) 殺 していないぞ! そしてもちろん 三 人 ( 源 次 、 熊 沢 、 南 條 )は 他 殺 だ! 源 次 、 熊 沢 、 南 條 は 殺 人 者 ではない!・ 夏 妃 は 他 殺 である! 身 元 不 明 死 体 は 一 切 なく、 生 存 者 も 全 員 がアリバイがある! 夏 妃 の 額 に 埋 まりし 銃 弾 は、 夏 妃 の 銃 から 放 たれたものではない! 夏 妃 を 射 殺 したのはトラップじゃなく、ちゃんと 銃 を 構 えて 引 き 金 を 引 いてしっかり 射 殺 したのよ!EP2 赤 字・ 生 死 は 捨 て 置 く。6 人 ( 蔵 臼 、 夏 妃 、 絵 羽 、 秀 吉 、 留 弗 夫 、 霧 江 )は 確 かに( 礼 拝 堂 の) 扉 から 入 った。6 人 は 確 かに“この 正 面 扉 ”から 入 った。 礼 拝 堂 での6 人 の 殺 害 時 、犯 人 は 礼 拝 堂 内 にいたわ! 6 人 は 発 見 時 にすでに 全 員 死 亡 していた! 全 員 が 他 殺 だ! 6 人 は 全 員 が 純 粋 な 犠 牲 者 であり、 相 互 の 殺 人 には 関 与 しない! 相 打 ち 殺 人 は存 在 しない!! あの 礼 拝 堂 には 誰 も 隠 れていなかった。よって、 引 き 篭 もり 密 室 は 通 用 しない!(EP4より)・ 楼 座 は 今 朝 、 確 かに 真 里 亞 の 手 提 げの 中 から 封 筒 を 取 り 出 し、そこから 正 真 正 銘 の 礼 拝 堂 の 鍵 を 手 に 入 れたぞ。 妾 (ベアト)が 真 里 亞 に 預 けた 封 筒 の 中 身 は、 確 かに 礼 拝 堂の 鍵 だった。 妾 が 真 里 亞 に 渡 した 封 筒 と、 楼 座 が 開 封 した 封 筒 は 同 一 のものであるぞ。 真 里 亞 の 鍵 は、 真 里 亞 受 領 後 から 翌 日 の 楼 座 開 封 の 瞬 間 まで、 誰 の 手 にも 渡 っていない!!(EP4より)・( 朱 志 香 の 部 屋 は) 隠 し 扉 の 類 は 一 切 ない。 出 入 りはこの 扉 からだけだ。 扉 の 施 錠 は、 朱 志 香 の 鍵 が 一 本 と 使 用 人 たちが 一 本 ずつ 持 つマスターキーのみ。 窓 は 内 側 から 施 錠されている。 嘉 音 はこの 部 屋 で 殺 された。 施 錠 時 には 如 何 なる 方 法 をもってしても 出 入 りは 出 来 ぬ。 部 屋 の 外 から 鍵 を 使 わずに 施 錠 するようなカラクリも 通 用 せぬぞ。この部 屋 に 隠 し 扉 はない。 扉 と 窓 以 外 に 出 入 りする 方 法 はない。・ 朱 志 香 の 死 体 発 見 時 、 朱 志 香 の 部 屋 にいたのは、 戦 人 、 譲 治 、 真 里 亞 、 楼 座 、 源 次 、 郷 田 、 紗 音 、 熊 沢 、 南 條 のみだった。 朱 志 香 ももちろん 含 む。よって、 朱 志 香 の 部 屋の 件 、そしてこの 使 用 人 室 の 件 の 両 方 について、そなた( 戦 人 )が 認 識 していた 以 外 の 人 間 は 存 在 しない。・( 使 用 人 室 には) 誰 も 隠 れていない。 扉 は 鍵 を 使 用 せずに 外 から 施 錠 する 方 法 は 存 在 しない。 窓 については 外 からは 如 何 なる 方 法 でも 施 錠 する 方 法 は 存 在 しない。( 使 用 人室 の 鍵 は) 使 用 人 室 の 奥 のキーボックスに 収 められているぞ。 出 入 りは 唯 一 の 扉 と 唯 一 の 窓 から 以 外 は 不 可 能 。そしてそれらはいずれも 施 錠 されていた。 扉 も 窓 も、 施 錠 時には 如 何 なる 出 入 りも 許 さない。 扉 の 開 錠 は 使 用 人 室 の 鍵 とマスターキー 以 外 は 不 可 能 。この 部 屋 には、お 前 たち 以 外 は 存 在 しない。お 前 達 の 定 義 とは、 戦 人 、 譲 治 、 真 里亞 、 楼 座 、 源 次 、 郷 田 、 紗 音 のことを 指 す。・ 夏 妃 の 部 屋 もまったく 同 じだぞ、いつもの 通 り。 扉 も 窓 も 内 側 から 施 錠 されていた。 如 何 なるイカサマも 細 工 もなく、そして 隠 された 通 行 手 段 もなければ 隠 れる 場 所 もないッ。 夏 妃 自 身 の 鍵 は 譲 治 のポケットに 入 って、 室 内 に 閉 じ 込 められていた。あとは5 本 のマスターキーしかないが、それは 全 て“ 楼 座 ”が 持 っているッ。 楼 座 がマスターキーを 管 理 して 以 降 、それら 全 ては 一 度 たりとも 彼 女 の 手 を 離 れていない! 夏 妃 の 部 屋 を 開 錠 した 時 に 戦 人 に 貸 し 出 した 際 を 除 いてね。(EP4より)・ 本 来 の 客 間 の 鍵 は 使 用 人 室 に 封 印 されている。だからマスターキー 以 外 では 開 錠 不 能 ! 部 屋 の 密 室 定 義 もいつもに 同 じよ!・( 第 七 ~ 八 の 晩 において) 彼 ら( 源 次 、 南 條 、 熊 沢 、 紗 音 、 郷 田 )は 異 なる 人 物 を 嘉 音 と 誤 認 することは 絶 対 にない!(EP4より)EP3 赤 字・ちなみに、6つの 部 屋 の 扉 や 窓 はいずれも 普 通 。オートロックのような 鍵 を 使 用 せず 施 錠 できるような 仕 掛 けは 存 在 しない。 金 蔵 、 源 次 、 紗 音 、 嘉 音 、 郷 田 、 熊 沢 の6 人は 死 亡 している! 6 つの 部 屋 には 誰 も 隠 れていない! 6 人 は 即 死 であった! 室 内 には 犠 牲 者 しかおらず、それ 以 外 の 人 物 は 室 内 には 存 在 しておりません。6 人 はトラップで 殺 されてはいない。6 人 は 誰 も 自 殺 していない!!・マスターキー5 本 は 全 て、5 人 の 使 用 人 の 懐 よりそれぞれ 発 見 された! 個 別 の 鍵 は 死 体 の 傍 らの 封 筒 の 中 に! つまり、 連 鎖 密 室 にかかわる 全 ての 鍵 が、 連 鎖 密 室 内 に閉 じ 込 められていたわけだ!! ドアの 隙 間 だの 窓 の 隙 間 だの 通 気 口 だのッ、そんなところを 使 って 密 室 外 から 鍵 を 戻 すことなど 出 来 ぬぞ!! 彼 ら 全 員 には 致 命 傷 となった 銃 創 と 思 わしき 傷 痕 があったぞ! 室 外 からの 殺 害 は 不 可 能 だぞ!! さらに 赤 を 重 ねようぞ! 金 蔵 を 除 く5 人 の 殺 人 の 際 、 殺 人 者 は 必 ず 同 室 していた! 自 殺 者 がいないことは 当 時 に 赤 で 宣 言 済 みだ!!(EP4より)・ 楼 座 と 真 里 亞 は 死 亡 した。 死 因 は 南 條 の 見 立 て 通 りだ。 楼 座 と 真 里 亞 の 二 人 は 他 殺 です。わし( 秀 吉 )はずっと 部 屋 におったで。 事 件 の 前 後 の 時 間 帯 は 全 てや。・ 霧 江 は 食 料 はいらないと 考 えていた。ゲストハウスを 出 ないべきだと 主 張 していた。 食 料 を 取 りにゲストハウスを 出 ようと 提 案 する。その 心 変 わりの 理 由 は、 誰 にも 語 られておらず、また 記 されてもいない! 霧 江 はね、 死 ぬ 最 後 の 瞬 間 まで“ 食 料 を 取 りに 行 かない= 屋 敷 に 行 かない”という 行 動 式 を 維 持 していたわ!・ 譲 治 はゲストハウスの 階 段 を 降 りてはおらぬ。 外 部 へ 通 ずる 窓 も 扉 も 全 て 内 側 より 施 錠 されていたぞ。しかもそれらの 施 錠 は 全 て、 外 側 からは 不 可 能 !(EP4より)・ 朱 志 香 負 傷 後 、 絵 羽 は 常 に 戦 人 の 監 視 下 にあった。 戦 人 は 犯 人 でもなく 共 犯 者 でもない。よって 絵 羽 の 完 全 なアリバイを 証 明 できる。・( 南 條 殺 害 後 ) 金 蔵 は 死 亡 している。 蔵 臼 は 死 亡 している。 夏 妃 は 死 亡 している。 秀 吉 は 死 亡 している。 譲 治 は 死 亡 している。 留 弗 夫 は 死 亡 している。 霧 江 は 死 亡 している。楼 座 は 死 亡 している。 真 里 亞 は 死 亡 している。 源 次 は 死 亡 している。 紗 音 は 死 亡 している。 嘉 音 は 死 亡 している。 郷 田 は 死 亡 している。 熊 沢 は 死 亡 している。 南 條 は 死 亡 している。 以 上 、15 人 は 死 亡 。 戦 人 は 生 存 している。 絵 羽 は 生 存 している。 朱 志 香 は 生 存 している。・( 南 條 殺 害 時 ) 絵 羽 はあなた( 戦 人 )とずっと 一 緒 に 居 たわ。だから 犯 行 は 不 可 能 。もちろん 戦 人 くんは 犯 人 じゃないわ。アリバイ 偽 装 なんてしてないし、 彼 女 が 犯 人 の 可 能性 も 考 慮 していたから、その 行 動 は 用 心 深 く 見 張 ってた。 彼 女 には、 不 審 なことをできるあらゆる 可 能 性 が 存 在 しなかった!つまり、 犯 行 時 の 使 用 人 室 には、 南 條 と 朱 志 香しかいなかったのよ。 右 代 宮 朱 志 香 は 殺 人 を 犯 していない! 南 條 殺 しにかかわっていない!! 彼 女 の 目 は 完 全 に 塞 がれている。その 彼 女 に 殺 人 を 行 なうことは 不 可 能よ! 朱 志 香 の 体 が 起 こした 如 何 なる 動 作 も、 南 條 の 殺 人 には 関 係 ・ 影 響 しない! この 適 用 を 戦 人 と 絵 羽 にも 広 げるわ。 南 條 は 他 殺 よ。もちろん、トラップではなく、 直6


■ うみねこのなく 頃 に Episode1 「Legend of the golden witch」■ 第 1 日 目 1986 年 10 月 4 日「 上 上 下 下 左 右 左 右 」( 留 弗 夫 )※PC 版 。おそらくコナミコマンドだと 考 えられます。「タテタテヨコヨコ 丸 書 いて 逆 に 回 して 倍 率 ドンドンさらに2 倍 」( 留 弗 夫 )※PS3 版 。■ 新 島 飛 行 場 到 着 10 月 4 日 ( 土 )08 時 00 分 ■( 六 軒 島 は) 全 周 が10km 程 度 の 小 さな 島 だ。 島 のほとんどは 未 開 の 森 林 のまま 残 されている。※ 六 軒 島 が 完 全 な 円 形 だと 考 えると、 直 径 は3km 程 度 だと 考 えられます( 直 径 ×3.14=10)。■ 六 軒 島 到 着 10 月 4 日 ( 土 )10 時 30 分 ■「 薔 薇 の 庭 園 は 記 憶 にあったんだけどよぅ…。このゲストハウスっつーのは 記 憶 にねぇなぁ。これ 建 てたのは 最 近 か?」( 戦 人 )門 柱 らしきものに「 渡 来 庵 」と 記 されているが、みんなはゲストハウスと 呼 んでいたので 俺 もそれに 習 った。※Trillion( 英 語 の“ 兆 ”)の 意 味 だと 考 えられます。ちなみに 九 羽 鳥 庵 はquadrillion( 英 語 の“1000 兆 ”)でしょう。そこには、 初 老 の 男 の 姿 があった。 使 用 人 の 長 である 源 次 である。「………………そこで 何 をしている。… 紗 音 、 早 く 厨 房 に 戻 りなさい」( 源 次 )「は、はい。…… 失 礼 いたしました……」( 紗 音 )「……………………………」( 嘉 音 )紗 音 は 畏 まり、すぐに 配 膳 ワゴンを 押 して 立 ち 去 ろうとする。だが、 嘉 音 は 言 葉 にできない 何 かを 瞳 に 宿 して、 無 言 でそれを 源 次 に 訴 えている。「……………どうした。 何 かあったか…?」( 源 次 )「…しゃ、…… 紗 音 は 何 も 悪 くないのに、あいつら…、」( 嘉 音 )「やめて 嘉 音 くん…。…… 失 礼 しました。すぐに 仕 事 に 戻 ります。 嘉 音 くんも 自 分 の 持 ち 場 に 戻 って。……お 願 い」( 紗 音 )「………… 姉 さんがそういうなら」( 嘉 音 )「………………。… 何 事 もないなら、そうしなさい」( 源 次 )「……はい。…… 失 礼 します」( 紗 音 )※この 場 面 の 源 次 は、 紗 音 しか 認 識 していないと 思 われます。 源 次 の2つ 目 と3つ 目 の 台 詞 の 間 の 紗 音 と 嘉 音 のやりとりは 心 の 中 での 会 話 だと 考 えると、 源 次 の 台 詞 の 不 自然 さがなくなります。■ ゲストハウス 10 月 4 日 ( 土 )12 時 00 分 ■「 叩 けば 扉 は 開 かれると 誰 が 教 えた! その 馬 鹿 者 は 磔 にしたぞッ!! お 前 もそうされたいのかッ!! 炉 には 鍋 を 掛 けてニガヨモギを 煮 るがいい! 黙 示 録 の 煮 汁 はそれでも 私 をここから 連 れ 出 そうとする 馬 鹿 者 どもに 飲 ませてやれッ! 残 りは 酒 に 漬 けるのだ! あぁ、 源 次 はどこだ! 源 次 を 呼 べい!! 苦 艾 の 魔 酒 を 用 意 させろ!緑 の 妖 精 の 囁 きが 届 かぬ!! あぁ、 源 次 はどこだッ、 源 次 を 呼 べぇえぇいッ!!!」( 金 蔵 )※“ 苦 艾 (くがい)”とはニガヨモギのこと。“ 緑 の 妖 精 ”はニガヨモギを 用 いたリキュール“アブサン”の 別 名 。この 場 面 で 出 てくる 金 蔵 のその 他 の 発 言 は『 新 約 聖 書 』の“マタイによる 福 音 書 ”“ヨハネの 黙 示 録 ”に 関 連 すると 思 われます。■ 食 堂 10 月 4 日 ( 土 )13 時 30 分 ■右 代 宮 家 は、 明 治 ・ 大 正 の 頃 までは 隆 盛 を 極 めたそりゃあ 立 派 な 家 柄 だったそうだ。 紡 績 工 場 をいくつも 持 ち、 毎 日 笑 い 転 げてるだけで 金 が 転 がり 込 んでくる 富 豪 っぷりだったらしい。ちなみに 祖 父 さまは 分 家 筋 で、 本 来 なら 右 代 宮 本 家 とは 何 の 関 係 もない 人 だった。 当 主 継 承 権 からも 遠 く、 煌 びやかな 本 家 とは 縁 も 遠 かったらしい。ところが大 正 12 年 の 関 東 大 震 災 で、 当 時 、 小 田 原 に 屋 敷 を 持 っていた 右 代 宮 本 家 はペッタンコ。 東 京 下 町 に 持 っていた 紡 績 工 場 は 大 火 事 で 全 焼 し、 右 代 宮 家 は 一 瞬 にして 主 だった親 族 と 財 産 を 丸 ごと 失 ったんだそうだ。それで 右 代 宮 本 家 の 跡 継 ぎは 誰 だってことになったら、 分 家 筋 も 分 家 筋 の 金 蔵 祖 父 さましか 残 ってなかったらしい。 本 人 は 後 にこのことを、 運 命 がひっくり 返 るほどの 強 運 だったと 述 懐 してる。※ 金 蔵 は 当 主 になったことを 歓 迎 していなかったようですが…。そのことがきっかけでビーチェと 会 うことが 出 来 、また、 大 成 功 を 収 めることも 出 来 たため、 結 果 オーライということなのでしょう。■ 肖 像 画 の 碑 文 10 月 4 日 ( 土 )13 時 30 分 ■「 祖 父 さまはその 資 本 金 で 儲 けた 挙 句 でこの 島 を 買 うんだぜ? この 島 に 来 る 前 から 黄 金 を 持 ってたってことになるじゃねぇか。この 島 にあるわけがないぜ」( 朱 志 香 )「……そうとも 限 らないよ。その 黄 金 が、 元 からこの 島 に 隠 されていて、それを 確 実 に 自 分 のものにするために、この 島 を 丸 々 買 い 取 ったとかね。 何 しろ10tもあるんだもん。 安 全 な 場 所 に 移 すより、 隠 し 場 所 そのものを 確 保 する 方 が 現 実 的 だよ」( 譲 治 )※“これは 推 理 小 説 的 なギミック。 登 場 人 物 がしてみせたもっともらしい 推 理 は 外 れている 可 能 性 が 高 い。という 王 道 を 逆 手 に 取 る。 夏 妃 が“ 正 解 ”を 口 にすることで、 彼らに、それ 以 外 に 真 相 があるに 違 いないと 思 わせ、 煙 に 巻 く 手 法 である( 我 告 )”。「 条 件 の1つ 目 。まず、 兄 貴 は 親 父 の 黄 金 を 見 つけていたことを 認 めること」( 留 弗 夫 )「 条 件 2。その 黄 金 について、 兄 弟 の 取 り 分 を 認 めこれを 支 払 うこと」( 留 弗 夫 )「 条 件 3。 黄 金 の 分 配 は 右 代 宮 本 家 当 主 跡 継 ぎの 肩 書 きに50%。 残 りを 兄 弟 の 正 当 な 取 り 分 として 分 割 。もちろん、 蔵 臼 兄 さんもこれには 含 めるわよ」( 絵 羽 )「 条 件 の4。 分 配 金 は 親 父 の 死 亡 時 に 遺 産 分 配 に 含 めて 清 算 する。ただし、 手 付 金 として 俺 たちの 取 り 分 の10%を 即 納 してもらう。 支 払 いは 来 年 3 月 までだ」( 留 弗 夫 )「 条 件 5。この 取 り 決 めはお 父 さんの 遺 言 状 に 優 先 する。……… 後 になって、この 取 り 決 めが 反 故 になるような 遺 言 が 出 てきちゃかなわんちゅうこっちゃな」( 秀 吉 )「…… 条 件 に7を 付 けて 貰 おう。 私 以 外 の 兄 弟 が 黄 金 を 発 見 した 場 合 、 速 やかに 私 に 引 き 渡 すこと」( 蔵 臼 )※ 条 件 の6は?秀 吉 は 大 量 の 金 を 手 に 入 れなければ、 自 分 が 育 て 上 げてきたもの 全 てを 失 いかねない 瀬 戸 際 にいたのである…。「その 通 りさ。 世 の 中 なんだってカネでケリが 付 く。 失 った 兄 弟 の 絆 だって 買 い 戻 せるようにな! アメリカは 権 利 侵 害 などには 五 月 蝿 い 国 だ。だがカネさえあれば 何 でも和 解 できる。 資 本 主 義 万 歳 だよ。…もっとも、 和 解 金 は 数 百 万 $にも 及 びそうだとの 噂 もあるがね?……… 楼 座 は 清 く 正 しい 妹 だ。 危 険 なマネーゲーム 等 には 手 を 出 さない。…だが、お 人 好 しな 性 分 が 災 いしたんじゃないかね…? 連 帯 保 証 人 は、 気 安 く 引 き 受 けるものではないと 思 うがね」( 蔵 臼 )…… 何 のことはない。 彼 らは 全 員 が 全 員 、 現 金 ガスグニ 大 量 ニ、 喉 カラ 手 ガ 出 ルホドニ 欲 シカッタ…!※EP1はヤスが 書 いたというのが 通 説 ですが、どうやってヤスはこんな 情 報 を 手 に 入 れたのでしょう?11


■ 砂 浜 10 月 4 日 ( 土 )15 時 00 分 ■「そして………、お 前 が 蘇 った 時 、そこにいるのは 私 であるだろう。 私 が 最 後 まで 生 き 残 り、お 前 の 目 覚 めを 見 守 るだろう。………さぁ、 来 たれベアトリーチェ…。ようこそ、 我 が 宴 へ…! 私 が 生 み 出 した 全 てと 引 き 換 えに、 私 にもう 一 度 だけ 奇 跡 を 見 せておくれ。……おおおぉ、…ベアトリーチェぇえぇ…………。」( 金 蔵 )※“ 一 度 目 の 奇 跡 ”とは“ビーチェに 瓜 二 つだった 九 羽 鳥 庵 のベアトが 生 まれたこと”だと 考 えられます。■ 手 紙 と 傘 10 月 4 日 ( 土 )18 時 00 分 ■「……………お 館 様 は 真 里 亞 さまのことをあまりお 好 きではない」( 源 次 )※もうゲーム 盤 は 始 まっているため、この 源 次 の 発 言 はヤス 補 正 が 入 っていると 考 えられます。配 膳 台 車 を 押 して 厨 房 に 戻 る 途 中 の 熊 沢 たちは、 源 次 と 嘉 音 に 出 会 う。そこへパンパンと、 手 を 叩 く 乾 いた 音 が 響 いた。 一 同 が 振 り 返 ると、 食 堂 から 出 てきた 郷 田 だった。「さぁさぁ 皆 さん。ディナーは 配 膳 のタイミングも 大 事 です。すぐにスープの 配 膳 に 取 り 掛 かってください。 源 次 さん、 彼 女 らは 大 切 なお 仕 事 中 ですのでお 引 止 めになられないで 下 さい」( 郷 田 )「……………………」( 嘉 音 )嘉 音 は、 尊 敬 する 源 次 に 対 し 見 下 したような 言 葉 遣 いをする 郷 田 に 敵 意 の 眼 差 しを 見 せる。それに 源 次 が 気 付 き、 表 情 に 出 ていることを 咎 めるかのように 肩 を 一 度 、ポンと叩 いた。 嘉 音 は 渋 々としながらも 顔 を 背 け、 表 情 を 戻 す。「…… 郷 田 の 指 示 に 従 いなさい。 今 は 晩 餐 の 配 膳 を 急 ぐように」( 源 次 )「ほらほら、 時 間 がありません。たらたらしない! 急 ぎますよ…!」( 郷 田 )郷 田 は 紗 音 から 配 膳 台 車 を 奪 うと、ぐんぐん 押 して 先 に 厨 房 へと 向 かっていった。「…では 私 どもも 厨 房 に 戻 らせていただきます。… 郷 田 さんも 気 の 短 い 方 ですからねぇ、…ほっほっほ」( 熊 沢 )「わ、 私 もこれで 失 礼 いたします…」( 紗 音 )熊 沢 と 紗 音 はその 場 を 立 ち 去 る。※この 場 面 の 源 次 と 郷 田 は、 嘉 音 を 認 識 していないと 思 われます( 熊 沢 も)。 源 次 が 肩 を 叩 いたのは 紗 音 であると 考 えると、 源 次 と 郷 田 の 発 言 から 不 自 然 さがなくなります。■ 鍵 の 選 びし 六 人 10 月 5 日 ( 日 )06 時 00 分 ■「おわぁッ、 何 だ 何 だぁッ?! 敵 襲 かぁ?! 回 せーー!!」( 戦 人 )※『エリア88』のパロディと 思 われます。 軍 隊 を 除 隊 した 主 人 公 が 街 中 でサイレンの 音 を 聞 き、この 言 葉 を 叫 びながらベッドから 飛 び 出 すシーンがあります。ちなみに 戦闘 機 のタービンなり、エンジンなりを 回 せという 意 味 だと 思 います。絵 羽 は 自 分 が 馬 鹿 にされたことと、 何 があったのか 知 らないが、 急 に 夏 妃 が 自 信 満 々になったことを 理 解 するのがやっとだった。 絵 羽 は、 夏 妃 の 様 子 が、 行 きと 帰 りでまったく 違 うことに 戸 惑 いを 隠 せなかった。… 堂 々としていて、 悔 しいが 何 らかの 貫 禄 さえある。※ 元 々 書 斎 にあった 金 蔵 の 死 体 の 始 末 を 源 次 に 命 じ、それがきちんと 為 されていたために 安 心 し、 自 信 満 々になったとも 考 えられます。■ 惨 劇 の 開 幕 10 月 5 日 ( 日 )08 時 45 分 ■秀 吉 はそわそわしながら、 先 ほどの 惨 状 を 思 い 出 しては、 信 じられない、この 世 のものとは 思 えない、 悪 魔 の 仕 業 やと 呟 き 続 けている。それらを 時 々、 問 い 掛 けの 形 に 変 えて 南 條 にぶつけていたが、 南 條 は 医 者 らしく 冷 静 に、 少 し 見 ただけでは 何 もわからない、 警 察 が 調 べなければわからないと 繰 り 返 すのだった。でも、 南 條 が 冷 静 に 見 えたのは、あくまでも 興 奮 や 恐 怖 が 抑 えられない 秀 吉 に 比 べればというだけの 話 。 南 條 も 実 際 は 強 いショックを 受 けていて、 顔 面 は 蒼 白 だった。※ 秀 吉 も 南 條 も 共 犯 者 ではありますが、あくまでアリバイ 作 りのための 共 犯 者 だったため、これらは 芝 居 ではないと 考 えられます。彼 らは 次 々に 食 堂 に 飛 び 込 むが、 熊 沢 が 真 っ 青 になるほどの 変 化 は 見 つけられなかった。…… 確 かに、 床 に 血 の 跡 が 残 っていたのである。…しかし 冷 静 に 考 えたなら、これは 相 当 の 出 血 を 物 語 るのに 間 違 いなかった。「…………ここにも 血 溜 まりがあるよ。…………これは 一 体 ……」( 譲 治 )※TIPS の“( 蔵 臼 のExecute) 薔 薇 庭 園 の 倉 庫 内 で 死 体 が 発 見 された。 直 接 の 死 因 は 不 明 だが、 死 後 に 側 頭 部 を 損 壊 されたものと 思 われる。まずは 全 ての 始 まり。”と、2つの 血 溜 まりから、この 事 件 がどのように 行 われたか 推 理 してみます。まず 親 族 会 議 を 行 っている 最 中 の 食 堂 に 紗 音 が 現 れます。 銃 を 突 きつけ「 抵 抗 すると 撃 つ」と 脅 迫 します。 蔵 臼 は 長 男 であり、ホストである 責 任 感 と、ボクシング 経 験 者 である 自 信 から、 紗 音 を 取 り 押 さえようとしますが、 側 頭 部 を 撃 たれて( 突 然 だったのできちんと 狙 えなかった) 死 亡 。もしくは 食 堂 に 現 れた 紗 音 がいきなり 蔵 臼 の 側 頭 部 に 銃 口 を 突 きつけ、 発 砲 したと 考 えられます。それを 見 て、 狂 乱 状 態 になった 楼 座 が 暴 れたため、 射 殺 します。銃 声 に 驚 いてやって 来 た 郷 田 と、 抵 抗 をあきらめた 留 弗 夫 に2 人 の 死 体 を 背 負 わせ、 霧 江 に 銃 を 突 きつけて 薔 薇 庭 園 の 倉 庫 に 移 動 します。そこで 不 意 をついて 残 りの3 人 を射 殺 。 一 応 ドラマチックなストーリーにしてみましたが、ようは 体 重 の 重 い 者 ( 蔵 臼 、 留 弗 夫 、 郷 田 )と 体 重 の 軽 い 者 ( 霧 江 、 楼 座 )から、 残 りの 者 に 運 べる 重 さの 死 体 を2つ作 って 運 ばせたということです( 重 い 者 を2 人 殺 すと 残 りの 者 に 運 べない)。これには2つの 目 的 があります。 狭 い 園 芸 倉 庫 内 で6 人 を 同 時 に 射 殺 するのは 難 しいため( 抵 抗 されると 抑 えきれない)、 人 数 を 減 らしておきたかったのと、 死 体 を 背 負 わせることで、とっさに 抵 抗 出 来 なくするためです。 殺 す 人 間 を 選 べたなら、 戦 闘 能 力 の 高 い 蔵 臼 と 油断 のならない 霧 江 ( 怪 しい 古 武 術 でも 使 いそう)を 殺 しただろうと 推 測 できます。 顔 面 を 損 壊 させた 理 由 は、 銃 で 殺 害 したことが 解 らないようにするため、 身 元 不 明 死 体 を 発生 させることによって 偽 装 死 をミスリードさせるため、 紗 音 の 死 体 に 譲 治 達 を 近 づけないため、などが 考 えられます。 蔵 臼 だけ 側 頭 部 が 損 壊 なのは、 側 頭 部 を 派 手 に 吹 き 飛ばしてしまったことから、 顔 面 まで 削 ると 不 自 然 な 死 体 になってしまうためでしょう。あるいは 紗 音 を 顔 面 損 壊 にしてしまうと 偽 装 死 を 疑 われるため、 半 壊 という 設 定 にしたけれども 紗 音 だけ 半 壊 では 不 自 然 ですから、 蔵 臼 も 半 壊 にしたとも 考 えられます。ちなみに 当 初 の 計 画 では 郷 田 は 銃 で 脅 して 共 犯 にし、 死 体 を 運 搬 させるつもりだったのですが、 夏 妃 を 殺 せなかったため、その 身 代 わりになったものと 思 われます。「あーーッ! 思 い 出 したわ、その 銃 ッ! 懐 かしいなぁ、 拳 銃 宿 無 しでスチーム・マックィーンがぶっ 放 しとったやつだわ!! お 父 さんも 渋 いなぁ…!」( 秀 吉 )※『 拳 銃 無 宿 』と“スティーブ・マックイーン”のパロディだと 考 えられます。■ オカルト 10 月 5 日 ( 日 )13 時 00 分 ■「…どうして、……… 奥 様 は 生 贄 を 免 れたんだ…。もし 奥 様 が 選 ばれてたなら、…… 紗 音 は、…… 紗 音 は、 死 ななくて 済 んだのにッ…。」( 嘉 音 )※ 当 初 の 予 定 では 紗 音 は 第 一 の 晩 の 被 害 者 には 入 っていなかったのかもしれません。しかし、 事 件 が 発 生 すると 互 いが 互 いを 監 視 する 状 況 になるため、 一 人 二 役 を 続 けるのは 難 しくなります。 早 いうちにどちらかを 殺 しておいた 方 が 良 いのですが…。■ 寄 り 添 う 二 人 10 月 5 日 ( 日 )19 時 00 分 ■厨 房 から 客 室 はそう 離 れていないから 源 次 もひとりで 行 き 来 したが、 客 室 は 少 し 遠 ざかる。 夏 妃 にみだりにひとりにはならないようにと 注 意 されたし、ついさっき、 南 條 にも 危 機 感 をもっと 持 った 方 がいいと 諭 されたばかり。… 源 次 は 嘉 音 を 伴 い、 二 人 で 絵 羽 たちの 客 室 を 訪 れていた。「 絵 羽 さま…! 申 し 訳 ございません。お 部 屋 を 失 礼 させていただきます…」( 源 次 )12


ガチャン。…それはドアチェーンを 引 っ 張 る 音 だった。チェーンが 掛 けられていたのだ。チェーンは 外 から 掛 けられないものだ。それは 同 時 に 在 室 も 示 す。 部 屋 の 中 からはテレビの 音 声 も 漏 れ 聞 こえた。… 灯 り、チェーン、そしてテレビ。それらが 示 すのは 明 らかな 在 室 なのだが、……… 気 配 がない。 源 次 は 扉 の 隙 間 より 再 び 絵 羽 を 呼 んだ。だが 返 事 はなかった。※この 場 面 を 目 撃 しているということは 源 次 は 共 犯 です。……そして( 嘉 音 が) 渾 身 の 力 で 絞 ると、チェーンは 想 像 していたよりもはるかにあっさりと 切 断 された。 切 断 されたチェーンは 左 右 に 分 かれ、ちゃりちゃりと 音 を 立 てながらまだ 揺 れ 続 けている…。「……… 嘉 音 さん、…… 足 元 に 封 筒 が……。…しかもこれは、…お 館 様 のもの……」( 熊 沢 )※ 熊 沢 も 共 犯 確 定 です。■ ボイラー 室 10 月 5 日 ( 日 )------ ■バタン。「い、 今 の 音 は……?!」( 熊 沢 )地 下 より 聞 こえたその 音 は、 確 かに 扉 が 閉 じる 音 だった。…… 熊 沢 も、 問 い 掛 けるように 言 いはしたが、それ 以 外 の 何 の 音 でもないことをすでに 理 解 している。 熊 沢 はその音 に 大 層 驚 き、 再 び 腰 をぬかしてへたり 込 んでしまう…。……なぜなら、 今 この 瞬 間 、ボイラー 室 にいられる 人 間 はいないからだ。 嘉 音 は 瞬 時 に 状 況 を 整 理 し、 地 下 へ 駆 け下 りる…!※ますます 熊 沢 は 共 犯 です。… 嘉 音 は 自 身 の 絶 命 をすでに 覚 悟 していたが、…… 与 えられた 死 を、そのままの 形 で 受 け 容 れることにだけでも、 最 後 の 抵 抗 を 試 みる。…そして 両 手 で 胸 に 刺 し 込 まれた 凶器 の 柄 を 握 り、…………この 世 のものと 思 えぬ 激 痛 に 歯 を 食 いしばりながら……………、………………………… 抜 く。※ 刺 したら 本 当 に 死 んでしまいますから…。■ 籠 城 10 月 5 日 ( 日 )20 時 00 分 ■「お 屋 敷 が 竣 工 したのは 昭 和 27 年 と 聞 いています」( 夏 妃 )※1952 年 ですから、34 年 前 ということになります。■ 黄 金 の 魔 女 10 月 5 日 ( 日 )23 時 30 分 ■「……( 夏 妃 ) 伯 母 さん。 一 気 に 飛 び 込 んで 左 右 に 分 かれよう。 扉 を 開 けてぼさっとしたら、 例 のアイスピックがど 真 ん 中 に 飛 んでくるかもしれねぇぜ…!」( 戦 人 )※これはファミコンの『ミシシッピー 殺 人 事 件 』のパロディかもしれません。■ うみねこのなく 頃 に Episode2 「Turn of the golden witch」私 ( 紗 音 )は、 教 えてもらったばかりのモーターボートで、この 小 島 にやって 来 た。いや、 小 島 とは 到 底 呼 べない。 岩 礁 と 呼 んだ 方 が 正 しいだろう。そこには 鳥 居 があり、 鎮守 の 祠 があった。 私 は 意 を 決 し、…… 恐 る 恐 る 祠 に 近 付 き、…そこに 納 められている 鏡 を 手 に 取 る。それは 古 ぼけて 曇 り、 薄 汚 れた 鏡 。……ううん、これは 鏡 じゃない。…これは 逃 れえぬ 今 日 までの 私 の 人 生 、そして 運 命 。これを、 割 るんだ。 割 って、…… 鏡 の 向 こうの 人 生 を 掴 み 取 るんだ。 割 らなければ、 私 の 人 生 は 永 久 に 合 わせ 鏡 。 何 もわずかも 変 わることはない…。さぁ、…… 割 れ。 私 を 閉 じ 込 める 永 遠 に 変 わりなき 運 命 を、 叩 き 割 れ……!「…… 約 束 は 守 りました。……… 今 度 はあなたが 約 束 を 守 る 番 です。…… 私 の 願 いをどうか 叶 えてください! ベアトリーチェさまぁあッッ!!」( 紗 音 )※これは1984 年 頃 のことだと 考 えられます。■ 素 晴 らしき 理 想 の 世 界 ■「ふむ、 馳 走 になったぞ。……そなた( 紗 音 )には 今 度 、ネロのドルチェ・ビータでも 振 舞 おうぞ。 薔 薇 は 永 遠 の 愛 の 象 徴 。 今 のそなたには 薔 薇 のドルチェこそが 相 応 しかろう」(ベアト)※ 暴 君 で 名 高 いローマの 皇 帝 “ネロ”(37~68)は、アルプスから 万 年 雪 や 氷 を 運 ばせ、 果 汁 、 蜂 蜜 、 樹 液 などをブレンドして 作 った 氷 菓 “ドルチェ・ビータ”を 好 んで 食 べたそうです。また、イタリアでは 本 能 のままに 自 由 に 遊 び 暮 らすことを“ドルチェ・ヴィータ”というそうで、これをネロにかけた 発 言 でもあるのかも。■ 文 化 祭 ■… 辺 りはまるで、スノーグローブに 金 の 吹 雪 をまぶしたようにきらきらと 輝 く。※“スノーグローブ”というのは、 水 の 入 ったガラスの 球 や 筒 に 白 い 粒 を 入 れたおもちゃです。 逆 さにすると 粒 がゆっくり 落 ちるため、 雪 が 降 っているように 見 えます。今 宵 、 蒔 きたる 恋 のタネは2つ。…すでに 蒔 きたるタネと 含 めてこれで3つ!※“「 魔 法 で 生 み 出 された 家 具 の、 僕 がここに 存 在 すること 自 体 が、…… 魔 法 の 奇 跡 の 存 在 する 証 拠 なのです。1つのブローチは1 人 の 願 いしか 叶 えない。…… 家 具 の 僕 たちは、この1つのブローチによって、どちらかしか、 結 ばれ 得 ないのです」( 嘉 音 )(EP6)これが、 在 りし 日 の、 甲 高 く 笑 うベアトリーチェが 蒔 いて 残 した、 恋 の 火 種 の、 最 後 の 一 粒 。” 譲 治 と 紗 音 、 朱 志 香 と 嘉 音 、そして 紗 音 と 嘉 音 どちらかしか 結 ばれ 得 ない。これが“3つの 恋 のタネ”です。■ チェス 盤 の 準 備 1986 年 10 月 4 日 ■… 今 の 楼 座 にとって、 真 里 亞 との 絆 を 取 り 戻 すことの 方 が 大 事 だった。…… 真 里 亞 は 自 分 にとって、 愛 しい 娘 であるだけでなく、… 今 の 自 分 の 全 てなのだ。※これは 楼 座 がそのように 思 い 込 もうとしているか、もしくはメッセージボトルの 描 写 なのだと 考 えられます。普 段 は 料 理 以 外 にも 雑 事 をこなさなければならないが、 親 族 会 議 の 日 は 料 理 人 として 専 念 することができる。 元 料 理 人 の 郷 田 にとって、 一 年 間 で 最 高 の 晴 れ 舞 台 に 違 いなかった。※ 郷 田 は 料 理 には 苦 労 を 惜 しみませんが、それ 以 外 の 雑 事 はあまり 好 きではないようです。「……お 嬢 様 より、お 子 様 方 が 泊 まれるよう4 人 分 の 用 意 をするようにとのご 指 示 を 賜 りましたが、いかがいたしましょう?」( 紗 音 )「… 今 年 は6 年 ぶりに 戦 人 さまがお 見 えになるそうだ。お 嬢 様 もいとこ4 人 で 夜 更 かしをされたいのだろう。…… 準 備 するように。 奥 様 にはお 伝 えしなくて 良 い」( 源 次 )※ 源 次 は 自 己 裁 量 で 仕 事 をすることがあるようです。「…… 六 軒 島 は 太 古 の 昔 、 小 豆 島 と 呼 ばれて 恐 れられてきました。アズキはアクジキが 訛 ったものと 言 われ、 本 当 は 悪 食 島 と 呼 ばれていたのだと、 漁 民 たちの 間 では 伝 えられておりました」( 熊 沢 )13


はベアトリーチェの 指 示 に 従 い、 真 里 亞 の 為 にハロウィンパーティの 準 備 をし、 終 わった 後 に 乾 杯 でもして、 毒 か 睡 眠 薬 を 飲 まされ、 殺 害 されたと 考 えられます。■ ハロウィン 10 月 5 日 ( 日 )06 時 00 分 ■時 計 を 持 ったウサギを 追 いかけたアリスは、 余 計 な 好 奇 心 を 後 悔 したことはなかったのだろうか……。※『 不 思 議 の 国 のアリス』のことだと 考 えられます。■ 新 しいルール 10 月 5 日 ( 日 )06 時 50 分 ■「 何 をして 過 ごすも 自 由 だと 言 っておるッ!! 歌 おうが 踊 ろうが! 首 を 吊 ろうが 煮 えたぎる 大 釜 に 飛 び 込 むも 自 由 ッ!! 13 人 が 死 ぬまで 好 きに 過 ごせば 良 いのだ。そんなに 退 屈 ならばなぜに6×9が42になるかでも 考 えていればいいッ!! それが 人 と 宇 宙 の 神 秘 の 答 えだッ!!」( 金 蔵 )※“ダグラス・アダムズ”のSF 作 品 『 銀 河 ヒッチハイク・ガイド』に 登 場 する「 生 命 、 宇 宙 、そして 万 物 についての 答 え」のことだと 思 われます。ちなみに 本 来 ならば6×7=42ですから、 実 際 の 在 島 者 の 数 が18 人 よりも2 人 少 ない16 人 であることにも 掛 けているのかもしれません。「うむ。すまんな、 我 が 友 よ。…………さて。 我 が 生 涯 を 語 るには、あの 魔 女 との 出 会 いから 記 さねばなるまい。… 紗 音 、 筆 記 せよ。…… 私 がベアトリーチェに 初 めて 出 会ったのは、だいぶ 以 前 に 遡 る。あれは 昭 和 の 何 年 だったか…。… 確 か、 終 戦 の……、」( 金 蔵 )※この 話 はEP7で 語 られることになります。「 開 かぬ 礼 拝 堂 と 知 りながら。……それでもなお、 奇 跡 の 日 を 夢 見 ていたのでしょうな。……… 金 蔵 さんは 若 い 日 にはとてもロマンチストな 方 だった。…わかる 気 がします」( 南 條 )※ 南 條 と 出 会 った 頃 には 金 蔵 は40 歳 近 かったはずなのですが…。「ラプラスの 悪 魔 の 座 に 及 ばねば、 思 考 を 巡 らせることひとつできないというのか、この 無 能 がッ!! ……それに 貴 様 は 情 報 不 足 がまるで 自 分 の 不 利 になるように 言 っているが、 真 実 はまったく 逆 だぞ?」(ベアト)※“ラプラスの 悪 魔 ”とは、 現 在 の 世 界 におけるあらゆる 現 象 を 完 全 に 把 握 できる 存 在 がいるならば、その 存 在 はこれから 未 来 で 起 きるあらゆる 現 象 も 完 全 に 把 握 できるだろうという 考 え 方 のことです。「ひゅうッ!! 言 うじゃねぇかよ、 推 理 マニアは 怖 ぇぞ?! クリスティが 墓 の 下 で 歯 軋 りしてるぜ!」( 戦 人 )※“アガサ・クリスティ”のことだと 思 われます。■ 容 疑 者 10 月 5 日 ( 日 )07 時 30 分 ■“《 赤 : 嘉 音 はこの 部 屋 で 殺 された》”。※これは 人 格 死 です。「く、…………くそ…。だからって、 親 族 や 使 用 人 の 誰 かが 犯 人 だって 保 証 はねぇ! お 前 が、 例 えばダンボール 箱 にでも 隠 れながらコソコソと 近 付 いてきて、 熟 睡 してる俺 たちの 部 屋 に 忍 び 込 んで 鍵 を 奪 った 可 能 性 だって 充 分 あるじゃねぇか!」( 戦 人 )※コナミのファミコンゲーム『メタルギア』のことだと 思 われます。■ 狼 と 羊 のパズル 10 月 5 日 ( 日 )13 時 00 分 ■「うむ。お 前 たちの 知 らない 秘 密 の 通 路 は 存 在 せぬぞ。ノックスだったか、ヴァンダインだったか。 何 でもミステリーには 秘 密 の 通 路 があってはいけないらしい。そのお 作法 に 妾 も 従 ったということよ」(ベアト)※こんなところで 既 にノックスとヴァンダインが 出 ています。■ 儚 き 抵 抗 10 月 5 日 ( 日 )18 時 00 分 ■「 押 し 付 けあわずにはいられぬ 人 の 世 の 罪 、か。……はて、どこの 魔 女 に 聞 いたやら。まぁいい。……そなたが 思 っているほど、 妾 も 無 慈 悲 ではないぞ? くっくくくっくっく!」(ベアト)※これは『ひぐらしのなく 頃 に 解 』に 出 てくる 話 だと 思 われます。■ 屈 服 10 月 5 日 ( 日 )21 時 00 分 ■「お 前 が 愛 しい、 恋 しい…! 私 が 間 違 っていた…! お 前 が 微 笑 んでさえくれれば、 他 には 何 もいらなかったんだ…。 私 が 間 違 えた、 私 がそれを 間 違 えて、…… 取 り 返 しのつかないことをしてしまった…! その 償 いに 残 りの 全 ての 人 生 を 捧 げた…!! お 前 に 詫 びるために、 私 の 罪 を 償 うために、……… 全 て、…… 捧 げたんだ………。……頼 む、 私 の 死 の 際 でもいい…。 …………せめて、…………お 前 に、 一 言 、……… 謝 らせてぇ…ぇ……。ベアトリーチェぇええぇぇぇぇ……。ううう、ひっく、うううッ、うううううううう!」( 金 蔵 )※ 金 蔵 が 謝 りたいベアトリーチェは 九 羽 鳥 庵 のベアトリーチェです。■ 復 活 10 月 5 日 ( 日 )23 時 30 分 ■「そう 言 うな 金 蔵 。 脆 く 儚 いクモの 巣 も、ヘロデの 王 から 守 ってくれることもある。……この 世 に 無 駄 なものなどないように、 無 駄 な 質 問 もまたない」(ベアト)※イエスが 幼 い 頃 、ヘロデの 王 に 命 を 狙 われたが、ヘロデの 王 の 兵 隊 はイエスがいた 洞 窟 の 入 り 口 に 設 けられたクモの 巣 を 見 て、 中 を 調 べずに 立 ち 去 ったという 昔 話 があるそうです(クモの 巣 が 設 けられているということは 長 い 間 、 誰 も 出 入 りしていないだろうと 考 えたのです)。■ 魔 女 の 宴 10 月 5 日 ( 日 )23 時 59 分 ■「あっははははははははは…。 負 け 惜 しみをぅ。 悔 しがってるのよぅ。」(???)※ベルンには 友 達 がいないことから、これはラムダだと 考 えられます。■ 裏 お 茶 会「……ま、まぁ、 前 回 は 私 がついつい 哀 れになって 好 きな 場 所 から 駒 を 進 めていいわよって 言 ったら、ベルンのヤツ、お 情 けの 空 気 も 読 めずに 手 持 ちのポーンをぜーんぶ 入城 させた 状 態 から 始 めて!! 何 よあれ、あんなの 負 けでも 何 でもないんだからぁ!! あぁ、 思 い 出 しただけでもむかむかするわ」(ラムダ)※『ひぐらしのなく 頃 に 解 』の「 祭 囃 し 編 」のことと 思 われます。15


■ うみねこのなく 頃 に Episode3 「Banquet of the golden witch」「それは 困 りましたね。これはお 館 様 が 大 層 お 気 に 入 りになられていた 壷 のはず。……ほほほほ、どのような 折 檻 があるか、このベアトリーチェ、 想 像 するのも 恐 ろしゅうございます」(ワルギ)※この 喋 り 方 はワルギリアではなく 熊 沢 です。つまりこのやり 取 りは 実 際 の 六 軒 島 での 熊 沢 と 紗 音 のもので、それを 幻 想 修 飾 していると 考 えられます。何 事 かと 行 ってみると、…… 使 用 人 たちが 何 人 か 集 まり、 砕 けてしまっている 壷 の 後 片 付 けをしているところでした。 使 用 人 たちが 言 うには、どこからか 紛 れ 込 んできた 黒猫 が、 壷 によじ 登 って 倒 してしまった、と 言 うのです。 壷 が 割 れたという 運 命 までは 変 えられなかったが、 私 が 割 ったという 事 実 だけは、 確 かに 変 わった…。ベアトリーチェは、 見 事 にその 魔 法 で 私 の 危 機 を 救 ってくれたのでした…。※ 猫 が 犯 人 というのも 幻 想 修 飾 かもしれません。というのは、 六 軒 島 に 猫 がいる 描 写 がなかったためです。■ 少 女 時 代 10 月 4 日 ( 土 ) ■「お 父 様 は、 少 なくとも“ 今 ”は、 女 に 当 主 を 継 がせないと 言 っている。でも、それすらも 所 詮 はお 父 様 が 決 めたルールでしかないの。お 父 様 が 決 めた 以 上 、それを 破 棄 出来 るのもお 父 様 。……… 人 の 気 持 ちなど、 浜 の 真 砂 が 尽 きるより 遥 かに 早 く 変 わるわ。 蔵 臼 が 愚 鈍 な 男 であることは、 私 たちが 立 証 しなくても、やがてお 父 様 も 理 解 する。…その 時 、 男 女 の 境 の 下 らない 垣 根 は、それを 設 けたお 父 様 によって 取 り 払 われるの。その 日 は 必 ず 来 るわ」(エヴァ)※「 女 に 当 主 を 継 がせない」というのは 右 代 宮 家 代 々のしきたりではなく、 金 蔵 が 決 めたことのようです。■ 妾 の 準 備 はすでに 万 端 よ 10 月 4 日 ( 土 )14 時 00 分 ■「うー。 知 り 合 いの 魔 女 が 言 ってた。 幸 せは、みんなが 信 じなくちゃ 叶 わないんだって。」( 真 里 亞 )※『ひぐらしのなく 頃 に 解 』のことだと 思 われます。「 黄 金 の 隠 し 場 所 については、すでに 金 蔵 さまが 私 の 肖 像 画 の 下 に 碑 文 にて 公 示 されております。 条 件 は 碑 文 を 読 むことができる 者 すべてに 公 平 に。 黄 金 を 暴 けたなら、 私は 全 てをお 返 しするでしょう。それではどうか 今 宵 を、 金 蔵 さまとの 知 恵 比 べにて 存 分 にお 楽 しみくださいませ。 今 宵 が 知 的 かつ 優 雅 な 夜 になるよう、 心 よりお 祈 りいたしております。―― 黄 金 のベアトリーチェ」( 真 里 亞 )真 里 亞 がベアトリーチェから 渡 されたという 手 紙 を 読 み 終 えると、 誰 もがしばらくの 間 、 言 葉 を 失 った。※ 手 紙 の 内 容 が 途 中 からになっています。 読 まれなかった 部 分 がEP1と2と 同 じであるとは 限 りません。■ 19 人 目 の 可 能 性 10 月 4 日 ( 土 )21 時 00 分 ■「“ヘンペルのカラス”を 使 えば、 様 々な 暴 論 が 実 証 可 能 なのです。…… 例 えば、“ 私 以 外 の 人 間 = 愚 かである”という 命 題 があったとします。これを 証 明 するには 本 来 、 私を 除 く 全 人 類 を 調 べ、 愚 かであることを 証 明 しなければなりません。…しかし、 何 十 億 人 も 調 べるなど、 現 実 には 不 可 能 でしょう。 戦 人 さまの18 箱 を 開 ける 手 間 とまったく 同 じです。」(ロノウェ)「くっくっく! しかし“ヘンペルのカラス”ならば、その 命 題 は 対 偶 的 にこう 変 換 される。つまり“ 私 以 外 の 人 間 = 愚 かである”を、そなた 風 に 言 うならば、チェス 盤 を引 っ 繰 り 返 し、“ 愚 かではない= 私 ”として 証 明 しても 良 いということだ。……つまりどういうことだと 思 う? くっくっくっく!“ 妾 が 聡 明 である”という 事 実 を 知 るだけで、 全 人 類 は 愚 かであることの 何 十 億 人 分 もの 証 明 が 直 ちに 終 了 してしまうわけだ。 全 人 類 が 妾 よりも 愚 かであることを、わずか1 秒 も 掛 けずに 証 明 終 了 できる!! 世界 最 強 最 速 のQED。これぞ“ヘンペルのカラス”ッ!」(ベアト)※これを 読 んで「 竜 騎 士 07は 馬 鹿 だから“ヘンペルのカラス”を 理 解 していない」という 人 がいますが、これはベアトが 戦 人 をからかう 為 にわざと 間 違 ったことを 教 えているだけです。この 程 度 のことも 理 解 できない 読 解 力 で 恥 ずかしくないのでしょうか? 「 自 分 は 馬 鹿 です」と 公 言 しているようなものです。古 いチャンバラ 映 画 で 誰 かが 言 ってたぜ。「 良 い 城 には 一 箇 所 だけ、わざと 弱 い 部 分 がある」ってな。※『 七 人 の 侍 』のことだと 思 われます。■ 楼 座 と 森 の 魔 女 ■畜 生 、ムカつく 魔 女 だってのに、 染 色 体 がXXだってだけで 俺 ( 戦 人 )も 甘 いもんだぜ…。※ 女 性 の 染 色 体 はXX、 男 性 の 染 色 体 はXYです。「やはりな。ベアトリーチェは 実 在 したんだ…」( 留 弗 夫 )「…その 姿 は、まさに 肖 像 画 の?」( 霧 江 )「……えぇ。まさにあの 肖 像 画 の 通 りよ」( 楼 座 )※ 肖 像 画 はビーチェではなく、 九 羽 鳥 庵 のベアトを 描 いたものなのかもしれません。「あなた、 黙 って。…………ずいぶん 昔 だけど、お 父 様 は、 森 には 狼 が 住 んでいるから 近 寄 ってはならないって、 私 たちを 脅 さなかった?」( 絵 羽 )「あぁ、そんなこともあったな。 馬 鹿 らしいね。 日 本 の 狼 はとっくの 昔 に 絶 滅 しているというのに。まさに 子 供 騙 しだな」( 蔵 臼 )「 記 憶 にねぇなぁ? そんな 話 、 親 父 に 聞 かされたっけ…? 森 には 魔 女 だろ? 狼 なんて 話 、 聞 いたことないぜ?」( 留 弗 夫 )「あんたがまだ 小 学 校 だった 頃 よ。 覚 えてない? そしたらあんた、むしろ 狼 を 撫 でてみたいなんて 言 い 出 すもんだから。お 父 様 はすぐに 狼 の 話 を 引 っ 込 めて、 魔 女 の 話 に切 り 替 えたのよ。もうそのウソっぽいことと 言 ったら、あっははははは」( 絵 羽 )「はっはっはっは。 当 時 の 留 弗 夫 には、 狼 よりも 魔 女 の 話 の 方 が 覿 面 だったね。よく 覚 えているよ。 私 の 背 中 にしがみ 付 いた 夜 があったことを 覚 えているかね?」( 蔵 臼 )※ 留 弗 夫 は 蔵 臼 や 絵 羽 とは 少 し 年 齢 が 離 れている 印 象 です。 金 蔵 は 九 羽 鳥 庵 のベアトには、そのまま 狼 で 通 したようです。「 妾 は、…もうベアトリーチェは 嫌 だ。 妾 が 何 者 なのか、 知 りたい。ベアトリーチェではない、 新 しい 人 間 を 始 めたい。だから、ここから 連 れ 出 して 欲 しい。………もう、紅 茶 もいらぬ。ドレスもいらぬ。 金 蔵 とも 二 度 と 会 わぬ。……ここより 妾 を 連 れ 出 してくれ。 楼 座 」( 九 羽 鳥 庵 のベアト)※ここから 出 られるなら、 美 味 しい 紅 茶 も、 美 しいドレスも、 父 と 慕 う 金 蔵 も、 捨 てても 良 いという 発 言 です。 九 羽 鳥 庵 のベアトは 金 蔵 のことを 大 切 に 思 っていたようです。しかし、それ 以 上 に、 自 分 が 何 者 であるのか 知 りたかったのです。「《 赤 :この 六 軒 島 に19 人 以 上 の 人 間 は 存 在 しない》!」(ベアト)※ 最 大 でも18 人 しかいないということです。 実 際 には16 人 しかいませんが、18 人 より 少 ないため、OKです。■ 儀 式 の 開 始 10 月 5 日 ( 日 )0 時 00 分 ■「 紗 音 。お 館 様 が 至 急 、 書 斎 へ 来 るようにとの 仰 せだ。 急 ぐぞ」( 源 次 )「……え? は、はい、かしこまりました…! 一 体 、 何 事 なの…?」( 紗 音 )16


「 南 條 は 全 員 の 死 亡 を 確 認 。ただし 誤 診 率 の 否 定 は“ 悪 魔 の 証 明 ”により 不 可 能 。……つまり、 誰 かが 生 きているのを 南 條 が 見 逃 した 可 能 性 をゼロにすることはできません」(ロノウェ)※ 部 屋 の 配 置 から、 窓 を 破 って 入 れるのは1 階 客 間 のみです。その 後 、 封 印 しておく 鍵 で、だんだん 上 に 親 族 を 誘 導 します。その 間 に 死 んだフリをしていた 紗 音 は 嘉 音 の 扮装 をして 礼 拝 堂 へ 移 動 し、 窓 から 入 って 施 錠 するか、もしくは 扉 の 施 錠 が 内 部 から 可 能 であれば、 施 錠 し、 嘉 音 として 死 んだフリをします。 南 條 は 共 犯 です。「よっしゃ、ここで 叩 くぜ、 復 唱 要 求 だッ!!“ 被 害 者 6 人 は 全 員 死 亡 している”!!」( 戦 人 )「ふぇッ?! おわったったったぁ!! くっくくく、 済 まぬ 済 まぬ、いいぞ 応 じるぞ。《 赤 : 金 蔵 、 源 次 、 紗 音 、 嘉 音 、 郷 田 、 熊 沢 の6 人 は 死 亡 している!》」(ベアト)※ 紗 音 と 嘉 音 は 人 格 死 です。「 続 けて 復 唱 要 求 ! 6つの 部 屋 には 誰 も 隠 れていない! 俺 たちが 認 識 していない 人 物 の 存 在 を 否 定 してみせろ!」( 戦 人 )「 応 ずる。《 赤 :6つの 部 屋 には 誰 も 隠 れていない!》」(ベアト)「くっくっくっく! 良 かろう 良 かろう、 赤 き 宝 刀 にて 切 り 伏 せよう!《 赤 :6 人 は 即 死 であった!》 即 死 とはつまり、 攻 撃 を 受 けて 即 座 に 行 動 不 能 になったという 意 味だ。まぁ、 完 全 な 意 味 での 死 亡 には 数 秒 、もしくは 数 分 をかけたかもしれん。だが 何 れにせよ、 自 らの 意 思 で 何 かの 行 動 を 取 ることは 完 全 に 不 可 能 であった。その 意 味 において、 即 死 と 断 言 できる!」(ベアト)※ 金 蔵 は 病 の 攻 撃 を 受 けて 即 座 に 行 動 不 能 になったのです。「……あ、 赤 き 真 実 にてそのチェックを 斬 る!!《 赤 :6 人 はトラップで 殺 されてはいない》!」(ベアト)「トラップの 定 義 は?!」( 戦 人 )「ぷっくっく…。 仕 掛 け 人 が 直 接 関 与 することなしに 殺 人 を 遂 行 できる 全 ての 仕 掛 け、という 定 義 でよろしいかと 思 いますよ」(ロノウェ)「あぁ!! だが、 自 殺 なんて 甘 い 言 い 方 じゃ 追 い 詰 められねぇぜ!! ベアト、こいつで 詰 めだ!! 復 唱 要 求 ッ!!“6 人 は 全 員 他 殺 である”!!」( 戦 人 )「…ま、 待 て! いやその、…… 言 う 言 う! 望 み 通 り 赤 を 行 使 するぞ!《 赤 :6 人 は 誰 も 自 殺 していない!》 どうだ?! これで 満 足 かッ…?! くっくくくかっかかかかか! 切 り 返 したぞ、 切 り 返 したッ!!!」(ベアト)「…… 要 求 した 復 唱 が 改 ざんされていますよ。 誤 魔 化 されないように」(ワルギ)「そ、そうか!“6 人 全 員 他 殺 ”とは 言 ってない。“6 人 全 員 自 殺 に 非 ず”とこいつは 言 い 換 えた! ということは、 他 殺 でも 自 殺 でもない 人 間 が 混 じっているということだ」( 戦 人 )※ 病 死 した 金 蔵 のことです。■ 黄 金 郷 の 鍵 10 月 5 日 ( 日 )09 時 00 分 ■「 鮎 は 香 りが 良 いことから 香 魚 とも 呼 ばれるとか。 私 は 食 べたことがありませんが、 塩 焼 きにするととてもおいしいそうですよ」( 夏 妃 )「なんや、 夏 妃 さん! 鮎 の 塩 焼 き、 食 ったことあらへんのか! うまいでぇ! 今 度 、ご 馳 走 したるわ!」( 秀 吉 )「 庶 民 の 料 理 だ。 君 の 口 には 相 応 しくない」( 蔵 臼 )※ 蔵 臼 は 夏 妃 には 上 品 であって 欲 しいようです。「でしょう?! ……でも、みんなも 知 っての 通 り、お 父 様 は 真 里 亞 のことを 毛 嫌 いしてて、ほとんど 言 葉 を 交 わしたこともない。それに、お 父 様 はかつて 真 里 亞 に 全 然 違 う名 前 をつけるように 言 っていたの。それを 私 が 勝 手 に 真 里 亞 にした。お 父 様 はそれをとても 怒 っていたわ。……その 経 緯 を 考 えると、 財 産 や 家 督 を 引 き 継 ごうという 大 切 な碑 文 に、 真 里 亞 の 名 を 引 用 するとはとても 思 えなくて」( 楼 座 )※この 発 言 は 結 構 痛 いのですが、ゲーム 盤 ですのでヤス 補 正 が 入 っていると 考 えられます。「あぁ、カモメカモメカチンカチン、みたいなヤツさ。“カ”を 抜 いたらなぁに? みたいな。 夏 妃 さんは 育 ちがいいから 知 らねぇだろ」( 留 弗 夫 )「…カモメカモメ?? “カ”を 抜 くと、え? ???」( 夏 妃 )「よしなさい。 君 には 相 応 しくない 品 のない 遊 びだ」( 蔵 臼 )※ 蔵 臼 は 夏 妃 には 上 品 であって 欲 しいようです。■ 戴 冠 式 10 月 5 日 ( 日 )10 時 00 分 ■迷 わず、 灯 りのスイッチを 入 れると、まるで 炭 鉱 か 何 かを 思 わせるような 無 骨 な 灯 りが 点 々とつき、 地 下 へ 伸 びる 階 段 をぼんやりと 浮 かび 上 がらせる…。 灯 りがついたはずなのに、むしろその 薄 暗 さを 引 き 立 てているようで 不 気 味 だった。 灯 りのスイッチ 以 外 にも、 開 閉 と 書 かれたスイッチもあった。…これで、 多 分 、 開 け 閉 めができるのだろうが、もし 万 が 一 、 開 けるの 方 が 壊 れていたら、 私 はこの 不 気 味 な 地 下 に、 永 遠 に 閉 じ 込 められてしまうかもしれない…。だから 私 ( 絵 羽 )は、とりあえず、 開 閉 のスイッチには 触 れず、…… 銃 を 構 え 直 して、ゆっくりと 階 段 を 下 りていく。※ 絵 羽 視 点 の 話 になっています。また、 扉 が 開 いていたということは、 誰 かが 絵 羽 が 来 る 前 に 閉 める 暇 もなく 出 入 りした 可 能 性 があります。「……… 何 百 億 円 の 黄 金 があろうとも。 殺 人 の 罪 を 犯 すリスクには、 割 が 合 わないわ。むしろ、それをダシにされて、 蔵 臼 兄 さんたちに 搾 り 取 られるのがオチね」( 楼 座 )「 同 感 よ。……ここに 現 れたのが、 兄 さんや 留 弗 夫 であるくらいなら、……あんたであったことは 不 幸 中 の 幸 いかもしれない。… 私 は 兄 弟 で、あんたを 一 番 信 用 してるもの」( 絵 羽 )※この 時 点 で 楼 座 を 殺 すとアリバイのない 絵 羽 に 嫌 疑 が 掛 かりますし、 死 体 を 移 動 させるのも 大 変 です。 爆 弾 の 存 在 を 知 り、 親 族 の 皆 殺 しを 絵 羽 が 計 画 していたとしても、この 時 には 無 理 なのです。「うむ。 妾 はそれを 認 めようぞ。 今 やこの 積 み 上 げられた 黄 金 の 全 て、 右 代 宮 家 の 全 てをどうしようもそなたの 自 由 ぞ。 何 しろ、 今 この 瞬 間 より、そなたはもう 右 代 宮 家 の当 主 なのだから」(ベアト)「ほ、…… 本 当 に? 本 当 よね? 本 当 よね?!」( 絵 羽 )「 興 奮 するでない。 妾 はそなたを 率 直 に 褒 めておる。その 証 に、そなたにこれを 授 けよう」(ベアト)ベアトリーチェは 自 らの 指 にはめていた 指 輪 を 抜 き 取 ると、それを 絵 羽 に 突 き 出 す。 恐 る 恐 るそれを 受 け 取 ると、……それが 指 輪 であることがわかった。「……こ、……これ………、まさか…………」( 絵 羽 )「うむ。 金 蔵 より 返 還 された、 右 代 宮 家 当 主 の 証 である 黄 金 の 指 輪 だ。 今 よりそれはそなたのもの。それを 指 にはめ、 兄 弟 たちの 前 で 高 々と 掲 げるが 良 い。そなたが 今 や 右代 宮 家 の 家 督 を 継 いだことに、 誰 も 疑 いを 挟 めぬであろうぞ。くっくっくっく。 我 こそは 黄 金 の 魔 女 ベアトリーチェ! 右 代 宮 家 顧 問 錬 金 術 師 ! 金 蔵 との 契 約 に 従 い、そなたに 今 こそ 全 てを 受 け 継 ごうぞ。… 金 蔵 に 託 した 全 ての 黄 金 。そしてそれにより 築 き 上 げた 全 ての 財 産 。そして 右 代 宮 家 の 家 督 と 名 誉 。そして、 我 が 力 と 無 限 の 魔 女 の 称号 をそなたに 引 き 継 ごう。…… 先 代 に 従 い、 称 号 と 共 に 妾 の 名 、ベアトリーチェもそなたに 譲 り 渡 す。…… 今 こそそなたが 名 乗 るが 良 かろう!」(ベアト)19


絵 羽 は 立 ち 眩 みのようにふらふらと 立 ち 上 がり、ベアトリーチェの 手 より 黄 金 の 杖 を 受 け 取 る。その 手 はかすかに 震 えていた。その 杖 を 握 った 途 端 。…… 彼 女 は 眩 き 黄 金 の輝 きに 包 まれた。 自 らの 内 より 黄 金 の 蝶 が 湧 き 出 すかのよう。 黄 金 の 魔 女 を 継 承 した 瞬 間 に、 絵 羽 は 自 らの 魂 の 奥 底 から 何 かが 生 まれ 変 わるのを 感 じた。それは 一 言 で 例 えるならば、エネルギー。 黄 金 色 をしたエネルギー。まるで、それまでの 自 分 が 生 まれた 時 からずっと 寝 惚 けていて、…… 生 まれて 初 めて 目 を 覚 ましたかのような 覚 醒 感 。 瞳の 奥 にある 本 当 の 瞳 が、 生 まれて 初 めて 目 を 覚 ますのを 感 じた。「こやつらは、 妾 に 仕 えし 家 具 たち。 継 承 祝 いに、そなたに 遣 わそう。……そなたには、 黄 金 の 魔 女 を 継 承 した 後 、 自 らの 復 活 の 儀 式 を 執 り 行 ってもらわねばならぬ。その儀 式 において、 煉 獄 の 七 姉 妹 たちは 欠 かせぬ 役 割 を 果 たす。…… 曲 者 揃 いだが 役 には 立 つぞ。 手 足 とするが 良 い」(ベアト)※この 場 面 で、 当 主 の 指 輪 、 黄 金 、 爆 弾 、 煉 獄 の 七 杭 、 貸 し 金 庫 のキャッシュカードが 絵 羽 に 受 け 継 がれたわけですが、 爆 弾 に 関 しては 見 てわかるものではないため、 対 面にせよ、 手 紙 にせよ、ベアトと 絵 羽 の 間 で 情 報 の 伝 達 が 行 われたことがわかります。■ 新 しき 魔 女 10 月 5 日 ( 日 )10 時 30 分 ■「…お 願 いだから 静 かにして…。どうしたらあなたは 泣 き 止 むの? どうしたらあなたはママの 言 うことを 聞 いてくれるの?」( 楼 座 )「………」( 真 里 亞 )ぴたりと。 真 里 亞 が 不 自 然 なくらいに 泣 き 止 んだ。……すると 振 り 返 り、ぽつりと 言 った。「………… 真 里 亞 の 薔 薇 を 見 たら、ちゃんと 明 日 まで 静 かにしてるよ」( 真 里 亞 )「 本 当 ?」( 楼 座 )「うん。… 薔 薇 庭 園 に 行 って、 真 里 亞 の 薔 薇 を 見 たら、もう 大 人 しくする」( 真 里 亞 )「………………」( 楼 座 )「 本 当 だよ、ママ」( 真 里 亞 )「………………………………」( 楼 座 )※ベアトはこの 時 点 では 儀 式 を 止 めていますが、ベアトも 第 二 の 晩 の 犠 牲 者 は 楼 座 と 真 里 亞 の 予 定 だったのでしょう。ですから、あらかじめ 真 里 亞 に 楼 座 を 薔 薇 庭 園 に 誘 い出 すように 指 示 していたのです。 絵 羽 はそれをベアトから 教 えられていた 可 能 性 があります。「これ、 愚 痴 るでない…! 黄 金 の 魔 女 の 道 は 一 日 にしてならずだ。そなたとて、 第 十 の 晩 を 終 えるまでは 半 人 前 よ…。 今 は 黙 って 妾 の 指 導 に 従 うのだ。… 良 いな……?!」(ベアト)※これは 別 にベアトが 絵 羽 に 殺 人 を 引 き 継 げといったわけではなく、 絵 羽 が 殺 人 を 引 き 継 いでしまったが 為 の、 後 付 けの 幻 想 描 写 だと 考 えられます。■ 生 贄 の 予 告 10 月 5 日 ( 日 )11 時 00 分 ■「 留 弗 夫 が 薔 薇 庭 園 中 央 にて、 楼 座 、 真 里 亞 の 遺 体 を 確 認 。その 後 、ゲストハウスに 戻 って 応 援 を 呼 び、 両 名 をゲストハウスに 運 び 込 みました。 南 條 の 検 死 を 信 頼 できるならば、 楼 座 の 死 因 は 延 髄 部 への 柵 の 先 端 部 分 による 刺 突 。 真 里 亞 については 素 手 による 絞 殺 と 考 えられます。ただし“ 悪 魔 の 証 明 ”により 誤 診 率 は 否 定 できません」(ロノウェ)「…… 妾 が 赤 にて 語 る。《 赤 : 楼 座 と 真 里 亞 は 死 亡 した》。《 赤 : 死 因 は 南 條 の 見 立 て 通 りだ》」(ベアト)「 赤 で 否 定 を 行 います。《 赤 : 楼 座 と 真 里 亞 の 二 人 は 他 殺 です》」(ロノウェ)また、 現 場 には 楼 座 が 持 っていた 銃 が 残 されていた。わざわざ 残 されていたのだから、 何 かの 罠 ではないかとみんな 疑 ったが、 秀 吉 が 火 掻 き 棒 を 器 用 に 使 って 空 撃 ちを 試 してみたところ、 問 題 なく 発 砲 できた。その 結 果 、 装 填 されている5 発 全 てが 問 題 なく 発 砲 できた 為 、それには 再 び 弾 丸 が 装 填 され、 成 人 男 性 で 唯 一 武 装 していなかった 秀 吉に 渡 されることとなった。しかし、5 発 を 発 砲 できてしまったことは、ある 疑 心 暗 鬼 を 生 み 出 すことになった。このショートバレルのウィンチェスター 銃 の 装 弾 数 は5 発 。つまり 楼 座 は、1 発 も 発 砲 しなかったのだ。にもかかわらず、 彼 女 らの 死 因 はおそらくは 素 手 によるもの。これが 意 味 するところは、 顔 見 知 りによる 犯 行 の 可 能 性 である…。※ 単 純 な 事 故 の 可 能 性 もありますが、 絵 羽 なら 素 手 でも 楼 座 くらい 殺 せますので、 元 から 殺 す 気 だった 可 能 性 もあります。「そうよ。その 夢 を 持 ち 続 けてるから、 私 はこの 歳 のままで 生 き 永 らえているの。……あなたはその 夢 を、 大 人 になることで 捨 てたわ。……いくら 待 てども、 時 計 を 持 ったウサギなど 訪 れないし、ハンプティダンプティにも 会 えはしない。もちろんトランプの 国 に 招 かれたりも 絶 対 にない。あなたはそう、 諦 めてしまったから、 大 人 になったのよ。だからもう、 魔 女 になりたいなんて 思 わない。…それが 本 当 の 自 分 の 夢 であったことも 忘 れてしまったの。」(エヴァ)※『マザーグース』の 登 場 人 物 ですが、『 鏡 の 国 のアリス』にも 登 場 します。彼 らには 与 り 知 れないことだが、ベアトは 赤 で、 彼 ら6 人 の、…いや、 今 回 、すでに 出 ている 犠 牲 者 全 員 の 死 亡 を 宣 言 している。 全 てが 茶 番 で、 犠 牲 者 たちは 実 は 生 きているという 淡 い 夢 は、…… 気 の 毒 だが、ありえないのだ…。※EP8の“ベルンの 出 題 ”でわかることなのですが、 赤 字 による 死 亡 宣 告 は、 出 された 瞬 間 での 死 亡 を 確 定 します。「………… 何 てことを……! あれだけの 莫 大 な 黄 金 なのよ?! 楼 座 たちに 分 け 前 をあげたって、まったく 問 題 はなかったでしょうに…!」( 絵 羽 )「あるわよ。…あれは 右 代 宮 家 の 当 主 だけが 引 き 継 げる 黄 金 なの。だからこそそれは、 全 て 丸 ごと 当 主 の 栄 誉 そのものなの。……それにわずかほどでも 傷 をつけることは、この 私 、 新 しき 黄 金 の 魔 女 、ベアトリーチェが 絶 対 に 許 さないわ」(エヴァ)「…あなたは 魔 女 の 碑 文 通 りに 殺 人 を 続 けるつもりなの…? まさか、あと5 人 も 人 殺 しを 続 けるつもりなの…?」( 絵 羽 )「えぇ。その 面 倒 な 儀 式 を 終 えないと、 私 の 魔 女 としての 力 は 完 全 なものにならないらしいの。……ねぇ“ 私 ”。…この 魔 女 の 力 は 本 当 にすごいわ。 私 たちが 妄 想 してきた全 てが、 本 当 に 実 現 できる。 夢 が 夢 でなくなる 力 なの…! この 力 を 知 ってしまったら、もう 魔 女 はやめられない。 儀 式 を 完 全 に 終 えて 私 の 力 が 完 全 なものになれば、きっとそれをあなたにも 教 えてあげられるわ。くすくすくす、くっくくくくくくくくく!」(エヴァ)「…… 大 丈 夫 、 安 心 して? 残 る5 人 の 生 贄 については、あんたの 家 族 は 外 してあげるわ。そうね、 留 弗 夫 、 霧 江 、 蔵 臼 、 夏 妃 。…あとは 老 いぼれの 南 條 なんかどう? ちょうどいいわ、この5 人 を 殺 すわね。くすくす、あなただけに 明 かす 殺 害 予 告 ってところかしらぁ。くすくすくすくす!!」(エヴァ)※ 絵 羽 とエヴァのやり 取 りは 絵 羽 の 心 の 葛 藤 を 意 味 するのかもしれません。「む、…そうか…? …しかしだな、 篭 城 を 崩 すのはなかなかに 難 しいぞ…?」(ベアト)「すでに 手 は 打 ってあります。きっと 引 っ 掛 かるはずです。 頭 のいいヤツなら、むしろ 必 ず」(エヴァ)※これも 後 付 けの 幻 想 描 写 だと 考 えられます。 霧 江 を 引 っ 掛 けるために 吸 殻 を 残 したわけではなく、 霧 江 に 気 づかれてしまったのです。■ ホールの 死 闘 10 月 5 日 ( 日 )13 時 00 分 ■留 弗 夫 と 霧 江 、そして 秀 吉 の3 人 は、それぞれに 勇 ましい 言 葉 を 残 し、ロビーを 出 て 行 くのだった…。 霧 江 は 預 かったマスターキーで 玄 関 を 開 錠 する。※この 時 点 まではベアトも 屋 敷 に 入 れませんでした。20


「…… 失 礼 ながら。 先 代 さまより、 不 必 要 な 残 酷 なる 殺 害 は 控 えるようご 指 示 を 賜 っております。そして、 第 四 の 晩 以 降 は、 生 贄 の 捧 げ 方 に 作 法 がございます。それには 煉獄 の 七 姉 妹 の 力 を 借 りねばなりません」(ロノウェ)※ 碑 文 と 煉 獄 の 七 杭 の 関 連 は 絵 羽 が 自 分 で 気 がついたのかもしれません。 道 具 一 式 がまとめて 置 いてあれば、 使 用 法 を 推 測 するのは 容 易 でしょう。3 人 はすでに 厨 房 に 到 着 し、 食 料 を 集 めていた。 毒 が 混 ぜられているかもしれない 可 能 性 も 考 え、 魅 力 的 な 野 菜 や 果 物 の 類 を 諦 め、 安 全 な 缶 詰 だけをダンボールまるまる 一箱 分 集 めた。かなりの 重 量 だが、 台 車 に 積 めば 何 とか 運 べる。これだけあれば、10 人 なら 明 日 の 朝 食 まで 余 裕 が 持 てる。 船 を 待 つにはそれで 充 分 だ。 男 2 人 は 護 衛 役 に 専念 のはずだったが、この 重 さの 荷 物 では 台 車 であっても 霧 江 には 辛 い。 力 自 慢 を 自 称 する 秀 吉 が 台 車 役 を 代 わり、 護 衛 役 は 留 弗 夫 夫 妻 が 勤 めた。 留 弗 夫 は 勝 手 口 の 扉 の 鍵 を開 けようとする。 厨 房 への 荷 物 の 運 び 込 みは、 家 人 たちが 出 入 りする 屋 敷 内 を 決 して 通 りはしない。だから、 勝 手 口 の 外 には 搬 入 用 のスロープもあるだろう。きっと 台 車 はここから 出 られる。※ 本 当 は 霧 江 でも 運 べたのでしょうが、 秀 吉 から 銃 を 奪 うために、 演 技 をしたと 考 えられます。先 制 射 撃 は 留 弗 夫 。しかし、その 銃 弾 が 着 弾 するより、ベルフェゴールが 留 弗 夫 の 背 後 を 取 る 方 が 早 い。そこには 腕 より 伸 びる 紫 色 の 奇 跡 を 振 り 上 げる 姿 が。しかし、その腕 が 留 弗 夫 の 首 を 撥 ねるより、 信 じられないことに、 留 弗 夫 が 背 後 に 銃 を 振 る 方 が 早 い。ソードオフ 銃 を 片 手 でリロードするアクションからそのまま、 銃 口 が 背 後 へ 伸 びていた。それはぴったりとベルフェゴールの 胸 元 に 突 きつけられている…。チン、カランコロン…! それはリロードで 排 莢 された 空 薬 莢 が 今 更 壁 を 叩 く 音 だった。つまりそれはすでに 次 弾 装 填 が 終 了 しているということ。 振 り 返 りもせず、ベルフェゴールの 胸 元 に 完 全 に 銃 を 突 きつけている 留 弗 夫 はニヤリと 笑 う。※EP7で 留 弗 夫 がこの 銃 の 扱 いに 長 けていたことが 明 らかになっています。ですから 少 なくとも 銃 の 操 作 に 関 しては 幻 想 描 写 ではないと 考 えられます。「……………………お 前 、……まさか、 絵 羽 なのか。」( 留 弗 夫 )「それはかつて 私 の 名 だった。でも 今 は 違 うわよ、 留 弗 夫 。」(エヴァ)「 言 わなくてもわかってるさ。 黄 金 の 魔 女 、ベアトリーチェだって 言 うんだろ?」( 留 弗 夫 )「ふっふふふふふふ、あっははははは! どうしてわかったの?」(エヴァ)「…… 楼 座 が 殺 された 時 から、 想 像 はついてたさ。……… 楼 座 、 許 しな。お 前 の 地 獄 に、お 前 の 大 嫌 いな 姉 を 送 っちまうことをよ…!!」( 留 弗 夫 )※ 留 弗 夫 は 楼 座 と 真 里 亞 を 殺 したのは 絵 羽 だと 見 当 をつけていたようです。「そ、そういう 問 題 ではないというに…! あまりに 品 がなかったり 残 酷 だったりするとだな、…その、 気 を 悪 くする 者 もおるかもしれぬし…」(ベアト)「…………………………。…… 先 代 さまがどこかで 戦 っているとかいう、ゲームの 相 手 、ですか? ロノウェに 聞 きました」(エヴァ)「……あ、あのお 喋 りめ。………まぁ、 正 直 に 言 うとそういうわけだ。ちょっと 目 に 余 るとその、… 抗 議 を 受 けてな?」(ベアト)「 先 代 さまにわざわざ 伝 言 などさせず、 直 接 抗 議 にいらっしゃればいいのに。… 臆 病 な 方 です」(エヴァ)「………こことはその、 異 なる 世 界 の 住 人 だからの。 私 を 介 さねばならぬのだ。まぁとにかくだな、」(ベアト)「……………………。……ということは、その 方 は 私 に 何 か 干 渉 したくても 出 来 ない。そして 私 も 干 渉 したくても 出 来 ない。それくらいに 遠 い 世 界 の、 無 縁 な 方 との 認 識 でよろしいですか?」(エヴァ)「う、うむ。…… 例 えるならとても 近 い2 本 の 平 行 線 の 世 界 とでも 言 おうか。とても 身 近 な 世 界 なのだが、 平 行 線 ゆえに2 本 の 線 が 交 わることは 決 してない。そんな 世 界 と、とりあえずは 認 識 してくれれば 良 い」(ベアト)「………… 先 代 さま。とても 不 思 議 に 思 うことがあります。…どうして 先 代 さまは、その 別 世 界 の 方 とゲームをして、 魔 女 だと 認 めてもらわなければならないのですか?」(エヴァ)「それはだな、… 全 ての 人 間 に 魔 女 の 存 在 を 認 めさせることが、 完 全 なる 支 配 に 繋 がるからである。ひとり 頑 固 者 がおってな、どうあっても 妾 を 魔 女 とは 認 めんのだ」(ベアト)「 先 代 さまは、どうやらその 何 者 かに 認 めてもらえないと 魔 女 になれないようですが、 私 は 違 います。 誰 に 認 められずとも、もう 立 派 な 魔 女 です。……… 先 代 ということで、あなたに 形 式 的 な 敬 意 は 奉 げますが、それは 私 の 好 意 であって 義 務 ではありません。……もう 私 は、あなたの 助 言 など 求 めていないし、これからどうすればいいか、どう 遊べばいいかはっきりわかってます。………だから13 人 殺 しの 儀 式 までは、あなたへの 最 後 の 敬 意 だと 割 り 切 って 行 ないます。しかし、そのやり 方 や、その 後 のことについては、あなたに 口 出 しされる 謂 れはまったくありません。………………そういうことでひとつ、よろしくお 願 いします」(エヴァ)※エヴァはあくまで“ゲーム 盤 における 魔 女 ”であるため、 上 層 世 界 には 関 われないようです。そもそも“エヴァ”は“ゲームマスターのベアト”が 殺 人 を 続 ける 絵 羽 を 幻想 修 飾 しただけの 存 在 です。このベアトは“ 駒 のベアト”であるため、それを 理 解 していないのだと 考 えられます。「…あなたには、あの 子 と 大 きな 違 いがひとつあります。あの 子 はすでに 魔 女 かもしれない。もちろんあなたも 魔 女 です。ゲーム 盤 の 上 の 世 界 では。……しかし、ゲーム 盤の 外 の 世 界 で 魔 女 だと 認 められるには、ゲームの 対 戦 者 である 戦 人 くんに 認 めてもらわなくてはならない。……あなたはそれを 理 解 してゲームを 始 めたはずです」(ワルギ)「…… 魔 女 である 証 拠 を 暴 風 のように 見 せつけ、 妾 を 拒 否 する 気 持 ちを 吹 き 飛 ばし 屈 服 させれば、……… 妾 を 魔 女 と 認 めると 思 った。… 前 回 、うまく 行 き 掛 けたので、もう一 息 だと 思 ったのだ…。わ、… 妾 は、これからどうすればいいのだ」(ベアト)「あなたが 自 分 で 考 えるのです。…… 幸 いにも、あなたはもうゲーム 盤 の 駒 を 降 りて、 新 しき 魔 女 に 委 ねました。じっくりと 自 らについて 思 案 する 時 間 があるでしょう」(ワルギ)「………… 戦 人 はもう 敵 意 の 塊 じゃねぇかよぅ。 魔 女 は 認 めない、そして 妾 も 認 めない。……それで、どうやって 戦 人 に 認 めてもらうんだよゥ…。 北 風 で 駄 目 なら、… 今 からのこのこ 太 陽 で 照 らせって 言 うのか…? この 妾 が、 今 更 ……」(ベアト)※ゲーム 盤 の 駒 である“ 駒 のベアト”にとっての 目 的 は、 戦 人 に 自 分 を 魔 女 と 認 めさせることなのでしょうが“ゲームマスターのベアト”の 目 的 は、 戦 人 に 約 束 を 思 い 出 してもらうことです。ですから、 何 かと 妨 害 や 干 渉 が 入 るのでしょうし“ 駒 のベアト”は“そのように 設 定 された 駒 であるため” 戦 人 に 自 分 魔 女 だと 認 めさせたら、 自 分 はゲーム 盤 の 外 の 世 界 でも 魔 女 になれると 本 気 で 信 じているのでしょう。■ 魔 女 の 定 義 10 月 5 日 ( 日 )13 時 30 分 ■銃 弾 は? ……… 秀 吉 のベストの 胸 部 が、じわりと 赤 い 染 みを 広 げる。 銃 口 に 対 し 背 を 向 けていたのに、… 銃 弾 は 秀 吉 の 胸 部 に 打 ち 込 まれていた。※これはこの 場 面 が 幻 想 修 飾 されていることをプレイヤーにわからせるための 演 出 だと 思 われます。… 留 弗 夫 たちがゲストハウスを 出 てから、すでに30 分 は 経 過 していた。その 時 、 廊 下 から 勢 い 良 く 開 く 扉 の 音 と、 絵 羽 の 金 切 り 声 が 聞 こえてきた。…その 声 は 秀 吉 の 名 を呼 び 続 けている。…… 高 熱 にうなされた 彼 女 が、 何 か 悪 い 夢 でも 見 て 夫 の 名 を 呼 んでいるように 見 えた。……その 騒 ぎが 聞 こえたのだろうか。ロビーの 扉 が 細 く 開 き、2 階に 行 っているはずの 戦 人 たちが 顔 を 覗 かせる。 蔵 臼 、 夏 妃 、 絵 羽 。そして 戦 人 、 譲 治 、 朱 志 香 、 南 條 。…ゲストハウスの 全 ての 人 間 が、 玄 関 に 集 い、 現 状 を 把 握 した。※ 往 復 時 間 と 殺 害 時 間 、 杭 を 刺 す 時 間 を 考 えると、30 分 はかなり 際 どい 時 間 です。 煉 獄 の 七 杭 はあらかじめ 準 備 していたのでしょう。21


「……… 戦 人 、 絵 羽 、 譲 治 、 南 條 の4 人 は 屋 敷 のホールにて、 留 弗 夫 、 霧 江 、 秀 吉 の3 人 の 遺 体 を 発 見 」(ロノウェ)「……… 第 四 から 第 六 の 晩 ってことか? なら 死 体 には、 額 、 胸 、 腹 にそれぞれ、 例 の 悪 魔 の 杭 が?」( 戦 人 )「はい。…… 留 弗 夫 の 額 に 一 本 。 秀 吉 の 胸 に 一 本 。そして 霧 江 の 腹 部 に 一 本 、 悪 魔 の 杭 が 打 ち 込 まれています。3 人 には 争 ったか、あるいは 逃 げ 回 るかしたと 思 われる 着 衣の 乱 れがあります。3 人 の 遺 体 は 寄 り 添 ってはおらず、 犯 人 と 遭 遇 後 、ある 程 度 の 抵 抗 を 試 みたと 推 定 されます」(ロノウェ)※ 杭 以 外 の 細 工 をする 時 間 があったとは 考 えられず、 殺 された 時 の 状 況 そのままのはずです。「…… 今 、 俺 は 漠 然 と 思 ったことがある。………どうして 俺 がお 前 と、こんなおかしなゲームを 延 々と 続 けてるのかだ。……これは 俺 を 屈 服 させるためのゲームじゃない。……お 前 が、 本 当 の 意 味 で、 無 限 の 魔 女 に 認 められるための 試 験 ではないのか、ってな」( 戦 人 )「…し、……… 知 らぬわ。… 妾 がそなたにゲームを 申 し 込 んでいるのはその、…… 単 なる 暇 潰 しだ…。 誰 の 思 惑 でもないわ」(ベアト)「 俺 は 今 、ワルギリアから 魔 女 の 定 義 を 聞 いた。それによるならばベアト。お 前 は 魔 女 ですらない。その 修 行 の 途 中 で、 自 らの 力 を 誤 解 した 見 習 いってことになる。……これは 魔 女 と 人 間 の 戦 いのはず。ならば 魔 女 でないお 前 に、 俺 の 相 手 としての 資 格 はない。………わかるな?」( 戦 人 )「…… 妾 がまだ、………… 見 習 い 風 情 だと、…… 申 すか……。ならば、 妾 はいつ、そなたの 対 戦 相 手 だと 再 び 認 められるのか。……いつ、このゲームを 再 開 できるというのか」(ベアト)「………………さぁな。…それは 少 なくとも、 今 じゃない。……お 前 が 俺 の 言 った 話 をちゃんと 理 解 出 来 て、 本 当 の 魔 女 になった 時 。… 俺 はお 前 を 再 び、ゲームの 対 戦 相 手だと 認 めるだろうよ」( 戦 人 )「そ、そのような 抽 象 的 な 言 い 方 ではわからぬ…。どうすればお 前 の 許 しを 乞 えるのか、はっきりと 聞 かせよ…」(ベアト)「いいや、これで 十 分 だ。あとはお 前 が 考 えろ。……… 俺 が 言 いたいのは 以 上 だ。… 理 解 ができないなら、ワルギリアやロノウェに 相 談 してみろ。…お 前 みたいなガキンチョは、まず 大 人 の 言 葉 に 耳 を 傾 けるところから 始 めやがれ。………ワルギリア。ゲームは 一 度 中 断 する。ロノウェが 代 行 を 降 りた 以 上 、あとはベアトが 対 局 者 として 相 応 しい 資 格 を 持 つのを 待 つしかない」( 戦 人 )「…… 了 解 しました。……ベアトが、その 資 格 を 得 たと 認 められるまで、ゲームを 対 局 者 不 在 のまま 進 行 させます。ベアトもそれでよろしいですね?」(ワルギ)※ゲーム 盤 で 行 われている“ 下 のゲーム”と、ゲーム 盤 の 上 位 世 界 でゲーム 盤 のゲームを 楽 しむ“ 上 のゲーム”、 同 時 進 行 している 二 つのゲームがあり、“ 上 のゲーム”を 中断 するということです。「…… 僕 は 下 に 行 って、もう 一 杯 、コーヒーをもらってくる。……うちの 母 さん、コーヒーの 淹 れ 方 にはこだわりがあるんだよ。みんなもお 代 わりはいるかい?」( 譲 治 )戦 人 くんと 朱 志 香 ちゃんは、 軽 く 首 を 横 に 振 る。 僕 はそれ 以 上 をしつこくせず、マグカップを 持 って 部 屋 を 出 た。廊 下 の 窓 にまで 全 て 鎧 戸 が 下 ろされている 為 、 廊 下 はとても 薄 暗 い。 一 応 、 南 條 先 生 の 部 屋 も 訪 れ、コーヒーのお 代 わりはいるかと 聞 いたが、こちらもいらないと 言 われてしまった。…… 母 さんの 本 格 的 な 淹 れ 方 のコーヒーは、どうも 一 般 受 けしないらしい。 一 度 、 紗 音 にその 淹 れ 方 で 飲 ませてあげたことがあったが、……おいしいけど、 少 し濃 いですね。と 言 われたことがあったような…。※ 譲 治 の 視 点 になっています。 部 屋 を 出 たところまでは 実 際 の 場 面 で、 南 條 の 部 屋 を 訪 れた 時 に 真 相 を 聞 かされ、 屋 敷 に 向 かったと 考 えられます。「……… 顔 を 洗 ってくるわ。…ごめんなさいね、 寝 ちゃってたわ。…… 戻 ってきたら、またコーヒーを 入 れるわね。……… 特 に 濃 い、 明 日 の 朝 まで 眠 気 が 来 なくなるようなやつを」( 絵 羽 )「うむ、 頼 む。…… 郷 田 の 淹 れるコーヒーより、お 前 が 淹 れるコーヒーの 方 が 私 の 好 みに 合 うからな」( 蔵 臼 )※ 睡 眠 薬 の 味 を 誤 魔 化 す 濃 いコーヒーを 作 る 言 い 訳 です。「 絵 羽 に 限 らん。…… 留 弗 夫 にも、 楼 座 にも。… 私 がした 兄 らしいことと 言 えば、それを 横 柄 に 語 り、 彼 らを 苛 めただけだ。……… 父 のようになりたくて、 私 なりに 必 死 だった。…だが、いつもそれは 及 ばず、そのはけ 口 を 彼 らに 向 けてしまった…。しかし、それは 言 い 訳 にならん。… 絵 羽 にも、 未 だ 傷 が 癒 えぬほどに、 深 い 心 の 傷 を 負 わせてしまっただろう。…… 悔 いているが、 今 更 それを 詫 びたところで、その 傷 が 癒 えるわけもない…」( 蔵 臼 )「……………もし、あなたとあなたのご 兄 弟 が 生 まれた 家 が、 右 代 宮 家 でさえなかったなら……。……もっともっと 普 通 な、 楽 しい 兄 弟 の 関 係 であったでしょうに…」( 夏妃 )「…それを 言 ってはならん…。……… 絵 羽 は 生 涯 、 私 を 憎 み 続 けるだろう。そしてその 資 格 がある。… 私 は、それを 甘 んじて 受 け 止 めるつもりだ。…… 絵 羽 、………すまん。……もちろん、 許 さなくていい…」( 蔵 臼 )※これが 蔵 臼 の 本 心 だったのでしょう。戦 人 はさっきから、 窓 を 開 け、 鎧 戸 を 開 けては 外 を 確 かめる 仕 草 をして、それを 次 々に 繰 り 返 していた。「………ん。…この 窓 は 静 かだな。…なるほど、この 窓 は 他 と 違 って 建 物 の 構 造 上 、 風 が 吹 き 込 まないわけか」( 戦 人 )「そのようですな…。こんなにも 外 は 風 雨 なのに、 雨 も 風 も 入 ってこないとは 不 思 議 な 気 持 ちです」( 南 條 )「 南 條 先 生 。… 今 、 窓 を 開 けた 時 、 音 を 感 じたかい?」( 戦 人 )「え? ……いえ、 気 にはなりませんでしたな…。よく 油 が 効 いてると 思 います」( 南 條 )「つまり。 誰 も 見 ていない 廊 下 の 窓 から、ひょろっと 抜 け 出 すことは 可 能 なわけだ。しかも、この 窓 なら 風 も 吹 き 込 まないから、 風 圧 でカーテンや 扉 が 音 を 立 てることもない。…… 静 かなもんさ」( 戦 人 )戦 人 は 身 を 乗 り 出 し、 下 の 地 面 を 見 る。… 譲 治 が 飛 び 降 りたかもしれない 跡 を 探 しているのだ。……しかし、 降 りしきる 雨 の 中 の 芝 生 には、 一 見 、そういう 痕 跡 は 残 っていないように 思 えた。「……こういう 窓 が、1 階 にもあるのかもしれない。 誰 にも 気 付 かれずに 表 へ 出 ることは 可 能 だぜ」( 戦 人 )「しかし 扉 は 愚 か、 窓 は 全 て 施 錠 されて 鎧 戸 まで 閉 まっていましたぞ…? 出 ることは 可 能 でも、 閉 めることは 不 可 能 だ…」( 南 條 )「 閉 められるぜ? こうやって、カチャンとな」( 戦 人 )戦 人 は、 何 を 当 り 前 なことをという 仕 草 で、 開 いた 窓 を 閉 め、 施 錠 する。「…………ま、……まさか、 戦 人 さんは……………」( 南 條 )「 最 後 に、 中 の 人 間 が 鍵 を 閉 めれば、こんな 密 室 は 朝 飯 前 だ」( 戦 人 )「し、しかしそれでは、………それでは、……おおおぉぉ……」( 南 條 )南 條 は 青 ざめながら 首 を 何 度 も 横 に 振 る。… 戦 人 が 口 にしたそれは、 想 像 するのも 恐 ろしいある 事 実 を 突 きつけているからだ…。「…… 俺 の 想 像 したトリックならな? しかし、こんなトリックを 使 えば、 怪 しまれる 人 物 は 極 めて 限 定 される」( 戦 人 )南 條 の 前 でそれを 口 にしたくないが、… 戦 人 とずっと 一 緒 にいた 朱 志 香 を 除 けば、…それが 出 来 るのは 南 條 と、… 絵 羽 しかいない。「わ、… 私 はそんなことをしませんぞ…! え、えぇ、 誓 ってもいい…!!」( 南 條 )「……となると、 絵 羽 伯 母 さんと 南 條 先 生 のアリバイ 合 戦 ってことになる。… 俺 たちは、 二 人 とも 怪 しんで、それぞれを 別 々に 監 禁 すればいいだけの 話 。……… 逆 に 言 えば、このトリックは、もっと 生 存 者 が 多 ければ 有 効 かもしれないが、これだけ 人 数 が 減 った 状 況 下 では、 大 して 有 効 ではないんだ」( 戦 人 )…いや、それどころか、 自 分 の 首 を 絞 める 可 能 性 だってある。……むしろ、 外 に 犯 人 がいるように 見 せ 掛 けるため、わざと 鍵 を 開 け 放 したり、 窓 を 破 ったりした 方 が 好 都 合なはずなのだ…。22


「…………もしこの 失 踪 劇 が、 今 日 の 昼 にでも 起 これば、 俺 は 自 信 満 々にこの 説 を 発 表 しただろうよ。…だが、この 段 階 に 至 っては 全 然 自 信 が 持 てないぜ。………… 何 なんだ、こいつは。… 一 体 何 を 意 味 してやがるんだ。………この“ 密 室 ”はよ……」( 戦 人 )※ 窓 が 開 いたままだと、 戦 人 たちが 目 を 覚 ました 時 、 絵 羽 たちが 下 から 上 がってきた 時 、すぐに 譲 治 の 不 在 が 疑 われ、 発 覚 します。 南 條 がそれを 避 けるために 施 錠 したと 考えられます。■ 魔 女 法 廷 10 月 5 日 ( 日 )18 時 03 分 ■絵 羽 伯 母 さんに 習 って、 俺 たちも 大 声 で 譲 治 の 兄 貴 の 名 を 呼 んだ 時 。… 絵 羽 伯 母 さんが 何 かを 見 つけ、 足 を 止 めた。そこは 客 間 の 扉 の 前 だった。「………これは………? な、 南 條 先 生 、ちょっと 来 てもらえるかしら……」( 絵 羽 )「な、 何 事 ですかな……」( 南 條 )大 人 たちから、 客 間 の 扉 などに、 不 気 味 な 魔 法 陣 が 書 かれている、という 話 は 聞 いていた。…… 血 を 想 起 させる 真 っ 赤 な 塗 料 で 書 きなぐられ、だらりと 滴 り 落 ちるように 描かれたそれは、 不 気 味 という 言 葉 で 言 い 表 す 他 がない。しかし、それは 朝 から 描 かれていたはずだ。……すでにそれを 見 ているはずの 絵 羽 伯 母 さんが、 改 めて 不 審 に 思 う 何があるのかと、 俺 と 朱 志 香 は 扉 を 凝 視 した…。「…… 確 かに、………こんな 数 字 が、 書 かれていた 記 憶 はありません」( 南 條 )「えぇ、なかったわ。…… 不 気 味 な 魔 法 文 字 みたいなのは 書 かれていたけど、 数 字 は 書 かれていなかった」( 絵 羽 )二 人 が 言 うには、 朝 の 時 点 では、 魔 法 陣 だけが 描 かれていたという。しかし、 今 そこの 魔 法 陣 には、その 上 辺 りに、8 桁 の 数 字 が 新 たに 記 されていた。07151129。… 何 の 意 味 があるのかわからないが、 何 を 思 い、この 数 字 を 記 したのか、 想 像 したくもない。 魔 法 陣 を 描 いたのと 同 じ 塗 料 だろうが、… 明 らかについ 最 近 、 記 されたものだ。魔 法 陣 の 部 分 と 乾 き 方 や 色 の 具 合 がまったく 違 った。※ 譲 治 を 殺 さざるを 得 なかったベアトが 書 いたと 考 えられます。「ま、… 魔 方 陣 、というものかもしれませんな。……ある 種 の 数 字 遊 びに 魔 除 けが 宿 るという 考 え 方 です。どの 列 を 足 しても 同 じ 数 字 になる、みたいなものを、 皆 さんも 見聞 きしたことがおありでしょう…。」( 南 條 )※ 例 えばこんなのです。2 9 47 5 36 1 8縦 、 横 、 斜 め、どの 列 を 足 しても“15”になります。「 視 力 を 失 った 人 間 って、 反 魔 法 力 も、 対 魔 法 抵 抗 力 もゼロになるんですって。つまり、 今 のあんたはアイソレーテッドポーン。 意 味 がわかるかしらぁ?」(エヴァ)※チェスの 用 語 です。 孤 立 したポーン、つまりただ 取 られるだけの 駒 です。「……んな、…… 何 ですと……?」( 南 條 )目 の 前 にいる 人 物 が 何 者 なのか、 南 條 には 理 解 できるわけもない。… 増 してや、 彼 女 が 何 を 口 にしたのか、さらに 理 解 できるわけもない。「……… 南 條 先 生 ? どうしたんです……?」( 朱 志 香 )目 の 見 えない 朱 志 香 は 声 だけでしか 状 況 がわからない。…でも、 南 條 が、 不 安 そうな 声 を 出 したのが 聞 こえた 為 、 何 か 良 からぬことが 起 こったのかと 身 を 硬 くした。「や、……やめてくれ……! 殺 さないでくれ…!! わしには 病 弱 の 孫 がおる…! ここでは 死 ねんのだ…! 頼 む、 見 逃 してくれ…ッ!! ヒイィ!!!」( 南 條 )「… 南 條 先 生 …? 南 條 先 生 ッ?!」( 朱 志 香 )朱 志 香 はベッドの 上 から、 呼 び 掛 けるしかない。… 声 の 加 減 を 聞 く 限 り、 南 條 は 廊 下 にいて、 何 者 かと 対 峙 しているのだ。そして 怯 えている。 彼 がたった 今 、 生 命 を 脅 かされているのは 間 違 いなかった。「よせ、やめろッ!! ヒィイイイイイィイイ!!!」( 南 條 )「 第 九 の 晩 に 魔 女 は 蘇 り、 誰 も 生 き 残 れはしない。くっひひひひひひひひひひひひひ!!」(エヴァ)魔 女 は 黄 金 の 杖 を 先 を 南 條 に 向 ける。… 何 をするつもりかわからなくても、 南 條 にはそれが、 自 分 の 命 を 奪 おうとしている 行 為 に 違 いないと 想 像 がついた。バンッ!という鋭 い 音 が 響 いた。※ 朱 志 香 が 聞 いた 南 條 の 声 は 現 実 なのでしょうが、 南 條 を 殺 したのはベアトで、エヴァは 幻 想 です。しかし、よく 知 るはずの 部 屋 は、 目 が 見 えなくなっただけで、 暗 黒 の 密 室 も 同 然 だ。 棚 か 何 かにぶつかってしまい、その 上 に 積 んであった 菓 子 缶 や 瓶 のようなものが 降 ってきて、 彼 女 の 頭 にぶつかる。… 今 の 彼 女 には、それを 防 ぐために 頭 を 守 ることすらおぼつかない。… 視 界 を 失 うだけで、 人 はここまで 無 力 なのかと 痛 感 する。もちろん、そんなことに 感 心 している 暇 はない。 彼 女 はとにかく 這 い 回 って、その 場 を 逃 げ 出 そうとするのだが、よくわからないモノに 次 々にぶつかり、 色 々なモノが 降 ってきてはぶつかって、まるで 部 屋 全 体 が 生 きていて、 彼 女 を 逃 がすまいと 意 地 悪 をしているように 感 じるのだった。※パニック 状 態 の 朱 志 香 に 一 人 で 部 屋 から 脱 出 するのは 不 可 能 です。「…………まさか、お 嬢 様 。…… 朱 志 香 を 助 けるおつもりですか。 危 険 です。」(ロノウェ)「わかっておる…。どうせ 助 けても、 黄 金 郷 の 扉 が 開 けば 魔 女 の 宴 の 慰 み 者 よ。……しかしそれでも、…あやつの 殺 し 方 に 比 べれば 数 段 慈 悲 深 い。… 魔 女 の 宴 は 恐 るべき 方法 にて 命 を 奪 うが、 二 度 は 奪 わぬ。 生 死 を 弄 ばぬ。…しかし、あやつは 違 う。 何 度 でも 殺 す。 面 白 半 分 で 殺 す! そこにはわずかほどの 慈 悲 もない。……… 妾 はせめて 朱 志香 を、そのような 残 酷 な 運 命 から 救 いたいと 思 う。」(ベアト)「…… 確 かに、それを 行 なうことは、 良 き 魔 女 として 讃 えられることでしょう。……しかし、 新 しきベアトリーチェさまは、すでにお 嬢 様 のことを 敵 視 なされています。…もう 一 度 姿 を 見 られることがあったなら、…… 今 度 は 逃 れる 術 はありませんよ?」(ロノウェ)「…………………………………。…… 譲 治 を 紗 音 に 会 わせた 時 。……… 妾 はようやく、 魔 女 とはどういうものなのか。そして 魔 法 とはどういうものなのかを 理 解 したのだ。……… 妾 は 魔 女 だ。 魔 女 であらねばならぬ。そして 戦 人 に 対 戦 相 手 だと 認 められ、…… 今 度 こそ 戦 人 に 魔 女 だと 認 めさせなければならぬのだ。……その 為 の 道 は 長 く 険 しいかもしれない。…しかし、 今 ここでその 一 歩 を 踏 み 出 さねば、…… 妾 は 魔 女 を 名 乗 れぬのだ。」(ベアト)「お 気 持 ちはわかりますが、どうやってお 救 いになるつもりです? 今 のお 嬢 様 の 身 に 使 える 魔 法 は 多 くありません。 紗 音 を 蘇 らせる 時 ですら、 譲 治 の 力 を 借 りたではありませんか。」(ロノウェ)「……うむ。…だからこそ、 朱 志 香 だけは 救 えるかもしれぬのだ。…… 今 、あやつは 嘉 音 に 助 けを 求 めている。……その 想 いの 力 を 借 りれば、 妾 の 魔 力 にてもう 一 度 、 冥 府の 扉 を 叩 けるかもしれない。」(ベアト)※ 譲 治 と 南 條 を 殺 したことで、ベアトの 心 臓 が 絵 羽 に 伝 わることはなくなったため、 猫 箱 を 守 ることができました。しかし、 朱 志 香 を 放 置 しておくと 証 拠 隠 滅 を 図 る 絵 羽 に殺 されることになります。 幸 いにして 朱 志 香 は 目 が 見 えなくなっているため、 嘉 音 のフリをすれば、 猫 箱 を 守 ったまま 朱 志 香 を 助 けることができます。 朱 志 香 がせめて 安 らかな 死 を 迎 えられるように、 絵 羽 から 逃 れられる 場 所 まで 誘 導 した。それを 幻 想 修 飾 したのが、 以 降 の 場 面 だと 考 えられます。23


ロノウェが 飛 ばした 黄 金 蝶 が 完 全 に 消 え 去 ってしまった 頃 、… 朱 志 香 は 客 間 に 辿 り 着 いた。 目 が 見 えていればすぐに 辿 り 着 けたはずの 場 所 でも、 今 の 朱 志 香 にとっては、 長い 長 い 冒 険 だった。「……さぁ、お 嬢 様 。 客 間 に 辿 り 着 きました。これからお 嬢 様 を、 窓 際 のカーテンの 束 のところまでお 連 れします。…その 中 に 隠 れれば、きっと 安 全 です」( 嘉 音 )※ベアトは 嘉 音 のフリをして 朱 志 香 をカーテンに 隠 し、そのまま 朱 志 香 と 話 をしながら10 月 5 日 の24 時 を 迎 えたと 考 えられます。殺 人 を 仕 込 んだオランウータンは 人 間 にはカウントされてないなんて 屁 理 屈 を 言 われちゃ 敵 わない。※エドガー・アラン・ポーの『モルグ 街 の 殺 人 』のことと 思 われます。「うむ。…ニンゲンに 指 せぬ 一 手 なら。…… 妾 が、 魔 女 であるがゆえに 指 せる 一 手 で、そなたを 迎 え 撃 ってやる…」(ベアト)「 魔 女 であるがゆえに 指 せる 一 手 ……? ……お、…お 前 、 何 をする 気 だ…」( 戦 人 )「 妾 が、 赤 にて。 魔 女 を 否 定 する」(ベアト)魔 女 だけが 使 える 赤 で。… 赤 で 魔 女 を 否 定 する。それは、 自 らの 剣 で、 自 らの 喉 を 掻 き 切 るも 同 じことだ。※ 悪 魔 であるロノウェが 使 っていますし、このEPで 死 後 に 召 喚 された 秀 吉 が、EP4では 戦 人 や 縁 寿 も 使 っています。 使 用 には“ 魔 女 の 許 可 ”が 必 要 なのかもしれません。「そなたに 手 はない。しかし 妾 に 手 はある。……この 一 手 、 逃 せばあやつは 魔 女 として 真 の 意 味 で 復 活 し、 今 度 こそこの 島 の 全 てを 支 配 する。… 全 ての 悪 夢 はあの 女 の 自 由自 在 となり、この 島 は 永 遠 に、 邪 悪 なる 魔 女 の 妄 想 を 繰 り 返 す 無 間 地 獄 に 落 ちるだろう。………そなたは、それを 許 せるというのか。… 親 しい 家 族 たちが、 永 遠 にあの 魔 女の 悪 夢 に 弄 ばれても 良 いと、そういうのか」(ベアト)※ゲーム 盤 を 乗 っ 取 られるということでしょうか?「 戦 人 。……ひとつだけ、 頼 みがある。…… 耳 を、 塞 いでくれぬか」(ベアト)「 耳 を……? どうして…?」( 戦 人 )「……… 妾 はこれより、 赤 にて 魔 女 を 否 定 する。あやつの 赤 で 敷 き 詰 めた 盤 面 を 切 り 裂 いて 見 せる。……さすれば、……… 妾 もまた 魔 女 の 姿 を 失 うだろう。……そなたも 妾が 語 る 赤 き 真 実 を 聞 けば、 妾 の 正 体 を、 理 解 することになる。………そなたひとりが 耳 を 塞 いだところで、 真 実 は 何 も 変 わらぬ。……だが、…それでもそなたにだけは、 耳を 塞 いでほしい。………………そなたの 前 だけでは、… 魔 女 で、いたいのだ。…… 頼 む」(ベアト)「…………さぁ 良 いか。… 戦 人 に 代 わり、そなたのチェックメイトを 外 す。15 人 が 死 に、3 人 しか 残 らぬチェス 盤 にて、 何 が 起 こったのか。… 妾 がこれより 赤 にて 暴 く。その 赤 き 真 実 にて、…… 偽 りの 魔 女 二 人 を、 共 に 貫 いて 殺 す!」(ベアト)赤 で 魔 女 を 否 定 することは 即 ち、…… 彼 女 のみすぼらしい 姿 を 知 ることになるということ。 戦 人 は、 両 の 手 を 自 分 の 耳 に 当 てる…。…… 彼 女 の 最 後 の、… 魔 女 としての 名 誉を 守 るため、 自 らの 耳 に 手 を 当 て、… 真 実 を 拒 否 する。ベアトが 赤 にて、 何 かを 語 っている。その 辛 辣 な 内 容 に、 邪 悪 なる 魔 女 までもが 耳 を 塞 ごうとする。……それは、 赤 き 真 実 。 力 ある 言 葉 。…… 自 らの 存 在 を 否 定 する 言 葉 。魔 女 にしか 使 えぬ、 魔 女 を 否 定 する 唯 一 の 言 葉 。ベアトは 語 る。 赤 き 真 実 にて、 魔 女 が 放 った 真 っ 赤 な 盤 面 を 切 り 裂 く。 人 間 には 解 けぬ 難 題 を、 魔 女 にしか 解 けぬ 一 手 で、説 明 し、 追 い 詰 めていく。 戦 人 には 聞 くことを 許 されない“ 真 実 ”。もしも 戦 人 が 約 束 を 破 り、それをこっそり 盗 み 聞 いたなら。……たちまちの 内 に 戦 人 は、ベアトとのゲームの 勝 者 となり 得 るだろう。……この 島 の 全 ての 謎 を 理 解 し、 全 ての 魔 法 とトリックと、 密 室 と 呪 いと 祟 りと 伝 説 と、… 怒 りと 悲 しみの 物 語 を 全 て 理 解 するだろう。しかし、……それを 知 るのは、 戦 人 が 自 らの 手 で 真 相 に 至 った 時 だけなのだ。そう。…ベアトリーチェは、……その 真 相 に、 戦 人 が 自 ら 至 ってくれることを、 最 初 から 願 っている。それは、 教 えられて 至 るのではない。 戦 人 が 自 らの 力 で、 辿 り 着 かなくてはならない、 真 実 。ベアトと 邪 悪 な 魔 女 の 中 央 に、 眩 い 光 が 集 まり、どんどんと 強 くなっていく…。それは…、 真 実 の 力 。 太 陽 が 破 裂 し、 全 てが 吹 き 飛 ばされた 時 …。……そこには 銃 を 持 った 絵 羽 の 姿 があった。※ 魔 女 は 全 ての 魔 法 を 否 定 されると 正 体 を 暴 かれるようです。■ 魔 女 幻 想 ■「…………これでもう、… 妾 は 魔 女 ではない。……………だが、 必 ず、 妾 は 再 び 魔 女 になるぞ…。……そして、…… 再 び 黄 金 の 魔 女 と 呼 ばれるに 至 って、……… 再 び、……そなたの 対 戦 相 手 だと 認 められに、………… 帰 ってくるから………」(ベアト)「いや。………お 前 は、 魔 女 だったぜ。… 俺 は、 見 てたぜ。………お 前 が、あの 邪 悪 な 魔 女 を、……すっげえ 魔 法 で 吹 き 飛 ばして、その 正 体 を 暴 き 出 すところを、… 俺 はちゃんとこの 目 で 見 ていたぜ…」( 戦 人 )「あ、…あれは 魔 法 ではなく、…… 赤 き、」(ベアト)「いいや、 魔 法 だったぜ。………お 前 は 確 かに、 黄 金 の 魔 女 だった。………お 前 自 らが 否 定 しようとも。……… 俺 が 認 めてやるよ。“お 前 は 確 かに、… 黄 金 の 魔 女 だ”」( 戦人 )……… 戦 人 がその 言 葉 を 口 にした 時 。 真 っ 暗 だった 世 界 に、…ぽっと 一 粒 。… 小 麦 の 種 のように 小 さな 黄 金 の 一 粒 が 眩 く 光 った。それは… 小 さいけれど 力 強 く 黄 金 色 に 輝 く。そして、…… 背 中 を 寄 せ 合 って 座 っていた 二 人 を 照 らし 出 す…。だから、 二 人 は 互 いに 自 分 の 姿 を 自 覚 する。 戦 人 は 自 分 の 姿 を 見 ても、そう 驚 かなかった。…しかしベアトは、 自 分 の 姿 を 見 て、 少 し 驚 く。…… 戦 人 が 見 ても、いつもの 彼 女 の 姿 だと 思 うのだが、…… 彼 女 はその 姿 をしばらくの 間 、 驚 いていた…。※ 全 ての 魔 法 を 自 ら 否 定 したためベアトは 正 体 を 暴 かれましたが、 戦 人 が 魔 女 であることを 信 じたため、 黄 金 の 真 実 により、ベアトは 再 び 魔 女 の 姿 を 取 り 戻 したと 考 えられます。「 使 用 人 の 子 となんて…!! 駄 目 です、うちの 朱 志 香 がやれるわけありません…!!」( 夏 妃 )「いいじゃないかね。 好 きな 相 手 くらい、 自 由 に 選 ばせてやるといい」( 蔵 臼 )※ 蔵 臼 は 朱 志 香 には 甘 いようです。「 前 回 。 黄 金 郷 の 扉 がようやく 開 いたが、お 前 はサインを 拒 んだ。…… 記 憶 にはないだろうがな。お 前 がサインを 拒 んだ 為 、この 世 界 を 再 び 闇 に 閉 ざしてしまったのだ」( 金蔵 )※プレイヤーの 戦 人 が 駒 から 離 れていたため、 認 識 していない 場 面 で 駒 戦 人 がサインを 拒 んだようです。これはゲームマスターによる 干 渉 でしょう。24


■ うみねこのなく 頃 に Episode4 「Alliance of the golden witch」■ 新 しき 客 人 ■「 気 の 長 い 話 ね。あなた( 戦 人 ) 勝 つ 気 あるの? 有 限 も、その 扱 いを 間 違 えれば 無 限 と 化 す。 今 のあなたはすでに、 亀 すら 追 い 越 せないアキレスなのよ。………なるほどね、私 が 必 要 なわけだわ。こんなザマじゃ、 何 億 年 を 掛 けようとも、 無 限 の 魔 女 に 勝 てるわけがない。」( 縁 寿 )※ゼノンのパラドックス“アキレスと 亀 ”のことです。“あるところにアキレスと 亀 がいて、2 人 は 徒 競 走 をすることとなった。しかしアキレスの 方 が 足 が 速 いのは 明 らかなので 亀 がハンディキャップをもらって、いくらか 進 んだ 地 点 ( 地 点 Aとする)からスタートすることとなった。スタート 後 、アキレスが 地 点 Aに 達 した 時 には、 亀 はアキレスがそこに 達 するまでの 時 間 分 だけ 先 に 進 んでいる( 地 点 B)。アキレスが 今 度 は 地 点 Bに 達 したときには、 亀 はまたその 時 間 分 だけ 先 へ 進 む( 地 点 C)。 同 様 にアキレスが 地点 Cの 時 には、 亀 はさらにその 先 にいることになる。この 考 えはいくらでも 続 けることができ、 結 果 、いつまでたってもアキレスは 亀 に 追 いつけない”という 屁 理 屈 です。「 馬 鹿 ね、 名 前 よ。 私 のことはグレーテルと 呼 んで」( 縁 寿 )「じゃあ、 俺 はヘンゼルとでも 名 乗 った 方 がいいか?」( 戦 人 )※“ヘンゼルとグレーテル”はグリム 童 話 の 一 篇 で、 愚 かな 兄 ヘンゼルを 聡 明 な 妹 グレーテルが 助 けるお 話 です。■ 縁 寿 と 真 里 亞 ■私 は 茂 みの 影 の 壁 に 寄 りかかるようにしてしゃがみ 込 みながら、 鞄 を 開 き、 一 冊 の 凝 った 古 めかしい 装 丁 の 本 を 取 り 出 す…。これは、…… 大 の 仲 良 しだった 真 里 亞 お 姉 ちゃんの 日 記 。3つ 年 上 の、ちょっぴり 不 思 議 な 人 だけど、とても 温 かい、 素 敵 ないとこのお 姉 ちゃんだった。いつも 私 の 手 を 引 っ 張 って 楽 しい 遊 びに 加 えてくれた。…… 親 族の 集 まりで 一 番 楽 しいのは 彼 女 に 会 えることだったことを 思 い 出 す…。 真 里 亞 お 姉 ちゃんの 日 記 は、 日 々の 出 来 事 を 書 き 残 したというよりは、もう 一 人 の 自 分 に 今 日 の 出 来事 を 手 紙 で 伝 えるような、そんな 文 体 で 記 されている。この 日 記 帳 は、 彼 女 の 遺 品 の 中 から 見 つけて 私 が 密 かに 持 ち 帰 ったもの。※ 真 里 亞 の 日 記 は 二 人 称 で 書 かれているようです。今 日 は 真 里 亞 の 誕 生 日 。 楼 座 は 彼 女 の 誕 生 日 を、 必 ず 素 敵 なレストランで 過 ごすようにしていた。※ 楼 座 は 真 里 亞 を 好 きになろうとする 努 力 はしていたと 思 います。「 何 で“さくら”なの?」( 縁 寿 )「う-! TVアニメの 主 人 公 の 名 前 ~!」( 真 里 亞 )※PS3 版 ではタイトルがぼかされています。「うー! カードマスターさくらの 主 人 公 ~!」( 真 里 亞 )当 時 、テレビで 大 人 気 だったアニメの 主 人 公 の 名 前 だ。※PC 版 ではこちらです。『カードキャプターさくら』のパロディだと 考 えられます。「うー、 全 然 平 気 ~! ほら、 聖 徳 太 子 なのー、うー! だからさくたろにも 好 きなものを 買 ってあげられるよ。 一 緒 に 食 べよう! さくたろもヨーグルト 食 べる?」( 真里 亞 )※ 現 在 の 一 万 円 札 の 肖 像 画 は 福 澤 諭 吉 ですが、これは1984 年 11 月 1 日 から 発 行 されました。それまでの 一 万 円 札 の 肖 像 画 は 聖 徳 太 子 です。■12 年 後 の 世 界 1998 年 10 月「 噂 じゃ、 縁 寿 ちゃん。あんた、ビルの 天 辺 から 飛 び 降 りたんだって?」( 小 此 木 )「 追 っ 掛 けがウザかったんで、ちょっと 撒 こうかと 思 って。 下 の 方 の 階 で、 改 装 工 事 してて 転 落 防 止 ネットがあるの、 知 ってましたし」( 縁 寿 )縁 寿 はあっけらかんとした 様 子 でそう 言 い 放 つが、 実 際 には 奇 跡 中 の“ 奇 跡 ”だ。 改 装 工 事 中 の 転 落 防 止 ネットを 何 層 も 突 き 抜 け、アトリウムの 宙 を 飾 っていた 色 とりどりの 横 断 幕 に 受 け 止 められては 滑 り 落 とされ、… 最 後 の 横 断 幕 1 枚 にふわりと 受 け 止 められて 無 傷 で 地 上 に 降 り 立 ち、すたすたとその 場 を 後 にしたなんて…、 香 港 映 画 顔 負 けだ。「いくらネットがあるのを 知 っていた、たってぇ、 高 さ200mの 超 高 層 だよ?」( 小 此 木 )※この 高 さから 落 ちたら、 挽 き 肉 になるわけです。彼 の 名 は 天 草 十 三 。 元 々は 絵 羽 伯 母 さんの 護 衛 の 一 人 。 軽 口 とお 喋 りが 過 ぎて 伯 母 さんには 嫌 われてたっけ。 護 衛 たちの 中 では 一 際 若 いが、 見 掛 けの 軽 薄 さとは 裏 腹 に、 自衛 隊 第 一 空 挺 からフランス 外 人 部 隊 をハシゴして、 海 外 の 民 間 軍 事 会 社 や 高 級 警 備 会 社 に 次 々 身 を 置 くなど、なかなか 優 れたユニークな 経 歴 を 持 つ。※ゴルゴ13がモデルだと 思 われます。“ゴルゴ”はキリストが 処 刑 された“ゴルゴダの 丘 ”で、キリスト 繋 がりで“ 島 原 の 乱 ”の“ 天 草 四 郎 ”から 名 字 をとったのでしょう。ちなみに 自 衛 隊 第 一 空 挺 はエリート 部 隊 です。「ブラックウォーターでエクササイズの 指 導 を」( 天 草 )※アメリカの 民 間 軍 事 会 社 です。( 霞 に)「あれ、もう 帰 っちまうのかい。お 茶 漬 けでも 食 ってけばいいのに」( 小 此 木 )※ 京 都 で 客 に 茶 漬 け(ぶぶづけ)を 勧 めるのは「 帰 れ」を 意 味 するため、 京 都 の 旧 家 である 須 磨 寺 への 嫌 味 です。■ 赤 き 真 実 、 青 き 真 実 ■「 推 理 小 説 なんかのクライマックスはいつもこうだった。…… 名 探 偵 が 容 疑 者 を 一 堂 に 集 め、たったひとつの 推 理 を 披 露 して、それを 華 麗 に 当 てて 見 せるんだ。まるで、 一本 の 矢 で 見 事 にリンゴを 射 抜 くウィリアム・テルのようにだ。だからこそ、それが 美 徳 みたいに 誤 解 しちまってた。」( 戦 人 )※14 世 紀 初 頭 にスイス 中 央 部 のウーリに 住 んだとされる 伝 説 の 英 雄 です。 代 官 に 反 抗 し 逮 捕 されたのですが、 息 子 の 頭 の 上 に 置 いた 林 檎 を 見 事 に 射 抜 く 事 ができれば 自 由 の身 にすると 約 束 され、 林 檎 を 見 事 射 抜 いたとされています。■ 縁 寿 の 回 想 ■「 真 里 亞 はこの 日 記 で、この 夜 の 出 来 事 を、とてもとても 楽 しかったと 記 した。なのに、 日 記 を 読 んだ 縁 寿 は、この 夜 の 出 来 事 を、とてもとても 悲 しかったと 読 んだ。これは、 幸 せな 夜 を 記 したものなの。………これが、この 夜 の“ 真 実 ”。お 願 いだから、その 幸 せな 真 実 を、………… 新 しい、そして 異 なった 真 実 で 塗 り 潰 さないで」( 真 里 亞 )※ 初 めてこの 場 面 を 読 んだとき、 真 里 亞 は 辛 かった 現 実 を 楽 しかった 幻 想 で 塗 りつぶそうとしたのだと 考 えましたが、おそらく 真 里 亞 は 本 当 に 楽 しく 過 ごしたのです。「………やっぱり、 縁 寿 は 可 哀 想 な 子 。……… 君 を 幸 せにしてくれるカケラは、こんなにもたくさん、 身 の 回 りに 落 ちているのに、それを 見 つけられない。……なのに、 不幸 せなカケラばかり 見 つけてしまって、 傷 付 き 続 けている。……だから 縁 寿 は 傷 付 くことに 怯 え、…… 傷 付 けるものが 身 の 回 りにないかどうか、それを 確 かめ 終 わるまで、幸 せ 探 しすら 始 められない。あのね? 幸 せのカケラも、 不 幸 せのカケラも、どちらもいっぱいあって、 世 界 を 満 たしてるの。だから、 身 近 の 幸 せが 見 つけられない 人 は、25


どこまで 探 しに 行 っても 見 つけられない。……チルチルとミチルが 青 い 鳥 を 探 したみたいに。 縁 寿 はその 正 反 対 。…… 不 幸 せなカケラがまったくない 世 界 を 探 してる。でも、それだって 青 い 鳥 と 同 じなんだよ。だから、 永 遠 に 縁 寿 は 自 分 の 幸 せを、 見 つけられない。………… 戦 人 はヘンゼルなの? 青 い 鳥 なんじゃないの……?」( 真 里 亞 )※『 青 い 鳥 』において、チルチルとミチルは 青 い 鳥 を 求 めて 旅 に 出 ますが、 見 つからなくて 家 に 帰 ってきたら、 家 にいました。ワルギリアは、 手 をひらひらさせてから、 手 の 平 を 上 に 向 け、 空 気 を 軽 く 掴 み 取 るような 仕 草 をする。そしてその 握 り 拳 をさくたろの 前 に 差 し 出 す。…………そして 拳 を 開くと、そこには 一 粒 だけパックされたタイプののど 飴 があった。※このワルギリアは 熊 沢 です。つまりこの 場 面 は 完 全 な 幻 想 描 写 ではなく、 幻 想 修 飾 された 場 面 です。ベアトは 真 里 亞 の 手 提 げから、 魔 導 書 を 借 りると、バラバラバラッとページを 華 麗 にめくる。…そして 様 々な 魔 法 陣 が 記 されたページの 途 中 に 空 きページを 見 つけ、そこを押 し 広 げる。そして、にやりと 笑 ってさくたろうを 凝 視 してから、 一 気 にペンを 走 らせた。最 初 は 何 を 書 いているのか 理 解 できなかった 真 里 亞 も、 途 中 からその 書 面 の 素 晴 らしき 魔 力 を 理 解 し、 瞳 を 輝 かせ 始 める…。「すごいよさくたろ!! 待 ってて、もうすぐだよ、もうすぐだよ! ベアトすごいベアトすごい!!」( 真 里 亞 )「……… 力 ある 書 面 の 筆 記 において、この 子 の 才 能 は 素 晴 らしい。あなたになら 魔 界 の 書 記 官 すら 務 まりそうですよ」(ワルギ)「これでどうか…! まずまずであろう…!」(ベアト)ものすごい 集 中 力 で 書 かれていたそれが 完 成 し、ベアトは 書 面 を 遠 目 に 改 めて 見 直 す。……まんざらでもない 出 来 らしい。そしてそれを 覗 き 込 んだ 真 里 亞 も 感 嘆 の 声 をあげる。「……すごいよベアト!! 可 愛 いー!! うーうーうー!!」( 真 里 亞 )※このEPの 最 後 のほうで 以 下 の 場 面 があります。“「こっちは 何 ? 何 このへたくそなライオンの 落 書 き。……さくたろう? 変 な 名 前 ! 一 番 大 好 きなお 友 達 だって。そうなの? これがあんたの 友 達 ? 親 友 ? このライオンが? ねぇねぇ?」( 霞 )”このときベアトが 書 いたのが、このさくたろうの 絵 なのだと 考 えられます。■12 年 後 の 世 界 1998 年 10 月「あれは 忘 れもしない。1987 年 4 月 のことです。 私 は 友 人 から、ある 奇 妙 な 依 頼 を 受 けました。……とある 大 富 豪 の 遺 品 である 蔵 書 が 大 量 に 競 売 に 掛 けられていて、その 一 部 に、 民 俗 学 的 にも 考 古 学 的 にも、あるいはオカルト 的 な 意 味 でも 極 めて 価 値 の 高 いものが 含 まれていると 思 われる、その 価 値 を 内 密 に 見 て 欲 しいというのです。それらの 蔵 書 は、 六 軒 島 での 難 を 逃 れたものと 説 明 されていました。それを、 島 の 所 有 者 である 右 代 宮 絵 羽 氏 が 競 売 に 出 したというのです。まず、 蔵 書 を 鑑 定 してわかったことは、 右 代 宮 絵 羽 氏 には 民 俗 学 的 な 教 養 がまったくなく、そしてその 蔵 書 の 本 来 の 持 ち 主 である 右 代 宮 金 蔵 氏 は、 日 本 で 五 指 に 入 る 悪 魔 学 の 権 威 であったことは、 間 違 いないということです」( 大 月 )1987 年 4 月 。 都 内 の 大 手 古 物 商 が、 歴 史 的 価 値 が 高 いと 思 われる 大 量 の 古 文 書 を 入 手 する。これは、 右 代 宮 絵 羽 が 競 売 に 描 けるよう 依 頼 して 預 けたものであった。 当 時 、絵 羽 は 唯 一 の 生 き 残 りとして 右 代 宮 家 の 家 督 を 継 承 し、 全 ての 財 産 を 独 占 したかに 思 われていた。しかし、 当 時 は 事 故 から 半 年 しか 経 ておらず、 危 難 失 踪 が 成 立 していなかった。その 為 、 絵 羽 は 家 族 の 生 命 保 険 さえ 降 りず、 経 済 的 にかなり 困 窮 していたと 思 われる。 絵 羽 は 金 目 のものは 何 でも 売 り 払 おうとしたらしく、 彼 女 が 難 を 逃 れたときに所 在 していた 九 羽 鳥 庵 に 収 められていた 蔵 書 も、この 対 象 となったのだ。そして、 後 に「 右 代 宮 蔵 書 」と 呼 ばれるそれらの 古 文 書 は、 古 物 商 によって 鑑 定 のために 集 められた 権 威 たちの 度 肝 を 抜 いた。「 少 なくとも 神 秘 学 の 見 地 から 言 えば、その 発 見 が 世 界 に 与 えた 衝 撃 は 死 海 文 書 発 見 にも 匹 敵 するものでした。『 右 代 宮 蔵 書 』には、なんと 千 年 以 上 にも 亘 る 間 、その 存 在だけが 知 られているにもかかわらず、 発 見 されていなかった 数 々の 極 めて 重 要 な 文 献 さえ 含 まれていたからです」( 大 月 )金 蔵 がどのようにしてそれらを 収 集 したかはわかっていないが、その 莫 大 な 富 を 湯 水 のように 使 い、 同 じ 趣 味 を 持 つ 同 士 の 大 富 豪 から 買 い 取 ったことは 間 違 いあるまい。そんな、 好 事 家 たちが 死 蔵 して 独 占 欲 を 満 たしたくなるほどに 価 値 のある 蔵 書 が20 世 紀 末 に 大 量 に 発 見 、 公 開 されたことは、 全 世 界 に 衝 撃 を 与 えた…。「この 一 件 により、“Rokkenjima”の 名 は 全 世 界 に 知 れ 渡 ることになります。そして 同 時 に、 六 軒 島 の 事 故 によって、 未 発 見 のさらに 価 値 のある 蔵 書 が 大 量 に 失われた 可 能 性 が 高 いことも、 全 世 界 に 衝 撃 を 与 えました。これにより、 六 軒 島 と 右 代 宮 金 蔵 の 名 は、 我 々にとって 忘 れ 得 ないものとなったのです」( 大 月 )絵 羽 によって 金 蔵 の 蔵 書 が 世 間 に 流 出 されるまでは、 六 軒 島 は、 誰 の 記 憶 にも 留 まらない 無 名 の 島 に 過 ぎず、……そこは 断 じて、 魔 女 の 島 ではなかったのである。しかし、右 代 宮 蔵 書 が 世 界 的 に 知 れ 渡 り、 六 軒 島 のイメージは 一 気 にオカルト 的 になる。「そして、そこへ 起 こるのが 例 のメッセージボトル 事 件 です。これが、あの 島 を、 魔 女 の 島 に 変 えた。 伊 豆 諸 島 の 無 名 の 小 島 が、オカルトの 島 へ、そして 謎 の 魔 女 、ベアトリーチェの 島 へと 変 遷 して 行 ったのです。 右 代 宮 蔵 書 とメッセージボトル、このどちらが 欠 けても、 六 軒 島 魔 女 伝 説 は 成 り 立 たなかったと 言 えます」( 大 月 )※ 現 実 の 絵 羽 は 貸 し 金 庫 のキャッシュカードを 手 に 入 れなかったか、もしくは 秀 吉 の 会 社 の 買 収 阻 止 の 為 に、 貸 し 金 庫 の 金 を 全 て 使 ってしまったと 考 えられます。■ さくたろ ■楼 座 は 髪 を 振 り 乱 しながら 激 昂 する。 立 ち 上 がった 時 の 勢 いでティーカップが 倒 れ、その 音 よりも 遥 かに 大 きい 音 で 何 度 もテーブルを 叩 いた。 白 目 を 剥 いて 錯 乱 している、という 表 現 すらも 充 分 に 妥 当 と 思 えるその 激 昂 ぶりに、 民 生 委 員 の 女 性 は 仰 け 反 らずにはいられない。……それは、 廊 下 からこっそり 様 子 をうかがっていた 真 里 亞 でさえも。母 が 激 昂 するところを 何 度 も 見 てきた。でも、こんな 怒 り 猛 る 様 を 見 るのは 初 めてだった。それを 見 て 真 里 亞 は 確 信 する。……それはもはや、 母 親 ではない。 母 親 の 体 に 憑依 した、 邪 悪 なる 別 の 存 在 だ…。※“ 黒 い 魔 女 ”はこの 時 、 誕 生 したようです。「4 人 もお 友 達 がいて 良 かったわ」( 楼 座 )楼 座 はそう 言 いながら、 真 里 亞 の 手 からウサギの1つを 摘 み 取 る。そして、よく 見 せ 付 けるように 真 里 亞 の 眼 前 に 突 き 出 した。…… 可 愛 らしい、トランペットを 持 ったウサギの、 駒 のような 小 さな 人 形 。それがゆっくりと、 掲 げるように 高 く 上 げられる。そしてそれは、 目 で 追 えない 速 度 で 壁 に 叩 き 付 けられた。 粉 々だった。 小 さく 頑 丈 だったそれは、 激 昂 する 母 の 怒 りを 受 け 止 められるほどではなかった。※シエスタ556の 最 期 です。……… 黄 色 いぐしゃぐしゃの 布 地 と 溢 れ 出 た 綿 飴 が、 私 の 眼 前 いっぱいに 突 きつけられる。そして、ママの 表 情 を 通 して、 邪 悪 な 存 在 が、はっきりと 断 言 した。「“さくたろうは、 死 んでしまいました”」( 楼 座 )※このままさくたろうは 捨 てられてしまったのでしょう。もし、このさくたろうの 残 骸 が 残 っていれば、ベアトにもさくたろうを 蘇 らせることが 出 来 たはずです。■ 魔 女 の 島 へ ■「 聞 こえは 悪 いがそういうことです。 吾 唯 (われただ) 足 るを 知 る、っていうヤツですわ。……… 俺 がこれでいいと 思 った 人 生 なら、それはとやかく 言 われてどうこうってもんじゃない。 縁 寿 さんの 人 生 も、この 旅 も 同 じです。 縁 寿 さん 以 外 の 誰 にも、とやかく 言 う 権 利 なんてない。 旅 の 意 味 と 成 果 は、 縁 寿 さんだけが 決 める。 縁 寿 さんにとって 有 意 義 な 旅 になったなら、それで 充 分 なんですよ。」( 天 草 )※ 京 都 の 龍 安 寺 にある“ 知 足 の 蹲 踞 (つくばい)”に 書 かれている 言 葉 です。 円 柱 状 の 石 の 上 部 の 真 ん 中 に 水 を 溜 める 部 分 が 四 角 で 彫 られており、その 四 角 を“ 口 (くち)”に見 立 てて、それぞれ“ 口 ”を 使 った 漢 字 の“ 口 ” 以 外 の 部 分 が 四 方 に 彫 られています( 例 えば 上 には“ 五 ”が 彫 られており、“ 口 ”と 合 わせて“ 吾 ”になる)。ちなみに 蹲 踞 (つくばい)というのは、 茶 室 に 入 る 前 に 手 や 口 を 清 めるための 手 水 を 張 っておく 石 のことだそうです。26


■ 右 代 宮 金 蔵 ■「デヴィリッシュプリティの 最 新 作 、ジャックザリッパー・クリスマスブラッド。……ニンゲン 界 の 田 舎 娘 には 理 解 できないセンスでごめんね?」(ガァプ)※『Angelic Pretty』のパロディだと 思 われます。「リーチェにはアリグレがお 勧 めね、アリスアンドザグレイブヤード。 今 度 一 緒 に666にお 洋 服 見 に 行 きましょうよ。たまには 魔 界 にもいらっしゃいな。」(ガァプ)※『ALICE and the PIRATES』と『109』のパロディだと 思 われます。■ 地 下 牢 ■……この 地 下 牢 の 中 に、ごたごたと 置 かれていると 思 った 家 具 は、 家 具 ではなかった。それは、…… 人 間 ひとりを 閉 じ 込 める 小 型 の 檻 や、 拘 束 台 、あるいは、…… 拷 問 台 。それらは 錆 付 き、 埃 にまみれているため、 忘 れられたものであることは 間 違 いない。※ 本 来 は 鉄 格 子 で 閉 じられている 井 戸 から 脱 出 できたように、この 地 下 牢 も 実 際 には 存 在 しないと 考 えられます。■12 年 後 の 世 界 1998 年 10 月私 ( 縁 寿 )は 下 ろしていたナップザックから( 真 里 亞 )お 姉 ちゃんの 魔 導 書 を 取 り 出 す。……そしてベアトリーチェがお 姉 ちゃんに 記 した 文 章 のページを 開 き、その 筆 跡 と 照 らし 合 わせる……。………… 特 徴 ある 筆 跡 は、 間 違 いない。この 一 億 円 の 現 金 を 送 りつけたのは、…………ベアトリーチェ 自 身 だ……。 同 じ 封 筒 と 内 容 物 は、かつて 熊 沢 と 同居 していた 息 子 にも 届 けられていた。 中 身 もまったく 同 じ。 暗 証 番 号 と 銀 行 の 本 店 を 記 した 手 紙 。 磁 気 カード。ナンバープレート 付 きの 鍵 。ナンバープレートの 刻 印 はA113. 私 のところにもおかしな 封 筒 が 届 いたんだ…、12 年 前 に…!! 中 を 開 けたら、よくわからない 鍵 とかカードが 出 てきて、 困 惑 したのを 覚 えてる。 私 はがっかりし、それをどこかに 放 り 出 してしまったはず…。あの 封 筒 はどこにやってしまっただろう? あの 後 のゴタゴタでどこかに 紛 失 してしまっているだろう。※ 絵 羽 が 秀 吉 の 会 社 を 守 るために 密 かに 召 し 上 げた 可 能 性 があります。■ 次 期 当 主 ■「ほほほほ…。あなた( 蔵 臼 )が100%の 力 を 発 揮 したとして、あなたの 戦 闘 力 はせいぜい6。 対 してこの 子 の 戦 闘 力 は1000。つまり、あなたが100 人 束 になっても、絶 対 に 勝 てないということです」(ワルギ)蔵 臼 と 山 羊 の2 倍 の 踏 み 込 みで4 倍 。 奇 跡 が 味 方 してクリティカル 確 約 でさらに2 倍 で8 倍 。その 上 、 立 てた 負 けフラグの 数 だけ 倍 率 が 掛 かって20 倍 で160 倍 。 一 見 、すごい 倍 率 だが、それでも 蔵 臼 の 戦 闘 力 は6。160 倍 しても、 戦 闘 力 960。 山 羊 の1000にはギリギリ 届 かない…! クロスカウンターは4 倍 の 破 壊 力 。これはボクシングの 常 識 だ。そしてそれを 弾 き、 右 ストレートが 叩 き 込 めたならダブルクロスカウンターで8 倍 の 破 壊 力 。これもボクシングの 常 識 だ。それをクロスされてしまったら……。トリプルクロスは、テコの 原 理 で 破 壊 力 は12 倍 ! これもまた、どうしようもないくらいにボクシング 界 の 常 識 !! 民 明 書 房 の 本 にだって 載 っているッ! 戦 闘力 、11520…!! 今 の 蔵 臼 のパンチなら、 最 初 の 頃 の 天 下 一 武 闘 会 (※PS3 版 では“ 某 武 闘 会 ”)なら 余 裕 で 優 勝 できる 威 力 …!!※『あしたのジョー』におけるボクシング 界 の 常 識 です。 民 明 書 房 とは 宮 下 あきらの『 魁 !! 男 塾 』 以 降 のコミック 作 品 に 登 場 する 架 空 の 出 版 社 です。 様 々な 格 闘 技 のエピソードが 出 典 付 きで 紹 介 されるため、 何 も 知 らなければ 信 じてしまうところですが、そもそも 出 典 元 の 書 籍 も 出 版 社 も 存 在 しないというオチなのです。 僕 も 当 初 は 信 じていましたが『かき 氷 屋 三 代 記 ― 我 永 遠 に 氷 をアイス―』で 流 石 におかしいと 気 がつきました。 戦 闘 力 11520は『ドラゴンボール』における 戦 闘 力 の 空 白 地 帯 ですが、ナッパとベジータの 間 くらいです。「 私 が 見 たことを、ありのままに 話 す。… 戦 人 くんは、きっと 私 の 頭 がどうにかなってしまったんだろうと 思 うに 違 いない。……えぇ、 思 ってくれていいわ。 私 だって、 何を 見 たのか、 未 だに 整 理 がつかない」( 霧 江 )※この 台 詞 は『ジョジョの 奇 妙 な 冒 険 』のポルナレフの 台 詞 のパロディです。 原 文 は 以 下 の 通 りです。「あ…ありのまま、 今 、 起 こった 事 を 話 すぜ! おれは 奴 の 前 で 階 段 を登 っていたと 思 ったら、いつのまにか 降 りていた。な…、 何 を 言 っているのか、わからねーと 思 うが、おれも 何 をされたのかわからなかった…。 頭 がどうにかなりそうだった…。 催 眠 術 だとか 超 スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ 断 じてねえ。もっと 恐 ろしいものの 片 鱗 を 味 わったぜ…」■ 惨 劇 の 原 因 ■「 待 ちな。…… 俺 はもう 今 さら 次 期 当 主 が 誰 かなんて 下 らねえゲームには 興 味 ねえぜ。 俺 のゲームは、クソジジイとお 前 と、……みんなを 殺 したヤツら 全 員 にそれぞれジャイアンパンチをブチ 込 むことだ。 顔 面 が 陥 没 するアレな」( 戦 人 )※これは 説 明 するまでもないと 思 いますが『ドラえもん』のジャイアンが 繰 り 出 すパンチです。■12 年 後 の 世 界 1998 年 10 月「だが、 九 羽 鳥 庵 への 出 入 りは、ある 日 を 境 にぷっつりとなくなっちまった。 今 から 大 体 30 年 前 だから、…… 昭 和 43 年 頃 だったと 思 う」( 川 畑 船 長 )※ 西 暦 に 直 すと1968 年 です。「…… 絵 羽 伯 母 さん。 今 日 まで 付 き 合 ってくれてありがとう。これでお 別 れよ。ハバナイスドリーム。シーユーヘル」( 縁 寿 )「クール」( 絵 羽 )そして、……その 額 を 穿 つ、 軽 い 音 が 轟 き 渡 る。※この 時 、 縁 寿 は 天 草 に 射 殺 されたわけです。■ 表 お 茶 会真 里 亞 は、 礼 拝 堂 に 呼 び 出 されてテストを 受 けたのでは…? ……それがどうしてこの 死 体 だらけの 食 堂 にいて、 母 親 の 脇 に 並 んで、 死 んでいるのか……?※ 真 里 亞 はそもそも 礼 拝 堂 には 行 っていないと 考 えられます。 真 里 亞 が 出 発 してから 戦 人 が 屋 敷 に 行 くまでに 結 構 時 間 がありますから、その 間 に 真 里 亞 は 屋 敷 に 入 り、その後 ベアトが 施 錠 したのでしょう。27


■ うみねこのなく 頃 に 散 Episode5 「End of the golden witch」「うっふふふふ。さぁすがベルン~。 脅 し 方 もエグいわねぇ。…そういうことよ 戦 人 ぁ。あんたにはゲームを 降 りることなんて 許 されてないの。あんたもベアトも、 私 たちの 退 屈 を 紛 らわせるゲーム 盤 の 駒 でしかない。…あんたのそのわけのわかんない 怒 りや 苛 つきさえも、 私 たちには 退 屈 を 紛 らわす 最 高 のお 菓 子 。」(ラムダ)※この 発 言 はメタ 世 界 の 戦 人 とベアトが 駒 であることを 意 味 しているのかもしれません。金 蔵 が 右 代 宮 家 の 当 主 に 突 然 抜 擢 され、 右 往 左 往 していた 頃 のことを 覚 えている 南 條 は、 蔵 臼 のその 姿 に 金 蔵 の 当 時 を 懐 かしむ。※ 南 條 が 金 蔵 に 会 ったのは 金 蔵 が 当 主 になってから20 年 経 った 後 です。 竜 騎 士 07さんが 勘 違 いしたのでしょうか? それともこの 場 面 が 嘘 の 場 面 であることの 証 拠 でしょうか?■ 奇 跡 の 魔 法 ■金 蔵 の 当 主 継 承 は 唐 突 だった。 当 時 の 金 蔵 は、 右 代 宮 家 の 本 家 から 遠 い、 分 家 筋 の 一 青 年 に 過 ぎなかった。※ 一 番 若 く 考 えても、 金 蔵 が 当 主 になったのは15 歳 くらいだと 考 えられます。■ 正 式 なミステリー ■「… 朝 から 胃 痛 を 起 こしている 蔵 臼 に 比 べ、 夏 妃 は 何 と 落 ち 着 いたことか。 我 が 息 子 が 情 けない」( 金 蔵 )※と 夏 妃 は 思 ったわけです。「スリランカに 行 った 友 人 が、 薔 薇 の 香 りの 素 敵 な 紅 茶 を 送 ってくれました」( 夏 妃 )「ほぅ、ディンブラかっ。 悪 くない。ならば 茶 請 けはパティスが 良 いぞ」(ベアト)※この 時 点 でのベアトは 夏 妃 の 空 想 であるため、これは 夏 妃 の 一 人 芝 居 です。「ま、こんなのゲーム 前 の 前 座 よ。 料 理 の 前 のアペリティフ」(ラムダ)※ 食 前 酒 のことです。金 蔵 の 死 を 看 破 されないかと、 蔵 臼 は 前 日 から 不 安 で 押 し 潰 されそうになっていた。 親 族 会 議 が 終 わり、 一 気 に 疲 れが 出 たのだろう。……しかし、そんな 胸 中 をおくびにも出 さず、あれだけ 普 段 どおりに 振 舞 えるのだから、 蔵 臼 の 度 胸 もたいしたものだ。※ 蔵 臼 もどうしてなかなか 大 した 胆 力 です。「………… 朱 志 香 が 生 まれる 前 は、 主 人 は 色 々な 国 に 私 を 連 れて 行 ってくれました。 嫁 ぐまでは、 一 度 も 海 外 旅 行 をしたことがなかったので、どれも 新 鮮 な 体 験 でしたよ。主 人 は、お 父 様 と 違 ってアジアの 国 が 好 きで。 香 港 、 台 湾 、 韓 国 にタイ。マレーシアも 行 きましたっけ」( 夏 妃 )※ 蔵 臼 は 夏 妃 に 喜 んで 欲 しかったのだと 思 います。「……で。あそこで 夏 妃 とお 茶 を 飲 んでるベアトだけど。 大 丈 夫 よね…?」(ベルン)「あぁ……。… 大 丈 夫 だ」( 戦 人 )「 金 蔵 の 時 と 同 じよ。ベアトリーチェなんて 存 在 しない。あれは、 魔 女 の 力 を 借 りて 危 機 を 乗 り 越 える 妙 案 を 思 いついたと 信 じる 夏 妃 が 生 み 出 した 偽 りの 魔 女 幻 想 。 二 人 が並 んでお 茶 を 飲 んでるように 見 えるのは、ゲームマスターであり、“ 物 語 の 語 り 手 ”であるラムダデルタがそう 解 釈 しているからなだけよ」(ベルン)※ゲームマスターは 偽 りの 光 景 を 見 せることが 出 来 るようです。この 時 点 ではゲームが 始 まっていないため、 探 偵 権 限 も 無 効 のようです。あるいは 今 回 の 戦 人 が 探 偵 ではないからなのかもしれません。■ 奇 跡 の 魔 女 10 月 4 日 ( 土 )19 時 00 分 ■「は、はははは。ヱリカちゃんも、 碑 文 の 謎 に 挑 戦 してみたくなったのかい?」( 譲 治 )「…………はい。 灰 色 の 脳 細 胞 が 疼 きまくりです。ですので、 謎 解 きを、さっそく 始 めたいと 思 います」(ヱリカ)※アガサ・クリスティのミステリー 小 説 の 主 人 公 “エルキュール・ポアロ”の 口 癖 からのパロディと 考 えられます。■ 辿 り 着 きし 者 10 月 4 日 ( 土 )22 時 00 分 ■「……… 私 がこのタイミングでここへ 遊 びに 来 たのは、きっとそれを 望 む 偶 然 の 神 々のお 導 きでしょうよ…。…… 守 ってあげる。 右 代 宮 夏 妃 。 対 価 は 不 要 よ。あんたに 仕 えてるリーチェから、すでにたっぷり 前 払 いされてるわ」(ガァプ)「 前 払 い? はて、 妾 がいつ…? 記 憶 にないぞ…」(ベアト)「くすくすくす…。………あなたがどこにしまったか 思 い 出 せない、マジックアイテムの 数 々。ずいぶんとチョロまかせてもらってるもの」(ガァプ)「んなッ!! 見 つからないのは、やはりそなたの 仕 業 だったか…!! 返 せー!! 幻 の 銀 水 晶 とムーンスティック 返 せー! まだくっ 付 けて 遊 んでないのにー!」(ベアト)※『 美 少 女 戦 士 セーラームーン』に 出 てくるマジックアイテムです。■ 黄 金 狂 乱 劇 10 月 4 日 ( 土 )22 時 47 分 ■「で、どうするわけ? リーチェとゴールドスミスのルールなら、 戦 人 が 碑 文 を 解 き、 主 となることを 選 ばない 以 上 、 私 たちはこれでお 役 御 免 じゃないの?」(ガァプ)「 妾 はまだ 夏 妃 に 仕 えておるぞ。 戦 人 が 碑 文 を 説 いたからお 役 御 免 では、あまりに 義 理 を 欠 くというもの。…… 魔 女 は 契 約 違 反 を 許 さぬが、 不 義 理 もまた 許 されぬ」(ベアト)「……でしょうな。 親 族 会 議 を 終 えるまでは、きっちりとお 仕 えするべきでしょう」(ロノウェ)※ 駒 ベアトは 碑 文 の 謎 が 解 かれた 時 点 で、お 役 御 免 になるのですが、このゲームのゲームマスターであるラムダは 放 置 したようです。( 金 蔵 に)「 貴 様 など、 片 羽 をもがれた 堕 天 使 ではないか。 揃 わぬ 翼 なら、 置 き 土 産 に 捨 てて 行 け」(ベアトリーチェ)※これは「 夏 妃 に 片 翼 の 鷲 を 与 えてやれ」という 意 味 だと 考 えられます。「……ふむ。……それも 良 かろう。 夏 妃 ならば、 我 が 翼 を 背 負 うに 相 応 しいかも 知 れぬ。…しかし、………ここからが 正 念 場 となるぞ。…… 褒 美 は 用 意 した。 無 事 にこの 試練 を 乗 り 越 えてみよ……、 夏 妃 …」( 金 蔵 )※これは「 試 練 を 乗 り 越 えたなら、 片 翼 の 鷲 を 与 えるから 頑 張 れ」という 意 味 だと 考 えられます。■ 本 当 の 親 族 会 議 10 月 4 日 ( 土 )23 時 49 分 ■……… 男 が 命 じたとおりに、 私 はアンティーク 時 計 を、 持 ち 上 げる…。そこには、 一 枚 のトランプのようなものが。…………? 時 計 の 保 証 書 か 何 かかしら…………。そう28


思 い、 手 に 取 り、 裏 返 す…………。※ 夏 妃 の 一 人 称 になっています。「………それに 台 風 の 最 中 であっても、ヱリカとかいう 来 客 があったはずだ。あんたの 屋 敷 は 広 い。 電 話 だってそこいら 中 にあるしな。あんたは 今 夜 もう、その 部 屋 を 出 てはらなないし、どこにも 電 話 を 掛 けてはならない。 電 話 が 掛 かってきても 取 ることも 許 さねぇぜ。そして 今 すぐ 灯 りを 消 し、 布 団 を 被 って 寝 ろ。そしていつもの 時 間 に 起 床しろ」(19 男 )…… 夏 妃 は 時 計 の 下 から 見 つけたカードを、 絶 叫 とともに 握 り 潰 してしまう。それはタロットカードのような 絵 柄 が 書 かれていて、…… 漢 字 で 一 文 字 、“ 秋 ”と 書 かれていた………。※これ 自 体 は 手 品 でも 出 来 ます。 例 えば“ 秋 ” 以 外 のカードも 用 意 し、“ 春 ”のカードをカーペットの 下 に、“ 夏 ”のカードを 鏡 台 の 裏 に、“ 冬 ”のカードをベッドの 下 にそれぞれ 入 れておき、 夏 妃 の 返 事 によって「 見 ろ」という 場 所 を 変 えればよいのです。■ 19 年 前 の 復 讐 ■乱 暴 に 受 話 器 を 置 く。…… 電 話 の 切 り 方 ひとつで、 後 味 をいくらでも 悪 く 出 来 ることを、“ 彼 ”はよく 心 得 ている…。「じゃあね、お 休 み、カアサン。…………ハイ、 一 丁 上 がり。これで 夏 妃 は 今 夜 は 部 屋 から 出 てこないわ」(ラムダ)「……… 器 用 ね。あんた、 声 を 変 えられるの?」(ベルン)「くすくす! 声 くらい、 誰 だって 変 えられるわよぅ」(ラムダ)※これはラムダが 喋 っているのではなく、ラムダが19 男 の 駒 に 話 させています。■ 第 2 日 目 1986 年 10 月 5 日「……… 譲 治 ……、……… 譲 治 ぃいいいいいい!!!」( 絵 羽 )「あんまりやないか……。こんな 真 似 が…、どうして 許 されるんや…!!」( 秀 吉 )二 度 と 目 覚 めぬ 譲 治 の 兄 貴 の 亡 骸 に、 絵 羽 伯 母 さんと 秀 吉 伯 父 さんはすがり 付 いて、…… 泣 いていた。※これは 芝 居 ではなく、 絵 羽 と 秀 吉 はゲームマスターであるラムダに 譲 治 の 死 体 を 見 させられている 可 能 性 があります。俺 は、そっと 毛 布 を 引 き 上 げ、…… 譲 治 の 兄 貴 の 遺 体 を 覆 った。その 首 は、……ばっくりと 開 いていた。… 多 分 、 口 よりも、…… 大 きく、 深 く 裂 けていた。そこのベッドには、…… 朱 志 香 が 眠 っている。…… 朱 志 香 も、 譲 治 の 兄 貴 とまったく 同 じだ。ベッドの 中 で、…… 静 かに 眠 るようなのに、……… 首 が、ばっくりと 切 り 裂 かれて、その 傷 口を 無 残 に 開 いている……。そして、それは 真 里 亞 も 同 じだった。…… 真 里 亞 だけではない。 犠 牲 者 は、さらに 一 人 。 同 じベッドに 添 い 寝 するように 横 たわっている、…… 楼座 叔 母 さんもだった。 譲 治 の 兄 貴 、 朱 志 香 、 真 里 亞 、…そして 楼 座 叔 母 さん。……この 部 屋 には、4 人 の 人 間 が 首 をばっくり 切 り 裂 かれて 殺 されている。※ 戦 人 にも 死 体 が 見 えている 可 能 性 があります。「………ご 安 心 を。 死 者 の 尊 厳 を 冒 すことが 目 的 ではありませんので。 別 に 喉 の 切 り 口 なんておぞましいモノ、 覗 きたくありませんし」(エリカ)※ 探 偵 であるヱリカが 死 体 を 見 れば、その 場 に 死 体 がないことがわかったはずですが、ヱリカは 死 体 を 確 認 しませんでした。嘉 音 は 恐 る 恐 る 源 次 の 毛 布 を 剥 ぎ、……… 源 次 の 変 わり 果 てた 姿 に、…… 絶 句 した。「な、 何 よこれ。 首 がスッパリ、やられてるぅ!」(ベルゼブブ)「……… 鋭 利 だ。… 相 当 の 刃 渡 りのものでなければ、ここまでの 切 り 口 には 出 来 まい」(ベルフェゴール)「ど、どういうことよ。 碑 文 の 謎 を 戦 人 が 解 いたんでしょう? どうして 殺 人 が 起 こるわけ?!」(レヴィアタン)「わからん。……いずれにせよ、 厄 介 なことになるぞ。ベアトリーチェさまと 夏 妃 さまにご 報 告 申 し 上 げた 方 がいい」(ベルフェゴール)「ベルフェは 急 いでルシ 姉 に 報 告 を…!!」(レヴィアタン)※くどいようですが、これも 死 体 が 見 えている 可 能 性 があります。突 然 の 電 話 の 音 に、 夏 妃 は 飛 び 起 きる。 夏 妃 は 頭 を 振 るい、 眠 気 を 払 ってから、 受 話 器 を 取 る。「………おはよう、カアサン。……よく 眠 れた?」(19 男 )※これは 外 線 ではなく、 内 線 のようです。つまり 現 在 、 六 軒 島 に19 男 はいるのです。………ふふ。…この 子 、バカそうなフリして、なかなかだわ。 決 して 挑 発 に 乗 りやしない。 魔 女 の 闇 ってもんが 何 か、 本 当 のゲームマスターのベアトより、よっぽど 理 解 してるじゃない。そしてどうやら、ガァプもそれをよく 理 解 してるみたい。……この 死 体 消 失 の 一 手 。ラムダとベアトの 双 方 にとって、なかなか 有 効 だわ。※このEPのベアトも 夏 妃 と 同 じくゲームマスターのラムダに 泳 がされている 可 能 性 があります。静 まり 返 った 屋 敷 の、 使 用 人 控 え 室 ……。 毛 布 で 頭 まで 覆 われた、 源 次 の 遺 体 が 横 たわっている……。その 狭 い 部 屋 の 天 井 に、 漆 黒 の 穴 が 開 き、…… 艶 かしい 足 が 生 え、…ガァプが 舞 い 降 りる。「………ごめんね、 源 次 。そこでゆっくり 永 眠 してたいだろうけど、そういうわけにはいかないの。 右 代 宮 家 の 最 後 の 当 主 、 夏 妃 に 死 してなお 奉 公 するために、ここから 消えてちょうだい」(ガァプ)ガァプは 毛 布 を 捲 り、 安 らかに 眠 る 源 次 に、そう 語 り 掛 ける…。そして 深 く 刻 まれた 首 の 傷 をじっと 見 る…。「……… 見 事 な 切 り 口 じゃない。……まさに 一 刀 で 斬 ったのね。………こんな 真 似 が 出 来 るヤツが、 顕 現 しているの……? 嫌 ね。…これが 可 能 な 心 当 たりのあるヤツに、ろくなヤツがいないわ」(ガァプ)※ガァプは 自 分 が 死 体 を 消 したつもりでいますが、そもそも 最 初 からなかったものと 考 えられます。「ふ、……ふふふふ。おかしな 三 角 対 決 になったものよ。 我 等 はそれぞれが 敵 であり、 時 に 意 図 せずして 連 携 しておる。…… 三 つ 巴 が、2 対 1になったかと 思 えば、 逆 に1対 2にもなる。……ほらあれだ。 中 国 のバトルロイヤル! 三 国 志 とやらに 似 てるとは 思 わんか?」(ベアト)※ベアトの 言 葉 が 正 しいとすれば、ラムダがベアトと 夏 妃 を 泳 がせているため、 三 つ 巴 の 状 況 が 発 生 していると 考 えられます。■ 魔 女 を 貫 く 十 の 楔 10 月 5 日 ( 日 )08 時 04 分 ■「 私 の 知 り 限 り、ミステリー 史 で、 最 も 死 者 が 出 る 連 続 殺 人 は、 犯 人 も 含 めて 全 員 が 死 亡 したイギリスの 某 作 品 の、10 人 です。 日 本 ミステリー 界 では、 占 星 術 師 が 探 偵 を務 めたあの 作 品 かと」(ヱリカ)※PS3 版 では 作 品 名 がぼかしてあります。「 私 の 知 る 限 り、ミステリー 史 で、もっとも 死 者 が 出 る 連 続 殺 人 は、アガサ・クリスティの『そして 誰 もいなくなった』の10 人 です。 日 本 ミステリー 界 では、 多 分 、 島 田荘 司 の『 占 星 術 殺 人 事 件 』ではないかと。まぁ、こっちは10 人 未 満 ですが」(ヱリカ)29


※PC 版 ではきちんと 作 品 名 が 出 てきます。「 日 本 ミステリー 界 の 話 だが。…… 新 本 格 よりも 先 に、 新 戯 作 派 の 一 人 が 別 の 作 品 を 書 き 上 げているぜ」( 戦 人 )※PS3 版 では 作 品 名 がぼかしてあります。「 日 本 ミステリー 界 の 話 だが。……『 占 星 術 殺 人 事 件 』より、 坂 口 安 吾 の『 不 連 続 殺 人 事 件 』の 方 が 先 だぜ」( 戦 人 )※PC 版 ではきちんと 作 品 名 が 出 てきます。「 留 弗 夫 さま、…… 大 丈 夫 でしょうか……」( 紗 音 )「 大 丈 夫 よ。あの 人 、アクション 映 画 向 きだし。それにスポーツだって 得 意 なんだから」( 霧 江 )「…… 得 意 のスケートが、ハシゴ 登 りにどう 役 立 つか 聞 かせて 欲 しいぜ…。……♪ 俺 はぁ、イナ・バウア~、 常 に 大 ピンチ~…っとくらぁ」( 留 弗 夫 )※『24-TWENTY FOUR』のシーズン6の 日 本 でのCMソングのパロディと 思 われます。「オレはジャック・バウアー、つねに 大 ピンチ♪」。イナ・バウアーはフィギュアスケート金 メダリスト、 荒 川 静 香 の 得 意 技 です。「うにゃ? パスが 通 らないにぇ。」(シエスタ410)「410、キャプスロックを 解 除 してもう 一 度 …!」(シエスタ45)※キーボードのキャプスロックが 有 効 になっているため、 入 力 される 文 字 が 大 文 字 になっており、 小 文 字 であるパスワードが 正 しく 入 力 されていないのだと 考 えられます。Die The death Sentence to death Great equalizer is the Death.※ 死 を 遂 げよ、 死 刑 を 宣 告 する、 死 は 全 ての 者 を 平 等 にする。という 意 味 だそうです。「は、はっはっはははははは…。……お 前 、……やるなぁ……。」(ベアト)「お 前 のゲームで、 何 回 鍛 えられたと 思 ってんだよ。」( 戦 人 )戦 人 の 腕 に 受 け 止 められたベアトは、 呆 然 としながら、…… 珍 しく 戦 人 を 讃 える。 戦 人 もいつものように、へらっと 笑 って 見 せた……。※この 戦 人 はプレイヤーの 戦 人 が 操 作 していないため、これまでのゲームの 記 憶 を 持 っているわけがないのですが、この 場 面 自 体 が 幻 想 描 写 であるため、こういうこともありなのだと 考 えられます。■ 推 理 と 検 証 10 月 5 日 ( 日 )11 時 00 分 ■「…… 先 ほどの 戦 いでは、ありがとうございマシタ。 最 後 の 最 後 に、 慈 悲 を 与 えてくれたこと、 感 謝 いたしマス」(ドラ)「あの“ 俺 ”は 俺 じゃねぇぜ。……ラムダデルタが 操 ってたんだ」( 戦 人 )俺 は、 第 5のゲームには 途 中 から 参 加 している。“この 時 点 ”では、まだ 参 加 していない。だから、 俺 が 参 加 するまでの 間 、“ 俺 ”という 駒 は 恐 らく、ベルンカステルか、もしくはラムダデルタによって 操 られているはずだ。「……あいつら、どういう 気 まぐれだろうな。 妙 にカッコ 良 くしてくれやがって。あれじゃまるで 俺 が、ベアトを 助 けに 来 たナイト 様 みてぇじゃないか」( 戦 人 )※ラムダとベアトが 戦 人 に 活 躍 させようとしたわけではなく、 駒 戦 人 がAIで 行 動 した 結 果 だと 考 えられます。「ラムダデルタ 卿 は、 魔 女 とニンゲンのそれぞれが 均 衡 し、ドローゲームとなることを 望 んでいます。………ヱリカの 登 場 により、 天 秤 がニンゲン 側 に 大 きく 傾 いたので、ベアトに 加 担 するように 物 語 を 操 ったのでしょう」(ワルギ)「それは 知 っていマス。しかし、 駒 は、 出 来 ないことは 出 来 ナイ。そして、 本 来 の 性 格 に 相 応 しい 行 為 を 得 意 とスル。……だから、あれは 確 かにあなたの、…… 戦 人 の 成 し得 たことデス。だから、あなたに 感 謝 するのデス」(ドラ)※この 時 、 戦 人 は 駒 が 自 分 で 動 くことを 知 らず、ドラノールは 戦 人 がそれを 知 らないことを 認 識 した 上 で、わざと、きちんと 説 明 していないと 考 えられます。「《 赤 :“ 金 蔵 が 存 在 しない”》のは、すでに 確 定 事 項 のハズ。ラムダデルタ 卿 もベルンカステル 卿 も、それをよくご 存 知 のはずデス。なのに、 二 人 とも 金 蔵 が 存 在 する 余 地を 残 してゲームを 進 めてイマス。……まるで 二 人 で 結 託 して、 金 蔵 を 否 定 させないかのようデス」(ドラ)「つまり、“ 祖 父 さま”を、わざと 逃 がしたと…?」( 戦 人 )「ハイ。 何 かの 意 図 があるに 違 いありマセン」(ドラ)「………… 確 かに 少 し、おかしいですね。…ラムダデルタ 卿 とベルンカステル 卿 は、 魔 女 が 優 勢 にならない 限 り、 対 立 する 関 係 にあるはず。…… 現 在 の 流 れでは、 二 人 が 結託 することは 考 え 難 いのですが…」(ワルギ)※ラムダはベルンが 真 相 に 至 らないように、 夏 妃 を 生 贄 にしようとしています。ベルンもそれがわかった 上 で、 夏 妃 を 犯 人 に 仕 立 てあげようとしています。「………… 呼 んだのはベルンカステル 卿 かもしれない。しかし、この 世 界 に 受 け 入 れたのは、ベアトです。……この 子 が 望 まなければ、あなた(ドラ)は 迷 路 庭 園 を 抜 け、ここへは 至 れなかったのだから。……ね、…ベアト……?」(ワルギ)「この 黄 金 郷 には、ベアトが 望 まない 限 り、 誰 も 辿 り 着 けないのか」( 戦 人 )……しかし 俺 は、ベアトが 望 まない 人 間 がここに 辿 り 着 いたことがあるのを 知 っている。 縁 寿 だ。… 前 回 のゲームで、 縁 寿 は 招 かれざる 客 人 でありながら、……ここへ 一 人 、辿 り 着 いて 見 せた。あれも、……ベアトが 望 んだこと、……なのか……?※ 駒 ベアトは 望 まなかったでしょうが、ゲームマスターのベアトが 望 んだのです。「 謹 啓 、 謹 んで 申 し 上 げる。《 赤 : 親 族 会 議 以 前 に、ヱリカ、 譲 治 、 朱 志 香 、 真 里 亞 、 南 條 、 郷 田 、 熊 沢 は、 屋 敷 より 退 出 し、ゲストハウスへ 移 動 したものなり。》」(ガートルード)「 謹 啓 、 謹 んで 申 し 上 げる。《 赤 : 残 りは、 蔵 臼 、 夏 妃 、 源 次 の3 人 のみが2 階 廊 下 におり、それ 以 外 の 全 員 は 食 堂 におりしこと、 申 し 上 げ 奉 る。》」(コーネリア)《 赤 : 蔵 臼 、 夏 妃 、 源 次 の3 人 は、その 手 紙 に 触 れてさえいない!》(ラムダ)「《 赤 : 食 堂 の 全 員 の 誰 も、いいえ、もっとシンプルな 言 い 方 をするわ。24 時 の 時 点 で 屋 敷 内 にいた 誰 一 人 ! あの 手 紙 を 廊 下 に 置 いた 者 はいないわ。》」(ラムダ)「《 赤 : 蔵 臼 、 夏 妃 、 源 次 の3 人 は、ノックをしていない!》」(ラムダ)「《 赤 :これは、 扉 だけはノックしていないという、 限 定 的 な 意 味 じゃないわよ? 音 が 伝 わる 柱 だろうと 録 音 したカセットテープの 再 生 ボタンだろうと、そのノック 音 を生 み 出 したことは 断 じてないという 意 味 ! 無 論 、 直 接 的 にも 間 接 的 にも、 意 図 的 にも 偶 発 的 にも、 無 意 識 的 にもね!》」(ラムダ)「 謹 啓 、 謹 んで 申 し 上 げ 奉 る。《 赤 :24 時 の 時 点 で、2 階 廊 下 にいた、 蔵 臼 、 夏 妃 、 源 次 の3 人 と、 食 堂 にいた 全 員 以 外 の、 一 切 のニンゲンは 屋 敷 内 に 存 在 しなかった》旨 、 申 し 上 げ 奉 る」(ガートルード)「 謹 啓 、 謹 んで 申 し 上 げる。《 赤 : 蔵 臼 、 夏 妃 、 源 次 の3 人 に 加 え、 食 堂 の 全 員 もまた、ノックしていないこと、 申 し 上 げる。このノックとは、ノック 音 を 生 み 出 す、 直 接的 、 間 接 的 、 意 図 的 、 無 意 識 的 、 偶 発 的 な 全 てを 含 めるものなり。》」(コーネリア)「《 赤 :つまり、 屋 敷 にいた 人 物 全 員 が、ノック 音 の 発 生 源 とは 成 り 得 ない、という 意 味 デス。……そしてこの“ 全 員 ”とは、 誰 も 把 握 していない、 観 測 されていない 人 物であったとしても 含 みマス。》」(ドラ)30


「この 廊 下 に 置 いた、という 赤 も、もっと 細 かく 言 い 直 すわ。《 赤 : 屋 敷 内 の 誰 一 人 、 手 紙 を 廊 下 に 置 いた 者 はいない。それは 直 接 的 、 間 接 的 、 意 図 的 、 偶 発 的 、 無 意 識 的 、全 ての 概 念 でよ。》」(ラムダ)「“《 赤 :24 時 の 時 点 で、 屋 敷 以 外 に 存 在 するのは、ヱリカ、 譲 治 、 朱 志 香 、 真 里 亞 、 南 條 、 郷 田 、 熊 沢 のみである》”!」(ラムダ)「 謹 啓 、 謹 んで 申 し 上 げる。《 赤 : 屋 敷 以 外 の 全 員 は、 親 族 会 議 開 始 後 、 屋 敷 内 にて 何 を 行 なうことも 不 可 能 なり。》」(ガートルード)《 赤 : 全 ての 人 物 は、ノック 音 を 誤 認 することはない。》(ラムダ)「《 赤 :ノックは、 人 が 手 で 扉 を 叩 くもの》よ?」(ラムダ)※ 誰 もノックの 音 など 聞 かなかったし、そもそも 手 紙 などなかったのです。ラムダの 赤 字 を 抜 けて 手 紙 を 出 現 させるのは 簡 単 で、ようは“ 廊 下 に 手 紙 がなければそれで 良 い”のです。 誰 かが 懐 から 取 り 出 そうが、 机 の 上 に 置 いてあろうが。■ クローゼット 10 月 5 日 ( 日 )12 時 33 分 ■「 今 のところ、 出 ている 死 体 は5 人 。…… 見 ての 通 り、 首 をスッパリよ」(ガァプ)譲 治 、 朱 志 香 、 真 里 亞 、 楼 座 、 源 次 。5 人 はいずれも、 鋭 利 な 何 かで 首 をばっくりと 切 り 裂 かれている……。その 切 り 口 は、 本 当 の 口 よりも 大 きく 開 き、……もはや、 口 を呼 吸 のために 使 う 必 要 さえないと 感 じさせるものだった。「……なるほど。《 赤 : 譲 治 、 朱 志 香 、 真 里 亞 、 楼 座 、 源 次 の 死 体 は、 誰 が 見 ても、 一 目 で 死 亡 が 確 認 できる》、というわけですね」(ワルギ)「うむ? 赤 か? まぁ、お 師 匠 様 にケチっても 始 まらぬ。そうとも、《 赤 : 死 んだフリなど 絶 対 にありえぬ、 誰 もが 一 目 で 死 亡 を 確 認 できる 死 体 であるわ。》」(ベアト)「なぜリーアは 赤 を……?」(ガァプ)「さぁて。……しかし、 常 にお 嬢 様 のことを 想 われている 方 です。お 嬢 様 に 利 する 何 らかのお 考 えがあってのことでしょう」(ロノウェ)※ 赤 字 で 死 亡 を 宣 言 できる 以 上 、この 時 点 では 既 に 殺 人 偽 装 ではなく、 殺 人 になっています。客 室 内 の 空 気 は、…… 冷 え 切 っていて、 誰 かが 自 分 を 待 ち 侘 びている、という 気 配 はまったくなかった。ガチャガチャ!! その 時 、 突 然 、 施 錠 された 扉 を 無 理 やり 開 こうとする 音 が 聞 こえて、 私 ( 夏 妃 )の 心 臓 を 飛 び 上 がらせた。「…… 何 や、 開 いとったんか」( 秀 吉 )どかどかと、 彼 らしい 足 音 が 入 ってきて、 扉 を 後 手 に 閉 めて、 施 錠 するような 音 がする。チェーンロックを 掛 けているらしい 音 も 続 いた。「…… 念 のためや。どうせ、この 天 気 じゃ、 夜 と 変 わらんわ」( 秀 吉 )そう 呟 きながら、ガタガタと 何 かをしている。…… 恐 らく、 窓 の 鎧 戸 を 閉 めているのだろう。「だ、 誰 やあんた…ッ」( 秀 吉 )え?! 心 臓 が 止 まる。きっと、ベッドに 突 っ 伏 していただろう 秀 吉 さんが、がばっと 起 き 上 がったらしい 音 が 聞 こえた。……き、…… 気 付 かれた……?「どこから 入 ったんや……。……な、… 何 やそれ…。……ま、 待 たんか…! ちょ、………ぬお、……むッ、」( 秀 吉 )彼 は 明 らかに、 誰 かと 取 っ 組 み 合 いをしていた。…… 一 体 、 誰 と?! いや、 誰 であるかは 問 題 ではない。 恐 らくは 犯 人 で、 彼 の 命 を 今 まさに 奪 おうとしているに 違 いない…!※ 秀 吉 の 一 人 芝 居 です。「 鎧 戸 は。………… 外 からはびくともしませんでした。 今 、 確 認 してきました」(ヱリカ)彼 女 は 今 になって 到 着 し、 廊 下 からひょっこりと 顔 を 出 す。「お 悔 やみ 申 し 上 げます。で? 室 内 の 状 況 は?」(ヱリカ)「……ヱリカちゃん。… 現 場 をそのままで 保 存 したいだろうが、 今 回 はちょいと 折 れてもらうぜ…?」( 留 弗 夫 )「……どうぞご 勝 手 に。 私 にとって 興 味 があるのは、 金 蔵 さんの 書 斎 よりはるかにまともな 密 室 が 出 現 したことだけです。 死 体 には 興 味 ありませんので、どうぞご 自 由 になさって 下 さい」(ヱリカ)「…… 搬 出 していただいて 結 構 ですよ? 死 体 。 それとも 私 が 邪 魔 ですか?」(ヱリカ)ヱリカは、 扉 の 前 から 下 がりその 場 を 譲 る。…… 絵 羽 たちは 秀 吉 の 遺 体 をシーツに 包 み、 郷 田 と 留 弗 夫 の 二 人 で 担 ぎ 出 す…。※ヱリカが 死 体 を 確 認 していないため、この 時 点 で 秀 吉 は 生 きていたと 考 えられます。みんながぞろぞろと 出 て 行 き、 空 っぽになった 客 室 に 一 歩 だけ 踏 み 入 り、………じっと 室 内 を 見 渡 して、その 光 景 を 目 に 焼 き 付 けた。そして、ふと、 脇 のクローゼットに 目を 留 める。ゆっくりと、…………ヱリカは、……クローゼットに 手 を 伸 ばす…………。「………っ、」(ヱリカ)乱 暴 に、ヱリカの 肩 が 後 から 掴 み 寄 せられる。「…… 行 くぜ、 探 偵 さん。 団 体 行 動 を 乱 すなって、 修 学 旅 行 で 習 わなかったか」( 戦 人 )「 私 が 旅 行 に 行 くと、 必 ず 人 が 死 ぬってお 約 束 がありまして」(ヱリカ)※ 探 偵 のお 約 束 です。「おらッ、 何 してやがるガキども! 早 く 来 い…!!」( 留 弗 夫 )留 弗 夫 が 急 かす。ヱリカは 舌 打 ちし、クローゼットを 睨 み 付 けた 後 、 戦 人 に 促 されながら 客 間 へ 一 度 戻 るのだった…。※ 戦 人 はゲームマスターのラムダの 干 渉 を 受 けて、ヱリカを 止 めた 可 能 性 があります。…… 黄 金 郷 は、いつまでも 終 わらない 雨 が、 降 り 続 いている。 戦 人 の 姿 はない。もうじき、 戦 人 が 第 5のゲームに 参 加 した 時 間 になるので、 駒 のコントロールが 戦 人 に 引 き継 がれる。つまり、ベルンカステルが、 犯 人 を 特 定 したというこの 終 局 の 段 階 になって、ようやくゲームへの 参 加 が 認 められたというわけだ。だからついさっき、この 東 屋を 出 て 行 った。※EP1~4ではプレイヤーの 戦 人 が 駒 戦 人 をコントロールしていたようではなかったですが…。むしろゲーム 盤 には 干 渉 できないようでした。■ 幻 想 大 法 廷 10 月 5 日 ( 日 )24 時 00 分 ■「…… 右 代 宮 金 蔵 だ。 書 斎 の 窓 より 抜 け、 六 軒 島 の 何 処 かに 潜 んでおる」( 金 蔵 )※そんな 訳 はないのであって、 屋 敷 のどこかに 死 体 があるはずです。「 右 代 宮 蔵 臼 。 現 在 は 捕 らわれの 身 で、どこかに 監 禁 されている」( 蔵 臼 )※この 時 点 では 殺 されているため、この 発 言 は 嘘 です。31


「…… 私 にはポップコーンを。」(ベルン)「あぁ、そうだったわね。……… 悪 魔 の 観 劇 はポップコーンと 相 場 が 決 まってると、あんたが 決 めたんだもんね。」(ラムダ)※『ひぐらしのなく 頃 に』で「 私 もまた 舞 台 の 上 の 出 演 者 なのに、 私 ひとりが 舞 台 に 上 がらず 観 覧 席 でポップコーンなんか 食 べてたら、 成 功 する 劇 も 失 敗 する。」という 内 容があります。「カスパロフもディープブルーも 無 敗 じゃないわ!」(ガァプ)※カスパロフは15 年 連 続 世 界 チャンピオンになったチェスの 選 手 、ディープブルーはカスパロフに 勝 利 したチェス 専 用 のスーパーコンピュータです。「これらは 夏 妃 さんの 部 屋 から 発 見 された、 過 去 の 日 記 帳 です。 近 年 ではほとんど 書 かれていませんが、 右 代 宮 家 に 籍 を 入 れたばかりの 頃 については、 詳 細 な 記 述 があります」(ヱリカ)「……ひ、…… 人 でなし……。…… 人 の 日 記 を、…… 読 むなんて………」( 夏 妃 )※ある 意 味 “ 恨 み 帳 ”である 夏 妃 の 日 記 が 近 年 は 書 かれていないということは、 夏 妃 は 幸 せだったということです。「 私 は 愛 のない 結 婚 を 強 要 された、 花 嫁 という 名 の 人 質 だと、…そう 思 っていました……。ですが、…… 夫 は、…… 私 を 人 質 などと 見 下 しはしませんでした……。… 私 の 事情 を 理 解 し、 同 情 と 慈 しみを 与 えてくれました……。 夫 だけは、…… 私 の 理 解 者 だったのです…!」( 夏 妃 )「……なるほど。それは 一 理 あります。 確 かにあなたの 日 記 には、 蔵 臼 さんがあなたの 事 情 を 知 って、 気 遣 ってくれる 描 写 が、いくつか 散 見 できます。しかしあなたはそれを、こちらの 日 記 帳 の47ページで、むしろ 気 持 ちが 悪 いと 描 写 していますね? 以 下 、 朗 読 します。“ 蔵 臼 の 気 遣 いは、むしろ 私 を 惨 めにさせるだけ。そうして 私 を 辱 しめているのではないかとさえ 思 う 時 があります”。…… 以 上 から、 夏 妃 さんが、そんな 気 遣 いを 見 せていた 夫 を 嫌 悪 していたことがうかがえます」(ヱリカ)「ま、…… 待 ちなさい…! た、 確 かに 最 初 はそう 思 ったこともあります…! まだ 日 々を 不 安 に 過 ごす 私 が、 気 遣 いを 素 直 に 受 け 取 れず、 邪 推 してそう 記 してしまったこともあったかもしれません…! 私 はやがてそんな 夫 の 気 遣 いに 気 付 いて、その 気 持 ちを 受 け 入 れるようになるのです…!」( 夏 妃 )「その 記 述 は、 日 記 帳 のどこにも 登 場 しませんが?」(ヱリカ)「に、…… 日 記 にさえ 書 かない、 秘 められた 気 持 ちというものもあります…!」( 夏 妃 )「あらゆる 証 拠 品 と 証 言 から 多 角 的 に 構 築 して、あなたが 夫 に 激 しい 嫌 悪 を 持 っていたことは 明 らかです。そして 逆 に、あなたが 仰 るような、やがて 受 け 入 れるようになっていったことを 示 す 証 拠 は 存 在 しません」(ヱリカ)「………わ、 私 は 夫 を 愛 していました…!! あなたが 何 と 言 おうと、 私 たちは 愛 し 合 っていました…!! 私 が 愚 痴 ばかりを 日 記 に 記 していたことは、 夫 にも 謝 らなければならないことです…! しかし 私 は 夫 に 心 を 捧 げていました…!! それは 例 え、 証 拠 で 示 せなくても、……それが 真 実 なんです!!」( 夏 妃 )※そもそも“ 恨 み 帳 ”ですから 良 いことは 書 いていないのです。「 後 期 クイーン 以 降 。 探 偵 の 推 理 さえも 筋 書 きに 組 み 込 まれている 可 能 性 がありますから。 本 当 に 油 断 ならない 時 代 になったものです。」(ヱリカ)※ 推 理 作 家 “エラリー・クイーン”が 書 いた 推 理 小 説 の 中 で 後 期 に 書 かれた 作 品 のことです。「 何 という、おぞましいことでしょう。…… 夏 妃 さんは、 右 代 宮 家 に 復 讐 するためにまず。 右 代 宮 家 の 全 てを 乗 っ 取 ろうと 企 てたのです。その 為 、 夏 妃 さんは、 体 を 武 器 に、金 蔵 さんを 篭 絡 したのです」(ヱリカ)「そんなことはしませんッ!! 私 は 自 分 の 体 を 夫 以 外 に 許 したことは、ただの 一 度 もありませんッ!!」( 夏 妃 )※ 夏 妃 が 妊 娠 できなかったのは、 蔵 臼 が 原 因 で、 朱 志 香 は 蔵 臼 の 子 どもではなく 金 蔵 の 子 どもでは? という 説 がありましたが、 以 下 の 赤 字 があるため、 事 実 ではなかったようです。「《 赤 : 以 上 により、 祖 父 さまの 不 在 は 証 明 され、 夏 妃 伯 母 さんの、 祖 父 さまを 巡 る 不 名 誉 は 返 上 されるッ!!》《 赤 : 夏 妃 伯 母 さんは 純 潔 にして 貞 淑 だ! 貴 様 ら 好 みの 下劣 な 物 語 は 許 さないッ!!》」( 戦 人 )■ 法 廷「……ヱリカ、ドラノール。……あなたたちは、 引 き 続 きこのカケラに 留 まり、 残 る 第 1から 第 4のゲーム 全 てを 解 明 しなさい。もはや、 魔 女 幻 想 を 主 張 する 哀 れな 仮 初 魔女 は 存 在 しない。…… 剥 き 出 しの 真 実 を、 徹 底 的 に 暴 いてやりなさい」(ベルン)「 過 去 の4つのゲームはすべて、 夏 妃 の 犯 行 と、そのイレギュラーで 説 明 可 能 です」(エリカ)※EP2では 第 一 の 晩 に 夏 妃 は 死 んでいて、 探 偵 である 戦 人 がその 死 亡 を 確 認 しているため、どう 考 えてもそれ 以 降 の 殺 人 は 不 可 能 です。「(シエスタ 姉 妹 は)…… 高 い 確 率 で、 犯 行 に 用 いた 凶 器 が 依 り 代 ではないかと 推 定 されマス」(ドラ)※ウィンチェスター 銃 の 弾 丸 である“.45ロング・コルト 弾 ”と“410ゲージショットシェル”のことだと 考 えられます。「 最 後 には、ベアトも 剥 製 にしてやりたいわ。そして 大 広 間 に 高 々と 飾 ってやるの」(ベルン)「 白 樺 湖 畔 ?」(ラムダ)「ニンゲン 狩 りの 伯 爵 よ」(ベルン)※PS3 版 では“ 銀 河 鉄 道 ”の 名 前 が 出 てきませんので、 難 易 度 が 高 いです。ラムダが 言 っているのは 京 極 夏 彦 の『 陰 摩 羅 鬼 の 瑕 』のことと 思 われます。「 銀 河 鉄 道 ?」(ラムダ)「 夜 じゃない 方 」(ベルン)※PC 版 では“ 銀 河 鉄 道 ”の 名 前 がきちんと 出 ています。『 銀 河 鉄 道 999』のことと 思 われます。 主 人 公 、 星 野 鉄 郎 のお 母 さんは 永 遠 の 命 を 持 つ 機 械 伯 爵 のニンゲン 狩 りで 殺され、 剥 製 にされてしまいます。ベルンが 言 っているのは 宮 沢 賢 治 の『 銀 河 鉄 道 の 夜 』です。「 大 丈 夫 よ。 愛 する 二 人 に、カケラの 海 は 狭 いわ」(ラムダ)「 第 三 の 男 ?」(ベルン)「 天 井 桟 敷 だってば」(ラムダ)※ 両 方 とも 映 画 で、 後 者 は『 天 井 桟 敷 の 人 々』のことと 思 われます。■????誰 もいない 大 聖 堂 に、……… 天 を 見 上 げた 姿 のまま、 赤 き 太 刀 に 胸 を 貫 かれ、 地 面 に 縫 い 止 められた 戦 人 が、…… 立 ち 尽 くしている。 戦 人 はとうに、 絶 命 している。いや、………ここでは 死 という 概 念 は、 思 考 の 停 止 しか 意 味 しない。だから 戦 人 は、ある 意 味 、 死 んではいない。…… 真 実 を 巡 る 戦 いに 敗 れ、 屈 服 した 彼 にもはや、 抗 う 思 考 の 力はない。だから、… 死 んでいる。ベアトは、……そっと、 戦 人 に 触 れる………。そして、…… 戦 人 の 胸 に、 額 を 押 し 当 てる。 鼓 動 は……、……すでにない。それは 屈 服 したから、だけではない。 魔 女 たちによって、ゲーム 盤 から 追 放 されたからだ。……だからもう。…… 戦 人 が 戻 ってくることは、……ない…。だからもう。……… 黄 金 の 魔 女 、ベアトリーチェには。 存 在 する 理 由 が、………なくなった…………。………ありがとう…。……うそつき……。…さよなら……。そして………、…ごめんね。そして、……32


黄 金 の 魔 女 は、…その 役 目 を、…… 終 えて、… 黄 金 の 飛 沫 と、 散 った。※EP5では 一 応 ベアトの 本 体 が 残 っていましたので、 駒 ベアトも 残 っていましたが、 本 体 が 消 えてしまったため、EP6では 駒 ベアトすら 残 っていません。“ドラゴンはなぜ、 昼 間 は 寝 てばかりいるのか”“ 騎 士 と 戦 うためだから”※ 騎 士 (Knight)と 夜 (night)を 掛 けています。第 1のゲームのラストで、この 物 語 が、メッセージボトルによって 後 世 に 語 り 継 がれていることが 明 記 されている。…… 誰 かが 事 件 を、 物 語 に、 記 した。つまりこの 物 語 は全 て、……メッセージボトルを 執 筆 した 人 物 という、 観 測 者 によって、 私 見 が 含 まれた 世 界 ということになる。つまり、 観 測 者 は 神 ではない。ニンゲンなのだ。よって、その 記 述 の 真 の 意 味 での 公 正 は、 保 証 されていない。※ヤス 補 正 が 入 っている 駒 がいると 考 えられます。「 足 元 がお 留 守 だわ、お 嬢 ちゃん。《 赤 :……… 全 てのゲーム 開 始 時 に、 右 代 宮 金 蔵 は 死 んでいる!》」(ガァプ)※『ドラゴンボール』のパロディと 思 われます。「………なるほど。……アクロイドが 誰 もいなくなったと 思 ったら。……これはいつの 間 にか、……………………。………くすくすくす、あっはははははははははははっはっははあははははッ!! とんだ 傑 作 集 だわッ!!」(ベルン)※アガサ・クリスティの『アクロイド 殺 し』『そして 誰 もいなくなった』『オリエント 急 行 の 殺 人 』のことと 思 われます。■ うみねこのなく 頃 に 散 Episode6 「Dawn of the golden witch」■ 偽 ざる 気 持 ち ■「……ほんの2 週 間 の 月 日 でさえも 百 年 の 魔 女 を 名 乗 るに 相 応 しい 永 遠 となりうるのだ…」(フェザ)※『ひぐらしのなく 頃 に』の 古 手 梨 花 のことと 思 われます。■ 迷 惑 な 客 人 ■「うー!! じゃあ 次 の 問 題 ねー。3つのコップと6 枚 のコインがあります。3つのコップそれぞれに、コインが1 枚 、2 枚 、3 枚 になるように 分 けて 下 さい。うー!」( 真里 亞 )「おいおい、そんなの 簡 単 じゃねぇかよ。 最 初 のコップにコインを1 枚 、 次 のコップに2 枚 、 最 後 のコップに3 枚 入 れて 出 来 上 がりだぜ」( 朱 志 香 )「ではそれを、5 枚 のコインでも 出 来 るでしょうかー! うー!!」( 真 里 亞 )※ 最 初 のコップにコインを1 枚 、 次 のコップに2 枚 、 最 後 のコップに2 枚 入 れて、 最 初 のコップを 残 りの 二 つのどちらかに 重 ねて 出 来 上 がりです。■ 魔 法 の 原 点 ■「ここまででわかることは、やはり、 六 軒 島 の 夜 の 支 配 者 と 呼 ばれた、 亡 霊 ベアトリーチェは、 存 在 しないということだわ。 夜 の 屋 敷 で 起 こる 不 可 解 な 現 象 の、 総 称 に 過 ぎない。 即 ち、ベアトリーチェとは 人 物 名 ではなく、 現 象 名 に 過 ぎないのよ。 奇 怪 な 何 かが 起 これば、それは 全 て、 黄 金 の 魔 女 の 仕 業 …。そういう“ 魔 女 の 居 得 る 環 境 ”こそがベアトリーチェ 自 身 。……それが 累 積 して、1986 年 に 至 る。……これこそが、 真 犯 人 が 被 っているヴェールなのよ。そしてそれを 被 っているのは 紛 れもなく、ニンゲンの 誰 かだわ」( 縁 寿 )「この、 魔 女 たちの 過 去 物 語 の 時 点 ではそうも 断 言 できよう。……しかし、その 論 法 だけで、1986 年 も 戦 い 抜 けるとは 思 えぬぞ……?」(フェザ)※EP4のベアト2のことを 指 すと 思 われます。■ 迷 惑 な 客 人 ■「…… 出 題 者 は、8つに 切 り 分 けろとしか 言 ってません。 等 分 は 条 件 に 含 まれませんでした。……まぁ、 折 り 方 を 工 夫 すれば 等 分 も 可 能 ですが、お 頭 の 硬 い 皆 さんには、 説明 が 混 乱 するので 省 きます。うっふふふふふふふ……。」(ヱリカ)※16センチのスライスチーズがあったとして、 最 初 に1センチのところで 折 り 曲 げて、あとは2センチごとに 折 り 曲 げていって 波 線 を 作 り、 切 るときに 各 片 が2センチの“くの 字 ”の 形 になるように 切 ればよいわけです。■ 恋 人 たち 10 月 4 日 ( 土 )22 時 03 分 ■「ヱリカさんくらいのお 歳 の 方 が、 一 番 、 自 分 自 身 との 付 き 合 い 方 が 難 しいと 思 います」( 紗 音 )※ヱリカと 同 年 代 のはずの 紗 音 がこのような 発 言 をするのは、 紗 音 の 本 当 の 年 齢 がもっと 上 であることの 伏 線 と 思 われます。■ 別 の 解 釈 の 魔 法 10 月 4 日 ( 土 )22 時 59 分 ■…… 年 々、 見 違 えるように 成 長 していく 譲 治 に、 紗 音 は 心 を 奪 われ 始 めていた。しかし、 身 分 の 違 う 自 分 とは 恋 仲 になれるわけがないと、 諦 めていた。そんな 彼 女 に、 黄 金蝶 のブローチを 与 え、 励 ました。 諦 めるということは、 確 率 ゼロということ。しかし、 魔 法 の 力 で、ひょっとしたら 叶 うかもしれないと 思 えば、 確 率 は、 少 なくともゼロよりは 高 くなる。ゼロは 永 遠 にゼロだが、ほんのわずかでも 確 率 が 存 在 するなら、……ゼロの 時 と 比 べれば、あり 得 ない 奇 跡 が 起 こったと 言 っても 過 言 ではないだろう。ニンゲンが、 自 ら 確 率 をゼロに 閉 ざす“ 諦 め”を、 魔 法 によってそこだけを 取 り 除 く。 諦 めないニンゲンには、どんなにわずかであっても、 達 する 可 能 性 がある。そしてそれは、確 信 すればするほど、 高 くなる。 紗 音 が 黄 金 蝶 のブローチに 強 く 願 い、その 効 果 を 確 信 し、…… 譲 治 に 気 に 入 られるために、 小 さな 努 力 を 積 み 重 ねただろうことは、 想 像 に難 くない。※ベアトが 紗 音 に 鎮 守 の 社 の 鏡 を 割 らせたのは“ 諦 め”を 取 り 除 くためだと 考 えられます。■ 恋 愛 の 後 悔 10 月 5 日 ( 日 )00 時 07 分 ■「……… 言 ったでしょ、 嫉 妬 の 地 獄 で 生 きてきたって。 刺 されそうになったことの 二 度 や 三 度 あるんだから。わかるのよ、 不 意 打 ち 直 前 の 雰 囲 気 が」( 霧 江 )霧 江 は 鉄 拳 をひょいとかわし、その 拳 に 手 を 添 え、 激 しく 壁 へ 打 ち 付 ける。※ 霧 江 の 戦 闘 能 力 は 高 そうです。■ 小 さな 矛 盾 10 月 5 日 ( 日 )02 時 22 分 ■金 蔵 を 除 く 全 ての 生 存 者 は、ゲストハウス2 階 へ、2 部 屋 に 分 けて 篭 城 することとなった。 一 方 は、いとこ 部 屋 。 蔵 臼 、 留 弗 夫 、 朱 志 香 、 源 次 、 嘉 音 、 郷 田 。6 人 。 一 方 は、隣 の 部 屋 。 秀 吉 、 譲 治 、 紗 音 、 熊 沢 、 南 條 、ヱリカ。こちらも6 人 。いとこ 部 屋 は、 静 かな 緊 張 感 に 満 たされていた。この 部 屋 には6 人 。 蔵 臼 と 朱 志 香 、そして 留 弗 夫 。……それから、もっとも 疑 われている、 源 次 、 嘉 音 、 郷 田 の、 男 性 使 用 人 たちが、ここで 篭 城 を 強 いられている。 朱 志 香 は 毛 布 に 包 まりながら、 蔵 臼 の 肩 にもたれかかっている。 朦 朧 とはしているが、 寝 付 けないようだった。 無 理 もない。この 異 常 な 状 況 下 で 母 の 死 を 受 け 入 れるには、まだまだ 時 間 がかかるだろう…。…… 嘉 音 は、こういう 時 にこそ、 朱 志 香 の 脇 にいてやりたいと 思 ったが、 威 圧 感 を 持 って 睨 みつけてくる 留 弗 夫 の 前 で、それは 難 しいようだった。 留 弗 夫 はずっと 沈 黙 しているが、 彼 の 内 なる 感 情 の33


全 てが 目 に 出 てしまっていた。だから、 源 次 も 嘉 音 も 郷 田 も、 自 分 たちが 疑 われていることを、 尋 ねずとも 理 解 できていた。そして 隣 の 部 屋 には、ヱリカを 初 め、 秀 吉 、 譲治 、 紗 音 、 南 條 、 熊 沢 の6 人 がいた。いとこ 部 屋 と、 部 屋 の 構 造 と 窒 息 しそうな 緊 張 感 は 同 じだが、……まだそれでも、 多 少 は 落 ち 着 いた 雰 囲 気 だった。※ヱリカはいとこ 部 屋 の 人 間 は 確 認 しましたが、 隣 部 屋 の 人 間 は 確 認 していません。「いとこ 部 屋 に 対 し、 隣 の 篭 城 部 屋 を、これより“ 隣 部 屋 ”と 呼 称 します。よろしいですね?!」(ヱリカ)「わかりやすいな。 了 解 した。……それで?」( 戦 人 )「 今 からする 所 在 確 認 は、 生 死 を 問 いません。 体 の 所 在 と 考 えて 下 さい。そしてもちろん、 現 時 点 でのことです。では 参 ります」(ヱリカ)「“ 第 一 の 晩 の 犠 牲 者 6 人 の 所 在 は、 発 見 場 所 のとおりである。 夏 妃 は 自 室 、 絵 羽 は 貴 賓 室 、 霧 江 は 蔵 臼 の 書 斎 、 楼 座 と 真 里 亞 は 客 間 で、あんた( 戦 人 )は 客 室 ”!」(ヱリカ)「………いいぜ。《 赤 :それを 認 める。》」( 戦 人 )「グッド。 続 けます。“ 隣 部 屋 に 所 在 するのは、 秀 吉 、 譲 治 、 紗 音 、 熊 沢 、 南 條 である!”」(ヱリカ)「《 赤 : 認 める。》」( 戦 人 )「グッド。 続 けます。“いとこ 部 屋 に 所 在 するのは、それ 以 外 の 全 員 である”!」(ヱリカ)「17 人 いる 島 だから、6を 引 いて5を 引 いてさらに6を 引 けば、ちょうどゼロになって、 所 在 不 明 の 人 間 はゼロになる。という 思 い 込 みは 大 変 危 険 です。 戦 人 さんも、この 辺 の 名 前 と 人 数 のトリックで、 第 3のゲームの 南 條 殺 しで、さんざん 苦 しめられたはずです」(ヱリカ)「…………そうだな。……あの 時 のトリックは、18 人 分 の 名 前 と、 実 際 に 存 在 する18 人 が 食 い 違 うことで、 未 知 の 人 物 が 混 入 する 余 地 を 許 していた」( 戦 人 )「 認 める。《 赤 :それ 以 外 の 全 員 が、いとこ 部 屋 にいることを 認 める。》」( 戦 人 )※ 嘉 音 が 隣 部 屋 にいることは 赤 字 で 宣 言 されていません。■ 悪 魔 の 結 婚 式 ■「 我 が 主 も、………ロジックエラーの 地 獄 に 落 ちたことがあるというのですか…?」(ヱリカ)「あるわ。ロジックエラーを 起 こしたのはあの 子 ではないけれど」(ラムダ)「…… 主 がゲームマスターではない…?」(ヱリカ)「そうよ。…… 当 時 、あの 子 はまだ、 自 覚 さえしていない 小 さな 駒 だったわ。ロジックエラーを 起 こしたのは、ベルンの 主 であるゲームマスターだった」(ラムダ)「…… 我 が 主 も、…… 魔 女 の 駒 だったのですか」(ヱリカ)「えぇ。………あの 子 の 主 、……これがまた 酷 いヤツでねぇ。…… 自 分 で 作 ったゲームのはずなのに、 途 中 でゴールがわからなくなっちゃって。……スタートとゴールがつながった、ドーナツみたいな、 壊 れたすごろくを 作 ってしまったのよ」(ラムダ)「ゴールをなくしたとは……?」(ヱリカ)「ロジックエラーってことね。……どうやれば 自 分 の 望 むゴールに 辿 り 着 けるか、そいつは 自 分 のすごろくを、ロジックを 描 けなかった。だからいつまでも、すごろくは 壊れたままで、ゴールがなかった。……ならば 自 分 一 人 で、 静 かにそれを 悩 んで 考 え 出 せばいいのに。……そいつはあろうことか、その 考 えることさえも、 駒 であるベルンに任 せっきりにしたのよ。………“ 無 限 の 猿 の 定 理 ”って、 知 ってる?」(ラムダ)「…… 猿 が、 無 限 の 時 間 の 中 でデタラメにタイプライターを 打 ち 続 ければ。……いつか 偶 然 にも 文 字 列 が、ハムレットとまったく 同 じ 文 章 になるかもしれないという 理 論 、いえ、 暴 論 ですね」(ヱリカ)「………ひどい 地 獄 よね。………ベルンは、 無 限 の 時 間 の 間 、 意 味 もわからずデタラメにタイプライターを 叩 かせられて。………ゲームマスターは、 自 分 さえ 思 いつかないゴールを、 彼 女 に 作 らせようとしたのよ」(ラムダ)※これは『ひぐらしのなく 頃 に』における“ 羽 入 ”と“ 古 手 梨 花 ”の 関 係 を『うみねこ』 世 界 のルールで 説 明 したものと 思 われます。「どうして、…… 僕 たちは 生 まれたんだろうね。 生 まれた 時 、すぐに 死 ねればよかったんだ」( 嘉 音 )「……それは、お 父 さんの 罪 だね」( 紗 音 )「そうさ。だからあいつも 死 ね。みんな 死 ね」( 嘉 音 )「うん。みんな 死 ぬよ。もうすぐね。……そして、すぐにみんな 蘇 って 合 えるよ。もう 私 たちは、 籠 の 中 の 小 鳥 じゃない」( 紗 音 )※お 父 さんというのは 金 蔵 のことです。…あっちのシャンデリアにいるのは、シエスタ127。2km 先 の 対 人 目 標 を 精 密 射 撃 で 粉 々に 粉 砕 できる、やり 過 ぎのバケモノ 狙 撃 手 。… 向 こうのシャンデリアにいるのは、シエスタ20. 発 射 速 度 は 毎 分 6000 発 。しかし 今 日 は 携 帯 弾 倉 なので、 全 弾 を2 秒 で 吐 き 終 える。※アンチマテリアルライフルに 使 用 される50 BMG (12.7×99mm NATO)(12.7×108mm ロシア)と20mmガトリング 砲 がモデルであると 思 われます。それが 外 側 に 生 えているものなら、 地 獄 の 番 犬 の 首 輪 などで 見 たこともある。※“ケルベロス”のことだと 考 えられます。■ 赤 と 青 の 真 実 ■「00より、シエスタ17、シエスタ38、シエスタ45、コードR、 警 戒 発 令 」(シエスタ00)※17という 数 字 は380ACP 弾 (9mm×17)くらいでしか 出 てきませんので、これがモデルなのでしょうか? 38は.38ロングコルト 弾 がモデルであると 考 えられます。ふふん。ここに 固 執 する 程 度 では、 小 林 少 年 止 まりですね。※ 江 戸 川 乱 歩 の『 怪 人 二 十 面 相 シリーズ』に 登 場 する 少 年 探 偵 団 の 小 林 少 年 のことと 思 われます。「 復 唱 要 求 。“ 戦 人 救 出 時 、 客 室 に 入 ったのは 嘉 音 のみである”」(ヱリカ)「 認 めようぞ。《 赤 : 戦 人 救 出 時 、 客 室 に 入 ったのは 嘉 音 のみである。》そういう 話 のつもりだが…?」(ベアト)「 復 唱 要 求 。“ 私 の 入 室 からロジックエラー 時 まで、 私 と 戦 人 と 嘉 音 以 外 に、 入 退 室 した 者 は 存 在 しない”」(ヱリカ)「《 赤 : 認 めようぞ。そなたの 入 室 からロジックエラー 時 まで、 客 室 を 出 入 りしたのは、そなたと 戦 人 と 嘉 音 のみだ。》」(ベアト)「 復 唱 要 求 。“それは 即 ち、3 人 のことである”」(ヱリカ)「《 赤 : 認 めようぞ。そなたと 戦 人 と 嘉 音 で、3 人 である。》」(ベアト)「 定 義 確 認 。この3 人 の 定 義 は 体 の 数 に 等 しいと 考 えていい? 3 体 が 出 入 りをしたってことですよね?」(ヱリカ)「《 赤 : 無 論 だ。3 人 、 即 ち3 体 が 出 入 りした。そなたと 嘉 音 は 入 ったのみ、 戦 人 は 出 たのみ。 全 ての 名 は 本 人 以 外 に 名 乗 れないと 赤 き 真 実 ですでに 語 っている。よって、ヱリカ、 戦 人 、 嘉 音 の 名 はいずれも、 本 人 にしか 名 乗 れぬのだ。》」(ベアト)「 復 唱 要 求 。“ 私 は 救 出 者 ではない”」(ヱリカ)「《 赤 : 当 然 だ!》 そなたは 探 偵 ではないか。 安 心 せよ、 妾 はそれを 尊 重 する!」(ベアト)「 定 義 確 認 。“ 救 出 者 の 定 義 とは?”」(ヱリカ)34


「《 赤 : 救 出 者 とは、 戦 人 の 開 けたチェーンロックを、 再 び 掛 け 直 した 者 、ということにする。 戦 人 を 救 う 意 思 があったかどうかは、 問 わないことにしておく。》」(ベアト)「 復 唱 要 求 。“ 出 入 りの 定 義 とは、 客 室 と 外 部 の 境 界 を 跨 いだかどうかである”」(ヱリカ)「《 赤 : 認 めようぞ。》」(ベアト)「 復 唱 要 求 。“ 客 室 とは、ベッドルーム、バスルーム、クローゼット 内 の 全 てを 含 む”」(ヱリカ)「《 赤 : 認 めようぞ。》クローゼット 内 を 客 室 でないと 言 い 逃 れる 気 などさらさらないわ」(ベアト)「 定 義 確 認 。 客 室 内 とは、ベッドルーム、バスルーム、クローゼット 内 の3 区 分 である」(ヱリカ)「《 赤 : 妾 もその 認 識 でいるぞ。そしてすでにそなたは、ベッドルーム、バスルームの2 区 分 で、 誰 も 隠 れていないことを 赤 き 真 実 で 確 認 したはずだ。》」(ベアト)「……《 青 :“ 戦 人 の 客 室 失 踪 ”トリックは、 以 下 の 通 りです。…… 戦 人 は 私 の 室 内 探 索 中 、クローゼット 内 に 隠 れていました。そしてバスルームの 騒 ぎの 間 に、チェーンを 外 し、 室 外 へ 脱 出 しました。この 時 、 廊 下 には 嘉 音 が 待 機 していました。 嘉 音 は 入 れ 替 わりで 客 室 に 入 り、チェーンを 施 錠 しました。これが 戦 人 失 踪 のトリックです。》《 青 :……そしてその 後 、 彼 は、………ベッドルーム 内 に 隠 れました。 私 が、ベッドルームに 不 審 者 がいないことを 確 認 した 後 のことですので、それは 有 効 です。よって、救 出 者 嘉 音 は、ベッドルームに 潜 伏 しています。》」(ヱリカ)「《 赤 :ベッドルームに 嘉 音 は 存 在 しない。》」(ベアト)「《 赤 : 客 室 に、 嘉 音 は 存 在 しない。………もちろん、クローゼット、ベッドルーム、バスルーム、この 全 てにおいてである。》」(ベアト)※クローゼットには 紗 音 がいます。しかし、この 魔 女 のゲームではそれは、 立 派 な、……“ロジックトリック”…。チェスで 言 えば、ダブルチェック。いや、ディスカバードアタック、……いやいや、ディスカバード・ダブルチェックメイト……?※ダブルチェックは 二 つの 駒 で 同 時 にチェックをかけることです。ディスカバードアタックは 例 えばクイーンの 前 にナイトを 置 いておき、ナイトを 動 かすことでクイーンの道 を 開 けて 攻 撃 する 方 法 です。ナイトを 動 かすことによってナイトで 敵 のキングをチェックし、クイーンの 道 が 開 いたことでクイーンでも 敵 のキングをチェックすればダブルチェックメイトになります。「《 赤 : 初 めまして、こんにちは! 探 偵 ッ、 古 戸 ヱリカと 申 します!! 招 かれざる 客 人 ですが、どうか 歓 迎 を!!》《 赤 : 我 こそは 来 訪 者 ッ、 六 軒 島 の18 人 目 の 人 間ッ!!!》」(ヱリカ)「………… 申 し 訳 ないが、」( 戦 人 )「《 赤 :そなたを 迎 えても、》」(ベアト)「《 赤 :17 人 だ。》」( 戦 人 &ベアト)※ 戦 人 とベアトが 言 っているのは“ 在 島 者 の 数 ”です。ヱリカが 言 っているのは“ 登 場 人 物 の 中 で 自 分 が 何 番 目 に 登 場 したか、という 順 番 ”です。「 初 めまして」なのは、 物語 のヱリカの 登 場 シーンまで 話 を 遡 らないと、18 人 目 にならないためです。 日 本 語 では、 数 を 表 す 数 字 と、 順 番 を 表 す 数 字 が 同 じであるため、わかりにくいのですが、 英語 ならこれが 分 けられているため、わかりやすいかもしれません。 英 語 では 前 者 はone、two、three、fourで、 後 者 はfirst、second、third、fourthです。もっとシンプルな 解 釈 もあります。18 人 は“ 人 間 の 人 格 の 数 ”だと 考 えるのです。 金 蔵 は 既 に 死 んでいるため 幻 想 存 在 であり、 魔 女 や 悪 魔 と 同 格 であるため、 数 に 含 まれません。■ 表 お 茶 会戦 人 からは、 銀 で 作 った、 領 主 婦 人 のみに 許 される 紋 章 の 指 輪 が。※EP7の 理 御 の 指 輪 と 同 じものでしょうか?■ うみねこのなく 頃 に 散 Episode7 「Requiem of the golden witch」■ サロ 共 和 国 ■「 東 洋 人 がイタリアの 本 を?! へぇ、 例 えばどんな?」(ビーチェ)「ニッコロ・マキャヴェッリ。ダンテ・アリギエーリも。だからあなたが 永 遠 の 淑 女 であることも 存 じていますよ」( 金 蔵 )※ベアトリーチェはダンテの『 神 曲 』に 登 場 するヒロインの 名 でもあります。■ 海 から 来 た 魔 女 ■「その 後 、 彼 女 (ビーチェ)は?」(ウィル)「しばらくの 療 養 の 後 、 右 代 宮 家 の 使 いの 方 が 来 て、 小 田 原 に 移 すと 仰 いましてな。 引 き 取 られていきました」( 南 條 )「それから 数 年 の 後 に、 子 供 を 儲 けられましてな」※PC 版 では 九 羽 鳥 庵 のベアトは、 金 蔵 とビーチェの 子 どもでした。彼 女 に 金 蔵 とは 血 の 繋 がらない 忘 れ 形 見 がいたことを 南 條 が 知 るのは、その 後 しばらく 経 ってからのことである。※PS3 版 では 金 蔵 と 血 が 繋 がっていないことになっています。おそらくCERO 規 定 に 引 っ 掛 かったのだと 考 えられます。しかし、 実 はこっちの 設 定 の 方 が 納 得 がいきます。 金 髪 ・ 碧 眼 は 劣 性 遺 伝 のため、 日 本 人 とのハーフには 生 まれませんし、 自 分 の 娘 に 手 を 出 すような 人 間 と 源 次 はともかく、 南 條 や 熊 沢 が 親 交 を 持 ち 続 けるのも 不 自 然 です。また ビーチェも 故 国 において 金 蔵 と 同 じく、 家 の 事 情 による 望 まぬ 配 偶 者 を 得 ていたのだとしたら、 同 じ 立 場 である 金 蔵 との 共 感 が 深 まります。ちなみにどういうことであれば、 九 羽 鳥 庵 のベアトが 金 蔵 と 血 が 繋 がらないかというと、 常 識 的 に 考 えられるパターンは2つです。1つはビーチェはイタリアですでに 結 婚 しており、 子 どももいたが 潜 水 艦 での 長 旅 には 耐 えられないため、 置 いてきていたというパターンです。この 場 合 、イタリアからその 子 どもを 連 れてこなければならなくなり、のちに 出 てくる“ 彼 女 ( 九 羽 ベアト)と 引 き 換 えに 死 んだベアトリーチェ”という 内 容 と 矛 盾 します。また、 九 羽 ベアトには 戸 籍 がなかったそうなので、 非 合 法 手 段 でイタリアから 連 れてきたことになり、かなり 厳 しくなります。もう1つは、ビーチェはイタリアで 妊 娠 しており、 日 本 に 来 てから 出 産 したというパターンです。これならばPC 版 の 設 定 ともかみ合 うため、どちらかを 取 るならこっちでしょう。出 産 がうまく 行 かなかったそうで……※PC 版 ではこのようになっています。だが 南 條 がそれを 知 ったときには、ベアトリーチェは 既 にひどく 身 体 を 患 い、 今 際 の 際 にあったらしい。 残 された 娘 は 金 蔵 に 託 され、そして……。※PS3 版 では、 設 定 変 更 の 影 響 でこのようなことになっています。「インゴッドには、 片 翼 の 鷲 が 刻 印 されていたと 聞 くが?」(ウィル)「 片 翼 の 鷲 、……というよりは、 片 翼 に 見 えてしまう 鷲 、というべきでしょうな。ヨーロッパに 多 いでしょう。 翼 を 広 げた 鷲 を 紋 章 にしたものは。……サロ 共 和 国 の 国 旗 にも、 鷲 が、……いやいや、 鷹 でしたかな? が、 刻 まれています」( 南 條 )「 刻 印 が 薄 かった、……あるいは 粗 雑 だったということか」(ウィル)「そうです。……… 戦 時 下 の 粗 雑 な 刻 印 でした。 本 来 は 翼 を 広 げた 鷲 の 紋 章 が 刻 印 されるべきだったのでしょう。それが、ちょうど 斜 めに 断 ち 切 ったように 半 分 、 薄 れて 消えていたのです」( 南 條 )「 翼 を 広 げた 鷲 が 半 分 消 えて、……それが、 片 翼 の 鷲 に 見 えた?」( 理 御 )35


「 金 蔵 は、 自 分 の 運 命 を 大 きく 変 えたベアトリーチェの 黄 金 に 片 翼 の 鷲 を 見 て。それを 自 分 の 紋 章 にすることを 決 めたに 違 いあるまい」(ウィル)「…… 果 たして 正 しく 刻 印 されていたなら、それは 共 和 国 旗 の 鷹 だったのか、……それともまさか、 双 頭 の……」( 南 條 )※ 双 頭 の 鳥 を 国 旗 とした 国 の 中 に 黄 金 伝 説 が 残 っている 国 があるのでしょう。■ ベアトリーチェの 誕 生 ■「 自 分 は 精 霊 の 子 だと 解 釈 したお 前 が、そこから 次 第 にオカルトに 傾 倒 していくことは 容 易 に 理 解 できる。………そこからだ。そんなお 前 が、ベアトリーチェとどこで 出 会い、どのように 交 流 していったか」(ウィル)「それは 本 当 にある 日 、 突 然 の、 唐 突 なこと。……… 六 軒 島 に 住 まう、ベアトリーチェという 魔 女 に、 私 は 会 ってみたかったの、 同 じ 魔 女 として」( 真 里 亞 )「その 頃 にはもう、 自 分 が 魔 女 という 自 覚 があったのか」(ウィル)「あった。その 頃 には、 聖 書 とオカルトでは、 大 人 にも 負 けないくらいの 知 識 があったから。だから 私 は、 魔 法 は 使 えずとも、 自 分 を 魔 女 だと 信 じていた。……きひヒヒ、ちょっと 滑 稽 だね。だから、 私 は 魔 女 見 習 いなの」( 真 里 亞 )「いつ、ベアトリーチェと 出 会 った」(ウィル)「よくは 覚 えていない。でも、その 出 会 いはよく 覚 えている。それは、とてもとても 唐 突 だった」( 真 里 亞 )「そなたが、……… 右 代 宮 真 里 亞 か」(ベアト)いつの 間 にか、…… 彼 女 はそこに 座 っていたのだ。 私 のことをそなたなどと 呼 ぶ 人 を、 私 は 知 らない。すぐに、 彼 女 は、 私 の 知 らない 誰 かだと 直 感 する……。「……あなたは、だぁれ?」( 真 里 亞 )「 会 いたいと 言 ったのはそなただ。 妾 の 島 に、 魔 女 が 訪 ねてくるから 出 迎 えてやったというのに、そなたは 妾 の 名 を 問 うというのか」(ベアト)※ 紗 音 がいきなりベアトの 口 調 で 話 し 始 めたのだと 考 えられます。「……その 時 のベアトリーチェの 印 象 は?」(ウィル)「こういっては 悪 いけど。 知 識 だけなら 私 が 上 だった」( 真 里 亞 )※ 紗 音 はミステリーには 詳 しくても、 魔 法 の 知 識 はなかったのでしょう。「 真 里 亞 の 体 に 乗 り 移 ってもいいよって 言 ったけど、(ベアトリーチェは) 島 からは 離 れられないから 出 来 ないって 言 ってた」( 真 里 亞 )※ 紗 音 の 体 に 乗 り 移 っているという 設 定 のようです。「1986 年 の 六 軒 島 で、ベアトリーチェに 実 際 に 会 えたのは、 郷 田 を 除 く 使 用 人 4 人 とお 前 と 南 條 の、 合 計 6 人 だけだったということか」(ウィル)※ 九 羽 鳥 庵 のベアトの 秘 密 を 知 る 人 間 ばかりです。■ 貴 賓 室 の 怪 談 ■「 真 里 亞 の 声 は、 予 めカセットテープにでも 録 ってあって。それを 午 前 2 時 ちょうどに 電 話 して 再 生 ボタンを 押 した。そしてほどほどのところで、 配 電 盤 か 何 かで 停 電 させた。……それから、 予 め 貴 賓 室 のどこかに 隠 れてた 誰 かが、 気 持 ち 悪 く 笑 いながら、 人 形 を 持 って 出 て 行 った。………そう 考 えりゃ、 辻 褄 は 合 うぜ。」( 朱 志 香 )※まさしくその 通 りなのでしょう。 当 日 泊 まっていたという 源 次 と 熊 沢 と 紗 音 が 協 力 したと 考 えられます。■ こいつが、 犯 人 だ ■「 夏 妃 は 数 学 的 確 率 で 見 て、257 万 8917 分 の257 万 8916の 確 率 で、あんた( 理 御 )の 育 児 を 放 棄 するわ」(ベルン)※1 億 のカケラの 中 に、 夏 妃 が 理 御 の 育 児 放 棄 をするカケラは257 万 8916 個 しかない 可 能 性 もあります。■ 新 しき 生 活 ■「 寮 でのお 部 屋 も 一 緒 だね」( 紗 音 )紗 音 との2 人 での 生 活 なら、やっていけそうだった…。「 学 校 に 通 いながら 働 く 子 など、あの 子 以 前 には 前 例 もありませんでした」( 夏 妃 )「 正 直 、 最 初 の 挨 拶 の 時 に 驚 いたよ。 明 らかに 幼 かった。 他 の 子 たちは16 歳 から18 歳 くらいなのだが、その 子 だけはさらに10 歳 は 幼 く 見 えた」( 蔵 臼 )「 福 音 の 家 から 来 る 若 過 ぎる 使 用 人 は、あくまでも 社 会 勉 強 として 当 家 に 訪 れているのであって、そもそも、 使 用 人 としての 腕 前 はあまり 期 待 していません」( 夏 妃 )「そうだな。やはり 大 人 の、 年 季 の 入 った 使 用 人 たちに 比 べると、どうしても 頼 りないものだ」( 蔵 臼 )「それが、 未 就 学 の 子 を 受 け 入 れるなんて。 家 事 はおろか、 社 会 勉 強 どころか 義 務 教 育 もまだではありませんか。お 父 様 にどんなお 考 えがあったのか 存 じませんが、 明 らかにおかしいと 思 いました」( 夏 妃 )「 親 父 殿 には 申 し 上 げたさ。せめて 中 学 を 出 るまでは 福 音 の 家 で 学 ばせるべきではないかとね」( 蔵 臼 )「そうしたら、 金 蔵 は 何 て?」(フルフル)「 決 まってるさ、こう 答 える」(ゼパル)「おお、ベアトリーチェ~~!!」」(ゼパル&フルフル)「はっはっは…。 当 時 はもうすっかりオカルトかぶれの 書 斎 篭 りさ。 余 計 なことを 言 えば、 我 が 思 考 の 旅 の 邪 魔 をするなと 怒 鳴 られる」( 蔵 臼 )「お 父 様 のお 決 めになることは 絶 対 ですから。……しかし、あの 子 についてだけは、 腑 に 落 ちませんでした」( 夏 妃 )「 福 音 の 家 にも 問 い 合 わせたさ。そしたら 源 次 さんに 聞 いてくれという。 源 次 さんに 聞 いたら、お 館 様 に 聞 いてくれという」( 蔵 臼 )※いきなり6 歳 の 女 の 子 が 使 用 人 としてやって 来 た 時 、 金 蔵 は 全 てを 悟 ったでしょう。しかし、 源 次 がそうだと 言 わない 限 り、 事 実 は 確 認 しようがないのです。「ねぇ、ガラシさん~。 何 でヤスだけは3 人 部 屋 じゃないわけですかー」(レヴィアタン 使 用 人 )ヤスというのはきっと 私 のこと。 私 は 物 心 ついた 時 から 親 がいないので、まったく 覚 えがないが、…… 一 応 、 安 田 という 苗 字 が 与 えられていました。その 安 田 で、 私 のあだ名 はヤス、らしい。「 知 らないわよ、 部 屋 の 割 り 振 りは 源 次 様 が 決 めてんだもの。 私 だって 納 得 いかないわよ」(ルシファー 使 用 人 )「ですよねー! 普 通 、2ぃ2ぃにしますよねぇ?!」(レヴィアタン 使 用 人 )※ヤスと 紗 音 以 外 に 使 用 人 は3 人 います。それならば 使 用 人 は5 人 のはずなのに、4 人 で 勘 定 しています。■ 虜 になる 日 々 ■「それ、どんなお 話 ?」( 紗 音 )「 全 員 が 招 待 状 で 招 かれて、 小 さな 島 にやってくるところから 始 まるんだ」(ヤス)※PS3 版 ではタイトルが 出 てきません。36


「それ、 何 て 作 品 ?」( 紗 音 )「アガサ・クリスティ。『そして 誰 もいなくなった』。…… 面 白 い。まるで 六 軒 島 で 事 件 が 起 こってるみたい」(ヤス)※PC 版 ではちゃんとタイトルを 出 しています。「この 魔 女 、せいぜい495 年 程 度 しか 生 きていまいぞ」(ガァプベアト)※『 東 方 紅 魔 郷 』のキャラクターである“フランドール・スカーレット”のことであると 思 われます。 彼 女 のテーマ 曲 “U.N.オーエンは 彼 女 なのか?” やスペルカード“ 秘弾 「そして 誰 もいなくなるか?」” の 名 前 、および『 紅 魔 郷 』エクストラステージを 魔 理 沙 でクリアした 際 の 会 話 シーンは、アガサ・クリスティの 小 説 『そして 誰 もいなくなった』が 元 ネタで、フランドールが“ 何 者 とも 判 らぬ 者 (unknown)”であることに 通 じています。■ 新 しき 日 々 ■その 年 、ごっそりと 福 音 の 家 の 使 用 人 たちが 辞 めることとなった。 我 だけを 残 し、 福 音 の 家 から 来 た 仲 間 たちは 一 斉 に、この 島 から 卒 業 していった…。せっかく 後 輩 が 入 ってきても、 先 輩 たちが 私 のことを、ヤスはよく 物 をなくして 云 々と 吹 き 込 んだため、 新 しい 仲 間 が 来 ても 不 愉 快 なままだったのだ。その、 不 愉 快 な 先 輩 も 同 輩 も 後 輩 も、 一度 に 辞 めることとなった。「じゃーね、ヤス。あんた、 物 を 無 くしたりするんじゃないわよ」(ルシファー 使 用 人 )「…… 未 だに 謎 よね。どうしてヤスはここに 推 薦 されたの?」(レヴィアタン 使 用 人 )「それを 言 ったら、 未 だに 奥 様 がヤスの 勤 務 を 認 めている 方 が 意 外 だわ」(サタン 使 用 人 )「 逃 げ 出 さない 分 だけ、 根 性 があるってもんだ。しっかりな、ヤ・ス」(ベルフェゴール 使 用 人 )「……みんなとは、ついにお 友 達 になれなかったね」( 紗 音 )※ 誰 も 紗 音 に 話 しかけません。ちなみにこの 時 “ルシファー 使 用 人 ”は 寮 を 出 て、アパート 暮 らしなどをしながら 六 軒 島 で 働 いていたと 思 われます。新 しく 来 る 使 用 人 は、 相 変 わらず 私 よりも 年 上 だろうけれど。 私 が 先 輩 として 色 々 教 えなきゃ。「 明 日 音 と 申 します。よろしくお 願 い 致 します」(アスモデウス 使 用 人 )「 鐘 音 (べるね)と 申 しまーす。よろしくお 願 いしまーす」(ベルゼブブ 使 用 人 )「まさか、 紗 音 ちゃんも。それ 信 じてるわけじゃないですよねー?」( 鐘 音 )※ここまでの 話 ではじめてヤス 以 外 の 人 間 が 紗 音 に 話 しかけました。しかし、これは 紗 音 に 話 しかけたのではなく、ヤスに 話 しかけたのです。ヤスの 名 前 は 安 田 紗 音 なのです。「…… 鍵 束 がなくなった 時 には、 私 が 見 ていない 隙 にヤスが、ひょいってどこかに 隠 したんだろうと 思 えた。……でも、 鍵 束 から、ひとつだけ 鍵 が 消 えてて、それがありもしないところから 出 てくるなんて、 考 えられない」( 鐘 音 )「その 鍵 だけあんたが 見 てない 隙 に、 引 っこ 抜 いたんじゃないの…?」( 明 日 音 )「そんなの 出 来 る?! 実 際 に! 鍵 束 を 丸 ごとひょいっと 隠 すならともかく、 鍵 束 から 鍵 をひとつ 抜 き 取 るって、 考 えれば 考 えるほどに 簡 単 じゃないよ?! カチャカチャ、ガチャガチャ。すぐそこで 私 が 背 中 を 向 けているのよ? そんなこと 悠 長 にやってたら、いくら 私 が 馬 鹿 でも 気 が 付 く!」( 鐘 音 )「その、 紛 失 した 鍵 はどこから 見 つかったの?」(フルフル)「 私 の、………ロッカーから。……いいよ、ヤスがこっそりやったって 仮 定 してもいい。そう 考 えると 気 楽 になれるもん。……でもね?! じゃあ、どうやってロッカーに入 れたわけ?! ヤス、 私 たちとずっと 一 緒 じゃん?! 私 がないないって 大 騒 ぎして、あちこち 探 し 回 ってロッカーの 中 で 見 つけるまで、ずっと 一 緒 だったじゃん?!」( 鐘 音 )※ヤスが 自 分 の 鍵 束 から 鍵 を 外 して 鐘 音 のロッカーに 入 れておき、 自 分 の 鍵 束 と 鐘 音 の 鍵 束 をすり 替 えたのです。「……… 紗 音 。……… 起 きてる…? ………………。…… 私 、 使 用 人 やめる。もう 決 めたの、 紗 音 。 今 日 まで 楽 しかった。この 部 屋 はあげるね。あなたひとりで 使 って。じゃあね。さようなら」(ヤス)※PS3 版 では、この 場 面 で 初 めてヤスの 声 に 音 声 がつきます。「 紗 音 のような 素 敵 な 使 用 人 も 悪 くはない。……でも、 魔 女 の 楽 しさを 知 ってしまったら、もうそれは 退 屈 な 憧 れ。もう 戻 れない」(ヤス)「 紗 音 はどうするのか」(ガァプベアト)「…… 紗 音 は 紗 音 で、これからも 尊 敬 される 使 用 人 でいてくれればいい。 彼 女 は 彼 女 のままで。ただ、これからは 私 と 二 人 ではなく、 彼 女 だけになるけれど。あなたが 魔 女で、 私 の 友 人 という 設 定 はそのままで。ベアトは 私 ということに 世 界 を 変 更 する。だからあなたは 今 から、ベアトリーチェじゃない 魔 女 」(ヤス)※ここまでの 場 面 に 出 てきた 紗 音 はヤスの 心 の 中 の 友 達 であり、 理 想 の 自 分 だったのです。私 は、 自 分 の 抜 け 出 た 寝 床 に 向 かって 手 を 伸 ばしながら、…… 待 って、と 言 っていたようだった。 寝 惚 けておかしなことを 口 走 って、その 勢 いで 目 が 覚 めてしまった 経 験 は、ないことはないけれど。…… 寝 床 を 抜 け 出 して、こうして 立 ったまま 目 が 覚 めた 経 験 なんて、 今 までに 一 度 もない。ひょっとしてこれが、…… 噂 に 聞 く、 夢 遊 病 なのかしら…。 私 、 疲 れてる……? …… 寝 なきゃ。 寝 直 さなきゃ。 私 は、 自 分 のベッドに、 踵 を 返 す。…………? 振 り 返 ったところで、 自 分 のベッドなどそこにはない。 今 、 背 を向 けたベッドしか、この 部 屋 にはないのだから。この 部 屋 にいるのは 私 一 人 で、ベッドも 私 の 背 中 に 一 つしかないなら……、……それはつまり、 私 のベッドということではないか。……なぜだか、 釈 然 としない。ベッドの 布 団 は、 誰 かが 這 い 出 たように、 乱 れている。 誰 かが 這 い 出 た…? この 部 屋 は、 私 の 一 人 部 屋 じゃないか。なら、それは私 のベッドであり、 這 い 出 た 跡 とはつまり、 私 がさっきまでこの 布 団 に 寝 ていたということではないのか…? ……でも、どうしてか、………このベッドが、…… 自 分 のベッドだと 思 えない。しかし、 私 、 紗 音 は、 他 の 子 たちは 相 部 屋 なのに、 私 一 人 だけ 一 人 部 屋 を 与 えられている。だからベッドも 一 つ。 無 論 、それは 私 のベッドのはず。※ 実 は 一 人 部 屋 であったことがわかりました。■ 新 しき 元 素 ■「1986 年 に 戦 人 さんが 帰 ってくるという 事 実 が 変 わらぬ 限 り。……… 何 かの 悲 劇 は 起 こったでしょう」(クレル)「そうだな。…… 戦 人 が 帰 ってくるのが、 一 年 早 いか 遅 いかだったら。……… 事 件 は 起 こらなかったかもしれねェ。いや、 何 か 小 さな 事 件 は 起 こったかもしれない。そしてそれはきっと、 誰 にも 解 くことの 出 来 ぬ、 謎 の 不 可 能 事 件 となっただろう」(ウィル)※ 紗 音 か、 嘉 音 のどちらかが 消 えざるを 得 ないことだと 考 えられます。37


■1983 事 件 まであと3 年弟 の 設 定 は、 福 音 の 家 で 仲 の 良 かった、 年 下 の 男 の 子 。 名 前 は、…………… 福 音 の 家 のルールに 従 い、 音 の 一 字 を 与 えよう。※ 嘉 音 の 年 齢 は1986 年 の 時 点 で16 歳 です。 紗 音 も16 歳 ということになっていますが、 本 人 がそのように 語 った 場 面 はありません。つまり 紗 音 は 自 分 の 年 齢 が19 歳であると 認 識 しているわけです。■1984 事 件 まであと2 年「うーうー! じゃあ 今 度 はベアトの 番 ! 真 里 亞 のお 友 達 の、ウサギさんたちにも、また 絵 を 描 いてあげて! さくたろみたいに!」( 真 里 亞 )「ふむふむ、 良 かろうぞ。その 魔 導 書 を 貸 すが 良 い」(ベアト)「うりゅー! ベアトは 絵 がとっても 上 手 だから、とっても 楽 しみ!」(さくたろう)「どんな 絵 になるの? どんな 絵 になるの? ウサギさんたち、 楽 しみ! うーうーうー!!」( 真 里 亞 )「 森 の 音 楽 隊 であったな。…… 音 楽 隊 、 音 楽 隊 ……。……ふぅむ。よしよし、こんな 感 じではどうか…」(ベアト)※シエスタ 姉 妹 の 誕 生 です。「…… 碑 文 の 謎 に 挑 む 資 格 は、 全 ての 者 に 許 されている。 無 論 、それは 使 用 人 も 例 外 ではない。……お 前 は、 挑 んでいるのか?」( 源 次 )※この 場 面 では 紗 音 と 嘉 音 がいますが、 源 次 は 紗 音 だけに 話 しかけています。これは 紗 音 しか 認 識 していないためと 思 われます。「なるほど、やっと 蔵 臼 さまの 話 が 繋 がったよ。ほら、お 館 様 が 好 まれる、ビンロウ」( 嘉 音 )「……そう 言 えば 蔵 臼 さま。あれは 台 湾 では 煙 草 のようにポピュラーな 嗜 好 品 だと 仰 ってましたっけ…。それでお 館 様 はビンロウを……」( 紗 音 )※ 金 蔵 は 夏 妃 が 来 た 時 に、ビンロウは 止 めたはずですが…。 懐 かしがって 紗 音 に 話 したのかもしれません。■ 魔 女 の 蘇 る 日 ■誰 が 来 たのだろう。まさか、 金 蔵 ? このような 場 所 ( 地 下 貴 賓 室 )にいることが 知 られたら、 酷 く 叱 られるのでは……。(ベアト)「お 館 様 は、 碑 文 を 最 初 に 解 いたものに、 黄 金 と 家 督 の 全 てを 譲 り 渡 すと 仰 られた」( 源 次 )「…… 皆 さんは、…… 知 っていたんですか……… 私 のことを………」(ベアト)源 次 も 熊 沢 も、 南 條 までもが、 無 言 で 頷 く。「………ベアトリーチェ。…………いや、……… 理 御 。そなたに 与 えようと 思 っていた、 名 前 だ……」( 金 蔵 )「……あなたの、 本 当 の 名 前 でございます」( 源 次 )金 蔵 は、 枯 れ 木 のような 手 を 差 し 出 す。その 指 には、 右 代 宮 家 当 主 であることを 示 す、 片 翼 の 鷲 の 紋 章 が 刻 まれた 指 輪 が 輝 いていた。それを 引 き 抜 くと、 強 く 握 り 締 めながら、 私 に 向 かって 突 き 出 す。……わたしはどうしていいかわからない。 引 き 寄 せられるように、おずおずと、…… 私 は 両 手 を、 手 の 平 を 上 にして 差 し 出 す。 金 蔵 は、その 手の 上 に、…… 拳 をぐっと 押 し 付 けてから、ゆっくりと 手 を 開 き、 指 輪 を 預 ける。「 右 代 宮 金 蔵 ッ、 我 が 生 に 一 切 の 未 練 なしッ!! もはや 何 もなし! 心 残 りも 遣 り 残 しも 何 もなし!!」( 金 蔵 )金 蔵 は 天 を 見 上 げながら、 喝 采 する 客 席 に 向 かって 両 手 を 上 げて 応 えるかのような 仕 草 をしながら、…… 大 きな 声 で 笑 い 続 ける。……… 金 蔵 の 笑 い 声 がかすれ、…… 消 えた時 。 彼 は、 操 り 人 形 の 糸 が 切 れたかのように、……カクンと 膝 をつき、…………ゆっくりと、……… 倒 れた………。 脈 を 取 ったりしていた 南 條 は、 小 さく 首 を 横 に 振 るとゆっくりと 立 ち 上 がる。「………… 大 往 生 だ。…… 何 の 心 残 りもないだろう」( 南 條 )※この 場 面 は『 北 斗 の 拳 』のパロディかもしれません。「………この 黄 金 は、 全 てあなたのものです。…… 現 金 化 をご 希 望 でしたら、そのように 手 配 することも 出 来 ます」( 源 次 )私 の 胸 の 痛 みは、お 金 では 癒 せない。ただ、……… 彼 が 帰 って 来 て 欲 しいだけ。「この 地 下 貴 賓 室 へ 至 る 鍵 です。これを 使 えば、もう 仕 掛 けを 使 う 必 要 はありません」( 源 次 )「わ、 私 が 当 主 なんてそんな……。それに、 次 期 当 主 は 蔵 臼 さまでは……」(ベアト)「 碑 文 の 謎 を 解 いた 者 が 次 期 当 主 である。………これはお 預 かりしている 遺 言 状 にも 明 記 してございます」( 源 次 )※これらの 場 面 は 紗 音 がベアトに 修 飾 されているだけで、あとは 全 て 現 実 にあったことと 考 えられます。私 が 何 者 か、 今 日 、 私 は 得 ることが 出 来 た。 誰 から、いつ、どのようにして 生 まれてきたのか。……それを、 時 間 をかけてゆっくりと、 彼 らから 聞 いていこう。それだけで、もう、 充 分 なのだ。※その 後 、 紗 音 は 金 蔵 とビーチェの 馴 れ 初 めの 話 や、 九 羽 鳥 庵 のベアトの 話 も 聞 いたのでしょうが、 紗 音 はそれを 事 実 だとは 思 わなかったのです。■ 魔 女 幻 想 、 散 る ■「 私 は、…… 委 ねる、 決 断 をしました。 先 代 当 主 より 全 てを 受 け 継 いだ 儀 式 の 時 のように。…… 私 もまた、 奇 跡 という 名 の 運 命 に 身 を 委 ねることを 選 びました」(クレル)ルーレットに、 身 を 委 ねたと 言 った 方 が、 正 しいかもしれない。 私 は、 私 たちは、…… 自 分 たちの 運 命 さえ 決 められなくて。 全 てを 運 命 に 託 したのです。 誰 かが 報 われるかもしれない。あるいは 全 員 が 結 ばれて、 解 放 されるかもしれない。さもなくば 誰 かがこの 愚 行 を、 止 めてくれるかもしれない。「……どの 運 命 をルーレットが 指 し 示 そうとも。 私 はそれに 従 うことにしました。 私 は、 運 命 に、 抗 わない。…… 抗 ったって、……いつだって 運 命 は 私 に、 非 情 だったんですから……」(クレル)人 の 可 能 性 は 無 限 だと、ニンゲンたちは 軽 々しく 口 にする。しかし、 無 限 の 魔 女 は、…… 本 当 は 有 限 であることを、 知 ってしまった。だから 彼 女 は、その 有 限 の 運 命 の 仲 に、無 限 を 見 出 そうとした。 自 分 の 運 命 を、 神 に 委 ねることで、 無 限 を 見 出 そうとした。しかしそれは、 自 分 の 運 命 の 放 棄 ではない。なぜなら、 運 命 のルーレットに、 絶 対 の 意思 で 臨 んだから。 誰 も 碑 文 の 謎 を 解 けないなら、 誰 も 絶 対 に 逃 れられない、 絶 対 の 運 命 。それで 島 を 閉 ざした。 自 分 ごと。1986 年 10 月 4 日 から5 日 は、 絶 対 の 意 思 で封 じられ、………その 狭 い 時 間 と 島 の 中 で 選 ばれるいずれかの 運 命 に、…… 彼 女 は 身 を 任 す。※ 運 命 のルーレットに 身 を 委 ね、その 結 果 に 必 ず 従 う。これこそが『ベルンの 手 紙 』に 書 かれたルールZの1つではないでしょうか?■ Episode7 「Requiem of the golden witch」 完 ■38


■ 表 お 茶 会「 実 はね。…… 今 年 、 戦 人 くんが 戻 ってくると 聞 いて、…… 僕 は 最 初 、いやな 気 持 ちだったんだよ。………6 年 前 。…… 君 と 本 当 に 仲 が 良 かったのは、 戦 人 くんだった。 僕は 君 ともっと 仲 良 くなりたいと 思 っていたけれど、まったく 間 に 割 り 込 むことなんて 出 来 なかった。……… 僕 は 本 当 にみっともないね。 今 日 、 君 に 指 輪 を 渡 す 時 、 断 られるかもしれないと 怯 えた」( 譲 治 )「どうしてですか。…… 私 が 譲 治 さんの 指 輪 を、どうして 拒 むと?」( 紗 音 )「 戦 人 くんが、 帰 ってきたからさ。 君 は 本 当 は、 今 でも 戦 人 くんのことが 好 きで、……。…… 彼 が 帰 ってきた 今 、 僕 は 用 済 みなんじゃないかなって、……… 怯 えたんだ」( 譲治 )「……もし、 私 の 気 持 ちが 戦 人 さまに 移 るのではないかと 怯 えるなら。そんなことを 絶 対 に 思 わせないくらいに、 強 く 愛 して 下 さい。…… 私 が、あなた 以 外 の 男 性 のことを考 える 暇 なんかないくらいに、 愛 して 下 さい。 私 だって 怖 いんです。 私 より 魅 力 的 な 女 性 なんて、これからもいくらでも 現 れるでしょう。あるいは、 至 らぬ 私 に 愛 想 を 尽 かすこともあるかもしれない。 生 涯 、あなたの 気 持 ちを 私 だけに 繋 ぎ 止 めていられるか、 怖 いんです。…… 私 は、 右 代 宮 譲 治 さんという 素 敵 な 方 を 射 止 めました。そして、 生涯 、 私 を 愛 すると 誓 わせ、それを 誓 う 指 輪 をこうして 贈 らせました。その 指 輪 を、こうして 薬 指 に 通 した 上 で、 正 直 に 告 白 します。 私 は 確 かに 仰 る 通 り。……6 年 前 、 戦 人さまのことが 好 きでした。 多 分 、 譲 治 さんより、 好 きだったと 思 います。でも。それは6 年 前 の 話 です。 今 の 話 では、ありません。 戦 人 さまへのその 気 持 ちは、この6 年 間で 整 理 され、 思 い 出 と 一 緒 に 過 去 へ、 決 別 したものです。 今 の 私 は、あなたを 愛 するためだけに 存 在 します」( 紗 音 )※ 戦 人 への 恋 心 はベアトの 人 格 に 預 けてしまったため、 紗 音 の 人 格 は 譲 治 だけを 愛 しているのです。魔 女 はなおも 歩 み 寄 る。そして 一 同 の 人 垣 を 割 り、その 向 こうに 置 かれている、アンティーク 時 計 のところへ 行 った。その 時 計 は、なかなか 立 派 な 貫 禄 を 持 つ、 大 きなものだった。それを 撫 でながら、 魔 女 は 言 った。「……この 時 計 の 仕 掛 けも、 皆 さんにご 説 明 しましょう。 皆 さんは 黄 金 だけでなく。この 島 の 全 てを 手 に 入 れられたのですから。この 島 の 地 下 には、 戦 時 中 の 旧 日 本 軍 の 地下 基 地 跡 が 眠 っています。そしてそこには、900tもの 爆 薬 も 眠 っているのです。 専 門 家 の 推 定 では、 直 径 1km、 深 さ 数 十 mの 大 穴 が 開 くとか。この 爆 弾 は、 特 別 な 仕 掛けで 爆 発 します。…… 私 が 今 、 操 作 した、これが 起 動 のスイッチです」(ベアト)魔 女 はアンティーク 時 計 の 上 部 のスイッチをいじる。「この 状 態 で24 時 を 迎 えると、 爆 発 します」(ベアト)「つまり、 残 り 何 時 間 で 爆 発 する、というのではなく。24 時 ぴったりにしか 爆 発 しない 時 限 爆 弾 というわけね。…… 半 世 紀 も 前 の 爆 弾 でしょう? 本 当 に 爆 発 するの?」( 霧 江 )「はい、もちろん。 爆 薬 も 信 管 も 健 在 です。…… 試 しましたから」(ベアト)「そうか、やっとわかったよ。 鎮 守 の 社 が 跡 形 もなく 消 え 去 ったのは、そういうわけか…」( 蔵 臼 )この 夏 、 鎮 守 の 社 が、 岩 礁 ごと、 跡 形 もなく 消 え 去 った。「 如 何 にも。……… 半 世 紀 を 経 て 今 なお 爆 薬 が 健 在 であるか、あの 社 で 実 験 させていただきました。 結 果 は、 皆 さんもご 承 知 の 通 りです。この 地 下 貴 賓 室 は、 基 地 跡 の 地 下通 路 に 通 じています。それをまっすぐ 進 めば、 島 の 反 対 側 にある 隠 し 屋 敷 、 九 羽 鳥 庵 に 出 ることが 出 来 ます。 距 離 は 約 2km。そこまで 逃 げられれば、 爆 発 からも 逃 れられるでしょう」(ベアト)※これは 教 えられないと 分 からない 仕 掛 けです。EP3の 絵 羽 は 何 らかの 方 法 でこれを 教 えてもらったと 考 えられます。発 砲 音 の 残 響 が 収 まると、…… 魔 女 は 口 からどろりと 血 を 零 し、そのままベッドに 倒 れた。※この 怪 我 ではとても 生 きて 潜 水 艦 基 地 まで 辿 りつけるとは 思 えません。ですから、この 場 面 は 実 際 の 出 来 事 ではないと 思 われます。 赤 い 塗 料 を 使 っての 死 んだフリも 考 えられますが、 全 てを 諦 めたこの 場 面 でそんなことをする 意 味 があるとは 思 えません。霧 江 は、 自 分 が 手 にした 銃 が、 銃 身 の 長 さから 装 弾 数 が5 発 だろうということはすぐに 見 抜 いていた。………そう。 霧 江 も 留 弗 夫 も、この 銃 には 深 く 精 通 していた。 父 親 の影 響 で、 西 部 劇 の 銃 に 興 味 を 持 っていた 留 弗 夫 は、 同 型 の 散 弾 銃 を 所 持 していたのだ。そして 霧 江 も 同 じ 銃 を 扱 う 資 格 を 持 ち、 二 人 で 射 撃 を 楽 しむほどに、……この 銃 には精 通 していた…。この 場 にいる 人 数 は、 魔 女 を 加 えて8 人 。 自 分 たち 以 外 に6 人 いる。 装 弾 数 は5 発 。……1 発 、 足 りない。 皆 殺 しには 銃 弾 が 足 りなかったのだ。※EP3で 留 弗 夫 と 霧 江 が 銃 を 自 在 に 操 ったのは 単 なる 幻 想 描 写 ではなかったようです。そして 彼 女 ( 絵 羽 )は、 静 寂 に 包 まれた 黄 金 の 部 屋 で 目 を 覚 ます。 傍 らには 愛 する 夫 の 屍 。 蔵 臼 夫 婦 の 屍 に、 楼 座 の 屍 。※ 魔 女 が 倒 れたのはベッドですし、 絵 羽 が 気 を 失 っている 最 中 のことですから、ベッドまでは 気 が 回 らず、 魔 女 の 屍 には 気 がつかなかったと 考 えられます。「イ、イタリア 人 の 黄 金 を 奪 うだと? 卑 怯 者 め、 右 代 宮 、 貴 様 、それでも 軍 人 かぁあああぁ?!」(???)「………お、お 父 様 ……? わ、 私 はお 父 様 のことを 敬 愛 いたしております……。で、でも、……そのお 父 様 の 気 持 ちには、その……」(ベアト)「どうして…!! どうしてあなたたちは 私 を 助 けたんですか?! どうして 死 なせてくれなかったんですか?! 私 はあのときの 大 怪 我 で、……こんな 体 で 生 きさせられている!! こんな 体 で 生 きていたくなんてなかった!! こんな、 恋 をすることも 出 来 ない 体 で……!! そんなの、そんなの、 生 きる 価 値 がないんじゃないですか?!そんなのニンゲンじゃない…!! 家 具 じゃないですか!!」(???)※ 上 記 3つの 場 面 が、 切 り 裂 かれたクレルの 体 から 溢 れてきました。 僕 はこれはヤスが 心 に 秘 めていた 真 実 、あるいは「 本 当 はこういうことだったんじゃないの?」と 思 っていた 真 実 なのだと 思 います。ヤスは 金 蔵 が 嫌 いでした。ですから、 金 蔵 の 死 後 に 源 次 から、 金 蔵 とビーチェの 話 を 聞 いた 時 、それを 真 実 だとは 信 じられなかったのです。その 証 拠 が2つ 目 です。このベアトは 九 羽 鳥 庵 のベアトだと 考 えられますが、 金 蔵 のことを「お 父 様 」と 呼 んでいます。“「……ベアトリーチェ。 先 ほどから 呼 んでおる。 聞 こえなんだか…?」( 金 蔵 )(EP3)「……む。そうであったか? すまぬ。ぼんやり 考 え 事 をしていた。 許 せ。…… 妾 は 何 者 なのか。この 問 いに、 今 日 まで 応 えてくれた 者 はおらぬ。……なぜか 皆 、 目 を 逸 らし、はぐらかす。……そなたとは 長 い 仲 だ。 妾 はそなたを、 無 二 の 友 であり、そして 父 ですらあると 思 っておる。……だからどうか 教 えて 欲 しい。そなたは 知 っているはずだ。… 妾 が 何 者 であるかを。…………………」( 九 羽 鳥 庵 のベアト)「《 赤 : 六 軒 島 の 森 の 中 には、 九 羽 鳥 庵 という 隠 し 屋 敷 が 実 在 します》。それが、 今 、 話 をしていた 場 所 です」(ロノウェ)(EP3)「この、 九 羽 鳥 庵 の 庭 でくつろいでるベアトと、…さっきの 祖 父 さまとの 会 話 は、 真 実 なのか?」( 戦 人 )「はい。 真 実 です。かつて、《 赤 : 実 際 にこの 場 所 で、お 二 人 はこのような 会 話 をなされました》」(ロノウェ)「はい。《 赤 :ここは1967 年 の 世 界 》。19 年 前 の 世 界 でございます」(ロノウェ)(EP3)”※しかし、 実 際 の 九 羽 鳥 庵 のベアトは 上 記 のように 金 蔵 のことを 呼 び 捨 てにしていました。ヤスは 真 実 を 知 らないため、 常 識 的 に 考 えて 九 羽 鳥 庵 のベアトは 金 蔵 のことを「お父 様 」と 呼 んでいただろうと 思 ってしまったのです。3つ 目 はヤスが 源 次 と 南 條 に 言 いたかったけれども、 心 の 中 に 抱 えていた 言 葉 でしょう。■ 裏 お 茶 会「…… 私 、まだ 全 然 ゲームマスターをやっていないのよ? …… 私 はベアトの 葬 儀 をやっただけ。そしてハラワタを 引 き 摺 り 出 しただけ。…………まだ、 何 もやっちゃいない」(ベルン)※お 茶 会 で 語 られた 物 語 のゲームマスターはベルンではないわけです。39


■ うみねこのなく 頃 に 散 Episode8 「Twilight of the golden witch」戦 人 は 懐 より、 首 飾 りに 繋 がった 大 きな 鍵 を 取 り 出 し、 縁 寿 に 差 し 出 す。それは 戦 人 の 手 の 平 いっぱいの 大 きさがあり、 幼 い 縁 寿 には 一 握 りしても 余 るほどの 大 きさが 感 じられた。 金 色 に 輝 き、 凝 った 意 匠 が 施 された 美 しい 鍵 。その 重 みだけで、さぞ 大 切 な 鍵 に 違 いないとわからせてくれた。「これは 縁 寿 だけの、 大 切 な 鍵 だ」( 戦 人 )「 何 の 鍵 なの……?」( 縁 寿 )「 使 うべき 時 は、すぐに 来 る。そして 縁 寿 が、 自 分 で 決 めるんだ。……わかるね?」( 戦 人 )手 に 持 った 時 は、ずしりと 重 いと 思 ったのに。 首 に 掛 けてみると、 普 通 の 首 飾 り 程 度 の 重 さにしか 感 じられなかった。※ 幻 想 で 修 飾 された 絵 羽 の 日 記 の 鍵 ですから、 実 物 はそれほど 大 きくないようです。■ 6 歳 の 縁 寿 ■あの 日 も、6 年 前 と 何 も 変 わらず、 祖 父 さまはハッピーハロウィンの 声 とともに 客 間 にやって 来 たよ。そして、 俺 との6 年 ぶりの 再 会 に 涙 を 零 してくれながら、…… 俺 とプレゼント 交 換 をした。…… 祖 父 さまは、 縁 寿 が 来 れなかったことを 残 念 がっていたよ。だから、 縁 寿 にぜひ 渡 してくれと、 霧 江 さんにプレゼントボックスを 預 けていた…。「そんなプレゼント、 私 は 知 らない、 受 け 取 ってない…!!」( 縁 寿 )※ 最 初 は 信 じていましたが、よく 考 えてみたら 金 蔵 はとっくの 昔 に 死 んでいるのでした。「……これは、 俺 のゲームだ。だから 確 かに、これは 俺 の 物 語 であり、 俺 が 紡 いでいる。だからこそ、もしもお 前 が 島 に 来 ることが 出 来 たならという、IFを 混 ぜることが出 来 る」( 戦 人 )「ほらッ! お 兄 ちゃんの 物 語 じゃないッ!! 全 部 お 兄 ちゃんの、…… 嘘 っぱちの 作 り 話 じゃない!!」( 縁 寿 )「…………………そうだな。これは 全 て 俺 の、 作 り 話 だ」( 戦 人 )「どうして 私 に、 真 実 を 教 えてくれないの?!」( 縁 寿 )「…… 真 実 より、……もっと 大 切 な。……どうしても 伝 えたいことがあるからだ。それをわからせるためのものが、 俺 のゲームだ」( 戦 人 )※“ 全 て”がどこまでを 指 すのか、それが 問 題 です。魔 女 は、そっと 左 手 を 差 し 出 し、 縁 寿 の 顔 に 近 づけた。そしてゆっくりと 手 の 平 を 開 いてみせた。 縁 寿 は 魔 女 の 手 の 表 と 裏 を 確 認 する。( 中 略 ) 魔 女 はゆっくりと、その 右 手の 拳 を 開 く……。すると、………そこには……。 魔 女 は、 可 愛 らしく 包 装 されたその 飴 玉 を、 縁 寿 にプレゼントする。※ 略 せば 一 目 瞭 然 です。■ 黄 金 の 返 還 ■「おや。M・ザッキーはお 嫌 いで?」( 天 草 )※『うみねこ』に 楽 曲 を 提 供 している 人 の 中 に“M.Zakky”という 人 がいますので、その 人 のことかと。■ ハロウィンパーティ ■この 楽 しい 時 間 の 中 に、いつまでもいたい。…… 永 遠 に。 私 の 心 の 中 に 浮 かんだ 願 望 を、 幼 い 私 が 代 弁 する。「さ、……さっきまでの 楽 しいのが、ずっと 続 いて 欲 しいのっ」( 縁 寿 )少 しニュアンスが 変 わってしまった 気 がする。それでも、それが 私 の 偽 らざる 願 いだった。※この 時 の 縁 寿 は 駒 に“ 半 乗 り”くらいの 感 じだったのでしょうか?■ 真 里 亞 の 出 題2 人 乗 りの 船 を 使 い、 全 員 が 対 岸 に 渡 らなければならない。こちらの 岸 には、 農 夫 とその 妻 と 羊 飼 いと 羊 と 牛 と 肉 と 野 菜 がある。(これらはそれぞれ、 船 では1 人 分 として扱 う) 船 は、 農 夫 と 妻 と 羊 飼 いの3 人 にしか 漕 げない。 妻 は、 農 夫 と 一 緒 でない 時 に 羊 飼 いがいると、 駆 け 落 ちをしてしまう。 羊 飼 いは、 農 夫 か 妻 が 一 緒 にいない 時 に 肉 があると、 盗 み 食 いしてしまう。 羊 は、 羊 飼 いと 一 緒 にいない 時 に 野 菜 があると、それを 食 べてしまう。 牛 は、 人 間 が 誰 か 一 緒 にいない 時 に 野 菜 があると、それを 食 べてしまう。 肉 は、 積 み 下 ろしが 大 変 なので、 一 度 船 から 降 ろしたら、もう 積 めない。 野 菜 は、 傷 みやすいので、 一 度 しか 船 に 乗 せられない。 最 低 何 手 で 達 成 することができるだろうか…? 選 択 肢 5つ。「10 手 未 満 」「10 手 以 上 15 手 未 満 」「15 手 以 上 20 手 未 満 」「20 手 以 上 25 手 未 満 」「それ 以 外 」※ 人 間 以 外 も 含 めた 全 部 が 対 岸 に 渡 る 場 合 を 考 えてみます。 妻 が 肉 と 船 に 乗 って、 対 岸 に 肉 を 下 ろして1 手 。 妻 が 船 で 戻 って2 手 。 農 夫 が 妻 と 船 に 乗 って、 対 岸 に 妻 を 下 ろして3 手 。 農 夫 が 船 で 戻 って4 手 。 農 夫 が 牛 と 船 に 乗 って、 対 岸 に 牛 を 下 ろして5 手 。 農 夫 が 船 で 戻 って6 手 。 農 夫 が 野 菜 と 船 に 乗 って、 対 岸 に 野 菜 を 下 ろして7 手 。 農 夫が 船 で 戻 って8 手 。 農 夫 が 羊 飼 いと 船 に 乗 って、 対 岸 に 羊 飼 いを 下 ろして9 手 。 妻 ( 羊 飼 いでも 可 )が 船 で 戻 って10 手 。 妻 ( 羊 飼 い)が 羊 と 船 に 乗 って、 対 岸 に 渡 って11 手 。「 全 然 わかんないわよ、これ、 難 易 度 どのくらいなの…?」( 絵 羽 )「せいぜい20ピカラットってところかなぁ? 本 当 に 難 しい 問 題 が、まだまだこの 本 には 載 ってるんだから!」( 真 里 亞 )※『レイトン 教 授 シリーズ』に 登 場 するナゾの 難 しさを 表 す 指 標 です。 数 が 多 ければ 多 いほど 難 しいナゾということになるらしいです。■ 霧 江 の 出 題三 人 の 女 の 子 がいます。美 代 子 「 私 が 一 番 年 上 よ」沙 都 子 「 梨 花 は 一 番 年 上 じゃありませんわ」梨 花 「 美 代 子 は 嘘 吐 きなのですよ。にぱー」この 中 の、 一 番 年 上 の 子 だけが 本 当 のことを 言 っています。さて、 一 番 年 上 の 子 は 一 体 、 誰 …? 選 択 肢 3つ。「 美 代 子 」「 沙 都 子 」「 梨 花 」※『ひぐらしのなく 頃 に』の 登 場 人 物 、 田 無 美 代 子 、 北 条 沙 都 子 、 古 手 梨 花 のことと 思 われます。■ 譲 治 と 朱 志 香 の 出 題赤 い 箱 と 青 い 箱 と 緑 の 箱 がある。このうち1つにはメダルが 入 っている。 残 りの2つは 恐 ろしいビックリ 箱 になっている。 私 は 赤 い 箱 を 選 んだ。そしたら 朱 志 香 は 言 った。「 本 当 にそれでいいのかい? ビックリ 箱 はすごく 怖 いんだぜ。1 個 開 けて 見 せてやるからな」( 朱 志 香 )そう 言 って 緑 の 箱 を 開 き、それがビックリ 箱 であることを 示 してくれた。 残 るのは、 赤 い 箱 と 青 い 箱 の2つだけ。「その 赤 い 箱 を 開 くかい? それともチェンジするかい?」( 譲 治 )さて。 赤 い 箱 と 青 い 箱 。どちらにメダルが 入 っている 確 率 が 高 いだろう…? 選 択 肢 3つ。「 赤 い 箱 の 方 が 高 い」「どちらも 同 じ」「 青 い 箱 の 方 が 高 い」「 譲 治 兄 さんに 教 えてもらったけど。チンプンカンプンで。……とにかくよくわからないけど、 今 のケースだと、 青 い 箱 は、 赤 い 箱 の 約 2 倍 、メダルの 確 率 が 高 いって 言 うんだ」( 朱 志 香 )※ 箱 は3つだから、 可 能 性 は 赤 に 入 っている 場 合 、 青 に 入 っている 場 合 、 緑 に 入 っている 場 合 、3 通 り 考 えられます。 赤 を 開 けたときにメダルを 手 に 入 れられるのは、 赤 に40


入 っている 場 合 の、1 通 りだけ( 約 33%)。しかし、 青 を 開 けたときは、 青 に 入 っている 場 合 と、 緑 に 入 っている 場 合 の2 通 りでメダルが 手 に 入 ります( 約 66%)。もし 箱が100 個 あったなら、 赤 を 開 けたときにメダルを 手 に 入 れられるのは、 赤 に 入 っている 場 合 の、1 通 りだけ(1%)。しかし、 青 を 開 けたときは、 残 りの99 通 り(99%)でメダルが 手 に 入 ります。■ 人 間 と 魔 女 の 宴 ■「じゃあじゃあ、 次 は 私 が 問 題 を 出 す 番 ねー! えっとねえっとね、1ホールの3 分 の1のケーキと4 分 の1のケーキと5 分 の1のケーキがお 皿 に 載 ってるの! 1ホールを 食 べるのには30 分 かかるとして、 食 べ 終 わった 時 、お 皿 にケーキはいくつあるでしょう?!」(ラムダ)※ 答 えは「ひとつもない」です。■ ベルンの 出 題 ■そして、 今 度 は 南 條 先 生 が 殺 された。 殺 されたのはゲストハウス 内 の 玄 関 。「そもそも、《 紫 :ゲストハウス 内 で 南 條 先 生 を 殺 すことは 不 可 能 なんだ!》」( 譲 治 )※ 嘘 がない 地 の 文 でゲストハウス 内 で 殺 されたと 言 っているのに、 譲 治 はそれが 不 可 能 だと 言 っています。 嘘 をついているわけですから、 譲 治 は 犯 人 である、と 考 えていましたが、この 解 釈 では 駄 目 なようです。■ 八 城 十 八 ■出 版 社 の 人 間 たちが、 使 用 人 によって 玄 関 へ 送 られる。ようやく 静 けさを 取 り 戻 した 書 斎 で、 八 城 十 八 は、ふーっと 息 を 吐 き 出 しながら、ソファーに 全 身 を 預 けて 天 井 を 見上 げる。「 疲 れるが、たまには 人 の 子 の 刺 激 も 悪 くない」( 幾 子 )「……… 定 期 的 に 人 と 会 いなさいよ。……ボケるわよ、 引 き 篭 もってると」(ベルン)本 棚 の 上 の 黒 猫 が 軽 やかに 絨 毯 の 上 に 飛 び 降 りる。するとその 姿 は、 音 もなく 歪 んで、ベルンカステルの 姿 となった。八 城 が 棚 よりジャム 瓶 のようなものを 取 り 出 し、その 中 身 の 梅 干 を 一 粒 、 宙 に 放 る。ベルンカステルの 姿 は 瞬 時 に 黒 猫 に 変 わり、それを 空 中 でキャッチしてから、カリカリとかじり 出 す。※ 幾 子 が 飼 っている 梅 干 が 好 きな 猫 、ベルンを 幾 子 が 幻 想 修 飾 したのがベルンカステルのようです。「 私 は 子 供 じゃないわ!! 自 分 で 考 えて 行 動 できる、18 歳 の 女 よ…!!」( 縁 寿 )「たわけがッ!! 過 去 のこと 以 外 、 何 も 考 えることが 出 来 ぬ6 歳 の 小 娘 であろうが!!」(ベアト)※6 歳 のころから 過 去 に 囚 われた 続 けた 縁 寿 が18 歳 になっても、6 歳 のままであったのなら、13 歳 のころから 戦 人 を 待 ち 続 けたヤスも、13 歳 のままだったのではないでしょうか。■ 真 実 の 書 ■「もちろんよ。 私 だって 早 く 読 みたいもの。すぐに(フェザリーヌを) 呼 ぶわ」(ベルン)※ベルンが 真 相 を 知 っているのなら 読 む 必 要 はないはずなのですが…。「 我 が 主 より、お 茶 を 振 舞 えとの 命 令 ですので。 飲 む 気 がなくても、 漏 斗 を 突 っ 込 んで 流 し 込 みますから、そのつもりで。」(ヱリカ)※これはフォアグラを 作 る 時 の 方 法 です。「つまり、こいつはアラモの 砦 ってわけさ」( 留 弗 夫 )※1836 年 にテキサスがメキシコから 独 立 を 求 めて 戦 った 時 の 拠 点 です。「これにて、 八 城 先 生 の 会 見 を 終 了 いたします…! 報 道 各 社 の 皆 さん、 本 日 は 誠 にありがとうございます! 引 き 続 きまして、 右 代 宮 絵 羽 氏 の 日 記 の 撮 影 時 間 に 移 りたいと 思 います」( 司 会 者 )ホテルマンが、ベールで 覆 われた 台 車 を 押 してくる。そして、 八 城 が 頷 くのを 確 認 してから、そのベールを 剥 ぎ 取 った。そこには、……… 右 代 宮 絵 羽 の 日 記 が。 一 なる 真 実の 書 が、その 封 印 が 解 かれるのを 待 っていた。 八 城 はそれを 胸 に 抱 えると、ミステリアスに 笑 う。 一 斉 にフラッシュが 瞬 き、 一 なる 真 実 の 書 を、 眩 く 浮 き 上 がらせた……。「 以 上 で 会 見 を 終 了 させていただきます! それでは 皆 様 、 会 場 の 方 へ 移 動 をお 願 いいたします…!」( 司 会 者 )八 城 は 日 記 を 抱 えたまま、ホテルマンたちに 護 衛 されながら 会 見 場 を 後 にする。 彼 女 が、 関 係 者 以 外 立 入 禁 止 と 書 かれた 扉 をくぐるまで、 取 材 陣 たちはなおも 何 かのコメントを 取 ろうと、 彼 女 を 取 り 囲 み 質 問 を 投 げ 掛 けるのだった。 扉 をぱたんと 閉 めると、……… 世 界 がぐにゃりと 歪 む。ホテルマンたちはマントを 羽 織 った 黒 猫 の 姿 に 変 わる。八 城 も、フェザリーヌの 姿 となっていた…。「すごい 熱 気 じゃない。…… 楽 しめた?」(ベルン)「…… 疲 れる。……だが、 悪 くない。それにしても、この 日 記 は 重 いな」(フェザ)フェザリーヌが 日 記 を 放 ると、それをベルンカステルが 受 け 取 る。※これは 別 にフェザリーヌが 幾 子 に 化 けているわけではなく、 観 測 者 がいなくなったため、 幻 想 修 飾 が 可 能 になっただけです。■ 八 城 幾 子 ■…………… 推 理 小 説 、 作 家 。…… 批 評 。……………………。 忘 却 の 霞 の 向 こうで。 私 ( 十 八 )はかつて、……ミステリーとか、……そういうものについて、 議 論 を 交 わして 戦っていたことがある 気 がする。その 当 時 に 身 に 付 けた、ミステリーとの 戦 い 方 が、……… 疼 く。※これはゲーム 盤 におけるベアトとの 戦 いではなく、 以 下 の 場 面 のような、かつて 紗 音 と 交 わしたミステリー 談 義 のことだと 考 えられます。“トリック。 錯 誤 。 誘 導 。からかう。 引 っ 掛 ける。 一 緒 に 笑 う。……こんなトリックを 知 ってますか…? 前 に 読 んだ 本 に、こんなトリックが……。(EP6)”私 が 幼 くて 自 分 勝 手 だったから、 覚 えてさえいなかった。いつも 私 を 甘 やかしてくれる、やさしかったお 祖 父 ちゃん。あのハロウィンのクイズパーティ 自 体 は、 確 かに 幻 。あんなことは、 確 かになかったけれど。…… 親 族 のみんなで 集 まる 度 に、………あのパーティに 勝 るとも 劣 らない、…… 楽 しいことが、いつだってあったじゃない………。※ 縁 寿 の 言 葉 を 信 じたいところですが、 実 際 のところはどうだったのかわかりません。41


■ 縁 寿 の 選 択 ■ビッグバンが 起 こり、 宇 宙 創 生 が 起 こり、……いくつもの 銀 河 が 生 み 出 されては 消 え、 生 み 出 されては 消 え。そしてビッグクランチを 起 こし、 宇 宙 が 終 焉 したかと 思 うと、間 髪 を 入 れずにビッグバンが 起 こり、 再 び 宇 宙 が 生 まれるのだ。それはまるで、 神 々の 遊 びだ。※“ビッグクランチ”とは 膨 張 を 続 ける 宇 宙 が、いずれ 自 身 の 重 力 によって 収 縮 に 転 じ、 宇 宙 にある 全 ての 物 質 と 時 空 が 無 次 元 の 特 異 点 に 収 束 することです。 実 際 にそんなことが 起 こるかどうかはわかりませんが…。フェザリーヌが 頭 に 浮 かべる、あの 馬 蹄 状 の 記 憶 装 置 。あいつはあれがないと、 自 分 の 存 在 を 保 てない。 破 壊 は 不 可 能 だが、……もしわずかでも 衝 撃 を 与 えることが 出 来 れば、…… 記 憶 装 置 をバグらせることが 出 来 るかもしれない。 過 去 に、フェザリーヌが 記 憶 装 置 にダメージを 受 けて、 人 格 変 容 を 来 たした 事 例 があるのだ。※ 馬 蹄 状 の 記 憶 装 置 とは 十 八 のことではないでしょうか。あるいは『ひぐらしのなく 頃 に』の“ 羽 入 の 角 ”なのかもしれません。■ 第 3 日 目 1986 年 10 月 6 日戦 人 とベアトの 姿 は、…… 六 軒 島 の 地 下 の 潜 水 艦 基 地 の 廃 墟 にあった。ベアトは 水 際 に 下 りると、 大 きなシートを 取 り 払 う。そこには 一 艘 のモーターボートがあった。「これを 船 に 積 め。 重 いぞ」(ベアト)「わぉ。 黄 金 のインゴットじゃねぇかよ。 全 部 、 埋 もれちまったかと 思 ってたぜ」( 戦 人 )「こんなこともあろうかと 思 ってな。ひとつくすねておいたのだ」(ベアト)「そなたはモーターボートの 経 験 は?」(ベアト)「あるわけないぜ」( 戦 人 )手 馴 れてはいなかったが、ベアトは 何 度 かの 試 行 錯 誤 の 末 、エンジンを 掛 ける。「……… 生 きれぬ。 妾 はもう、 数 え 切 れぬほどの 世 界 で、 数 え 切 れぬほどの 罪 を 犯 した。 妾 が 殺 した 命 の 数 が、 罪 の 数 が、 多 すぎる」(ベアト)「 俺 たちの 世 界 では、 何 の 罪 も 犯 しちゃいないさ。お 前 に 罪 があるなら。それを 犯 させた 俺 にも 罪 がある。……だから、お 前 の 十 字 架 は、 俺 たち 二 人 で 背 負 おう」( 戦 人 )戦 人 がベアトに 習 った 通 りに 操 作 すると、ボートはゆっくりと 滑 り 出 す……。夢 か 幻 のように、…… 黄 金 の 魔 女 の 姿 は 消 えていた。……そして、 一 緒 に 積 み 込 んだはずの、インゴットも。戦 人 は、すぐに 海 へ 飛 び 込 みました。だから、 戦 人 は 間 に 合 いました。まだ 魔 女 の 姿 を 見 ることが、 間 に 合 いました。 魔 女 は 戦 人 を 見 上 げ、 薄 っすらと 笑 っていました。 言葉 は、 聞 こえません。でも、はっきりと 聞 こえました。 言 ったろ、 戦 人 。 妾 は 極 悪 な 魔 女 だから、 罪 など 償 わぬと。 生 きてなど、 償 わぬと。 戦 人 は 必 死 に、 言 葉 を 返 しました。でも 言 葉 は 全 て、 泡 となって 吐 き 出 されるだけでした。 漆 黒 の 闇 へ 沈 み 行 く 彼 女 を、 戦 人 は 懸 命 に 追 いました。そして、…………その 手 が、………… 届 きました…………。どんどん、 周 りは 真 っ 暗 になっていきます。 息 苦 しくなり、 頭 や 耳 が 痛 くなります。 戦 人 の 指 が、…… 少 しずつ、 解 けていきます。そしてとうとう。 二 人 の 指 は、……離 れました。その 途 端 、…… 戦 人 は 上 の、 光 の 世 界 へ。そして 魔 女 は 下 の、 闇 の 世 界 へ、……より 強 い 力 で 引 き 裂 かれていきます。 魔 女 は、 戦 人 の 体 が 眩 しい 海 面 へ 向 かって 浮 かんでいくのを 見 て、 安 堵 しました。 戦 人 の 体 が 光 の 世 界 へ、 点 となって 消 えたのを 見 届 け、…… 魔 女 はゆっくりと 目 を 閉 じます。そして 奈 落 の 世 界 へ 落 ち 行 くことに、永 遠 の 孤 独 の 世 界 に、 全 てを 委 ねました。その 時 、……… 彼 女 は、 感 じました。そんなはずはないのです。だって、 戦 人 はもう、 遥 かかなたで 点 になっているのに。でも、それは 戦 人 でした。 魔 女 を 追 ってきた、 戦 人 でした……。 二 人 は 互 いをきつく 抱 き 締 めました。……もう、 運 命 は 二 人 を 引 き 裂 こうとはしませんでした。 二 人 は 一 つとなって、…… 奈 落 へと 沈 んでいきました……。そして、 何 も 見 えない 真 っ 暗 な 世 界 で、……ぽっと、 輝 きました。それは 温 かな、 黄 金 の 輝 き。それは、 黄 金 の 薔 薇 でした。※ベアトの 姿 と 喋 り 方 は 幻 想 修 飾 されていますが、この 場 面 は 実 際 にあった 場 面 だと 考 えられます。ベアトは 最 初 から 死 ぬつもりでボートに 乗 ったのです。インゴットは 入水 の 際 に 重 石 として 使 うために 持 ってきたのでしょう。 戦 人 はベアトを 助 けようとして 自 分 も 海 に 飛 び 込 んだものの、 結 局 、 助 けることは 出 来 なかったのです。■ 表 お 茶 会「 物 語 は 適 当 なところで 猫 箱 にしまうべきなのだ。…… 猫 箱 を 巡 っての 長 き 物 語 なのだから、その 終 焉 も 最 後 までを 記 さず、 猫 箱 にしまってしまうのが 良 いのではあるまいか…?」(フェザ)フェザリーヌは、 自 分 以 外 に 誰 もいない 書 斎 で、…… 誰 にともなく、そう 語 る。もちろん、 誰 かが 相 槌 を 打 つわけもない。しかしフェザリーヌには、それが 聞 こえたらしい。ウンウンと 頷 くと、にんまり 笑 う。「わかっている。もう 少 しだけを 書 き 足 し、そこで 筆 を 置 こう。……それで、そなたとはお 別 れだ」(フェザ)※ 誰 と 話 しているのでしょう?「カケラの 海 は 広 大 だわ」(ラムダ)「 殻 の 中 の 幽 霊 」(ベルン)※『GHOST IN THE SHELL / 攻 殻 機 動 隊 』のことと 思 われます。■ 数 十 年 後 の 未 来それは、……… 肖 像 画 。 六 軒 島 の、もうひとりの 主 の、 肖 像 画 。「…… 記 憶 のものに、………まったく 同 じだ………」( 十 八 )「 右 代 宮 金 蔵 が 肖 像 画 を 描 かせた 職 人 が 写 真 を 持 っていました。……それをもとに 書 き 起 こさせました」(ゆかり)「……………………………………」( 十 八 )私 は、ただただ、 呆 然 としていた。 長 く 大 きいテーブルには、ハロウィンパーティーのご 馳 走 が 並 び、 子 供 たちがそれを 頬 張 っている。 施 設 の 先 生 が、ほら、お 客 様 がいらっしゃいましたよーっ、と 声 を 掛 ける。 …… 子 供 たちが 一 斉 にこちらを 向 いて、…… 立 ち 上 がり、 駆 けてきた……。 子 供 たちの 笑 顔 と 瞳 が、……… 私 を、 歓 迎 する。あぁ、……… 知 ってる。……みんなの 顔 を、…… 私 は 知 っている………。 遅 かったな、 遅 かったですね、……ようやく 来 たよ、やっと 来 た……。 待 ちくたびれたぞ、 戦 人 ァ。……すまねぇ。 来 るのが、 遅 れちまった。そなた、 何 故 、 車 椅 子 なんぞ 座 っておるのか。ほら、 手 を 貸 してやるからシャンとせい。ベアトが 歩 み 出 て、…… 車 椅 子 に 座 る 戦 人 に、手 を 差 し 出 す。 戦 人 は、……その 手 をゆっくりと 掴 み、………ゆっくりと、…… 立 ち 上 がる……。……… 俺 は、…………………。 聞 けっ。ここにようやく、 我 らは 全 員 が 集ったぞっ。 今 宵 、 黄 金 郷 はここに 復 活 するっ。 割 れんばかりの 拍 手 が、 戦 人 を 祝 福 する。そこには、みんないた。みんな、みんな、みんな。そしてベアトは 戦 人 を 抱 き 締 める。 強 く 強 く、…… 二 度 と 離 さないように 抱 き 締 める。 本 当 に、………よく 帰 ってきたな……。 帰 ってきたぜ。 遅 くなったな。……もう、 離 さぬぞ。 あぁ。 俺 ももう、 離さない。 俺 たちは、 永 遠 に 一 緒 だ。※この 場 面 でようやく 十 八 は 戦 人 の 記 憶 を 受 け 入 れ、 戦 人 が 蘇 ったのです。42


■コラムコーナー1■ 至 りたければ 考 察 するな?僕 が『 最 終 考 察 』と『 真 相 解 明 読 本 』を 読 んで 不 思 議 に 思 ったのは、EP1 からまじめに 考 察 に 取 り 組 み、 僕 より 遥 かに 多 くの 時 間 と 情 熱 をこの 作 品 に 捧 げてきたであろう“ 考 察 の 先 輩 方 ”が、あまりにも 至 れていなかったことです。 全 く 考 察 をせずに 全 EPを 終 了 した 僕 でも 理 解 できていたことが、 理 解 できていませんでした。 何 でかなーと 考えて、こんな 例 え 話 を 思 いつきました。あるところに『うみねこ 山 』という 山 がありました。その 山 に 登 った 竜 騎 士 07さんはみんなにこう 言 いました。「 私 はあの 山 で 数 々の 宝 を 見 つけた、とくに 頂 上 の 宝 は 素晴 らしかった」。その 話 を 聞 いて、 多 くの 人 が『うみねこ 山 』に 挑 みます。 以 前 に 竜 騎 士 07さんが 紹 介 した『ひぐらし 山 』には 多 くの 財 宝 が 眠 っていたためです。ロープウェイが 建 築 中 でしたが、 完 成 を 待 てない 人 達 は、 地 図 も 持 たずに 山 に 飛 び 込 みました。『うみねこ 山 』は 道 が 迷 路 のようになっており、 地 図 を 持 っていなかった 人 達 はさんざんに 迷 い、 悩 み、 苦 しみましたが、とうとう 頂 上 に 辿 り 着 きました。しかし、 頂 上 には 何 もありませんでした。その 人 達 は 竜 騎 士 07さんを 口 々に 罵 りました。そして 山 を降 り、 二 度 と『うみねこ 山 』に 足 を 踏 み 入 れることはありませんでした。誰 もが『うみねこ 山 』のことなど 忘 れてしまった 頃 、ようやくロープウェイが 完 成 しました。 僕 はロープウェイを 使 って 頂 上 まで 行 きました。 頂 上 に 着 くと 他 の 人 から 聞いていた 通 り、 何 もありません。しかし、 山 の 頂 上 からの 眺 めは 最 高 です。「 竜 騎 士 07さんが 言 っていた“ 素 晴 らしい 宝 ”とはこれのことか!」 僕 は 納 得 しました。「しかし、 竜 騎 士 07さんは 他 にも 宝 があると 言 っていた。 今 度 は 自 分 の 足 で 登 ってその 宝 を 探 してみるか」 僕 は 今 度 は 麓 から『うみねこ 山 』に 挑 戦 しました。 案 内 板 があったため、どの 道 を 通 ればよいかわかっており、 全 く 迷 うことなく 進 むことが 出 来 ました。 心 に 余 裕 があるためか、 周 囲 の 自 然 が 次 々 目 に 飛 び 込 んできました。「こんなところに 美しい 花 が!」「こんなところに 珍 しい 昆 虫 が!」 数 々の 発 見 をしながら、 僕 はふたたび『うみねこ 山 』の 頂 上 に 立 ちました。やはり 素 晴 らしい 眺 めでした。 前 回 よりも 空 気 が澄 んでいるためか、より 素 晴 らしい 眺 めに 思 えました。そしてふと、 竜 騎 士 07さんの 言 っていた“ 数 々の 宝 ”とは、 僕 が 道 々で 見 つけた 花 や 虫 たちであったことに 気 がつきました。「 季 節 が 変 われば、また 違 った 花 や 虫 に 出 会 えるかも」そう 思 った 僕 は、 季 節 が 変 わるたびに『うみねこ 山 』に 登 りました。 果 たして 予 想 通 り、 登 るたびに 新 たな花 や 虫 を 見 ることができました。そしてふと 思 いました。「 僕 は 竜 騎 士 07さんが 教 えてくれた 全 ての 宝 を 見 ることができたのだろうか?」と、おしまい。“ 考 察 の 先 輩 方 ”は 確 かに、 僕 よりも 山 で 過 ごした 時 間 は 長 いです。しかし、 道 を 探 すことに 集 中 していて、 花 や 虫 に 気 を 配 る 余 裕 はなかったのではないでしょうか? 「この 苦 労 に 見 合 う 素 晴 らしい 宝 が 頂 上 にはあるに 違 いない」そんな 思 いが 過 剰 になって 目 が 曇 ってはいなかったでしょうか? きっと 竜 騎 士 07さんは「 頂 上 に 行 けば、 誰 もがこの 宝 の 素 晴 らしさに 気 づける」と 思 っていたに 違 いありません。しかし、 実 際 はそうではありませんでした。みんな“ 自 分 が 求 める 宝 ”が 頂 上 にあると 信 じて 疑 わなかったのです。そしてそんなものはなかったことに 失 望 し、 竜 騎 士 07さんを 嘘 つき 呼 ばわりするのです。ちなみに 僕 にも 限 界 はあります。 竜 騎 士 07さんが 頂 上 に 登 った 日 は、1000 年 に 一 度 のベストコンディションで、 僕 は 何 度 登 っても、その 美 しさを 味 わうことは 出 来ないかもしれません。また 竜 騎 士 07さんは「このクワガタ、サイコーだよなー」と 思 っているのに 対 し、 僕 は「このカタツムリ、カッコいい!」と 思 っているかもしれません。しかし、 竜 騎 士 07さんも 僕 も「『うみねこ 山 』の 頂 上 からの 眺 めは 素 晴 らしく、 花 や 虫 も 良 い」という 共 通 認 識 を 持 っています。ですから、 多 少 の 認 識 差 こそあれ、同 じように『うみねこ 山 』を 愛 することが 出 来 るのです。そういうわけで、この 本 を 読 んでいる 人 は 手 遅 れでしょうが、1 周 目 は 考 察 しないほうが 良 いかもしれません。■ 周 回 プレイのススメ僕 はこの 作 品 を 複 数 回 プレイすることをオススメします。 犯 人 は 紗 音 。 紗 音 と 嘉 音 は 同 一 人 物 である。 金 蔵 は 全 ての EP の 開 始 時 点 で 死 亡 している。 探 偵 である 戦 人 (EP5と6ではヱリカ)が 目 撃 していない 場 面 の 描 写 は 幻 想 の 可 能 性 がある。これらを 前 提 として 再 プレイすると、それまでとは 全 く 違 った 世 界 が 見 えてきます。また、 僕 は 作 品 を6 周 半 (EP1~4を7 回 、EP5~8を6 回 、プレイ)しましたが、1 周 目 では 特 に 泣 いた 覚 えはありません。しかし、 今 では 涙 なくしては 見 れない 場 面 がいくつかあります。 何 故そうなったかというと、 長 い 時 間 この 作 品 に 触 れていたため、 感 情 移 入 しているというのはもちろんあるのですが、より 理 解 が 深 まったため、 登 場 人 物 の 気 持 ちに 共 感 できるというのが 大 きいと 思 います。1 周 目 の 僕 はこの 作 品 への 理 解 が 不 足 していたため、 泣 けなかったのです。■ 何 故 『うみねこ』はここまで 評 価 されないの?理 由 は2つあると 思 います。1つは“この 作 品 を 理 解 できる 人 間 が 少 ない”。1000 人 に1 人 も 理 解 できていないのではないでしょうか? もう1つは“ヒロインの 価 値観 ”です。 僕 は“『うみねこ』は『 嵐 が 丘 』”だと 思 っています。『 嵐 が 丘 』は 名 作 だといわれていますが、 実 は 高 く 評 価 する 人 はあまりいないのです。『 買 い 被 られた 名 作 』という 本 があるのですが、それで 真 っ 先 に 取 り 上 げられているのが『 嵐 が 丘 』です。 何 故 、 名 作 といわれつつこんな 評 価 を 受 けるかといいますと、ヒロインの“キャシー・アーンショー”が 非 常 に 特 殊 な 価 値 観 を 持 っているためです。この 価 値 観 に 共 感 、あるいは 理 解 を 示 せる 人 にとってのみ、『 嵐 が 丘 』は 名 作 たりえるのです。 竜 騎 士 07さんが『 嵐 が 丘 』を 読 んでいるのかは 不 明 ですが、おそらく 竜 騎 士 07さんにとって『 嵐 が 丘 』は 名 作 だろうと 思 います。 こんなとんでもないハードルを2つも 抱 えるこの 作 品が“ 名 作 ”と 呼 ばれる 日 は 永 遠 に 来 ないのではないでしょうか? 正 直 、 僕 にとっても 他 人 に 勧 められる 作 品 ではありません。『 嵐 が 丘 』と 同 じく、 大 抵 の 人 間 には 理 解 できないでしょうから。しかし 僕 にとってこの 作 品 は 紛 れもなく“ 名 作 ”です。■『うみねこ』は『エヴァンゲリオン』?僕 は『うみねこ』のEP8が 出 た 後 の 騒 ぎで『 新 世 紀 エヴァンゲリオン』を 思 い 出 しました。TV 放 送 された25 話 と26 話 はとんでもない 出 来 で、 大 騒 ぎになったものです。 当 時 、インターネットはまだ 普 及 していませんでしたが、あれが 現 在 で、 庵 野 監 督 がブログかツイッターでもしていたら、 炎 上 どころか 爆 発 していたのではないかと 思います。しかし、 一 人 ひとりのファンの 怒 りの 深 さは『うみねこ』の 方 が 大 きいのではないかと 思 います。というのは『 新 世 紀 エヴァンゲリオン』の 場 合 、 悪 いのは 明 らかに 庵 野 監 督 でした。 手 抜 きの 作 品 を 世 に 送 り 出 して 開 き 直 っているのですから 当 然 です。ですから、ファンはただ 庵 野 監 督 を 責 めればそれでよかったのです。しかし『うみねこ』の 場 合 、 竜 騎 士 07さんは「 考 えればわかる」と 言 って 世 に 送 り 出 しました。ということは“わからない”のは 竜 騎 士 07さんが 悪 いのではなく“わからない 自 分 ”が 悪 いのです。これは 辛 いです。 竜 騎 士 07さんに「わからないのはお 前 が 馬 鹿 だからだ」と 言 われているも 同 然 なのですから。そういうわけで 逆 ギレしたファンは、やり場 のない 怒 りを 竜 騎 士 07さんにぶつけるのでした。■ 真 相 が 明 かされなかったけど?この 点 を 評 価 しない 人 が 多 いと 思 いますが、 僕 は 評 価 しています。というのは、それゆえに 僕 は“この 作 品 に 挑 む 楽 しさ”を 味 わえたから( 味 わえているから)です。 僕 はこの 作 品 を6 周 半 しましたが、 新 たな 発 見 がなかったことは 一 度 もなかったです。どの 周 でも 必 ず、 新 たな 答 えと 新 たな 謎 に 出 会 いました。この“ 新 たな 発 見 ”が 無 茶 苦 茶楽 しいのです。こんな 楽 しみがあることを30 年 以 上 生 きてきて、 初 めて 知 ることができました。これはこの 作 品 に 挑 んだ 人 間 にしか 味 わえないものです。ですからこの 本を 読 む 人 はある 意 味 気 の 毒 です。この 楽 しさを 味 わうことを 自 ら 放 棄 することになるのですから(「まだ 自 分 は 本 気 を 出 していないだけ」と 思 える 人 は、ここでこの 本 を 閉 じてもう 一 度 この 作 品 に 挑 むことをオススメします。そして「これ 以 上 は 何 年 かけても 無 理 」というところまでいったら、 再 びこの 本 を 開 いてください)。あと“ネットの 集 合 知 ”のレベルの 低 さにも 感 謝 です。ネットで 調 べても 僕 が 求 める 答 えを 見 つけることが 出 来 なかったが 故 に、 僕 はこの 作 品 に 挑 んだのですから。そしておそらく、この 本 を 読 んでさえ、この 作 品 を 理 解 できない 人 が 大 勢 いると 思 います。そういった 連 中 を 哀 れみ、 優 越 感 に 浸 る 楽 しみもあります。いったい 一 粒 で 何 度 美 味しいのでしょう、この 作 品 は。43


44トピック 考 察 ( 五 十 音 順 )


■ 赤 字 とはどのようなもの?※はじめて 出 て 来 たのは、EP2の 以 下 の 場 面 です。「 妾 とそなたのゲームに 新 しいルールを 追 加 しようと 思 う」(ベアト)(EP2)「 新 しいルールぅ?! …どうせお 前 が 有 利 になるルールなんだろう?!」( 戦 人 )「まさかまさか。そなたらが 求 めて 止 まなかったものを 与 えようというのだ。 貴 様 ら 無 能 どもがいつも 嘆 いてみせる 思 考 停 止 の 理 由 、“ 情 報 不 足 ”! そして、それに 対 し情 報 を 与 えると 今 度 はその 情 報 の 真 偽 を 疑 う“ 根 拠 否 定 ”! 便 利 よのぅ? 無 能 を 棚 上 げする 実 に 小 気 味 良 い 言 葉 よ。この 便 利 な 言 い 訳 を 妾 は 取 り 去 ってやろうというのだ。 感 謝 するが 良 い、くっくっく!」(ベアト)「 扉 から 入 ったというお 前 に 対 し、 俺 はそんなはずはないと 否 定 した。……その 否 定 が 逃 げ 口 上 だと 言 いたいのか」( 戦 人 )「そうだ。だから 妾 はこれより、《 赤 : 真 実 を 語 る 時 、 赤 を 使 うことにする》」(ベアト)「ど、どういうことだ……?! 説 明 を 続 けろ!」( 戦 人 )「 妾 がどのような 魔 法 の 一 手 を 仕 掛 けようとも、そなたには 常 に“ 情 報 不 足 ”や“ 根 拠 否 定 ”を 繰 り 返 すことで 延 々と 逃 げ 続 けることができる。…これでは 最 終 的 に 妾 が 勝つことが 変 わらぬとしても、あまりに 退 屈 を 極 める。……その 為 、 妾 はそなたが 望 む“ 情 報 ”と“ 根 拠 ”を 与 えてやろうと 思 う。しかし、そなたは 妾 の 言 葉 ひとつひとつを疑 って 掛 かるだろう。それ 自 体 は 悪 いことではない。 妾 もそなたを 屈 服 させるためにあらゆる 手 を 指 す。 互 いに 最 善 手 を 探 りあうその 姿 勢 は 嫌 いではない。……しかしそれではゲームにもならぬ。だからこのルールを 設 けた。《 赤 : 妾 が 赤 で 語 ることは 全 て 真 実 》! 疑 う 必 要 が 何 もない!」(ベアト)「それを 信 じろというのか…!」( 戦 人 )「 妾 はそなたとゲームをしている。ゲームのルールは 神 聖 !! それを 軽 んじる 者 に 参 加 の 資 格 はないッ!!」(ベアト)※そして、 以 下 の 記 述 もあります。夏 妃 は、 何 とか 今 年 も 乗 り 越 えて、 右 代 宮 家 の 名 誉 を 最 後 まで 守 ってみせると 豪 語 し、 金 蔵 は 頼 もしいとそれを 讃 える。ベアトもまた、 夏 妃 の 貫 禄 を、 蔵 臼 よりも 当 主 に 相応 しいと 讃 えている。………しかし、………この 書 斎 に 今 いる、 本 当 の 人 数 は……。それを 思 った 時 、……いや、 思 っただけで、ベアトが 胸 を 押 さえて 呻 く。(EP5)「…… 安 心 しろ。ここはゲーム 盤 の、まだ 外 だ。だから 俺 は、そこにいるお 前 や 祖 父 さまを 否 定 はしない」( 戦 人 )胸 の 奥 の 痛 みを 抑 えるベアトの 手 に、 俺 は 自 分 の 手 を 重 ねる……。 俺 はすでに、ベルンカステルに 対 して 言 っている。 魔 女 幻 想 を 否 定 するのは、1986 年 の 親 族 会 議 の 二日 間 だけで 充 分 なのだ。「《 青 :お 前 は 前 回 、 全 ゲームの 開 始 時 に 祖 父 さまが 死 んでることを 赤 で 宣 言 した。しかし、ゲーム 開 始 以 前 の 祖 父 さまの 生 死 については 言 及 していない。……つまり、 今この 場 に、 祖 父 さまが 存 在 していても、 何 の 矛 盾 もないってわけだ。》」( 戦 人 )彼 女 に 触 れる 俺 の 手 が、ほのかに 青 く 光 を 放 ち、…… 彼 女 の 胸 の 奥 に 染 み 透 っていく。その 光 は、ベアトの 胸 の 奥 の 棘 を、……やさしく 包 み 込 む…。「……《 青 :そして、この 場 にいるベアトリーチェの 存 在 だって、 否 定 することは 出 来 ない。ゲーム 盤 の 外 、 即 ち1986 年 10 月 4 日 以 前 の 島 の 人 数 については 赤 で 宣 言されていないんだ。だから、ここにベアトリーチェが 存 在 しても、 何 もおかしいことはない。》」( 戦 人 )※つまり 特 別 に 言 及 しない 限 り、 赤 字 はゲーム 盤 の 中 においてのみ 通 用 するルールであることがわかります。このことは 以 下 のようにEP8でも 再 び 取 り 上 げられています。ゲームマスターである 戦 人 には、 赤 き 真 実 を 使 うことも 出 来 る。しかし、 赤 き 真 実 というルールは、 魔 女 のゲーム 盤 にだけ 出 てくるものだ。ニンゲンの 世 界 に、 赤 き 真 実 など、 存 在 しない。 自 らが 見 て、 聞 いて。…… 信 じるに 足 ると、 自 らが 信 じたものを、 赤 き 真 実 として 受 け 入 れるのだ。(EP8)※また、 以 下 のように 本 人 の 信 じる 信 じないにかかわらず、 真 実 にしか 使 えないようです。「そなたは、 右 代 宮 明 日 夢 から 生 まれた」(ベアト)(EP4)「《 赤 : 俺 は、 右 代 宮 》、……、……ふぐ、…………っ?! ……?!?!」( 戦 人 )その 時 、 突 然 、 息 が 詰 まる…。 急 に 窒 息 したような 息 苦 しさに 襲 われた。ど、………どういうことだ……? も、……もう 一 度 ……。「 俺 は、 右 代 宮 明 日 夢 から 生 まれた…。…クソ、 俺 は 右 代 宮 明 日 夢 から 生 まれた…。…………な、 何 だ? さっきまでは 簡 単 に 出 来 てたのに、 急 に 赤 がうまく 出 来 なくなったぞ…?!」( 戦 人 )「…………………… 復 唱 を 拒 否 するのか?」(ベアト)「 拒 否 なんかじゃねぇ…!! なぜかうまく 行 かねぇんだ…!! 俺 は 右 代 宮 明 日 夢 から 生 まれた…!! 何 でだッ?! 畜 生 、 何 で 赤 が 使 えないんだ?! そんな 馬 鹿 なッ?!?!」( 戦 人 )※ 以 上 のようにゲーム 盤 の 中 では 絶 対 的 なルールではありますが、 以 下 のように 柔 軟 性 を 持 つことも 判 明 しています。「 自 分 のトリックを 否 定 する 赤 き 真 実 は、 大 きなルール 違 反 だ。しかし、その 赤 き 真 実 に 抵 触 しない 別 のトリックに 即 座 に 差 し 替 えられるなら、いささかアンフェアではあるが、その 赤 き 真 実 は 認 められる」(フェザ)(EP6)※ 赤 字 は 死 亡 の 確 認 の 為 に 使 用 されることが 多 いのですが、どのタイミングでの 死 亡 を 確 定 しているのかが 不 明 でした。しかし、EP8 のベルンの 出 題 で 以 下 のやりとりがります。《 赤 : 第 一 の 晩 の 犯 人 は 確 実 に6 人 を 殺 している。》(EP8)「“ 第 一 の 晩 の 犯 人 は 確 実 に6 人 を 殺 している”。もしこいつを、 第 一 の 晩 の 時 点 で 言 われていたなら、 俺 は 素 直 に 受 け 取 っていたかもしれない。しかし、 第 二 の 晩 の 時 点 で言 われたことを 加 味 すると、 別 の 意 味 も 見 えてくる…!」( 戦 人 )「まさか、……… 第 二 の 晩 の 殺 人 までを 含 めて、“ 確 実 に6 人 を 殺 している”という 意 味 なのか…?!」(ベアト)※つまり 赤 で 死 亡 を 確 定 されたその 時 点 での 判 定 であることがわかります。ということは、EP3 の 第 一 の 晩 における 連 鎖 密 室 で 死 亡 が 確 定 した 人 間 は、 以 降 の 殺 人 には 関 われないわけです。ところが 以 下 の2つのやりとりが 存 在 します。「いやその、………そ、そうだ! 二 重 人 格 とかはどうだ…! 元 々お 前 が 絵 羽 伯 母 さんのもうひとつの 人 格 であったように、…… 例 えば、 朱 志 香 にもうひとつの、 魔 女 的人 格 があって、それが“ 朱 志 香 以 外 ”を 名 乗 って 南 條 先 生 を 殺 したとか…!!」(EP3)「 愚 かね。すでに 赤 で 語 っているわ。《 赤 : 朱 志 香 の 目 は 完 全 に 塞 がれていて、 彼 女 に 殺 人 は 不 可 能 》! 彼 女 にどんな 人 格 が 憑 依 しようとも、 彼 女 の 肉 体 では 殺 人 を 行 なえないの!」(エヴァ)「 本 来 、 人 は 人 であり、 人 格 そのものを 指 して 人 とは 呼 びません。しかし、 人 格 を 人 と 認 めるニンゲンたちにとって、それはさながら 他 人 のようなものでしょう…」( 幾 子 )(EP6)私 たちにとって 人 格 が 人 そのものならば。たとえ 同 じ 肉 体 を 共 有 していても、 異 なる 人 格 を 指 して 別 人 であると 言 い 切 れるだろう。 人 は 同 じ 人 間 であっても、 別 人 になる 得る。いや、 生 い 立 ちと 無 限 の 可 能 性 によって、 無 数 の 数 の 別 人 になる 得 るのだ。※ 前 者 においては“ 別 人 格 ”による 赤 字 のすり 抜 けを 否 定 していません。また、 後 者 においても“ 人 格 を 人 と 認 めても 良 い”という 趣 旨 の 発 言 がなされています。つまり 複数 の 人 格 を 持 つ 人 間 が、 特 定 の 人 格 を 赤 字 で 死 亡 確 定 されても、 別 の 人 格 で 行 動 することが 肯 定 されているのです。 全 EPを 通 じてこのトリックが 最 大 限 に 活 用 されていると考 えられます。 一 方 で 以 下 の2つのやりとりで、 根 拠 もなしに 絶 対 性 を 持 つがゆえに、ミステリーとしては 切 り 札 になりえないことが 判 明 しています。「 戦 人 。…… 謝 罪 しマス。 私 たちは 全 力 では、ありませんデシタ」(ドラ)(EP5)「………わかっていますよ。……《 赤 :“ 金 蔵 は 全 ゲーム 開 始 時 に 死 亡 している”》。すでにベアトによって 語 られている 真 実 です。……あの 戦 いは、 戦 人 くんには、 引 き 分けに 持 ち 込 めれば 上 々。 勝 ち 目 は 絶 対 にないはずの 戦 いでした」(ワルギ)「……そうだな。…… 一 言 そう 言 われちまえば、それで 終 わっちまう 戦 いだった。……なぜ、その 赤 を 使 わなかった? まさかステイルメイトだからとでも 言 うのか?」( 戦人 )「《 赤 :ノックス 第 2 条 。 探 偵 方 法 に 超 自 然 能 力 の 使 用 を 禁 ズ。》その 赤 き 真 実 を、 私 たちは 直 接 使 うことが 出 来 マセン」(ドラ)「《 赤 : 右 代 宮 夏 妃 は 犯 人 にあらずッ!!!》」( 戦 人 )(EP5)赤 き 真 実 は、 証 拠 も 証 明 も 必 要 なく、ただ、 真 実 ………!! これでドラノールをよろめかす…!! 例 えそこまでだとしても、…… 俺 に 報 いられる、 最 初 で 最 後 の 一 撃 だ45


…!!「《 赤 :ノックス 第 2 条 。 探 偵 方 法 に 超 自 然 能 力 の 使 用 を 禁 ズ。》」(ドラ)……………え……、 俺 の、…… 赤 き 真 実 が、……ドラノールの 赤 き 太 刀 に、 弾 き 飛 ばされる……。「……この 法 廷 で、 魔 女 以 外 が 赤 き 真 実 を 語 るなら、それに 相 応 しい 証 明 を 構 築 してちょうだい。ヱリカはこれまで、その 手 順 を 踏 んできたはずよ…?」(ベルン)確 かにヱリカ 自 身 は、ここで 一 度 も 赤 を 使 っていない。…… 常 にその 証 言 は、 復 唱 要 求 の 形 で、 魔 女 であるベルンカステルにさせている……。「あなたのその 赤 き 真 実 は、あなたが 自 分 で 手 に 入 れたものではないわ。…… 超 常 存 在 から 授 けられた、 超 自 然 の 真 実 よ。 即 ち、 推 理 ではない。デタラメな 思 いつきと 同 じ、ということよ……」(ベルン)※ 以 下 のやりとりは、 赤 字 同 士 が 矛 盾 していますが( 最 初 に 読 むはずの 縁 寿 が 読 んでいないのに、 幾 子 が 内 容 を 保 証 しています)、これは 前 者 はゲーム 盤 での 赤 字 、 後 者 は 現実 世 界 での 赤 字 であるため、 問 題 はないと 考 えられます(もっとも 何 故 、 現 実 世 界 で 赤 字 を 使 えるのかという 疑 問 が 残 るのですが)。「え、…… 縁 寿 ちゃん、 聞 いて…! あの 日 記 は、 伯 母 さんのデタラメが 書 いてあるだけで 何 の 意 味 も……」( 絵 羽 )(EP8)「ごまかしは 不 要 よ。あんたの 日 記 にはあの 日 の 真 実 が 記 されていると、すでに 赤 き 真 実 で 断 じられているのよッ!」( 縁 寿 )「……ば、 馬 鹿 な。ゲームマスターの 戦 人 以 外 の 誰 が、 赤 き 真 実 を 使 えるというのか…!」(ベアト)「…………………………。……アウアウローラね」(ラムダ)「 正 解 よ。……“ 一 なる 真 実 の 書 ”は、1998 年 という 未 来 世 界 の 存 在 。その 中 身 に 赤 き 真 実 で 保 証 を 与 えるという 大 役 が、 他 の 誰 に 出 来 るっていうの…?」(ベルン)「……いいわ。 赤 き 真 実 で 約 束 してあげる。……《 赤 : 一 なる 真 実 の 書 を、 封 印 が 解 けて 一 番 最 初 に 読 むのはあなた、 縁 寿 よ。》」(ベルン)(EP8)「こういっては 何 ですが。 日 記 の 中 に 記 された 内 容 が 真 実 であるとの 保 証 はあるのでしょうか? 故 人 の 私 的 記 録 に 過 ぎないという 穿 った 見 方 もあるようですが」( 報 道者 )(EP8)「いいえ、 私 が 保 証 します。《 赤 : 日 記 には 真 実 が 記 されています。》」( 幾 子 )※もっとも 抜 け 穴 的 な 解 釈 もありえます。 封 印 が 解 けて 一 番 最 初 に 読 むのは 縁 寿 でも、その 封 印 をする 前 に 誰 かが 読 んでいたなら、それは 赤 字 に 抵 触 しません( 絵 羽 がした 封印 と 限 定 されていないため)。「 醜 きかな 人 の 子 よ。……そなたらにも、そしてこの 私 にも、この 中 身 を 見 る 資 格 などありはしない」( 幾 子 )(EP8)※ということですから、 鍵 を 持 つ 幾 子 が 鍵 を 開 けてその 資 格 がありそうな 十 八 に 中 身 を 確 認 させてから、 再 び 鍵 を 掛 ければ 良 いわけです。■ 明 日 夢 はどんな 人 ?※ 実 は 明 日 夢 に 関 する 記 述 は 作 品 中 に 僅 かしかありません。「……あいつ、どーいうわけか 乗 り 物 系 がダメでなぁ。 自 転 車 と 車 以 外 はほぼダメだったぜ。どこか 遠 出 しようとすると、アレはダメだコレはダメだ、 怖 い 怖 い 落 ちる 落 ちるぎゃーぎゃーとうるせぇ 女 だったさ」( 留 弗 夫 )(EP4)「…… 彼 女 ( 明 日 夢 )がバスや 飛 行 機 でぎゃあぎゃあ 喚 く 時 、 私 はその 手 配 と 経 費 を 適 正 に 処 理 できた」( 霧 江 )(EP6)※ 乗 り 物 を 嫌 がったことは 事 実 のようです。「……… 留 弗 夫 さんと、 最 初 から 付 き 合 っていたのは 私 だったのよ。…… 明 日 夢 さんが、 白 々しく 間 に 入 り 込 んできて、…ちゃっかりと 懐 妊 したのよ。…… 留 弗 夫 さんは 悪くないわ。あの 女 が、 体 を 武 器 にして 誑 し 込 んで、さらに 嫌 らしく 立 ち 回 って、 留 弗 夫 さんに 婚 約 せざるを 得 ないよう 追 い 詰 めたのよ」( 霧 江 )(EP3)「( 明 日 夢 は)…… 留 弗 夫 さんの 取 り 巻 きの 一 人 よ。…いえ、 取 り 巻 いてさえいなかったわ。ただのファンのひとりだったわ」( 霧 江 )(EP6)「 話 したことはあるんですか…」( 朱 志 香 )「もちろん。…… 私 は 彼 女 のことをよく 知 ってるわ。 留 弗 夫 さんが、 明 日 夢 さんの 名 前 さえ 知 らなかった 一 番 最 初 からね。………あの 子 も、きっと 頭 のいい 子 だったのよ。狡 猾 だったわ。…… 私 は、 頭 の 良 さで 目 立 とうとしたけど、……… 彼 女 はまったくその 逆 で 目 立 とうとしたの」( 霧 江 )「…… 頭 の、… 悪 さで……?」( 朱 志 香 )「くす…。……… 庇 護 欲 の 掻 き 立 て 方 がうまいって 意 味 よ。 媚 びてイチャついてくる 女 たちの 中 で、…… 彼 女 の 仕 草 のひとつひとつが、 派 手 な 女 たちに 食 傷 を 起 こしていた留 弗 夫 さんには 目 立 って 見 えたのよ」( 霧 江 )「 明 日 夢 さん、………あんなにぼんやりしてそうなのに。… 留 弗 夫 さんを 咥 え 込 んだら、 離 しやしない。……“だから 何 ですか、どうぞお 引 取 下 さい”、ですってよ。……バスひとつ 乗 るにも、 怖 い 怖 いと 縮 こまってた、あの 小 娘 がね。………あの 時 、 悟 ったわ。… 本 当 に 狡 猾 だったのは、 彼 女 だったってね。……そうよ、 乗 り 物 恐 怖 症 だって、留 弗 夫 さんの 気 を 引 くための 嘘 だったわ。……………」( 霧 江 )(EP6)※ 以 上 は 霧 江 の 主 観 であり、 霧 江 の 価 値 観 で 歪 められた 明 日 夢 像 です。留 弗 夫 はいつしか、…… 霧 江 の 力 を 認 めつつも、 静 かで 温 かな 包 容 力 に 憧 れるようになっていた。 明 日 夢 は、それを 全 て 満 たしていた。 難 しい 話 は 一 切 聞 かない。 話 しても、わからないからと 首 を 振 る。でも、 誰 よりも 体 を 気 遣 ってくれて、 静 かに 毛 布 を 掛 けて 朝 までじっと 側 にいてくれた…。(EP6)「 間 もなく、 二 人 は 懐 妊 するわ。…… 明 日 夢 さんは、それをすぐにお 父 さんに 打 ち 明 けたけど、お 母 さんは 逆 だった」( 縁 寿 )(EP6)※こちらが 正 しい 明 日 夢 像 でしょう。“だから 何 ですか、どうぞお 引 取 下 さい”というのは、 明 日 夢 が 妊 娠 していたときに、 霧 江 が「 自 分 も 妊 娠 しているのだから 留 弗 夫 をよこせ」と 迫 った 時 の 明 日 夢 の 返 事 だと 考 えられます。おとなしい 明 日 夢 にとって 霧 江 など、 女 ヤクザみたいなものです。それでも 生 まれてくる 子 どもの 為 に、 母 親 としてなけなしの 勇 気 を 振 り 絞 ったに 違 いありません。それを 鋭 い 霧 江 に 見 抜 かれなかったのですから、 一 世 一 代 の 大 芝 居 だったことでしょう。「…………だから 俺 は、お 前 たち3 人 に 謝 らなきゃいけない。…… 明 日 夢 には、 血 の 繋 がらない 赤 ん 坊 を 押 し 付 けた。………あいつはおっとりしてるように 見 えて、 案 外 鋭かったからな。……ひょっとしたら、 気 付 いてたかもしれない。…でも、 自 分 を 母 と 慕 う 戦 人 を、 最 後 まで 愛 情 たっぷりに 育 ててくれたよ」( 留 弗 夫 )(EP8)※おそらく 本 当 に 気 がついていたのでしょう。それでも 戦 人 を 自 分 の 子 として 可 愛 がったのです。「……そうですね。 私 も 聞 かせてもらったことがあります。…… 明 日 夢 さまも 呆 れておられましたっけ。…… 学 校 では 大 層 、 女 性 に 人 気 で、トラブルが 絶 えないのはきっと留 弗 夫 さまの 血 のせいに 違 いないと」( 紗 音 )(EP6)※ 意 外 なことに 紗 音 とも 交 流 があったようです。おそらく 似 たもの 同 士 、 話 が 合 ったのでしょう。■“ 一 なる 真 実 ”とはどのようなもの?真 里 亞 は1998 年 にはいません。 死 んでいますからね。(すべて)※いきなりインタビューからの 引 用 という 禁 じ 手 ですが、これで 少 なくとも 真 里 亞 が 死 亡 していることは 確 定 です。そのため、 顎 部 の 骨 は 失 ったが 生 きているという 可 能 性は 消 滅 します。また、 以 下 の4つの 内 容 に 注 目 すると、 大 体 どのような 内 容 であったかは 推 測 できます。「 思 い 出 せ。 一 番 最 初 の 願 いを。………… 一 なる 真 実 を 知 ってなお、 思 い 出 せ」( 戦 人 )(EP8)一 なる 真 実 。みんな 死 んでしまって、 誰 も 帰 ってこないという 非 情 なる 真 実 を 知 って、……なお、 思 い 出 せ。 一 番 最 初 の、 願 いを。答 えは 一 つしかない。 全 ての 犯 人 は、 彼 女 ( 絵 羽 )なのだ。 彼 女 は 全 ての 財 産 を 独 占 し、 大 富 豪 となった。そしてその 後 、それを 愛 息 子 に 受 け 継 がせることが 出 来 なかったことを 悔 やみ、 私 ( 縁 寿 )を 呪 った。……あのクソババアのことは、 思 い 出 すだけでも 反 吐 が 出 る。(EP8)『これが、《 赤 : 六 軒 島 事 件 の 真 相 なんですって!!》』(EP8)「………… 認 めないわ」( 縁 寿 )『あんたが 認 めなくたって!! これが 真 相 なんでしょう?!《 赤 :だって、******、**********!! **************ッ!!!》』「…… 認 めないわ、 認 めないわッ、………そんな 真 実 、 私 は 認 めない、…… 認 めない……」( 縁 寿 )『《 赤 :あんたが 認 めても 認 めなくても、 真 実 は 変 わらなァい!! だって、 赤 き 真 実 で 証 明 された、 一 なる 真 実 が、これなんだからぁああああああああぁああああぁぁ!!》』46


くすくすくす、……うふふふふふふふ、はっははははははは…!! 何 が 真 実 よ、 馬 鹿 馬 鹿 しいわね、 下 らない…! それを 真 実 かどうか 決 めるのは 私 よ? 赤 き 真 実 だって、そんなの 私 は 認 めない、 許 さない、 絶 対 に 納 得 したりしない…!!「 赤 き 真 実 は 絶 対 ?! 誰 にとっての 絶 対 ?! あんたたちにとっての 絶 対 でしょ? 私 にとっての 絶 対 じゃないッ!! 私 の 真 実 は、あんたたちの 真 実 に、 穢 されたりなんかしないッ!!」( 縁 寿 )「……… 縁 寿 、 落 ち 着 いて? 知 りたいと 願 ったのはあんたでしょう?」(ベルン)「ははははは、あっはははははははははは!! 私 の 真 実 は、 絵 羽 伯 母 さんが 犯 人 !! 絵 羽 伯 母 さんがみんなを 殺 したのよ!! 悪 いのは 全 部 絵 羽 伯 母 さんッ!! お 父さんもお 母 さんもお 兄 ちゃんも、みんなみんなただの 犠 牲 者 …!! 誰 も 悪 くない 誰 も 悪 くない…!! だってそうじゃない、だってそうじゃないッ!!」( 縁 寿 )―― 伯 母 さんはいつだって、 縁 寿 ちゃんの 味 方 よ。「はははは、あっはっははははははははははッ!!! あぁ、わかったわ、あんたの 言 葉 の 意 味 ッ! うふふふふ、あっはははははははははははは!! そうよ、 絵 羽 伯 母さん、あんたが 犯 人 よ、あんたが 犯 人 !! それを 認 めない 世 界 の 方 が、おかしいのよ 壊 れてるのよ…!! 正 しいのは 私 ッ、 私 は 赤 き 真 実 を、 世 界 の 全 てをッ、 否 定 する…!!!」( 縁 寿 )「………そう。……じゃあ、あんただけに 記 せる、 赤 き 真 実 を 記 して 御 覧 なさい。……でも、ニンゲンはどうやって 赤 き 真 実 を 記 すの?」(ベルン)「あるわよ!! ニンゲンにしか 記 せない、 真 っ 赤 なインクがあるじゃない!! 正 しいのは 私 ッ!! 間 違 ってるのが 世 界 !! 私 が 記 してあげる!! 本 当 の 赤 き 真 実で、 私 が 真 実 を 記 してあげるッ!! はっははははははは、あっははははははははははははッ!! 記 してあげるッ、これが 私 の 記 す、 真 っ 赤 な 真 実 ッ!! お 前 たちの 世界 の 真 実 など、 私 は 受 け 入 れるものかあぁあああああああああぁああぁあぁあッ!!!」( 縁 寿 )縁 寿 の 体 が、バルコニーを 越 える。 泳 ぐように 飛 べた 宙 は、なぜかこの 時 だけ 無 慈 悲 だった。 縁 寿 の 体 はまっすぐに、…… 眼 下 の 闇 に 落 ちていく。「……………………………」(ベルン)ベルンカステルは、ただ 静 かにそれを、いつまでも 見 下 ろしている……。「………… 無 事 で、とはとても 言 えない 姿 だったけれど。…… 良 かったわ。 帰 って 来 て」( 絵 羽 )(EP8)「…… 絵 羽 、……… 伯 母 さん……」( 縁 寿 )「 私 のことをいくらでも、 憎 んでくれていいから。………だから、お 父 さんとお 母 さんに、 百 万 回 キスをしてあげて。……あなたのことをいつも 想 っているみんなにも、キスをしてあげて」( 絵 羽 )「 絵 羽 ……、………… 伯 母 さん…………」( 縁 寿 )「………あなたのもう 一 人 のお 母 さんに、どうかただいまと 言 ってあげて」( 霧 江 )私 はお 母 さんに 背 中 を 押 され、…………たどたどしく 歩 み 寄 る。もう 一 人 の、お 母 さんに。「……… 絵 羽 ……、……………お 母 さん…………」( 縁 寿 )「…… 縁 寿 ちゃん……………」( 絵 羽 )「あの 日 、………… 私 が、そう 呼 べていれば…、……… 私 は、…… 何 も 誤 ることがなかったかもしれない……。…… 私 たちは、…… 新 しい 世 界 を、 二 人 で 生 み 出 せたかもしれない……」( 縁 寿 )「もういいのよ。…… 縁 寿 ちゃんは 帰 って 来 てくれたわ。………だから、もう 何 も 言 わなくていいのよ…」( 絵 羽 )「お 母 さん……。…………お 母 さん………………」( 縁 寿 )「お 帰 り、 縁 寿 ちゃん…。…………あなたは 私 の 可 愛 い 娘 よ……」( 絵 羽 )「 絵 羽 お 母 さん……。………あなたはいつまでも、……そして 最 後 まで、……… 私 の 一 番 の 味 方 だった…………」( 縁 寿 )二 人 は 静 かに 抱 き 合 い、…… 互 いの 肩 に 顔 を 埋 めて、 泣 いた。※ 絵 羽 を 犯 人 だと 信 じ、 憎 んでいた 縁 寿 が、 一 なる 真 実 を 読 むことによって、 完 全 に 考 え 方 が 逆 転 しています。また、 縁 寿 が 絶 望 して 自 殺 を 選 ぶほどの 内 容 であったこともわかります。つまりEP7のお 茶 会 における 内 容 にほぼ 準 じていると 考 えられるのです。ちなみに 僕 はこのシーンがとても 好 きです。 何 故 なら、 信 じていた 両 親 に 絶 望 して 自殺 を 選 んだ 縁 寿 が、それ 故 にもう 一 人 の 母 の 愛 に 気 づき、 立 ち 直 ることが 出 来 たからです。■ウィルの 推 理 の 解 答 は?「 第 1のゲーム、 第 一 の 晩 。 園 芸 倉 庫 に、6 人 の 死 体 」「 幻 は 幻 に。…… 土 には 帰 れぬ 骸 が、 幻 に 帰 る」※ 園 芸 倉 庫 にあった 紗 音 の 死 体 はマネキンであったと 考 えられます。これは 本 物 の 死 体 とは 違 って 腐 らないため“ 土 には 帰 れぬ”。それでもって 本 物 の“ 骸 ”ではない 為 “ 幻に 帰 る”のです。もしくは 完 全 な 秀 吉 の 狂 言 で、 偽 の 死 体 すらなかったかもしれません。“ 土 は 土 に”というのは“ 見 たまま”という 意 味 のようですので、 死 体 も 偽 の 死 体もないのでは“ 土 には 帰 れぬ 骸 が、 幻 に 帰 る”のは 当 然 と 言 えます。「 第 1のゲーム、 第 二 の 晩 。 寄 り 添 いし 二 人 の 骸 は 鎖 で 守 られし 密 室 に」「 幻 は 幻 に。…… 幻 の 鎖 は、 幻 しか 閉 じ 込 めない」※ 紗 音 は“ 今 後 の 計 画 の 打 ち 合 わせ”という 名 目 で 秀 吉 夫 婦 を 訪 ねたと 考 えられます。 秀 吉 はシャワー 中 ですが、 紗 音 は“ 既 に 死 んでいる”ため、 人 に 見 つからないうちに絵 羽 は 紗 音 を 部 屋 に 招 き 入 れます。 紗 音 は 隠 し 持 っていた 拳 銃 で 二 人 を 殺 害 後 、 銃 創 に 杭 を 突 き 刺 して、 普 通 に 部 屋 を 出 たと 考 えられます。 嘉 音 として 再 度 訪 れた 時 にはそもそもドアチェーンなど 掛 かっていなかったのです。 後 は 部 屋 に 入 ってからドアチェーンをかけ、チェーンカッターでチェーンを 切 断 したと 考 えられます。そのため“ 幻 の鎖 ”です。「 第 1のゲーム、 第 四 の 晩 。 密 室 書 斎 の 老 当 主 は 灼 熱 の 窯 の 中 に」「 幻 は 幻 に。…… 幻 の 男 は、あるべきところへ」※ 金 蔵 は 物 語 が 始 まった 時 点 では 既 に 死 亡 しているため“ 幻 の 男 ”なのだと 考 えられます。“ 密 室 書 斎 ”にははじめからいなかったか、もしくは 書 斎 に 踏 み 込 まれる 事 態 を恐 れて 移 動 させられたのでしょう。「 第 1のゲーム、 第 五 の 晩 。 杭 に 胸 を 捧 げし 少 年 の 最 後 」「 幻 は 幻 に。…… 幻 想 の 魔 女 と 杭 は、 幻 想 しか 貫 けない」※ 嘉 音 の 自 作 自 演 だと 考 えられます。そのため“ 幻 想 の 魔 女 と 杭 ”なのです。 杭 を 抜 いたのは 本 当 に 刺 したら 死 んじゃうからです。この 作 品 、 全 編 を 通 じて“ 杭 が 刺 さっていない 死 体 ”は 怪 しいです。 赤 字 による 死 亡 宣 告 は“ 人 格 死 ”で 潜 れるためです。「 第 1のゲーム、 第 六 、 第 七 、 第 八 の 晩 。 歌 う 少 女 の 密 室 に 横 たわる3 人 の 骸 」「 幻 は 幻 に。…… 盲 目 なる 少 女 が 歌 うは 幻 。 密 室 幻 想 」※“ 盲 目 なる 少 女 が 歌 うは 幻 ”ですので、 真 里 亞 は 何 らかの 形 で 嘘 をついていることになります。 証 言 が 嘘 なのか、 壁 に 向 かってずっと 歌 を 歌 っていたというのが 嘘 で、 何らかの 形 でベアトを 幇 助 したのか( 扉 の 施 錠 を 解 除 した、 扉 を 施 錠 した、 電 話 をかけたなど)、 判 断 できる 材 料 がありませんが…。「 第 2のゲーム、 第 一 の 晩 。 腹 を 割 かれし6 人 は 密 室 礼 拝 堂 に」「 幻 は 幻 に。…… 黄 金 の 真 実 が、 幻 の 錠 を 閉 ざす」※ 最 初 から 鍵 はかかっていなかったため“ 幻 の 錠 ”なのだと 考 えられます。 現 場 にいたメンバーによる“ 黄 金 の 真 実 ”です。 紗 音 と 嘉 音 が 同 時 にいるのを 楼 座 と 郷 田 が 目 撃していますが、 共 犯 であるためか、この 場 面 が 幻 想 描 写 であるためか、もしくはゲームマスターに“ 見 させられている” 可 能 性 があります。「 第 2のゲーム、 第 二 の 晩 。 寄 り 添 いし 二 人 は、 死 体 さえも 寄 り 添 えない」「 幻 は 幻 に。…… 役 目 を 終 えたる 幻 は、 骸 さえも 残 せない」47


※ 嘉 音 という“ 役 目 を 終 えた”だけであるため“ 骸 さえも 残 せない”のだと 考 えられます。“ 嘉 音 はこの 部 屋 で 殺 された。”と 赤 字 で 宣 言 されていますので、 嘉 音 は 人 格 死 です。 以 後 は 紗 音 とベアトリーチェとしてしか 登 場 できなくなります。「 第 2のゲーム、 第 四 、 第 五 、 第 六 の 晩 。 夏 妃 の 密 室 にて 生 き 残 りし 者 はなし」「 土 は 土 に。…… 棺 桶 が 密 室 であることに、 疑 問 を 挟 む 者 はいない」※ 紗 音 が 郷 田 と 譲 治 を 殺 した 後 、 部 屋 を 内 側 から 施 錠 して 自 殺 したと 考 えられます。「 第 2のゲーム、 第 七 、 第 八 の 晩 。 赤 き 目 の 幻 想 に 斬 り 殺 されし 二 人 」「 土 は 土 に。 幻 は 幻 に。…… 幻 に 生 み 出 せる 骸 はなし」※ 紗 音 が 南 條 と 熊 沢 を 殺 して、 現 場 にいた 源 次 と 郷 田 と 口 裏 を 合 わせて 偽 証 したと 考 えられます。もしくはこの 時 点 では 死 んだことにして、どこかに 隠 れていたのかも。「 第 3のゲーム、 第 一 の 晩 。 連 鎖 密 室 が 繋 ぎし、6 人 の 骸 」「 幻 は 幻 に。…… 輪 になる 密 室 、 終 わりと 始 まりが、 重 なる」※ 客 間 の 紗 音 は 死 んだフリ、みんなが 移 動 している 間 に 嘉 音 になり、 今 度 は 礼 拝 堂 で 死 んだフリをしたと 考 えられます。 最 後 の 礼 拝 堂 と 最 初 の 客 間 で 死 んでいる 人 が 同 じだから“ 終 わりと 始 まりが、 重 なる”のです。 二 人 の 人 格 を 切 り 捨 て、 以 後 はベアトとして 行 動 します。「 第 3のゲーム、 第 二 の 晩 。 薔 薇 庭 園 にて 親 子 は 骸 を 重 ねる」「 土 は 土 に。…… 語 られし 最 期 に、 何 の 偽 りもなし」※ 絵 羽 が 二 人 を 殺 害 したと 考 えられます。ただし 桜 座 は 誤 って 殺 してしまったと 考 えられますし、 真 里 亞 は 叫 ぼうとしたのを 抑 えるつもりで 絞 殺 してしまったのでしょう。銃 を 回 収 しなかったのは 気 が 動 転 していたためと 思 われます。「 第 3のゲーム、 第 四 、 第 五 、 第 六 の 晩 。 屋 敷 にて 倒 れし3 人 の 骸 」「 土 は 土 に。…… 語 られし 最 期 に、 何 の 偽 りもなし」※ 絵 羽 が 留 弗 夫 、 霧 江 を 殺 害 したと 考 えられます。 秀 吉 が 射 殺 されたのは、 腹 を 撃 たれた 霧 江 が 死 ぬ 前 に 最 後 のあがきで 絵 羽 を 撃 とうとした 際 に 庇 ったのでしょう。「 第 3のゲーム、 第 七 、 第 八 の 晩 。 夫 婦 二 人 は 東 屋 にて 骸 を 晒 す」「 土 は 土 に。…… 明 白 なる 犯 人 は、 無 常 の 刃 を 振 るいたり」※ 絵 羽 が 蔵 臼 と 夏 妃 に 睡 眠 薬 入 りのコーヒーを 飲 ませて 絞 殺 ( 銃 だと 銃 声 が 二 階 に 聞 こえるため)した 後 、 台 車 に 乗 せて 東 屋 に 運 んだと 考 えられます。「 第 4のゲーム、 第 一 の 晩 。 食 堂 にて 吹 き 荒 れる 虐 殺 の 嵐 」「 幻 は 幻 に。…… 黄 金 の 真 実 が 紡 ぎ 出 す 物 語 は、 幻 に 帰 る」※ 親 族 会 議 の 出 席 者 全 員 が 口 裏 を 合 わせたと 考 えられます。「 第 4のゲーム、 第 二 の 晩 。 二 人 の 若 者 は 試 練 に 挑 み、 共 に 果 てる」「 幻 は 幻 に。…… 黄 金 の 真 実 が 紡 ぎ 出 す 物 語 は、 幻 に 帰 る」※ 朱 志 香 の 電 話 の 話 は 演 技 だったと 考 えられます。「 第 4のゲーム、 第 四 、 第 五 、 第 六 、 第 七 、 第 八 の 晩 。 逃 亡 者 は 誰 も 生 き 残 れはしない」「 土 は 土 に。 幻 は 幻 に。…… 虚 構 に 彩 られし、 物 言 わぬ 骸 」※ 霧 江 の 電 話 の 話 は 演 技 だったと 考 えられます。 紗 音 が 戦 人 以 外 の 全 員 を 殺 し、 銃 が 井 戸 に 落 ちるようにして 自 殺 したのでしょう。「 第 4のゲーム、 第 九 の 晩 。そして、 誰 も 生 き 残 れはしない」「 土 は 土 に。 幻 は 幻 に。…… 虚 構 は 猫 箱 に 閉 ざされることで、 真 実 となる」※ 紗 音 が 小 窓 からシャッターの 鍵 を 投 げてもらい、シャッターを 開 けてから 郷 田 と 熊 沢 に 首 吊 りのフリをさせてから 射 殺 。 適 当 な 鍵 を 郷 田 のポケットに 入 れてからシャッターを 施 錠 したと 考 えられます。 真 里 亞 はそもそも 礼 拝 堂 には 行 っておらず、 戦 人 が 来 る 前 に 屋 敷 の 中 に 入 り、 毒 薬 を 飲 まされたと 考 えられます。「 私 は、だぁれ……?」「 幻 は、 幻 に。…… 約 束 された 死 神 は、 魔 女 の 意 思 を 問 わずに、 物 語 に 幕 を 下 ろす」※ 時 限 爆 弾 なので 時 間 が 来 れば 爆 発 します。 屋 敷 周 辺 にいれば 死 亡 確 定 です。■ウィンチェスターM1894の 威 力 は?以 上 のシナリオに 従 い、 遺 体 を 破 壊 する。 銃 創 の 跡 が 見 つからないように、その 部 位 は 丹 念 に 破 壊 しておく。フラウロスに、 腹 を 引 き 裂 かれ、 腸 を 引 きずり 出 され、 食 い 千切 られ。それを 丹 念 に 再 現 しておく。( 我 告 )ベアトは 絞 殺 道 具 を 仕 舞 うと、 次 に 傍 らのライフルを 取 る。そして 熊 沢 のふくらはぎの 辺 りに 狙 いを 付 け、 引 き 金 を 引 いた。 銃 声 は 軽 い。……ドラマや 映 画 で 聞 くような、ドギューンなどという 音 ではない。せいぜい、シャンパンの 栓 を 抜 いたくらいの 音 だった。しかし、 血 の 塊 が 飛 び、そこにはぶくぶくと 血 の 溢 れ 出 す 痛 々しい 穴 が 穿 たれた。( 我 告 )※というようにあまりたいしたものではないようです。その 一 方 でEP4とEP7では 以 下 のように 描 写 されています。…… 惨 いのは 誰 も 一 緒 だが、 紗 音 ちゃんの 可 愛 らしい 顔 が 半 分 吹 き 飛 んでいるのを 正 視 するのは、とても 辛 かった……。(EP4)怒 りの 銃 口 が 留 弗 夫 の 眉 間 に 押 し 付 けられる。 落 雷 の 光 が 辺 りを 真 っ 白 に 染 め 上 げる。しかし、 礼 拝 堂 の 壁 は、 真 っ 赤 に 染 め 上 げられた。 留 弗 夫 の 後 頭 部 で、トマトを 潰 したような 真 っ 赤 な 飛 沫 が、 壁 いっぱいに 広 がっていた……。 留 弗 夫 の 無 残 な 亡 骸 が、ひさしからぼたぼたと 垂 れる 水 滴 に 晒 される。 目 は 見 開 いたまま。 後 頭 部 には 握 り 拳 ほどの 大 きさに、ぐずぐずの 挽 き 肉 状 の 穴 が 開 き、……その 中 身 を 外 気 に 晒 していた。(EP7)※どうも、 至 近 距 離 から 発 砲 するとかなりの 威 力 があるようです。もしくは 散 弾 を 使 用 するとこういうことになるのかもしれません。ということは、 以 下 の 死 体 はウィンチェスターM1894を 至 近 距 離 で 発 砲 したか、 散 弾 を 使 用 して 損 壊 された 可 能 性 があります。( 留 弗 夫 たちの 遺 体 は) 歯 茎 が 剥 き 出 しになってて 口 をぽっかりと 開 けているから! でも、 前 歯 は 飛 んでいるし、そもそもそれを 覆 う 頬 っぺただってぐちゃぐちゃで 剥 き 出しで!(EP1)※ところが 以 下 のように、この 死 体 に 酷 似 した 状 況 が 人 の 手 でも 作 り 出 されているのです。……だって 朱 志 香 の 顔 面 はもう、…… 鼻 は 折 れ、 目 は 潰 れ、…… 歯 も 飛 び、…… 可 愛 らしかった 鼻 筋 はおろか、 顔 面 であったと 認 めることさえ 難 しいくらいの、…… 血 塗 れの 肉 塊 に、 変 わり 果 てていた……。 霧 江 はようやく、 銃 床 で 朱 志 香 の 顔 面 を 殴 り 続 ける 仕 事 を 止 める。(EP7)※TIPSにも 以 下 のように 書 かれていることから、 射 殺 後 、 銃 創 の 跡 を 消 すために、 道 具 を 使 って 加 工 した 可 能 性 のほうが 高 いでしょう。死 後 に 顔 面 を 損 壊 されたものと 思 われる。(EP1)※『 我 らの 告 白 』には 以 下 の 描 写 もありますベアトがソファーの 陰 に 腰 を 屈 める。そして 再 び 立 ち 上 がった 時 、その 両 手 には 金 蔵 のコレクションの、ソードオフライフルが 握 られていた。ドレス 姿 とアンティークな 銃の 組 み 合 わせに、 絵 羽 たちはまるで、 貴 婦 人 が 扇 子 か 何 かを 手 にしたくらいにしか 思 わなかった。 少 なくとも、その 銃 口 が 鉛 の 散 弾 を 吐 き 出 すまでは。※ 普 通 の 銃 弾 だけでなく、 散 弾 も 使 用 できるようです。シエスタ45とシエスタ410はそれぞれ“.45ロングコルト 弾 ”と“410ゲージショットシェル”のことを 意 味していると 考 えられます。■ 絵 羽 の 日 記 とはどのようなもの?「…… 絵 羽 会 長 は、 秘 密 の 日 記 を 持 っていて、それには 厳 重 に 錠 前 を 掛 けていて。…… 出 先 に 行 く 時 も 必 ず 持 って 行 ってた、ってぇ 話 は、 護 衛 仲 間 から 聞 いたことがあります」( 天 草 )(EP8)48


「…… 秘 密 の、…… 日 記 ……。それがどうしてここに……」( 縁 寿 )「 右 代 宮 絵 羽 が 息 を 引 き 取 った 病 室 にあったものです」( 幾 子 )その 日 記 は、ベッドの 裏 側 に 隠 されていた。その 為 、 絵 羽 の 死 後 も 長 く 発 見 されずに、 病 室 内 に 留 まった。それを 偶 然 、 病 院 の 関 係 者 か、もしくはその 病 室 に 関 わった 患 者か 家 族 が 発 見 したのだろう。…… 当 然 、その 頃 には 六 軒 島 ミステリーは、 大 きなムーブメントになっていた。 幸 運 だったのは、この 日 記 を 手 にしたウィッチハンターたちが、高 尚 な 人 間 たちばかりだった 点 に 違 いない。 彼 らは、 錠 前 を 破 壊 して 真 実 を 暴 くという 無 粋 を 嫌 い、……このミステリアスな 錠 前 の 向 こうに、あの 日 の 真 実 が 眠 っているという 事 実 だけに、 純 粋 に 酔 いしれた。そのお 陰 でこうして、…… 絵 羽 の 日 記 は、 傷 一 つ 付 けられることなく 現 存 しているのである…。「………まさか、この 日 記 に。…… 絵 羽 伯 母 さんが、あの 日 、 何 があったのかを 記 している……、とでも 言 うの…」( 縁 寿 )「 中 を 読 めば、 全 てがわかるでしょう。……しかし、その 錠 前 を 外 す 鍵 の 行 方 がわからないのです」( 幾 子 )私 は、はっとする。そして 自 らの 胸 を 見 る。そこには 兄 が 掛 けてくれた、あの 鍵 があるはず……。「え? な、……ないッ。か、…… 鍵 …!」( 縁 寿 )「……どうしたんです、お 嬢 。 鍵 って?」( 天 草 )「 私 がずっと 首 に 掛 けてたでしょ?!」( 縁 寿 )「…… 俺 は 知 りませんぜ。 鍵 なんざ、ぶら 下 げてましたか…?」( 天 草 )すぐに 理 解 する。ニンゲンの 世 界 で、 私 は 鍵 を 手 に 入 れてはいない。 鍵 を 持 っている 私 は、…… 魔 女 の 世 界 の、ゲーム 盤 の 上 の 私 だ。「 鍵 を 持 っている 私 に 戻 して。この 日 記 を 開 けるわ」( 縁 寿 )フェザリーヌが 指 を 立 て、くるっと 回 すと、 再 び 世 界 はぐにゃりと 歪 む。フェザリーヌの 書 斎 に 戻 ると、 私 の 胸 にも、すうっと、 首 に 掛 けられた 鍵 が 戻 ってくる。しかし 今度 は、 同 じようにすうっと、…… 膝 の 上 に 置 いていた 日 記 が 消 えてしまう。「 日 記 はどこに?!」( 縁 寿 )「ゲーム 盤 のどこかに 存 在 するだろう。そなたに 与 えられる 鍵 穴 の 一 つである 以 上 、 必 ずどこかに 存 在 するはず」(フェザ)「お 兄 ちゃんが、どこかに 隠 している…?」( 縁 寿 )「…… 戦 人 があんたとのゲームを 気 取 る 以 上 、それは 恐 らく、 完 全 な 意 味 では 隠 されていないわ」(ベルン)「どういう 意 味 …?」( 縁 寿 )「 戦 人 にとって 奪 われたくないキングであっても。それはゲーム 盤 に 置 かれていなければ、ゲームとして 成 立 せぬということ」(フェザ)「つまり、………あの、 右 代 宮 家 のどこかにあったということ…?」( 縁 寿 )「あるいは、すでにそなたには 一 度 、 目 にする 機 会 が 与 えられているのかも 知 れぬ。…… 詐 欺 師 が 一 番 最 初 に 見 せる 契 約 書 に、 極 小 の 字 にて、すでに 悪 辣 なる 罠 が 記 してあるかのように」(フェザ)「…… 戦 人 がゲームマスターとして、ミステリーの 作 法 とやらに 則 るなら。………“ 手 掛 りは 必 ず 提 示 され”、“ 戦 人 が 負 ける 選 択 肢 も、 必 ず 提 示 されている”。……… 縁 寿 。思 い 出 しなさい。……あんたはすでに 戦 人 の 世 界 で、 絵 羽 の 日 記 を 見 ているはずよ」(ベルン)その 時 、……… 私 の 脳 裏 に、………この 最 後 のゲームが 始 まる、 一 番 最 初 の 光 景 が 思 い 返 される。あの 礼 拝 堂 で。…… 祭 壇 の 上 に 置 かれていた、“ 錠 前 の 掛 けられていた 本 ”……。あの 本 に 興 味 を 示 したら、…… 兄 は 駄 目 だと、きっぱり 言 い 放 った……。「あれが、……… 絵 羽 伯 母 さんの 日 記 ………」( 縁 寿 )「そうよ。 右 代 宮 絵 羽 の 日 記 。あの 日 の 真 実 を 記 した、“ 一 なる 真 実 の 書 ”」(ベルン)「…… 一 なる、 真 実 の 書 ……。それに、 本 当 の 真 実 が 記 されているの? だってそれは 絵 羽 伯 母 さんの 妄 言 の 可 能 性 も……、」( 縁 寿 )「 赤 き 真 実 で、 私 が 断 じよう。……《 赤 : 右 代 宮 絵 羽 の 日 記 、“ 一 なる 真 実 の 書 ”には、1986 年 10 月 4 日 から5 日 にかけての、 六 軒 島 の 真 実 が 記 されている。》」(フェザ)「………“ 一 なる 真 実 の 書 ”は、 右 代 宮 絵 羽 が 記 した」( 幾 子 )(EP8)原 稿 用 紙 の 山 に 隠 れるように、…… 絵 羽 の 日 記 があった。八 城 は、ふっと 笑 いながら、 原 稿 用 紙 の 山 を 払 い 除 け、“ 一 なる 真 実 の 書 ”を 取 り 出 す。そして、 施 錠 された 引 き 出 しを 開 く。(EP8)「…… 縁 寿 が 望 むのだ。……この 書 の 封 印 は 解 かれる 運 命 にあるのだろう。…… 縁 寿 は 一 なる 真 実 に 至 り、 一 なる 真 実 は 猫 箱 の 封 印 を 開 いて、 全 てを 白 日 に 晒 す」( 幾 子 )その 時 、 廊 下 に 人 の 気 配 がする。ノックの 音 と 同 時 に、ベルンカステルは 黒 猫 の 姿 に 戻 る。 八 城 は 立 ち 上 がる。そして、 開 いた 引 き 出 しを 再 び 閉 めて、 施 錠 する。その 引 き出 しの 中 には、……… 黄 金 色 に 輝 くあの 鍵 が、 横 たわっていた……。「……いいわ。 赤 き 真 実 で 約 束 してあげる。……《 赤 : 一 なる 真 実 の 書 を、 封 印 が 解 けて 一 番 最 初 に 読 むのはあなた、 縁 寿 よ。》」(ベルン)(EP8)「 偽 書 作 家 としての 先 生 は、ネット 上 で 真 実 に 至 ったと 公 言 されておりました! それはつまり、もう 先 生 は 日 記 の 中 身 をご 覧 になっているということなのですか!」( 記者 )(EP8)「………そして、それはもうじき、 皆 さんにも 公 開 されることとなるでしょう」( 幾 子 )「こう 言 っては 何 ですが。 日 記 の 中 に 記 された 内 容 が 真 実 であるとの 保 証 はあるのでしょうか? 故 人 の 私 的 記 録 に 過 ぎないという 穿 った 見 方 もあるようですが」( 記 者 )「いいえ。 私 が 保 証 します。《 赤 : 日 記 には 真 実 が 記 されています。》」( 幾 子 )「 醜 きかな 人 の 子 よ。……そなたらにも、そしてこの 私 にも、この 中 身 を 見 る 資 格 などありはしない。……しかし、 思 えばこれもなかなか 愉 快 な 催 しであった。 死 者 の 眠 りを 暴 き、 好 き 勝 手 に 噂 を 吹 聴 する 人 の 子 の 面 白 き 一 面 を 見 ることが 出 来 た。……… 行 くぞ、ベルン。 今 宵 の 肴 にはこれで 充 分 であろう…」( 幾 子 )(EP8)その 肩 に 黒 猫 が 飛 び 乗 り、 八 城 は 一 なる 真 実 の 書 を 抱 えて 舞 台 袖 に 消 える。※ 縁 寿 は1998 年 には 幾 子 と 会 えなかったため、これらの 出 来 事 のほとんどが 幻 想 、もしくは 平 行 世 界 の 描 写 と 思 われます。しかし、いくつかは 現 実 の 描 写 、もしくは 現実 に 通 じる 内 容 であるとも 考 えられます。 問 題 なのは 幾 子 がなぜ、 日 記 の 鍵 を 持 っているのかということです。 僕 は、 絵 羽 から 贈 られたのではないかと 推 測 します。まず、絵 羽 は 日 記 を 残 した。これは 真 実 を 誰 かに 伝 えたいという 思 いからだと 考 えられます。それなのに 日 記 は 鍵 が 掛 かった 状 態 で 発 見 され、その 鍵 は 見 つからなかった。これは絵 羽 が 真 実 を 奇 跡 に 託 したからではないでしょうか? 日 記 の 鍵 が 壊 されない 奇 跡 、 鍵 を 持 ったものが 鍵 が 壊 されないままの 日 記 を 手 にする 奇 跡 。これら2つの 奇 跡 に 真 実を 託 したのです。伊 藤 幾 九 郎 の 最 初 の 偽 書 、「Banquet of the golden witch」は、 九 羽 鳥 庵 で 右 代 宮 絵 羽 が 難 を 逃 れるまでを 全 て 描 いており、これこそ 六 軒 島の 真 実 ではないかとさえ 囁 かれ、ワイドショーでまで 取 り 上 げられたことがある…。(EP6)※ということですから、 絵 羽 がこれを 読 んでいても 不 思 議 はありません。 縁 寿 が 偽 書 から 幾 子 に 辿 りついたように、 絵 羽 も 幾 子 が 六 軒 島 の 真 実 に 限 りなく 近 付 いている 者 であることに 気 が 付 いていました。 流 石 に 戦 人 が 生 きていたとは 考 えなかったでしょうが、これだけ 真 実 に 近 付 いている 者 になら、 真 実 への 鍵 を 与 えても 良 いと 考 えたのではないでしょうか。ただし 以 下 のように。「えぇ。 伊 藤 幾 九 郎 〇 五 七 六 が、 私 、 八 城 十 八 の 別 のペンネームだと 見 破 ったのはあなただけ。 実 に 見 事 なるかな…」( 幾 子 )(EP6)※とありますので、 絵 羽 は 幾 子 ではなく、 伊 藤 幾 九 郎 〇 五 七 六 に 贈 ったと 考 えられます。ちなみにEP8にて 以 下 の 内 容 があります。「 右 代 宮 家 長 男 、 蔵 臼 の 妻 、 夏 妃 は、 日 々の 不 満 や 鬱 積 を、 日 記 に 記 すことでそれを 封 印 するという、ある 種 のまじないをしていたことが、すでに 知 られています」( 幾 子 )(EP8)※ 夏 妃 の 日 記 と 同 じように、 絵 羽 も 誰 にも 見 せる 気 はなかったと 考 えることも 出 来 ます。しかし、 思 わぬ 事 件 によって 突 然 の 死 に 見 舞 われた 夏 妃 と 違 い、 絵 羽 は 以 下 のように 自 らの 死 期 を 悟 っていました。単 調 な 電 子 音 が、ずっと 繰 り 返 されている。 衛 生 的 、という 名 の 無 感 情 な 白 が、その 部 屋 の 基 調 。…そこは、とある 大 学 病 院 の 病 室 だった。 庶 民 ではとても 一 夜 のベッド 代さえ 払 えないその 個 室 が、 彼 女 ( 絵 羽 )の 最 後 の 部 屋 となることは、 医 師 も 本 人 も 疑 いはなかった…。(EP3)※もし 誰 にも 見 せる 気 がなかったのなら、 体 が 自 由 になるうちに 処 分 してしまったのではないでしょうか。49


■ 絵 羽 は 縁 寿 を 憎 んでいた?※ 最 終 的 には 絵 羽 は 縁 寿 を 憎 むようになったものの、 当 初 は 愛 そうと 努 力 したし、 最 期 の 瞬 間 まで 憎 しみつつも 気 遣 っていたと 思 われます。当 時 から 絵 羽 おばさんのことはあまり 好 きではなかった。 一 見 、やさしくしてくれるけど、お 父 さんたちのことをどこか 馬 鹿 にしてるような 雰 囲 気 が 幼 い 私 にも 透 けて 見 えていて、それが 苦 手 だった。だから 絵 羽 伯 母 さんが 私 を 引 き 取 ることになると 決 まった 時 、 何 となく 嫌 だった。 私 を 引 き 取 った 絵 羽 おばさんは 言 った。あなたは 右 代 宮 家 の栄 光 と 歴 史 の 全 てを 背 負 わなければならない。そしてそれを 背 負 うに 相 応 しい 次 期 当 主 となるために、 死 に 物 ぐるいで 勉 強 に 励 むのがこれからの 人 生 となる。 右 代 宮 家 のために、 残 りの 人 生 を 捧 げなさい。……そう 言 い 切 った。 私 は 初 めての 食 事 でテーブルマナーについて、 厳 しい 指 導 と 詰 問 を 受 け、その 躾 を 怠 ったとしてお 父 さんとお 母 さんへの 悪 口 まで 聞 かされなければならなかった。 初 めてのパーティでのマナーについても、 同 じように 厳 しい 指 導 を 受 け、その 無 様 さを 公 衆 の 面 前 で 罵 倒 され、お 父 さんとお母 さんへの 侮 辱 にも 耐 えなければならなかった。(EP4)※ 絵 羽 の 躾 は 確 かに 厳 しかったでしょうが、それは 絵 羽 にとっては 自 分 が 歩 んだ 道 であり、 愛 情 を 注 いだ 譲 治 にも 歩 ませた 道 でもあります。 決 して 縁 寿 が 憎 くて 歩 ませたわけではないのです。また、 留 弗 夫 夫 婦 に 夫 と 息 子 を 殺 され、 自 分 も 殺 されそうになったわけで、 怒 りを 感 じるのは 当 然 です。 霧 江 の 告 白 によって、 霧 江 が 縁 寿 を 愛 していなかったと 考 えていることから、 縁 寿 にそんな 母 親 を 忘 れさせるためにも、 非 難 するのは 当 然 のことでしょう。…そこは、とある 大 学 病 院 の 病 室 だった。 庶 民 ではとても 一 夜 のベッド 代 さえ 払 えないその 個 室 が、 彼 女 の 最 後 の 部 屋 となることは、 医 師 も 本 人 も 疑 いはなかった…。ベッドの 上 にいるのは、………… 絵 羽 なのだろうか。そうだと 言 われなければ、 信 じられないくらいに 彼 女 は 老 け 込 み、やつれていた。 扉 の 脇 に 控 えていた 体 格 の 良 いスーツ 姿の 男 が、インカムで 外 部 と 小 声 でやり 取 りをしている。… 絵 羽 の 身 辺 を 固 める 護 衛 だった。 今 の 絵 羽 は、 事 前 にアポイントがなければ、 誰 の 面 会 も 拒 んだ。 部 屋 が 薄 暗 いのは、まだ 明 るい 時 間 なのにカーテンを 閉 め 切 っているせいだ。… 室 内 には 常 に1 人 、そして 廊 下 とロビーに、さらに3 人 の 護 衛 が 控 えている。それらは 全 て、 絵 羽 の 身 辺 を守 るためのもの…。(EP3)「…… 暗 い 上 に 空 気 もひどいわ。カーテンでも 開 けたら…?」( 縁 寿 )(EP3)「……………そうすると、あんたの 依 頼 した 殺 し 屋 が、 窓 越 しに 撃 ってくるって 寸 法 なのかしらぁ……?」( 絵 羽 )…… 少 なくとも、 絵 羽 は 自 分 が 命 を 狙 われていると 信 じていた。 右 代 宮 家 の 莫 大 な 財 産 は、その 全 てが 右 代 宮 絵 羽 によって 占 有 されている。 今 や、 金 蔵 の 子 孫 たちは 絵 羽 と縁 寿 の2 人 だけ。…… 絵 羽 が 死 ねば 全 ての 財 産 は 縁 寿 に 相 続 される。…そしてさらに 縁 寿 まで 殺 されることがあれば、……その 財 産 は、 縁 寿 の 母 である 霧 江 の 実 家 に 相 続 される。絵 羽 は、 縁 寿 を 長 く 憎 んでいた。 大 切 な 一 人 息 子 の 譲 治 を 失 い、…… 自 分 の 財 産 の 相 続 人 が、12 年 前 のあの 日 、 親 族 会 議 を 欠 席 して 生 き 残 った 彼 女 だけだということを 知ったからだ。 絵 羽 は 縁 寿 を 疎 み、 嫌 い、そして 憎 悪 さえした。 彼 女 を 特 別 な 学 校 へ 隔 離 し、 人 並 みの 幸 福 や 青 春 から 遠 ざけ、 生 涯 を 飼 い 殺 すつもりであった。……しかし、絵 羽 は 不 治 の 病 を 患 い、その 余 命 は 皮 肉 にも、…12 年 前 の 親 族 会 議 で、 金 蔵 に 宣 告 されていたのと 同 じものになっていた…。 絵 羽 も 縁 寿 も、… 互 いを 憎 しみあっている。最 後 の 肉 親 同 士 だというのに、… 早 く 相 手 が 死 ねばいいのにと、 憎 しみあっている…。(EP3)※ 絵 羽 が 死 ねば、 縁 寿 は 須 磨 寺 家 から 命 を 狙 われることになります。つまり 絵 羽 が 自 分 を 守 ろうとするのは、 縁 寿 を 守 るためでもあると 考 えられるのです。また、 本 当 に 心の 底 から 縁 寿 を 憎 んでいたのなら、 縁 寿 を 真 実 から 遠 ざける 必 要 はないわけです。また、 以 下 の 内 容 から 絵 羽 が 徐 々に 心 を 病 み、 最 終 的 には 縁 寿 を 憎 むようになったことがわかります。老 紳 士 ( 小 此 木 )は、 絵 羽 亡 き 後 、 彼 女 が 築 き 上 げた 企 業 グループを 任 された 重 鎮 の 一 人 だった。 彼 の 会 社 はかつて、 秀 吉 の 会 社 と 友 好 的 な 関 係 にあり、 秀 吉 や 絵 羽 とも 親 密な 交 流 があった。その 為 、 秀 吉 を 失 った 後 の 絵 羽 が、 唯 一 本 音 を 漏 らせる 人 物 だったともされる。 家 族 を 失 った 絵 羽 が 心 を 病 み、 縁 寿 に 辛 く 当 たるようになると、 彼 はその間 の 緩 衝 材 的 な 役 割 も 担 ってくれたため、 心 が 許 せるほどではないが、 縁 寿 にとっても 訪 ねやすい 人 物 だった…。(EP4)「…… 晩 年 の 会 長 は、 少 々 病 んでいた。 縁 寿 ちゃんに 相 当 キツい 言 葉 も 掛 けたろうが。……あれは 本 意 じゃなかったはずなんだ」( 小 此 木 )(EP8)「これが、 真 実 なのよ。1986 年 10 月 4 日 からの 二 日 間 の、 猫 箱 の 中 身 よ。この 後 、 絵 羽 は 九 羽 鳥 庵 で 爆 発 を 逃 れて 生 き 残 るわ。……そして、 猫 箱 の 中 身 を 欲 するあなたに、 最 期 の 瞬 間 まで 沈 黙 を 貫 くことで、この 真 実 を、 永 遠 に 猫 箱 に 閉 ざした。 絵 羽 一 人 が 生 還 する。いくら 警 察 が 事 故 だと 断 定 しても、 世 間 は 納 得 しようとしなかったわ。そして、 亡 き 夫 に 代 わり 会 社 を 切 り 盛 りしようと 張 り 切 れば 張 り 切 るほどに 敵 を 作 り、 彼 女 が 壮 大 な 陰 謀 の 女 王 であるかのようなイメージを 作 り 上 げていった。…… 彼 女 は真 実 を 語 りたかったでしょうね。 語 ったとて 証 拠 もなく、 誰 も 信 じない 真 実 を。……… 絵 羽 の 心 は 次 第 に 壊 れていった。あなたも 絵 羽 を 拒 絶 し、 絵 羽 もあなたを 拒 絶 するようになった。 歪 みきった 最 後 の 肉 親 同 士 の 関 係 。 愛 息 子 の 面 影 をあなたに 重 ねては 苦 悩 し、ますます 歪 んで 壊 れて」(ベルン)(EP7)そんな 中 、おかしなメッセージボトルが 漂 着 し、 話 題 になっていた。 六 軒 島 で 黄 金 を 巡 る、 奇 怪 な 連 続 殺 人 事 件 があったことを 疑 わせる 怪 文 書 。 誰 もが 爆 発 事 故 を 否 定 し、陰 謀 説 に 傾 いた。そんな 中 、 絵 羽 を 犯 人 だと 名 指 しする 説 まで 生 み 出 され、ますますに 彼 女 を 苛 んだ。しかし、 絵 羽 はそれでも、それらすらも、 猫 箱 に 利 用 した。そして、死 ぬ 最 後 の 瞬 間 まで、 彼 女 は 守 りきったのだ。その 猫 箱 を 開 く、 錠 前 を。…… 私 が 絵 羽 に 引 き 取 られた 当 初 。 私 たちはまだそれほど、 険 悪 な 関 係 にはなかった。 私 は 彼 女 に 何 度 も 聞 いた。あの 日 、あの 島 で 何 があったのか。 彼 女 の 答 えは 後 に 全 て、覚 えていないに 統 一 される。しかし、 彼 女 も 混 乱 していたのだろう。 一 番 最 初 だけは、 私 の 問 いにこう 答 えたのだ。 何 も、 話 すことは 出 来 ない、と。 彼 女 は 口 を 滑 らせたのだ。 彼 女 はあの 日 、 何 があったか、 知 っている。(EP8)いくつか 作 中 から 確 実 に 分 かる 部 分 としては「 絵 羽 は 何 かを 知 っている。でも 縁 寿 には 頑 なに 最 後 まで 語 らなかった」ということ。それといくつかのメタ 世 界 で 語 られている、 彼 らが 真 実 だと 称 するいくつかの 描 写 が、 解 釈 は 異 なれどある 種 の 共 通 項 が 見 られるということ。その 辺 りから 考 察 すれば、 細 部 は 違 ってもあの 島 で 起 こったことが「 恐らくある 特 定 の 人 間 がよからぬ 事 件 を 起 こしたのではないか」と 推 測 できる。( 中 略 ) 絵 羽 は 犯 人 ではなく、 犯 人 を 知 っていてなお 濡 れ 衣 をかぶって 憎 まれ 役 を 買 ってでも、彼 女 は 縁 寿 のために 何 かを 隠 しているんじゃないかという 推 測 が 成 り 立 つはずです。( 最 考 散 )※また、 縁 寿 との 友 好 な 関 係 を 築 くことを 諦 めた 代 わりに、 憎 まれ 役 を 担 うことで、 縁 寿 に 生 きる 力 を 与 えたかったのではないかとも 推 測 できます。 以 下 の 発 言 は「 地 獄 で私 に 馬 鹿 にされたくなかったら、 立 派 に 更 生 して 天 国 に 行 けるようになりなさい」という 意 味 なのではないでしょうか?「くっくっくっくっく!! そうねぇ、そうでしょうねぇ。…いいわ、 好 きなだけ 私 を 罵 るといいわ。そしてその 評 価 を、あなたが 背 負 うのよ。…… 清 貧 が 善 人 、 金 持 ちは死 ねというのが 日 本 の 文 化 。あんたはやがて、 何 をしてもしなくても、 日 本 中 から 妬 みと 恨 みの 象 徴 に 祭 り 上 げられていく。…くっくっくっくっく! そんな 生 活 の 中 で 生きていくあなたのこれからの 人 生 は、どんなにも 歪 なものなのかしらね…? あんたの 味 方 は 誰 もいない! あんたの 悩 みなど 誰 も 聞 かない。あなたを 罵 ることは 公 然 としたスポーツになる。そしてそれを 誰 も 止 めない! あぁ、 縁 寿 ! うっふふふふふふふふ、あぁ、 本 当 に 楽 しみよ。…あんたはどんな 人 生 を 送 って、どう 終 えるのかしら…!世 界 中 の 誰 も 信 用 できず、 誰 も 愛 せず、 誰 とも 語 り 合 えない 人 生 をたっぷり 満 喫 しなさい…!! その 苦 労 話 を 持 って 地 獄 へ 墜 ちてくるのを、 私 はのんびりと 待 っているわ。うっふふふふ、あはっはははははははは、わーっはっはっはっはっはっはっはっは、がはッ、げほげほ、がはッ!!」( 絵 羽 )(EP3)※ 絵 羽 自 身 、 自 分 よりあらゆる 点 で 劣 りながら、 長 男 というだけで 次 期 当 主 の 座 にいる 蔵 臼 への 怒 りと 憎 しみを 原 動 力 にして 自 らを 高 めたわけですから、 縁 寿 にもそれを 期待 したのだと 考 えられます。 絵 羽 の 誤 算 は、 対 象 を 喪 失 した 縁 寿 の 虚 脱 感 に 思 い 至 らなかったことにあるでしょう。 何 せ 自 身 の 場 合 は“ 事 件 ”という 大 イベントで 蔵 臼 を 失っていますから。また、 絵 羽 と 蔵 臼 の 関 係 と、 縁 寿 と 絵 羽 の 関 係 では、その“ 重 さ”が 全 く 違 います。そもそも 縁 寿 が 気 に 入 らないのなら、 再 婚 して 自 分 の 子 どもを 持 つなり、 養 子 を 迎 えるなりという 選 択 肢 もあり 得 たわけで、それをしなかったあたりにも 絵 羽 の 本 心 が 伺 えるのです。■ 絵 羽 は 本 当 に 強 いの?絵 羽 伯 母 さんが2、3 歩 、ステップで 間 合 いを 取 ると、 相 変 わらずに 惚 れ 惚 れしちまう 上 段 後 回 し 蹴 りを、 親 父 の 鼻 先 ピッタリ1cmのところで 止 めてみせる。 美 容 だか 何 だかで 太 極 拳 を 始 めて、そこから 中 国 拳 法 に 興 味 を 持 って、それで 空 手 だテコンドーだカポ エィラだと 渡 り 歩 き、… 最 近 は 何 を 習 ってんだっけ?( 戦 人 )(EP1)「 側 頭 部 直 撃 だと 一 発 で 昏 倒 するわよぅ? この 間 、 演 武 でミスって 相 方 、 泡 吹 いちゃったんだからねぇ?」( 絵 羽 )絵 羽 は 夏 妃 と 揉 み 合 いになる。すぐに 戦 人 が 止 めに 入 るが、 絵 羽 は 逆 に、 戦 人 の 下 腹 部 に 鋭 い 膝 蹴 りを 入 れて、うずくまらせてしまう。(EP5)※ 身 長 180cmの 戦 人 を 一 撃 で 行 動 不 能 に 陥 れるあたり、 本 当 に 強 そうです。50


■EP1~4で 本 当 に 謎 は 解 ける?※インタビューで 竜 騎 士 07さんは 以 下 のように 語 っています。( 聞 き 手 ) 事 件 の 謎 そのものは、『EP4』までの 情 報 を 総 合 すると 解 くことが 可 能 なんですね。( 真 相 5)可 能 であると 断 言 します。ただしそれは 物 語 中 でも 言 っているように、 私 が 可 能 だと 思 っていても、 受 け 手 の 皆 さんが 可 能 かどうかは 別 の 話 なんです。 例 えば 作 品 の 中 には「 誰 が 犯 人 で」「 何 が 理 由 で」「どうやって」というのを 隠 したつもりでいる。ただ、「 何 が 理 由 で」という 動 機 は 人 の 心 の 問 題 じゃないですか。( 中 略 ) 中 には 理 解 できない人 もいるだろうと 思 います。※また、ウィルも 以 下 のように 語 っています。「1986 年 のベアトリーチェを 殺 せるのは、それを 生 み 出 したヤツだけだ」(ウィル)(EP7)「ヒントは 山 ほどあったわ。 思 えば、ベアトリーチェのゲームだった 頃 からね」(ベルン)「そうだな。……ベアトリーチェと 戦 人 の 第 4のゲームで、その 因 縁 ははっきりとした。そしてその 時 点 で、ベアトリーチェが 誰 であるか、そしてその 心 が、わかった」(ウィル)「 心 とは?」( 理 御 )「…… 動 機 だ。……ベアトリーチェが、1986 年 10 月 5 日 に、 自 らの 運 命 さえ 賭 す、ゲームのような 事 件 を 起 こさねばならなかった、 動 機 だ」(ウィル)「さすがだわ。 第 4のゲームの 時 点 で、フーダニットとホワイダニットが 推 理 できてたなんて。……じゃあハウダニットは?」(ベルン)「 犯 人 が 誰 であるかわかれば、それを 推 理 することは 不 可 能 じゃない。…… 第 3のゲームの 連 鎖 密 室 は、なかなか 器 用 にやったもんだと 拍 手 さえしたくならァ」(ウィル)「 第 4のゲームラストの、 私 はだぁれ?、はわかった……?」(ベルン)「10 月 5 日 24 時 に 必 ず、 場 所 を 問 わずに、 殺 せる“ 犯 人 ”。その 時 点 である 種 の 仮 定 は 可 能 だ。……それこそ、 黄 金 郷 のもう 一 つのお 宝 、ってわけだ」(ウィル)「……へぇ。 第 4のゲームまでに、…… 即 ちあなたは、ベアトのゲームだけで、 全 ての 答 えに 至 れたと?」(ベルン)「 可 能 だ。……その 後 の、ラムダデルタのゲームと 戦 人 のゲームは、それをさらに 補 足 するヒントの 塊 だ。……この、お 前 のゲームさえもな」(ウィル)※ 以 上 の 情 報 から、EP1~4で 謎 が 解 けるのは 間 違 いないようです。まず 最 初 に 確 定 できるのは、フーダニットとホワイダニット。これは 以 下 の2つの 部 分 です。「…6 年 前 のことですと、あまり 覚 えてはおられないのですか? 私 は、つい 昨 日 のことのように 鮮 明 に 覚 えておりますが…」( 紗 音 )(EP3)「 紗 音 は 記 憶 力 がいいからね。6 年 前 に、 戦 人 くんがどんなことをしていたとか、 言 っていたとか、よく 覚 えてるんじゃないかい?」( 譲 治 )「そういやそうだよな。 紗 音 って 妙 なところで 記 憶 力 がいいんだよな。 紗 音 。ちなみに、6 年 前 の 戦 人 はどんなだったんだ? 何 かエピソードを 覚 えてないのかよ?」( 朱志 香 )「そうですね。…… 確 か、お 帰 りの 際 はこう 仰 っていました。“また 来 るぜ、シーユーアゲイン。きっと 白 馬 に 跨 って 迎 えに 来 るぜ。”」( 紗 音 )「《 赤 : 右 代 宮 戦 人 には、 罪 がある》」(ベアト)(EP4)「……どんな 罪 だってんだ。どうせ、 叩 いたとか 誤 魔 化 したとか、 下 らねぇ 罪 だろ」( 戦 人 )「《 赤 :そなたの 罪 で、 人 が 死 ぬ。》」(ベアト)「う、 嘘 吐 け…! 俺 は 誰 も 殺 してなんかいない…!! じゃあ 言 えよ! 俺 が 誰 を 殺 した?! いつ? 誰 を? どうやって?!」( 戦 人 )「《 赤 :そなたの 罪 により、この 島 の 人 間 が、 大 勢 死 ぬ。 誰 も 逃 さぬ、 全 て 死 ぬ。》」(ベアト)「は、………はぁッ?!?! な、 何 をワケわかんねぇこと 言 ってんだッ?! 俺 がみんなを 殺 したっていうのかよ?! 俺 は 殺 人 鬼 かッ?!」( 戦 人 )「そなたが 直 接 手 を 下 すわけではない。………しかし、そなたが 罪 を 犯 したからこそ、6 年 にもわたる 歯 車 の 狂 いにて、 歪 みが 生 じ、…… 今 夜 、これだけの 人 命 が 失 われるのだ。そなたは、この 惨 劇 の 原 因 の 一 つである」(ベアト)※ 普 通 に 考 えて、ただ 会 いにくるだけで“ 白 馬 に 跨 って 迎 えに”は 来 ません。 恋 愛 絡 みの 約 束 であったことが 伺 えます。6 年 間 も 来 なかったことによって、その 約 束 を 反 故にしたことが 戦 人 の 罪 だと 推 測 できるのです。ハウダニットは、 碑 文 の 謎 を 解 いたことによる 黄 金 の 獲 得 、 爆 弾 の 存 在 、 一 人 三 役 ( 紗 音 、 嘉 音 、ベアト)、これらが 伏 線 として 登 場 していれば 良 いでしょう。まず、 黄 金 の 獲 得 は 以 下 の3つの 部 分 。「… 片 翼 の 鷲 の 紋 章 が 刻 印 されてる…。… 前 に 母 さんが 話 してたのを 聞 いた。……これはお 祖 父 さまの 黄 金 伝 説 の 金 塊 だよ…!!」( 譲 治 )(EP2)ひとつ10kgも 重 さがある 黄 金 のインゴットが、… 何 と 三 つも、テーブルの 真 ん 中 に 積 み 上 げられていた!「…え、えぇ。 旦 那 様 が 仰 るには、… 黄 金 伝 説 を 裏 付 ける 黄 金 は、1つしか 見 付 かっていないのだそうです。その1つをですね、 旦 那 様 はお 持 ちになられていたのです。そして、こうも 仰 っておりました。お 館 様 の 黄 金 伝 説 を 裏 付 ける 黄 金 はこれ1つしかないとも…」( 熊 沢 )(EP2)しかし、 気 になる 点 もある。“ 碑 文 を 解 いた 者 ”が、 右 代 宮 家 に 連 なる 人 間 に 限 定 されていない 点 だ。 原 文 通 りなら、 謎 を 解 いた 人 間 がどこの 馬 の 骨 であっても、 右 代 宮 家の 家 督 を 継 承 できることになってしまう。いや、それどころか、 右 代 宮 家 の 全 ての 財 産 を 何 者 かに 奪 われてしまう 可 能 性 だってあるのだ。(EP3)迷 わず、 灯 りのスイッチを 入 れると、まるで 炭 鉱 か 何 かを 思 わせるような 無 骨 な 灯 りが 点 々とつき、 地 下 へ 伸 びる 階 段 をぼんやりと 浮 かび 上 がらせる…。 灯 りがついたはずなのに、むしろその 薄 暗 さを 引 き 立 てているようで 不 気 味 だった。 灯 りのスイッチ 以 外 にも、 開 閉 と 書 かれたスイッチもあった。…これで、 多 分 、 開 け 閉 めができるのだろうが、もし 万 が 一 、 開 けるの 方 が 壊 れていたら、 私 ( 絵 羽 )はこの 不 気 味 な 地 下 に、 永 遠 に 閉 じ 込 められてしまうかもしれない…。だから 私 は、とりあえず、 開 閉 のスイッチには 触 れず、…… 銃 を 構 え 直 して、ゆっくりと 階 段 を 下 りていく。(EP3)※まず1つ 目 で、 犯 人 が 黄 金 を 入 手 していることがわかります。2つ 目 で、 右 代 宮 家 の 親 族 でなくても 黄 金 を 継 承 できることがわかります。3つ 目 で、 既 に 誰 かが 地 下 貴 賓室 に 出 入 りしていたことがわかります。 爆 弾 の 存 在 は 多 くの 伏 線 があるため、 以 下 に 列 挙 します。「…………あれ…。…… 確 かさ、この 辺 に 小 さい 岩 の 上 に 鳥 居 みたいなのがなかったっけ。…そうだ、 確 かにあったぜ。 島 に 近 付 いてくると 最 初 に 迎 えてくれる 目 印 みたいなもんだったからよく 覚 えてるぜ」( 戦 人 )(EP1)「へー、 戦 人 すごいじゃねぇか。6 年 ぶりなのに、よく 覚 えてるもんだぜ」( 朱 志 香 )「あったね…! 僕 も 思 いだしたよ。 鎮 守 の 社 と 鳥 居 みたいなものが、 岩 の 上 にぽつんと 建 ててあったよ。……そう 言 えばないね。 去 年 は 確 かにあったと 思 う」( 譲 治 )「ない。ない。うーうーうー!」( 真 里 亞 )「 大 方 、 波 か 何 かでさらわれちまったんだろー? 小 さい 岩 だったしな、だいぶ 風 化 で 脆 くなってたんだろさ」( 戦 人 )「 私 もそうだと 思 ってるんだけどよ。なくなっちゃったのはこの 夏 のことなんだよ。 何 でもよぅ、」( 朱 志 香 )※ 波 の 穏 やかな 夏 に、 鎮 守 の 社 と 鳥 居 が 建 てられるほどの 岩 がなくなってしまうのは 不 自 然 です。その 後 、やって 来 た 警 察 により 現 場 検 証 が 行 われました。 最 後 まで 生 き 残 ったと 思 われる 子 どもたちの 遺 体 はついに 発 見 されませんでしたが、 発 見 された 身 体 の 一 部 や、 想像 を 絶 する 凄 惨 な 現 場 状 況 に、 警 察 は 子 どもたちも 含 めた18 人 全 員 の 存 命 は 絶 望 的 だと 思 わざるを 得 ませんでした…。それから 数 年 後 。 近 隣 の 島 の 埠 頭 にて 波 間 を 漂 う 不思 議 なワインボトルが、 漁 師 によって 引 き 上 げられました。その 中 にはびっしりと 細 かい 文 字 で 書 かれ、 細 く 丸 めたノート 片 が 詰 め 込 まれておりました。それこそが、…………この、 物 語 。 謎 に 包 まれた1986 年 10 月 4 日 からの 謎 と 怪 異 に 満 ちた 二 日 間 の 正 体 を、 人 々はこのノート 片 によって 初 めて 知 ることになります。そしてワインボトルのノート 片 は、この 謎 に 満 ちた 事 件 を 語 りつつも、その 真 相 については 語 っていません。 書 き 記 した 人 物 の 自 著 によれば、… 彼 女 の 名 前 は 右 代 宮 真 里 亞 。なお、 警 察 による 懸 命 の 捜 査 の 結 果 、 真 里 亞 については、 身 体 の 一 部 、… 顎 部 の 一 部 が 発 見 されています。 歯 科 の 治 療 記 録 により 誰 の 遺 体 の 一 部 であるか 特 定 できた 貴 重 な 例 でした。…その 凄 惨 な 状 況 に、 誰 の 身 体 の 一 部 か 特 定 できない 部 位 も 多 数 あったのですから、その 顎 は 非 常 に 幸 運 な 一 部 だったと 言 えるでしょう。(EP1)今 度 は、 譲 治 の 全 身 に 赤 い 模 様 が 広 がっていきます…。それはまるで、 紅 茶 にたっぷりと 落 としたミルクが 描 くかのような 美 しき 雲 模 様 。それらがじわりと、そして 全 体 に、広 がっていきます。やがて、……その 赤 い 模 様 はさらに 隣 の 朱 志 香 にも……。もう 譲 治 は 人 の 形 をしてはいません。…まるで、お 料 理 でおいしいお 肉 を 削 いだ 後 に 残 した 残骸 の 山 のよう。…せいぜい、 人 の 頃 の 痕 跡 を 残 すのは、 下 顎 の 部 分 とあばら 骨 の 形 状 くらいでしょうか。そして、 赤 い 模 様 がどんどん 色 濃 くなる 朱 志 香 も、 同 じ 末 路 を 辿 ることは 明 白 でした。 哀 れ、 朱 志 香 も 同 じ 末 路 。… 譲 治 と 同 じ、お 肉 屋 さんの 残 骸 のよう。 真 里 亞 の 全 身 にも 赤 い 模 様 がじわりじわりと 蝕 んでいきます…。(EP1)「 真 里 亞 。ママがもしも 倒 れたら。あなたは 走 りなさい。 海 岸 へ 行 くの。そして 泳 いで 泳 いで 泳 ぎなさい! この 島 のどこにも、 生 き 延 びることのできる 場 所 はないッ!!」51


( 楼 座 )(EP2)「………で、 一 足 早 くその 隠 し 館 で 待 っていた 絵 羽 伯 母 さんは、そのお 陰 で 事 故 の 難 を 逃 れた、と? 絵 羽 伯 母 さんが、 全 ての 財 産 を 奪 うために、 事 故 を 装 ってみんなを 殺し、 自 分 だけ 難 を 逃 れただけかもしれない」( 縁 寿 )(EP4)右 代 宮 絵 羽 は、12 年 前 のあの 日 。……なぜかひとり、 屋 敷 から2kmも 離 れた 隠 し 屋 敷 にいて、 難 を 逃 れた。(EP4)※これは 逆 に 言 えば 屋 敷 から2kmも 離 れなければ 助 からなかったということです。「 警 察 が、あれだけ 散 々 調 べて、 事 件 性 を 見 出 すことが 出 来 なかった。…… 警 察 がそう 断 じた。それで 六 軒 島 疑 惑 は 決 着 じゃないのかなぁ」( 小 此 木 )(EP4)※どのEPも 毎 回 10 人 以 上 の 他 殺 死 体 が 発 生 しているわけで、 警 察 がそれを 発 見 できなかったということは、よほどのことがあったと 考 えられます。その 先 の 急 斜 面 を 越 えると、………… 急 に 視 界 が 開 けて、 鮮 烈 な 海 の 風 が、ざあっと 私 ( 縁 寿 )の 髪 を 散 らした……。そこはさながら、ちょっとした 丘 の 上 だった。…… 眼 下には、 島 の 広 大 な 眺 望 が。 私 には 荒 れ 果 てた 森 と 岩 場 が 広 がっているようにしか 見 えない。……でも、 何 となく、あの 辺 りが 屋 敷 だろうと 察 しが 付 いた。その 丘 からの 急 な下 り 坂 は、12 年 間 の 風 雨 で 土 砂 が 崩 れてしまったのかもしれない。(EP4)※ 屋 敷 が 完 全 になくなってしまうほどの 何 かが 起 こったことが、この 場 面 でわかります。すると、………… 戦 人 の 目 の 前 に、カーテンのように 透 けた、 希 薄 な 姿 のベアトがもうひとり、 現 れる。…… 磔 にされているベアトはもう 気 を 失 っている。しかし、 新 しく現 れた 希 薄 なベアトは、 無 表 情 な 瞳 で、…… 静 かに 俺 を 見 て、…………そして、 言 った。(EP4)「………《 赤 : 右 代 宮 戦 人 。 今 から 私 が、あなたを 殺 します。》………《 赤 :そしてたった 今 。この 島 にはあなた 以 外 誰 もいません。この 島 で 生 きているのは、あなただけです。 島 の 外 の 存 在 は 一 切 干 渉 できません。》………《 赤 :この 島 にあなたはたった 一 人 。そしてもちろん、 私 はあなたではない。なのに 私 は 今 、ここにいて、これからあなたを 殺 します。》………… 私 は、だぁれ…?」(ベアト2)※ 希 薄 で 無 表 情 なもう 一 人 のベアト。 時 限 爆 弾 という 物 体 であるためと 考 えられます。また、 誰 もいないのに 戦 人 を 殺 せるということで、 人 ではないことがわかります。 一人 三 役 は 戦 人 の 前 に 紗 音 と 嘉 音 が 同 時 に 現 れることはないこと、 嘉 音 の 死 体 が 消 えること、また 以 下 に 列 挙 する 内 容 でもわかります。紗 音 がベアトリーチェについて 知 っていることはそう 多 くない。まず、 彼 女 は 幽 霊 のような 存 在 で 神 出 鬼 没 。そして 誰 にでも 知 覚 できるわけではないらしい。 何 でも、 人 毎に 波 長 のようなものがあり、 魔 女 を 知 覚 できるか 否 かについては 激 しい 個 人 差 があるのだという。こうして 言 葉 を 交 わせるほどに 交 流 できるのは 紗 音 と 嘉 音 だけ。(EP2)※ 何 故 、 紗 音 と 嘉 音 だけが 言 葉 を 交 わせるのかというと、 同 じ 肉 体 に 宿 る 人 格 だからです。魔 女 はにやりと 笑 うと、 源 次 を 置 いてさっさと 歩 き 出 す。……その 足 取 りは、 屋 敷 の 中 を 充 分 に 知 った 家 人 のようだった。 源 次 はその 後 を 仕 えるように 追 う。ちょうどその時 、 客 間 から 霧 江 が 出 てきた。… 化 粧 直 しにでも 出 たのだろう。そして、 源 次 を 従 えるようにして 歩 く 魔 女 の 姿 を 見 て、 表 情 を 崩 さぬ 程 度 に 驚 いた。(EP2)「………… 初 めまして」( 霧 江 )「 留 弗 夫 の 後 妻 だったか」(ベアト)※ベアトは、 屋 敷 の 構 造 を 熟 知 しており、 初 対 面 であるはずの 霧 江 の 名 前 を 知 っていました。 紗 音 だからです。謎 の 女 は 霧 江 に 言 った。 名 乗 らず、うすうす 想 像 がついているくせにと 嘲 笑 った。……そこから 連 想 する 人 物 。…そして、 彼 女 と 瓜 二 つの、 肖 像 画 の 魔 女 …。(EP2)※ 遠 目 では 肖 像 画 の 魔 女 と 見 分 けが 付 かなかったわけで、 六 軒 島 でそのような 変 装 が 出 来 そうな 人 物 は、 紗 音 か 嘉 音 か 朱 志 香 しかいません。しかし 朱 志 香 はこの 時 、 戦 人 や譲 治 と 共 にゲストハウスにおり、 抜 け 出 してくるのは 難 しいでしょう。「 真 里 亞 は、 以 前 にベアトリーチェと 会 ったことがあるの…?」( 楼 座 )(EP2)「うー。 毎 年 会 ってる」( 真 里 亞 )「 毎 年 …? この、 六 軒 島 のお 屋 敷 で?」( 楼 座 )「うー」( 真 里 亞 )「いつから 会 ってるの? 何 年 前 から!」( 楼 座 )「…うー。……わかんない」( 真 里 亞 )「わからない?! どうして! 去 年 ? 一 昨 年 ?!」( 楼 座 )「……もっと 前 から。……うー」( 真 里 亞 )…この 島 には 右 代 宮 家 の 屋 敷 があるだけだ。だから、この 島 に 自 分 の 知 る 以 外 の 人 間 がいるわけないのだ。なのに 真 里 亞 は、 何 と 毎 年 、 親 族 会 議 の 度 にあの 怪 しげな 女 と 出会 っていたという……。「うー! ベアトリーチェにね、お 手 本 書 いてもらうの! ほらほら、 見 て! 見 て!」( 真 里 亞 )真 里 亞 は 嬉 々としながら 手 提 げを 漁 る。……そして、 一 冊 の 自 由 帳 を 取 り 出 し、そのページを 開 き 始 めた。 真 里 亞 が 開 いたそれらのページには、これまた 不 気 味 な 魔 法 陣 が書 かれていた。……しかもそれは 一 目 見 て、 真 里 亞 が 書 いたものではないとわかった。 筆 圧 や 線 の 太 さ、 図 形 の 綺 麗 さ。……これだけから 書 いた 人 間 の 素 性 を 推 し 量 ることはできないが、 確 実 に 真 里 亞 より 年 齢 の 高 い 人 物 が 書 いたことは 理 解 できる。「うー。 真 里 亞 はベアトリーチェの 弟 子 だから、お 師 匠 の 言 うことはちゃんと 聞 くの」( 真 里 亞 )※ベアトは 真 里 亞 に 何 度 も 会 っており、さらに 文 字 まで 残 しています。つまりベアトは 実 在 していることがわかります。また、 人 格 の 話 は 以 下 で 取 り 上 げられています。「いやその、………そ、そうだ! 二 重 人 格 とかはどうだ…! 元 々お 前 が 絵 羽 伯 母 さんのもうひとつの 人 格 であったように、…… 例 えば、 朱 志 香 にもうひとつの、 魔 女 的人 格 があって、それが“ 朱 志 香 以 外 ”を 名 乗 って 南 條 先 生 を 殺 したとか…!!」( 戦 人 )(EP3)「 愚 かね。すでに 赤 で 語 っているわ。《 赤 : 朱 志 香 の 目 は 完 全 に 塞 がれていて、 彼 女 に 殺 人 は 不 可 能 》! 彼 女 にどんな 人 格 が 憑 依 しようとも、 彼 女 の 肉 体 では 殺 人 を 行 なえないの!」(エヴァ)※ 以 上 のことからEP1~4で 謎 を 解 くための 伏 線 はきちんと 用 意 されていることがわかるのです。■EP2で 真 里 亞 のジャックオーランタンのマシュマロ 菓 子 をどうやってベアトは 元 に 戻 したの?真 里 亞 が 手 に 持 っているあのお 菓 子 を 楼 座 は 突 然 奪 う。するとそれを 地 面 に 叩 き 付 け、 何 度 も 何 度 も 踏 みつけた。(EP2)魔 女 は、 真 里 亞 が 握 り 締 めているお 菓 子 に 気 付 く。…それは 楼 座 が 踏 みつけて 惨 めな 姿 になった、 真 里 亞 のお 菓 子 。(EP2)「……うー。 踏 んづけて 潰 れちゃった。……ベアトは 元 に 戻 せる…?」( 真 里 亞 )「 容 易 いことよ。 貸 すが 良 い」(ベアト)… 即 興 の 民 謡 のような、 歌 うように 語 る 不 思 議 な 言 葉 と 共 に、 魔 女 はお 菓 子 を 宙 に 放 る。 宙 に 放 り 上 げたお 菓 子 が、…… 金 色 に 弾 けて…、いや 違 う。それは 黄 金 の 蝶 。 何 匹もの 黄 金 の 蝶 に 散 り、…それは 宙 に 手 をかざす 魔 女 の 手 に 集 まっていく。するとそれは、……… 信 じられないことに、……… 買 った 時 そのままの 綺 麗 な 元 の 姿 に 戻 っていた…。※“■ 魔 法 とはどのようなもの?”で 抜 粋 してあるのですが、ベアトが 魔 法 で 元 通 りに 出 来 たということは、 元 通 りにする 方 法 を 持 っていたということになります。その 理由 は 以 下 の 通 りです。真 里 亞 にとっては、 今 朝 、 楼 座 に 買 ってもらったジャックオーランタンのマシュマロ 菓 子 が 何 よりの 宝 物 なのだろう。… 何 本 も 買 ってもらったらしく、 会 う 人 会 う 人 にトリックオアトリートを 求 めては、 逆 にお 菓 子 を 与 えているのだった。(EP2)「…そうだ…。……さっき 僕 がもらったのと 交 換 してあげるよ」( 嘉 音 )(EP2)嘉 音 は、さっき 真 里 亞 にもらった 同 じお 菓 子 がポケットにあったことを 思 い 出 す。※ 嘉 音 が 同 じ 菓 子 を 貰 っていました。 潰 れたお 菓 子 をどこかに 始 末 して、それと 取 り 替 えたのです。52


■EP2で 楼 座 は 何 故 助 からなかったの?※EP2 において 楼 座 はベアトの 共 犯 者 であり、 爆 弾 の 存 在 も 教 えられていたようです。そしてベアトが 死 んだ 後 も 生 き 残 っていたのに、 結 局 、 爆 弾 の 爆 発 で 死 んだと 思 われます。 何 故 こんなことになってしまったのでしょう。まず 以 下 の 描 写 に 注 目 してください。「うおぉええええぇええええぇえええええッ!! ぇええぇええああああああぁああああぁ!!」( 楼 座 )(EP2)幼 少 期 のトラウマが 蘇 る。 楼 座 の 胃 の 中 で 怪 物 が 暴 れ 狂 い、 熱 い 酸 を 吹 き 上 げるのを 感 じた。…そして 堪 らず、 床 にそれを 吐 き 出 す。※ 上 記 は 礼 拝 堂 で 楼 座 が 親 族 6 人 の 遺 体 を 発 見 した 場 面 です。とても 演 技 とは 思 えません。 楼 座 は 親 族 6 人 が 殺 されていることを、この 時 まで 知 らなかったのです。あるいは 殺 されたことは 知 っていても、こんなエグい 加 工 が 成 されていることは 知 らなかったのです。つまり 共 犯 者 ではあっても、あくまで 協 力 者 であり、 計 画 の 全 貌 を 理 解 しているわけではないのです。その 為 、 以 下 のような 行 動 をとるわけです。………しかし、 楼 座 叔 母 さんもまた、 俺 と 同 様 に 遺 体 が 気 になるのは 少 しだけ 意 外 だった。 俺 はこの 期 に 及 んでも、 何 かの 手 掛 かりがあれば、 犯 人 や 真 相 をこの 手 で 暴 いてやりたいと 思 っている。しかし 楼 座 叔 母 さんは 違 ったはずだ。…… 楼 座 叔 母 さんは 確 か、 犯 人 探 しよりも 身 の 安 全 が 最 優 先 の 方 針 だったはず。その 楼 座 叔 母 さんが、わざわざ 篭 城 の 客 間 を 出 てまで 遺 体 を 確 認 したい 理 由 が 少 し 見 えなかった。(EP2)紗 音 ちゃんの 遺 体 は、 化 粧 台 の 前 にうつ 伏 せに、 血 の 海 に 倒 れていた。 血 の 飛 沫 が 飛 び 散 り、 醜 く 割 れた 鏡 で、 彼 女 はこの 世 で 最 後 の 自 分 の 顔 を 見 たのだろうか。…うつ 伏せのため、 彼 女 の 顔 は 見 えなかったが、 見 ずとも 想 像 はついた。うつ 伏 せの 血 の 海 に、 傍 らに 転 がる 悪 魔 の 杭 …。…… 残 るのは 第 四 の 晩 。 頭 をえぐりて 殺 せ…。 俺 の 心 は、すっかり 疲 れきって 死 んでいたのかもしれない…。こんなことしてはいけないとわかっているのに、… 彼 女 の 顔 をあげ、それを 確 認 する。……そして、 自 分 の 想 像 が 完 全 に的 中 していることを、 確 認 した。(EP2)「こら、 戦 人 くんッ!! 警 察 が 来 るまでそっとしておかないと 駄 目 よ!! 勝 手 に 触 って、どういうつもり?! せっかくの 現 場 証 拠 がおかしくなっちゃったらどうするのよッ!!」( 楼 座 )楼 座 叔 母 さんに 激 しく 怒 られ、 後 ろ 襟 まで 引 っ 張 られる。 楼 座 叔 母 さんは3 人 の 検 死 が 終 わると、この 部 屋 を 再 び 封 印 すると 宣 言 し、 一 方 的 に 俺 たちを 追 い 出 し、 俺 に 預 けたマスターキーを 奪 い 返 して、 再 び 施 錠 した。 譲 治 の 兄 貴 が 夏 妃 伯 母 さんの 部 屋 の、 本 来 の 鍵 を 持 っていたらしい。それも 回 収 していた。※ 楼 座 は 犯 人 が 紗 音 であることは 知 っています。その 紗 音 の 死 が 信 じられなかったため、 確 認 する 必 要 があったのです。 戦 人 を 慌 てて 紗 音 から 引 き 離 したのも、 本 当 は 紗 音が 生 きていると 思 ったためです。しかし、 実 際 に 死 んでいることを 自 分 の 目 で 確 かめてしまいます。そのため、 以 下 の2つの 場 面 が 発 生 するわけです。「どこなの、ベアトリーチェッ!! 姿 を 見 せなさいッ!! ベアトリーチェぇえぇ!!」( 楼 座 )(EP2)楼 座 はとうとう 礼 拝 堂 までやって 来 る。「その 笑 いを 止 めなさいッ!! ……あぁッ、 私 が 笑 いたいくらいよッ!! そうね、アレは 間 違 いなく 魔 女 だったわ、 間 違 いなく 魔 女 だったッ!! 私 はわかってなかった、 魔 女 を 名 乗 る 人 間 だと 信 じてたッ、 違 うッ!!!…あれは、 本 当 に 魔 女 だった!! 私 はあんなのに 誤 魔 化 されないわよッ!! いるんでしょう?! 出 てきなさい、 姿を 現 しなさいッ!! ベアトリーチェえええぇえええええええぇえええッ!!!」( 楼 座 )(EP2)※ 爆 弾 の 存 在 を 教 えられ、 協 力 すれば 命 は 助 けると 言 われていたのに、その 本 人 が 死 んでいるわけです。 何 かのトリックがあると 思 って、 足 掻 いてみたのですが、どうしようもなく、 結 局 、 爆 弾 の 爆 発 で 死 んでしまったわけです。 以 下 の 場 面 と 同 じようなやりとりがEP2の 最 初 の 場 面 であったと 考 えられます。「その 通 りだ。 爆 発 から 逃 れる 方 法 は 二 つしかない。 一 つは、 妾 しか 知 らない 方 法 によって、 時 限 装 置 を 解 除 すること。もう 一 つは、この 格 子 の 向 こうの 地 下 通 路 より 島 の反 対 側 へ 行 き、 爆 発 を 逃 れることのみだ。…… 見 ての 通 り、この 格 子 の 施 錠 も 我 が 手 中 にある。いずれの 方 法 で 生 き 残 るにせよ、 妾 を 拒 むことなど 出 来 んのだ」(ベアト)( 我告 )■EP2の 終 盤 で 戦 人 は 何 故 、 金 蔵 を 目 撃 したの?※まず、EP5にて 以 下 の 内 容 があります。「ノックス 第 8 条 、 提 示 されない 手 掛 かりでの 解 決 を 禁 ズ! これまでのあなたは 探 偵 デシタ! そのあなたが 今 回 は 探 偵 でなく、 私 見 を 交 える 観 測 者 であったことは 示 されていたのデスカ!! それがない 限 り、あなたには 主 張 を 偽 る 権 利 はありマセンッ!!」(ドラ)(EP5)※EP2での 戦 人 は 探 偵 であったこと。また、 探 偵 は 私 見 を 交 える 観 測 者 であってはならないことがわかります。このことは 以 下 のように 別 の 言 い 方 でも 表 現 されています。無 意 識 に“ 見 間 違 えること”は、ゲーム 上 許 されていない。しかし、 意 図 的 に、 見 ていないモノを“ 見 たと 騙 ること”は 出 来 る…!! そしてそれは、 公 正 な 観 測 を 義 務 付けられた“ 探 偵 ”には 許 されない 行 為 ……。(EP5)※そして 金 蔵 については 以 下 のように 説 明 されています。「 俺 は 今 回 のゲームで! 碑 文 の 謎 の 仕 掛 けを 解 いた 時 . 祖 父 さまを 目 撃 している。……すでに 赤 で 示 されている 通 り、 祖 父 さまは 存 在 しない。その 目 撃 は 不 可 能 だ! よって 俺 の 視 点 に 客 観 性 がないことはすでに 示 されているッ!!」( 戦 人 )(EP5)「それは 風 雨 になびくシートか 何 かを、あなたが 誤 認 しただけの 可 能 性 がありマス。ノックス 第 9 条 を 示 す 伏 線 とはなり 得 まセン…!! 誤 認 は 全 ての 観 測 者 に 許 された 権利 デス!!」(ドラ)「 第 4のゲームにてベアトが 示 した 赤 き 真 実 !! 全 ての 人 物 は 右 代 宮 金 蔵 を 見 間 違 わないッ! つまり、この 島 では、 祖 父 さまのふりはもちろん、 祖 父 さまに 見 間 違 うような 一 切 の 現 象 は、“ 絶 対 に 通 用 しないのだ” 風 雨 になびくシートを 見 間 違 え、それを 何 であったと 誤 認 して 語 るのも、ノックス 第 9 条 の 権 利 だ。……しかしッ! 祖 父さまだと 誤 認 することだけは、 赤 き 真 実 において、 本 ゲームでは 許 されていないッ!!」( 戦 人 )「…… 金 蔵 を 見 たと 主 張 された 時 点 で、 誤 認 識 ではなく、 意 図 的 。…… 即 ち、 観 測 の 客 観 性 が 否 定 されていることの 証 、…というわけデスカ……」(ドラ)※つまり 探 偵 である 戦 人 が 金 蔵 を 目 撃 することはありえないのです。それなのにEP2では 目 撃 しているのです。これには2つの 可 能 性 がありえます。まず1つ、 以 下 のように 戦 人 が 泥 酔 していて 正 常 な 判 断 力 を 欠 いていたためです。戦 人 は 酒 棚 を 勝 手 に 開 け、 存 分 に 飲 酒 を 満 喫 していた。 今 や、 彼 の 飲 酒 を 咎 める 人 間 などどこにもいないのだ。 両 足 を、 贅 沢 なテーブルクロスの 上 に 大 胆 に 下 ろし、 気 が 遠くなるほどの 値 打 ちがあるだろう 銘 酒 を、 瓶 ごと 傾 けて 味 わうのだった…。その 時 、……ノックが 鳴 った。 戦 人 はようやく 自 分 のお 迎 えが 来 たことを 悟 る…。「お~ぅ、 鍵 なんか 掛 かってねぇぜ。 誰 でも 入 ってきてくれ。そして 自 己 紹 介 を 頼 むぜ。 人 間 なら 名 前 を 名 乗 ってくれ。ベアトリーチェだってんならバストのサイズを 教 えてくれ。 俺 ァこう 見 えても、ちょいと 知 られたおっぱいソムリエなんだじぇえ? …ひっく」( 戦 人 )※ 結 構 酔 っ 払 っているようです。もう1つはこの 戦 人 が 駒 だったため。このシーンの1つ 前 の 戦 人 の 状 況 は 以 下 の 通 りです。完 全 に 頭 に 血 の 上 った 俺 と 楼 座 叔 母 さんの 間 に 真 里 亞 が 割 って 入 る。 真 里 亞 の 泣 き 声 に、 俺 ははっと 我 に 返 る。…その 途 端 、 情 けなくなった。 涙 が 溢 れ 出 した。「……そうなんだよ…。…… 全 部 、……… 魔 女 のせいだったんじゃないかよ……!! 鍵 がどうこうとか、トリックだのアリバイだの……、 全 部 全 部 馬 鹿 らしかったんだ!!魔 女 の 仕 業 なのに、 俺 たちは 同 じ 人 間 同 士 を 信 じあうこともできなくて…!! なぁ 楼 座 叔 母 さん、ニンゲンの 犯 人 なんて 最 初 からいなかったんだ、 全 部 魔 女 の 仕 業 だったんだ。だから、 楼 座 叔 母 さんが 犯 人 のわけがないし、 俺 や 真 里 亞 だって、そして 源 次 さんだって 他 のみんなだって、 犯 人 のわけがないんだああぁッ!! どうしてこんなことにッ!! 俺 はどうして、…… 大 好 きだった 楼 座 叔 母 さんとこんなことの 怒 鳴 りあいをしてるんだよ?! やさしくって、 大 好 きだった 叔 母 さんと、……どうしてこんな 罵りあいをしてるんだよ?! 何 で 何 でみんなで 疑 いあわなくちゃならねぇんだよッ?!?! 叔 母 さんを 疑 ってなんかいないんだ、 誰 も 疑 ってなんかないんだ、 全 部 魔 女 の 仕 業 だったんだ、ベアトリーチェの 仕 業 だったんだ、 全 部 全 部 ッベアトリーチェが 魔 法 で 行 なった 事 件 だったんだッ!! ベアトリーチェぇええぇえぇ、 頼 むからここに 現 れてくれよ、そして 自 分 が 全 てやったと 俺 たちに 告 白 してくれよッッ、もうごめんだ、こんな 疑 り 合 いはごめんなんだッ!! だから 俺 たちを 許 してくれ、 解 放 してくれッ、 互 いの 死 を 見 届 けあうまで 疑 りあわなきゃならない 地 獄 から 解 放 してくれ!! 俺 にやさしい 親 戚 たちをいとこたちを、 返 してくれよ!! もう 嫌 だ 嫌 だ 全 部 嫌 だッ!! お 前は 確 かに 実 在 する、お 前 の 勝 ちだ!! 姿 を 見 せてくれよ、おおおおおぉおおぉ、ベアトリーチェぇええええええええええええぇええええぇええぇッ! ベアトリぃいーチェぇええええぇえええええええええええええええええええぇえええええええぇぇえええッ!!!」( 戦 人 )※そしてEP3でも 以 下 のような 内 容 があります俺 はぼんやりと 薔 薇 庭 園 を 歩 く。…… 雨 は 降 っていて 風 は 苛 むのだが、 俺 の 体 が 濡 れるわけじゃない。…でも、 傘 も 指 さず 風 雨 の 真 っ 只 中 にいるという、 荒 涼 感 だけはあっ53


た。(EP3)「……………… 俺 はひょっとすると、…あいつのゲームにとっくの 昔 に 負 けているのかもしれねぇな」( 戦 人 )… 実 は 前 回 のゲームで、もうはっきり 決 着 はついてしまっていたのではないだろうか。 何 しろ 俺 は、 一 度 は 屈 服 したのだから。「 前 回 。 黄 金 郷 の 扉 がようやく 開 いたが、お 前 はサインを 拒 んだ。…… 記 憶 にはないだろうがな。お 前 がサインを 拒 んだ 為 、この 世 界 を 再 び 闇 に 閉 ざしてしまったのだ」( 金蔵 )(EP3)※ 戦 人 はベアトに 屈 服 しているのです。また、この 場 面 では 戦 人 の 一 人 称 だったのに、 次 の 場 面 では 三 人 称 に 変 わっています。あとは 以 下 の2つの 内 容 です。その 魔 女 とは、…… 初 対 面 のはずだった。しかし、… 俺 はこの 魔 女 を 知 っている。 初 対 面 なのに、… 肖 像 画 の 中 で、…… 知 っている……!(EP2)「 源 次 。 戦 人 のために 酒 を 振 舞 え。この 男 により 相 応 しき 酒 は 何 か…?」(ベアト)「…… 若 き 日 よりお 館 様 が 愛 されている、いつものあのお 酒 を」( 源 次 )「それが 良 いぞ、 振 舞 ってやれ。……よくぞ 来 たな 右 代 宮 戦 人 。まずは 座 れ。………そなたは 妾 の 名 を 何 度 も 呼 んだな? それに 免 じ、 妾 との 面 会 を 許 した。…そしてお 前は 妾 に 何 を 聞 く? 何 を 尋 ねるのか? …… 黄 金 郷 の 扉 はもうじき 開 かれる。 魔 女 たちを 迎 え 入 れての 妾 の 復 活 を 祝 う 宴 はもうじきだぞ。…それまでの 間 、お 前 の 問 いにいくらでも 答 えてやろう」(ベアト)「き、…… 聞 きてぇことは 山 ほどあるッ!! この 島 で 何 が 起 こった! そしてどうしてこんな 事 件 が 起 こった?! 密 室 についても 聞 きたいッ!! 礼 拝 堂 は?! 朱 志 香 の部 屋 は?! 使 用 人 室 は?! 夏 妃 伯 母 さんの 部 屋 は?! そして 客 間 は?! 聞 きたいことはまだまだあるッ!! 魔 女 の 正 体 は!! 本 当 にベアトリーチェは 魔 女 なのかッ!! 何 が 目 的 だ、 俺 たちに 何 をさせたい、 俺 をなぜここへ 呼 んだんだッ!! 答 えろ 全 てだッ!!!」( 戦 人 )「……お 前 、……さっきから 何 を 騒 いでるんだ………。…お 前 が、……ベ、…ベアトリーチェだとでも 言 うのかよ…」( 戦 人 )(EP4)「イ~エぇええええぇス、アイアぁああぁムッ!! 金 蔵 の13 人 殺 しの 儀 式 のお 陰 で、ようやく 妾 は 復 活 したぞ…!! 口 があるといい、 舌 があるといいッ! こうしてそなたと 話 せることの 何 と 楽 しいことかッ! そう 言 えば、お 前 とはあれだけ 何 度 も 何 度 も 憎 まれ 口 を 叩 き 合 ってきたのに、こうしてゲーム 中 に 盤 上 で 会 話 をしたのは 初 めてだなァ」(ベアト)「 何 やらとても 新 鮮 だッ!! そなたとは 確 かにこの 世 界 でも 何 度 か 会 えては 来 たのだ。まるですれ 違 うかのようにな」(ベアト)(EP4)※ 以 上 のようにEP2においてゲーム 盤 で 会 話 をしているのに、EP4 では 初 めてだと 言 っています。つまりEP2 の 終 盤 でプレイヤーの 戦 人 は 魔 女 に 屈 服 し、 駒 から 離 れてしまったのです。プレイヤーがいなければゲームマスターは 駒 を 自 由 に 出 来 ます。このあたりの 説 明 は“■ 駒 とはどのようなもの?”で…。■EP3の 譲 治 と 南 條 は 誰 が 殺 したの?※おそらくこの 作 品 中 、 最 高 難 度 の 殺 人 です。 犯 人 と 方 法 自 体 は 簡 単 です。 現 に 竜 騎 士 07さんから 以 下 のような 発 言 があります。( 聞 き 手 ) 南 條 殺 しの 犯 人 を 最 後 の 謎 にしたのはなぜでしょうか?( 真 相 3)あれはお 土 産 です。これが 解 けないなら、 魔 女 を 認 めざるを 得 ないんじゃないかな。でも、 今 回 は 誘 導 灯 をかなり 丁 寧 につけたので 屈 しないでください。( 中 略 )それでも 赤字 に 隙 があるみたいで、 色 々な 方 々がそれぞれの 方 法 で 抜 けてきます。 次 回 はそれもバサバサ 刈 り 取 りますよ( 笑 )。※しかし、 動 機 がわからないのです。EP3 では 第 一 の 晩 の 後 に、 絵 羽 と 楼 座 が 碑 文 の 謎 を 解 いてしまいます。すると 以 下 の 内 容 により、ベアトは 人 を 殺 せなくなってしまうのです。「《 赤 : 妾 は 約 束 は 守 る》。 碑 文 の 謎 を 解 けば、 黄 金 郷 へ 至 ることができるだろう。さすれば、 儀 式 は 終 わる。それ 以 上 、 誰 も 死 にはせぬ」(ベアト)(EP2)「…… 妾 は 誑 かしはする。もちろん 人 も 騙 す。 人 間 と 変 わらぬ。……だが 約 束 として 口 にしたことを 反 故 にしたことは 一 度 もない。 人 間 はどうか? 約 束 を、 必 ず 守 るのか?」(ベアト)(EP2)「どうするのです、ベアト。…… 碑 文 の 謎 を 解 く 者 が 現 われたなら、 儀 式 は 取 り 止 める 約 束 ですよ」(ワルギ)(EP5)「うむ。…そういう 取 り 決 めであったな」(ベアト)「………そういう 取 り 決 めだ。うむ」( 金 蔵 )「ど、どういうことよ。 碑 文 の 謎 を 戦 人 が 解 いたんでしょう? どうして 殺 人 が 起 こるわけ?!」(レヴィアタン)(EP5)「わからん。……いずれにせよ、 厄 介 なことになるぞ。ベアトリーチェさまと 夏 妃 さまにご 報 告 申 し 上 げた 方 がいい」(ベルフェゴール)「ベルフェは 急 いでルシ 姉 に 報 告 を…!!」(レヴィアタン)※ 第 二 の 晩 以 降 の 殺 人 は、 誤 って 楼 座 を 殺 してしまった、あるいは 黄 金 を 独 占 するために 楼 座 を 殺 した、 絵 羽 が 起 こしたものだと 考 えられます。しかし、 絵 羽 が 秀 吉 や 譲 治を 殺 すわけはありませんし、 南 條 は 物 理 的 に 殺 すことが 不 可 能 です。 正 直 、 正 解 を 出 している 自 信 はないのですが、 以 下 に 僕 が 考 えるこの 殺 人 の 解 答 を 記 します。まず 考 えられるのが、 以 下 の 説 明 による“ 儀 式 の 終 焉 による 約 束 からの 解 放 ”です。「 儀 式 に 従 い、 妾 は 気 まぐれに13 人 を 生 贄 とする。だが、それ 以 上 を 殺 してはならないとの 決 まりはない」(ベアト)(EP2)※ベアトの 約 束 を“ 碑 文 の 謎 を 解 けば、 黄 金 郷 へ 至 ることができるだろう。さすれば、 儀 式 は 終 わる。それ 以 上 、( 儀 式 によっては) 誰 も 死 にはせぬ”と 読 み 解 くのです。つまり“ 儀 式 と 関 係 ない 殺 人 はOK”という 解 釈 です。 現 にEP1では 儀 式 が 終 わったのに 夏 妃 を 殺 していますし、 上 記 発 言 の 続 きは 以 下 の 通 りです。「… 妾 が 楽 しければ 幾 人 でも 殺 すッ!! だから 殺 す!! 妾 を 思 いッ 切 り 笑 わせて 見 せろよ、 家 具 ゥゥウッ 嘉 音 ンンンンッ?!?!」(ベアト)(EP2)※ 次 は“ 黄 金 の 魔 女 を 引 退 したことによる 約 束 からの 解 放 ”です。「うむ。 金 蔵 より 返 還 された、 右 代 宮 家 当 主 の 証 である 黄 金 の 指 輪 だ。 今 よりそれはそなたのもの。それを 指 にはめ、 兄 弟 たちの 前 で 高 々と 掲 げるが 良 い。そなたが 今 や 右代 宮 家 の 家 督 を 継 いだことに、 誰 も 疑 いを 挟 めぬであろうぞ。くっくっくっく。 我 こそは 黄 金 の 魔 女 ベアトリーチェ! 右 代 宮 家 顧 問 錬 金 術 師 ! 金 蔵 との 契 約 に 従 い、そなたに 今 こそ 全 てを 受 け 継 ごうぞ。… 金 蔵 に 託 した 全 ての 黄 金 。そしてそれにより 築 き 上 げた 全 ての 財 産 。そして 右 代 宮 家 の 家 督 と 名 誉 。そして、 我 が 力 と 無 限 の 魔 女 の 称号 をそなたに 引 き 継 ごう。…… 先 代 に 従 い、 称 号 と 共 に 妾 の 名 、ベアトリーチェもそなたに 譲 り 渡 す。…… 今 こそそなたが 名 乗 るが 良 かろう!」(ベアト)(EP3)「…ベアトは 約 束 したよね?! 真 里 亞 を 黄 金 郷 へ 連 れてってくれるって 約 束 したよね?! そこではママとも 仲 良 しになれて、みんなずっと 笑 い 合 えるの…! そこへ 連 れて行 ってくれるって、 約 束 してくれたよねッ?!」( 真 里 亞 )(EP3)「………そ、…そのだな。…その 約 束 はもう、… 守 れぬ。……… 碑 文 の 謎 を 解 く 者 が 現 れたから、…… 妾 はもう、 黄 金 の 魔 女 ベアトリーチェではないのだ。……だからすまぬ。…そなたとの 約 束 はもう 守 れぬ……」(ベアト)「あなたが 自 分 で 考 えるのです。…… 幸 いにも、あなたはもうゲーム 盤 の 駒 を 降 りて、 新 しき 魔 女 に 委 ねました。じっくりと 自 らについて 思 案 する 時 間 があるでしょう」(ワルギリア)(EP3)※ 以 上 のように、ベアトは 黄 金 の 魔 女 を 引 退 してしまいました。すると 黄 金 の 魔 女 であったときの 約 束 は 無 効 になるという 考 え 方 です。 現 に 真 里 亞 に 約 束 は 守 れなくなったと 言 っています。 次 はかなり 無 茶 なのですが“このEPではそんな 約 束 はしていないよ”です。EP1とEP2のTIPSの“ 魔 女 の 手 紙 ”とEP3の“ 魔 女 の 手 紙 ”は 内 容 が 違 います。また、 真 里 亞 が 読 み 上 げた 手 紙 の 内 容 も 途 中 からになっており、 特 別 条 項 の 部 分 は 読 まれていないのです。ですからこのEPにおいては、そもそもそんな 約 束 はしていない、と 言 い 張 ることも 出 来 るのです。 次 は“ 書 き 手 とゲームマスターの 齟 齬 ”です。これは“■メッセージボトルとはどのようなもの?”で 説 明 する 内 容 が 絡 んでくるため、 簡 単 に 説 明 してしまいます。 偽 書 の 書 き 手 である“ 八 城 十 八 ”は 現 実 の 結 果 と 同 じである“ 絵 羽 が 生 き 残 る 筋 書 きの 偽 書 ”を 書 いた。 一 方 で“ゲームマスターのベアト”は 偽 書 の 内 容 を 破 綻 なく 取 り 入 れたゲームを 作 ることに 失 敗 した、ということです(“ 約 束 を 守 る”というのはゲームマスターのベアトの 約 束 であり、 偽 書 の 書 き 手 とは 関 係のない 話 ですから)。 最 後 は“ 駒 のベアトとゲームマスターのベアトは 別 だから”。これは“■ベアトリーチェは 駒 のベアトとゲームマスターのベアト、 二 人 いる?”で 説 明します。“ 殺 人 の 正 当 性 ”の 解 釈 は 以 上 です。 以 降 は 第 一 の 晩 のあとに 何 があったのかを 推 測 だけで 説 明 します。 絵 羽 が 碑 文 の 謎 を 解 いたことを、 何 らかの 方 法 で 紗 音 は 察 知します。 梯 子 を 持 ち 出 して 礼 拝 堂 で 作 業 をしているのをたまたま 見 かけたのかもしれませんし、あるいはEP7でヤスが 地 下 貴 賓 室 に 入 ったときにすぐに 源 次 が 現 れたことから、 察 知 するための 仕 組 みがあるのかもしれません。その 仕 掛 けが 礼 拝 堂 で 作 業 を 始 めれば 作 動 するなら、ある 程 度 時 間 はあるでしょう。まもなく 絵 羽 がやってくる 状 況 下で、ベアトは 慌 てて 絵 羽 への 手 紙 を 書 きます。そこには 時 限 爆 弾 の 仕 組 みと 使 用 方 法 を 記 しておきます。そして 絵 羽 が 来 ないうちに、どこかに 隠 れて 絵 羽 の 様 子 を 伺 います。54


誰 も 出 入 りできない 地 下 貴 賓 室 をベアトは 拠 点 にしていたはずで、ここに 煉 獄 の 七 杭 やキャッシュカードが 置 いてあったはずです。 絵 羽 と 実 際 に 会 った 可 能 性 もあるのですが、 以 下 のように 至 近 距 離 だとベアトの 正 体 は、 見 破 られてしまいます。「こ、……こら 驚 いたわ……。まさに 肖 像 画 の 魔 女 に 瓜 二 つやで……。そのドレス、 特 注 したんかいな……」( 秀 吉 )( 我 告 )※だとすると、 後 に 屋 敷 で 絵 羽 にとどめを 刺 されるはずで、 会 ってはいないと 考 えられます。その 後 やって 来 た 絵 羽 は 手 紙 を 読 んで 爆 弾 のことを 知 り、 煉 獄 の 七 杭 とキャッシュカードを 入 手 します。しかしキャッシュカードはともかく、 煉 獄 の 七 杭 は 結 構 大 きいですし、 持 っていく 意 味 もありませんから、そのまま 置 いておいたでしょう。ちなみにベアトは 慌 てていたため、キャッシュカードの 番 号 を 手 紙 に 書 き 忘 れていました。その 後 ベアトは 絵 羽 の 後 を 追 跡 し、ゲストハウスの 様 子 を 伺 います。 絵 羽 は 楼 座 を 再度 説 得 するタイミングを 図 っていましたが、 廊 下 での 真 里 亞 とのやり 取 りを 聞 き、 秀 吉 に 協 力 してもらって 窓 から 抜 け 出 して 薔 薇 庭 園 に 向 かいます。 絵 羽 は 薔 薇 庭 園 で 楼 座の 説 得 に 失 敗 し、 揉 み 合 いの 中 、 楼 座 は 足 を 滑 らせて 事 故 死 します。その 場 面 を 目 撃 した 真 里 亞 が 泣 き 叫 んだため、 慌 てた 絵 羽 は 思 わず 真 里 亞 を 絞 殺 してしまいます。 二 人を 殺 してしまった 絵 羽 は 恐 慌 し、ゲストハウスに 逃 げ 帰 ります。TIPSに“( 楼 座 のExecute) 彼 女 こそが、 新 しい 魔 女 誕 生 のための 生 贄 …。(EP3)”とあるように、 絵 羽 は楼 座 と 真 里 亞 を 殺 してしまったため、 魔 女 の 儀 式 を 継 承 せざるを 得 なくなるのです。その 後 、 食 料 調 達 に 屋 敷 に 向 かった 留 弗 夫 達 をベアトと 絵 羽 が 別 々に 追 跡 します。 絵 羽は 秀 吉 が 残 した 煙 草 の 吸 殻 から、 霧 江 が 絵 羽 のことを 疑 っていることに 気 がついていたのです。 屋 敷 で 留 弗 夫 たちに 追 及 された 秀 吉 は、アリバイ 工 作 した 事 実 を 話 さざるを得 なくなります。そのため、 絵 羽 は 不 意 をついて 留 弗 夫 と 霧 江 を 射 殺 します。しかし、 腹 部 を 撃 たれた 霧 江 は 即 死 せず、 絵 羽 に 反 撃 しようとしますが、それを 秀 吉 が 庇 って死 んでしまいます。これはTIPSの“( 秀 吉 のExecute) 油 断 した。まだ 生 きていたなんて……。(EP3)”“( 霧 江 のExecute) 腹 と 言 うのは、 何 とも 致 死 性 に 欠 ける。(EP3)”から 推 測 できます。 絵 羽 がいつから 碑 文 と 現 在 の 状 況 の 一 致 に 気 付 いていたかは 不 明 ですが、 絵 羽 はこの 時 、 以 降 の 殺 人 を“ 碑 文 の 見 立 て 殺 人 ”に 見 せ 掛 けることで、 犯 行を 魔 女 に 押 し 付 けることにします。そして 地 下 貴 賓 室 から 煉 獄 の 七 杭 を 持 ち 出 し、 三 人 に 碑 文 どおりに 突 き 刺 して、 再 びゲストハウスに 戻 ります。ベアトはその 隙 に 屋 敷 に入 り 込 み、 紗 音 の 服 装 で 死 んだフリをします。 三 人 がこの 場 で 死 んでいる 以 上 、 確 認 の 為 に 誰 かが 来 ることは 確 実 だからです。その 後 、 絵 羽 は 蔵 臼 と 夏 妃 に 睡 眠 薬 入 りのコーヒーを 飲 ませ、 絞 殺 した 後 、 薔 薇 庭 園 の 東 屋 に 運 びます。その 間 に 譲 治 はコーヒーの 件 で 南 條 の 部 屋 を 訪 れ、 南 條 から 紗 音 に 協 力 させられたことを 打 ち 明 けられます。 南條 は 絵 羽 が 儀 式 を 継 承 していることを 知 らないため、 以 降 の 殺 人 も 引 き 続 き 紗 音 が 行 っていると 考 え、 説 得 できるのは 譲 治 しかいないと 考 えたのでしょう。その 後 、 譲 治 は窓 からゲストハウスを 抜 け 出 し、 南 條 が 施 錠 します。これは 譲 治 の 失 踪 の 発 覚 を 遅 らせるためです。 譲 治 が 説 得 を 終 える 前 に 譲 治 の 失 踪 が 発 覚 し、みんなが 屋 敷 に 押 しかけては 説 得 に 失 敗 するかもしれないと 考 えたのでしょう。 屋 敷 にたどり 着 いた 譲 治 は 施 錠 されているため、 扉 を 叩 いて 紗 音 を 呼 びます。ベアトは 南 條 が 真 相 を 譲 治 に 打 ち 明 けたことを 知 り、 扉 を 開 けて 譲 治 を 迎 え 入 れます。 譲 治 に 詰 問 されたベアトは 譲 治 を 殺 します。 既 に 紗 音 は 人 格 死 しているため、 譲 治 を 殺 すことに 抵 抗 はなかったでしょう。しかし、 絵 羽 への 罪 の 意 識 からキャッシュカードの 暗 証 番 号 を 記 すことにします。それがTIPSから 推 測 できます“( 譲 治 の Execute) 彼 の 魂 と 引 き 換 えに、 魔 女 は8 桁 の数 字 を 与 える。07151129。 唱 えれば、 小 さな 黄 金 郷 が、 開 かれる。(EP3)”。 譲 治 が 帰 らなければ、みんなが 屋 敷 にやってきますので、 再 びベアトは 死 んだフリをします。これが 幻 想 で 以 下 のように 描 写 されています。ベアトの 眼 前 で、 鍵 穴 より 飛 び 込 んできた 黄 金 の 蛇 が、 愛 し 合 う 二 人 ( 譲 治 と 紗 音 )をぐるぐるっと 取 り 囲 んで、 二 人 の 心 臓 を 瞬 時 に 貫 通 した。……しかも 律 儀 に、 紗 音 の 胸の 穴 にもう 一 度 、 黄 金 の 蛇 を 貫 かせた…。(EP3)※ 紗 音 が2 回 貫 かれているのは、この 死 んだフリが2 回 目 であるためです。ちなみにこの 時 に 譲 治 が 生 きていて、 後 に 南 條 を 殺 してから 自 殺 したという 説 があります。しかし、 以 下 の 内 容 から、とても 肯 定 できる 説 ではありません。譲 治 は、 紗 音 と 出 会 ったことで、 生 まれ 変 わろうと 決 意 した。 雰 囲 気 に 押 し 流 されやすくて、 頼 まれると 断 れず、 都 合 よく 周 りに 使 われてしまう 気 弱 な 自 分 と 決 別 しようと誓 った。…… 彼 女 の 人 生 を、より 幸 福 にするために、 強 い 男 になろうと 決 心 したのだ。だから。…もしも 紗 音 との 出 会 いがなかったなら、…… 右 代 宮 譲 治 という 男 は、もっと 別 の、 異 なった 人 生 を 送 っていただろう。そしてその 人 生 における 彼 は、 今 の 彼 ほど 立 派 な 男 ではなかったに 違 いない。 自 分 が 紗 音 の 後 を 追 って 自 殺 するようなことがあったなら、 彼 女 はきっと 深 く 落 胆 するだろう。…… 逆 だって 同 じだ。 自 分 が 死 に、それを 追 って 紗 音 が 自 ら 命 を 捨 てるようなことがあったなら、 自 分 で 自 分 が 許 せなくなってしまう。……だから 彼 は、 悲 しんだり、 怒 ったりする 感 情 をはるかに 超 越 して、……… 感 謝 することにしたのだ。 紗 音 と 出 会 え、 豊 かな 日 々を 与 えてくれて、…そして 自分 に、 人 のために 努 力 することの 意 味 を 教 えてくれた。その 結 果 、 自 分 の 憧 れた 姿 の 自 分 を 与 えてくれた。…それに 感 謝 しようと 思 った。(EP3)※こんなことを 考 えた 譲 治 が、そのすぐ 後 に 自 殺 するでしょうか?譲 治 の 兄 貴 は、 紗 音 ちゃんの 遺 体 と 一 緒 に 倒 れていた。 胸 が 真 っ 赤 に 染 まっている。そして 見 開 いたままの 瞳 からは、… 絵 羽 伯 母 さんには 悪 いが、…… 生 きている 気 配 を 感じることはできなかった。 南 條 先 生 は 脈 を 取 るような 仕 草 をした 後 、… 首 を 横 に 振 り、もはや 死 んでいることを 無 言 で 告 げる。それを 押 しのけ、 絵 羽 伯 母 さんは 再 び 譲 治 の兄 貴 にしがみ 付 くと、あらん 限 りの 声 を 張 り 上 げて 泣 き 叫 んだ…。(EP3)※ 瞳 を 見 開 いたまま 死 んだフリが 出 来 るのかという 問 題 がありますし、 探 偵 である 戦 人 が 遺 体 を 確 認 しています。また、 絵 羽 がすがりついているため、 生 きているならこの時 に 気 がつくはずです。また、 何 故 、 譲 治 が 南 條 を 殺 す 必 要 があるのでしょうか? 南 條 は 射 殺 されたと 考 えられますが、 譲 治 はどこで 銃 を 入 手 したのでしょう? そもそもEP6で 以 下 の 内 容 があります「17 人 いる 島 だから、6を 引 いて5を 引 いてさらに6を 引 けば、ちょうどゼロになって、 所 在 不 明 の 人 間 はゼロになる。という 思 い 込 みは 大 変 危 険 です。 戦 人 さんも、この 辺 の 名 前 と 人 数 のトリックで、 第 3のゲームの 南 條 殺 しで、さんざん 苦 しめられたはずです」(ヱリカ)(EP6)「…………そうだな。……あの 時 のトリックは、18 人 分 の 名 前 と、 実 際 に 存 在 する18 人 が 食 い 違 うことで、 未 知 の 人 物 が 混 入 する 余 地 を 許 していた」( 戦 人 )※つまり 南 條 殺 しには“ 名 前 と 人 数 のトリック”が 関 わっているのです。 譲 治 犯 人 説 は“ 名 前 と 人 数 の 赤 字 ”を 抜 けるための 説 であるため、ありえないことがご 理 解 いただけると 思 います。 以 下 、 説 明 を 続 けます。 事 情 を 知 る 南 條 を 生 かしていては、いつ 魔 女 幻 想 が 破 られるか 知 れたものではありません。そのため、ベアトは 南 條 も 殺 すことにします。 幸 いなことに 南 條 は 朱 志 香 の 治 療 の 為 に 孤 立 し、しかも 朱 志 香 は 目 が 見 えません。すかさずベアトは 南 條 を 殺 します。 譲 治 もそうなのですが、これらの 殺 人 は“ 魔女 幻 想 を 守 るため”なのか“ミステリーとしてのギミック”なのか、イマイチよく 解 りません。これでもうすることはないのですが、ベアトは 朱 志 香 を 不 憫 に 思 います。このままだと 間 違 いなく 絵 羽 に 殺 されるためです。 絵 羽 としては 爆 弾 の 威 力 を 自 分 の 目 で 確 かめたわけではないし、そもそもそれが 本 当 のことかさえわかりません。 自 分 以 外に 生 存 者 がいなければ、 爆 弾 の 話 が 嘘 で 死 体 が 残 ってしまっても、いくらでも 誤 魔 化 せます。 万 全 を 期 すなら 自 分 以 外 の 生 存 者 は 殺 しておく 必 要 があるのです( 現 に 戦 人 を 射殺 しています)。そこでベアトはせめて 朱 志 香 が 安 らかに 死 ねるようにしようと 決 心 します。そして、 嘉 音 のフリをして( 本 人 ですが、 嘉 音 は 人 格 死 しているため) 朱 志 香 を 誘導 し、 匿 います。そして 爆 発 のときまで 嘉 音 のフリをして 朱 志 香 を 慰 めるのです。 以 上 が 僕 が 考 えたEP3の 真 相 です。ちなみに 以 下 の 台 詞 は 紗 音 の 服 装 から 着 替 える 暇 がなかったため、 触 れられると 正 体 が 発 覚 するからだと 考 えられます。「 僕 は 今 、 蝋 燭 の 煙 よりも 儚 い 存 在 です。… 生 者 であるお 嬢 様 に 触 れられれば、たちまち 掻 き 消 えてしまうほどに。……だからどうか、 触 れようとしないでください。… 僕も、……お 嬢 様 に 触 れたい 気 持 ちを、…… 抑 えているのですから」( 嘉 音 )(EP3)■EP4で 戦 人 の 母 親 が 霧 江 だと 確 定 できる?※まず“《 赤 : 右 代 宮 戦 人 は 右 代 宮 明 日 夢 の 息 子 ではないわ。》《 赤 : 右 代 宮 戦 人 は、 右 代 宮 明 日 夢 から 生 まれた。》”この 二 つの 赤 字 が 両 方 とも 成 立 するということは、 右 代宮 戦 人 は 二 人 いることになります。 明 日 夢 以 外 の 女 性 から 生 まれた 戦 人 と、 明 日 夢 から 生 まれた 戦 人 です。“《 赤 :そなたは、 右 代 宮 明 日 夢 の 息 子 ではない》” 以 上 の 赤 字 があるため、 今 この 場 にいるのは 前 者 の 戦 人 ということになります。“《 赤 : 金 蔵 の 孫 である 戦 人 にしか 対 戦 相 手 の 資 格 がない》”ということですから、この 戦 人 は 金 蔵 の 血 を引 いている 必 要 があります。ここでポイントなのが 以 下 の 赤 字 です。“《 赤 : 戦 人 は 明 日 夢 の 息 子 ではない》”この 戦 人 は 戸 籍 上 も 実 際 上 も 明 日 夢 の 息 子 です。しかし、 赤 字でそれを 否 定 されるということは、 赤 字 でいう“ 息 子 ”とは 遺 伝 学 上 の“ 息 子 ”であるということになります。ということは“《 赤 : 縁 寿 は、…… 俺 の 妹 だ》”と 言 えるからには、この 戦 人 は 遺 伝 学 上 で 縁 寿 の 兄 なのです。 縁 寿 の 両 親 は 留 弗 夫 と 霧 江 です。 金 蔵 の 血 を 引 いていなくてはならない 以 上 、 父 親 は 留 弗 夫 です。ただ、 母 親 を 霧 江 と 断 定できるかは 疑 問 が 残 ります。 血 が 半 分 でも“《 赤 : 縁 寿 は、…… 俺 の 妹 だ》”と 言 えるのか 判 断 材 料 がないためです。そのため 結 論 は“ 確 定 できない”です。ちなみにEP8の最 後 まで 行 っても、やはり 確 定 はできません。明 日 夢 さんは 戦 人 くんを 身 篭 ってたわ。そして 同 じ 頃 、 私 もまた 男 の 子 を 身 篭 ってた。… 運 命 的 なことに、 私 たちの 出 産 日 は 共 に 同 じ 日 だったわ。「そして 明 日 夢 さんは 戦 人 くんを 出 産 したわ。…だけれど 私 は 流 産 したの。……… 思 ったことがあるわ。もし 流 産 したのが 明 日 夢 さんで、 出 産 したのが 私 だったなら。……留 弗 夫 さんは 婚 約 を 解 消 して、 私 と 結 婚 してくれたかしら? ……でも 私 は 子 どもを 産 めなかった。だから 明 日 夢 さんが 死 ぬまで。そして 縁 寿 を 懐 妊 するまで、 私 は 明 日 夢55


さんを 呪 ったわ、 嫉 妬 したわ」( 霧 江 )(EP3)「そういうこと。お 母 さん( 霧 江 )は、お 父 さん( 留 弗 夫 )の 右 腕 として 活 躍 しながらも、その 陰 では 狡 猾 に、 他 の 女 性 を 切 り 離 していったわ。……お 母 さんの 恋 の 成 就 は、もはや 時 間 の 問 題 だった」( 縁 寿 )(EP6)※とは 言 ってもこれだけ 伏 線 があるため、 確 定 的 ではあるのですが…。ちなみに「 戦 人 は 明 日 夢 の 息 子 ではなく、 娘 ではないか?」と 考 えることも 出 来 ますが、 以 下 の 赤 字がありますので、それは 否 定 されます。「《 赤 : 早 く 帰 ってきて、お 兄 ちゃんッ!! 私 を 独 りぼっちにしないでッ!!!》」( 縁 寿 )(EP4)■EP4の 園 芸 倉 庫 での 殺 人 はどのようにして 行 われたの?※ 普 通 に 考 えれば、 窓 から 射 殺 したと 推 測 せざるを 得 ません。しかし、 以 下 のように 窓 から 射 殺 するのは 困 難 な 様 子 です。シャッターを 下 ろし、 施 錠 する。そして 譲 治 は、 倉 庫 の 脇 の 小 さな 窓 へ 向 かう。それは 格 子 が 入 った 小 さな 窓 で、 明 かり 取 りと 換 気 くらいしか 出 来 ないものだった。(EP4)※ 実 際 のところ、 犯 人 は 中 の 二 人 に 呼 びかけ、 窓 から 鍵 を 投 げてもらった 後 、 鍵 でシャッターを 開 けて 中 に 入 り、 二 人 に 首 吊 りの 芝 居 をさせ、 射 殺 した 後 、 適 当 な 鍵 を 郷 田のポケットに 入 れて、 外 に 出 てからシャッターを 閉 めて 施 錠 したと 考 えられます。その 証 拠 が 以 下 の 内 容 です。「さっき、 嘉 音 くんが 使 用 人 室 に 鍵 を 戻 すところを 見 たわ。 壁 にびっしりと 鍵 が 掛 けられていて、とても 素 人 にはどこに 何 が 掛 けてあるのかわからなかった。 犯 人 は、その中 から 倉 庫 の 鍵 を 見 事 選 び 出 したのよ? しかも、 札 も 何 も 付 いていない 鍵 を 手 にして、 薔 薇 庭 園 裏 にある 倉 庫 の 鍵 だと 理 解 した」( 絵 羽 )(EP1)園 芸 倉 庫 のシャッターを 破 ることにした。 斧 で 殴 りつけてシャッターを 破 り、その 隙 間 から 番 線 カッターを 突 っ 込 み、ジョキジョキと 鋏 の 要 領 で 穴 を 開 ける。そして、 郷 田さんと 熊 沢 さんの 死 体 と、 俺 は 再 び 対 面 した……。その 結 果 、 新 しい 事 実 がわかる。まず、 二 人 は 首 を 吊 って 死 んでいるのではなかった。 二 人 の 足 はちゃんと 床 についている。……そして 二 人 の 額 には、 銃 で 撃 たれたような 跡 があった。ロープの 長 さは 一 般 的 な 首 吊 りを 考 えると、かなり 長 めに 取 られている。その 上 、 二 人 の 身 長 に 合 わせて 長さが 変 えてあった。つまり、 背 の 高 い 合 田 さんも 背 の 低 い 熊 沢 さんも、どちらもちゃんと 地 面 に 足 がつくことが 出 来 るギリギリになるように、 長 さが 調 整 してあったということだ。また、そのロープに 体 重 を 預 けて 俯 いている 二 人 は、どちらも 膝 から 下 が 少 し 余 っている。これは 二 人 がこのロープを 首 に 掛 けて 直 立 したなら、 長 さが 余 ることを意 味 している。 多 分 、 直 接 の 死 因 は 頭 部 への 銃 撃 。 郷 田 さんに 預 けたシャッターの 鍵 はどこにあるのだろう…。その 鍵 は、……… 彼 のズボンのポケットに 入 っていた。ご 丁寧 にも、 園 芸 倉 庫 の 鍵 とプレートまで 付 いている。(EP4)※EP1 ではなかったプレートがEP4 ではつけられています。これは 何 もついていなければ、 戦 人 がその 鍵 が 本 当 に 園 芸 倉 庫 に 鍵 なのか 確 認 するかもしれなかったため、 念 のためにつけたものと 考 えられます。またTIPSで“( 郷 田 のExecute) 彼 らは 自 らロープに 首 を 掛 けた。たまには 面 白 い 経 験 だった。(EP4)”とありますので、 二 人 の 首 吊 りが 自 演 であることがわかります。■EP4のもう 一 人 のベアトリーチェは 何 者 ?「……… 何 も、…… 思 い 出 せぬと、 言 うか」(ベアト)(EP4)これにて、 未 練 は 尽 きたか……?「………………………。……………う、む…」(ベアト)望 み 無 き 賭 けも、 賭 けねば 未 練 が 残 ろう。……それで 良 いのだ。 賭 けることに 意 味 がある。「………そうかも 知 れぬな。…ならば、これにて。 妾 の 未 練 も、ゲームも、 終 わりだ」(ベアト)そなたはどうする…?「…さぁな。……… 妾 はもう、 何 の 興 味 もない。……すまぬが、 妾 はこれにて、ゲーム 盤 を 降 りさせてもらいたい」(ベアト)……そうか。……わかった。「あとのゲームは 妾 が 引 き 継 ぐ。………そなたは 休 め」(ベアト2)「……うむ。……………」(ベアト)「 後 のことは、 全 て 妾 が 終 わらせる。………そなたは 全 てを 忘 れて 枕 に 顔 を 埋 めよ。 羽 の 布 団 は、そなたを 全 てからやさしく 守 ってくれるだろう」(ベアト2)「 後 片 付 けを、…… 頼 む」(ベアト)「 任 せよ。……あとのことは 全 て 任 せ、 眠 れ」(ベアト2)戦 人 に 問 い 掛 けをしていた 魔 女 は 姿 を 消 し、 後 より 現 れたもうひとりの 魔 女 が 残 る。 確 かに 瓜 二 つの、 同 じ 魔 女 だったが、………その 表 情 はどこかとても 淡 白 で 冷 め 切 っていて、……それまでの 悪 酔 いした 風 とはいえ、 元 気 の 良 かった 彼 女 とはかけ 離 れていた。「………… 今 から、………… 全 て…を、 晒 すから。………それが、……… 妾 の 心 臓 。…… 戦 人 なら、……… 殺 せるから…。……… 私 の 全 て…。… 心 臓 ……。……… 潰 して。………… 貫 いて。…………ね……?」(ベアト)(EP4)…… 彼 女 の 顔 が、 少 しだけ 斜 めに 傾 ぐ。そして、 右 腕 が 光 を 失 って、どさりと 落 ちた。……しかし 左 腕 だけは 光 を 失 わず、そのまま 天 に 差 し 出 されていた。すると、………… 戦 人 の 目 の 前 に、カーテンのように 透 けた、 希 薄 な 姿 のベアトがもう 一 人 、 現 れる。…… 磔 にされているベアトはもう 気 を 失 っている。しかし、 新 しく 現 れた 希 薄 なベアトは、 無 表 情 な 瞳 で、…… 静 かに 俺 を 見 て、…………そして、 言 った。「………《 赤 : 右 代 宮 戦 人 。 今 から 私 が、あなたを 殺 します。》………《 赤 :そしてたった 今 。この 島 にはあなた 以 外 誰 もいません。この 島 で 生 きているのは、あなただけです。 島 の 外 の 存 在 は 一 切 干 渉 できません。》」(ベアト2)…… 俺 は、 理 解 する。これは、……ベアトリーチェが 魔 女 でいることが 出 来 る、……“ 最 後 の 謎 ”なのだ。それを、ベアトは 俺 に 差 し 出 そうとしている。 俺 に、…… 最 後 の謎 を 解 いて、 殺 してくれと、…… 懇 願 している……。「………《 赤 :この 島 にあなたはたった 一 人 。そしてもちろん、 私 はあなたではない。なのに 私 は 今 、ここにいて、これからあなたを 殺 します。》………… 私 は、だぁれ…?」(ベアト2)※EP7でウィルが 解 答 しています。 本 来 のベアトと 様 子 が 違 うのは 爆 弾 という 物 体 であるためと 考 えられます。「 第 4のゲームラストの、 私 はだぁれ?、はわかった……?」(ベルン)(EP7)「10 月 5 日 24 時 に 必 ず、 場 所 を 問 わずに、 殺 せる“ 犯 人 ”。その 時 点 である 種 の 仮 定 は 可 能 だ。……それこそ、 黄 金 郷 のもう 一 つのお 宝 、ってわけだ」(ウィル)■EP5でヱリカは 金 蔵 が 死 んでいることを 知 っていたの?「 金 蔵 さんって、いつから、いらっしゃられないんですか……?」(ヱリカ)(EP5)「 右 代 宮 、 金 蔵 さん」(ヱリカ)(EP5)「……… 何 か。… 招 かれざる 客 人 よ」( 金 蔵 )「あなたは、 存 在 していませんね。…… 遺 産 問 題 で、あなたの 死 を 知 られたくない 人 間 たちによってその 死 を 隠 蔽 された、 亡 霊 です」(ヱリカ)※ 恐 らくかなり 早 い 段 階 で 夏 妃 たちが 金 蔵 の 死 を 隠 蔽 していることを 確 信 していたものと 思 われます。■EP5で 金 蔵 の 死 体 は 何 故 見 つからなかったの?※ 探 偵 であるヱリカが 屋 敷 中 をくまなく 探 しましたが、 夏 妃 のベッド 以 外 の 場 所 からは 金 蔵 の 死 体 は 見 つかりませんでした。では、 金 蔵 の 死 体 は 夏 妃 のベッドの 中 にあったのでしょうか? いいえ、 違 います。 以 下 の 内 容 をよく 読 んでみると、とんでもない 真 相 が 明 らかになります。「ラムダ。 金 蔵 の24 時 から 朝 までの 所 在 について、 確 実 にするわ。……《 赤 : 金 蔵 は24 時 から 朝 まで、ずっと 同 じ 部 屋 に 滞 在 したわ。》」(ベルン)(EP5)「……? そりゃそうでしょ、 死 体 なんだから。………………………。…いやごめん。そうよね、そうでしょうね。 口 を 挟 まないわ。 面 白 そうだから 続 けてちょうだい」(ラ56


ムダ)「………これより 金 蔵 という 言 葉 を“ 生 きている 金 蔵 ”という 意 味 で 使 うわ。 何 しろ、 夏 妃 は 生 きていると 主 張 するのだから。…… 続 けて 赤 き 真 実 を 語 るわ。《 赤 : 金 蔵 は、屋 敷 以 外 の 場 所 には 存 在 しない。》……そうよね? ヱリカ」(ベルン)「はッ、はい、 我 が 主 …!! 金 蔵 の 姿 を 捜 し、 屋 敷 の 外 、 敷 地 内 をくまなく 捜 索 しました…! しかし 金 蔵 は 発 見 できませんでした…!」(ヱリカ)ヱリカは 探 偵 権 限 により“ 全 ての 手 掛 かりを 発 見 できる”。よって、そのヱリカに、“ 金 蔵 が 屋 外 に 存 在 するという 手 掛 かり”を 発 見 できなかったということは、 金 蔵 が 屋 敷外 に 存 在 することはありないと 断 言 するのに 等 しい。だからそのヱリカの 真 実 を、ベルンカステルが 復 唱 する…。「《 赤 : 金 蔵 は 屋 敷 以 外 の 場 所 に 存 在 しない。》…………ねぇ、 夏 妃 。なら“ 金 蔵 が 存 在 するなら”、 屋 敷 内 のどこかにいることになるわ。どこに 金 蔵 が 隠 れているのか、 心当 たりがあったら 教 えてくれない……?」(ベルン)「…… 以 上 の 理 由 から、 金 蔵 さんが、 屋 敷 以 外 の 場 所 にいることは 考 えられません。……そこでまず、 書 斎 のあった、3 階 を 徹 底 的 に 捜 索 しました」(ヱリカ)(EP5)「だが、どこにも 隠 れる 場 所 はなかった。………3 階 に 親 父 の 姿 は、 影 も 形 もない」( 留 弗 夫 )「では、どこにいるんでしょう、 夏 妃 さん?」(ヱリカ)「し、 知 りません…! 3 階 にいないなら、 地 下 にでも 隠 れたのではありませんか…?」( 夏 妃 )「えぇ、 地 下 ですね。ボイラー 室 、 地 下 倉 庫 など、 怪 しげな 地 下 も 全 て 捜 索 させていただきました」(ヱリカ)「えぇ、 私 も 捜 したわ…! お 父 様 の 姿 なんて、どこにもなかった…!」( 絵 羽 )「 繰 り 返 します。 金 蔵 さんはどこにいるんですか、 夏 妃 さん?」(ヱリカ)「な、なら、1 階 か2 階 にでもいたのでしょう…!!」( 夏 妃 )「そうですね、 消 去 法 で 行 くならそうなります。そして1 階 を 徹 底 的 に 捜 索 しました。 結 果 は?」(ヱリカ)「………いいえ。お 父 様 の 姿 を 見 つけることは 出 来 なかったわ」( 楼 座 )「 繰 り 返 します。 金 蔵 さんはどこにいたんですか、 夏 妃 さん?」(ヱリカ)「で、では、2 階 に 隠 れていたのでしょう…!!」( 夏 妃 )「《 赤 : 屋 敷 以 外 の 場 所 に 金 蔵 はいない。3 階 に 金 蔵 はいない。 地 下 に 金 蔵 はいない。1 階 に 金 蔵 はいない。 以 上 から、 金 蔵 が 存 在 し 得 る 余 地 の 検 討 は、2 階 だけとなるわ。》」(ベルン)「ヱリカ。それでは 端 から 順 に、2 階 の 全 てを 捜 索 して 行 きなさい。…… 全 ての 手 掛 かりを 絶 対 に 見 落 とさず、 如 何 なる 隠 し 扉 も 隠 し 部 屋 も 看 破 できる 探 偵 権 限 で…!」(ベルン)ヱリカは 探 偵 権 限 にて、 夏 妃 を 含 む 全 員 を 引 き 連 れ、2 階 にあがり、 端 の 部 屋 からの 徹 底 捜 索 を 宣 言 した。3 階 にも1 階 にも 地 下 にも 存 在 せず、2 階 の、 突 き 当 たりの 部 屋を 除 いた 部 屋 の 全 てにも 存 在 しない。「《 赤 : 夏 妃 の 部 屋 を 除 く 全 ての 場 所 に、 金 蔵 は 存 在 しない!》」(ベルン)※ヱリカが 探 していたのは“ 生 きている 金 蔵 ”です。つまり 捜 索 の 途 中 で 金 蔵 の 死 体 を 見 つけたものの「これは 探 している 金 蔵 ではない」とスルーしたのです。このEP5はラムダがゲームマスターのわりに、おとなしい 話 だと 思 っている 人 も 多 いのではないかと 思 いますが、こんなとんでもない 仕 掛 けがあったのです。もっともこの 場 面 での“ 金蔵 ”は“ 生 きている 金 蔵 ”のことですので、 屋 敷 以 外 の 場 所 に 死 体 があった 可 能 性 もありますが…。■EP5で 碑 文 の 謎 が 解 かれても 殺 人 が 続 くのは 何 故 ?※ラムダがゲームマスターであるためと 考 えられます。EP1と2に 登 場 した“ 魔 女 の 手 紙 ”はEP5では 登 場 しませんから、“ 魔 女 の 手 紙 ”による 約 束 は 存 在 しません。「《 赤 : 妾 は 約 束 は 守 る》。 碑 文 の 謎 を 解 けば、 黄 金 郷 へ 至 ることができるだろう。さすれば、 儀 式 は 終 わる。それ 以 上 、 誰 も 死 にはせぬ」(ベアト)(EP2)※また、 上 記 約 束 はゲームマスターがベアトであるときの 約 束 です。ラムダがゲームマスターであるEP5 のベアトはそのような 約 束 はしていません。さらに 言 えば、EP5 において、ラムダはベアトの 駒 に 干 渉 せず、 自 由 に 行 動 させていると 考 えられます。これはベアトの 駒 を 操 作 すれば、 約 束 を 守 らなければならないため、 放 置 しているのではないでしょうか? このゲームでのラムダの 相 手 はベルンです。EP3で 絵 羽 が 碑 文 を 解 いている 以 上 、ベルンは 必 ず 碑 文 を 解 いてきます。「ベルンはね、ここで 碑 文 の 謎 を 解 いちゃったのよ。……さすが、 奇 跡 の 魔 女 ね。“ 解 ける 謎 であるならば、 難 易 度 に 関 係 なく 必 ず 解 ける”。…… 今 度 は 解 くのに 何 年 掛 けたの?」(ラムダ)(EP5)※ベアトを 始 めとした 幻 想 存 在 の 本 来 の 役 割 は“ミステリーを 幻 想 修 飾 する 際 の 犯 人 役 ”です。しかし、ベルンが 碑 文 を 解 くことが 確 定 しているため“ 約 束 ”の 制 約 により、犯 人 役 を 演 じることが 出 来 ないのです。そのため、ラムダは 幻 想 存 在 による 幻 想 修 飾 という 手 段 を 諦 めざるを 得 なかったのです。■EP5に 入 っているという『Land of the golden witch』の 一 番 肝 になる 部 分 とは?※ 真 相 解 明 読 本 のインタビューにおいて 以 下 の 内 容 があります。( 聞 き 手 ) 今 回 、『Land of the golden witch』のネタが 入 っているということですが。( 真 相 5)それは 絶 対 言 えません!( 笑 ) 確 かに『Land of the golden witch』の 一 番 肝 になる 部 分 が 入 っていますが、それは 恐 ろしいネタで……。そしてそれは、 戦 人 にもヱリカにもベルンカステルにも 議 題 に 挙 げられていないんですよ。 謎 であったことさえも 気 付 かないんじゃないかな。( 聞 き 手 )ユーザーの 中 にネタが 何 であるか、 気 づかれた 方 はいらっしゃいますか?ゼロです。※これは 以 下 のように 紗 音 と 嘉 音 が 同 席 していることだと 考 えられます。「 皆 様 、お 茶 はいかがですか」( 郷 田 )(EP5)郷 田 と、 配 膳 台 車 を 押 す 嘉 音 だった。 配 膳 台 車 にはお 茶 の 道 具 が 積 まれている。こういう 時 にサービスするとポイントが 稼 げることを、 彼 はよく 理 解 しているのだ。 新 しい情 報 に 飢 えている 親 族 たちは、 郷 田 を、わっと 囲 む…。 郷 田 は、 嘉 音 に 配 膳 を 命 じると、 親 族 たちの 注 目 を 一 身 に 浴 びた。「 郷 田 さん、どうなんだい、その 子 は。 元 気 そうなのか…?」( 留 弗 夫 )「さ、…さぁ、わかりません。ですが、 心 配 ご 無 用 …! 南 條 先 生 が 付 きっ 切 りで 診 ておりますし、 熊 沢 も 紗 音 も 一 緒 です。どうぞ、ご 安 心 下 さい。まずは 紅 茶 でおくつろぎになってはいかがですか…? さぁ、 嘉 音 さん。 早 く 早 く、 配 って 配 って」( 郷 田 )「…………………ぶつぶつ…」( 嘉 音 )嘉 音 は、このお 茶 が 郷 田 のポイント 稼 ぎだと 知 ってるので、ちょっぴりむくれ 気 味 で、カップを 並 べている。「うー。 真 里 亞 も 手 伝 う」( 真 里 亞 )「……だ、 大 丈 夫 です。 真 里 亞 さまはそのままでお 待 ちを」( 嘉 音 )源 次 が 先 頭 で、 扉 をゆっくりと 開 き、………そして 脇 へ 退 き、 深 くお 辞 儀 をして、 来 客 を 促 す。 客 人 (ヱリカ)は 紗 音 と 熊 沢 を 従 え、…… 客 間 で 待 ち 構 える 大 勢 の 親 族 たちを見 ても、まったく 気 圧 される 様 子 がない。(EP5)※ 上 記 2つの 内 容 では、 嘉 音 が 喋 って 仕 事 をしているため、 実 際 にその 場 にいるのは 嘉 音 であると 考 えられます。つまりヱリカは 紗 音 を 認 識 していないのです。“ 俺 ”はぐるりと 客 間 の 人 間 を 見 回 す。 客 人 の 古 戸 ヱリカ。そして、その 後 ろには 熊 沢 さんと 紗 音 ちゃん。その 傍 らには 源 次 さん。 蔵 臼 伯 父 さんと 夏 妃 伯 母 さんが 客 人 を 歓迎 する。 郷 田 さんが、さっそくアピールを 開 始 し、 嘉 音 君 は 相 変 わらず 淡 白 そうな 表 情 で 愛 想 がない。そして、 親 父 に 霧 江 さん。 絵 羽 伯 母 さんに 秀 吉 伯 父 さん。 楼 座 叔 母 さんに 真 里 亞 。それに 南 條 先 生 。そして 俺 の 左 右 には、 譲 治 の 兄 貴 と 朱 志 香 …。これが 全 員 。 現 在 の 本 当 の 島 の 人 数 ……。(EP5)※このEPでは 戦 人 は 探 偵 ではなく、また、ラムダの 駒 であるため、 紗 音 と 嘉 音 を 同 時 に 目 撃 することが 出 来 るのです。「 失 礼 します……」( 嘉 音 )(EP5)57


「お 茶 をお 持 ちいたしました」( 紗 音 )紗 音 と 嘉 音 の 二 人 が 配 膳 台 車 と 共 に 訪 れる。 紅 茶 の 良 い 香 りが、 一 層 、 彼 らの 緊 張 を 解 きほぐしてくれるのだった。「あなたたちもお 茶 をしていきなさいよ。たまには、 自 分 たちがどういう 紅 茶 を 淹 れてるか、その 舌 で 学 ぶのもいい 勉 強 になると 思 うわ」( 霧 江 )「 少 し 付 き 合 ってくれよ。 大 人 ばかりで 俺 も 窒 息 しそうなんだ」( 戦 人 )「そら、 次 期 当 主 の 戦 人 さまのご 命 令 だぞ! そこに 座 って、 俺 たちとしばらくお 茶 しろぃ。それで、 最 近 の 出 来 事 とか 趣 味 とか、 見 てるテレビとか 若 者 の 今 の 流 行 りとか、そういう 話 をしやがれぃ。 俺 たちの 勉 強 になるからな」( 留 弗 夫 )「くす。 名 案 ね。ほら、 二 人 とも 座 って。そして、 話 題 に 飢 えた 私 たちの 生 贄 になってちょうだい」( 霧 江 )厨 房 では、 郷 田 がさっそく、 素 晴 らしい 朝 食 のために 腕 を 奮 っていた。(EP5)「ふんふんふんふん♪ ぱんぱんぱんぱ~ん♪」( 郷 田 )郷 田 は 鼻 歌 を 歌 いながら 上 機 嫌 に、 準 備 を 進 めるのだった。そんな 郷 田 を 見 ていると、それを 手 伝 う 紗 音 もつられて 上 機 嫌 になってしまう。「 食 堂 の 準 備 が 出 来 ましたよ。いつでも 運 べますからねぇ」( 熊 沢 )「もうじきですので、 配 膳 車 の 準 備 をお 願 いします。ふんふんふーーん!」( 郷 田 )思 わず 熊 沢 まで、 郷 田 の 上 機 嫌 につられてしまう。 厨 房 はとてもよい 匂 いとよい 雰 囲 気 で、 朝 から 実 に 清 々しかった。そこへ、いつも 通 りに 朝 から 不 機 嫌 そうな 嘉 音 が 戻 ってくる。 嘉 音 と 源 次 は、カーテンを 開 けたりなど、 諸 々の 朝 の 準 備 が 担 当 になっている。……しかし 今 日 は、 嘉 音 ひとりだったので、いつもよりだいぶ 時 間 が 掛 かってしまった。「 終 わったよ。…… 源 次 さまは?」( 嘉 音 )「まだいらっしゃらないの。……… 珍 しいわね。 寝 坊 されるなんて」( 紗 音 )「ほっほほ。あの 源 次 さんでもお 寝 坊 をねぇ」( 熊 沢 )「 親 族 会 議 の 最 中 だというのに、 緊 張 感 に 欠 けてますねぇ。 嘉 音 さん。 起 こしてきてあげてくれませんか?」( 郷 田 )「…………はい」( 嘉 音 )※ 以 上 のように、このEPではヱリカ 以 外 の 駒 には 紗 音 と 嘉 音 が 同 時 に“ 見 えている”と 思 われます。■EP5の 蔵 臼 殺 しはどのようにして 行 われたの?※この 事 件 で 問 題 になるのは 以 下 の 部 分 です。「……そうだ、ちょっと 待 って。 声 を 聞 かせたい 人 がいる」(19 男 )(EP5)受 話 器 ががちゃがちゃと 揺 さぶられる 音 がする。…… 誰 かに 電 話 を 代 わるつもりらしいが、がさがさごそごそと 音 が 聞 こえ、 受 話 器 を 代 わるのにずいぶん 手 間 取 っているように 聞 こえる…。 一 体 、 誰 に 電 話 を 代 わるというのか。……この 男 のこと、… 誰 に 代 わろうとも、それが 自 分 にとって、 愉 快 なものになるわけがない…。「……ぐふ! これを 解 け…! 卑 怯 者 め…!!」( 蔵 臼 )「え?! あ、……あなた?! あなたなの?!」( 夏 妃 )「うぐぐぐぐぐ、むぉおおおお…!! 解 け、 解 けぇえ!!」( 蔵 臼 )それは 間 違 いなく、 夫 の 声 だった。しかし、 夏 妃 の 声 には 答 えない。…… 暗 闇 で 拘 束 でもされているのだろうか。 蔵 臼 は、 電 話 先 に 夏 妃 がいることにも 気 付 かず、 解 け 解 けと 繰 り 返 していた…。※ 蔵 臼 に 自 由 に 話 をさせれば、 何 を 言 い 出 すかわかったものではありません。 場 合 によっては 犯 人 の 名 を 口 に 出 すことがあるかもしれません。そのため、この 場 面 では 蔵 臼は 実 際 には 話 しておらず、 録 音 された 音 声 が 流 された 可 能 性 があります。その 伏 線 が 以 下 の 通 りです。「 以 後 は 議 事 を 取 りながらにせんか。 言 った 言 わないはもうゴメンや」( 秀 吉 )(EP5)「 文 字 じゃ、 書 くのも 手 間 だし、インチキだっていくらでも 出 来 るわ」( 絵 羽 )「そうだな。…… 兄 貴 、こいつは 動 くのか?」( 留 弗 夫 )「オーディオセットかね。…なるほど。それならば 議 事 を 手 書 きせずに 済 むし、 捏 造 も 出 来 んね。 互 いにとって 公 平 だ」( 蔵 臼 )その 貫 禄 あるオーディオセットは、この 威 厳 ある 食 堂 にとても 相 応 しい 重 厚 さを 持 っていた。※ 食 堂 から 電 話 をし、オーディオセットで 録 音 しておいた 蔵 臼 の 声 を 夏 妃 に 聞 かせた 上 で、どこか( 九 羽 鳥 庵 は 移 動 に 時 間 が 掛 かりますので、おそらく 礼 拝 堂 )に 幽 閉 していた 蔵 臼 を 殺 したと 考 えられます。 以 下 の 赤 字 がありますので。「 奇 跡 の 魔 女 、ベルンカステルの 名 において、 赤 き 真 実 を 語 るわ。《 赤 : 右 代 宮 蔵 臼 は 犯 人 ではない。そしてとっくに 殺 されてるわ。あんたに 電 話 で 声 を 聞 かせた 直 後 にね?》」(ベルン)(EP5)※もっともゲームマスターが 駒 を 自 由 に 操 作 できるなら、 蔵 臼 の 発 言 もコントロールできるわけで、 上 記 のような 小 細 工 は 必 要 ありません。■EP5の 第 一 の 晩 の 死 体 を 煉 獄 の 七 姉 妹 やガァプが 目 撃 し、さらにガァプは 死 体 を 消 しているけど、どういうこと?※これは“ 駒 ”だからです。 詳 しくは“■ 駒 とはどのようなもの?”で 説 明 します。■EP5の 第 一 の 晩 はどのようにして 行 われたの?※この 事 件 は 一 見 、 単 なる 殺 人 の 偽 装 に 思 えますが、 問 題 があります。 以 下 の2つの 内 容 です。中 からは、 若 者 らしい 元 気 のいいいびきが 聞 こえてきた。 子 どもたちは4 人 いる。 真 里 亞 もいる。…すやすやと 眠 っていた。(EP2)「はい。 私 の 耳 は 完 璧 です。 戦 人 さんが 入 室 後 、 直 ちに 私 は 部 屋 の 壁 に 耳 を 付 け、 何 か 異 常 が 起 こらないか、 監 視 していました」(ヱリカ)(EP5)「……あんた、 戦 人 が 悲 鳴 をあげる 朝 まで、 何 も 起 こらなかったと 証 明 できると 言 ったわね…。……まさか、あんた…」(ベルン)「( 私 は) 一 晩 中 、( 戦 人 さんの) 寝 息 を 聞 いていましたが 何 か? …… 朝 まで 一 睡 もせずに、 壁 に 耳 を 付 け、 異 常 が 起 こらないか 監 視 をしておりました…!」(ヱリカ)「ヱリカの 記 憶 力 は 写 真 並 。そして 聴 力 は 録 音 機 並 。……ヱリカの 耳 を 誤 魔 化 して、 譲 治 たちを 殺 し、 首 に 傷 を 刻 むなど 不 可 能 なことよ」(ベルン)※この 殺 人 が 偽 装 で 朝 の 時 点 では 誰 も 死 んでいなかったとしたら、ヱリカは 戦 人 以 外 のみんなのいびきを 聞 いているはずなのです。ヱリカは 戦 人 以 外 の 全 員 が 死 んでいると考 えていましたから、そのことを 不 審 には 思 わなかったでしょうが、 実 際 は 死 んでいなかったわけですから、これはおかしなことです。しかし、その 答 えは 以 下 のようにヱリカが 自 ら 語 っています。「すでにお 話 していますが、 私 は24 時 にラウンジに 下 り、そこで 南 條 先 生 と 意 気 投 合 し、 午 前 1 時 まで 書 庫 でミステリー 談 義 に 耽 っておりました。……お 恥 ずかしながら、すっかり 熱 中 してしまっていたため、その 間 、 廊 下 を 誰 かが 通 り 抜 けても、 私 は 気 付 けませんでした。…… 探 偵 にあるまじき、 痛 恨 のミスです」(ヱリカ)(EP5)※ 本 当 に 痛 恨 のミスです。つまりこのタイミングで 戦 人 以 外 のみんなはぞろぞろと 連 れ 立 って 出 て 行 ってしまったのです。その 後 、 九 羽 鳥 庵 あたりで 殺 されたと 考 えられます。また、ヱリカと 同 じく 一 晩 中 息 を 凝 らして 起 きていたという 考 え 方 もできます。 前 者 にせよ、 後 者 にせよ、 普 通 の 人 間 には 絶 対 ありえない 行 為 です。ラムダの 駒 だからこそ、このような 行 動 をとるわけです。■EP5のベアトはどういう 存 在 なの?※ 考 えられる 可 能 性 は2つです。1つはラムダの 駒 、もう1つは 自 由 意 思 を 持 った 駒 です。 夏 妃 が 生 み 出 した 幻 想 だと 考 える 人 もいるでしょうが、それは 以 下 の 場 面 で 否 定されます。「………これほどまでに 反 魔 法 の 毒 素 が 満 ちては、 来 年 の 親 族 会 議 でも、ゴールドスミス 卿 の 魔 法 を 維 持 するのは 難 しいでしょう」(ロノウェ)(EP5)58


「だ、…… 誰 ですか、あなたはっ」( 夏 妃 )「あぁ、 驚 かずとも 良 い。 妾 の 家 具 頭 を 勤 める 男 だ」(ベアト)「 初 めまして、 夏 妃 奥 様 。ロノウェと 申 します。どうぞお 見 知 りおきを……」(ロノウェ)※ 夏 妃 はロノウェの 存 在 に 驚 いていますし、そもそもロノウェを 知 りもしない 夏 妃 がロノウェをゲーム 盤 に 呼 べるわけがないのです。ゲーム 盤 以 前 の 場 面 に 出 てきたベアトは、 確 かに 夏 妃 が 生 み 出 した 幻 想 です。しかし、ゲーム 盤 にはベアトという 駒 が 存 在 するため、 夏 妃 の 幻 想 とゲーム 盤 のベアトが 融 合 したのか、もしくは 入 れ 替 わったと 考えられます。こんな 時 、……せめて 金 蔵 がやさしい 言 葉 を 掛 けてやればいいのに。ベアトはその 姿 を 探 すが、 先 ほどから 書 斎 に 金 蔵 の 姿 はなかった…。 夏 妃 も、あるいはそれに 気 付 いているのだろうか…。(EP5)※それは 金 蔵 も 同 じくです。 夏 妃 が 生 み 出 した 幻 想 なら、 夏 妃 が 求 める 時 にいない 訳 がないのです。「……お 噂 には 聞 いておりマシタ。…… 残 虐 で 知 られた 無 限 の 魔 女 、ベアトリーチェも、こうなっては 寂 しいものデス」(ドラ)(EP5)「こいつはもう、ゲームには 参 加 してねぇよ。……ゲーム 盤 のこいつを 操 ってるのは、ラムダデルタだ」( 戦 人 )「 存 じておりマス。……ですが、 本 来 のこの 世 界 の 主 デス。そしてあなたは、その 主 に 招 かれた、 正 当 な 客 人 デス。ですからこうして、ご 挨 拶 に 参 じマシタ」(ドラ)ゲーム 盤 の 上 では、 俺 もベアトもドラノールに 会 っている。しかしそれは、あの 魔 女 たちの、ゲームの 駒 としてだ。 俺 とベアト 自 身 にじゃない。「だからわざわざ、ここまで 戦 人 くんとベアトに 挨 拶 に 来 てくれたのですか…? … 相 変 わらず、 律 儀 な 子 ですね」(ワルギ)「 私 の 流 儀 デス。……… 初 めまして、ミスター・ 戦 人 。ドラノール・A・ノックスと 申 しマス。… 敵 対 する 役 ではありますが、よろしくお 願 いいたしマス」(ドラ)※ 上 記 場 面 の 戦 人 とドラノールの 発 言 が 事 実 であるなら、ベアトはラムダの 駒 ということになります。しかし、EP5 のベアトはひたすら 良 い 子 です。とてもラムダの 駒 とは思 えません。ですから 僕 は、EP5 のベアトは 自 由 意 思 を 持 ち、 自 らの 意 志 で 夏 妃 に 尽 くしているのだと 思 います。ラムダはもちろんベアトの 駒 を 自 分 で 動 かすことは 出 来 ますが、あえて 自 由 に 振 舞 わせているのだと 思 います。むしろ 問 題 なのは 夏 妃 で、ラムダによってベルンを 真 相 から 遠 ざけるためのスケープゴートにされたのはわかるのですが、それが 自 由 意 思 を 持 ってのことなのか、それともラムダの 駒 としてなのか、ベアト 以 上 にわかりません。ただ、こちらもおそらくベアトと 同 じで、 泳 がされているのだと 思 います。 以 下 の 発 言 はその 証 拠 ではないでしょうか?「……… 夏 妃 がキングで、ベアトがクイーンってとこかしら。くすくす。 夏 妃 を 庇 って 群 がる 魔 女 と 家 具 たちは、チェスの 駒 というよりは、」(ベルン)(EP5)「ボーリングのピンって 感 じィ?! きゃっははははははははははは!! 夏 妃 にベアト。 金 蔵 にガラクタ 家 具 の 幻 想 たち! 私 たちを 楽 しませてみせなさいよね?!」(ラムダ)「 黄 金 の 魔 女 、ベアトリーチェなんて、もう 出 番 はないのよ! あんたとその 家 具 たちは、 私 のゲームではほんのチョイ 役 、やられ 役 !! 気 持 ちよくすっ 飛 ばされて、 私とベルンの 玩 具 にされなさいよ!!」(ラムダ)(EP5)■EP7のお 茶 会 が 一 なる 真 実 なの?※ 限 りなく 真 実 に 近 いものだと 考 えられます。が、 同 時 に 真 実 ではないと 考 えられます。ゲームマスターは、ベルンカステルでなければ、クレルでもない。ならば、 誰 ……? 違 う。ゲームマスターは、………いないのだ。それが 意 味 することは、ただ 一 つ……。(EP7)※ゲームマスターのいないゲーム 盤 なのです。「 駒 ではあっても、ご 本 人 と 変 わりありマセン」(ドラ)(EP6)「プレイヤーがいなくても、 駒 は 勝 手 に 動 き、ゲームは 進 む。……そうだったわよね」( 縁 寿 )(EP8)※ゲームマスターの 制 御 なしに 駒 が 行 動 するということは、 本 人 がその 場 にいるのとまったく 同 じように 行 動 するということになります。つまり 現 実 の 再 現 なのです。ところが 現 実 の 完 全 な 再 現 ではないようなのです。俺 ( 戦 人 )、あの 頃 、ひょっとしたら 紗 音 ちゃんのこと、…… 好 きだったかもなー。 自 意 識 過 剰 で、 恋 に 恋 してたお 年 頃 だ。キザったらしい、 浮 ついた 言 葉 で 悪 ふざけをしていた、 甘 酸 っぱい 記 憶 が 蘇 る。 今 さら 気 付 くけど、…… 当 時 の 俺 と 紗 音 ちゃんのあれってやっぱ、 俺 の 初 恋 だったんだろうなー。ま、 再 会 するまで、ケロリと 忘 れていた 俺には、 妬 く 資 格 なんてありゃしねぇな。(EP7)「 親 父 殿 は 今 も 時 折 、 台 湾 を 懐 かしんでビンロウを 噛 んでいるよ」( 蔵 臼 )(EP7)※ 戦 人 は 紗 音 との 約 束 を 忘 れていますし、 金 蔵 はビンロウを 止 めていません。つまり、 駒 にヤス 補 正 がかかっているのです。ですからあくまでベアトが 作 ったゲーム 盤 での、ベアトの 駒 による、ゲームマスター 不 在 のゲームということになります。■EP8で 縁 寿 は 何 故 、 入 館 証 を2 個 持 っていたの?※これは 以 下 のインタビューで 竜 騎 士 07さんが 少 しヒントを 出 しています。縁 寿 が 持 っていた1 個 はともかくとして、もう1 個 はいつの 間 に 紛 れ 込 んでいたのかは 謎 ですね。 答 えを 言 っちゃうと 簡 単 なんだけど。( 中 略 ) 大 して 面 白 くない 答 えなので伏 せておきます。 単 純 なので 考 えてみてください( 笑 )。( 真 相 8)「じゃあね。 私 は 今 はベルンカステル 卿 の 駒 。これで 失 礼 するわ」(エヴァ)(EP8)「 同 志 エヴァ、 後 ほど」(ヱリカ)エヴァが 手 の 平 を 広 げると、そこに、 青 く 光 る 尖 った 小 さなカケラが 現 れる。それが 爆 ぜると、 鋭 く 眩 しい 光 に 包 まれて、エヴァの 姿 は 消 え 去 る。その 光 は、さっき 礼 拝 堂から 漏 れ 出 したものと 同 じだった。……ゲーム 盤 の 外 へは、 駒 は 出 られない。しかし、 航 海 者 の 魔 女 だけは、それが 出 来 る。 恐 らく、ベルンカステルが 与 えた、それを 可 能にする 魔 法 に 違 いない。ヱリカも 手 の 平 を 開 くと、そこに 同 じカケラが 現 れる。※ 以 上 の 内 容 でまず、エヴァがベルンに 従 っていることがわかります。「 図 書 の 都 は 元 老 院 の 管 理 下 にある 聖 域 よ? 神 聖 な 結 界 が 張 られている。 元 老 院 の 魔 女 以 外 は 踏 み 入 ることさえ 出 来 ない」(ラムダ)(EP8)「……パーティーの 招 待 客 には、 元 老 院 に 席 を 持 たぬ 者 もいるのでは?」(ベアト)「えぇ、いるわ。そういう 連 中 には、 特 別 に 聖 域 に 踏 み 入 ることを 許 可 する“ 招 待 状 ”が 与 えられてるみたい。ところがこの 招 待 状 、 遅 刻 厳 禁 で、パーティー 開 始 時 刻 までに 入 場 受 付 をしてないと 自 動 的 に 効 果 を 失 う 優 れモノ! そしてお 気 の 毒 なことに、ついさっき、パーティーは 始 まっちゃったわ」(ラムダ)「つまり、 遅 刻 した 来 客 の 誰 かから 招 待 状 を 奪 うという 手 は、もう 手 遅 れということか」( 戦 人 )※ 以 上 の 内 容 で、 既 に 入 館 している 者 から 入 手 するしか 方 法 がないことがわかります。「あら、エヴァ。ちょうど 良 いところへ」(ベルン)(EP8)「お 呼 びでしょうか、 我 が 主 」(エヴァ)「その 挽 き 肉 のゴミを 捨 てておいてちょうだい。 私 はこれを 戻 してくるわ」(ベルン)ベルンカステルの 手 には、 縁 寿 が 選 択 を 終 えて 魔 法 を 失 った 鍵 と、 再 び 施 錠 された 一 なる 真 実 の 書 があった。「 畏 まりました、 我 が 主 」(エヴァ)ベルンカステルは、もう 一 度 眼 下 を 見 やってから、その 姿 を 消 す。それを 見 送 ってから、エヴァは 使 い 魔 の 猫 たちを 呼 び 出 し、 片 付 けを 命 じるのだった。 黒 猫 たちは、 縁 寿の 肉 塊 とばらばらの 手 足 を 集 め、ブリキのバケツに 放 り 込 む。 黒 猫 たちが、 死 骸 を 乱 暴 に 詰 め 込 んだバケツを、 虚 無 の 海 に 放 り 込 む 頃 には、………… 縁 寿 はもう、 自 分 の 名前 さえも、 忘 れていた………。※ 縁 寿 の 死 体 の 処 理 をしたのはエヴァです。「 図 書 の 都 にか。しかし、 入 る 方 法 がない。あそこには 結 界 があるんだ」( 戦 人 )(EP8)59


「……あいつがこれをくれたの。これがあれば、 自 由 に 出 入 りできるって。……… 馬 鹿 なヤツね。 私 を 捨 てる 時 、 回 収 を 忘 れたんだわ」( 縁 寿 )縁 寿 がポケットを 探 ると、そこから 鈴 の 音 が 聞 こえる。それは、 青 リボンの 結 ばれた 鈴 だった。「………それよ。 招 待 状 と 引 き 換 えに 渡 される、 図 書 の 都 の 臨 時 入 館 証 。それがあれば、とりあえず1 人 は、 図 書 の 都 に 乗 り 込 めるわね。…まぁ、カケラの 海 を 誰 かが 送 ってくれればの 話 だけど」(ラムダ)※ベルンに 従 っていた 縁 寿 は 既 に 入 館 証 を 貰 っていました。ということは 同 じ 立 場 であるエヴァも 入 館 証 を 貰 っていたわけです。「…………やぁね、 怖 い 目 をして。 私 は 味 方 でしょ、 忘 れたァ?」(エヴァ)(EP8)黒 猫 の 一 匹 がエヴァに 犬 掻 きならぬ 猫 掻 きで 近 付 き、にゃーにゃー 言 って、この 部 屋 には 誰 の 出 入 りも 許 されていない 旨 を 説 明 する。「ベルンカステル 卿 より、この 鍵 の 警 護 を 仰 せつかったわ。だからここは 私 に 任 せて、あんたたちはどっかに 行 っちゃってちょうだいな」(エヴァ)猫 たちは 怪 訝 そうに 顔 を 見 合 わてから、そのような 命 令 を 聞 いていないと、 鋭 い 目 つきで 睨 みつける。「ところでェ。…… 猫 って 体 、 柔 らかいのよねぇ?」(エヴァ)「「………??」」( 猫 たち)「じゃあ( 自 分 のヘソも) 噛 めるわよね」(エヴァ)エヴァが 黄 金 の 杖 を 振 り 上 げると、 天 と 地 に 真 っ 赤 な 放 射 状 のひびが 入 って、 広 大 な 部 屋 の 天 地 を 全 て 覆 う。 猫 たちの 反 応 は 電 気 的 に 早 い。それが 攻 撃 行 為 であることを 瞬時 に 理 解 する。エメラルドグリーンの 天 体 が、 全 てうねって 一 匹 の 巨 大 な 深 海 魚 の 姿 になり、エヴァを 飲 み 込 む 巨 大 な 口 を 開 けて 襲 い 掛 かる。しかし 同 時 に、 天 地 の 真 っ 赤な 放 射 状 の、…… 巨 大 な 蜘 蛛 の 巣 が 深 海 魚 を 上 下 から 挟 み 込 んで 叩 き 潰 し、ぐるぐるに 捻 り 上 げて、 振 り 回 し 振 り 回 し、………ボール 程 度 の 大 きさにまで 凝 縮 してしまう。その、ボール 状 に 圧 縮 された 何 かが、ブチンと 砕 け 散 ると、 後 には 何 も 残 らない。 全 て、 一 瞬 の 出 来 事 だった。「ヘソでも 噛 んで、 死 んじゃえヴァあぁあ?? あーっはっはっは!!!」(エヴァ)※エヴァは 縁 寿 の 為 にベルンを 裏 切 りました。縁 寿 は 慌 てて、ポケットを 探 る。すると、……さっき 鈴 を 出 したのとは 別 のポケットから、もう1つ、 青 いリボンの 鈴 が 出 てくる。(EP8)「……そんな……どうして2つ? 私 は1つしかもらわなかったわよ?!」( 縁 寿 )※ 以 上 の 情 報 から、エヴァが 縁 寿 の 死 体 を 処 理 するときに、 自 分 が 持 っていた 入 館 証 を 密 かに 渡 していたと 推 測 できます。■ 縁 寿 は 戦 人 の 出 生 の 秘 密 を 知 っていたの?「 縁 寿 は 何 も 事 情 を 知 らず、 俺 のことを 別 居 はしているけど、 本 当 の 兄 だと 信 じて 慕 ってくれた」( 戦 人 )(EP4)「これより、そなたに 妾 の 対 戦 相 手 たる 資 格 があるかどうか、それを 問 う」(ベアト)(EP4)「………ま、……まさか……」( 縁 寿 )グレーテルは 突 然 青 ざめる。…… 冷 静 沈 着 なヤツだと 思 ってただけに、その 表 情 は 俺 を 驚 かせた。「……それでは 戦 人 。 赤 で 復 唱 してもらおう」(ベアト)「お、 俺 に 復 唱 要 求 ってか?…しかし、 赤 き 真 実 って 俺 でも 出 来 るのか? どうやるんだ…?」( 戦 人 )「……………そ、そうだと 念 じれば 出 来 るわよ。 簡 単 よ」(ラムダ)「《 赤 : 俺 の 名 は 右 代 宮 戦 人 》。……お、……おお、こりゃ 面 白 ぇや」( 戦 人 )「やめてッ!! あんたの 狙 いは 読 めてるわ…!! でもそれは 止 めて! 彼 は……!!」( 縁 寿 )「ベアトリーチェに 復 唱 要 求 。“ 右 代 宮 戦 人 は 右 代 宮 金 蔵 の 孫 ではない”。 復 唱 拒 否 ね。ベアトが 宣 言 した2つの 赤 き 真 実 、“《 赤 : 戦 人 は 明 日 夢 の 息 子 ではない》”、そして“《 赤 :金 蔵 の 孫 である 戦 人 にしか 対 戦 相 手 の 資 格 がない》”。これに 矛 盾 せずに 戦 人 に 資 格 を 認 められるのは、 以 下 の 仮 説 よ。これが 私 の 青 き 真 実 、 聞 きなさい…! 《 青 :ベアトの 対 戦 相 手 の 資 格 は、“ 金 蔵 の 孫 である 右 代 宮 戦 人 ”であって、“ 明 日 夢 の 息 子 ”であるか 否 かは 問 題 ではない。 即 ち、あなたは 明 日 夢 の 息 子 でなくても、 金 蔵 の 孫 であることは 出 来 る。 留 弗 夫 の 息 子 でさえあるならば!》」( 縁 寿 )(EP4)※ 以 上 の 内 容 から、 縁 寿 は 戦 人 が 自 分 の 完 全 な 兄 ( 父 が 留 弗 夫 、 母 が 霧 江 )だと 知 っていたようです。 事 件 後 、ワイドショーなどの 取 材 に 留 弗 夫 が 丸 め 込 んだ 病 院 の 関 係 者 が事 情 を 漏 らしたのでしょう。はじめのうちは 留 弗 夫 が 縁 寿 にだけは 真 相 を 明 かしていたのかもと 考 えましたが、 戦 人 が 兄 であることを 信 じていた 縁 寿 には 話 す 必 要 のないことですし、 縁 寿 は 当 時 のことを 以 下 のように 語 っています。6 歳 の 私 には、 両 親 はとても 仲 がよくて 何 の 問 題 もないように 見 えた。……そして、 同 じ 家 族 のはずのお 兄 ちゃんが、どうして 別 居 していて、たまにしか 帰 って 来 てくれないのか、 不 思 議 には 思 っても、そういうものだと 納 得 していた。(EP6)「 明 日 夢 のことは、 知 らなかったのか」(フェザ)「……お 兄 ちゃんが、 誰 もいない 時 に 話 してくれたような 気 がするけど、 小 学 校 前 の 私 に、それが 理 解 できるはずがない。……だって、 写 真 すらない 相 手 よ。……お 母 さんは、 明 日 夢 さんの 映 った 写 真 の 全 てを、お 兄 ちゃんに 送 って、 家 の 中 には 一 切 残 さなかったそうだから」( 縁 寿 )※ 以 下 の 台 詞 は 戦 人 を 気 遣 って、あえて 恍 けたと 考 えられます。「どういう 事 情 で、 明 日 夢 お 母 さんがあなた( 戦 人 )の 生 みのお 母 さんじゃないかはわからない」( 縁 寿 )(EP4)■ 黄 金 の 真 実 とはどのようなもの?「…………………。……えぇ。…… 黄 金 の 真 実 、 有 効 よ。 黄 金 の 真 実 は、……この 世 界 の 領 主 、……いえ、……ゲームマスターにしか 使 えないッ!!」(ラムダ)(EP5)「な、…… 何 ですって…………、」(ヱリカ)「…… 黄 金 の 真 実 。 赤 き 真 実 とは 異 なる 方 法 によって 紡 がれる 神 なる 真 実 。……その 力 は 赤 き 真 実 と 同 等 デス。…… 時 に 劣 るでショウ。しかし、 時 に 勝 ル!!」(ドラ)「 続 けましょう。 第 2のゲーム、 第 一 の 晩 。 腹 を 割 かれし6 人 は 密 室 礼 拝 堂 に」(クレル)(EP7)「 幻 は 幻 に。…… 黄 金 の 真 実 が、 幻 の 錠 を 閉 ざす」(ウィル)「 第 4のゲーム、 第 一 の 晩 。 食 堂 にて 吹 き 荒 れる 虐 殺 の 嵐 」(クレル)(EP7)「 幻 は 幻 に。…… 黄 金 の 真 実 が 紡 ぎ 出 す 物 語 は、 幻 に 帰 る」(ウィル)「 第 4のゲーム、 第 二 の 晩 。 二 人 の 若 者 は 試 練 に 挑 み、 共 に 果 てる」(クレル)「 幻 は 幻 に。…… 黄 金 の 真 実 が 紡 ぎ 出 す 物 語 は、 幻 に 帰 る」(ウィル)「こ、……こんな……。こんなエンドレスナインがあるの…?! あ、 赤 き 真 実 さえ、…… 通 じないなんてッ!! 何 なのよ、 黄 金 の 真 実 って!! 赤 き 真 実 に 打 ち 勝 てる 黄金 の 真 実 って、 一 体 何 なのよ……!!!」(ベルン)(EP8)「 信 じる 心 よ。……それは“ 私 たち”の 総 意 。…… 私 たちが 認 めて 共 有 した 真 実 の 前 に、お 前 の 赤 き 真 実 など、 何 も 貫 けたりしない」( 縁 寿 )( 聞 き 手 ) 新 しく 金 文 字 が 登 場 しましたね。( 真 相 5)なぜでしょうね。ぜひ 考 えてもらいたいです。「 金 文 字 とは 何 か」「どういう 条 件 で 使 えるのか」「 赤 文 字 よりも 強 いのか」……これらも、「 答 え」を 理 解 している 人 が 見 れば分 かります。( 聞 き 手 ) 金 文 字 は、ゲームマスターのみ 使 えるようですが…厳 密 に 言 うとゲームの 答 えを 知 ったものにしか 使 えません。 答 えを 知 っていれば、ゲームマスターでなくても 使 えます。( 聞 き 手 )エリカが 使 えないのは?真 相 を 知 らないからです。ラムダデルタはゲームマスターを 退 いていますが 真 相 を 知 っているので、 金 文 字 宣 言 ができるのでしょう。ベアトが 金 文 字 宣 言 をしなかったのは、空 気 を 読 めるいい 子 だったからで( 笑 )。 戦 人 も 最 後 の 最 後 でドラノールに「 赤 で 否 定 を 禁 じます」と 言 われたので、 金 文 字 を 使 っただけです。60


( 聞 き 手 ) 今 回 「 黄 金 の 真 実 」を 戦 人 が 使 わず、ベアトリーチェ( 姉 )が 使 った 理 由 は?( 真 相 6)私 としては「 誰 が 使 った」ではなく、「どういう 条 件 下 で、 何 を 意 味 して 使 ったのか」ということを 探 ってほしいですね。「 黄 金 の 真 実 」と「 赤 き 真 実 」の 成 立 条 件 の 違 いを考 えて 欲 しいです。( 略 )ルールを 理 解 していれば「 黄 金 の 真 実 」は 誰 にでも 使 えるもので、 究 極 的 にはゲームの「 駒 」でも 使 えるものなのです。だからベアトリーチェ( 姉 )も 使 えたのでしょう。※あまり 数 がなかったので“ 黄 金 の 真 実 ”に 関 わる 内 容 を 全 て 抜 き 出 してみました。 多 少 バラツキがあるものの、これらを 束 ねると“ 真 実 ではないことが、 信 じる 心 によって 真 実 に 昇 華 されたもの”と 読 み 取 ることができると 思 います。 戦 人 が 金 蔵 の 死 体 に 使 ったものも 含 めると“ 信 じることによって 生 じる、 赤 字 以 外 による 真 実 ”という 抽 象的 なものになってしまうのですが…。■ 家 具 とはどのようなもの?「 譲 治 さまの 描 く 未 来 の 夢 を、 姉 さんは 叶 えられない。 今 日 までよく 騙 し 通 してこれたものだと 思 うよ。そうやって、いつまで 譲 治 さまを 騙 し 通 せるつもりなの? 自 分 が家 具 であることを、 未 だに 話 せない 姉 さんが」( 嘉 音 )(EP6)「…… 家 具 とかニンゲンとか、…そんなの 関 係 ない。…… 譲 治 さまは、 私 の 全 てを 受 け 止 めてくれると 思 うの。…… 私 ね?…… 求 婚 、… 受 けてみようと 思 うの」( 紗 音 )紗 音 は 天 井 を 見 上 げながら、…… 自 分 と 譲 治 で 描 ける 新 しい 未 来 の 想 像 を 語 った。その 表 情 は、 未 来 への 不 安 はありながらも。…… 愛 に 生 きることを 覚 えた 喜 びも 浮 かんでいた。「…… 私 の 生 きたいように 生 きてみたい。……もう、 家 具 だからとか、ニンゲンだからとか。…そういうのに 怯 えるのは、 止 めようと 思 うの」( 紗 音 )「 紗 音 も 嘉 音 も、……いえ、あえて“ 家 具 ”と 呼 ぶわ。…… 家 具 たちは 最 初 から 一 貫 して、ニンゲンとは 恋 愛 が 出 来 ないと 主 張 してきた。そこに、 黄 金 蝶 のブローチという魔 法 が 介 在 し、その 魔 法 という 奇 跡 の 結 果 、 譲 治 お 兄 ちゃんとの 恋 愛 が 成 立 した。そう 主 張 してるわ。“ 再 び 魔 法 の 奇 跡 がなければ、 結 婚 は 出 来 ない”。……それが 紗 音 と 嘉音 の、 二 人 の 共 通 認 識 になっている。……これがどうしても 理 解 できないの。つまり、こういうこと。 紗 音 は 譲 治 の 婚 約 を 受 けているけど。…… 魔 法 の 奇 跡 がなければ 成 就されない 障 害 が 残 っていると 知 っていることになる。そしてその 障 害 は、 二 人 の 努 力 では 取 り 除 けないとも。だから、 魔 法 という 奇 跡 が 必 要 。そして、その 疑 問 は、 嘉 音 にも 向 けられるわ。…… 朱 志 香 おねえちゃんとの 恋 路 は 始 まったばかりだけど、 二 人 の 気 持 ちはまっすぐ。 何 の 障 害 もないわ。 黄 金 蝶 のブローチの 力 なんか 関 係 なく、もう 恋仲 になれてる。…… 何 年 もの 交 際 を 経 て、やがては 結 婚 に 行 き 着 いても、 何 もおかしくない。こちらも 障 害 は 何 も 存 在 しないのよ」( 縁 寿 )(EP6)「どうして 家 具 はッ、 恋 をしちゃいけないんですかッ!!!」( 雛 ベアト)(EP6)「 魂 が、 一 人 に 満 たないからッ!」」(ゼパル&フルフル)「 紗 音 も 嘉 音 も、 駒 である 君 ( 雛 ベアト)ももちろん!!」(ゼパル)「あなたたちはみんな 家 具 ! 魂 が 一 人 分 に 満 たないから 人 間 以 下 ッ!!」(フルフル)「どうして…!! どうしてあなたたちは 私 を 助 けたんですか?! どうして 死 なせてくれなかったんですか?! 私 はあの 時 の 大 怪 我 で、……こんな 体 で 生 きさせられている!! こんな 体 で、 生 きていたくなんかなかった!! こんな、 恋 をすることも 出 来 ない 体 で……!! そんなの、そんなの、 生 きる 価 値 がないんじゃないですか?! そんなのニンゲンじゃない…!! 家 具 じゃないですか!! そう、 私 は、 家 具 ……!! 家 具 なんだ…!! どうして、……… 私 をあの 時 に 死 なせてくれなかったんですかッ!! ぅわぁああああぁあああああぁああぁああ……!!!」(???)(EP7)※ 以 上 のことから、 紗 音 は 生 殖 能 力 を 喪 失 した 自 分 のことを 家 具 と 呼 び、 蔑 んでいたようです。また、 嘉 音 は 紗 音 の 生 み 出 した 人 格 であるため、 肉 体 を 持 ちません。このように 魂 が 一 人 分 に 満 たない 存 在 も 家 具 と 呼 んでいるようです。■ 片 翼 の 鷲 の 使 用 人 とはどのようなもの?福 音 の 家 から 送 られる“ 優 秀 な” 使 用 人 は、もはや 血 縁 すら 信 用 できない 金 蔵 にとっては 唯 一 信 頼 できる 存 在 であった。そのためある 時 、 金 蔵 は 彼 らを 直 属 の 使 用 人 として家 紋 をまとうことを 許 し、 自 分 の 身 近 に 仕 えさせたのである…。(EP1)源 次 、 紗 音 、 嘉 音 の3 人 は、 右 代 宮 家 の 紋 章 である「 片 翼 の 鷲 」を 身 に 着 けることを 許 された、 金 蔵 直 属 の 使 用 人 だ。もちろん、 右 代 宮 家 に 仕 えているため、 誰 の 命 令 にも従 うが、 唯 一 の 上 司 は 金 蔵 だけだ。 人 事 権 も 金 蔵 のみが 握 っているため、たとえ 蔵 臼 と 言 えど、 彼 らを 勝 手 に 解 雇 することはできない。その 為 、 蔵 臼 たちには 時 に、 金 蔵 の手 先 と 見 られて 疎 まれることも 少 なくなかった。 実 際 、 金 蔵 は 彼 ら 以 外 の 人 物 を 書 斎 に 入 れることは 滅 多 にない。(EP1)福 音 の 家 出 身 の 使 用 人 は、 奉 仕 活 動 中 は「 音 」の 文 字 を 持 つ 名 前 を 名 乗 ることになる。だから「 紗 音 」という 名 前 も 本 名 ではない。それは「 嘉 音 」も 同 様 だ。そして、 今 日は 紗 音 と 嘉 音 が 屋 敷 に 詰 めているが、 他 にも 眞 音 (マノン)や 恋 音 (レノン)といった、 音 の 文 字 を 持 つ 使 用 人 が 数 人 いて、ローテーションを 変 わることもある。(EP1)当 主 様 は、 社 会 活 動 と 職 業 訓 練 の 一 環 として、 福 音 の 家 の 子 たちの 中 から 成 績 優 秀 な 子 を 使 用 人 として 受 け 入 れていました。…… 当 家 にいる 紗 音 や 嘉 音 , 瑠 音 や 眞 音 、 礼 音などの“ 音 ”の 名 を 持 つ 使 用 人 は 全 て、そこからやって 来 た 子 たちでした。(EP5)※ 瑠 音 、 眞 音 、 礼 音 も 片 翼 の 鷲 の 使 用 人 であると 考 えられます。ちなみに“ 恋 音 ”は“ 礼 音 ”の 間 違 いと 思 われます。 何 故 なら 寮 は 以 下 のようになっているためです。お 勤 めのない 日 は 新 島 の 寮 に 帰 り、 自 分 に 与 えられた 部 屋 で 自 由 に 過 ごすことが 出 来 る。 一 応 、 大 人 の 寮 母 がいて 食 事 や 消 灯 の 時 間 を 厳 しく 管 理 していたが、 福 音 の 家 でそういう 生 活 に 離 れているので、 苦 にはならなかった。 部 屋 は、 少 し 大 きめのものでそれぞれが3 人 部 屋 になっていた。しかし、 人 数 の 関 係 か 幸 運 なのか、 我 (ヤス)は3 人 部屋 にはならなかった。(EP7)※2つある 部 屋 のうち、1 部 屋 はヤスが 一 人 で 使 っているため、 残 りの 枠 は3 人 だけなのです。ちなみにこの“ 片 翼 の 鷲 の 使 用 人 ”というのは、ベアトリーチェの 血 を 引 き、本 来 ならば 誰 よりも“ 片 翼 の 鷲 ”に 相 応 しい 紗 音 に“ 片 翼 の 鷲 ”を 与 えたくて、 金 蔵 が 思 いついた 言 い 訳 なのだと 思 います。■ 嘉 音 の“ 汚 らわしい 仕 事 ”とはどんな 仕 事 ?「…… 嘉 音 くんにも 自 分 のお 仕 事 があるんでしょ?」( 紗 音 )(EP2)「…………… 汚 らわしい 仕 事 だよ。 僕 の 魂 なんて、とっくに 穢 れてる」( 嘉 音 )「…… 気 を 落 とさないで。 姉 さんは 何 も 悪 くない」( 嘉 音 )(EP1)「…………… 見 てたのね」( 紗 音 )「そういうお 役 目 だから」( 嘉 音 )… 自 分 ( 嘉 音 )は、 見 聞 きしたことを 全 てお 館 様 に 報 告 する 義 務 を 持 つ。…だからさっきのハメを 外 した 朱 志 香 の 様 子 も 報 告 しなければならない。(EP2)※ 見 聞 きしたことを 金 蔵 に 報 告 するスパイのような 仕 事 をしているようです。ただ、 嘉 音 が 働 き 始 めたのが3 年 前 、 金 蔵 が 死 んだのが2 年 前 ですから、 本 来 は 紗 音 の 仕 事 だったのかもしれません。「 嘉 音 君 は 優 しいからこのイヤな 仕 事 を 引 き 受 けてくれるだろう」ということで、 嘉 音 の 人 格 を 作 ったときに、この 仕 事 も 嘉 音 に 回 してしまった 可 能性 があります。ちなみにこの 仕 事 、 金 蔵 はスパイをさせるつもりで 与 えていたのではなかったと 思 います。 紗 音 にせよ 嘉 音 にせよ、 金 蔵 にとっては“ベアトリーチェの 忘 れ形 見 ”です。その 存 在 を 絶 えず 気 にかけていたでしょうが、 普 段 の 生 活 の 中 ではなかなか 話 すきっかけがありません。そこで、 会 話 する 機 会 を 作 るために“ 見 聞 きしたことを 報 告 する 仕 事 ”を 与 えたのでしょう。しかし、そんな 事 情 を 知 らない 紗 音 ( 嘉 音 )は「 自 分 はスパイをさせられている」と 思 い、その 仕 事 を 嫌 っていたのです。■ 嘉 音 は 現 実 の 六 軒 島 にもいたの?※ 嘉 音 が 現 実 の 六 軒 島 にもいたとすると、 紗 音 が 一 人 二 役 で 活 躍 していたことになります。「そんなの 変 装 したってバレバレだろ!」というツッコミを 華 麗 にスルーすれば、実 はこれが 可 能 なのです。その 証 拠 を 以 下 に 列 挙 します。「… 普 段 はこの 島 には、 何 人 いるんですか?!」( 戦 人 )(EP1)「し、… 使 用 人 のシフトにもよるでしょうが、お 父 様 、 夫 に 私 に 朱 志 香 。そして 使 用 人 が2~3 人 。… 昨 日 今 日 は5 人 いてもらってますが、 普 段 はそこまでいません」( 夏妃 )61


※ 六 軒 島 の 使 用 人 は、 源 次 、 熊 沢 、 郷 田 、 紗 音 、 嘉 音 、 瑠 音 、 眞 音 、 礼 音 、 以 上 8 人 です。このうち2~3 人 がシフトで 働 くわけです。しかも 料 理 をするのは 熊 沢 と 郷 田 だけっぽいので、この2 人 はどちらかが 必 ず 島 にいなくてはなりません。 源 次 も 使 用 人 の 頭 ですから、 勤 務 の 回 数 は 多 そうです。つまり 紗 音 と 嘉 音 が 同 時 にシフトに 入 る 必 要はあまりなさそうなのです。紗 音 のシフトが 週 に3 回 程 度 として(EP6)※ 紗 音 は 週 に3 日 くらいしか 六 軒 島 に 来 ていなかったようです。 嘉 音 としても3 日 来 ていたとしても、 週 に1 日 は 休 めます。1986 年 当 時 は、 週 休 一 日 の 時 代 ですから 特に 不 都 合 はないでしょう。「その 後 は、 六 軒 島 へ 行 く 度 に 会 っていたということか」(ウィル)(EP7)「うん。 私 たちは 大 の 仲 良 しになった。ベアトと 話 せば 話 すほどに、 彼 女 は 本 当 にすごい 魔 女 だと 思 い 知 ったよ。 彼 女 は 会 う 度 にいつも 素 敵 な 魔 法 を 見 せてくれた。そして、私 とは 異 なる 魔 法 大 系 を 聞 かせてくれて、 二 人 で 魔 法 の 深 遠 を 語 り 合 ったよ。 私 は、 早 く 彼 女 の 高 みに 上 りたいと 思 った。ベアトのような 魔 女 の 域 に 達 したいと 願 った」( 真里 亞 )※ 一 週 間 のうち3 日 しか 六 軒 島 にいない 紗 音 に、 六 軒 島 に 行 く 度 に 会 えたというのはおかしな 話 です。しかし 嘉 音 も 入 れれば、 週 に6 日 ですから 不 自 然 ではないでしょう。( 熊 沢 と 嘉 音 に)「 本 当 にご 苦 労 でした。お 前 たちと 源 次 と 紗 音 には、 約 束 どおり、 過 去 一 ヵ 月 分 の 休 暇 の 買 い 上 げと、 新 たに5 日 の 有 給 を 与 えます。 秘 密 の 手 当 てですよ。取 得 に 際 しては 源 次 と 相 談 し、 他 の 使 用 人 たちに 気 取 られないように」( 夏 妃 )(EP5)※ 以 上 の 内 容 からわかるように、 普 段 のシフトは 源 次 が 決 めていたようです。 源 次 が 配 慮 すれば 紗 音 と 嘉 音 のシフトが 重 ならないようにすることは 容 易 でしょう。「…… 嘉 音 は 幻 想 ……。 孤 独 な 朱 志 香 が 生 み 出 した、 幻 想 の 存 在 ……」( 山 羊 )(EP8)「 学 園 祭 でッ!! 私 は 嘉 音 くんをみんなに 紹 介 したぜ!! サクにッ、ヒナにッ、 他 のみんなに!! 友 達 みんなが 証 明 するッ!!」( 朱 志 香 )※ 学 園 祭 の 場 面 はゲーム 盤 外 であるため、 現 実 と 考 えられます。その 場 面 に 登 場 できるということは、 嘉 音 が 実 在 した 証 拠 です。もっとも、 紗 音 が 変 装 していたという 可 能性 もありえるのですが…。そして 何 よりの 証 拠 が 以 下 の 内 容 です。「この 奇 妙 な 日 記 風 手 記 には、 台 風 で 島 に 釘 付 けにされた 右 代 宮 家 の 親 族 たちが、 魔 女 復 活 の 儀 式 に 巻 き 込 まれ、 次 々に 不 可 解 な 方 法 で 殺 されていく 様 子 が 記 されていました。そして 最 後 に 黄 金 の 魔 女 ベアトリーチェが 蘇 り、 全 てを 黄 金 郷 に 飲 み 込 む。……まるで、それこそが 当 日 の 全 容 であるかのように 記 されていました。また、 当 時 の 島 の状 況 についても 非 常 に 詳 しく 描 写 されており、 右 代 宮 家 に 勤 務 したことがある 元 の 使 用 人 たちは、 間 違 いなく 内 部 に 詳 しい 人 間 が 書 いたに 違 いないと 証 言 しました」( 大月 )(EP4)しかし、 絵 羽 伯 母 さんを 除 く17 人 もの 人 命 が 失 われ、 莫 大 な 遺 産 と、あるいは10tもの 黄 金 さえもが 闇 で 動 いたのだ。(EP4)※ 元 の 使 用 人 に 瑠 音 、 眞 音 、 礼 音 は 当 然 含 まれたと 考 えられます。この3 人 がメッセージボトルを 読 んで、 現 実 には 存 在 しなかった 嘉 音 という 使 用 人 が 登 場 することを 知 ったらどうなったでしょう。 間 違 いなく 騒 ぎになったはずです。ところがそのような 説 明 は 一 切 ありませんでした。つまり3 人 にとってメッセージボトルに 嘉 音 が 登 場 するのは 当 然 のことなのです。それは 彼 女 たちが 六 軒 島 で 嘉 音 と 共 に 働 いていたからです。また“17 人 もの 人 命 が 失 われ”ということですから、 嘉 音 も 勘 定 されています。ただ、一 つ 疑 問 が 残 ります。 以 下 の 内 容 からもわかるとおり、 嘉 音 は 本 来 は 紗 音 の 心 の 中 の 存 在 のはずなのです。「 戦 人 以 外 の 者 と、 新 しい 宇 宙 を 生 み 出 すしかない。その 誰 かを、 妾 が 与 えよう。そなたの 心 を 傷 を 埋 め、 癒 してくれる 存 在 だ。……そやつは、そなたを 裏 切 らぬ。……そう、……そなたの 新 しい 姉 弟 だ。…………そなたに 弟 を 与 えよう。 福 音 の 家 で 仲 の 良 かった、 実 の 弟 のように 可 愛 がってきた 少 年 。……そういう 存 在 を、そなたに 与 えよう」( 白 ベアト)(EP7)弟 の 設 定 は、 福 音 の 家 で 仲 の 良 かった、 年 下 の 男 の 子 。 名 前 は、…………… 福 音 の 家 のルールに 従 い、 音 の 一 字 を 与 えよう。 彼 は、…… 寡 黙 で 無 口 な 男 の 子 。 右 代 宮 家 には、新 しい 使 用 人 としてやって 来 た。そして、 紗 音 とすぐに 打 ち 解 ける。 紗 音 を 姉 と 慕 う 義 理 堅 い 彼 は、いつも 紗 音 の 味 方 になってくれる……。 源 次 と 同 じように、 金 蔵 に 直 接仕 えることが 許 されている、 特 別 な 使 用 人 ということにしよう。※それがなぜ、 現 実 の 六 軒 島 にも 登 場 することになったのでしょう。おそらくこのようなことがあったのではないでしょうか? 朱 志 香 が 紗 音 がいる 使 用 人 室 の 扉 を 開 けると、 紗 音 は 着 替 えをしていて 上 半 身 が 裸 でした。 紗 音 の 生 物 学 的 な 性 別 は 男 なので、 紗 音 に 胸 はありません。 朱 志 香 はびっくりして 扉 を 閉 めてしまったのか、もしくは 紗 音が 朱 志 香 を 扉 の 外 に 締 め 出 したのか、とにかく 朱 志 香 は 紗 音 の 姿 を 見 れない 状 態 で 紗 音 と 話 をすることになります。 朱 志 香 にどういうことか 問 い 質 された 紗 音 はとっさに、自 分 は 紗 音 の 弟 の 嘉 音 で、たまたまこっそり 遊 びに 来 ていた、というような 言 い 訳 をしてしまいます。それを 聞 いた 朱 志 香 は 嘉 音 に 使 用 人 として 六 軒 島 で 働 くことを 勧 めます。 紗 音 は 以 上 のことを 源 次 に 相 談 し、 源 次 は 紗 音 を 嘉 音 としても 六 軒 島 で 働 かせることにします。なにせ 片 翼 の 鷲 の 使 用 人 の 人 事 権 は 金 蔵 が 握 っているという 建 前 の 為 、蔵 臼 たちは 文 句 を 付 けられないのです。あるいは 金 蔵 もそれを 承 知 していたのかもしれません。もっとも 実 際 には 以 下 のように 源 次 が 握 っているわけなのですが。「お 父 様 のお 決 めになることは 絶 対 ですから。……しかし、あの 子 (ヤス)についてだけは、 腑 に 落 ちませんでした」( 夏 妃 )(EP7)「 福 音 の 家 にも 問 い 合 わせたさ。そしたら 源 次 さんに 聞 いてくれという。 源 次 さんに 聞 いたら、お 館 様 に 聞 いてくれという」( 蔵 臼 )「お 館 様 に 聞 いたら、ベアトリーチェ~と 言 う!」(フルフル)※ 以 下 の 場 面 に 引 っ 掛 かりを 覚 える 人 もいるかもしれませんが、これはきちんとクリアできます。…… 朱 志 香 の 記 憶 。……へぇ。…お、 男 の 子 の 使 用 人 なんだ…。…… 君 、……いくつ…? それが、 彼 女 と 最 初 に 交 わした 言 葉 だった 気 がする。(EP6)※まず 朱 志 香 が 初 めて 会 ったときの 嘉 音 は 紗 音 です。 紗 音 が 自 分 に 胸 がないことを 誤 魔 化 すために「 自 分 は 嘉 音 だ」と 言 っただけなのですから。その 後 、 嘉 音 として 正 式 に六 軒 島 に 行 くことになった 紗 音 は、 嘉 音 の 人 格 で 六 軒 島 に 行 ったのです。ですから、 嘉 音 にとって 朱 志 香 とは 初 対 面 です。 一 方 、 朱 志 香 の 方 はどうかと 言 いますと、 男 だと知 っているはずなのに、こんなことを 言 うのは 不 自 然 ですが、 周 りに 人 がいたとしたらどうでしょう。 以 前 に 会 っていることは 秘 密 なわけですから、 恍 けるしかありません。あと、これは 文 章 ではないのですが、EP8で 十 八 と 縁 寿 が 六 軒 島 のことを 思 い 出 すシーンで、いずれも 嘉 音 のカットがあります。■ 偽 書 作 家 テストの 解 答 は?※KEIYAさんの 解 答 に 訂 正 や 補 足 があるもののみ 記 載 します。Episode1 Legend of the golden witch問 01 真 里 亞 の 薔 薇 に 込 められた 意 味 と、 消 失 の 理 由 は?※ 物 語 の 幕 開 けを 意 味 すると 考 えられます。この 場 面 よりあとがゲーム 盤 の 物 語 ということです。 逆 に 言 えばこの 出 来 事 は1986 年 の10 月 4 日 に 実 際 に 発 生 したことでもあると 思 われます。 消 失 した 理 由 はベアトが 言 及 したとおり。ベアトが 手 紙 を 渡 すために 真 里 亞 を 薔 薇 庭 園 に 留 まらせる 目 的 で 抜 いた、という 説 がありますが、EP2 で 以下 の 発 言 があります。“「ベアトリーチェがね、もうすぐ 来 るの。だから 待 ってるの」( 真 里 亞 )”EP2 は 真 里 亞 の 薔 薇 が 消 失 しなかった( 消 失 が 話 題 にならなかった)EP です。つまり 薔 薇 の 消 失 はむしろアクシデントであって、 元 々 真 里 亞 は 薔 薇 庭 園 でベアトと 待 ち 合 わせをしていたことがわかります。問 09 【 玄 関 ホール・ 夏 妃 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?犯 人 は 紗 音 だと 考 えられます。 紗 音 と 嘉 音 は 人 格 死 で、 人 格 としてはベアトなのかもしれません。ウィンチェスター 銃 で 射 殺 したのでしょう。“ 微 かに 香 る 硝 煙 の 臭 いは、夏 妃 伯 母 さんが 握 ったままのライフル 銃 の 銃 口 から。”ということですが、これは2つの 可 能 性 が 考 えられます。1つは 戦 人 による 誤 認 (ノックス 第 9 条 )です。その 場 にある 銃 が 夏 妃 のものだけであり、 辺 りに 硝 煙 の 臭 いが 漂 っていたなら、 両 者 を 結 び 付 けて 考 えることに 不 自 然 はありません。もう1つはベアトが 夏 妃 を 射 殺 した 後 、 夏 妃 の 銃を 取 り 上 げて 隠 し、 自 分 が 使 った 銃 を 持 たせた。KEIYAさんは“ウィンチェスター 銃 で 額 を 撃 てば、あんなに 小 さな 傷 で 済 むはずがない”とし、 銃 声 が 一 発 だったのは“ 二 つ 同 時 に 響 いた”から、と 考 えています。しかし『 我 らの 告 白 』でウィンチェスター 銃 の 威 力 について 以 下 のように 描 写 されています。“ 銃 声 は 軽 い。……ドラマや 映画 で 聞 くような、ドギューンなどという 音 ではない。せいぜい、シャンパンの 栓 を 抜 いたくらいの 音 だった。しかし、 血 の 塊 が 飛 び、そこにはぶくぶくと 血 の 溢 れ 出 す 痛 々しい 穴 が 穿 たれた。” 特 に 問 題 はなさそうです。むしろ 問 題 なのは“ 二 つ 同 時 に 響 いた”という 点 です。もし、これが 僅 かでもずれて 二 つの 銃 声 が 聞 こえてしまったらどうなるでしょう。たちどころに 魔 女 幻 想 は 崩 壊 します。 夏 妃 に 敗 れてしまっても、 同 じくです。 魔 女 幻 想 を 守 るためには 先 制 攻 撃 で 一 方 的 に 倒 す 必 要 があります。62


Episode2 Turn of the golden witch問 01 ゲーム 盤 上 に 登 場 したベアトリーチェの 正 体 は?ベアトの 扮 装 をした 紗 音 だと 考 えられます。“ 魔 女 はにやりと 笑 うと、 源 次 を 置 いてさっさと 歩 き 出 す。……その 足 取 りは、 屋 敷 の 中 を 充 分 に 知 った 家 人 のようだった。”これが 伏 線 です。問 02 楼 座 が 受 け 取 ったベアトリーチェの 封 筒 の 中 身 は?礼 拝 堂 に 親 族 を 招 く 内 容 だったと 考 えられます。 礼 拝 堂 での 親 族 の 反 応 から、 自 分 ( 紗 音 )が 碑 文 を 解 き、 黄 金 を 発 見 し、 家 督 を 継 いで 黄 金 の 魔 女 となったことを 認 めるなら、黄 金 と 家 督 を 譲 ると 書 かれていたのではないでしょうか。問 03 親 たち7 人 は 深 夜 の 礼 拝 堂 で 何 を 見 た?見 たもの 自 体 はKEIYAさんの 考 察 通 り、インゴッドでしょうが、やりとりは 幻 想 描 写 ではないと 考 えられます。問 04 【 礼 拝 堂 ・ハロウィンパーティーの6 人 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?KEIYAさんは“ 銃 で 六 人 の 腹 部 を 撃 ち 抜 いた。”と 考 察 していますが、 全 員 が 腹 部 を 撃 ち 抜 かれるまでおとなしくしているとは 考 えられません。ここは 六 人 を 油 断 させるために 一 緒 にハロウィンパーティの 準 備 をし、 終 わったところで「お 疲 れ 様 」ということで 乾 杯 し、 毒 でも 盛 ったと 考 えた 方 が 妥 当 です。 常 識 的 に 考 えて、 第 一 の 晩 の 時点 で 自 分 たちが 殺 されることなど 誰 も 予 測 できないはずですから、 警 戒 などしないでしょう。問 08 生 き 残 った 人 々は 最 終 的 にどうなった?爆 弾 で 爆 死 したと 考 えられます。KEIYAさんは“ 楼 座 が 真 里 亞 を 連 れて 逃 走 するのは、 源 次 から 爆 弾 の 存 在 を 教 えられたため”と 考 えていますが、『 我 らの 告 白 』で 以下 の 内 容 があります。“その 通 りだ。 爆 発 から 逃 れる 方 法 は 二 つしかない。 一 つは、 妾 しか 知 らない 方 法 によって、 時 限 装 置 を 解 除 すること。もう 一 つは、この 格 子 の 向 こうの 地 下 通 路 より 島 の 反 対 側 へ 行 き、 爆 発 を 逃 れることのみだ。…… 見 ての 通 り、この 格 子 の 施 錠 も 我 が 手 中 にある。いずれの 方 法 で 生 き 残 るにせよ、 妾 を 拒 むことなど 出来 んのだ」(ベアト)” 共 犯 者 である 楼 座 は 地 下 貴 賓 室 に 案 内 され、このことを 教 えられていたため“「この 島 のどこにも、 生 き 延 びることのできる 場 所 はないッ!!」”と 知っていたのです。Episode3 Banquet of the golden witch問 02 【 連 鎖 密 室 ・6 人 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?紗 音 は 死 んだフリでみんなをやり 過 ごした 後 、 自 らを 人 格 死 させ、 礼 拝 堂 へ 移 動 し、 嘉 音 として 死 んだフリをしたと 考 えられます。 自 分 以 外 の 被 害 者 は 芝 居 への 協 力 を 持 ちかけて、そのまま 殺 してしまったのではないでしょうか。問 03 【 薔 薇 庭 園 ・ 楼 座 & 真 里 亞 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?絵 羽 が 誤 って 楼 座 を 殺 してしまい、 泣 き 叫 ぶ 真 里 亞 もあわてて 絞 殺 してしまったと 考 えらますが、ちょっと 気 になる 描 写 があります。“「…お 願 いだから 静 かにして…。どうしたらあなたは 泣 き 止 むの? どうしたらあなたはママの 言 うことを 聞 いてくれるの?」( 楼 座 ) 「………」( 真 里 亞 ) ぴたりと。 真 里 亞 が 不 自 然 なくらいに 泣 き 止 んだ。……すると 振 り 返 り、ぽつりと 言 った。「………… 真 里 亞 の 薔 薇 を 見 たら、ちゃんと 明 日 まで 静 かにしてるよ」( 真 里 亞 )”もしかすると 絵 羽 は 最 初 から 楼 座 を 殺 すつもりだったのではないでしょうか。 地 下 貴 賓 室 の 場 面 では 楼 座 を 殺 すとアリバイがないため、 疑 われてしまいます。しかし、アリバイのある 状 況 でなら 殺 しても 大 丈 夫 。そのように 考 えた 絵 羽 はベアトのフリをして 真 里 亞 に「 楼 座 を 薔 薇 庭 園 に 連 れ 出 せ」と 指 示 したのかもしれません。 地 下 貴 賓 室 でベアトに 会 った 絵 羽 はベアトの 全 てを 継 承 したため、真 里 亞 とのやりとりも 継 承 した 可 能 性 があります。そのため、ベアトの 口 調 で 真 里 亞 に 話 しかければ、 真 里 亞 が 相 手 をベアトだと 信 じることも 教 えられたのでしょう。 事 故説 の 場 合 は 楼 座 と 話 をするためだけにアリバイを 作 って 窓 から 脱 出 するという 手 間 をかけるのかという 不 自 然 さがあります。 相 手 が 油 断 していれば、 格 闘 技 の 達 人 である 絵羽 には 素 手 での 殺 害 も 容 易 です。もっとも、 一 番 可 能 性 が 高 いのは、ベアトはもともと 第 二 の 晩 の 生 贄 を 楼 座 と 真 里 亞 に 決 めていて、 真 里 亞 に 楼 座 を 連 れて 薔 薇 庭 園 に 来 るように 指 示 していた、でしょう。 現 に 以 下 の 描 写 があります。“「………ベアトリーチェ。……………ベアトリーチェだ!! ママっ、ベアトリーチェ!」( 真 里 亞 )”問 07 客 間 の 扉 に「07151129」を 書 いた 人 物 と 数 字 の 意 味 は?書 いたのはベアトだと 考 えられます。 数 字 は 戦 人 の 誕 生 日 である7 月 29 日 と、ヤスが 黄 金 の 魔 女 となった11 月 29 日 であることがEP7で、 貸 し 金 庫 の 暗 証 番 号 であることがEP4であきらかにされています。 譲 治 を 殺 さざるを 得 なかったベアトから 絵 羽 へのせめてもの 罪 滅 ぼしなのでしょう。問 08 【 客 間 ・ 譲 治 殺 し】の 犯 人 と 方 法 はベアトが 銃 で 殺 害 したと 考 えられます。問 09 【 使 用 人 室 ・ 南 條 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?ベアトが 銃 で 殺 害 したと 考 えられます。問 10 EP3のゲーム 盤 の 真 相 は?ベアトが 第 一 の 晩 を 終 えた 後 、 絵 羽 が 碑 文 の 謎 を 解 き、 黄 金 の 魔 女 を 継 承 。 絵 羽 が 親 族 を 殺 害 していく 中 で、ベアトは 魔 女 幻 想 を 守 るため、あるいはミステリーのギミックとして、 譲 治 と 南 條 を 殺 害 したと 考 えられます。Episode4 Alliance of the golden witch問 04 【 園 芸 倉 庫 ・ 郷 田 & 熊 沢 殺 し】の 犯 人 と 方 法 は?KEIYAさんは“ 小 窓 から 射 殺 した”と 考 えていますが“それは 格 子 が 入 った 小 さな 窓 で、 明 かり 取 りと 換 気 くらいしか 出 来 ないものだった。”という 場 所 から 狙 うのは不 自 然 です。 何 よりEP1において“ 札 も 何 も 付 いていない 鍵 ”であったのに、このEPでは“ご 丁 寧 にも、 園 芸 倉 庫 の 鍵 とプレートまで 付 いている。”となっています。これは 鍵 がすりかえられているのではないでしょうか。プレートをつけたのは、 戦 人 がこの 鍵 が 本 当 に 園 芸 倉 庫 の 鍵 か 確 認 しようとするのを 防 ぐためであると 考 えられます。つまり 中 から 鍵 を 投 げてもらい、シャッターを 開 けて、 二 人 に 首 吊 りの 真 似 をさせたところで 射 殺 し、すりかえた 鍵 を 郷 田 のポケットに 入 れて、シャッターを 施 錠 したと 考 えた 方 がつじつまがあいます。Episode5 End of the golden witch問 07 19 年 前 の 男 の 正 体 は?KEIYAさんは“ 十 九 年 前 に 崖 から 突 き 落 とされた 恨 みが、 夏 妃 を 脅 迫 して 陥 れるというゲーム 盤 の 筋 書 きに 結 びついた。”と 考 えていますが、このゲームのゲームマスターはラムダです。 夏 妃 を 犯 人 に 仕 立 てたのはベルンを 真 相 に 導 かないためと 考 えられます。Episode6 Dawn of the golden witch問 04 「お 母 様 」の 正 体 と、 彼 女 がベアトリーチェに 恋 心 を 託 した 理 由 は?KEIYAさんは“ 譲 治 を 選 び、 戦 人 への 恋 心 を 捨 て 去 ろうとしたため”と 考 察 していますが、 実 際 は 戦 人 を 待 ち 続 ける 苦 しさに 耐 えられなくなったためと 考 えられます。譲 治 に 恋 するようになったのは、ベアトに 恋 心 を 託 したことによって 戦 人 への 恋 心 を 忘 れたからです。問 05 紗 音 と 嘉 音 はどのような 関 係 ?KEIYAさんは“ 紗 音 もヤスが 生 み 出 した 自 分 の 分 身 ”と 考 えていますが、 紗 音 は 実 在 の 人 物 で、 嘉 音 も 六 軒 島 に 実 在 したと 考 えられます。問 07 嘉 音 がチェーンで 閉 ざされた 客 室 から 戦 人 を 助 け 出 し、 消 失 する 方 法 は?嘉 音 が 人 格 死 した 後 、 紗 音 がクローゼットに 入 ります。問 08 「18 人 目 の 人 間 」「17 人 だ」。ヱリカ 退 場 後 、2つの 赤 字 が 並 び 立 った 理 由 は?18は“ 登 場 した 順 番 ”としての 数 字 (18 番 目 )もしくは“ 人 格 の 数 ”17は“ 在 島 者 の 人 数 ”としての 数 字 だと 考 えられます。63


問 10 冒 頭 で 部 屋 に 監 禁 されていた 人 物 が、 女 性 めいた 言 葉 を 発 した 理 由 は?“ 小 さかった 頃 、この 屋 敷 に 泊 まり、 風 雨 が 窓 を 叩 く 不 気 味 な 夜 には、 森 の 魔 女 が 生 贄 を 求 めて 彷 徨 っているというような 話 にだいぶ 怯 えたもんさ…。( 戦 人 )(EP1)”“ 小 さい 頃 の、 嫌 な 記 憶 が 蘇 る。 親 族 の 集 まりで、うとうとしていたら、いつの 間 にか 知 らない 部 屋 に 寝 かされていて。ものすごく 心 細 くなって 大 泣 きした、とても 嫌 な、 辛 い 記憶 …。(EP6)” 以 上 2つの 記 述 から、 思 考 が 当 時 に 退 行 していると 考 えられます。Episode7 Requiem of the golden witch問 03 戦 人 から 紗 音 への 手 紙 は 本 当 になかった?( 譲 治 が 隠 蔽 したという 説 はあり 得 る?)本 当 になかったと 考 えられます。 戦 人 は 決 断 するのは 紗 音 だと 考 えているため、その 気 持 ちを 尊 重 し、 自 分 からはアプローチしないのです。問 05 ヤス、 紗 音 、 嘉 音 、 理 御 、ベアトリーチェ、クレル、それぞれの 関 係 は?ヤスは 紗 音 の 蔑 称 です。 紗 音 は 安 田 紗 音 です。 嘉 音 は 紗 音 が 生 み 出 した 人 格 です。 理 御 は 崖 から 突 き 落 とされなかった 世 界 の 紗 音 です。ベアトリーチェは 紗 音 が 生 み 出 した人 格 です。クレルはベルンが 与 えてくれた 紗 音 の 正 体 を 隠 すための 仮 の 姿 です。問 06 ヤスが 魔 女 になってからの2 年 間 に 何 があったのか?戦 人 を 待 ち 続 ける 苦 しさに 耐 えられなくなり、ベアトに 戦 人 への 恋 心 を 託 したことにより、 戦 人 への 恋 心 を 忘 れました。その 後 、 譲 治 に 恋 するようになり、 譲 治 と 恋 人 同 士になりました。 同 時 にもう1つの 人 格 である 嘉 音 が 朱 志 香 に 恋 するようになりました。問 08 お 茶 会 で 描 かれた 次 男 夫 婦 による 殺 人 の 真 相 は?ゲームマスター 不 在 の 駒 によるゲームと 考 えられますが、その 内 容 は 限 りなく 真 実 に 近 いでしょう。問 09 クレルのはらわたで 描 写 されたシーンの 真 相 は?紗 音 が 心 の 中 に 隠 していた 真 実 だと 考 えられます。ただし、 金 蔵 の 黄 金 強 奪 と、 金 蔵 と 九 羽 鳥 庵 のベアトとのやりとりは、 紗 音 が“そうだと 信 じる” 真 実 です。問 10 ウィルの 二 十 の 楔 がベルンカステルに 通 用 しなかった 理 由 は?単 なる 演 出 と 考 えてよいのではないでしょうか。もしくはゲーム 盤 の 駒 であるウィルの 二 十 の 楔 は、ゲーム 盤 外 の 存 在 であるベルンには 通 用 しないということなのかもしれません。Episode8 Twilight of the golden witch問 01 「ゲームマスター」と「 作 家 ( 物 語 の 筆 者 )」の 違 いは?“ゲームマスター”はテーブルトークRPGのゲームマスターと 同 義 で、ゲームの 進 行 を 司 ると 考 えられます。“ 作 家 ”は 偽 書 を 書 いた 人 であり『うみねこ』 世 界 の 実 在 人 物である 紗 音 と 八 城 十 八 です。問 02 各 EP(1~8)の 作 者 は 誰 ?竜 騎 士 07さんと 考 えることが 出 来 ますし、あるいは 誰 もいないとも 考 えられます。問 03 ベアトリーチェの 心 臓 とは 何 か?六 軒 島 の 全 てを 黄 金 郷 に 導 くことの 出 来 る 爆 弾 、 親 族 を 自 在 に 共 犯 者 にすることのできる 黄 金 、 紗 音 と 嘉 音 とベアトリーチェ、1つの 肉 体 に 宿 る3つの 人 格 と 考 えられます。問 04 ヤスの 血 縁 関 係 を 分 かる 範 囲 で 説 明 せよ金 蔵 が 祖 父 で 父 親 です。ベアトリーチェ・カスティリオーニが 祖 母 です。 九 羽 鳥 庵 のベアトが 母 親 です。 蔵 臼 たちは 腹 違 いの 兄 弟 で 伯 父 や 伯 母 です。 戦 人 たちは 腹 違 いのいとこで 甥 や 姪 です。問 08 ベルンカステル&ラムダデルタの 正 体 は?『ひぐらしのなく 頃 に』からのゲストキャラクターだと 考 えられます。問 09 「 一 なる 真 実 の 書 」の 内 容 は?絵 羽 が 誤 って 殺 人 を 犯 してしまったため、 霧 江 が 留 弗 夫 を 守 るために 先 手 を 打 って 親 族 の 皆 殺 しを 計 画 し、その 過 程 で 絵 羽 に 殺 されたと 考 えられます。問 10 八 城 幾 子 が 真 実 の 書 と 鍵 を 持 つ 理 由 は?真 実 の 書 は 幾 子 が 語 ったとおりで、 鍵 は 絵 羽 から 贈 られたのではないでしょうか。問 12 12 年 後 の 世 界 やメタ 世 界 は 偽 書 に 書 かれたこと?偽 書 は 真 里 亞 の 名 を 騙 って 日 記 風 に 書 かれた“ゲーム 盤 の 物 語 の 粗 筋 以 上 全 文 未 満 の 内 容 ”であると 考 えられるため、12 年 後 の 世 界 やメタ 世 界 は 偽 書 には 書 かれていないと考 えられます。問 13 八 城 十 八 が 偽 書 を 発 表 した 理 由 は?心 ある 者 に 真 実 を 伝 えたかったのだと 考 えられます。問 14 3 日 目 の 描 写 の 前 には 何 が 起 こった?戦 人 はベアトと 合 流 し、 潜 水 艦 基 地 に 案 内 されたと 考 えられます。問 15 戦 人 とベアトリーチェが 入 水 した 意 味 は?実 際 に 島 から 出 ていって“ 添 い 遂 げられました”という 事 実 が 確 定 すると、ベアトの 中 で 残 り 二 組 の 恋 愛 を 否 定 することにつながってしまうため、ベアトは 入 水 したと 考 えられます。 戦 人 はベアトを 助 けるために 後 を 追 ったのですが、 助 けられなかったのでしょう。■ 偽 書 とはどのようなもの?メッセージボトル 偽 書 作 家 とは、その 名 の 通 り、 六 軒 島 の 事 件 を 記 した 謎 のメッセージボトルの、 文 章 を 捏 造 して 発 表 する 者 たちのことである。 彼 らは、 新 しいメッセージボトルが 発 見 されたと 称 し、よく 似 た 贋 作 、もしくは、 真 相 を 自 分 なりに 解 釈 した 新 説 を、 右 代 宮 真 里 亞 の 文 書 を 騙 って 発 表 するのだ。 彼 らは 堂 々と「 右 代 宮 真 里 亞 」を 名乗 り、さも 自 分 は 当 事 者 で 真 相 を 知 っているかの 如 く、 新 しい 奇 怪 な 物 語 を 描 き、それを、ニンゲンが 新 しく 手 に 入 れた 海 、インターネットの 大 海 に、 第 三 、 第 四 のメッセージボトルとして 放 っているのだ…。 伊 藤 幾 九 郎 は、そんな 人 間 たちの 間 でもっとも 高 い 評 価 を 受 けている 偽 書 作 家 なのである。(EP6)「…End of golden witch。 読 ませてもらいました」( 縁 寿 )彼 女 の 最 新 の 偽 書 、「End」は、その 作 中 で 少 なくとも 親 族 たちを7 人 は 殺 している。いやいや、 彼 女 のこれまでの 偽 書 、「Alliance」や「Banquest」を 含 めれば、どれだけの 親 族 を、 何 度 、 惨 たらしい 方 法 で 殺 しているやら…。(EP6)伊 藤 幾 九 郎 の 最 初 の 偽 書 、「Banquest of the golden witch」は、 九 羽 鳥 庵 で 右 代 宮 絵 羽 が 難 を 逃 れるまでを 全 て 描 いており、これこそ 六 軒 島 の 真 実 ではないかとさえ 囁 かれ、ワイドショーでまで 取 り 上 げられたことがある…。(EP6)…… 直 感 する。これは 新 作 なのだ。 彼 女 の 未 発 表 の 最 新 偽 書 ……。(EP6)「Dawn of the golden witch」( 縁 寿 )※ 新 たに 発 見 されたメッセージボトルに 見 せかけて、 偽 書 作 家 が 捏 造 したもののようです。ということは 文 章 量 や 文 章 のスタイルはメッセージボトルを 踏 襲 していると 考 えられます。 詳 しい 説 明 は“■メッセージボトルとはどのようなもの?”で。■ 偽 書 は 何 のために 書 かれたの?※このトピックにおける“ 偽 書 ”は 八 城 十 八 が 書 いた 偽 書 限 定 です。つまり“ 八 城 十 八 は 何 のために 偽 書 を 書 いたの?”ということです。「………そうよ。 元 々、 六 軒 島 の 事 故 は、ただそれだけならば、 絵 羽 伯 母 さんと 右 代 宮 家 の 財 産 を 巡 る 陰 謀 疑 惑 でしかなかった。……しかしそれが、 後 年 。オカルトによっ64


て 脚 色 され、 陰 謀 は 魔 女 伝 説 として 塗 り 替 えられる」( 縁 寿 )(EP4)事 件 当 時 は 陰 謀 として 騒 がれたのに、 後 年 、それらは 魔 女 の 仕 業 だったとするおかしなオカルト 説 が 蔓 延 し、1986 年 10 月 5 日 の 真 実 を 塗 り 替 え 始 めた…。 陰 謀 説 は 時間 と 共 に 忘 れられていくだろう。……そして、 奇 異 で 印 象 深 い 魔 女 説 だけが、 迷 信 的 に 残 り 続 け、 最 後 には 陰 謀 説 を、 塗 り 潰 す。「そう。 恒 星 爆 発 の 光 が 地 球 に 届 くまでの 間 の 虚 偽 の 真 実 が、 陰 謀 説 という 人 間 説 だったかのよう。……… 数 年 後 に 漂 着 した 手 紙 入 りのワインボトル、『メッセージボトル』が、それをオカルト 説 という 魔 女 説 に 遡 って 塗 り 替 え 始 めた。……そうよ。 魔 女 なんて、1986 年 の 時 点 では 存 在 しなかった。その 数 年 後 に、メッセージボトルによって私 たち 未 来 の 人 間 に“ 観 測 ”されたから、 魔 女 が 六 軒 島 を 支 配 した…!」( 縁 寿 )※ 僕 は 当 初 、 世 間 の 関 心 を“ 絵 羽 の 陰 謀 説 ”から 逸 らし、 絵 羽 を 救 うため、と 考 えていましたが、 上 記 内 容 から、それは 違 いそうです。 十 八 が 偽 書 を 書 かなくても、 陰 謀 説は 消 えていったものと 思 われます。そんな、 好 事 家 たちが 死 蔵 して 独 占 欲 を 満 たしたくなるほどに 価 値 ある 蔵 書 が20 世 紀 末 に 大 量 に 発 見 、 公 開 されたことは、 全 世 界 に 大 きな 衝 撃 を 与 えた…。(EP4)「この 一 件 により、“Rokkenjima”の 名 は 全 世 界 に 知 れ 渡 ることになります。そして 同 時 に、 六 軒 島 の 事 故 によって、 未 発 見 のさらに 価 値 ある 蔵 書 が 大 量 に 失 われた 可 能 性 が 高 いことも、 全 世 界 に 衝 撃 を 与 えました。…これにより、 六 軒 島 と 右 代 宮 蔵 書 の 名 は、 我 々にとって 生 涯 忘 れ 得 ないものとなったのです」( 大 月 )…… 我 々にとって。その 我 々とはつまり、 金 蔵 と 同 じ 趣 味 のオカルト 界 隈 のことだろう。この 一 件 により、 六 軒 島 の 名 は、オカルトの 世 界 で 重 要 な 意 味 を 持 っていくことになる。 六 軒 島 の 事 故 は、 確 かに 大 きく 報 道 されたが 国 際 的 なものではなかった。しかし、この 一 件 は 世 界 を 駆 け 巡 り、 六 軒 島 のイメージを、 伊 豆 諸 島 の 小 さな 島 から、 謎 と疑 惑 とミステリーとオカルトの 入 り 混 じった 悪 魔 的 な 島 へと 塗 り 替 えていった。つまり、 絵 羽 によって 金 蔵 の 蔵 書 が 世 間 に 流 出 されるまでは、 六 軒 島 は、 誰 の 記 憶 にも 留 まらない 無 名 の 島 に 過 ぎず、……そこは 断 じて、 魔 女 の 島 ではなかったのである。しかし、 右 代 宮 蔵 書 が 世 界 的 に 知 れ 渡 り、 六 軒 島 のイメージは 一 気 にオカルト 的 になる。「そして、そこへ 起 こるのが 例 のメッセージボトル 事 件 です。これがあの 島 を、 魔 女 の 島 に 変 えた。 伊 豆 諸 島 の 無 名 の 小 島 が、オカルトの 島 へ、そして 謎 の 魔 女 、ベアトリーチェの 島 へと 変 遷 していったのです。 右 代 宮 蔵 書 とメッセージボトル、このどちらが 欠 けても、 六 軒 島 魔 女 伝 説 は 成 り 立 たなかったと 言 えます」( 大 月 )「…… 近 くの 島 の 漁 師 が 拾 っていた、というやつですね?」( 縁 寿 )(EP4)「 左 様 です。 式 根 島 の 若 い 漁 師 が、 手 紙 入 りのワインボトルを 拾 っていたことがわかったのです。この 若 い 漁 師 は 興 味 本 位 からそれをたまたま 保 管 していました。それが、右 代 宮 蔵 書 で 六 軒 島 が 世 界 的 注 目 を 浴 びた 為 、 公 表 したというのです」( 大 月 )「この 奇 妙 な 日 記 風 手 記 には、 台 風 で 島 に 釘 付 けにされた 右 代 宮 家 の 親 族 たちが、 魔 女 復 活 の 儀 式 に 巻 き 込 まれ、 次 々に 不 可 解 な 方 法 で 殺 されていく 様 子 が 記 されていました。そして 最 後 に 黄 金 の 魔 女 ベアトリーチェが 蘇 り、 全 てを 黄 金 郷 に 飲 み 込 む。……まるで、それこそが 当 日 の 全 容 であるかのように 記 されていました。また、 当 時 の 島 の状 況 についても 非 常 に 詳 しく 描 写 されており、 右 代 宮 家 に 勤 務 したことがある 元 の 使 用 人 たちは、 間 違 いなく 内 部 に 詳 しい 人 間 が 書 いたに 違 いないと 証 言 しました」( 大月 )(EP4)「……その、おかしな 幻 想 小 説 と 右 代 宮 蔵 書 以 降 のオカルトブーム、そして、 結 局 は 真 相 は 闇 の 中 という3つが 合 わさり、 六 軒 島 の 魔 女 伝 説 を 生 み 出 したと…?」( 縁 寿 )「 左 様 です。すでに10 年 以 上 が 経 過 した 事 件 ですが、 未 だに 世 界 のオカルトマニアの 関 心 を 集 めています。いや、むしろ 時 間 を 経 て、ますますに 神 格 化 されたと 言 っていい。 上 陸 禁 止 になっている 六 軒 島 に、 密 かに 上 陸 しようというマニアも 未 だに 多 いとか。…… 未 だ 未 発 見 のメッセージボトルがあるのではないか。そしてあの 日 、あの 島 で本 当 は 何 があったのか。 未 だに 議 論 は 尽 きませんとも」( 大 月 )「あぁ、 六 軒 島 ウィッチハントとは、この 事 件 の 真 相 をオカルトの 側 面 から 説 明 しようと 試 みるマニアの 集 いのことです。 右 代 宮 蔵 書 から 謎 の2 日 間 、そして 黄 金 の 魔 女 の伝 説 など、 六 軒 島 にかかわる 謎 は 今 でもマニアの 間 で 盛 んに 議 論 されているのです。10 周 年 の 時 には、ニューヨークで 国 際 コンベンションも 開 かれました。 私 も 日 本 の 代表 として 参 加 してきましてね! 海 外 の 熱 心 なウィッチハンターと 様 々な 交 流 をしてきましたよ。 海 外 では 魔 女 はとても 人 気 のあるカテゴリーでしてね。 参 加 者 の 年 齢 幅 も下 は 小 学 生 から、 上 は 著 名 な 文 化 人 まで 実 に 幅 広 い! 日 本 でも 近 年 ようやく、」( 大 月 )(EP4)……………しかし、こう 考 えると、 絵 羽 伯 母 さんが 本 当 に 犯 人 なのかは、 疑 わしい。もちろん、メッセージボトルの 筆 跡 が 絵 羽 伯 母 さんと 違 うから、などというわけではない。…… 発 見 された2つの 物 語 は、どちらも 絵 羽 伯 母 さんが 犠 牲 者 の 中 に 含 まれているからだ。もし、この 日 記 の 筆 者 が 犯 人 であるならば。…… 絵 羽 伯 母 さんもまた、 殺 される 標 的 のひとりだったのではないか。それが、どこかで 狂 い、 絵 羽 伯 母 さんは 生 き 残 った。……… 私 は 絵 羽 伯 母 さんを 憎 悪 していたから、 彼 女 こそが 犯 人 に 違 いないと 信じてきた。しかし、メッセージボトルの 存 在 は、……… 彼 女 よりさらに 深 遠 の、 未 知 なる 人 物 こそが 黒 幕 なのではないかと 疑 わせるのだ…。(EP4)初 期 の 偽 書 作 家 は、 単 なる 悪 戯 目 的 か、さもなくば、 好 事 家 を 騙 すことを 目 論 んだ 詐 欺 師 かのどちらかだった。しかし、メッセージボトルの 物 語 の 謎 を 解 き「 真 相 」に 至 ったと 自 称 する 人 間 が 次 第 に 現 れ 始 め、あたかも 出 題 者 側 に 回 ったかのように、 右 代 宮 真 里 亞 による、 第 三 、 第 四 のボトルメールを 語 って 創 作 を 始 めるようになった。 彼 らは好 き 勝 手 な 解 釈 で 魔 女 物 語 を 書 き 綴 り、その 説 の 一 部 は 時 にネット 上 で 絶 大 な 支 持 を 集 めたため、あたかも 真 実 が 含 まれているかのような 信 憑 性 を 持 ち 始 めている“ 創 作 ”も 存 在 する。そんな 彼 らは、 厳 格 なウィッチハンターたちからは「 偽 書 作 家 」「 贋 作 作 家 」あるいは「 魔 女 」と 呼 ばれ、 激 しく 忌 み 嫌 われている。 真 相 に 至 ったと 称 し、にもかかわらず、 至 った 真 相 を 語 らず、 試 すかのようにメッセージボトルの 偽 書 を 創 作 する。そんな 彼 らを、 生 真 面 目 なウィッチハンターたちが 極 めて 不 愉 快 に 思 うだろうことは、 想 像 に 難 くない…。しかしその 一 方 で、 六 軒 島 のオカルトファンタジーを 単 純 に 楽 しんでいる 者 たちの 中 には、ミステリアスな 物 語 をさらに 拡 張 させてくれると、その 創 作 に 作 品 性 を 認 めている 者 も、 極 めて 一 部 ではあるが 存 在 する…。 伊 藤 幾 九 郎 は、そんな 人 間 たちの 間 でもっとも 高 い 評 価 を 受 けている 偽 書 作 家 なのである。(EP6)彼 女 の 最 新 の 偽 書 、「End」は、その 作 中 で 少 なくとも 親 族 たちを7 人 は 殺 している。いやいや、 彼 女 のこれまでの 偽 書 、「Alliance」や「Banquet」も 含めれば、どれだけの 親 族 を、 何 度 、 惨 たらしい 方 法 で 殺 しているやら…。 私 が 嫌 味 の 一 つも 言 いたくなっても、これは 当 然 のことだ。しかしこれらの 作 品 群 は、その 規 模 、完 成 度 において、 限 りなく、「 右 代 宮 真 里 亞 」 本 人 が 記 してきたそれまでの 物 語 に 近 いと 評 価 されていた。 特 に、 伊 藤 幾 九 郎 の 最 初 の 偽 書 、「Banquet of thegolden witch」は、 九 羽 鳥 庵 で 右 代 宮 絵 羽 が 難 を 逃 れるまでを 全 て 描 いており、これこそ 六 軒 島 の 真 実 ではないかとさえ 囁 かれ、ワイドショーでまで 取 り 上 げられたことがある…。(EP6)「……ベアトリーチェの 真 実 に 辿 り 着 いた 者 ならば。…… 私 でなくとも、 新 たな 物 語 を 紡 げるでしょう。…… 今 回 の 原 稿 を 以 ってきっと、 私 以 外 にも 真 実 に 至 る 者 が 必 ず 現れる。………その 者 もまた、 新 たな 物 語 を 紡 ぐ 資 格 を 得 るのです」( 幾 子 )(EP6)「どんどん 無 限 の 魔 女 が 増 えていくわ…」( 縁 寿 )「そう。そして、 何 人 もの 無 限 の 魔 女 たちが、ベアトリーチェの 猫 箱 の 物 語 を 増 やして 行 く。…… 増 えれば 増 えるほど、また 新 たに 真 実 に 至 る 者 が 現 れる…。……そうすることで、 一 番 最 初 の 無 限 の 魔 女 、ベアトリーチェが、あれだけの 枚 数 の 手 紙 に 物 語 を 記 してボトルに 詰 めて 海 に 投 じた 労 力 が 初 めて、 報 われるのです…」( 幾 子 )「それでよい、 人 の 子 よ。…… 右 代 宮 家 の 最 後 の 生 き 残 りであるあなたが、 真 実 に 至 り、 無 限 の 魔 女 になることを、 運 命 も 待 ち 望 んでいるでしょう。…… 私 という 存 在 など、あなたという 真 の 継 承 者 を 覚 醒 させるための、ただの 道 標 に 過 ぎないのだから。……エンジェ・ベアトリーチェ」(フェザ)(EP6)※ 真 相 を 織 り 交 ぜた 偽 書 を 世 間 に 送 り 出 すことにより“ 六 軒 島 の 真 実 ”が 心 ある 人 に 届 くようにしたかったのではないでしょうか? そしてあわよくば、 縁 寿 に 真 相 を 届 けたかったのでしょう。もし“ 全 て 真 相 ”で 出 来 た 偽 書 を 書 いてしまった 場 合 、それが 真 実 だと 世 間 にバレる 可 能 性 があります。そうすると 縁 寿 が 傷 付 くことになり、 絵 羽 の苦 労 も 水 の 泡 です。また、 絵 羽 は 六 軒 島 で 人 を 殺 していると 考 えられます。 絵 羽 が 真 実 を 話 せなかった 一 番 の 理 由 はそれでしょうし、 絵 羽 を 守 るためにも“ 全 て 真 相 ”である 偽 書 を 書 く 訳 にはいかなかったのです。「 幾 子 さんは、 最 近 はかなりパソコンに 熱 心 なようですね。 何 か 面 白 い 記 事 でもありますか?」( 十 八 )(EP8)「……… 馬 鹿 馬 鹿 しいとは 思 いつつも、なかなか 面 白 いのです。……ほら、 例 の 六 軒 島 事 件 」( 幾 子 )「…… 六 軒 島 ………?」( 十 八 )「 六 軒 島 ミステリーの 話 は 先 日 したでしょう。これが 今 、ネットでブームになっているのです。それを 巡 る 議 論 や 考 察 、 中 でも 偽 書 が 実 に 面 白 い。…… 偽 書 というのは、 付近 の 島 に 流 れ 着 いた、 右 代 宮 真 里 亞 の 署 名 のあるボトルメッセージが、 他 にもあったと 仮 定 して 書 いたもので……」( 幾 子 )幾 子 は 得 意 気 に 語 り 続 けている。……しかし、…… 私 の 頭 の 中 の 大 きな 鐘 が、がらんがらんと 鳴 り 続 ける。そのあまりに 大 きな 音 に、 私 の 頭 は 割 れそうになる。もはや、 天井 と 床 の 区 別 さえわからず、…… 私 は 頭 を 抱 えながら 倒 れ 込 んだ…。「 十 八 っ、…… 大 丈 夫 ですか…!」( 幾 子 )「…… 頭 が、……… 痛 い…………………」( 十 八 )65


六 軒 島 爆 発 事 故 。それを 巡 って 囁 かれる、 不 穏 な 噂 の 数 々。 右 代 宮 金 蔵 の 莫 大 な 財 産 と 隠 し 黄 金 を 巡 って、 親 族 たちが 暗 躍 を……。 真 相 は? 唯 一 の 生 還 者 の 右 代 宮 絵 羽 は何 も 語 らず。やがては、 当 日 に 欠 席 して 難 を 逃 れた 孫 娘 、 右 代 宮 縁 寿 が 全 てを 相 続 ……。※ 十 八 は 以 前 に“ 六 軒 島 事 件 ”の 話 を 幾 子 に 聞 かされたようですが、その 時 は 記 憶 の 回 復 には 繋 がらなかったようです。あるいは 潜 在 意 識 下 で 失 われた 記 憶 に 働 きかけ 続 けていたのかもしれません。また“ 伊 藤 幾 九 郎 ”の 活 躍 は 偽 書 作 家 としては 後 発 だったようです。■ 霧 江 は 残 酷 な 殺 人 鬼 なの?※ 霧 江 は 合 理 主 義 者 ですから、その 場 で 自 分 が 取 りうる 最 良 の 手 段 を 選 択 するだけなのです。EP7 のお 茶 会 で 霧 江 が 行 ったことは、 現 実 の 六 軒 島 で 霧 江 が 行 ったこととほとんど 同 じはずです。しかし、あれは 霧 江 にとって“カルネアデスの 舟 板 ”だったのです。「 私 は 幸 運 よ。その 地 獄 が18 年 で 終 わったから。……だからもう、 私 は 自 分 を、 間 違 えないの。……あの 人 は 私 のものよ。もう 逃 がさない、 手 放 さない。そして 主 に 感 謝する。………その 機 会 を 与 えてくれて。 絶 対 にあの 人 を 諦 めないという“ 絶 対 の 意 思 ”に、“ 奇 跡 ”が 応 えてくれたんだわ」( 霧 江 )(EP6)朱 志 香 はもはや 絶 句 して、…… 相 槌 さえも 打 てない。…… 霧 江 が 教 える 恋 の 正 しい 姿 とは、 彼 女 が 想 像 するよりも、ずっとずっと 苛 烈 なものだった…。「 今 の 私 は。…… 留 弗 夫 さんを 私 のところに 繋 ぎ 止 めるためなら、 何 でもするわ。そして、 留 弗 夫 さんの 敵 には 一 切 容 赦 しない。……あの 人 が 望 むならば 私 は、 人 殺 しさえも、 躊 躇 しないかもしれない」( 霧 江 )※ 以 上 のように 考 え、 留 弗 夫 を 手 に 入 れるために 明 日 夢 を 殺 そうとまでしていた 霧 江 です。 銃 の 暴 発 によって、 殺 人 を 犯 してしまった 絵 羽 に 落 ち 着 く 時 間 を 与 えたら、EP3の 惨 劇 を 起 こすことを 予 見 し、 留 弗 夫 を 守 るために 先 に 行 動 することにしたのです。ですから、 絵 羽 の 件 がなかったら、 霧 江 は 殺 人 鬼 にはならなかったと 考 えられます。■ 霧 江 は 本 当 に 酷 い 母 親 だったの?※ 以 下 の 場 面 から 霧 江 は 酷 い 母 親 だったと 考 えている 人 も 多 いと 思 います。「 人 でなしッ!! カネに 目 が 眩 んで 人 の 命 を 奪 うなんて…!!」( 絵 羽 )(EP7)「あなただって、うまいことやったわ」( 霧 江 )「あれは 事 故 よ!! 殺 すつもりなんてなかった! あんたとは 違 うのッ!!」( 絵 羽 )観 劇 者 たちだけが 知 っている。 彼 女 ( 絵 羽 )が 殺 人 鬼 で 有 り 得 た 世 界 を、 知 っている。「 殺 したの?! みんな!! 真 里 亞 ちゃんまで…?! …… 私 にはわからないわ。あなたも、 自 分 のお 腹 を 痛 めて 子 を 産 んだ 経 験 を 持 つ、 母 のはず。 命 の 尊 さを、 知 らないわけがない…! そのあなたがどうして、これだけのことが 出 来 るの…!」( 絵 羽 )(EP7)「 子 供 なんて。 勝 手 に 出 来 るわ。 子 はかすがい、って 言 うわよね。 子 は、 夫 を 繋 ぎ 止 めておくための、かすがいなのよ。…… 留 弗 夫 さんに、 私 のことを 認 めさせ、あの 女 から 彼 を 取 り 戻 すための、かすがいだった。 私 はもう。 誰 かの 妻 でもないし、 母 のつもりもない、ということよ。…… 私 は 私 。 霧 江 。 留 弗 夫 さんが 死 んだ 今 、 右 代 宮 でさえないわ。 私 は 私 の 得 になるように 生 きる」( 霧 江 )「そうね、 留 弗 夫 が 死 んで、あんたは 妻 ではなくなったかもしれない。でも、 縁 寿 ちゃんがいるでしょう…!! あんたはまだ、 母 であり 続 けるはずよ…!」( 絵 羽 )「 言 ったでしょ、かすがい、って。 留 弗 夫 さんがいなくなった 今 、 縁 寿 なんて 私 にとって、 必 要 なものじゃないわ」( 霧 江 )「……あ、……あんた……、それが、 母 親 が 子 に 対 して 言 うことなのっ?!」( 絵 羽 )「 縁 寿 なんて、 留 弗 夫 さんを 縛 り 付 けるための、ただの 鎖 。……あるいは、 家 族 ごっこをするための、 子 供 の 役 という 名 の 駒 。…… 私 にとって 縁 寿 は、 留 弗 夫 さんの 前 で 良き 母 を 演 じるときに 必 要 な 駒 なだけよ」( 霧 江 )「……それでも 人 間 なの……。……それでも 縁 寿 ちゃんの 母 なの?!」( 絵 羽 )「くすくすくす。 縁 寿 なんか 知 ったことじゃないわよ。あんな、クソガキ。 可 愛 いと 思 ったことなんて、 一 度 だってないわよ」( 霧 江 )※このやり 取 りを 額 面 どおりに 受 け 止 めると、 確 かに 霧 江 は 酷 い 母 親 です。しかし、これは 霧 江 の 本 心 でしょうか? この 発 言 をしたときの 状 況 を 振 り 返 って 見 ましょう。「 礼 拝 堂 の 前 で、 留 弗 夫 にも 会 ったわ!」( 絵 羽 )(EP7)「 元 気 そうだった?」( 霧 江 )「えぇ。 姉 弟 で 久 しぶりに、 仲 良 く 語 り 合 ったわ」( 絵 羽 )「…………………。……そう。…… 目 立 ちたがり 屋 なのに、ここ 一 番 で 頼 りない 人 ね。……やっぱり、あの 人 は 私 がいないと 駄 目 なのね」( 霧 江 )それだけのやり 取 りで、 留 弗 夫 はもう 殺 されていることを、 霧 江 は 理 解 する。しかし、 焦 りも 狼 狽 も、 彼 女 の 表 情 には 浮 かばなかった。ただ、 彼 女 らしい 淡 々とした 表 情で 静 かに 目 を 閉 じ、……それから 再 び 開 いた 時 には、 悠 然 とした 笑 みを 取 り 戻 していた。「………ありがとう。 感 謝 するわ。これで、 本 当 に 私 が 全 てを 独 り 占 めね」( 霧 江 )※ 霧 江 はこの 時 点 で 留 弗 夫 が 殺 されていることを 知 っています。 霧 江 にとって 留 弗 夫 は 以 下 のような 存 在 です。「 私 は 幸 運 よ。その 地 獄 が18 年 で 終 わったから。……だからもう、 私 は 自 分 を、 間 違 えないの。……あの 人 は 私 のものよ。もう 逃 がさない、 手 放 さない。そして 主 に 感 謝する。………その 機 会 を 与 えてくれて。 絶 対 にあの 人 を 諦 めないという“ 絶 対 の 意 思 ”に、“ 奇 跡 ”が 応 えてくれたんだわ。 今 の 私 は。…… 留 弗 夫 さんを 私 のところに 繋 ぎ止 めるためなら、 何 でもするわ。そして 留 弗 夫 さんの 敵 には 一 切 容 赦 しない。……あの 人 が 望 むならば 私 は、 人 殺 しさえも、 躊 躇 しないかもしれない」( 霧 江 )(EP6)明 日 夢 の 死 は、 断 じて 殺 人 ではない。しかし 霧 江 は、 死 んでしまえと 常 に 呪 い 続 け、……18 年 目 にしてとうとう、 自 らの 手 で 殺 してやろうと 決 意 するに 至 ったのだ。そして、…… 実 際 に、…… 殺 すための 刃 物 さえ 用 意 した………。「…… 明 日 夢 叔 母 さんが 亡 くなったことが、…… 奇 跡 ……」( 朱 志 香 )「 違 うわ。……そんなの 全 然 、 奇 跡 じゃない」( 霧 江 )「…………え?」( 朱 志 香 )「だって。…… 彼 女 が 死 ななければ、 私 が 殺 していたもの。……つまり、 彼 女 は 必 ず 死 ぬ 運 命 だった。…… 奇 跡 なのは、 彼 女 が 死 んだにもかかわらず、“ 私 が 自 らの 手 を 汚さずに 済 んだ”。この 一 点 に 尽 きるのよ」( 霧 江 )※ 殺 人 を 犯 してでも 手 に 入 れたいほどの 存 在 だったのです。その 留 弗 夫 を 喪 った 時 、 霧 江 は 自 らも 死 ぬことにしたのではないでしょうか。もし 自 分 が 死 ねば、 縁 寿 は 絵 羽 に引 き 取 られることになります。 絵 羽 にとって 縁 寿 は、 最 愛 の 夫 と 息 子 を 殺 した 敵 の 娘 です。 到 底 可 愛 がってもらえるとは 思 えません。しかし、もし 母 である 自 分 が 縁 寿 に 否定 的 な 感 情 を 持 っていることを 知 ったら、 絵 羽 は 霧 江 への 憎 しみゆえに 縁 寿 を 可 愛 がってくれる 可 能 性 があります。その 為 、 心 にもない 芝 居 をしたのではないでしょうか。以 下 の 場 面 はその 伏 線 だと 思 います。「 西 部 劇 の 悪 役 じゃないんだからね? 冥 土 の 土 産 とか、 最 期 に 言 い 残 すことはとか、そんなことやっちゃ 駄 目 よ?」( 霧 江 )(EP7)※あの 場 面 で 絵 羽 に 勝 つつもりなら、 絵 羽 に 隙 を 作 る 話 をするか、もしくは 問 答 無 用 の 先 手 必 勝 で 撃 つかのどちらかです。それなのに 霧 江 は 縁 寿 の 話 をしました。 地 下 貴 賓室 でも 話 をしていますが、あれは 絵 羽 の 銃 が 使 えない 圧 倒 的 有 利 な 状 況 でしたので、 双 方 が 使 える 銃 を 持 っているこの 場 面 とは 話 が 違 います。もはや 勝 つつもりはなかったのです。あるいはもう1つの 可 能 性 も 考 えられます。 自 分 が 勝 てなかった 場 合 の 保 険 です。………そう。 霧 江 も 留 弗 夫 も、この 銃 には 深 く 精 通 していた。 父 親 の 影 響 で、 西 部 劇 の 銃 に 興 味 を 持 っていた 留 弗 夫 は、 同 型 の 散 弾 銃 を 所 持 していたのだ。 そして 霧 江 も同 じ 銃 を 扱 う 資 格 を 持 ち、 二 人 で 射 撃 を 楽 しむほどに、……この 銃 には 精 通 していた…。(EP7)絵 羽 は 秀 吉 の 亡 骸 を 抱 いて 泣 く。 彼 女 は、 撃 たれてはいなかった。 弾 は 頭 部 をぎりぎりかすめ、…… 外 れていたのだ。 死 んだふりをしていたのではない。 彼 女 自 身 、 本 当 に撃 たれたと 思 ったのだ。 霧 江 の 銃 口 が 火 を 噴 き、 激 しい 衝 撃 が 頭 をかすめた 時 、 貧 血 のように 気 が 遠 退 き、 彼 女 は 気 絶 してしまっていたのだ。(EP7)留 弗 夫 の 撃 った 銃 弾 は、 絵 羽 の 足 元 に 外 れていた。(EP7)「……やっぱ、この 銃 、……… 狙 いが 下 に、……ズレてるぜ……」( 留 弗 夫 )絵 羽 は 撃 たれていない。 霧 江 の 気 迫 に 押 し 倒 されこそしたが、……その 凶 弾 は 再 び、 彼 女 をかすめただけで、 逸 れていた……。(EP7)66


※ 銃 に 精 通 しているはずの 霧 江 が 至 近 距 離 で2 度 も 外 しています。 霧 江 の 銃 も 狙 いがズレていたのではないでしょうか。 絵 羽 が 生 きていた 時 点 で、 霧 江 は 自 分 の 銃 の 狙 いがズレていたことに 気 がついたはずです。しかし、 調 整 する 暇 はありませんから、そのまま 闘 うしかありませんが、 狙 いがズレた 銃 では 勝 てない 可 能 性 が 高 いです。そのため、自 分 が 負 けたときの 保 険 として、あのような 話 をしたのではないでしょうか。また、 以 下 のように 霧 江 が 縁 寿 を 可 愛 がっていたと 考 えられる 内 容 があります。これも 留 弗 夫を 繋 ぎ 止 めるためと 考 えることも 出 来 ますが、 僕 にはそうは 思 えません。お 母 さん( 霧 江 )も 私 ( 縁 寿 )をすごく 大 切 にしてくれたっけ。 特 に 誕 生 日 のプレゼントにはいつもすごくセンスを 使 ってくれていて、 私 のために 何 ヶ 月 も 前 から 手 配 してくれているようなこともあった。(EP4)「……あなたはがんばってくれたわ、 絵 羽 姉 さん」( 霧 江 )(EP8)「 霧 江 さん…」( 絵 羽 )いつの 間 にか、 絵 羽 の 後 ろに 霧 江 がいた。 留 弗 夫 もいた。「あなたが 縁 寿 と 打 ち 解 けようと、 色 々な 努 力 をしてくれたことを 知 っているわ」( 霧 江 )六 軒 島 の 事 故 の 後 。ひとり 六 軒 島 より 生 還 した 絵 羽 は、 当 日 を 欠 席 して 生 き 残 った 縁 寿 を 養 子 に 迎 えた。…… 後 に、 互 いを 傷 つけあうような 悲 しい 関 係 になる 二 人 も、 最 初からそうだったわけではないのだ。 絵 羽 は 縁 寿 の 新 しい 親 として、 最 後 の 唯 一 の 肉 親 として 愛 情 を 注 ごうと 努 力 したのだ。 自 身 の 悲 しみを 懸 命 に 堪 えて。しかし 縁 寿 はそれを 受 け 容 れなかった。 唯 一 生 還 した 絵 羽 を、 自 分 の 親 を 奪 ったと 罵 ったのだ。……6 歳 の 幼 子 の 傷 心 を 理 解 し、 絵 羽 はそれでも 耐 えた。 歯 を 食 いしばって、 報 われぬ 愛 情 を縁 寿 に 注 いだのだ。しかし、……… 絵 羽 だって、 深 く 深 く 傷 付 いていた。 彼 女 の 悲 しい 努 力 はついに 報 われず、………… 続 く 未 来 は、 悲 しいものとなる。(EP8)「あなたは 縁 寿 に、 譲 治 くんに 注 いだのと 同 じ 愛 情 を、 与 えようとしてくれたわ」( 霧 江 )「でも、……それは 私 だけの 独 りよがりで、…… 縁 寿 ちゃんにはまったく 届 かなかった…」( 絵 羽 )「それを 受 け 止 めなかったのは 縁 寿 だ。 姉 貴 のせいじゃない」( 留 弗 夫 )「6 歳 の 縁 寿 ちゃんにそれを 求 めるなんて 酷 よ…! それでも 私 は 気 持 ちを 伝 えられるよう、もっともっと……、 堪 えなければならなかったのに…!」( 絵 羽 )「 絵 羽 姉 さん。これだけは 信 じて。 私 たちはあなたを、…… 責 めてなんかいないのよ」( 霧 江 )「…… 霧 江 さん……………」( 絵 羽 )「 縁 寿 のために、 深 く 深 く 傷 付 いてくれて、ありがとう……。………あの 子 に 人 の 心 があるなら、いつか 必 ず、あなたが 注 いでくれた 愛 情 に 気 がついてくれるはず」( 霧 江 )「いい、 縁 寿 。 人 生 には、これからもたくさんの 問 題 が 訪 れるわ。…… 今 は 絵 羽 伯 母 さんが 助 けてくれるから、 頼 ってもいい。でもね、 人 生 の 問 題 のほとんどは、あなた 一人 で 解 かなくちゃならないの。その 時 に、それまで 助 けてくれた 人 の 助 言 や 恩 を、 必 ず 思 い 出 すようにしてね」( 霧 江 )(EP8)「うん。わかった」( 縁 寿 )「…… 絵 羽 姉 さん。 縁 寿 をよろしくね」( 霧 江 )「………お 父 さん、……お 母 さん…。……… 私 は……………」( 縁 寿 )(EP8)「 今 は 何 も 言 わなくていいわ。……… 大 変 な 冒 険 をしてきたわね。……あなたはひとりぼっちで、 大 変 な 冒 険 をしてきたわ…」( 霧 江 )「これでわかっただろ。もう、 忘 れないだろ」( 留 弗 夫 )わかるよ、……お 父 さん…。「……ここ( 黄 金 卿 )が、お 前 の 帰 るべきところだってことだ…」( 留 弗 夫 )「…………うん…」( 縁 寿 )私 がそう 答 えると、お 父 さんとお 母 さんは、 私 を 力 強 く 抱 き 締 めてくれた。 熱 い 雫 が、 顔 に 落 ちる。お 父 さんとお 母 さんの、 涙 だった……。■ 霧 江 は 留 弗 夫 の 窮 状 を 知 っていたの?霧 江 は、 留 弗 夫 の 浮 かべる 微 妙 な 表 情 の 意 味 をすぐに 察 する。…… 夫 は、 自 分 の 知 らないところで 大 きなトラブルに 巻 き 込 まれ、ひとり 苦 悩 していたのだ。(EP1)「……………………………。…… 初 耳 なんだけれど、 私 たちには、 急 ぎ、まとまったお 金 が 必 要 だという 前 提 があるのね?」( 霧 江 )(EP2)「つまり、 蔵 臼 さんからお 金 を 借 りるのはとても 難 しいというわけね。 充 分 な 備 えが 必 要 よ。 私 たちには 時 間 も 失 敗 も 許 されてない。そうだったわね」( 霧 江 )(EP5)※EP1と2では 知 らなかったようですが、EP5では 知 っていたようです。2 対 1で 知 らなかったと 考 えることも 出 来 ますが、EP5ははじめて“ 金 蔵 の 死 ”が 明 らかにされたEPです。ゲーム 盤 以 前 の 状 況 で 語 られていることは 真 実 である 可 能 性 が 高 いため、どちらかいうと 知 っていた 可 能 性 のほうが 高 いでしょう。■ 曲 名 の 秘 密※この 作 品 には 以 下 の 曲 があります。“オルガン 小 曲 第 6 億 番 ハ 短 調 ”“599_million_ruins”“ 弦 楽 三 重 奏 曲 第 6 億 番 嬰 ヘ 短 調 ”どうやら、6 億 という 数 字 に 何 かこだわりがあるようです。 実 はこの 数 字 、 計 算 で 出 て 来 ます。19 歳 ×365 日 ×24 時 間 ×60 分 ×60 秒 =599184000。つまりヤスの 人 生 を 秒 に 換 算 した 数 字 なのです。“オルガン 小 曲 第 2 億 番 ハ 短 調 ”こちらは200000000 秒 ÷60 秒 ÷60 分 ÷24 時 間 ÷365 日 =6.341…。つまりヤスが 待 った6 年 間 を 秒 に 換算 した 数 字 なのです。■“ 金 蔵 の 気 まぐれ”とはどのようなことなの?また、… 気 の 毒 なことに、( 紗 音 と 嘉 音 は) 夏 妃 奥 様 にも 嫌 われております…。もちろん、 年 季 という 意 味 では 奥 様 の 方 が 長 くこの 家 におられます。ただ、………こればかりは 奥 様 にも 同 情 しなくてはなりません。… 本 当 にお 館 様 も 罪 作 りな 方 でございます…。ご 自 身 の、ちょっとした 気 まぐれが、 奥 様 にこれほどまでの 劣 等 感 をお 与 えになるとは、どうして 思 い 至 らなかったのでしょう…。( 熊 沢 )(EP1)※ 金 蔵 の 気 まぐれによって、 夏 妃 が 劣 等 感 を 持 っていること、そしてそれゆえに 紗 音 と 嘉 音 を 嫌 っていることがわかります。「お 前 のそのみすぼらしい 姿 を 鏡 に 映 してみるがいい!! お 前 の 服 のどこに 翼 が? どこに 片 翼 の 鷲 が 許 されているのか? 貴 様 など 右 代 宮 家 の 跡 継 ぎを 残 すためだけの 借 り 腹 じゃないの!! 身 の 程 を 弁 えるがいい、この 端 女 があッ!!」( 絵 羽 )(EP1)…… 夏 妃 には 言 い 返 したい 言 葉 が 百 はあった。でも、 怒 りと 悲 しみで 喉 を 潰 され、それらのひとつも 口 に 辿 り 着 かせることができなかった。… 行 き 場 を 失 った 怒 りは、 一 粒の 熱 い 涙 となってぼろりと 零 れ 落 ちる…。※ 夏 妃 は 自 分 が 片 翼 の 鷲 を 身 にまとえないことを 非 常 に 気 にしているようです。福 音 の 家 から 送 られる“ 優 秀 な” 使 用 人 は、もはや 血 縁 すら 信 用 できない 金 蔵 にとっては 唯 一 信 頼 できる 存 在 であった。そのためある 時 、 金 蔵 は 彼 らを 直 属 の 使 用 人 として家 紋 をまとうことを 許 し、 自 分 の 身 近 に 仕 えさせたのである…。(EP1)※ 以 上 のことから、“ 金 蔵 の 気 まぐれ”とは 夏 妃 には 片 翼 の 鷲 を 許 していなかったにもかかわらず、 使 用 人 に 許 したことだと 考 えられます。しかし、ということは、 金 蔵 は 片翼 の 鷲 というものにそれほどこだわりを 持 っていなかったのかもしれません。 他 の 人 がこのことについて 言 及 する 場 面 はないので、 片 翼 の 鷲 について 気 にしていたのは 絵 羽と 夏 妃 だけだったのではないでしょうか?■ 金 蔵 の 書 斎埃 と 甘 ったるい 異 臭 の 入 り 混 じった 薄 暗 い 書 斎 に、 年 輩 の 男 たちの 姿 はあった。(EP1)祖 父 さまの 書 斎 は、……… 事 前 に 噂 を 聞 いていたので、それほど 驚 きはしなかった。しかしそれでも、 怪 しげな 薬 物 の 臭 いと、 脳 を 溶 かすような 甘 い 臭 いにはさすがに 閉 口するしかなかった…。(EP1)留 弗 夫 は 布 団 に 手 を 突 っ 込 んでみるが、 何 の 温 もりも 感 じることは 出 来 なかった。 温 もりがないどころか、…… 完 全 に 冷 え 切 っている。そして、 冷 え 切 っているのは 布 団 だけではない。…… 部 屋 の 空 気 や、…… 気 配 と 言 えばいいのか、…そういう、 温 もりのようなものが 冷 え 切 っているように 感 じられた。 留 弗 夫 には、 金 蔵 がこの 部 屋 を 抜 け 出67


したのは、ずいぶん 前 のように 感 じられた…。(EP5)「……しかし、 清 掃 は 行 き 届 いてるぜ。 生 活 の 痕 跡 はある。……………………」( 留 弗 夫 )※EP1 とEP5 で 随 分 、 様 子 が 違 います。 異 臭 の 話 が 出 ないことからEP5 では 異 臭 もないようです。 金 蔵 の 在 室 を 演 出 するなら、 金 蔵 がいたときと 様 子 を 変 えたらまずいはずなのですが…。■ 金 蔵 は 紗 音 が19 年 前 の 赤 ん 坊 であることに 気 がついていたの?「 学 校 に 通 いながら 働 く 子 など、あの 子 以 前 には 前 例 もありませんでした」( 夏 妃 )(EP7)「 正 直 、 最 初 の 挨 拶 の 時 に 驚 いたよ。 明 らかに 幼 かった。 他 の 子 たちは16 歳 から18 歳 くらいなのだが、その 子 だけはさらに10 歳 は 幼 く 見 えた」( 蔵 臼 )「 福 音 の 家 から 来 る 若 過 ぎる 使 用 人 は、あくまでも 社 会 勉 強 として 当 家 に 訪 れているのであって、そもそも、 使 用 人 としての 腕 前 はあまり 期 待 していません」( 夏 妃 )「そうだな。やはり 大 人 の、 年 季 の 入 った 使 用 人 たちに 比 べると、どうしても 頼 りないものだ」( 蔵 臼 )「それが、 未 就 学 の 子 を 受 け 入 れるなんて。 家 事 はおろか、 社 会 勉 強 どころか 義 務 教 育 もまだではありませんか。お 父 様 にどんなお 考 えがあったのか 存 じませんが、 明 らかにおかしいと 思 いました」( 夏 妃 )※このような 状 況 ですから、 当 然 、 気 がついていたと 考 えられます。しかし、 源 次 に 問 い 質 したところで、 恍 けるだけだったでしょう。「……あら 懐 かしい。どこから 出 てきたんやら。 私 がいくら 触 らせてって 言 っても、 指 一 本 触 れさせてくれなかったやつよぅ」( 絵 羽 )(EP1)「へぇ…。 祖 父 さま、こんなの 持 ってたんですか…。 知 らなかったですよ」( 朱 志 香 )………お 館 様 に、 銃 を 色 々 撃 たせてもらったっけ。…あれ、…… 結 構 、 面 白 かったな。( 嘉 音 )(EP6)※ 実 際 に 撃 たせてもらったのは 紗 音 だったと 考 えられますが、 絵 羽 には 触 らせず、 朱 志 香 はその 存 在 も 知 らなかった 銃 を 撃 たせていたということは、 特 別 に 可 愛 がっていたということなのでしょう。 金 蔵 にとって 理 御 は“ 息 子 ”なので、 女 である 絵 羽 や 朱 志 香 とは 扱 いが 違 った 可 能 性 もありますが。■ 金 蔵 は 夏 妃 を 嫌 っていたの?※ 以 下 のように 少 なくとも 夏 妃 はそう 考 えていたようです。( 金 蔵 は 夏 妃 に)……… 挨 拶 さえ、……… 目 を 合 わせてさえ………。(EP5)※ 実 際 、 以 下 の 赤 字 があります。「《 赤 : 夏 妃 。 金 蔵 があんたの 心 に、 片 翼 の 鷲 を 刻 むことを、いつ 許 したっての? あんたの 妄 想 の 中 の 金 蔵 の 言 葉 でしょうが、それは。…… 本 当 の 金 蔵 はね。 生 涯 、ただの 一 度 も! あんたを 心 の 底 から 信 頼 したこともないし、あんたに 紋 章 を 許 そうと 思 ったことも、ただの 一 度 もないわ!》」(ベルン)(EP5)※ところが 本 文 をよく 読 んでみると、 金 蔵 は 夏 妃 を 大 切 にして 可 愛 がっていたと 思 われるのです。まず、 以 下 の 内 容 です。(ビンロウについて)「こいつは 親 父 殿 も 好 きでね。 昔 は 取 り 寄 せたのか、 屋 敷 のテラスでも、モグモグやっていたものだ。 夏 妃 が 来 てからは 止 めたようだがね。ほら、 君 が私 よりも 尊 敬 する 親 父 殿 も 愛 用 していたんだぞ。ほらほら 遠 慮 なく 試 したまえ」( 蔵 臼 )(EP5)※ 好 きだったビンロウを 夏 妃 の 為 に 止 めています。もっともこれは 下 品 なビンロウを 嗜 む 姿 を、 高 貴 な 家 から 来 た 夏 妃 に 見 られたくないという、 見 栄 だと 考 えられますが。しかし、 少 なくとも 夏 妃 の 存 在 を 意 識 して、 好 きだったビンロウを 絶 ったことは 間 違 いありません。「また 蔵 臼 と 喧 嘩 をしたのか。…… 嫁 を 労 わらぬとは、 蔵 臼 め、 私 の 悪 いところばかりを 受 け 継 ぎよる……なんというみすぼらしい 顔 か、 顔 を 洗 え。 仮 にも 右 代 宮 家 次 期 当主 の 妻 ではないか。そんな 情 けない 面 を 使 用 人 に 見 せてはならぬぞ」( 金 蔵 )(EP5)…… 夏 妃 は 理 解 している。これは 在 りし 日 の 金 蔵 の 記 憶 と、 今 こそ 話 を 聞 いて 欲 しいと 願 う 夏 妃 の 願 望 が 生 み 出 した、… 幻 。※この 場 面 の 金 蔵 は 夏 妃 が「もしこの 場 所 に 金 蔵 がいたらこんなことを 言 っただろう」と 想 像 した 姿 です。 確 かに 言 葉 は 厳 しいですが、 夏 妃 を 労 わる 言 葉 です。 夏 妃 にはこの 優 しさが 見 えなかったようですが、 金 蔵 は 日 常 的 に 夏 妃 にこのような 言 葉 をかけていたことがわかります。…… 金 蔵 はかつて、 怒 りの 感 情 は、 恐 怖 と 不 安 を 最 も 早 く 中 和 する 鎮 静 剤 だと 言 っていたっけ。 群 衆 の 中 で、もっとも 恐 怖 に 怯 える 人 間 を 見 分 けるのは 容 易 い。 必 ず 最 初 に怒 り 出 すからだ。……そう( 夏 妃 に) 話 してくれたことを 思 い 出 す。(EP5)※こんな 話 もしてくれたようです。 嫌 っている 人 間 にこんなことを 話 すでしょうか。そもそも 夏 妃 が 右 代 宮 家 に 嫁 ぐきっかけになったのは、 以 下 の 経 緯 です。「この 赤 い 日 記 帳 の24ページに 以 下 の 記 述 があります。………“ 私 は 右 代 宮 家 に、 嫁 と 言 う 名 で 軟 禁 された 人 質 なのです。でも、 私 が 人 質 となることで、 全 てが 丸 く 収 まるならば……”」(ヱリカ)(EP5)「 夏 妃 さん。あなたは 自 分 が 人 質 であったことを、ここですでにお 認 めになっています。…… 熊 沢 さんは、 夏 妃 さんがここに 来 られた 当 初 からお 世 話 をしていますね? 当時 のことを 話 して 下 さいませんか?」(ヱリカ)「………え、……えぇ、そうです。… 私 にそう 零 されたこともございました…。…… 奥 様 のご 結 婚 についての 事 情 を 知 るのは、…… 今 は 私 と 南 條 先 生 くらいのものでしょうか…」( 熊 沢 )金 蔵 が、もっとも 獰 猛 と 恐 れられていた 時 代 のこと。 金 蔵 はあらゆる 財 力 とコネクションを 持 っていたが、 成 金 呼 ばわりされ、 品 格 ある 上 流 階 級 から 見 下 されていることにコンプレックスを 持 っていたという。その 為 、 金 蔵 は、 高 貴 な 家 から 蔵 臼 の 嫁 を 迎 えて、 右 代 宮 家 の 格 を 上 げたいと 思 っていたらしい…。そして、 夏 妃 の 家 を 経 済 戦 争 で 打ち 負 かし、……その 手 打 ちとして、 縁 談 を 提 案 した。そして 差 し 出 されたのが、…… 夏 妃 だった。 夏 妃 は、 神 職 の 家 で 清 らかに 育 てられた、 文 字 通 りの 姫 君 だった。それを差 し 出 させることは、 相 手 に 与 える 最 大 の 屈 辱 であると 同 時 に、 金 蔵 にとっては 最 高 のトロフィーだったのだ。だからその 縁 談 は 夏 妃 にとって、 最 初 から 屈 辱 的 なものであった……。※ 夏 妃 が 金 蔵 を 憎 み、 軽 蔑 するのなら 理 解 できますが、 以 下 のように、 夏 妃 は 金 蔵 を 心 の 底 から 尊 敬 していたようです。「お 父 様 は 自 己 を 厳 しく 律 する 模 範 的 な 方 です! そのような 汚 らわしい 存 在 を 島 に 連 れ 込 むなど、 到 底 考 えられません…!」( 夏 妃 )(EP3)「ぅ、…ぅわあああぁああああぁあぁぁぁぁ…。お 父 様 …、お 父 様 ぁあぁぁぁぁぁ…!!」( 夏 妃 )(EP5)… 夏 妃 は、 二 度 と 目 覚 めぬ 眠 りに 就 いた 金 蔵 の 胸 に 突 っ 伏 し、 号 泣 した。「お、…… 奥 様 、…どうかしっかり…」( 熊 沢 )「お 父 様 、お 父 様 ……!! こんな、… 突 然 なんて……。ううぅうううぅぅううぅぅぅ!!」( 夏 妃 )もうひとりの 父 として 慕 った 金 蔵 の 死 に、 夏 妃 の 涙 は 止 まらない。 熊 沢 はその 背 中 をさすりながら、 夏 妃 を 慰 めるのだった……。「 何 とかなりませんか…。 亡 くなったとはいえ、お 父 様 の 大 切 なお 体 です。 傷 を 付 けるなど、 耐 えられることではありません…」( 夏 妃 )(EP5)※ 金 蔵 の 優 しさは 何 らかの 形 で 夏 妃 に 伝 わってはいたのでしょう。そのため、 夏 妃 は 金 蔵 を 尊 敬 することが 出 来 たのです。「 蔵 臼 。また 兄 弟 喧 嘩 か。お 前 にはなぜに 弟 や 妹 たちを 率 いる 貫 禄 が 宿 らぬのか。 情 けない! 長 男 が 聞 いて 呆 れるぞ!」( 金 蔵 )(EP3)間 髪 入 れずにその 頬 をびしゃりと 打 つ。紗 音 は 俯 きながら、 普 段 、 屋 敷 に 仕 えながら 見 慣 れた 光 景 を 思 い 返 す。 兄 弟 たちに 尊 大 な 態 度 で 振 舞 う 蔵 臼 ですら、 金 蔵 の 前 では、 未 だに 子 ども 扱 いなのである。… 紗 音 も何 度 か、 金 蔵 が 蔵 臼 に、 平 手 で 打 ったり、 正 座 をさせているところを 見 たことがある。……いい 歳 にもなってそれを 強 いられるのは、 相 当 の 屈 辱 のはずだ。(EP1)絵 羽 が 涙 をこぼすほどに 顔 を 真 っ 赤 にしながら、…… 夏 妃 に 歩 み 寄 り、……その 胸 倉 を 掴 み 上 げる。そして 無 言 で、 夏 妃 のその 頬 を 打 つ。 生 まれてこの 方 、 平 手 で 打 たれたことなど 一 度 もなかった 夏 妃 は、 生 まれて 初 めての、 鉄 の 味 の 感 触 に 呆 然 とする。(EP5)※“■ 金 蔵 は 暴 力 当 主 だったの?”で 取 り 上 げるのですが、 金 蔵 は 女 にも 容 赦 なく 鉄 拳 を 振 るうような 人 間 です。しかし 嫁 いでから30 年 にもなるのに 夏 妃 は 一 度 も 金 蔵 に殴 られたことはなかったわけです( 平 手 ではなく 拳 で 殴 られたのだろうとか、 穿 った 見 方 をすることも 出 来 ますが)。… 蔵 臼 さまと 夏 妃 さまにはなかなか 子 宝 が 授 からなかったのです。 何 しろ 男 尊 女 卑 の 右 代 宮 家 でございます。 妻 は 跡 継 ぎを 残 すための 道 具 。……その 妻 が 唯 一 の 役 割 を 果 たせないのなら、もはや 人 間 扱 いなどされません。 当 時 の 奥 様 が、お 館 様 からどれほど 責 め 苛 まれていたか、 思 い 出 すのも 苦 しゅうございます…。(EP1)68


※ 夏 妃 の 不 妊 の 期 間 は12 年 です。2~3 年 も 妊 娠 しなければ、 見 切 りをつけるのが 普 通 ではないでしょうか。それなのに12 年 も 待 ってくれたのです。 立 場 上 、 厳 しい 言葉 をかけはしたでしょうが、 嫌 っていたなら 蔵 臼 に 妾 を 取 らせるなり、 追 い 出 したりなりしたはずです。 高 貴 な 家 から 奪 い 取 ったトロフィーだったから、と 考 えることも 出来 ますが、 高 貴 な 家 から 迎 えた 嫁 を 不 妊 を 理 由 に 突 き 返 した 方 が、 相 手 に 与 える 屈 辱 は 遥 かに 大 きいはずです。「この 赤 子 を、 我 が 孫 として 迎 えよ。そして 蔵 臼 の 後 を 継 ぐ 者 として 育 てるのだ」( 金 蔵 )(EP5)「……それはつまり、…… 私 と 夫 の 子 として…、 育 てよと 仰 るのですか……」( 夏 妃 )「そうだ。お 前 に 子 が 宿 せぬことはもはや 明 白 。……お 前 の 体 には、 女 としての 欠 陥 があるに 違 いない」( 金 蔵 )※ 確 かに 言 葉 として 厳 しいですが、ようは「 子 どもが 出 来 なくてもお 前 を 嫁 として 認 めるから、もう 苦 しい 治 療 などしなくてよい」ということです。そして、ベアトリーチェの 忘 れ 形 見 である 理 御 を 託 すに 値 する 人 間 であると 認 めているのです。 金 蔵 は 夏 妃 を 心 の 底 から 信 頼 はしていませんでした。しかし、そもそも 金 蔵 が 心 の 底 から 信 頼 する人 間 などいたのでしょうか? いたとしてもせいぜい 源 次 くらいのものではないでしょうか。父 ( 金 蔵 )にとって、 女 は 男 を 支 えるものでしかなく、それ 以 上 であることを 許 さなかったからだ。( 絵 羽 )(EP3)※ 金 蔵 にとって 女 は 男 が 守 るものであり、 庇 護 するものであったのです。 信 頼 されるものであり、 信 頼 するものではないのです。 挨 拶 のときに 目 を 合 わせなかったのも、 金蔵 は 挨 拶 をするときに、 誰 に 対 しても 目 を 合 わせなかった 可 能 性 がありますし、 人 質 同 然 で 嫁 に 迎 え 入 れた 夏 妃 に 対 する 後 ろめたさがあったのかもしれません。あるいは 夏妃 が 美 人 だったので 照 れ 臭 くて 直 視 できなかった 可 能 性 もあります( 夏 妃 は 蔵 臼 の 嫁 、 夏 妃 は 蔵 臼 の 嫁 …)。■ 金 蔵 は 暴 力 当 主 だったの?親 父 ( 留 弗 夫 )に 聞 かされた 話 じゃ、 何 でもかんでも 鉄 拳 制 裁 で、 娘 であろうと 木 刀 で 容 赦 なく 打 ち 据 える 暴 力 当 主 だったそうだ。 俺 も 何 度 も 会 った 記 憶 はないが、 非 常 に 気難 しそうな 顔 をした 祖 父 さんで、いっつも 鋭 い 眼 光 で 周 りを 萎 縮 させていたっけ。 祖 父 さんがいる 時 の 張 り 詰 めた 空 気 は、 窒 息 しかねない 辛 いものだったことも 思 い 出 す。(EP1)「 確 かに 強 面 だけど、そんなに 硬 くなるほど 怖 い 人 じゃないよ。 決 して 理 不 尽 なことは 言 ってないもん。 口 下 手 なだけでちゃんと 筋 は 通 す 人 だよ」( 譲 治 )「 私 なんか 木 刀 で 引 っ 叩 かれたことあるしよー。 尻 だぜ 尻 ! それも 乙 女 の 生 尻 をよー!」( 朱 志 香 )( 金 蔵 は)さっきから 何 度 か 話 題 に 上 ってるので 大 体 わかるだろうが、 非 常 に 短 気 でおっかないお 人 だ。… 俺 は 孫 だし、 最 後 に 会 ったのは6 年 前 の 小 学 生 の 時 だったので、 叩かれたりした 覚 えはないんだが、 親 兄 弟 たちはずっと 鉄 拳 で 教 育 されてきたらしい。(EP1)金 蔵 は 莫 大 な 資 産 を 持 っていて、それを 息 子 たちに 貸 し 与 えていた。もちろん、 生 活 に 困 窮 したからと 貸 す 金 ではない。…その 借 りた 莫 大 な 金 を 使 い、どのように 事 業 を 拡大 するか。どれほどの 利 子 を 付 けて、いつまでに 返 済 できるのか。 持 たざる 者 の 借 金 とは 違 う。 攻 める 者 の 借 金 なのである。 金 蔵 は、 資 産 を 貸 し 与 えるに 値 するかどうか、厳 しく 審 査 し、その 後 の 運 用 についても 厳 しく 監 視 した。だからこうして、 六 軒 島 に 親 族 が 訪 れて、 金 蔵 に 事 業 説 明 を 行 なう 光 景 はたまにあることだった。(EP2)兄 弟 たちに 尊 大 な 態 度 で 振 舞 う 蔵 臼 ですら、 金 蔵 の 前 では、 未 だに 子 ども 扱 いなのである。… 紗 音 も 何 度 か、 金 蔵 が 蔵 臼 に、 平 手 で 打 ったり、 正 座 をさせているところを 見たことがある。(EP2)※ 鉄 拳 制 裁 も 辞 さない、 暴 力 的 な 当 主 だった 一 面 はあったようです。ただし、 木 刀 で 引 っ 叩 かれた 朱 志 香 が 無 事 だったことから、 加 減 は 弁 えていたようです。あるいは 冗 談交 じりだったのかもしれません。■ 金 蔵 は 本 当 は 優 しい 人 だったのでは?「 確 かに、チェスの 目 的 は 勝 利 を 目 指 すことで、 互 いにそのために 最 善 手 を 指 す。…そしてそれを 読 みあう 知 的 ゲームです。……ですが、 勝 利 以 外 にもうひとつ 目 的 があることを、 金 蔵 さんはお 忘 れではありませんかな?」( 南 條 )(EP2)「………… 何 だと。 勝 利 以 外 にどんな 目 的 があるというのか」( 金 蔵 )「はっはっはっは……。 金 蔵 さんがそんなこともお 忘 れとは。…チェスを 通 し、 親 友 と 楽 しい 時 間 を 過 ごす、ですぞ」( 南 條 )「む。…… 参 ったな。それは 確 か、ずいぶん 昔 に 私 がお 前 に 言 った 言 葉 だったはず。…………これは 参 った」( 金 蔵 )※この 場 面 自 体 は 幻 想 描 写 ですが、 金 蔵 の 過 去 の 発 言 は 本 当 のものだと 考 えられます。「お 父 様 は、 家 族 生 活 と 愛 人 との 生 活 の2つを 両 立 させようと、 最 初 から 想 定 していたと 考 えるのが 妥 当 なんでしょうねぇ。 多 分 、 愛 人 との 関 係 は 小 田 原 時 代 にまで 遡 るでしょうし」( 絵 羽 )(EP3)気 付 けばもう、 自 らを 若 者 と 呼 べば、 若 者 たちに 笑 われそうになる 歳 になっていた。 気 が 遠 くなるような、 長 くて 何 も 中 身 のない 灰 色 の 日 々。それは20 年 にも 及 んだ。 妻を 愛 していなかったし、かといって 毛 嫌 いもしなかった。……どうでも 良 かったからだ。(EP7)※ 何 故 、 金 蔵 は2つの 家 庭 を 持 とうとしたのでしょうか? 本 当 に 妻 や 息 子 たちを 愛 していなかったのなら、 離 縁 してしまえばよかったのではないでしょうか。「…… 欲 深 な 長 老 たちは、 互 いの 利 益 ばかりを 主 張 し 合 い、 新 しい 当 主 を 選 び 出 すことさえ 出 来 なかったのだ。 長 老 どもは、 自 分 たちの 操 り 人 形 になるなら、 次 期 当 主 など、どこの 青 二 才 でも 良 かったのだ。むしろ、 帝 王 学 に 無 知 な 人 間 ほど 好 ましい」( 金 蔵 )(EP7)※かつての 金 蔵 は 長 老 たちの 操 り 人 形 でしたから、 政 略 結 婚 の 妻 とはとても 離 縁 など 出 来 なかったでしょう。しかし、 金 蔵 がビーチェに 会 った 時 、 状 況 は 大 きく 変 化 していました。私 は 長 老 たちの 働 き 掛 けにより、 徴 兵 が 免 除 されていた。……もちろん 慈 悲 ではない。 彼 らの 大 切 なお 人 形 だからだ。しかし、 私 が 自 らそれを 返 上 したいと 望 めば、それはとても 容 易 い。その 頃 には、 右 代 宮 家 は 完 全 に 没 落 しかかっており、 長 老 たちは、 自 分 たちの 寿 命 分 程 度 には 財 産 をくすねられたようで、もはや 用 済 みの 私 が 何 をしようと、関 心 はないようだった。※もはや 金 蔵 がどうなっても 構 わないと 長 老 たちは 考 えていたのです。しかも、 金 蔵 の 手 元 には 莫 大 な 金 塊 があります。 家 族 を 愛 していなかったのなら、 離 縁 してしまえばよいのです。しかし、 金 蔵 はそうしませんでした、やはり、 家 族 を 愛 していたのです。紗 音 ははっきりと 理 解 する。 愛 を 知 ることは、 魂 を 得 ること。… 即 ち、 家 具 から 人 間 に 生 まれ 変 わること。ベアトリーチェの 言 葉 には 何 も 間 違 いはなかった。… 彼 女 は 愛 を知 ることで、 人 間 を 知 ったのだ。(EP2)※とありますので、 金 蔵 も 愛 を 知 ったことによって、 自 分 に 向 けられる 愛 にも 気 がついたのかもしれません。…… 歳 は 向 こう(ベアト)の 方 が 上 だろうに、…まるで 私 ( 楼 座 )を 親 鳥 だと 信 じるアヒルか 何 かの 雛 のように、 本 当 に 素 直 に 従 ったわ。(EP3)※ 九 羽 鳥 庵 のベアトの 方 が 楼 座 よりも 年 上 ということは、ビーチェと 出 会 ってからも 妻 との 夫 婦 生 活 があったということです。「( 金 蔵 は) 絶 対 、お 母 様 が 亡 くなった 時 より 泣 いているわ」( 絵 羽 )(EP7)※ 金 蔵 は 妻 が 死 んだ 時 には 泣 いているのです。あるいは 絵 羽 は 泣 いたと 考 えているのです。つまり、そのような 関 係 だったわけです。 後 は 以 下 の 内 容 です。確 かに、 金 蔵 とても 生 まれたばかりの 孫 に、 目 尻 を 下 げた 日 もあったのだ。……まだ 多 少 は 正 常 な 心 が 残 っていた 頃 には。(EP4)…… 金 蔵 に 直 接 仕 えることを 許 された 名 誉 と 厳 しさ。しかし 彼 は、その 全 ての 時 間 が 厳 しかったわけではない。……その 威 厳 を 保 って 見 せねばならない 家 族 の 姿 がない 時 、信 じられないくらい 子 供 っぽい 顔 を 見 せて、おかしな 悪 戯 の 片 棒 を 頼 んできたりするのだ。………お 館 様 に、 銃 を 色 々 撃 たせてもらったっけ。(EP6)世 間 が 右 代 宮 金 蔵 を 語 る 時 、それは 厳 格 で 短 気 で 怒 りっぽく。そして 気 紛 れで 豪 胆 で 理 解 しがたい 奇 人 であるかのように 語 られた…。(EP8)「でもそれは、…… 祖 父 さまの 外 の 顔 だ。 右 代 宮 家 で、 親 類 一 同 、 水 入 らずで 過 ごす 時 の 顔 じゃない。 縁 寿 だって、 遊 んでもらったり、 頭 を 撫 でてもらったりしたことがあるはずだ。 本 当 に 覚 えてないのか……?」( 戦 人 )そう 言 ったことが、……あったかもしれない。しかしそれは、 金 蔵 のちょっとした 気 紛 れで……。「…… 私 、…… 見 てたもん! 知 ってたもん! 右 代 宮 金 蔵 は 恐 ろしい 人 だ、って! 怒 鳴 っているところを 見 たことがあるもん!! 私 は 覚 えてる、 忘 れない!!」( 縁寿 )「さっきも 見 た 通 り、 祖 父 さまは 唐 突 なお 人 だ。……ひょっとすると、 何 かを 驚 かそうとしたのかもしれない。あるいは、 親 たちとの 真 剣 な 議 論 の 中 で、つい 怒 鳴 ってしま69


ったこともあったかもしれない」( 戦 人 )「お、……お 兄 ちゃんだって、6 年 間 、 右 代 宮 金 蔵 には 会 ってないじゃない」( 縁 寿 )(EP8)「そうだな。でも、6 年 ぶりに 帰 って 来 て、…… 祖 父 さまは6 年 経 っても、まったく 変 わってなかったって 知 ったぜ。オカルト 趣 味 なのは 間 違 いない。 余 生 の 趣 味 にしちゃ、ちょいと 珍 しいものだったのは 事 実 だ。……その 不 気 味 な 収 集 品 で 孫 を 怖 がらせてからかう、 悪 い 趣 味 があったことは、 俺 も 認 める」( 戦 人 )戦 人 もかつて 金 蔵 に、からかわれたことがある。おかしな 杭 が7 本 も 詰 まったアタッシュケースを 見 せられ、……これは 中 世 の 昔 に、 魔 女 が 生 贄 の 儀 式 で、 心 臓 を 抉 るのに使 った 杭 だ、みたいなことを。 脅 された 当 時 はそこそこに 怖 かったが、 今 にして 思 うと、 文 字 通 りの 子 供 騙 しだ。 祖 父 さまは 孫 とじゃれ 合 いたくて、…… 怖 がらせてからかっていただけなんだ。「 祖 父 さまはきっと、……お 前 にも 同 じことをしてからかったと 思 う。 幼 いお 前 が、それに 怯 えて、 祖 父 さまを 不 気 味 で 恐 ろしい 人 だと 思 い 込 んだとしても、 無 理 もない 話だと 思 う。さっき、 客 間 でハロウィンのプレゼント 交 換 があったな」( 戦 人 )「…… 何 よ、あれ。あんな 甘 ったるいこと、 右 代 宮 家 でやるわけがない…!」( 縁 寿 )「お 前 は、……まるで 覚 えてないんだな」( 戦 人 )「 私 がかつて、プレゼントをもらったことがあるというの?! 覚 えてない!! そんなのあるわけがない…!」( 縁 寿 )「……オカルト 好 きで 西 洋 かぶれの 祖 父 さまが、ハロウィンをやらないと 思 うか?…… 祖 父 さまのハッピーハロウィンは、もう 親 族 会 議 の 挨 拶 みたいなもんだったぜ。……縁 寿 だってもらってるはずだ。……… 幼 いってのは 残 酷 だな。 祖 父 さまが 心 を 込 めて 選 んだろうプレゼントも、……お 前 の 心 にはまったく 残 らなかった」( 戦 人 )……やがて 縁 寿 も 年 を 経 れば、 右 代 宮 金 蔵 が、 世 間 でどのような 評 判 を 持 つか 知 るだろう。 世 間 が 知 る 右 代 宮 金 蔵 と、 孫 に 接 する 金 蔵 は、まったく 違 う。それを 知 る 時 。…… 縁 寿 は 右 代 宮 金 蔵 を 思 い 出 して、 世 間 の 知 る 暴 君 の 一 面 と、 微 笑 んだ 笑 顔 のどちらを 思 い 出 してくれるだろう。(EP8)私 が 幼 くて 自 分 勝 手 だったから、 覚 えてさえいなかった。いつも 私 を 甘 やかしてくれる、やさしかったお 祖 父 ちゃん。あのハロウィンのクイズパーティ 自 体 は、 確 かに 幻 。あんなことは、 確 かになかったけれど。…… 親 族 のみんなで 集 まる 度 に、………あのパーティに 勝 るとも 劣 らない、…… 楽 しいことが、いつだってあったじゃない………。(EP8)「お 前 ( 留 弗 夫 )の 人 生 にも、そして 家 庭 にも。 私 は 何 も 文 句 を 言 うつもりはない。しかし、 親 父 殿 はカンカンだよ。 勘 当 ならまだしも、 子 の 方 から 愛 想 を 尽 かして 籍 を 出 て行 くなど、 聞 いたこともない」( 蔵 臼 )(EP7)※これは 世 間 体 を 気 にしてのことでしょうか? 自 分 の 愛 する 孫 が、 留 弗 夫 のせいで 家 を 捨 てたことを 怒 っているのではないでしょうか?須 磨 寺 家 から 見 た 右 代 宮 家 は、 莫 大 な 財 産 は 持 っていても、すでに 没 落 した 格 下 の 家 と 見 られていた。しかもその 家 の 次 男 坊 の、 正 妻 ならまだしも 愛 人 とは…。 本 来 なら、これほどの 不 名 誉 ならば、 本 家 の 娘 とて 容 赦 はされない。 棒 を 立 てて、 右 に 倒 れれば 太 平 洋 、 左 に 倒 れれば 日 本 海 に、 簀 巻 きにされて 放 り 込 まれているところだ。………しかし、 霧 江 への 処 分 は 勘 当 のみで、 信 じられないくらいの 温 情 判 決 だった。その 後 、 須 磨 寺 家 は 右 代 宮 グループの 一 部 において、 優 遇 的 な 措 置 を 受 けるようになる。…… 何らかの 裏 取 引 があったのは 間 違 いない。つまり 霧 江 は、 右 代 宮 家 からの 経 済 支 援 をダシに、 堂 々と 須 磨 寺 家 を 出 て 行 ったわけだ。(EP4)※これだって 留 弗 夫 の 一 存 でこんなことが 出 来 るわけがなく、 霧 江 の 為 に 金 蔵 が 動 いてくれたわけです。(KEIYA) 源 次 は「お 館 様 は 真 里 亞 さまのことをあまりお 好 きではない」と 言 っていました。あれはほぼ 事 実 と 見 てもよいのでしょうか。( 最 考 散 )EP8まで 見 ると、とてもそうは 思 えないわけで。 金 蔵 は 孫 を 溺 愛 していたように 見 えましたよね。ただ、 名 前 を 付 ける 時 にかなり 揉 めたのは 間 違 いないわけで。 金 蔵 としては、 可 愛 い 可 愛 い 孫 娘 のためにとっておきの 名 前 を 用 意 しておいたのでしょうけど、よほどのドキュンネームだったんでしょうね( 笑 )。この 世 界 の 一 番 の 主 たる 観 測 者 は 紗 音 なんですよね。 少 なくとも 世 界 観 においては。だから 紗 音 が 見 て 聞 いて、そうだと 思 ったことが 世 界 観 のデフォルトになってしまう。ベアトリーチェが 金 蔵 の 書 斎 に 入 れないというのは、 一 方 的 に 紗 音 が 作 った 設 定 ですし。( 最 考 散 )※ 紗 音 はどう 考 えても、 金 蔵 、 夏 妃 、 絵 羽 に 対 しては 良 い 感 情 を 持 っていません。よってゲーム 盤 でのこの3 人 については“ 書 き 手 による 悪 感 情 ”によって 描 写 が 歪 んでいる 可 能 性 があります。■ 金 蔵 不 在 の 伏 線「…んー……、 去 年 から 相 変 わらず、かな。…… 余 命 3ヶ 月 、 余 命 3ヶ 月 って 割 には 相 変 わらずピンピン、カリカリ、イライラしてるって 話 です」( 朱 志 香 )(EP1)※ 朱 志 香 の 言 葉 から 朱 志 香 は 金 蔵 としばらく 会 っていないことがわかります。「………あなたが 親 族 会 議 に 専 念 できるよう、 全 ての 手 配 を 済 ませています。… 全 て」( 夏 妃 )(EP2)「…………すまん。…… 親 父 殿 の 件 は、…… 問 題 ないかね」( 蔵 臼 )「はい。…… 源 次 と 南 條 先 生 は 私 たちの 味 方 です。…あの 強 欲 な 兄 弟 たちを、 決 してお 父 様 には 会 わせません」( 夏 妃 )※ 蔵 臼 と 夏 妃 には、 源 次 と 南 條 を 巻 き 込 んでまで 金 蔵 を 親 族 に 会 わせたくない 事 情 があることがわかります。源 次 、 紗 音 、 嘉 音 の3 人 は、 右 代 宮 家 の 紋 章 である「 片 翼 の 鷲 」を 身 に 着 けることを 許 された、 金 蔵 直 属 の 使 用 人 だ。もちろん、 右 代 宮 家 に 仕 えているため、 誰 の 命 令 にも従 うが、 唯 一 の 上 司 は 金 蔵 だけだ。 人 事 権 も 金 蔵 のみが 握 っているため、たとえ 蔵 臼 と 言 えど、 彼 らを 勝 手 に 解 雇 することはできない。(EP1)「… 私 は 源 次 たちが 怪 しいと 睨 んでいます。やはり、どんな 難 癖 を 付 けてでも 片 翼 の 鷲 の 使 用 人 たちは 全 て 解 雇 した 方 が 良 かったんです」( 夏 妃 )(EP3)「まぁ、そう 言 うな。 長 く 勤 めてくれた 恩 もある。…もちろん、 気 は 許 せんがね」( 蔵 臼 )※ 人 事 権 を 金 蔵 が 握 っているはずの 片 翼 の 鷲 の 使 用 人 を、 解 雇 した 方 が 良 かったと 言 っています。まるで 人 事 権 が 蔵 臼 たちに 移 っているような 感 じです。■ 蔵 臼 と 夏 妃 の 関 係 は 冷 めていた?「 譲 治 兄 さんのところは 両 親 仲 が 良 くて 羨 ましいぜ? うちなんか 冷 め 切 ったもんさ。そのくせ、 私 の 成 績 の 話 だけは 連 帯 しやがる」( 朱 志 香 )(EP1)※ということですが、これは 朱 志 香 の 主 観 です。「………………… 君 を 思 えばこそ、あえて 関 わらせなかったのだ。これ 以 上 は 頭 痛 に 触 るだろう。 君 は 今 夜 はこれで 休 みたまえ。 兄 弟 の 話 は 兄 弟 でつける。 君 は 関 係 ない。それだけだ」( 蔵 臼 )(EP1)鈍 い 頭 痛 が 夏 妃 を 苛 む…。どんな 薬 や、どんな 香 を 焚 こうとも 癒 されることはない。……むしろこうしてひとりで 薄 暗 い 廊 下 にたたずみ、 雨 音 で 頭 を 満 たしている 方 が 痛 みを 和 らげてくれるような 気 がした…。……… 私 は、 夏 妃 ではあっても、… 右 代 宮 夏 妃 ではなかったのだ。 借 り 腹 と 蔑 まれ、…それすら 出 来 ぬと 罵 倒 され、………それでもなお 妻 の 役 割 を 全 うしようとして、…… 夫 にまで 拒 絶 される。 娘 の 養 育 だけが 自 分 に 残 された 仕 事 なのかとがんばった。…しかし、やり 場 のない 怒 りや 悲 しみは、 無 意 識 の 内にそれらを 歪 ませてしまった…。 過 剰 に 厳 しくした 教 育 のせいで、 朱 志 香 にはすっかり 嫌 われてしまった。 学 校 の 成 績 にしか 興 味 がないと 蔑 まれている。 夏 妃 は 逃 れえぬ 運命 によって、 右 代 宮 家 に 嫁 がなければならなかった 日 々を 思 い 返 してしまう…。それは 自 ら 禁 じた 記 憶 のはず。……… 彼 女 はそれを 意 識 して 忘 れ、 右 代 宮 夏 妃 として 与 えられた 人 生 に、 積 極 的 に 臨 もうとしたのだ…。そして 積 み 重 ねた 新 しい 人 生 。………でも、…その 全 てが、……さっき、 呆 気 なく 否 定 された 気 がする。「… 今 日 の 準 備 は 全 て 手 配 が 終 わっています。あとはお 茶 でも 飲 みながら 寛 いで 待 とうではありませんか」( 夏 妃 )(EP2)「………すまん。 君 に、いつも 面 倒 なことを 全 て 押 し 付 けている」( 蔵 臼 )「…どうか。 私 をもっと 頼 ってはいただけませんか。… 私 はあなたの 妻 です」( 夏 妃 )「…… 無 論 、 君 にはいつも 助 けられているし 感 謝 もしている。……だからこそ、 私 は 私 の 仕 事 に 専 念 できる」( 蔵 臼 )「わかっています。……お 仕 事 のこと。……そしてお 父 様 の 遺 産 の 話 、ですね」( 夏 妃 )「………… 君 には 関 係 のないことだ。 欲 深 な 兄 弟 たちの 腐 肉 の 漁 りあいに 過 ぎん」( 蔵 臼 )「…… 大 丈 夫 です、あなた。… 全 てうまく 行 きます。あなたのお 仕 事 がうまく 行 かなかったことはありません」( 夏 妃 )夏 妃 はそっと 蔵 臼 の 肩 に 寄 り 添 う。 蔵 臼 の 仕 事 の 苦 労 を 労 う 言 葉 を 掛 けるが、… 順 調 でないことを 一 番 知 っているのが 夏 妃 だった。… 夏 妃 だけは 知 っている。 右 代 宮 家 の 長男 として、これから 大 きな 責 任 を 背 負 っていく 蔵 臼 の、 辛 い 胸 中 を 誰 にも 打 ち 明 けられず、 常 に 父 の 偉 業 と 比 べられる 苦 悩 を 知 っている…。70


「………あなたが 親 族 会 議 に 専 念 できるよう、 全 ての 手 配 を 済 ませています。… 全 て」( 夏 妃 )「…………すまん。…… 親 父 殿 の 件 は、…… 問 題 ないかね」( 蔵 臼 )「はい。…… 源 次 と 南 條 先 生 は 私 たちの 味 方 です。…あの 強 欲 な 兄 弟 たちを、 決 してお 父 様 には 会 わせません」( 夏 妃 )※ 上 記 2つの 内 容 は 同 じようなやり 取 りですが、 夏 妃 の 受 け 取 り 方 が 随 分 違 います。どちらが 正 しいのでしょうか? EP5 の 蔵 臼 と 夏 妃 のやり 取 りは 金 蔵 の 死 を 前 提 としているため 真 実 である 可 能 性 が 高 いのですが、それに 近 いのは 後 者 の 方 です。ということは 前 者 は、 書 き 手 によって 歪 められた 描 写 であると 考 えられます。「 朱 志 香 。そういう 言 葉 遣 いは 改 めるよう、いつも 言 っていますよ」( 夏 妃 )(EP2)「……はい」( 朱 志 香 )朱 志 香 は 憮 然 と 答 える。それを 見 て、 蔵 臼 は 少 し 微 笑 むと 夏 妃 との 話 を 中 断 した。「やれやれ…。 朱 志 香 は 勉 強 と 一 緒 に、 少 しはお 淑 やかな 言 葉 遣 いも 学 ぶ 必 要 があるんじゃないかね? 右 代 宮 家 の 家 紋 を 背 負 う 一 人 娘 が、それではみっともないな」( 蔵臼 )(EP2)「いいんですいいんです。あの 人 ( 夏 妃 )、そういうの 全 然 気 付 かない 人 なんで」( 朱 志 香 )(EP2)「 朱 志 香 。 母 親 をあの 人 呼 ばわりとは 感 心 できんね。 謝 りなさい」( 蔵 臼 )※ 蔵 臼 は 朱 志 香 の 言 葉 遣 いには 寛 容 なようですが、 夏 妃 に 対 する 言 葉 に 関 しては 厳 しいです。その 他 、 以 下 のように 蔵 臼 の 言 動 には 夏 妃 を 気 遣 う 様 子 に 溢 れています。ただ、夏 妃 を 気 遣 うあまり、 面 倒 ごとから 夏 妃 を 遠 ざけようとする 蔵 臼 を「 冷 たい」と 夏 妃 は 感 じていたようですが…。「だから 焦 るな、 落 ち 着 けっ。 何 なら、 君 は 熱 を 出 したことにして 寝 込 んでいてくれればいい。その 間 に、 私 が 全 て 乗 り 切 って 見 せる」( 蔵 臼 )(EP5)「……あなただけに 任 せられません…! 私 も 最 後 まで 戦 います…!」( 夏 妃 )夏 妃 が 激 情 に 涙 を 堪 えきれなくなった 時 、……そっと 蔵 臼 がその 肩 を 抱 いた。…… 夫 の 抱 擁 に 温 かみを 感 じたのは、どれくらいぶりだろう……。「 頭 痛 が、……… 酷 いのだろう? 君 がそういうしわを 眉 間 に 浮 かべる 時 は、いつもそうだ」( 蔵 臼 )「 私 は 愛 のない 結 婚 を 強 要 された、 花 嫁 という 名 の 人 質 だと、…そう 思 っていました……。ですが、…… 夫 は、…… 私 を 人 質 などと 見 下 しはしませんでした……。… 私 の 事情 を 理 解 し、 同 情 と 慈 しみを 与 えてくれました……。 夫 だけは、…… 私 の 理 解 者 だったのです…!」( 夏 妃 )(EP5)「……なるほど。それは 一 理 あります。 確 かにあなたの 日 記 には、 蔵 臼 さんがあなたの 事 情 を 知 って、 気 遣 ってくれる 描 写 が、いくつか 散 見 できます。しかしあなたはそれを、こちらの 日 記 帳 の47ページで、むしろ 気 持 ちが 悪 いと 描 写 していますね? 以 下 、 朗 読 します。“ 蔵 臼 の 気 遣 いは、むしろ 私 を 惨 めにさせるだけ。そうして 私 を 辱 しめているのではないかとさえ 思 う 時 があります”。…… 以 上 から、 夏 妃 さんが、そんな 気 遣 いを 見 せていた 夫 を 嫌 悪 していたことがうかがえます」(ヱリカ)「ま、…… 待 ちなさい…! た、 確 かに 最 初 はそう 思 ったこともあります…! まだ 日 々を 不 安 に 過 ごす 私 が、 気 遣 いを 素 直 に 受 け 取 れず、 邪 推 してそう 記 してしまったこともあったかもしれません…! 私 はやがてそんな 夫 の 気 遣 いに 気 付 いて、その 気 持 ちを 受 け 入 れるようになるのです…!」( 夏 妃 )「その 記 述 は、 日 記 帳 のどこにも 登 場 しませんが?」(ヱリカ)「に、…… 日 記 にさえ 書 かない、 秘 められた 気 持 ちというものもあります…!」( 夏 妃 )■ 蔵 臼 はムスカ 大 佐 ?※ 蔵 臼 は『 天 空 の 城 ラピュタ』に 出 てくるムスカ 大 佐 の 台 詞 のパロディをいくつか 話 しています。「 凄 まじい 純 度 を 持 つ 黄 金 のインゴットだよ。こいつがなければ、 誰 も 黄 金 伝 説 を 信 じはしなかった」( 蔵 臼 )(EP1)※「 凄 まじい 破 壊 力 を 持 つロボットの 兵 隊 だよ。こいつが 空 から 降 ってこなければ、 誰 もラピュタを 信 じはしなかったろう」(ムスカ 大 佐 )「こいつはまともなインゴットじゃない。このインゴットを 鋳 造 したのが、 国 内 なのか 国 外 なのか、それすらも 私 にはわからないんだ」( 蔵 臼 )(EP1)※「こいつは 地 上 で 作 られたものではない。この 体 が 金 属 なのか 粘 土 なのか、それすら 我 々の 科 学 力 ではわからないのだ」(ムスカ 大 佐 )「ここを 見 たまえ。………… 怯 えることはない。こいつはただの 金 塊 だ」( 蔵 臼 )(EP1)※「ここを 見 てくれ。 怯 えることはない。こいつは 始 めから 死 んでいる」(ムスカ 大 佐 )「…はははは。お 前 は 六 軒 島 を 宝 島 か 何 かだとでも 思 っているのかね?」( 蔵 臼 )(EP3)※「 君 はラピュタを 宝 島 か 何 かのように 考 えているのかね」(ムスカ 大 佐 )「3 分 間 、 待 ってやる…!」( 蔵 臼 )(EP4)※「3 分 間 待 ってやる」(ムスカ 大 佐 )( 聞 き 手 ) 蔵 臼 はどんな 役 回 りのキャラクターなのでしょうか?( 真 相 1)ラピュタ 王 。※という 発 言 がありますので、 決 定 的 といえば 決 定 的 なのですが…。■ゲーム 盤 とはどのようなもの?「あの 魔 女 どもに、ベアトのゲームは 理 解 できるのか」( 戦 人 )(EP5)「… 同 じゲーム 盤 を 使 う 以 上 、この 子 に 出 来 ないことは 出 来 ません。……しかし、この 子 がやらないことはやれます」(ワルギ)「……………ロノウェは、ヤツらのゲームを 見 たのか」( 戦 人 )(EP5)「 一 部 ではございますが。……… 上 辺 は、 大 変 良 くお 嬢 様 のゲームに 似 せていると 思 います。しかし、 根 本 が 大 きく 異 なっています」(ロノウェ)「それはベアトのゲームのルールに 反 することなのか」( 戦 人 )「いいえ、 反 しません。ラムダデルタさまはお 嬢 様 のゲームのルールを、 実 によく 理 解 なされております」(ロノウェ)※ 誰 がゲームマスターであったとしてもゲーム 盤 のルールには 従 わなくてはならないようです。■ゲームマスターとはどのようなもの?「 領 主 …?! 誰 が?! このカケラの 支 配 者 は 誰 ?! 私 です…!!」(ヱリカ)(EP5)「……… 領 主 ……。……まさか………、…… 戦 人 が………?」(ベルン)「はい。 右 代 宮 戦 人 は、このカケラの 正 当 な 領 主 と 認 定 されているであります…!」(シエスタOO)「えぇ、そうよ。……まだわからないの? あの 黄 金 の 輝 きの 意 味 が。……… 戦 人 はね、…… 至 ったのよ。…… 全 ての 真 実 の 最 深 奥 にねッ!! だから 戦 人 は、 今 やこの 世界 の、 物 語 の、ゲームの 全 てを 理 解 している。……それはつまり、ゲームの 支 配 者 の 地 位 を 得 たということよ。……くすくす、それを 信 じたくないでしょう、ベルン?!」(ラムダ)※ベアトのゲーム 盤 の 仕 組 みを 全 て 理 解 した 者 はゲームマスターになれるようです。「……《 赤 :“ 金 蔵 は 全 ゲーム 開 始 時 に 死 亡 している”》。すでにベアトによって 語 られている 真 実 です。……あの 戦 いは、 戦 人 くんには、 引 き 分 けに 持 ち 込 めれば 上 々。 勝ち 目 は 絶 対 にないはずの 戦 いでした」(ワルギ)(EP5)「……そうだな。…… 一 言 そう 言 われちまえば、それで 終 わっちまう 戦 いだった。……なぜ、その 赤 を 使 わなかった? まさかステイルメイトだからとでも 言 うのか?」( 戦人 )「《 赤 :ノックス 第 2 条 。 探 偵 方 法 に 超 自 然 能 力 の 使 用 を 禁 ズ。》その 赤 き 真 実 を、 私 たちは 直 接 使 うことが 出 来 マセン。しかし、《 赤 :“ 窓 が 降 雨 後 に 開 かれたことはない”》という 赤 き 真 実 を、 私 は 窓 を 守 っていたコーネリアに 持 たせていマシタ」(ドラ)「ドーン。…そいつでチェックメイトだ。………どうしてあの 姉 ちゃんは、その 切 り 札 を 切 らなかった…?」( 戦 人 )71


「…………ッ!! こ、これは……。…………ぅ。き、 謹 啓 …! 我 が 赤 が 破 れる 道 理 はなし! そなたの 望 み、 叶 うことなしと 知 り 給 え…!!」(コーネリア)それまで、 冷 静 に 戦 いを 進 めてきた 彼 女 が、…… 俺 が 突 進 した 時 、 急 に 焦 った。 俺 は 突 然 の 攻 撃 に 怯 んだものと 思 っていたのだが、…… 実 際 は 違 った。 完 全 に 俺 を 弾 き 返 せる 切 り 札 の 赤 を 持 っていたのに、……… 直 前 で、 使 えなくなったから、 戸 惑 ったのだ。「わかりマセン。 突 然 、あの 瞬 間 に、 切 り 札 の 使 用 が 禁 じられたのデス。それを 失 った 時 点 で、あなたの 勝 利 は 約 束 されマシタ」(ドラ)「………ゲームマスター、ラムダデルタ 卿 の 干 渉 でしょう」(ワルギ)「あいつめ…。……… 結 局 、あの 戦 いは 全 て、ラムダデルタの 手 の 平 での 茶 番 ってわけかよ。“ 俺 たち”は、あいつの 筋 書 き 通 りに、お 芝 居 をやらされたってわけだ」( 戦 人 )「………………………。……… 今 度 はマリアージュ・ソルシエールについて 聞 きたい」(ウィル)(EP7)「……………………………」( 真 里 亞 )「……………。……どうした」(ウィル)「やだ」( 真 里 亞 )「………… 何 ?」(ウィル)「 私 、 喉 が 渇 いちゃったからジュース 飲 んでくる。またね」( 真 里 亞 )真 里 亞 は 急 によそよそしくなり、ぺこりと 頭 を 下 げてから、 一 方 的 に 立 ち 去 る。…… 真 里 亞 らしくない 仕 草 だった。なるほど。ゲームマスターが、 駒 を 動 かしたということか。…… 今 は 別 の 話 を 聞 け、ということらしい。※ 以 上 、2つの 内 容 でゲームマスターは 駒 の 行 動 に 干 渉 して 操 作 出 来 ることがわかります。そもそも 以 下 のように 書 かれています。ゲームマスターは、どんな 駒 でも 呼 び 出 せる。そして 駒 たちをどのようにも 動 かせ、 絶 対 の 神 として 君 臨 できる。(EP6)「お 兄 ちゃんはもう、ゲームマスターなんだ。ゲーム 盤 の 全 てを 知 る 者 だけが、ゲーム 盤 を 開 き、 駒 を 招 くことが 出 来 る」( 戦 人 )(EP8)※さらに、 以 下 のようなことまで 出 来 るようです。「…… 戦 人 も、そこまで 見 下 げ 果 てたほど、 無 能 じゃないってことですね。おそらく、ゲームマスター 権 限 で、この 島 の 全 てのガムテープに 干 渉 したんでしょう」(ヱリカ)(EP6)彼 女 にガムテープを 持 たせるだけで、それは 魔 女 にとって 致 命 的 な 武 器 となりうる。それは 前 回 、 証 明 済 みだ。だから 戦 人 は、その 武 器 を 屋 敷 中 から 取 り 除 いたのだ……。「 恐 らく、ガムテープに 代 わる 品 も、 全 て 干 渉 を 受 けているに 違 いないデス」(ドラ)「…… 了 解 デス。3 部 屋 分 の 封 印 のガムテープを 受 領 いたしマス。……その 受 領 ですが、ヱリカ 卿 がミセス 熊 沢 から、 粘 着 力 なきガムテープを 受 領 した 時 点 に 遡 っての 受 領でよろしいデスカ?」(ドラ)(EP6)ガムテープの 封 印 を 作 ろうと、ヱリカは 熊 沢 にガムテープをもらった。しかしそれは、 戦 人 によって、 粘 着 力 のないものに 変 えられていた…。あのガムテープの 粘 着 力 が 問題 なかったということにすれば、ゲームの 進 行 はスムーズだ。「あぁ、いいだろう。…… 物 語 を 書 き 直 す。…… 初 日 の 深 夜 に、ヱリカが 熊 沢 さんからもらったガムテープは、 封 印 可 能 な 粘 着 力 を 持 っていたが、3 部 屋 分 しかない、 残 りわずかのものだった。……これを 今 から 適 用 する」( 戦 人 )※ただ、 以 下 のようにベアトのゲーム 盤 の 駒 は、 標 準 状 態 ではベアトが 作 った 設 定 どおりになるようです。「……あなたは、 何 で 右 代 宮 戦 人 を、お 父 様 と 呼 ぶの?」( 縁 寿 )(EP6)「わ、 私 という 駒 を、 生 み 出 して 下 さったからです…」( 雛 ベアト)「……では、どうして 右 代 宮 戦 人 にそこまで 尽 くすの? 駒 は、 生 み 出 した 造 物 主 に 絶 対 服 従 しなくてはならないルールでもあるの?」( 縁 寿 )「そんなルールはない。…… 駒 は 道 具 、…あるいはナイフだ。……ゲームマスターが 上 手 に 扱 えば 便 利 な 道 具 になる。しかし、 扱 いを 間 違 えれば 自 らを 傷 つけもする。……道 具 になろうと 凶 器 になろうと、そこに 道 具 の 意 志 はない。ただ 結 果 があるだけだ」(フェザ)「じゃあ、どうしてあんたはお 兄 ちゃんにああも 尽 くすの? まるでそれは、……あなたという 駒 の 目 的 かのようだわ」( 縁 寿 )「は、………はい。…それが、 私 が 生 み 出 された 目 的 だからです」( 雛 ベアト)「あんたを 生 み 出 したお 兄 ちゃん 自 身 が、その 目 的 を 与 えたの?」( 縁 寿 )「それは 違 う。… 戦 人 はゲームマスターとして、“そういう 役 目 を 持 った 駒 ”を、 盤 上 に 置 いたに 過 ぎない。……そして、 彼 女 という 駒 を 生 み 出 したのは、このゲームを 生み 出 した 最 初 のゲームマスターである、ベアトリーチェ 自 身 だ…」(フェザ)「……あぁ、ややこしい 話 だわ。……つまり、あんたはお 兄 ちゃんのことを、お 父 様 お 父 様 呼 んでるけど、 別 に 父 親 ってわけじゃないのね。……あんたは、お 兄 ちゃんに 尽くさなければならないという 目 的 のために、 親 しみを 込 めて、お 父 様 と 呼 んでるだけだわ」( 縁 寿 )「は、……はい。……そうだと 思 います。 私 という 駒 を 盤 上 に 置 いて 下 さったのがお 父 様 です。お 父 様 が 盤 上 に 置 かなければ、 私 という 駒 の 出 番 はありません。ですから、私 がここにこうして 存 在 し、そして 私 の 目 的 のために 尽 くせるのは、 全 てお 父 様 のお 陰 なのです」( 雛 ベアト)「……なるほど。そしてそれは、お 父 様 と 呼 ぶのに 相 応 しいってわけね。……じゃあ 誰 があんたに、お 兄 ちゃんに 尽 くすように 命 じたの? ……あぁ、それは 初 代 ゲームマスターのベアト 自 身 よね。……あぁぁ、ややこしいっ」( 縁 寿 )「なぜにそなたは、 右 代 宮 戦 人 に 尽 くさねばならぬのか、……と 尋 ねたいのであろう? しかし、それを 彼 女 に 答 えることは 出 来 ぬ。 彼 女 に 与 えられたのは 目 的 だけだ。……その 目 的 を 与 えた 動 機 は、 与 えた 本 人 にしかわからぬのだから」(フェザ)このベアトの 行 動 原 理 は、お 兄 ちゃんを 慕 う 女 の 子 そのもの。でも、ならば 彼 女 は 何 ? お 兄 ちゃんが 好 きなら、 慕 うのも 尽 くすのも、 自 分 自 身 でするべきだわ。それをどうして、……“ 彼 女 という 駒 ”を 生 み 出 し。 自 分 以 外 の 存 在 にやらせるの……? それじゃ、……もしもお 兄 ちゃんが 振 り 向 いてくれたとしても、それは 駒 の 彼 女 に 対 してであって、…… 彼 女 という 駒 を 生 み 出 した、 創 造 主 に 対 してではなくなってしまうじゃない。※しかし、 以 下 のように、 限 界 もあるようです。戦 人 は 激 しく 机 を 叩 くが、 駒 のベアトは 何 の 反 応 も 示 さない。…… 戦 人 が“それに 反 応 するように” 命 じないから。 駒 としてなら、あのベアトを 蘇 らせることは 容 易 い。しかしそれは、 戦 人 が 望 んだ 通 りに 動 くだけ。…… 会 話 だって、これじゃ、…… 独 り 言 を 言 ってるのと、…… 何 も 変 わらない………。ゲームマスターは、どんな 駒 でも 呼 び 出せる。そして 駒 たちをどのようにも 動 かせ、 絶 対 の 神 として 君 臨 できる。……しかし、だからこそ、……ただの 駒 。それは 信 じられないほどに、 孤 独 で、…… 悲 しい。(EP7)※ゲームマスターには 以 下 のようなことも 出 来 るようです。「《 金 :この 死 体 が 右 代 宮 金 蔵 の 死 体 であると 保 証 する…!!》」( 戦 人 )(EP5)「…… 見 事 な 黄 金 の 真 実 。………、 有 効 デス」(ドラ)「 黄 金 の 真 実 は、……この 世 界 の 領 主 、……いえ、……ゲームマスターにしか 使 えないッ!!」(ラムダ)「…… 朗 読 の 巫 女 は、 自 分 の 口 を 通 して、 物 語 を 脚 色 することも 歪 めることも 出 来 る。……たとえ 私 のゲームに 小 細 工 がなくとも、 朗 読 の 術 で、いくらでもそれをすることが 出 来 る」(ベルン)(EP8)「そうであるな。……それもまた、ゲームマスターの 権 利 の 一 つだ」(ベアト)「あんたたちとしたい 決 闘 は、シンプルでありたいの。………だから、 朗 読 者 はいらない。あなたたちが 自 らの 目 と 耳 で、 物 語 を 読 みなさい」(ベルン)「いいの…?! それじゃベルンに 有 利 なことがなくなっちゃうじゃない…!」(ラムダ)「…………わかった。 朗 読 者 はいらない。 俺 たちが 自 分 で、 物 語 を 読 む」( 戦 人 )「 朗 読 者 がいないということは、………いわゆる、 物 語 のト 書 きに、 一 切 の 虚 偽 が 混 じらぬということか」(ベアト)■ 駒 とはどのようなもの?※ 普 通 に 考 えれば、 駒 はプレイヤーが 操 作 するものです。しかし、ベアトのゲーム 盤 では、プレイヤーは 一 人 ( 戦 人 )しかいません。 戦 人 が 動 かすのは、 自 分 ( 戦 人 )だけです。では、その 他 の 駒 はどのようにして 動 いているのでしょうか? ゲームマスターであるベアトが 全 て 操 作 しているのでしょうか? その 答 えは 以 下 の 通 りです。72


「プレイヤーがいなくても、 駒 は 勝 手 に 動 き、ゲームは 進 む。……そうだったわよね」( 縁 寿 )(EP8)「……そうだな。プレイヤーを 離 れ、 少 し 傍 観 者 になるといい。そして、また 戻 って 来 たい 時 に、 戻 ればいい」( 戦 人 )「……… 物 語 だけはちゃんと 見 ていろよ。 聞 くだけでもいい」( 戦 人 )(EP8)「 気 が 向 いたらね。……じゃ」( 縁 寿 )縁 寿 の 目 が、ぼんやりと 曇 る。そして 一 際 強 い 風 が、ざぁっと 吹 いて、 彼 女 の 髪 を 大 きく 散 らした。その 風 が 埃 を 運 んだのだろう。 縁 寿 は 鼻 をむずむずさせてから、 大 きなくしゃみをする。「………ぅぅぅ。……お 兄 ちゃん…?」( 縁 寿 )「 何 だい」( 戦 人 )「……いつまでここにいるの…? 何 かお 天 気 、 変 …。……ゲストハウスに 帰 ろうよ」( 縁 寿 )もう、 縁 寿 の 瞳 は 曇 っていない。しかし、 先 ほどまでの 縁 寿 とは、どこか 瞳 の 色 や 雰 囲 気 が、 違 うように 見 えた…。※つまりゲームマスターが 初 期 設 定 したAI( 人 工 知 能 )で 自 動 的 に 行 動 するのです。これならばベアトは 何 十 人 もの 駒 を 一 人 で 操 作 する 必 要 はなくなります。「…………おいおい、 何 だよこれ。…… 駒 の 俺 は、ずいぶんと 頭 がキレるじゃねぇか。お 陰 で 俺 の 推 理 する 出 番 がねぇぜ」( 戦 人 )(EP5)「あぁ、ごめんなさい。…… 戦 人 はこの 時 、 不 在 だったから、 私 の 方 で 勝 手 に 駒 を 操 らせてもらったわ。……… 切 れ 者 っぽくていいでしょう…?」(ベルン)「くすくすくすくすくす…! あんたはベルンにプレイヤーをしてもらった 方 が 賢 そうに 見 えるわ。……プレイヤーは 降 りて、 駒 に 専 念 した 方 がよくない?」(ラムダ)俺 は10 月 5 日 の、だいぶ 殺 人 が 起 こってからの 段 階 でゲームに 途 中 参 加 した。だから、そこまでの“ 俺 ”という 駒 は、プレイヤーのベルンカステルがコントロールしてる。なので、ベルンカステルの 推 理 を、“ 俺 ”の 口 を 通 して 披 露 することも 可 能 、ってわけだ…。…… 今 の 俺 にとって、 現 在 見 ているこのゲームは、すでに 終 わっている 部 分 のリプレイに 過 ぎない。「こいつはもう、ゲームには 参 加 してねぇよ。……ゲーム 盤 のこいつを 操 ってるのは、ラムダデルタだ」( 戦 人 )(EP5)「 存 じておりマス。……ですが、 本 来 のこの 世 界 の 主 デス。そしてあなたは、その 主 に 招 かれた、 正 当 な 客 人 デス。ですからこうして、ご 挨 拶 に 参 じマシタ」(ドラ)「…… 先 ほどの 戦 いでは、ありがとうございマシタ。 最 後 の 最 後 に、 慈 悲 を 与 えてくれたこと、 感 謝 いたしマス」(ドラ)(EP5)「あの“ 俺 ”は 俺 じゃねぇぜ。……ラムダデルタが 操 ってたんだ」( 戦 人 )俺 は、 第 5のゲームには 途 中 から 参 加 している。“この 時 点 ”では、まだ 参 加 していない。だから、 俺 が 参 加 するまでの 間 、“ 俺 ”という 駒 は 恐 らく、ベルンカステルか、もしくはラムダデルタによって 操 られているはずだ。「……あいつら、どういう 気 まぐれだろうな。 妙 にカッコ 良 くしてくれやがって。あれじゃまるで 俺 が、ベアトを 助 けに 来 たナイト 様 みてぇじゃないか」( 戦 人 )「ラムダデルタ 卿 は、 魔 女 とニンゲンのそれぞれが 均 衡 し、ドローゲームとなることを 望 んでいます。………ヱリカの 登 場 により、 天 秤 がニンゲン 側 に 大 きく 傾 いたので、ベアトに 加 担 するように 物 語 を 操 ったのでしょう」(ワルギ)「それは 知 っていマス。しかし、 駒 は、 出 来 ないことは 出 来 ナイ。そして、 本 来 の 性 格 に 相 応 しい 行 為 を 得 意 とスル。……だから、あれは 確 かにあなたの、…… 戦 人 の 成 し得 たことデス。だから、あなたに 感 謝 するのデス」(ドラ)※ 上 記 3つの 内 容 で 戦 人 は“ 駒 はプレイヤーが 動 かすもの”と 認 識 しているようです。 実 際 にベルンが 操 作 した 場 面 もあったでしょうが、AIで 動 いている 場 面 もあったはずです。ドラノールは 戦 人 の 発 言 を 肯 定 しているように 見 えますが、それはあくまで“ 駒 を 操 作 しているのは 戦 人 とベアトではない”ということであると 考 えられます。ちなみに、このEPの 戦 人 は 優 秀 ですが、 何 せプレイヤーの 戦 人 は 以 下 の 有 様 です。「ついでに 言 おう。《 赤 :そなたは 無 能 だ》! くっくくくっくくくくく、《 赤 :ひーっひひっひひひひひひひひひひひひ》!!」(ベアト)(EP2)※ 本 来 は 優 秀 な 駒 である 戦 人 が、 赤 字 で 無 能 認 定 されてしまったプレイヤーのせいでその 能 力 を 発 揮 できないのかもしれません。 何 よりの 証 拠 が 以 下 の 場 面 です。「 私 の 知 る 限 り、ミステリー 史 で、もっとも 死 者 が 出 る 連 続 殺 人 は、アガサ・クリスティの『そして 誰 もいなくなった』の10 人 です。 日 本 ミステリー 界 では、 多 分 、 島 田荘 司 の『 占 星 術 殺 人 事 件 』ではないかと。まぁ、こっちは10 人 未 満 ですが」(ヱリカ)(EP5)「 日 本 ミステリー 界 の 話 だが。……『 占 星 術 殺 人 事 件 』より、 坂 口 安 吾 の『 不 連 続 殺 人 事 件 』の 方 が 先 だぜ」( 戦 人 )「あっははははははっはっはっは、きゃーっはっはっはっはっはっはッ!! 何 これダッサぁイ、 超 ウケルー!! まー、 仕 方 ないわよねぇ? 『 占 星 術 』は、 事 件 が 起 こるのが1936 年 だもんねぇ? それと 混 同 しちゃったのよねぇ? うっひっひひっひひっひゃっはっはァア!!」(ラムダ)ラムダデルタは、テーブルを 両 手 でバンバンと 叩 きながら 笑 い 転 げる。 屈 辱 に 堪 えていたベルンカステルも、 唐 突 に 噴 出 すと、 同 じようにテーブルを 笑 い 転 げながら 叩 き 出す。「ふ。……………くっくくくくくぁっはっはっはははははははッ!! オモシロイオモシロイ!! ぎーっひっひっひひひひひひひひィ!!………やるじゃない、 戦 人 の 駒 」(ベルン)※ラムダが 操 作 して 戦 人 にこの 発 言 をさせたのなら、こんなにはウケないでしょうし、ベルンが 評 価 しているのもラムダではなく、あくまで 戦 人 の 駒 です。ということは、これが 戦 人 の 駒 の 実 力 なのです。「おや、ベアトリーチェさんじゃないですか。てっきり 前 回 、 死 んで 消 えたとばかり」(ヱリカ)(EP6)「…… 消 えたのはプレイヤーのベアトよ。こいつは 駒 でしょ、 戦 人 の」(ベルン)「 駒 ではあっても、ご 本 人 と 変 わりありマセン」(ドラ)※ 駒 は 本 来 のその 人 物 を 忠 実 に 再 現 しているようです。ですから 例 えAIで 動 いているのだとしても、その 行 動 は 本 人 がそこにいるのと 変 わらないわけです。EP5 以 外 の 戦人 はプレイヤーの 戦 人 が 操 作 しているため“ 本 当 の 戦 人 ”がゲーム 盤 で 見 れるのはEP5だけなのかもしれません。「 馬 鹿 馬 鹿 しい……。 馬 鹿 馬 鹿 しい……! 私 は 認 めないわよ…。こんな 茶 番 が 真 実 なんて、……… 絶 対 に 認 めないんだから…!!」( 縁 寿 )(EP8)そう 吐 き 捨 てると、 縁 寿 の 瞳 が 曇 る。すぐにそれは 晴 れる。その 時 にはもう、 縁 寿 は6 歳 の 彼 女 に 戻 っていた…。縁 寿 は 一 度 だけ 鼻 を 啜 り、 目 を 擦 った 後 には、6 歳 の 彼 女 に 駒 を 譲 った。(EP8)※プレイヤーは 結 構 自 由 に 駒 から 離 れたり、 戻 ったり 出 来 るようです。そして 離 れてもAIで 動 くわけですから、 我 々ゲームをプレイしている 者 にとっては、 見 分 けがつかずやっかいです。“■EP2の 終 盤 で 戦 人 は 何 故 、 金 蔵 を 目 撃 したの?”で 取 り 上 げた 戦 人 はまさにこれで、 終 盤 、プレイヤーが 駒 から 離 れてしまったものと 思 われますが、 特に 言 及 されていなかったため、 本 来 ならばありえないことが 起 こってしまったわけです。ちなみにベアトのゲームの 駒 でない 場 合 はプレイヤーが 離 れると 以 下 のようになります。「………ごめんね。 私 ってば、 最 高 にカッコ 悪 いわ。……そうよね、ここで 私 が、 任 せておきなさいって 胸 を 叩 いたら、 私 の 人 気 は 鰻 登 りで、 次 の 人 気 投 票 はトップ3くらいに 入 っちゃうかもねー。…………でもね。…… 私 はあんたたちと 違 って、……“ 物 語 の 登 場 人 物 ”じゃないのよ。…… 死 ねないのよ。……あんたたちが 深 夜 に、クライマックスはこれからだーとか 意 気 込 んでるけど。 私 は 明 日 、 月 曜 でガッコーで、 日 直 で 朝 は 起 床 が 早 いワケよ…! 住 んでる 世 界 が 違 うのッ…!! だからさッ、…… 私 をさ、……………………はーーー……………」(ラムダ)(EP8)ラムダデルタは、 立 ち 眩 みでも 起 こしたかのように、……すとんと 椅 子 に 座 る。そして 人 形 のように 無 表 情 になり、ただじっと、 宙 の 一 点 を 見 て、 沈 黙 していた……。「………すまん」( 戦 人 )戦 人 が 小 さく 謝 る。しかし、ラムダデルタは 無 表 情 なままだった。「…… 俺 たちに 出 来 ることも 尽 くさないのに、あんたにだけ、 何 かを 失 うように 強 いるのは、フェアじゃない」( 戦 人 )「………………………………」(ラムダ)「 俺 たちは、ここで 戦 い、 最 後 の 一 秒 まで、ここを 守 る。……… 縁 寿 が、 一 なる 真 実 よりも、 俺 たちを 選 び、 帰 って 来 てくれるかもしれない 奇 跡 を 信 じて。……それも 尽 くさないのに、あんたに、 俺 たちと 一 緒 に 命 を 捨 ててくれなんて、 頼 めるわけもない」戦 人 は 席 を 立 ち、 踵 を 返 す。73


「…… 戦 人 …」(ベアト)「 見 張 りの 二 人 と 交 代 してくる。…… 俺 が、ヤツらと 戦 う 時 の 先 陣 でありたい。それが、 今 すぐ 俺 がラムダデルタに 見 せられる、 俺 の 決 意 だ」( 戦 人 )「……………………………」(ラムダ)「 妾 も 行 くぞ。お 師 匠 様 は、ラムダデルタ 卿 に 新 しいポップコーンを 頼 む」(ベアト)「……ベアト…」(ワルギ)「 縁 寿 は 必 ず 帰 る。 信 じねば、 実 る 奇 跡 も 実 らぬというもの。クジを 買 わねば、 当 たることもないのだからな」(ベアト)戦 人 の 後 を 追 い、ベアトも 席 を 立 つ。「……みんな。 戦 いに 備 え、 何 かの 準 備 をしよう」( 譲 治 )「 賛 成 だぜ。ここで 俯 いてたって、 馬 鹿 馬 鹿 しいぜ…!」( 朱 志 香 )「そうだな。 最 後 くらい、 景 気 良 く 行 こうぜ」( 留 弗 夫 )「……… 縁 寿 ちゃんの 帰 る 場 所 を、 守 らなくちゃ」( 絵 羽 )「 私 たちも、 作 戦 会 議 が 必 要 デス」(ドラ)「そうだな。 家 具 に 武 具 に 悪 魔 に 異 端 審 問 官 だ。このちぐはぐ 連 合 軍 で、うまく 連 携 を 取 らなきゃな」(ウィル)「さぁ、 妹 たち。 休 憩 の 時 間 は 終 わりよ」(ルシファー)「シエスタ 隊 、 起 立 」(シエスタ00)ニンゲンたちも、 幻 想 の 住 人 たちも、…… 皆 、ぞろぞろと 立 ち 上 がり、 東 屋 を 後 にする。 後 には、ぼんやりと 宙 の 一 点 を 見 つめ 続 ける、 放 心 したラムダデルタが 残 るだけだった……。※AIが 用 意 されていないため、 動 かなくなってしまうのです。この 時 、ラムダは 何 をしていたのでしょうか? 友 達 に 電 話 をして 日 直 を 代 わってもらっていたのでしょうか。あるいは 長 丁 場 に 備 えて 夜 食 の 用 意 にでも 行 ったのかもしれません。とにかくプレイヤーがコントローラーを 置 いてどこかに 行 ってしまったため、 動 けなかったのです。駒 関 係 で1つ 理 解 できない 場 面 があります。それが 以 下 の 場 面 です。「 我 が 主 、それをどうかお 認 め 下 さい!! 私 は 無 能 ではありません、 失 望 もさせません…! 必 ずやこのようにご 期 待 に 応 えて 見 せますから、どうかお 見 捨 てにならないで 下 さい!! 我 が 主 …!!」(ヱリカ)(EP5)天 井 よりさらに 向 こうにいるのかもしれない 誰 かに 向 かい、ヱリカは 両 手 を 広 げてそう 叫 ぶ。そして、………それに 応 えたかのような、 大 きな 大 きな 落 雷 が、すぐ 近 くに 落ちる。ものすごい 音 だった。 地 響 きさえ 感 じた。その 音 と 同 時 に、ヱリカは、まるで 操 り 人 形 の 糸 が 全 て 千 切 れたかのように、カクンと 脱 力 し、 椅 子 に 座 り 落 ちる。そして、ゆっくりと 元 通 りの 風 雨 の 音 が 部 屋 を 満 たすと、……まるで 立 ち 眩 みから 目 覚 めたように、ヱリカはうっすらと 目 を 開 ける。すると、 何 事 もなかったかのように、 静 かに 食事 を 再 開 する。 先 ほどからずっとそうであるかのように、 平 然 と。…… 今 、ヱリカは 突 然 立 ち 上 がって、おかしなことを 捲 くし 立 てなかったっけ……? 思 わず、 自 問 したくなるくらいに、ヱリカはさも 当 然 のように、 静 かに 食 事 を 続 けている。その 平 然 とした 様 子 に 一 同 は、…… 自 分 たちが 疲 れてしまっていて、ヱリカが 突 然 叫 び 出 すような幻 を 見 てしまったんだろうと、それぞれが 自 分 を 納 得 させてしまった。だから、ほんの 数 瞬 前 のヱリカの 変 貌 ぶりは、 白 昼 夢 のような 扱 いとなり、すぐに 全 員 の 記 憶 から 薄れていった……。ヱリカは、 静 かにサラダを 突 きながら、 誰 にも 聞 こえぬ 声 で 呟 く。ありがとうございます、 大 ベルンカステル 卿 ……。 我 こそは 古 戸 ヱリカ。 我 が 主 の 駒 にして 分 身 。…… 必 ずや、あなたのために 最 高 の 物 語 を 献 上 してご 覧 にいれます。うっふふふふ……。※ 落 雷 後 、しばらくの 間 、ヱリカの 駒 からプレイヤーが 離 れてしまったのでしょうか? その 時 、ベルンに 何 らかの 許 しをもらって 再 び 駒 に 帰 ってきた、という 解 釈 をしていますが、 正 直 自 信 がありません。ちなみに“ 駒 ”という 言 葉 は2つの 意 味 で 使 われるようです。1つは 完 全 な 操 り 人 形 としての 駒 。これはEP6で 出 てきた 以 下 の 駒 ベアトです。「どうだ、ベアト。 俺 の 作 った、 第 6のゲームは」( 戦 人 )(EP6)「……………………」( 駒 ベアト)「まぁ、 素 直 に 褒 めるヤツじゃないもんな。せいぜい、“ 無 能 なりにそこそこ 頑 張 ったではないか”、ってとこだろうぜ」( 戦 人 )「くっくくくく。 無 能 なりにそこそこ 頑 張 ったではないか」( 駒 ベアト)「へっ。ゲームマスターの 立 場 になってよくわかったぜ。……お 前 も 毎 回 、ずいぶんと 苦 労 してやがったんだってな」( 戦 人 )「……………………」( 駒 ベアト)「“ゲームを 作 るのは 楽 なことではない。よもやそなたと、それを 労 い 合 う 日 が 来 ようとはな”」( 戦 人 )「ゲームを 作 るのは 楽 なことではない。よもやそなたと、それを 労 い 合 う 日 が 来 ようとはな」( 駒 ベアト)「…………………………」( 戦 人 )「…………………………」( 駒 ベアト)「…… 違 う…。……こんなのは、……ベアトじゃないッ…」( 戦 人 )戦 人 は 激 しく 机 を 叩 くが、 駒 のベアトは 何 の 反 応 も 示 さない。…… 戦 人 が“それに 反 応 するように” 命 じないから。 駒 としてなら、あのベアトを 蘇 らせることは 容 易 い。しかしそれは、 戦 人 が 望 んだ 通 りに 動 くだけ。…… 会 話 だって、これじゃ、…… 独 り 言 を 言 ってるのと、…… 何 も 変 わらない………。※この 操 り 人 形 としての“ 駒 ”が 出 てくる 場 面 はほとんどなく、この 作 品 で“ 駒 ”と 言 う 場 合 は、 一 般 的 には 以 下 のように“キャラクター”を 指 すと 考 えられます。「……あなたは、 何 で 右 代 宮 戦 人 を、お 父 様 と 呼 ぶの?」( 縁 寿 )(EP6)「わ、 私 という 駒 を、 生 み 出 して 下 さったからです…」( 雛 ベアト)「……では、どうして 右 代 宮 戦 人 にそこまで 尽 くすの? 駒 は、 生 み 出 した 造 物 主 に 絶 対 服 従 しなくてはならないルールでもあるの?」( 縁 寿 )「そんなルールはない。…… 駒 は 道 具 、…あるいはナイフだ。……ゲームマスターが 上 手 に 扱 えば 便 利 な 道 具 になる。しかし、 扱 いを 間 違 えれば 自 らを 傷 つけもする。……道 具 になろうと 凶 器 になろうと、そこに 道 具 の 意 志 はない。ただ 結 果 があるだけだ」(フェザ)「じゃあ、どうしてあんたはお 兄 ちゃんにああも 尽 くすの? まるでそれは、……あなたという 駒 の 目 的 かのようだわ」( 縁 寿 )「は、………はい。…それが、 私 が 生 み 出 された 目 的 だからです」( 雛 ベアト)「あんたを 生 み 出 したお 兄 ちゃん 自 身 が、その 目 的 を 与 えたの?」( 縁 寿 )「それは 違 う。…… 戦 人 はゲームマスターとして、“そういう 役 目 を 持 った 駒 ”を、 盤 上 に 置 いたに 過 ぎない。……そして、 彼 女 という 駒 を 生 み 出 したのは、このゲームを生 み 出 した 最 初 のゲームマスターである、ベアトリーチェ 自 身 だ…」(フェザ)※ゲームマスターは 以 下 のように 駒 の 知 覚 に 干 渉 できるようです。… 秀 吉 は、 足 元 の 紗 音 の 遺 体 を 見 下 ろす。………それは、 他 の 遺 体 と 同 じような 目 を 覆 いたくなるような 惨 状 。…… 頭 部 を 側 面 から 砕 かれ、 表 情 は 半 分 しか 残 っていなかった。(EP1)※ 秀 吉 は“ 死 体 がある”と 嘘 をついたわけではなく、 実 際 に 死 体 を 目 撃 しています。嘉 音 は 恐 る 恐 る 源 次 の 毛 布 を 剥 ぎ、……… 源 次 の 変 わり 果 てた 姿 に、…… 絶 句 した。(EP5)「な、 何 よこれ。 首 がスッパリ、やられてるぅ!」(ベルゼブブ)「……… 鋭 利 だ。… 相 当 の 刃 渡 りのものでなければ、ここまでの 切 り 口 には 出 来 まい」(ベルフェゴール)「ど、どういうことよ。 碑 文 の 謎 を 戦 人 が 解 いたんでしょう? どうして 殺 人 が 起 こるわけ?!」(レヴィアタン)「わからん。……いずれにせよ、 厄 介 なことになるぞ。ベアトリーチェさまと 夏 妃 さまにご 報 告 申 し 上 げた 方 がいい」(ベルフェゴール)「ベルフェは 急 いでルシ 姉 に 報 告 を…!!」(レヴィアタン)「 心 得 た…!」(ベルフェゴール)74


「………ごめんね、 源 次 。そこでゆっくり 永 眠 してたいだろうけど、そういうわけにはいかないの。 右 代 宮 家 の 最 後 の 当 主 、 夏 妃 に 死 してなお 奉 公 するために、ここから 消えてちょうだい」(ガァプ)(EP5)ガァプは 毛 布 を 捲 り、 安 らかに 眠 る 源 次 に、そう 語 り 掛 ける…。そして 深 く 刻 まれた 首 の 傷 をじっと 見 る…。「……… 見 事 な 切 り 口 じゃない。……まさに 一 刀 で 斬 ったのね。………こんな 真 似 が 出 来 るヤツが、 顕 現 しているの……? 嫌 ね。…これが 可 能 な 心 当 たりのあるヤツに、ろくなヤツがいないわ」(ガァプ)言 うに 及 ばず、 魔 女 は 己 の 格 に 比 例 して、 強 力 な 存 在 を 召 喚 できる。あの 大 ラムダデルタ 卿 が、とっておきの19 人 目 として 呼 び 出 したのだ。…… 楽 観 的 に 見 積 もってさえ、その 格 は、 自 分 やロノウェと 同 等 …。ベッドに 漆 黒 の 穴 が 開 き、まるで 源 次 をベッドの 中 に 飲 み 込 んでしまうように 消 し 去 る。 源 次 の 死 体 もまた、ゲストハウスの4 人 と 同様 に、どこか 見 知 らぬ 場 所 に 隠 されてしまう…。※ 以 上 の 場 面 は、 幻 想 存 在 である 煉 獄 の 七 姉 妹 やガァプも 駒 であることには 変 わりはないため、 知 覚 に 干 渉 されているのだと 考 えられます。つまりガァプは“ 元 々 無 い 死 体 ”を“ 自 分 が 消 した”と 認 識 させられているのです。■ 駒 の 認 識 力「さて、ベアトリーチェ。お 前 が 取 った6つの 駒 は 何 なのか、そして 次 なる 手 はどうくるのか。 楽 しませてもらうぞ。…… 私 の 守 りは 完 璧 だ。 前 回 のような 無 様 は 晒 さぬぞ」( 金 蔵 )(EP2)「…… 珍 しいよ。 殺 されないで、 捕 まるなんて」( 嘉 音 )(EP4)「 今 回 はベアトリーチェさまがお 越 しにならないし。お 館 様 が 書 斎 を 出 られるし。…… 何 が 何 だかわかんないね…」( 紗 音 )「わかるさ。……… 何 が 起 ころうと 変 わろうと、 全 てあの 魔 女 の 気 まぐれと 余 興 。 結 果 は 何 も 変 わらないのさ」( 嘉 音 )「 今 回 は 黄 金 郷 に、……… 行 けるかな」( 紗 音 )「さぁね。 僕 たちは 脱 落 率 が 高 いから」( 嘉 音 )「…………そう 言 えば、 二 人 で 第 一 の 晩 を 生 き 延 びたのって、ずいぶん 珍 しいね。…… 儀 式 が 始 まってるのに、こうして 二 人 でお 話 できるなんて、 何 だかすごく 珍 しい 気 がする」( 紗 音 )※ゲーム 盤 の 駒 の 中 にも 他 のゲームを 認 識 している 駒 がいるようです。ただ 紗 音 と 嘉 音 はメッセージボトルの 書 き 手 であるヤスの 分 身 、 金 蔵 は 既 に 死 んでいるため 幻 想 存 在( 魔 女 や 悪 魔 と 同 等 の 存 在 )ですので、 普 通 の 駒 は 他 のゲームを 認 識 していないと 思 われます。■『 最 終 考 察 うみねこのなく 頃 に 散 』にツッコミ! ツッコミ!※KEIYAさんは“ 消 滅 説 ”というトンデモ 説 を 掲 げています。それは 以 下 のような 説 です。・ヤスはゲーム 盤 上 に 存 在 しない。 彼 女 が 自 分 の 分 身 としてゲーム 盤 に 配 置 した 駒 は 紗 音 である。よって 紗 音 が 抱 えている 心 と 事 情 は、 現 実 世 界 のヤスに 重 ねられている。・ヤスしか 知 りえない 情 報 がメッセージボトル 以 外 のゲーム 盤 ( 八 城 十 八 の 偽 書 )に 出 てくるのは、 戦 人 が 親 族 会 議 の 日 にそれを 知 った 可 能 性 が 疑 える。 十 八 と 幾 子 が 後 年 になって 得 た 情 報 が 入 り 込 んでいる 可 能 性 もある。・ 紗 音 が 死 亡 すると 嘉 音 は 消 滅 してしまう。それは 紗 音 が 生 み 出 した 分 身 だからである。 朱 志 香 の 死 や 紗 音 の 恋 心 の 決 着 も 嘉 音 消 滅 のトリガーになっている 可 能 性 がある。嘉 音 の 消 滅 はヤスが 現 実 世 界 を 反 映 して 定 めた、ゲーム 盤 におけるルールである。・ 紗 音 と 嘉 音 はゲーム 盤 上 に 駒 として 実 在 する。 紗 音 が 一 人 二 役 を 演 じているわけではなく、 多 重 人 格 でもない。(p266)※ 言 いたいことはわかります。「 変 装 したってバレバレだろ!」ということです。しかし、KEIYAさんは、 常 識 に 囚 われ 過 ぎたあまり、 逆 にトンデモな 説 に 辿 りついてしまったのです。この 作 品 はミステリーです。 人 間 で 全 てが 説 明 できるのです。つまり 現 実 の 物 理 法 則 が 適 用 される 世 界 なのです。それなのに 人 間 が 消 滅 するってどういうことですか? これは『 名 探 偵 コナン』でコナンが「Aさんが 死 ぬとBさんは 消 滅 するのです」と 言 い 出 すのと 同 じことです。 哀 しいことに、KEIYAさんは 本 人 も 気 がつかないうちに、 魔 女 に 敗 北 してしまっていたのでした。そんなKEIYAさんに 以 下 のやり 取 りを 贈 りましょう。「 未 知 の 薬 物 X, 未 知 の 科 学 装 置 Xは、 魔 女 と 戦 う 上 での 一 番 の 武 器 だろうが…」( 戦 人 )(EP5)「………それ、。 全 部 、 正 式 なミステリーでは 違 反 だから。 未 知 のウイルス、 未 知 の 薬 物 、… 未 知 の 病 気 、 未 知 のXを 仮 定 なんて、 立 派 なファンタジーなわけ。ご 愁 傷 様 。それがあなたの 推 理 だったなら、あなた、ゲームオーバーよ。あなたはベアトと 真 正 面 から 戦 ってきたつもりでいる。でもね、 本 当 は 違 うのよ。 真 正 面 じゃない。ズレた 角度 で 戦 い 合 ってたの。あなたがしてた 推 理 ごっこは、ファンタジー 対 ミステリーじゃない。ファンタジー 対 アンチファンタジーでしかないのよ。……… 私 たちは 魔 女 幻 想 というファンタジーを 殺 すために 戦 ってるのよ。それはつまり、この 物 語 を“ 正 式 なミステリー”で 解 釈 するということ。つまり、ミステリーの 禁 忌 に 触 れる 全 ての 要 素 は 始めから 無 視 してかかれということよ」(ベルン)※さらにイタいことに、この 解 釈 でEP6をどう 突 破 するのだろうと 期 待 して 読 んでみたら、トンデモないことが 書 いてありました。嘉 音 という 異 名 を 持 つ 紗 音 は 隣 部 屋 の 窓 から 脱 出 し、 屋 敷 の 客 室 に 駆 けつけた。そして 戦 人 と 入 れ 替 わってクローゼットに 身 を 潜 める。ここまではいい。(p114~P115)※ 全 然 よくないですよ! 貴 方 は“ 紗 音 と 嘉 音 はゲーム 盤 上 に 駒 として 実 在 する。 紗 音 が 一 人 二 役 を 演 じているわけではなく、 多 重 人 格 でもない”と 書 いてるじゃないですか。 何 考 えてるんですか、まったくもう。第 一 の 晩 が 起 きる 前 に、 霧 江 は 私 服 (ブレザー) 姿 のベアトリーチェと 遭 遇 した。( 中 略 ) 彼 女 は 嘘 をついているのだ。(P273~274)※ 仮 に 楼 座 に 頼 まれて 嘘 をついたとしましょう。しかし、その 後 、 霧 江 の 発 言 によって 親 族 会 議 に 波 乱 が 巻 き 起 こります。 楼 座 にどんな 頼 まれ 方 をしたのか 知 りませんが、あの 状 況 で 嘘 をつき 通 すというのはありえないのではないでしょうか?■さくたろうの 伏 線叔 母 さん( 楼 座 )はかなり 手 先 が 器 用 。 彼 女 の 着 る 洋 服 の 中 には、 自 ら 作 ったものもあるそうだ。だからぬいぐるみを 作 るぐらい、きっとお 手 の 物 だったに 違 いない。(EP4)そこに 現 れたのは、つぶらな 瞳 と 白 いおなかが 可 愛 らしい、ちょっとのっぺりしたライオンのぬいぐるみだった。 大 きさは 小 さな 枕 くらい。 背 の 低 い 真 里 亞 お 姉 ちゃんが 持つとそこそこの 大 きさに 見 えるけど、 多 分 、そう 大 きくはないのだろう。 何 も 知 らない 人 が 見 れば、 百 貨 店 か 何 かで 売 っている 安 物 だと 思 うだろう。でも、 真 里 亞 お 姉 ちゃんにとっては、 世 界 でただひとつの、 何 物 にも 変 えられない 母 親 の 手 作 りのぬいぐるみなのだ。(EP4)※デザイナーであり、 自 分 で 服 まで 作 れてしまう 楼 座 が 作 ったにしてはさくたろうの 出 来 はショボそうです。また、まさしく 枕 だったため、マルフク 寝 具 店 に 置 いてあったわけです。ちなみにEP6で 答 えは 明 かされています。……だって、ほとんどの 場 合 、 出 版 社 からは 何 の 連 絡 もなくて、そのまま 明 日 、 新 島 に 出 発 してしまうのだから。………………? ……… 新 島 に 出 発 したら、それから 六 軒島 に 行 って。……お 姉 ちゃんに、…さくたろうのぬいぐるみを。……え? ………どうして 私 、さくたろうのぬいぐるみを………?(EP6)量 販 品 のぬいぐるみだって、…… 小 さな 魔 法 で、 世 界 にたった 一 つの、 母 の 愛 に 満 ちた 素 敵 なぬいぐるみに 生 まれ 変 われるのだ。(EP6)■ 朱 志 香 には 何 故 、 彼 氏 が 出 来 ないの?「しゃ、…… 紗 音 さ…。… 正 直 に 言 って…。……… 私 。………… 髪 型 とか、… 変 かな…」( 朱 志 香 )(EP2)「まさか…。お 嬢 様 の 髪 はとてもお 美 しいと 思 います」( 紗 音 )「じゃ、じゃあじゃあ、 目 とか 変 かな、 鼻 とか 変 じゃないかな。…やっぱり 喋 り 方 が 駄 目 なのかな……。だから 彼 氏 できないのかな……」( 朱 志 香 )「そんなはずはありませんよ。お 嬢 様 はそのままで 充 分 に 素 敵 です。そして、その 魅 力 はこれからもっともっと 増 していくと 思 いますよ」( 紗 音 )「……でも、 私 だけ 彼 氏 できない…。サクもヒナも 彼 氏 できたのに、 私 にだけできないよ……。やっぱり 私 には 魅 力 ないからかな……。みんなね、 文 化 祭 に 彼 氏 連 れてくるんだって……。 私 もその 日 までにはきっと 彼 氏 いるって 思 って、 大 見 得 切 って…。……… 彼 氏 なんてできやしない。 私 だけ、 私 だけ……」( 朱 志 香 )75


朱 志 香 には 彼 氏 がいない。 異 性 の 友 人 は 多 いのだが、 特 定 のオンリーワンはいない。…しかし 朱 志 香 は 学 校 ではちょっとした 有 名 人 で、それに 見 合 うパートナーがいて 当 然だと 思 われていた。(EP2)朱 志 香 は 学 校 の 生 徒 会 長 でもあるのだ。…そんな 面 倒 臭 いものに 関 心 はないのだが、 親 がうるさいのでいやいやなった。 不 幸 にも、 学 校 内 では 人 気 者 だったので 当 選 してしまっていた。(EP2)※ごく 単 純 にみんな「 自 分 では 朱 志 香 にはつり 合 わない」と 思 い、 気 後 れしてしまうのでしょう。なにせ、 人 気 者 で 生 徒 会 長 で、 夫 は 将 来 の 右 代 宮 家 当 主 です。■ 朱 志 香 の 喘 息 は 演 技 ?※EP7で 以 下 のやり 取 りがあります。「 私 は、こんな 時 の 真 里 亞 を、そうだと 思 ってる。……いや、 本 当 の 自 分 が、 普 段 の 自 分 を 塗 り 潰 してしまったと 言 うべきかな。 私 も、そういうのちょっと 覚 えが。…… 深窓 の 令 嬢 に 憧 れて、 病 弱 な 自 分 になれたらいいなと 思 って…、 咳 する 真 似 ばっかしてたら、 悪 いクセになって」( 朱 志 香 )(EP7)「 咳 き 込 めば、 周 りがやさしくしてくれるからか」(ウィル)「いや、はは、…… 嫌 な 話 の 流 れになった 時 とか、 空 気 悪 い 時 とかに、 流 れを 断 ち 切 れるし」( 朱 志 香 )「なるほど。それもまた、お 前 の、なりたいもう 一 人 の 自 分 、なんだな」(ウィル)「はは、この 話 は 内 緒 で 頼 むぜ…」( 朱 志 香 )※ところが 以 下 の 場 面 を 見 ると、とても 演 技 とは 思 えません。「それなら 絵 羽 叔 母 さんが 先 に 説 明 しろよ!! 6 人 を 誰 がどうやって 殺 して、そして 自 分 が 関 わっていないという 証 拠 を 示 してみろってんだッ!! ……ゲホン、ゲホゲホゲホン、ゲホッ、ゴホッ!!! うー、ゲホゲホゲホ!! ゲホゲホッ!!ゲホゲホガハガハッ!!!」( 朱 志 香 )(EP1)「お 嬢 様 …、お 嬢 様 …!!」( 熊 沢 )朱 志 香 が 急 に 咳 き 込 み 始 める。 威 勢 よく 叫 びすぎて 咽 てしまったのかと 思 ったが、それにしては 長 く 本 当 に 苦 しそうだった…。 朱 志 香 はなおも 咳 を 続 け、 床 に 四 つん 這 いになりながらも 咽 続 ける…。「 朱 志 香 …、しっかり…!! 南 條 先 生 …!」( 夏 妃 )「… 朱 志 香 さん、 吸 入 器 を 早 く。……いえ、 私 が 持 ってきているのがあります」( 南 條 )南 條 先 生 は、ソファーに 置 いてあった 自 分 の 鞄 から 気 管 支 拡 張 剤 の 吸 入 器 を 取 り 出 し、 朱 志 香 に 渡 す。……そう 言 えば、6 年 前 の 朱 志 香 も、 時 折 激 しく 咽 こみ 始 めると、あれで 薬 を 吸 ってたっけ…。でも、 朱 志 香 がこんなにも 苦 しむ 様 子 は、6 年 前 には 見 られないものだった。「…… 兄 貴 、 朱 志 香 ってこんなに 喘 息 ひどかったっけ…?」( 戦 人 )「ここ 数 年 でだいぶ 悪 くなったんだよ…。 大 丈 夫 な 時 はいいんだけどね…。 突 然 発 作 が 来 ると 咳 が 止 まらなくなるんだよ」( 譲 治 )「ゲホンゲホン!! うー、ガハッゲホゲホゲホ!! ゴホンゴホン、ゴホンゴホン!!」( 朱 志 香 )「……お 嬢 様 、お 薬 です。………さぁ…」( 嘉 音 )「……………ん、…。……ゲホンゴホン!!」( 朱 志 香 )嘉 音 くんの 手 から 吸 入 器 を 与 えられ、 朱 志 香 が 慣 れた 手 つきでそれを 吸 う。…しばらくは 喉 に 痒 さを 感 じているようだったが、 次 第 に 治 まっていった…。「 大 丈 夫 かよ、 朱 志 香 …。びっくりしたぜ…」( 戦 人 )「…… 大 したことねぇよ。… 心 配 すんじゃねぇぜ…」( 朱 志 香 )朱 志 香 は 全 身 に 玉 のような 汗 を 浮 かべて 荒 い 息 を 隠 せずにいたが、とりあえず 突 発 的 な 喘 息 発 作 は 治 まったようだった…。朱 志 香 は 喘 息 に 苦 しみながら、… 壁 にもたれかかりつつも、 自 分 の 部 屋 に 向 かっているようだった。…… 嘉 音 は 無 言 でその 後 を 追 う。 手 を 貸 せといわれれば、 飛 んでいって支 える。…しかし 朱 志 香 がそれを 求 めない 限 り 気 配 を 殺 し、いつでも 助 けられる 距 離 にいて、 彼 女 を 見 守 った。…… 心 が 張 り 裂 けそうなほど 悲 しい 時 、 誰 かがそこにいてくれたらと、 百 億 の 人 々が 振 り 返 る 時 、 居 て 欲 しい 場 所 に 嘉 音 はいながら 朱 志 香 の 背 中 を 無 言 で 見 守 った…。そしてとうとう、 自 分 の 部 屋 の 扉 の 前 でうずくまってしまう。…… 喘 息 の 発 作 は、 全 身 の 体 力 を 奪 う。そして 酸 欠 になった 頭 は 朦 朧 とし、もはや 立 ち 上 がることもできないのだ。(EP2)※これらの 場 面 はゲーム 盤 での 出 来 事 です。 執 筆 者 である 紗 音 が“ 朱 志 香 は 喘 息 だ”と 信 じていたため、ゲーム 盤 の 朱 志 香 は 本 当 に 喘 息 なのだと 考 えられます。■ 紗 音 が 実 際 の 六 軒 島 でしようとしたことは?「 特 別 条 項 。 契 約 終 了 時 に、ベアトリーチェは 黄 金 と 利 子 を 回 収 する 権 利 を 持 つ。ただし、 隠 された 契 約 の 黄 金 を 暴 いた 者 が 現 れた 時 、ベアトリーチェはこの 権 利 を 全 て 永遠 に 放 棄 しなければならない。…… 利 子 の 回 収 はこれより 行 ないますが、もし 皆 様 の 内 の 誰 か 一 人 でも 特 別 条 項 を 満 たせたなら、すでに 回 収 した 分 も 含 めて 全 てお 返 しいたします。なお、 回 収 の 手 始 めとしてすでに、 右 代 宮 本 家 の 家 督 を 受 け 継 いだことを 示 す“ 右 代 宮 家 当 主 の 指 輪 ”をお 預 かりさせていただきました。 封 印 の 蝋 燭 にてそれを、どうかご 確 認 くださいませ」( 真 里 亞 )(EP1)※ 殺 してしまっては“お 返 し”することが 出 来 なくなるため、 戦 人 以 外 の 全 員 を 巻 き 込 んだ 一 大 偽 装 連 続 殺 人 ショーをもくろんでいたと 考 えられます。ですから 第 一 の 晩 の犠 牲 者 は 全 員 使 用 人 だったでしょう(『EP3』の 六 連 鎖 密 室 が 現 実 の 六 軒 島 でも 予 定 されていたのだと 思 います)。その 後 は 親 族 との 個 別 交 渉 によって 共 犯 者 を 増 やしていくつもりのはずが、 絵 羽 を 中 心 とした 親 族 によって 碑 文 の 謎 が 解 かれてしまい、 破 綻 したのだと 考 えられます。もっとも、 遺 族 になると 思 われる 全 員 に 金 が 送 られていたことから、 最 後 には 全 員 爆 死 する 予 定 だったのでしょう。ひとつ 気 になるのが“ 戦 人 の 勝 利 条 件 ”です。 六 軒 島 に 暮 らす 紗 音 が 何 か 月 もかけて、さらにヒントまで 与 えられて 解 いた 謎 を、 部 外 者 の 戦 人 が1 日 で 解 けることは 考 えられません。 戦 人 が 約 束 を 思 い 出 したら、あるいは 偽 装 連 続 殺 人 ショーを 見 破 ったら“ 戦 人 の 勝 利 ”ということにするつもりだったのではないでしょうか? 戦 人 以 外 の 人 間 は 紗 音 と 同 じ 条 件 であったため、 特 に 手 心 を 加 えるつもりはなかったと 考 えられます。■ 紗 音 の 胸 は 偽 物 ?戦 人 が 本 当 に 紗 音 のおっぱいを 揉 んでいたら、 胸 が 偽 物 だということに 気 づいたかもしれない。 紗 音 は 常 に「バレるならバレろ」という 気 持 ちだったんでしょうね。( 最 考散 )※ 本 文 中 にはそのような 記 述 はまったくありませんでしたが、 作 者 が 言 うからにはそうなのでしょう。「かー、 俺 が 真 里 亞 を 背 負 うって 立 候 補 すりゃあよかったぜ~! そうすりゃ、 傘 をさしてくれる 紗 音 ちゃんのでっけぇお 乳 を 二 の 腕 でたっぷり 堪 能 できたってのによぅ!」( 戦 人 )(EP1)「そそそ、そんなつもりじゃないよ、 誤 解 だよ…!」( 譲 治 )「そっ、そうしないと 譲 治 さまが 濡 れてしまうと 思 いまして………」( 紗 音 )※この 場 面 では、かなり 近 づいているか、もしくはかすかに 触 れている 程 度 (バレない 程 度 に)だったと 考 えられます。彼 女 ( 紗 音 )の 肩 を 抱 き 寄 せる。 華 奢 な 体 が、 強 引 に 抱 き 寄 せられて、まるで 人 形 のように 僕 ( 譲 治 )の 胸 に 飛 び 込 んだ。その 頭 を 抱 え 込 みながら、 二 人 して 水 平 線 を 見 る。 僕たちは、 小 雨 すらぱらつき 始 めている 灰 色 の 海 を 眺 めながら、 互 いの 鼓 動 をいつまでも 確 かめ 合 うのだった…。(EP2)※この 場 面 では、 譲 治 は 紗 音 を 背 後 から 抱 きしめていたのだと 考 えられます。そうでないと 抱 き 合 っているのに 同 じ 方 向 を 見 ることはできないからです。もしくはおっぱいソムリエの 戦 人 とは 違 い、 譲 治 にはニセモノだとわからなかったのかも。76


■ 紗 音 の 容 姿「…はーー…! 朱 志 香 にも 驚 かされたが、 紗 音 ちゃんにも 驚 かされたぜ…。あんたもすっかり 美 人 になったじゃねぇのよ~!」( 戦 人 )(EP1)容 姿 がすっかり 変 わってしまったので 記 憶 は 繋 がらないが、6 年 前 の 彼 女 にはお 互 い 面 識 がある。 内 気 な 感 じの 性 格 は 今 も 昔 も 変 わらないようだが、やはり 歳 相 応 の 女 の 子らしい 魅 力 が 宿 ったような 気 がする。( 戦 人 )(EP1)※ 美 人 なようです。■ 紗 音 は 優 秀 ?答 えに 窮 するとすぐに 言 いよどんでしまう 紗 音 は、ただそれだけの 短 所 のためにいつも 損 をしていた。 郷 田 のように、ミスがあってもうまく 立 ち 回 れる 狡 猾 さがわずかにでも 紗 音 にあったなら、もう 少 し 気 楽 に 日 々を 送 れたろうに。…そつなく 仕 事 をこなせる 分 、その 短 所 は 非 常 に 気 の 毒 だった。もっとも、ミスを 言 い 繕 って 誤 魔 化 すことを 思いつかない 紗 音 の 素 直 さは、わかる 人 間 にはわかる。(EP1)譲 治 との 交 際 を 始 めてから、 紗 音 は 表 情 を 明 るくすることが 多 くなった。 笑 顔 は 全 てを 円 滑 にし、 運 気 すらも 変 える。…… 紗 音 は 以 前 に 比 べれば 仕 事 でミスをすることも 少なくなり、 家 人 の 評 価 も 少 し 変 わり 始 めていた。「…… 私 はその、 今 でもそうなんですが、うっかり 屋 さんで…。よく、ものをどこにおいたか 忘 れたり、 鍵 を 掛 けたつもりが 忘 れちゃったりとかして、…… 迷 惑 を 掛 けてたんです」( 紗 音 )(EP6)「でも 紗 音 は 途 中 から 克 服 したんだぜ、その 忘 れっぽいの」( 朱 志 香 )「……うふふ。たいしたことじゃないんですけど、……その、こまめにメモを 残 すようにしたんです。 大 切 なものはどこに 置 いたのか、ちゃんとメモして。… 日 々 繰 り 返 すことは、メモにチェックリストを 書 いてちゃんと 点 検 して……」( 紗 音 )※あまり 優 秀 ではなかったようですが、 大 分 ましにはなったようです。■ 譲 治 と 朱 志 香 の 対 比「 空 手 で 蹴 りの 威 力 を。テコンドーで 速 度 を。カポエイラでは 自 在 の 間 合 いを 学 んだ」( 譲 治 )(EP4)… 嘉 音 が 目 を 開 くと、なぜか 教 室 内 はひどい 惨 劇 。みんな 大 の 字 型 になって 壁 に 打 ち 込 まれていた。 朱 志 香 は 嘉 音 が 目 を 開 く 前 にメリケンサックをポケットにしまう。(EP2)朱 志 香 はロノウェを 正 確 なフットワークで 壁 際 に 追 い 詰 めていく。 回 り 込 ませない。(EP4)※ 足 技 主 体 の 譲 治 とボクシングの 朱 志 香 は 対 比 になっています。これは 単 純 なキャラ 立 てという 可 能 性 もありますが、 絵 羽 がボクシング 経 験 者 である 蔵 臼 への 対 抗 意 識 から、譲 治 には 足 技 主 体 の 格 闘 技 を 学 ばせた 可 能 性 があります。 自 身 はムエタイもやっていますし。■ 譲 治 と 紗 音 はいつから 付 き 合 いだしたの?当 時 の 私 ( 紗 音 )は 中 学 生 。 歳 相 応 に 色 恋 を 想 像 することもある、 普 通 の 少 女 だった。でも、 私 はその 夢 を、 本 当 は 見 てはいけなかった。…なぜなら、 私 は「 家 具 」だからだ。家 具 は 道 具 に 過 ぎず、 人 間 ではない。 人 間 未 満 の 私 は、 義 務 教 育 に 行 かせてもらえただけでも 十 分 すぎる 幸 せだったのだ。だから 恋 なんて、 本 当 は 知 ろうと 思 うこと 自 体 が身 に 過 ぎたことのはずだった…。(EP2)譲 治 のことを 異 性 として 意 識 したのは、 確 かにこれが 初 めてだった。 自 分 ( 紗 音 )は 家 具 で、 譲 治 は 右 代 宮 家 に 連 なる 大 切 な 賓 客 。……それ 以 上 の 関 係 なんて、 想 像 することすら 許 されないと 思 ってきた。だから 考 えなかった。「そ、それはとても 魅 力 的 な 提 案 だけど、… 紗 音 ちゃんに 悪 いよ。 彼 女 の 貴 重 な 休 日 を 奪 うだけじゃない。 彼 女 が 本 当 に 想 いを 寄 せる 人 と 二 人 きりで 過 ごす 聖 域 に、 僕 が 割り 込 んでしまうことになる。そんな 無 粋 なことはできないね」( 譲 治 )「わ、わ、… 私 も、その……、…… 想 い 人 とかそういう 人 はいませんので、その、…そういうお 気 遣 いは、はい、む、 無 用 なのです…!」( 紗 音 )「 兄 貴 たち、 付 き 合 って、どのくらいになるんだ?」( 戦 人 )(EP3)「どの 段 階 から 付 き 合 ってると 呼 ぶのかにもよるだろうけど、 確 実 に1 年 以 上 は 続 いてると 思 うぜ。 双 方 片 思 い 時 代 を 含 めると 数 年 になるんじゃねぇのかな」( 朱 志 香 )「 世 界 を、 変 更 。…… 恋 の 芽 を、 紗 音 からベアトリーチェに」(ベアト)(EP7)※ 上 記 の 恋 の 芽 をベアトに 移 したのが1983 年 の 親 族 会 議 です。 親 族 会 議 は 毎 年 10 月 ですから、 紗 音 が 譲 治 の 事 を 意 識 し 出 したのは1984 年 あたりからと 考 えられます。 当 時 紗 音 の 年 齢 は 公 称 14 歳 、 譲 治 は21 歳 。ちょっとロリコン 入 ってないでしょうか?■ 使 用 人 の 勤 続 年 数 は?一 昨 年 から 右 代 宮 本 家 にお 仕 えさせていただいております」( 郷 田 )(EP1)「( 嘉 音 は)ここに 勤 めて3 年 になるんだっけ?」( 朱 志 香 )(EP1)「はい。お 陰 様 で10 年 ほどお 仕 えさせていただいております」( 紗 音 )(EP1)( 熊 沢 は) 右 代 宮 家 にもう 何 年 も 勤 めている 古 参 の 使 用 人 だ。さすがに 高 齢 なので 力 仕 事 は 得 意 じゃないが、 台 所 仕 事 から 掃 除 、 洗 濯 と 何 でもこなすスーパー 使 用 人 らしい。玉 に 瑕 なのはサボリ 癖 があるらしいということか。(EP1)「 熊 沢 さんはさ、… 辞 めたり 勤 めたりと 急 がしいけど、 源 次 さん 並 みに 昔 からここに 出 入 りしてるわけでしょ? ……ベアトリーチェのこと、もっと 知 ってるんじゃないの?」( 朱 志 香 )(EP2)( 南 條 は) 祖 父 さまがこの 島 に 屋 敷 を 立 てた 当 初 からの 付 き 合 いだそうで、 数 十 年 の 交 流 があるという。まさか 祖 父 さまの 怪 しげな 趣 味 のご 縁 かと 思 ったら、 意 外 にもチェス仲 間 なのだそうだ。(EP1)玄 関 を 入 ると、 老 いた 使 用 人 が 迎 えてくれた。 彼 はさすがに 俺 の 記 憶 にも 残 ってる。 最 古 参 で、 使 用 人 の 長 を 勤 める 源 次 さんだ。(EP1)( 右 代 宮 家 の 屋 敷 は) 戦 後 すぐに 建 てられたらしいから、すでに 半 世 紀 近 くを 経 た 貫 禄 を 漂 わせている。(EP1)実 際 、( 金 蔵 は 源 次 を) 死 んだ 祖 母 さまよりも 常 に 側 に 控 えさせていたらしい。 朱 志 香 に 言 わせると、 祖 父 さまはどんな 肉 親 たちよりも 信 頼 しているという。しかし 勤 めてどのくらいになるんだろう。 詳 しく 聞 いたことはないが、この 屋 敷 が 建 てられた 当 初 からいる、みたいな 話 を 聞 いたこともある。…ということは、 半 生 を 奉 公 に 捧 げてるってことになる。…そりゃあ、 信 頼 も 厚 いわけだぜ。(EP1)※ 勤 続 年 数 が 短 い 順 から 並 べてみました。■ 真 実 の 魔 女 の 限 界「あなたはベルンカステル 卿 の 駒 になる 以 前 から、 実 に 見 事 な 青 き 真 実 の 使 い 手 デス。………しかし、ヱリカ 卿 。ニンゲンに 許 されるのは、 青 き 真 実 だけデス。そして、 青き 真 実 に 反 論 できるのは 赤 き 真 実 だけデス。そして 赤 き 真 実 は、ニンゲンには 許 されていマセン。…………ならばどうやって。…あなたのお 相 手 は、 彼 の 真 実 を 示 せば 良 かったのデスカ。…… 私 が 示 した、あなたを 今 も 愛 している 青 き 真 実 の 証 拠 6 点 は、 未 だ 否 定 されていマセン。……あなたさえ、ニンゲン。それを 否 定 する 赤 き 真 実 を 使 えは、しないのデス」(ドラ)(EP6)「 探 偵 権 限 で、84 点 の 証 拠 を 赤 き 真 実 に、 後 に 昇 格 させました。 我 が 主 のお 力 によって…! 私 はニンゲンにしてニンゲンを 超 えた 存 在 。 探 偵 にして 魔 女 。 真 実 の 魔 女 、古 戸 ヱリカです」(ヱリカ)※これは84 点 も 証 拠 があったから、それを 赤 き 真 実 に 昇 格 できたわけではなく、 単 にそれが 真 実 だったからに 過 ぎません。もしヱリカの 彼 氏 が 本 当 にヱリカを 裏 切 っていなかったとしても、 愛 を 信 じないヱリカにはその 真 実 には 辿 りつけないのです。「 船 の 都 合 があるので、 時 間 がほしい。あなたはそう 言 ったわ。でも、あなたが 買 収 されているならば、それは 須 磨 寺 霞 が 六 軒 島 で 待 ち 伏 せするための 時 間 稼 ぎだと 断 言 で77


きる」( 縁 寿 )(EP8)「………し、 知 らんぞ、…… 何 のことかわからんッ…!!」( 川 畑 船 長 )「ありがとうございます。……それでは 明 日 、お 昼 に。あの、これ。 船 代 に」( 縁 寿 )(EP4)縁 寿 は 懐 より 帯 封 付 きの 壱 万 円 札 の 束 を 取 り 出 す。その 厚 みは、 確 かに 船 長 にも 見 えたはずだ。しかし 船 長 はまったく 興 味 を 示 さず、 首 を 横 に 振 った。「……わしはお 前 さんに 感 謝 しとるよ。これは 天 のお 導 きだ。あんたを、 六 軒 島 へ 連 れて 行 き、そして 無 事 に 連 れ 帰 る 最 後 のチャンスを 下 さったんだ。わしは 金 蔵 さんに 任されていた 最 後 の 仕 事 を、 今 、ようやく 終 えることが 出 来 る。だからあんたには 感 謝 してる。カネは、 当 時 の 金 蔵 さんからたらふくもらってる。あんたから 取 れんよ。……… 事 情 は 知 らんが、 相 当 な 厄 介 に 巻 き 込 まれてるようだな。 胡 散 臭 い 連 中 が、 人 探 しをしていると 噂 になっとる。あんたのことじゃないのかね? わしは、 六 軒 島 を 目 指 す客 人 を 送 り 届 け、……そして 迎 えに 行 き、 連 れ 帰 ることが 仕 事 だった。……その 仕 事 を12 年 前 に 中 断 したまま、まだ 終 えていない。だからわしは、あんたのお 陰 でその 仕事 を、ようやく 終 えることが 出 来 るんだ。だから。………わしにその 仕 事 を 終 えさせてくれよ? わかってるな?」( 川 畑 船 長 )※ 川 畑 船 長 が 買 収 されるような 人 間 なら、 縁 寿 の 金 を 受 け 取 っていたはずです。ですから 本 当 は 川 畑 船 長 は 買 収 されていなかったでしょう。しかし、 縁 寿 はその 真 実 を 見 抜けず、 自 分 が 信 じた 真 実 によって 川 畑 船 長 を 殺 してしまいました。 真 実 の 魔 女 の 真 実 とは、 本 人 にとって 都 合 の 良 い 真 実 であり、 客 観 的 な 真 実 ではないのです。■ 親 族 会 議「また 台 風 か。…… 親 族 会 議 が 毎 年 10 月 ってんじゃ、これは 宿 命 だぜ」( 留 弗 夫 )(EP1)「 同 感 ねぇ。 私 もお 盆 の 時 期 にやってくれればっていっつも 思 うわよ」( 絵 羽 )右 代 宮 家 の 親 族 会 議 は 年 に 一 度 。10 月 の 最 初 の 土 日 に 行 なわれる。 世 間 一 般 的 な 家 だったら、 親 族 会 議 なんてもったいぶった 名 前 で 呼 んだところで、 久 しぶりに 親 類 が 顔を 合 わせて 寿 司 桶 でも 囲 みながら 挨 拶 する 程 度 だろう。しかし、 莫 大 な 資 産 の 一 部 を 息 子 兄 弟 に 貸 し 出 し、 事 業 的 な 成 功 を 以 って 一 人 前 と 見 なそうという 右 代 宮 家 では、それは 文 字 通 り 会 議 であったという。 相 当 厳 しい 親 族 会 議 だったらしく、 罵 声 や 怒 声 が 次 々と 浴 びせられ、いい 年 にもなって 平 手 打 ちをもらうこともざらだったらしい。(EP1)右 代 宮 家 の 親 族 会 議 は 毎 年 10 月 に 行 なう 恒 例 的 なものだが、それ 以 外 の 時 に 親 類 たちが 訪 れることもあった。(EP2)「 夏 はいとこたちで 海 ではしゃいだし、 冬 は 冬 で、 色 々ゲームをして 遊 んだっけ! 俺 たちにとっては、 親 族 会 議 ってのは 楽 しいもんだったぜ」( 戦 人 )(EP7)※ 明 らかにおかしいです。 考 えられる 可 能 性 は3つです。1つ、 毎 年 10 月 になったのは 最 近 のことで、 昔 は 特 に 決 まった 時 期 はなかった。2つ、 毎 年 10 月 というのは、メッセージボトルの 書 き 手 であるヤスが 考 えた 設 定 。3つ、 竜 騎 士 07さんの 勘 違 い。■ 身 長 はいくら?( 戦 人 の 身 長 は) 今 じゃ180cmは 超 えている( 戦 人 )(EP1)※ 戦 人 の 身 長 は180cm 前 後 だと 考 えられます。譲 治 の 兄 貴 を10cmも 超 えて 見 下 ろせる 日 が 来 ようとは、 夢 にも 思 わなかったぜ。( 戦 人 )(EP1)※ 譲 治 の 身 長 は170cm 前 後 だと 考 えられます。俺 の 身 長 もなかなかのもんだと 思 うが、 親 父 も 同 じくらいの 立 っ 端 がある。( 戦 人 )(EP1)※ 留 弗 夫 の 身 長 も 戦 人 と 同 じく180cm 前 後 だと 考 えられます。( 郷 田 を 見 て)「…… 俺 も 立 っ 端 には 多 少 の 自 信 があったんだが、でっけえ 人 だなぁ。… 紛 れもなく 初 対 面 だぜ。こんな 大 男 、あったら 絶 対 忘 れないさ…!」( 戦 人 )(EP1)※ 郷 田 の 身 長 は190cm 前 後 はあると 考 えられます。手 を 振 っている 方 を 見 ると、……… 小 柄 な 少 年 ( 嘉 音 )がいた。 郷 田 さんのような 大 柄 の 男 を 見 た 直 後 だと、その 小 柄 さが 一 層 際 立 って 見 えたかもしれない。(EP1)※ 独 断 と 偏 見 で 嘉 音 の 身 長 は155cm 前 後 ということにしましょう。「……そうだよな。… 父 さんも 留 弗 夫 叔 父 さんも 体 格 いいし、 絵 羽 叔 母 さんなんか 格 闘 技 習 ってんでしょ。…… 大 丈 夫 だよね。うん…」( 朱 志 香 )(EP2)※ 蔵 臼 も 戦 人 や 留 弗 夫 と 同 じく180cm 前 後 はあるのではないでしょうか?「 駄 目 だな………」( 金 蔵 )(EP4)窓 辺 に 立 ち、 威 厳 ある 背 中 を 向 ける 大 柄 な 人 影 が、 静 かだけれど 力 強 く、…そう 答 えた。※ 金 蔵 も 戦 人 や 留 弗 夫 と 同 じく180cm 前 後 はあるのではないでしょうか?大 人 顔 負 けの 貫 禄 を 持 つ 客 人 (ヱリカ)も、 体 格 はまだ 中 学 生 くらいだ。 朱 志 香 の 昔 の 服 のサイズがぴったりだった。(EP5)※ヱリカの 身 長 は150cm 前 後 。 朱 志 香 は160cm 前 後 ということにしましょう。■ 世 界 観※まずメッセージボトル 及 び 偽 書 と、 各 EPは 分 けて 考 えなくてはなりません(このあたりの 説 明 は“■メッセージボトルとはどのようなものか?”で)。その 上 で、 各 EPはメッセージ 及 び 偽 書 をゲーム 盤 として 核 にしたうえで、その 内 容 を 脚 色 し、 現 実 の 出 来 事 と、 幻 想 世 界 を 盛 り 込 んで 一 つの 物 語 に 仕 上 げたもの、と 認 識 することが 出 来 ます。ただし、EP7 と 8 においては 核 となる 偽 書 は 存 在 しないと 考 えられます。 何 故 なら、ゲーム 盤 部 分 がなく、 本 文 中 に 偽 書 の 存 在 を 伺 わせる 記 述 がなかったためです。ちなみにEP5でベルンと 戦 人 が、EP6で 雛 ベアトが、EP7でウィルが 過 去 のゲームを 読 んでいますが、それはメッセージボトル 及 び 偽 書 ではなく、 各 EPそのものであると 考 えられます。というのは 以 下 のようにゲーム 盤 以 外 の 描 写 にも 言 及 しているためです。「 熊 沢 さんは、 知 っているのですか? ベアトリーチェのことを……」( 理 御 )(EP7)「 知 ってるだろう。…… 第 4のゲームの 時 、 連 絡 船 の 船 長 は、 熊 沢 が 九 羽 鳥 庵 に 出 入 りしていたことを 証 言 している。 恐 らく、 熊 沢 は 屋 敷 と 九 羽 鳥 庵 の 双 方 で、 異 なる 勤 務シフトを 持 っていたに 違 いない。 若 い 娘 の 世 話 だ。 育 児 経 験 の 豊 富 な 熊 沢 は、さぞ 重 宝 されただろう」(ウィル)「 軽 音 楽 はやっていないのか」(ウィル)(EP7)「え、……え?! し、しぃーー! それは 秘 密 、 内 緒 …!」( 朱 志 香 )「 俺 は 好 きだぞ。ペッタンペッタンとか。どっきゅんどっきゅんとか」(ウィル)「 二 重 人 格 ! あぁ、そいつは 多 分 、ぴったりな 表 現 だろうな。あるいはそれが、 真 里 亞 にとっての 理 想 の 人 格 だったのかもしれない」( 朱 志 香 )(EP7)「 自 分 のなりたい、“もう 一 人 の 自 分 を 生 み 出 す”、の 話 か…?」(ウィル)「え、… 何 で 私 のモットーを 知 ってんだよ」( 朱 志 香 )「 難 しく 考 えるな。 頭 痛 にならァ」(ウィル)それはかつて、 朱 志 香 が 嘉 音 に 語 った 話 だ。 人 は 誰 でも、 自 分 を 本 当 に 好 きになれる、もう 一 人 の 自 分 を 生 み 出 すことが 出 来 る、という 話 。…… 確 か、 第 2のゲームの 冒 頭で 語 られた 言 葉 だったと 思 う。※ 現 在 、 僕 が 考 えている 世 界 観 は2つあります。1つはこの 作 品 はファンタジーで、メタ 世 界 が 作 品 世 界 の 中 心 で、その 部 品 としてゲーム 盤 と 現 実 世 界 のパートがある、というものです。もう1つはメタ 世 界 の 戦 人 とベアトもゲームマスターの 駒 である、というものです。ゲーム 盤 は 箱 庭 的 世 界 で、 駒 がゲームマスターの 干 渉 を 受 けながら、 基本 的 にはAIで 自 律 行 動 しています。 後 者 だと“ 全 てがゲームマスターの1 人 遊 び”ということになり、 何 の 意 味 があるのかよく 解 らなくなります。■ゼパルとフルフル、どっちが 男 でどっちが 女 ?「……… 第 5のゲームでは、お 前 は 男 ということになっている。しかし 数 多 のゲームでは、 女 だと 考 えられてる。…… 右 代 宮 戦 人 がマスターを 務 めた 第 6のゲームでは、 性別 を 違 えつつも 確 定 しない 二 人 組 の 悪 魔 が 登 場 し、それを 暗 示 した。……いや、 厳 密 には、 一 番 最 初 のゲームからだな。………お 前 の 性 別 は、ゲームの 外 側 の、 隠 れた 謎 の一 つだ」(ウィル)(EP7)78


※“ 性 別 を 違 えている”という 事 は、 男 らしく 振 舞 っているのが 女 で、 女 らしく 振 舞 っているのが 男 ということです。「………あの 二 人 は 本 当 に、 戦 人 を 救 い 出 せるのかしら」(フルフル)(EP6)「 救 い 出 せるさ! 愛 の 奇 跡 さえあればね…!!」(ゼパル)※ということは、ゼパルが 女 で、フルフルが 男 ということになります。 以 下 のTIPSもそれを 肯 定 しているでしょう。ゼパルのTIPS“ 草 食 男 子 を 好 んで 捕 食 する 恋 の 狩 猟 者 でもある。(EP6)”フルフルのTIPS“ 草 食 男 子 に 肉 の 味 を 教 える 恋 の 調 教 者 でもある。(EP6)”■1998 年※EP4と6と8で 描 かれていますが、いずれも 内 容 が 違 います。EP4において 縁 寿 は、ビルから 飛 び 降 りたものの、 奇 跡 的 に 助 かり、 八 城 幾 子 に 会 えず、 六 軒 島 に 行 き、 天 草に 射 殺 されます。あるいはビルからの 飛 び 降 りで、そのまま 死 亡 します。EP6においては 八 城 幾 子 に 会 い、 六 軒 島 に 向 かうところで 話 が 終 わります。EP8においてはビルから飛 び 降 りず、そのまま 寿 ゆかりになるための 旅 に 出 ます。あるいは 六 軒 島 に 向 かう 船 中 で 天 草 と 船 長 を 射 殺 し、そのまま 六 軒 島 には 向 かわずに 旅 に 出 ます。これらの 出 来 事は 平 行 世 界 、あるいは 白 昼 夢 と 考 えるしかないと 思 います。風 が 頬 をくすぐる。 私 は、 閉 じていた 目 を、ゆっくりと 開 く。……ずいぶん 長 い 間 、 目 を 閉 じていたのかもしれない。その 眼 下 の 煌 きさえ、とても 眩 しく 感 じた。………そこは、 星 の 海 が 眼 下 に 広 がる、 不 思 議 な 世 界 。 風 が 冷 たい。……でも、 私 が 現 実 に 帰 ってきたことも 教 えてくれた。 私 は、 眼 下 の 星 の 海 に、……… 一 歩 を 踏 み 出 した、 片 足の 状 態 でいた。いつから、 私 はここにいたのだろう。…… 多 分 、ベルンカステルに 誘 われて、 一 歩 を 踏 み 出 そうというところで、……ずっと 私 の 時 間 は 止 まっていたのだ。(EP8)「………………………………」( 縁 寿 )その 足 を、………ゆっくりと、 戻 す。そして、フェンスに 寄 り 掛 かって、 座 り 込 んだ。 空 は、 遠 い。でも、 地 上 も 遠 い。どちらの 世 界 にも 遠 い、 悲 しい 場 所 に、 私 はずっといたのだ。 空 へは、 行 けない。なら、 私 の 世 界 へ、 帰 らなくちゃ。「そしてそれは、エレベーターがいいわね。……スカイダイブはもうたくさん。さすがにもうないわよね。ここから 飛 び 降 りて、 無 事 なんて 奇 跡 は」( 縁 寿 )そんな 奇 跡 は 絶 対 ないって、 某 奇 跡 の 魔 女 の 保 証 済 みなんだからね。※ビルの 屋 上 に 立 った 縁 寿 は 飛 び 降 りる 瞬 間 に、 飛 び 降 りた 世 界 の 自 分 の 記 憶 を 共 有 し、あるいは 白 昼 夢 として 見 て、 飛 び 降 りるのを 止 めるのです。 以 下 の 内 容 が 証 拠 です。( 聞 き 手 ) 手 品 エンドは、『EP6』のあとの 話 ということになるんでしょうか?( 真 相 8)正 確 には『EP6』を 途 中 までなぞった 分 岐 世 界 ですね。あそこで 縁 寿 が 六 軒 島 に 行 ってしまうと 霞 が 待 っていて『EP6』の 話 になるんです。※ 竜 騎 士 07さん 本 人 が「 分 岐 世 界 である」と 明 言 してはいます。しかし、この 考 え 方 で 万 事 解 決 というわけには 行 きません。「 新 居 と 口 座 を 決 めたら 連 絡 してくれ。 何 も 不 自 由 はさせねぇからな」( 小 此 木 )(EP8)「 須 磨 寺 家 は 問 題 ない?」( 縁 寿 )「 全 部 任 せてくれ。こっちには 縁 寿 ちゃんの 委 任 状 って 錦 の 御 旗 がある。お 陰 で 右 代 宮 グループは 一 枚 岩 だ。…… 縁 寿 ちゃんのお 陰 で、 会 長 の 作 った 会 社 が 守 られた。 会 長も、 縁 寿 ちゃんの 決 断 を 喜 んでるはずだぜ」( 小 此 木 )「 面 倒 臭 いことを 全 部 押 し 付 けたかっただけよ」( 縁 寿 )「そうだ、 運 転 手 を 紹 介 しておこう。 俺 の 子 飼 いの 男 だ。 信 用 できるし、 何 でも 頼 れるぞ。 会 長 のところで 長 年 護 衛 をしていたから、 縁 寿 ちゃんも 面 識 があるかもな?」( 小此 木 )(EP8)「…… 天 草 だけは 御 免 よ」( 縁 寿 )へっぷし! 運 転 席 から 出 てきた 男 がくしゃみをする。「そりゃねぇですぜ、お 嬢 」( 天 草 )「 天 草 、お 前 ぇ、 何 やらかしたんだ?」( 小 此 木 )「…… 伯 母 さんの 護 衛 の 中 で、 一 番 軽 薄 そうだったからね。こいつだけは 御 免 よって 思 ったの」( 縁 寿 )「でも、 一 番 仲 良 くしてたろ」( 小 此 木 )「……まぁ、おしゃべりだけは 面 白 かったかも」( 縁 寿 )「……さて。どこへ 行 きますかい。 北 へ? 南 へ?」( 天 草 )(EP8)「…………お 勧 めはある?」( 縁 寿 )「 本 州 を 出 るのはどうですかい。 北 海 道 なんてお 勧 めですぜ。…… 広 い 草 原 、でっかい 雲 ! ログハウスで 執 筆 する 小 説 家 なんて、 最 高 ですぜ」( 天 草 )「じゃあ 南 にするわ。……あんたが 言 ったのと 逆 の 方 にするって 決 めてた」( 縁 寿 )「へはッ、そりゃ 酷 ぇや」( 天 草 )「 温 かい 地 方 がいい。 海 が 見 える 町 がいいわ」( 縁 寿 )縁 寿 はゆっくりと 目 を 閉 じる。 色 々とどたばたして 疲 れた……。「 了 解 です。お 嬢 が 次 に 目 を 覚 ます 時 にゃ、もう 見 知 らぬ 異 郷 ですぜ。……ですがそこは、 海 の 見 える、 温 かい 町 です」( 天 草 )「 期 待 してるわ。あんたのチョイス」( 縁 寿 )車 は 高 速 道 路 に 上 がっていく。そして、 東 西 に 往 来 する 車 の 大 河 に 飲 み 込 まれる。もう、どの 点 が 彼 女 の 乗 る 車 か、わからなくなっていた。「 八 城 ……、 十 八 先 生 、………ですか」( 縁 寿 )(EP8)彼 女 ( 縁 寿 )はその 名 を、 数 十 年 ぶりに 思 い 出 す。その 名 を 再 び 聞 くことになるとは、…… 思 わなかった。「ご 存 知 ですか? ひょっとしてお 会 いになったことがおありとか…」( 編 集 者 )「いいえ、ありません…。お 尋 ねしたこともありましたが、 当 時 は 私 も 無 名 。それも 唐 突 に 出 版 社 さんへ 押 し 掛 けたもので、お 断 りされてしまいまして……」( 縁 寿 )私 ( 縁 寿 )は 旅 立 ちの 日 、 右 代 宮 縁 寿 という 名 を 捨 て、 新 しい 人 生 に 歩 み 出 した。 今 でこそ 和 解 したが、 当 時 は 須 磨 寺 家 とのトラブルがあり、それを 嫌 ったためだ。(EP8)私 ( 縁 寿 )は、 真 実 に 至 ったと 自 称 する 偽 書 作 家 、 伊 藤 幾 九 郎 の 正 体 が 八 城 十 八 だと 気 付 いた。そして、なぜ 彼 女 が 真 実 に 至 ったと 自 称 できるのか 問 い 質 そうと、 出 版 社 を 通じて 面 会 を 要 求 したのだ。しかし、 叶 わなかった。 結 局 、 何 の 連 絡 もなく、 八 城 十 八 と 面 会 するのに、こうして 数 十 年 の 月 日 を 要 することになってしまった。……あの 時 、出 版 社 が 私 を 取 り 次 いでくれたら、 私 たちはもっと 早 くに 再 会 できていたのだ。しかし、 当 時 の 私 は、 札 束 をばら 蒔 くだけのブルジョワ 娘 。 誰 の 紹 介 もなく、ずかずかと 乗り 込 んできて、 当 時 、 人 気 絶 頂 だった 八 城 十 八 に 会 わせろと 言 ったって、 取 り 次 がれるわけもない。(EP8)※まず、 須 磨 寺 家 との 問 題 です。( 聞 き 手 ) 六 軒 島 で 霞 が 死 亡 したのは、 事 実 と 考 えて 良 いのでしょうか?( 真 相 4)構 いません(キッパリと)。“1998 年 の 六 軒 島 で 殺 人 が 起 きた”というのは、 紛 れも 無 い 事 実 です。※ 何 故 、 霞 は 六 軒 島 に 行 ったのでしょう。 縁 寿 が 六 軒 島 に 行 っていない 以 上 、 霞 が 六 軒 島 に 行 く 理 由 がありません。 仮 にガセネタを 掴 まされて 六 軒 島 に 行 って、 殺 されたとしましょう。なら、 須 磨 寺 家 にはもう 縁 寿 を 狙 う 人 間 はいないはずで、 須 磨 寺 家 とのトラブルなどなくなっているはずなのです。まあこれは、 平 行 世 界 での“ 事 実 ”であって、 現 実 世 界 とは 違 うのかもしれません。また、 縁 寿 は 霞 が 殺 されていることを 知 らなかったため、 須 磨 寺 家 から 狙 われていると 勘 違 いしていた 可 能 性 もあります。しかし、縁 寿 が 八 城 十 八 に 会 おうとしたのは 一 体 いつで、 何 の 為 なのでしょう。 平 行 世 界 の 知 識 を 持 つ 縁 寿 にとって 八 城 には 既 に 会 っているので、 会 う 意 味 がないのです。ビルからの 飛 び 降 りを 決 意 する 前 でしょうか。あるいは 旅 立 ちの 前 かあるいは 旅 立 ち 後 に 何 となく 気 になって 会 おうとしたのでしょうか。 旅 立 ちの 前 の 場 合 は、 少 なくとも 天 草 は 同行 していなかったと 思 われます。というのは、 小 此 木 の 台 詞 から 縁 寿 と 天 草 は 久 しく 顔 を 合 わせていなかったことが 伺 えるためです。79


■1986 年 ?「ほら、 対 戦 ゲームでもよくあるだろォ? 乱 入 したけど 相 手 があまりに 弱 くて 拍 子 抜 けで、わざと 負 けて 最 終 ラウンドまで 延 長 させて、 最 後 に 本 気 でフルボッコにすることとかってあるだろォ?」(ベアト)(EP2)「…… 例 えの 意 味 がわかんねーよ」( 戦 人 )※ 対 戦 ゲームの 元 祖 とも 言 える『ストリートファイターII』の 登 場 は1991 年 です。「 赤 ん 坊 のお 守 りからネトゲのお 相 手 、スペースシャトル 撃 墜 まで 何 でもお 応 えしますよ。にひひ!」(シエスタ410)(EP3)※インターネット 普 及 の 原 動 力 となった『Windows 95』の 発 売 は1995 年 ですし、ネットゲームの 普 及 はブロードバンド 登 場 前 後 です。「あぁ、ミステリーでも、 最 近 はそういう 異 世 界 はポピュラーですので。 純 粋 推 理 空 間 とかご 存 知 で?」(ヱリカ)(EP5)「 綾 辻 行 人 のデビューは 来 年 (1987 年 )だ」( 戦 人 )「…………… 譲 治 ね? この 問 題 を 考 えたのは。モンティ・ホール 問 題 は1986 年 にはあったっけ?」( 絵 羽 )(EP8)「1990 年 だね。 縁 寿 ちゃんの 世 界 にはもうある 問 題 なんだから、 出 題 してもいいかなって 思 って」( 譲 治 )「お 嬢 様 のような 素 直 じゃない 方 を、… 何 でしたっけ、 譲 治 さまに 習 いました。そうそう、ツンドラ( 正 しくは“ツンデレ”)とか 言 うそうですよ? あと 十 数 年 かすると 流行 るんだそうですよ?」( 紗 音 )(EP2)※これらの 内 容 は「この 作 品 を 書 いているのは2007 年 以 降 に 生 きる 自 分 なんですよ」という 竜 騎 士 07さんからのメッセージなのではないでしょうか。■1986 年 10 月 4 日「 左 様 です。このせいで、 六 軒 島 ミステリーはさらに 面 白 みが 増 したのです。2つのボトルの 中 身 は、どちらも 事 故 前 日 から 当 日 までを 記 した 日 記 風 の 手 記 です。しかし、その 内 容 はまったく 異 なったのです。まるで、どちらかが 真 実 で、どちらかが 虚 偽 のように。あるいは 両 方 とも 虚 偽 なのかもしれない。…しかし、 始 まりと 終 わりだけは 一致 するのです。 始 まりは、 親 族 たち18 人 は 台 風 で 島 に 閉 じ 込 められた。そして 終 わりは、 全 員 が 死 に、 黄 金 の 魔 女 が 蘇 り、 全 ては 黄 金 郷 に 飲 み 込 まれる」( 大 月 )(EP4)※メッセージボトル 及 び 偽 書 は 各 EPのどこから 始 まっているのでしょうか? それによって1986 年 10 月 4 日 の 出 来 事 の 解 釈 は 変 わっています。まず 考 えられるのは、妥 当 に“ 始 めから”です。 空 港 の 場 面 からこの 作 品 は 始 まりますが、そこからという 考 え 方 です。この 考 え 方 の 問 題 点 は、 大 月 教 授 の 語 る 始 まりとズレがあること、 真 里 亞の 薔 薇 の 意 味 がなくなってしまうこと。また、 書 き 手 であるヤスの 観 測 外 での 出 来 事 が 多 く 書 かれることになるため、 現 実 の 再 現 性 が 下 がること、 文 章 量 が 多 くなるため、メッセージボトルにそんな 長 い 文 章 が 入 るのかという 疑 問 が 生 じることです。もう 一 つ 考 えられるのが、“ 真 里 亞 の 薔 薇 より 後 ”です。この 考 え 方 だと“ 始 めから”の 時 に 指摘 した 問 題 点 はクリアできるのですが、 大 きな 問 題 点 が 出 てきます。というのは、EP1と2は 空 港 で 既 に 話 が 違 っていますし、EP1と3の 下 船 の 場 面 が 明 らかに 違 いますので、この 場 面 が 事 実 だったとは 考 えるには“ 平 行 世 界 ”を 持 ち 出 すしかないのです。あるいはEP1~4に 現 実 の 出 来 事 をバラバラにして 組 み 入 れた、もしくはどれかが 本 物 、ということになりますが、では 偽 の 場 面 は 一 体 何 なのだろうということになります。もし 僕 がこの 作 品 の 書 き 手 だったなら、ゲーム 盤 の 始 まりは“ 真 里 亞 の 薔 薇 より 後 ”にして、それ 以 前 の 描 写 は、 現 実 の1986 年 10 月 4 日 の 出 来 事 を 視 点 と 場 面 を 変 えてEP1~4に 配 置 します。 例 えばEP1と2は 真 里 亞 のハロウィンのマシュマロで 話 が 分 岐 しますが、それならば、EP1では 戦 人 が 真 里 亞 と 仲 良 くなった 後 に 場 面 を 飛 ばし、EP2では 仲 良 くなる 場 面 を 描 く。というようにすれば 良 いですし、EP3では 船 で 甲 板 に 出 ていたのは 留 弗 夫 と 秀 吉 だけでしたが、それを 前 甲 板 では 戦 人 たちが 騒 いでおり、 後 甲 板 では、 留 弗 夫 と 秀 吉 が 煙 草 を 吸 っていた、というふうにすればよいのです。 海 岸 の 場 面 も 最初 は 碑 文 の 謎 解 きに 挑 戦 して、それから6 年 前 の 話 をしたことにし、EP1では 謎 解 きの 話 だけを、EP3では6 年 前 の 話 だけを、 描 けばよいのです。そして 真 里 亞 が 一 人 で 薔 薇庭 園 に 佇 んでいる 場 面 で 突 然 、 台 風 の 到 来 による 突 風 が 起 き、 思 わず 真 里 亞 は 目 を 閉 じる。その 瞬 間 、 薔 薇 の 花 弁 が 舞 い 上 がってあたり 一 面 を 覆 いつくし、おさまったときにはベアトがそこにいた、という 風 にします。もちろん、そんな 風 で 薔 薇 吹 雪 が 起 きるわけもなく、その 場 面 は 幻 想 描 写 です(EP2はほぼそのような 描 写 になっていますが…)。そしてゲーム 盤 の 始 まりを 告 げるシーンでもあるのです。 竜 騎 士 07さんがそうしなかったということは、この 考 え 方 が 間 違 っている 証 拠 なのかもしれません。ちなみにEP1~4のどれかが 正 解 だったとするなら、それはEP1だと 思 います。EP2は 昼 食 後 にそのまま 雨 が 降 り 出 して、 海 岸 に 行 っていませんし、 真 里 亞 の 薔 薇 の 消 失 シーンもありません。EP3は 甲 板 に 出 ていたのが 留 弗 夫 と 秀 吉 だけであるため、 以 下 の 場 面 と 矛 盾 します。( 川 畑 ) 元 船 長 は、 引 退 の 理 由 が 何 だったかわからないくらいに 元 気 だった。 記 憶 も 鮮 明 らしく、10 年 以 上 前 のことを 良 く 覚 えており、 当 時 の 縁 寿 のことさえも 記 憶 しているようだった。 話 が 弾 み、 縁 寿 としてはとても 助 かったが、…… 同 時 に、 最 後 の 親 族 会 議 のこともよく 覚 えていて、 船 上 の 戦 人 の“ 落 ちる 落 ちる 騒 ぎ”のことまでも 詳 細 に記 憶 していたことは、 逆 に 縁 寿 には 辛 かった。(EP4)※EP4はそもそも 真 里 亞 の 薔 薇 以 前 の 場 面 がほとんど 描 写 されていません。■ 台 湾 への 伏 線「 戦 人 くんとは 海 外 旅 行 を 一 緒 に 行 くと 賑 やかそうねぇ。 伯 母 さんとエジプトとか 行 かない? 14 時 間 も 飛 行 機 に 乗 れるわよぅ?」( 絵 羽 )(EP1)「 譲 治 ももう 立 派 な 大 人 や。わし( 秀 吉 )が 見 張 ってなくてもしっかり 仕 事 ができる 一 人 前 や。……どや。 正 月 辺 りをのんびりモルジブ 辺 りで 過 ごさんか。わしら 二 人 ( 秀 吉と 絵 羽 ) 水 入 らずや」( 秀 吉 )(EP1)「 戦 人 くん、 今 度 おばさんと 一 緒 に 海 外 旅 行 に 行 きましょうよ。ヨーロッパとか 行 かない?」( 絵 羽 )(EP4)「……お 館 様 は 昔 の 話 はほとんどされません。…ただ、 右 代 宮 家 が 滅 びかけた 関 東 大 震 災 について、 非 常 に 他 人 事 のように 話 されることがありましたので、 関 東 地 方 よりずっと 遠 方 にお 住 まいだったかもしれません」( 紗 音 )(EP1)「 川 も 一 本 ではないだろう。 地 理 的 な 意 味 では 我 々もそれぞれにかなり 調 べたつもりだ。…… 絵 羽 に 至 っては、 現 地 まで 直 接 調 べに 行 ったんじゃないかね?」( 蔵 臼 )(EP3)「あくまでも 旅 行 としてよ。……でも、 町 並 みは 当 時 と 完 全 に 変 わってる。 何 しろ 戦 争 を 挟 んでるのよ? お 父 様 がどこに 住 んでいたのかさえ、 正 確 な 場 所 の 把 握 は 不 可 能よ。… 多 分 、お 父 様 が 自 ら 現 地 へ 足 を 運 んでも、 今 となっては、どこに 住 んでいたか 特 定 できないでしょうね」( 絵 羽 )「あちらさんもずいぶん 目 覚 しく 復 興 したって 話 だからな…」( 留 弗 夫 )※ 絵 羽 の 旅 行 先 として、 国 内 が 名 前 に 出 ることは 一 度 もありませんでした。また 留 弗 夫 も、 随 分 遠 くを 想 定 して 話 をしているようです。■TIPS( 夏 妃 のExecute) 魔 女 に 鉄 砲 如 きで 挑 もうなんて、 身 の 程 知 らずもいいところ。 当 然 の 結 果 なんだよ。 きひひひひひひひひひひ。(EP1)( 絵 羽 のExecute)ニンゲンに、 殺 せるわけがないよ。(EP1)(ベアトリーチェのExecute) 人 の 身 で 妾 を 殺 そうなど 無 駄 な 夢 。 鉛 弾 を 射 掛 けようとも 鏡 の 如 く 己 が 身 に 跳 ね 返 されるだけよ。だが、 妾 を 殺 す 方 法 はひとつだけある。その方 法 はお 前 の 手 に 握 られている。お 前 如 き 凡 夫 には 無 理 であろうがな?(EP1)( 留 弗 夫 のExecute) 彼 には、 不 運 を 嘆 く 権 利 がある。(EP1)( 霧 江 のExecute) 悪 魔 のルーレットが 選 んだ。 それだけ。(EP1)( 戦 人 のExecute)この 馬 鹿 にも、 早 く 貴 方 が 視 えたらいいのにね。(EP1)( 楼 座 のExecute)また 会 えるよ。だから 寂 しくない。(EP1)( 真 里 亞 のExecute) 行 方 不 明 。きひひひひひひひひひひひひひひ。(EP1)(ベルンカステルのExecute) 考 え 続 けることによって、 私 は 永 遠 に 生 き 永 らえる。つまり、 考 えることをやめれば、いつでも 死 ねる。でも、 考 え 始 めればいつでも 蘇 る。(EP1)※EP1のTIPSは 基 本 的 に 真 里 亞 によって 書 かれているようです。 魔 女 に 関 しては 自 己 紹 介 のようですが。( 蔵 臼 のExecute) 碑 文 さえなければ、 杭 なんていらないのにね。 面 倒 臭 い。(EP3)( 夏 妃 のExecute)そもそも、 何 で 碑 文 に 沿 わなきゃならないの?ゲーム?(EP3)( 留 弗 夫 のExecute)ここからは 杭 でトドメが 必 要 とのこと。 悪 趣 味 。(EP3)80


( 朱 志 香 のExecute) 彼 女 は 確 かに、 黄 金 郷 で 嘉 音 と 結 ばれた。 互 いの 臆 病 を 謝 り 合 い、 本 当 の 素 直 な 気 持 ちを 伝 え 合 った。そして 最 後 の 瞬 間 まで、 抱 き 合 っていた。(EP3)( 南 條 のExecute)あと 一 息 で、 多 分 、 彼 も 生 還 できたのだ。しかし、 最 後 の 最 後 で、 魔 女 は 彼 のそれを 許 さなかった。(EP3)( 秀 吉 のExecute) 油 断 した。まだ 生 きていたなんて……。(EP3)( 譲 治 のExecute) 彼 の 魂 と 引 き 換 えに、 魔 女 は8 桁 の 数 字 を 与 える。07151129。 唱 えれば、 小 さな 黄 金 郷 が、 開 かれる。(EP3)( 霧 江 のExecute) 腹 と 言 うのは、 何 とも 致 死 性 に 欠 ける。(EP3)( 楼 座 のExecute) 彼 女 こそが、 新 しい 魔 女 誕 生 のための 生 贄 …。(EP3)※EP3のTIPSは 基 本 的 に 第 三 者 、 及 びエヴァによって 書 かれているようです。■テーブルトークRPG?※ベアトのゲーム 盤 はテーブルトークRPGだと 考 えられます。なぜなら“ゲームマスター”という 単 語 を 他 では 聞 いたことがありませんし、そう 考 えると 非 常 にわかりやすいためです。テーブルトークRPGとは 簡 単 に 言 うと、 観 客 のいない 演 劇 です。 通 常 は1 人 のゲームマスターと6 人 程 度 のプレイヤーによって 行 われます。テーブルトークRPGにはルールブックというものが 存 在 します。これは、そのゲーム 世 界 の 約 束 事 を 定 めたものです。どんな 気 候 や 風 土 で、どんなモンスターが 存 在 していて、どんな風 俗 、 文 化 、 宗 教 、 国 家 があって、どんな 魔 法 があって、どんな 武 器 や 道 具 があるのか。そういったゲームを 楽 しむために 必 要 な 情 報 を 定 義 しています。ゲームマスターはルールブックの 情 報 を 元 にクエストを 作 ります。これはコンピューターRPGで 例 えるとわかりやすいと 思 いますが「 近 所 の 遺 跡 に 魔 物 が 棲 みついて 町 に 被 害 をもたらすので 退 治 をしてくれ」といったものです。このクエストの 場 合 、ゲームマスターは 遺 跡 のマップ、 仕 掛 け、 配 置 するモンスター、アイテム、などを 考 える 必 要 があります。ゲームマスターはゲームの 進 行 を 司 り、プレイヤーを 生 かさず 殺 さず、クエスト 達 成 に 導 きます。プレイヤーは 自 分 の 分 身 であるキャラクターを 作 り、そのキャラクターを 演じてゲームマスターのクエストに 挑 みます。このあたりはオンラインRPGで 例 えるとわかりやすいかもしれません。もっと 詳 しく 知 りたい 人 は“ 駿 河 屋 ”で 関 連 書 籍 が20 円 くらいからで 買 えますので、ライトノベルのジャンルで“リプレイ”と 入 力 して 検 索 してみてください。『ロードス 島 戦 記 』 関 連 などが 初 心 者 向 けだと 思 います。ここで話 をうみねこに 戻 しますが、うみねこの 場 合 、ルールブックから 作 っています。ルールブックを 作 ったのはベアトです。ゲームマスターもベアトですが、これはEP5ではベルンであったり、EP6 では 戦 人 であったりと、 変 わっています。しかし、ルールブックを 作 ったのはベアトですから、そのルールには 従 わなければなりません。プレイヤーはEP1~4は 戦 人 、EP5と6はヱリカです。 通 常 、プレイヤー 以 外 のキャラクターはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)と 呼 ばれ、ゲームマスターが 演 じます。しかし“■駒 とはどのようなもの?”で 説 明 しましたが、ベアトのゲームではゲームマスターが 特 別 に 干 渉 しない 限 り、キャラクターはAI( 人 工 知 能 )で 動 くようです(プレイヤーがキャラクターから 離 れても)。ちなみにベアトのゲームではキャラクターは“ 駒 ”と 呼 ばれています。テーブルトークRPGの 面 白 いところは、プレイヤーの 知 識 や 能 力 がキャラクターに 反 映 されないところです。たとえば“ライカンスロープ( 獣 人 )は 銀 製 の 武 器 か 魔 法 でしかダメージを 与 えられない”という 設 定 のテーブルトークRPGがあったとします。キャラクターがその 情 報 を 知 らない 設 定 で、プレイヤーは 逆 に 知 っていたとしましょう。ライカンスロープが 現 れた 瞬 間 、キャラクターが 手 持 ちの 武 器 を 捨 てて、道 具 袋 から 銀 のナイフを 取 り 出 して 戦 う、というのは、この 場 合 NGです。たとえプレイヤーが 手 持 ちの 武 器 ではライカンスロープにはダメージを 与 えられないと 知 っていても、キャラクターは 手 持 ちの 武 器 で 攻 撃 し、ダメージを 与 えられないことを 確 認 しなければならないのです。その 上 で 道 具 袋 から 取 り 出 した 様 々な 武 器 を 試 す 中 で、 銀 のナイフならダメージを 与 えられることに 気 がつかなければなりません。ということは“ 無 能 である”と 設 定 されたキャラクターは 無 条 件 で 無 能 なのです。ですから 赤 字 で 宣言 できるわけです。 以 下 の 場 面 はこの 作 品 がテーブルトークRPGであることの 証 明 だと 思 います。「 狂 ってやがるッ!! もう 止 めろ 畜 生 ォオオオォ!! ワルギリアッ、この 狂 った 茶 番 を 止 めさせるんだ!! どうすりゃいいんだ!!」( 戦 人 )(EP3)「……… 私 たちは 盤 外 の 存 在 です。 盤 上 には 触 れられません」(ワルギ)※これはEP3において 黄 金 の 魔 女 を 継 承 したエヴァが 薔 薇 庭 園 で 楼 座 と 真 里 亞 を 魔 法 でいたぶるシーンです。プレイヤーが 自 分 の 駒 を 自 由 に 操 作 できるなら、 戦 人 は 自 分 の駒 を 操 作 して 薔 薇 庭 園 に 行 き、エヴァをぶん 殴 らせれば 良 いのです( 返 り 討 ちに 遭 うのが 関 の 山 ですが…)。しかしテーブルトークRPG 的 にはそれはNGです。キャラクター( 駒 )が 知 らないことは、そのキャラクターを 操 作 するプレイヤーが 知 っていても、 知 らないことになるからです。■ 夏 妃 の 頭 痛「…………。………ごめんなさい。 生 まれつきの 頭 痛 持 ちなもので」( 夏 妃 )(EP1)………その 日 より19 年 間 、 私 ( 夏 妃 )を 苛 む、 長 き 頭 痛 の 日 々の 始 まりに 呻 いていました……(EP5)※ 生 まれつきのものではなく、19 年 前 からのものでした。メッセージボトルの 書 き 手 であるヤスが 事 実 を 知 らなかったため、こうなってしまったと 思 われます。■ 夏 妃 は19 年 前 に 赤 ん 坊 を 殺 そうとしたの?「お、お 父 様 ……。 今 、…… 何 と 仰 いましたか……」( 夏 妃 )(EP5)「この 赤 子 を、 我 が 孫 として 迎 えよ」( 金 蔵 )「おー……、よしよしよし。よしよしよし…」( 熊 沢 )熊 沢 があやす 赤 ん 坊 は、 書 斎 の 空 気 がよほど 合 わなかったらしい。…ずっとずっと、 嫌 がるように 泣 き 続 けていた……。「も、… 申 し 訳 ありません、お 父 様 …。…… 私 には、 何 を 仰 っているのか……、」( 夏 妃 )「この 赤 子 を、 我 が 孫 として 迎 えよ。そして 蔵 臼 の 後 を 継 ぐ 者 として 育 てるのだ」( 金 蔵 )「……それはつまり、…… 私 と 夫 の 子 として…、 育 てよと 仰 るのですか……」( 夏 妃 )「そうだ。お 前 に 子 が 宿 せぬことはもはや 明 白 。……お 前 の 体 には、 女 としての 欠 陥 があるに 違 いない」( 金 蔵 )あの 日 、 年 配 の 使 用 人 に 赤 ん 坊 を 預 け、 私 は 薔 薇 庭 園 でこれからを 思 案 していました。いいえ、それは 嘘 。…… 何 も 考 えたくなかったのです。 赤 ん 坊 の 泣 き 声 がうるさいので、 聞 こえないところへ 連 れて 行 きなさいと、 私 は 使 用 人 に 命 じました。…… 聞 こえないところとは、どこか 遠 くへという 意 味 。えぇ、 私 は 願 いました。……いっそ、 二 度と 帰 って 来 ないくらいに 遠 くへ 行 ってしまえばいいのにって…!!(EP5)「なるほど……。…… 行 きずりの 悪 魔 が、 夏 妃 さまのその 願 いを、 聞 いてしまったのですな」(ロノウェ)「して、……どうなったのか」(ベアト)「それは、 悪 魔 が 願 いを 叶 えてくれたとしか 思 えない、 奇 妙 な 事 故 でした…」( 夏 妃 )薔 薇 庭 園 から 船 着 場 への 林 道 は、 確 かに 心 地 良 く 散 歩 にも 向 くだろう。…… 気 分 で、 時 には 道 を 出 て 木 立 の 中 を 歩 くのも 気 持 ちいいに 違 いない。でも、……… 赤 ん 坊 を 抱 いての 散 歩 にしては、あまりに 踏 み 入 り 過 ぎたのではないだろうか…?「その 先 は 断 崖 でした。 高 さは、…… 多 分 、10mくらいはあったと 思 います。 下 は 岩 場 。…そこには 柵 もあったのです! その 使 用 人 はわざわざそんなところまで 赤 ん 坊を 抱 いたまま、 歩 いていき、そして 柵 に 寄 りかかったとでも 言 うのでしょうか…? まるで、 悪 魔 に 手 招 きされて 誘 われたとしか 思 えない!!」( 夏 妃 )「………… 誘 われちゃったのねぇ。……あなたの 願 いを 聞 いた 悪 魔 が、その 使 用 人 を 招 いちゃったんだわ……」(ガァプ)「それでは、……その 使 用 人 と 赤 ん 坊 は…」(ベアト)「 死 にました…!! 崖 から 転 落 して、 下 の 岩 場 に…! いえ、 私 が 願 ったから 死 んだ! だからこれは、」( 夏 妃 )崖 下 の 二 人 を 見 つけ、…… 私 は 青 ざめました。 大 至 急 、 船 で 病 院 に 運 びましたが、……あの 高 さで、 即 死 を 免 れただけでも、 奇 跡 。 使 用 人 も、……そして 赤 ん 坊 も、…… 死にました。 私 はお 父 様 から 赤 子 を 預 けられ、 三 日 も 経 ない 内 に、…… 殺 してしまったのです…! 主 人 は 出 張 中 でした。 当 時 、まだお 屋 敷 にお 住 まいだった 楼 座 さんも、ご友 人 と 旅 行 中 でした。…… 六 軒 島 には、 私 とお 父 様 しかいなかった!! そして 私 とお 父 様 以 外 、 誰 も 良 く 知 らぬ 間 に、……どこからともなく 赤 ん 坊 が 現 れ、そして 消 えていった…!! お 父 様 は 私 を 責 めるに 違 いないと 思 っていました。…しかし、 何 か 様 子 がおかしかった…!(EP5)「 読 めていたぞ、 読 めていたぞ、この 顛 末 はな! どこまで 足 掻 くのか。どこまで 我 が 物 にならぬというのか!! 空 の 檻 に 興 味 はない! 打 ち 捨 てい!!」( 金 蔵 )事 故 死 を 知 ったお 父 様 は、これ 以 上 愉 快 なことはないとでも 言 うように、いつまでもいつまでも、 聞 いているこっちが 薄 気 味 悪 くなってしまうくらいに、…ずっとずっと 笑81


っていた。 心 の 中 の 何 かのたがが、 外 れてしまったのかもしれない……。その 日 からだ。お 父 様 がそれまで 以 上 に、オカルトの 世 界 だけに 篭 り 切 るようになるのは……。「……19 年 前 のあの 日 。… 私 は、お 父 様 より、ひとりの 赤 ん 坊 を 託 されました。………いつまでも 跡 継 ぎを 身 篭 ることの 出 来 ない 私 に、ならば 養 子 を 迎 えよとお 父 様 が 仰り、……… 孤 児 院 から 連 れてきたという、ひとりの 赤 ん 坊 を……、 私 に 抱 かせたのです…。それが 私 に、……どれほどの 女 としての 屈 辱 を 与 えたか、 想 像 がつきますか…?!」( 夏 妃 )(EP5)………あれは、 赤 ん 坊 を 抱 かせた 使 用 人 と 共 に、 薔 薇 庭 園 から 船 着 場 の 方 へ 散 歩 に 行 った 時 でした…。…… 私 はひとりになりたかったのですが、…… 赤 ん 坊 を 連 れたその 使用 人 の 女 は、 律 儀 に 私 の 後 について 回 りました。ひとりにしてくれとさえ 言 い 出 せず、……だから 赤 ん 坊 の 泣 き 声 から 逃 れられず……。………その 日 より19 年 間 、 私 を 苛む、 長 き 頭 痛 の 日 々の 始 まりに 呻 いていました……。………そして、 柵 より、 崖 を 臨 む。はるか 眼 下 の 岩 浜 に、……この 赤 ん 坊 を 放 り 捨 てることで、…… 全 てなかったことに 出 来 れば。……そんな 悪 魔 の 誘 惑 を、 私 は 確 かに 聞 きました。(EP5)「そして、………それが 本 当 に 出 来 たら、どれほど 素 晴 らしいかと、……その 誘 惑 に、ほんの 一 瞬 、 耳 を 傾 けてしまったのです。……その 時 、」( 夏 妃 )赤 ん 坊 を 抱 いた 使 用 人 が、 大 きな 石 を 踏 んで、 足 を 挫 き、よろめいた……。そして 粗 末 な 柵 に 寄 りかかり、……その 時 、 柵 が 大 きく 軋 んだ 気 がした。 私 は、 危 ないと 言 いながら 肩 を 掴 もうとしました。「……いえ、……そんな 曖 昧 な 言 い 方 はしません…。 懺 悔 します。 告 白 します。……… 私 はあの 時 、 確 かに、…… 危 ないと 言 いながら、…………その 使 用 人 の 肩 を、 両 手 で、……どんと、…… 強 く 押 し 飛 ばしたのです……」( 夏 妃 )粗 末 な 柵 は 根 元 から 折 れ、……… 使 用 人 と、……その 手 に 抱 かれた 赤 ん 坊 と 一 緒 に、……… 眼 下 の 岩 浜 へ 転 落 していきました……。その 瞬 間 のことは、…… 鮮 明 に 覚 えているのに、…なのになぜか 曖 昧 で、……とても 不 思 議 な 気 持 ちだったのを 覚 えています。 転 落 したというより、……まるで、 何 もない 宙 に、 二 人 が 音 も 無 く 飲 み 込 まれて 消 えたようにさえ 感 じたのです。だから 私 は、 二 人 が 岩 浜 に 落 下 した 音 さえ 聞 いていません。いえ、きっと 聞 いているのです。でも、 消 えたと 思 い 込 みたかったから、………その 聞 いた 音 を、きっと 記 憶 から 消 し 去 ってしまったのです…。「………そ、………それから………?」( 戦 人 )「 私 は 一 瞬 、…これが 夢 だと 信 じました。……あの 高 さですから、ちょっと 身 を 乗 り 出 したくらいでは、 眼 下 の 二 人 は 見 えません。だから、 二 人 が 落 ちたことさえ、……ほんの 数 秒 前 のことさえ、 現 実 のことなのかわからなくて…」( 夏 妃 )きっと 私 は、ここから 赤 ん 坊 が 落 ちればいいのにと 願 いすぎて、 白 昼 夢 を 見 てしまったに 違 いない…。そう 自 らに 思 い 込 ませ、 足 早 に 薔 薇 庭 園 に 戻 り、…… 赤 ん 坊 は 使 用 人に 任 せ、 私 はひとり、ここで 休 んでいたことにしました…。……そして、………お 父 様 に、 赤 ん 坊 はどうしたのかと 問 われ、…………。……… 任 せた 使 用 人 の 姿 が 見 えないと、……… 騒 ぎになって……………。やがて、 壊 れている 柵 が 見 つかって、………その 崖 下 に、 二 人 の 死 体 が 発 見 された…。…… 明 かせぬ 筋 からの 赤 ん 坊 だったらしく、その 存 在 は 伏 せられ、…… 使 用 人 が 単 独 で 事 故 を 起 こして 死 んだこととなった。そう。 私 は、…… 一 度 に 二 人 もの、 罪 なき 命 を 奪 ったのです………。 気 の 毒 な 使 用 人 については、…… 遺 族 に 充 分 なねぎらいをしました。 真 相 を 知 らない 老 いた 夫 は、 不 幸 な 事 故 を 嘆 きつつも、それに 納 得 してくれました。そして、ほんの 数 年 前 、 老 衰 で 亡 くなり、……… 私 は 墓 前 で 真 相 を 告 白 し、 謝 罪 しました。※ 以 上 が 夏 妃 の 告 白 を 抜 粋 したものです。これは2 回 ありますが、1 回 目 は 途 中 に 夏 妃 が 作 った 嘘 の 出 来 事 が 入 っています。2 回 目 は 本 当 にあった 出 来 事 ですが 前 半 部 分 は省 略 されています。 両 方 をあわせると、 実 際 の 出 来 事 がわかります。 結 論 から 言 えば、 夏 妃 が 赤 ん 坊 を 抱 いた 使 用 人 を 突 き 飛 ばし、 崖 下 に 落 下 させたのは 事 実 でしょう。その 意 味 で 夏 妃 は 赤 ん 坊 を 殺 そうとしました。しかし、これは 事 故 だったのではないでしょうか? こんな 経 験 はないでしょうか。 瓶 が 倒 れそうになったのを 支 えようとして、逆 に 突 き 飛 ばしてしまった。あるいは 机 から 落 ちた 物 を 空 中 で 拾 おうとして、 逆 に 突 き 飛 ばしてしまった。 人 間 、 咄 嗟 に 手 を 出 すことは 出 来 ます。しかし、 必 ずしも 思 った結 果 を 出 せるとは 限 りません。この 時 の 夏 妃 がまさにそうだったのではないでしょうか。 使 用 人 の 肩 を 掴 もうとして 失 敗 し、 逆 に 押 してしまった。その 結 果 、 使 用 人 は 崖 から 転 落 します。それを 見 た 時 、 自 虐 癖 のある 夏 妃 は 思 いこんでしまったのではないでしょうか? 「 自 分 は 赤 ん 坊 がいなくなればよいと 思 っていた。そのため、 使 用 人 を 助けようとしたのは 嘘 で、 悪 意 を 持 って 押 してしまったのだ」と。 真 面 目 で 責 任 感 の 強 い 夏 妃 なら、ありえないことではありません。つまり 行 動 としては 殺 そうとしたけれども、 心 情 としては 助 けようとしたとも 考 えられるのです。■ 南 條 はいつから 金 蔵 と 知 り 合 いなの?「 開 かぬ 礼 拝 堂 と 知 りながら。……それでもなお、 奇 跡 の 日 を 夢 見 ていたのでしょうな。……… 金 蔵 さんは 若 い 日 にはとてもロマンチストな 方 だった。…わかる 気 がします」( 南 條 )(EP2)気 付 けばもう、 自 らを 若 者 と 呼 べば、 若 者 たちに 笑 われそうになる 歳 になっていた。 気 が 遠 くなるような、 長 くても 何 も 中 身 のない 灰 色 の 日 々。それは20 年 にも 及 んだ。20 年 あれば、 人 は 生 まれ、 志 を 持 ち、 社 会 へ 飛 び 出 すことさえ 出 来 る。つまり、…… 社 会 人 となって 初 めて 人 間 と 呼 べるのだとしたら。 私 は、 人 間 が 一 人 、 生 み 出 せるほどの 膨 大 な 時 間 を、…… 何 もすることなく、 欲 深 な 老 人 たちの 人 形 として 過 ごしてきたわけだ。(EP7)「では、……まさか、あなた( 南 條 )なのですか! お 祖 父 さまがベアトリーチェを 連 れて 行 った、 新 島 の 医 者 というのは…」( 理 御 ))(EP7)「 突 然 、 海 軍 の 兵 隊 さんが、 外 国 人 の 女 性 を 連 れて 現 れたのです。 驚 きましたとも。……しかも、その 上 、 軍 機 なので、 秘 密 で 治 療 しろというのです」( 南 條 )「それが、お 祖 父 さまとの 初 対 面 だったのですか…?」( 理 御 )「…そうです。それが、 金 蔵 さんとの 初 めての 対 面 でした」( 南 條 )※ 明 らかにおかしいです。 金 蔵 が 南 條 に 会 ったのは、 当 主 になってから20 年 も 経 ってからです。15 歳 で 当 主 に 抜 擢 されたとしても、35 歳 です。 果 たして 若 いといえるでしょうか? まあ、これに 関 してはそれから40 年 も 経 っているわけで、 現 在 の 年 齢 から 考 えれば 若 いと 言 ってもおかしくはないでしょう。ところが 以 下 の 内 容 は 致 命 的です。金 蔵 が 右 代 宮 家 の 当 主 に 突 然 抜 擢 され、 右 往 左 往 していた 頃 のことを 覚 えている 南 條 は、 蔵 臼 のその 姿 に 金 蔵 の 当 時 を 懐 かしむ。だからこそ、 蔵 臼 の 苦 悩 にも 理 解 が 及 び、同 情 できるのだった…。(EP5)※そんなわけがないのです。これは 一 体 どういうわけなのでしょう、 南 條 は 嘘 をついているのでしょうか? しかし、そんな 嘘 をつく 意 味 があるとは 思 えません。おそらく竜 騎 士 07さんの 勘 違 いなのだと 思 います。■ 年 齢 はいくつ?( 真 里 亞 の 年 齢 は)「9 歳 。うー」( 真 里 亞 )(EP1)「えっとえっと…! ( 嘉 音 の 年 齢 は) 確 か、 私 たちの2つ 下 だから、…16だったよなー?」( 朱 志 香 )(EP1)「はい。お 陰 様 で10 年 ほどお 仕 えさせていただいております」( 紗 音 )(EP1)彼 女 ( 紗 音 )は6つの 時 からここに 勤 めているという 古 参 の 使 用 人 だ。※ 紗 音 の 年 齢 は16 歳 (と 他 人 は 認 識 している)。( 古 戸 ヱリカについて)「( 朱 志 香 )お 嬢 様 くらいの、 若 い 女 性 でございます」( 源 次 )(EP5)「 朱 志 香 お 姉 ちゃんよりは 下 だった」( 真 里 亞 )(ヱリカは) 戦 人 や 朱 志 香 よりはわずかに 年 下 に 見 えるが、 高 校 生 とは 到 底 思 えない 落 ち 着 きと 仕 草 は、 良 家 の 令 嬢 を 思 わせた……。(EP5)ヱリカの 着 ていた 服 は、 朱 志 香 の 昔 の 余 所 行 きの 服 だった。 大 人 顔 負 けの 貫 禄 を 持 つ 客 人 も、 体 格 はまだ 中 学 生 くらいだ。 朱 志 香 の 昔 の 服 のサイズがぴったりだった。(EP5)※ヱリカは16~17 歳 。「 私 しゃ 花 も 恥 らう18だぜ!」( 朱 志 香 )(EP1)( 譲 治 の 年 齢 は) 俺 ( 戦 人 )より5つ 上 だから、 今 年 で 多 分 23のはずだ。( 戦 人 )(EP1)※ 戦 人 の 年 齢 は18 歳 。「はい。《 赤 :ここは1967 年 の 世 界 》。19 年 前 の 世 界 でございます」(ロノウェ)(EP3)82


「……あれはいくつの 時 だったのかしら…。… 多 分 、 中 学 生 か、……よく 覚 えてない。とにかくそのくらいの 頃 だったと 思 うわ…」( 楼 座 )※1967 年 に 中 学 生 だったということは、 楼 座 の 年 齢 は32~34 歳 。2つ 年 上 の 兄 、 蔵 臼 は、 私 ( 絵 羽 )に 比 べたらまったくと 言 っていいほど、 右 代 宮 家 に 相 応 しくあろうという 努 力 をしているとは 言 えなかった。(EP3)「 大 学 院 に 進 んで、もっといっぱい 勉 強 して、 優 れた 成 績 を 出 して、 蔵 臼 を 追 い 詰 めてやりましょう」( 絵 羽 )(EP3)「 私 は 女 で、 子 を 産 むことができるわ。そして 兄 さんには 未 だ 縁 談 もない」( 絵 羽 )「 夏 妃 姉 さん、 私 より3つも 若 いんだからぁ。もうちょっとしっかりなさい?」( 絵 羽 )(EP1)※ 絵 羽 の 大 学 院 進 学 時 (22 歳 )にまだ 蔵 臼 は 結 婚 していなかったため、 最 も 早 くてその 翌 年 に 結 婚 したとして、 当 時 、 夏 妃 は20 歳 。12 年 間 子 どもが 出 来 ず、その 後 、 生まれた 朱 志 香 が18 歳 であるため、 夏 妃 の 年 齢 は50 歳 。 絵 羽 は53 歳 。 蔵 臼 は55 歳 。 何 となく 留 弗 夫 は、 蔵 臼 と 絵 羽 の 間 より、 絵 羽 との 年 齢 差 があるように 思 われるので( 留 弗 夫 は 私 には 逆 らわないとの 絵 羽 の 発 言 から)、50 歳 。( 熊 沢 の 年 齢 は) 下 手 すりゃ80にも 届 くはず。( 戦 人 )(EP1)■ノックスの 十 戒 とヴァン・ダインの 二 十 則 から 見 る『うみねこのなく 頃 に』ノックスの 十 戒・ 第 9 条 。 観 測 者 は 自 分 の 判 断 ・ 解 釈 を 主 張 することが 許 される※EP1における“そこは、ベアトリーチェの 肖 像 画 の 前 。そして、 真 里 亞 が 飛 びつくのは、………… 肖 像 画 の、… 人 物 。”EP4における“2 階 のバルコニーから、…… 傘 を 差しながら 身 を 乗 り 出 し 上 機 嫌 に 手 を 振 っているのは、…… 紛 れもなく、…… 肖 像 画 の 魔 女 、…ベアトリーチェ………!!”これらはある 程 度 距 離 が 離 れているため、 探 偵 である 戦 人 でも 紗 音 がベアトの 扮 装 をしていることに 気 がつけないのだと 考 えられます。ヴァン・ダインの 二 十 則・ 第 7 則 。 死 体 なき 事 件 であることを 禁 ず※EP5 は 死 体 が 出 ていないため、これに 違 反 しているのでは? と 考 える 人 もいるのではないかと 思 います。しかし、 登 場 人 物 が 死 体 を 目 撃 していますし( 幻 想 ですが)、 何よりこれは“ 死 者 が 出 ない 事 件 であることを 禁 じる”と 解 釈 することも 出 来 ます。その 場 合 、 赤 字 で 死 亡 が 確 定 されているため、 違 反 はしていないと 考 えられます。・ 第 11 則 。 使 用 人 が 犯 人 であることを 禁 ず※ 紗 音 は 使 用 人 ですが、それは 世 を 忍 ぶ 仮 の 姿 で、 本 当 は 右 代 宮 家 当 主 です。・ 第 12 則 。 真 犯 人 が 複 数 であることを 禁 ず※EP3 ではもともとの 犯 人 である 紗 音 の 他 に、 犯 行 を 引 き 継 いだ 絵 羽 も 犯 人 です。しかしこの 規 則 では“ 真 犯 人 ”と 規 定 されています。この 場 合 、 真 犯 人 は 紗 音 で、 絵 羽 は模 倣 犯 、もしくは 便 乗 犯 になります。■ 戦 人 が1986 年 に 帰 ってこなかったら 事 件 は 起 こらなかったの?「… 今 、 君 ( 紗 音 )に 贈 るのに 相 応 しい 指 輪 を 作 らせてる。 多 分 、 今 度 の 親 族 会 議 の 日 には 持 っていけると 思 う。その 時 に 贈 るから、どうか 君 の 返 事 を 聞 かせて 欲 しいんだ。…… 君 が 僕 の 婚 約 を 受 けてくれたら。 僕 はその 席 で、お 祖 父 さまを 含 めた 全 ての 親 族 の 前 で 君 との 婚 約 を 宣 言 する」( 譲 治 )(EP2)「 譲 治 さん。…… 婚 約 って、… 何 でしょうか」( 紗 音 )(EP2)「え?! あ、……えっと! 結 婚 の 約 束 をする、という 意 味 だよ。…でも 僕 はその 意 味 において 結 婚 と 同 じものだと 考 えてる。 僕 は、 一 時 の 感 情 で 言 ってるんじゃない。 今だけの 君 を 見 て 言 ってるんじゃない。……… 明 日 の 君 も、 明 後 日 の 君 も。…それこそ 未 来 の、 老 後 の 君 すらも 見 据 えて 言 っている」( 譲 治 )※ 譲 治 の 指 輪 を 貰 ってしまったら、それはもう 結 婚 と 同 義 です。1987 年 では 手 遅 れですし、1985 年 ならまだセーフです。■ 戦 人 の 乗 り 物 嫌 い「こいつ( 戦 人 )、 昔 から 乗 り 物 がなぜかダメでさぁ。 二 言 目 には、 堕 ちるだの 沈 むだの」( 留 弗 夫 )(EP1)「… 母 さんもよしなよ。 戦 人 くんの 乗 り 物 嫌 いはきっと 遺 伝 だよ」( 譲 治 )(EP4)「あぁ、 明 日 夢 さんの?」( 霧 江 )「……あいつ( 明 日 夢 )、どういうわけか 乗 り 物 系 がダメでなぁ。 自 転 車 と 車 以 外 はほぼダメだったぜ。どこか 遠 出 しようとすると、アレはダメだコレはダメだ、 怖 い 怖 い 落ちる 落 ちるギャーギャーとうるせぇ 女 だったさ」( 留 弗 夫 )「 子 供 は、 親 が 苦 手 がるモノを 危 険 だと 学 ぶものです。きっと 戦 人 くんは、 明 日 夢 さんのそういうところを 見 て、 乗 り 物 は 怖 いものだと 覚 えてしまったんでしょうね」( 譲治 )「こいつは 飛 行 機 でも 船 でも、 落 ちるの 何 のと 相 変 わらず 賑 やかでなぁ」( 留 弗 夫 )(EP8)「 明 日 夢 さんの 血 でしょ?」( 霧 江 )「 多 分 アレだぜ。こいつが 小 さい 頃 、 遊 園 地 で 激 し 目 なのばっか 乗 せて 回 ったからだ」( 留 弗 夫 )「 身 長 制 限 で 乗 れないんじゃないのぅ?」( 絵 羽 )「いやいや。ティーカップとか、 足 漕 ぎボートとか 色 々あるだろ? そういうのを、ちょいと 激 し 目 に 付 き 合 せたのがまずかったみたいだ」( 留 弗 夫 )※ 明 日 夢 から 恐 怖 を 学 び、 留 弗 夫 から 恐 怖 を 与 えられ、 現 在 の 戦 人 が 出 来 上 がったようです。■ 戦 人 は 本 当 に 約 束 を 忘 れたの?※ベアトは 戦 人 が 約 束 を 忘 れたと 主 張 しています。しかし、 約 束 の 場 面 をよく 読 んでみると、とんでもない 事 実 が 判 明 します。 以 下 の 場 面 に 注 目 してください。「ホワイダニットを 扱 う 小 説 って、 案 外 ないんだよな」( 戦 人 )(EP7)「 犯 人 特 定 後 に 動 機 を 自 白 する 作 品 は、 結 構 あると 思 いますけど…?」( 紗 音 )「それを、 犯 人 が 自 白 する 前 に 推 理 できるようになってなけりゃ 駄 目 なんだ。 動 機 がないと 思 われていた 人 物 が、 推 理 不 能 な 動 機 により 事 件 に 及 ぶってのは、 俺 は 個 人 的 にはアンフェアだと 思 ってる。ホワイダニットを 大 切 にしない 推 理 小 説 ってのは、 何 だか 一 味 足 りないように 思 う。……いや、つまらないって 言 ってんじゃない。…… 何 て 言うのか、…… 一 番 大 切 なものが 足 りない 気 がするんだ」( 戦 人 )「 一 番 大 切 なものが、 足 りない……?」( 紗 音 )「 心 だよ、 心 が 足 りない。 人 の 心 ってのは、すごく 重 要 だと 思 うんだ。 人 間 が 殺 人 を 決 意 し、 計 画 し 準 備 し、 実 行 に 踏 み 切 るためには、ものすごい 大 きな 心 の 力 が 必 要 なはずなんだ。 人 は、 心 で 動 いているんだぜ」( 戦 人 )…… 即 ち、 人 を 殺 せるのは 心 だけなんだ。 殺 したいほどの 感 情 の 高 ぶりの 挙 句 に、 起 こるのが 殺 人 という 悲 劇 なんだ。 裏 を 返 せば、 殺 人 という、 悲 劇 に 至 らしめた 心 を 探 ることこそ、 事 件 に 迫 るってことじゃねぇのかな。 心 だけが、 人 を 殺 せる。そして、 人 が 殺 されたなら、 心 を 探 らなければならないんだと。 彼 はそう 言 った。「 紗 音 ちゃんは、いつまで 使 用 人 を 続 ける 気 なんだ」( 戦 人 )(EP7)「……わかりません」( 紗 音 )「もし、いつか。 辞 める 時 が 来 たら。 俺 のところへ 来 いよ、そしたら。…… 今 度 はもう、 時 間 も 何 も 気 にせずに 済 むもんな」( 戦 人 )この 島 での 逢 瀬 は、 一 年 の 間 に 数 えるほどしか 許 されず、……そしてその 一 度 も、 無 常 なほどわずかな 時 間 でしかない。「その 日 が 来 たら……、 俺 が 白 馬 に 跨 って、 迎 えに 来 てやるぜ」( 戦 人 )「そ、……その 日 は、いつ 来 るんでしょう…」( 紗 音 )83


「 紗 音 ちゃんさえ 決 心 したなら、すぐにさ。 俺 はいつだっていいんだぜ。 紗 音 ちゃんの 人 生 さ。よく 考 えてから、 決 心 するといい。…… 俺 はその 決 心 がいつであっても、それを 尊 重 するぜ。その 日 まで、ずっと 待 ってるぜ」( 戦 人 )…… 一 年 後 にも、あなたが、 私 を 白 馬 に 跨 って 迎 えに 来 てくれる 気 持 ちが、まだ 揺 らいでいなかったら。そして 私 も。 一 年 後 に、あなたを 好 きでいる 気 持 ちが、 揺 らいでいなかったら。 私 は、あなたに 全 ての 人 生 を 捧 げようと 思 います……。「1 年 後 に、この 同 じ 場 所 で。…… 決 心 しようと、 思 います。で、……ですから… 来 年 ……」( 紗 音 )きっと、…… 迎 えに 来 て 下 さいね…?「おう。その 日 が 来 るのを 待 っているぜ」( 戦 人 )「はい。…… 私 も、 待 っていますからね……。… 絶 対 、…… 来 て 下 さいね…」( 紗 音 )「あぁ」( 戦 人 )「…… 絶 対 ですよ。 来 年 、 来 て 下 さいね」( 紗 音 )「あぁ。 絶 対 、 来 るぜ。ここで 会 おうな」( 戦 人 )※ 戦 人 は「 待 つ」と 言 っています。つまり 決 断 し、 実 行 するのは 紗 音 の 方 なのです。そして、その 下 の 文 章 。「」がついていません。つまり 紗 音 の 心 の 中 の 声 なのです。この言 葉 は 戦 人 には 伝 えられていないのです。 確 かに 戦 人 は 約 束 の 次 の 年 に 六 軒 島 に 現 れず、“ 来 年 に 再 会 する 約 束 ”は 破 ってしまいました。しかし“ 白 馬 に 跨 って 迎 えに 来 る 約束 ”を 破 ったわけではなかったのです。そもそも 当 時 の 戦 人 の 年 齢 は12 歳 、 紗 音 は10 歳 (と 戦 人 は 思 っている)です。 戦 人 にとってこの 約 束 は、 紗 音 が 義 務 教 育 を 終 える15 歳 以 降 、つまり1986 年 以 降 に 紗 音 が 決 断 するべき 約 束 なのです。 戦 人 が1986 年 に 六 軒 島 にやってきたのは、 紗 音 の 決 断 を 聞 くためだったのではないでしょうか。しかし、6 年 ぶりにやって 来 た 六 軒 島 で 戦 人 は 驚 愕 の 事 実 を 知 ることになります。 紗 音 は 自 分 を 捨 てて 譲 治 と 付 き 合 っていたのです。「 紗 音 ? ……しゃのん。……あぁぁあああぁ…。 思 い 出 したぜ、そんな 子 もいたな! 今 も 使 用 人 やってんのか? 元 気 かよ!」( 戦 人 )(EP1)※この 場 面 は 実 際 の 場 面 である 可 能 性 がありますが、その 場 合 は、わざと 忘 れていたフリをしていると 考 えられます。何 しろ 俺 ( 戦 人 )は、 深 く 考 えずにポンポンと 喋 るものだから、いちいち 内 容 は 覚 えてない。(EP3)「ぶっちゃけると、 俺 はもう 何 も 覚 えてないんだ~。 頼 むから 思 い 出 させないでくれー」( 戦 人 )実 は6 年 前 、ちょっぴり 彼 女 を 意 識 していたことを 思 い 出 す。そっかー、 譲 治 の 兄 貴 とじゃお 似 合 いだよな、 仕 方 ねぇよなぁ。…さらば、 俺 の6 年 前 の 淡 い 初 恋 …。………ってことは、さっき 紗 音 ちゃんが 自 重 してくれた、 俺 の6 年 前 の 恥 ずかしいセリフ 集 は、……それ 関 係 って 可 能 性 が 高 いな…。うぉおおおおぉおぉおぉ、ケツが 痒 くなってきたぜ…。※“■1986 年 10 月 4 日 ”でも 取 り 上 げたとおり、この 場 面 は 嘘 の 場 面 の 可 能 性 が 高 いです。しかし、 仮 に 本 当 の 場 面 だったとしても、 発 言 の 細 かい 内 容 までは 覚 えていないということなのかもしれません。「 戦 人 の 方 こそどうなんだよ。 彼 女 とか 出 来 たのかよー?」( 朱 志 香 )(EP3)「さぁてどうだろうな。 一 緒 に 遊 ぶ 女 の 子 は 何 人 かいるぜ。だけどオンリーワンって 関 係 はまだねぇな。…… 俺 がお 子 様 なんだろうよ。 誰 かと 二 人 っきりでいるより、みんな 大 勢 でわいわいやってる 方 が 楽 しいように 思 えるんだ」( 戦 人 )「あー、そりゃ 何 とも 戦 人 らしいぜ。でも、 女 友 達 との 関 係 はちゃんとしっかりしておけよ。 女 の 思 い 込 みとコミュニティは 怖 ぇぜ? 勝 手 に 戦 人 を 巡 って 暗 闘 が 繰 り 広 げられて、 勝 手 に 誰 かが 泣 いたり 傷 付 いたりしているかもしれないぜ?」( 朱 志 香 )「おっかしーな。 同 じ 忠 告 をつい 先 週 、クラスの 女 から 受 けた 気 がするぜ。…… 何 だってんだろうな。どうしてみんなで 楽 しく 過 ごせねぇんだ。そうまでして、つがいになりたいのかねぇ」( 戦 人 )※ 紗 音 の 決 断 を 待 つ 身 である 戦 人 には、 特 定 の 相 手 を 作 るわけにはいかなかったのでしょう。これもEP3ですので、 嘘 の 場 面 の 可 能 性 はあるのですが。戦 人 さんの 手 紙 に、 私 ( 紗 音 ) 宛 のものはなかったのだ…。(EP7)「 右 代 宮 家 へ 帰 ってくるつもりは、ないのかしらね」( 楼 座 )「ないみたいだね。 僕 の 方 に、 六 軒 島 に 行 くことはもうないだろうって 書 いてあるよ」( 譲 治 )※“ 待 つ 身 ”である 戦 人 としては、 自 分 から 紗 音 に 連 絡 を 取 るわけにはいかなかったでしょうし“ 右 代 宮 家 の 親 族 ”という 立 場 としては、もう 六 軒 島 には 行 かない 決 意 だったのでしょう。「 留 弗 夫 さんと 仲 直 りはするけれど、 右 代 宮 家 に 帰 ってくるつもりはないみたい。…… 仕 方 ないわ。 気 持 ちもわかるもの」( 霧 江 )※これこそまさにベアトが 黄 金 郷 で 語 ったように“ 紗 音 と 付 き 合 うのに 右 代 宮 では 都 合 が 悪 い” 為 だったのかもしれません。 明 日 夢 の 両 親 が 亡 くなってしまった 為 、 戦 人 は“ 右 代 宮 ”に 戻 らなければなりませんでしたが、そうでなければ 明 日 夢 の 両 親 の 姓 を 名 乗 り 続 けるつもりだったのかも…。「 今 日 は 紗 音 もいるぜ。 一 緒 に 遊 んだの、 覚 えてる?」( 朱 志 香 )(EP7)「あー…、 紗 音 ちゃん! すっかり 忘 れてたぜ、 懐 かしいなぁ! 元 気 にしてるかい!」( 戦 人 )俺 、あの 頃 、ひょっとしたら 紗 音 ちゃんのこと、…… 好 きだったかもなー。 自 意 識 過 剰 で、 恋 に 恋 してたお 年 頃 だ。キザったらしい、 浮 ついた 言 葉 で 悪 ふざけをしていた、甘 酸 っぱい 記 憶 が 蘇 る。 今 さら 気 付 くけど、…… 当 時 の 俺 と 紗 音 ちゃんのあれってやっぱ、 俺 の 初 恋 だったんだろうなー。ま、 再 会 するまで、ケロリと 忘 れていた 俺 には、妬 く 資 格 なんてありゃしねぇな。(EP7)※この 場 面 はEP7のお 茶 会 です。“ゲームマスター 不 在 の 駒 によるゲーム”であると 考 えられるため、 参 考 になりません。「まさに 奥 手 な、 小 学 生 、 中 学 生 の 恋 愛 だな。…… 気 があるくせに 打 ち 明 ける 勇 気 もなく、 相 手 の 告 白 を 待 って、もじもじしたまま 何 の 進 展 もなく、……ひと 夏 が 終 わる。いやいや、 他 の 男 とくっ 付 いちまうことだってあるぜ。 俺 の 初 恋 もそんな 感 じだったさ、いっひっひ」( 戦 人 )(EP5)「 俺 は 約 束 を、 絶 対 に 破 らない…!!」( 戦 人 )(EP5)「 嘘 だな。……そなたの 約 束 など、わらわはもう 二 度 と 信 じぬぞ」(ベアト)※ 以 上 の 発 言 は“ 駒 の 戦 人 ”によるものですが、 以 下 のドラノールの 発 言 があります。「 駒 ではあっても、ご 本 人 と 変 わりありマセン」(ドラ)(EP6)※その 人 物 の 人 間 性 自 体 は 駒 にも 受 け 継 がれているのです。そして 以 下 の 竜 騎 士 07さんの 発 言 です。彼 ( 戦 人 )はその 罪 を 全 然 覚 えてないんですよね。(すべて)( 聞 き 手 )なぜ 戦 人 は 覚 えていないんですか?なんででしょうね。 戦 人 が 戦 人 じゃないからですか?( 聞 き 手 )やっぱりそうなんですか。EP2でもその 伏 線 は 出 てきているんですよ。「あなたが 右 代 宮 戦 人 だと 証 明 できますか?」って。※これは 以 下 の 発 言 です。「 留 弗 夫 兄 さんも 含 めて、 私 たちは6 年 ぶりにあなたに 再 会 しているわ。あなたが 本 当 に 右 代 宮 戦 人 かなんて 誰 も 証 明 できないのよう?!」( 楼 座 )(EP2)※ 僕 はこの 内 容 を 初 めて 読 んだとき、「 戦 人 が 戦 人 じゃないから」を「これって 無 駄 じゃないですか?」=「これって 無 駄 ですよね?」の“じゃない”と 読 んで、「 戦 人 が 戦人 だから」=「 戦 人 がそういう 人 間 だから」と 読 んでいました。しかし、これはおそらく「 戦 人 が 戦 人 ではない」という 意 味 なのです。そう 考 えれば、その 後 の 聞 き 手 とのやり 取 りも 不 自 然 ではなくなります。では「 戦 人 が 戦 人 ではない」とはどのような 意 味 なのでしょうか? その 答 えは 以 下 の2つの 内 容 です。俺 ( 戦 人 )の 椅 子 の 後 には、………まるで、…… 血 の 詰 まった 西 瓜 をまとめて 十 個 くらいを、…… 叩 き 潰 したような、……ぐちゃぐちゃぼきゅぼきゅの、…… 山 があった…。そしてその 血 と 挽 き 肉 の 山 の 周 りに、…… 縁 寿 の 着 ていた 服 や 靴 が、…… 脱 ぎ 捨 てたようにぐしゃぐしゃに 潰 れていた…。でも、……その 肉 と 服 の 山 の 上 に、……ちょこんと 転 がるのは、………… 間 違 いなく、あいつが 頭 に 付 けていた、ピンクの 珠 の… 髪 飾 りだ。 正 直 、 彼 女 にはちょっと 子 どもっぽ 過 ぎてあまり 似 合 っていないなと 思 っていた…。……だからよく 覚 えている。…………… 縁 寿 は 何 だって、こんな 安 っぽい 髪 飾 りをずっと……?(EP4)84


「……はい。…… 確 かに 私 は、 島 を 脱 出 した 前 後 のことは、 今 でも 記 憶 があやふやです。しかし、それ 以 外 のことはほとんどを 思 い 出 しました。………たとえば、あなたが大 事 にしていたピンクの 髪 飾 りは、 私 が 遊 園 地 のゲームコーナーで 取 ってあげたものだとか」( 十 八 )(EP8)※この2つの 内 容 の 矛 盾 は 一 体 何 でしょう? しかも 仕 込 んであるEPが4と8です。 僕 はたまたま 事 情 があって、EP8の 次 に4をプレイしたため、これに 気 がつきましたが、普 通 はなかなか 気 がつかないと 思 います。おそらく 竜 騎 士 07さんは 意 図 的 にこの 位 置 にこの 内 容 を 入 れています。 十 八 、つまり 現 実 世 界 に 生 きる 戦 人 は 髪 飾 りのことを 覚えていました。しかし、ゲーム 盤 の 戦 人 は 覚 えていませんでした。これはゲーム 盤 の 戦 人 が“ 本 当 の 戦 人 ”ではないからです。では 何 なのかと 言 いますと“ 紗 音 との 約 束 を忘 れ、ミステリーへの 興 味 も 失 った 戦 人 ”です。 紗 音 は3 年 経 っても 六 軒 島 に 現 れなかった 戦 人 のことをこのように 考 えたのです「 戦 人 は 約 束 を 忘 れてしまった。もはやミステリーへの 興 味 も 失 っただろう」と。そしてその 設 定 で 戦 人 の 駒 を 作 ったのです。そのためベアトは 戦 人 のことを 赤 字 で 無 能 であると 宣 言 することが 出 来 ますし、ノックスもヴァンダインも 知 らない 戦 人 が 出 来 てしまったのです。第 1のゲームのラストで、この 物 語 が、メッセージボトルによって 後 世 に 語 り 継 がれていることが 明 記 されている。…… 誰 かが 事 件 を、 物 語 に、 記 した。つまりこの 物 語 は全 て、……メッセージボトルを 執 筆 した 人 物 という、 観 測 者 によって、 私 見 が 含 まれた 世 界 ということになる。つまり、 観 測 者 は 神 ではない。ニンゲンなのだ.よって、その 記 述 の 真 の 意 味 での 公 正 は、 保 証 されていない。(EP5)この 世 界 の 一 番 の 主 たる 観 測 者 は 紗 音 なんですよね。 少 なくとも 世 界 観 においては。だから 紗 音 が 見 て 聞 いて、そうだと 思 ったことが 世 界 観 のデフォルトになってしまう。ベアトリーチェが 金 蔵 の 書 斎 に 入 れないというのは、 一 方 的 に 紗 音 が 作 った 設 定 ですし。( 最 考 散 )※つまりゲーム 盤 の 戦 人 は 紗 音 によって 歪 められた 戦 人 なのです。………そして、 推 理 小 説 に 堪 能 な、 男 性 。それが 意 味 する 人 物 を、 私 ( 縁 寿 )はひとりしか 思 い 付 けない。 遺 品 整 理 の 時 、 彼 ( 戦 人 )が 自 室 に、 本 当 にたくさんの 推 理 小 説 を 積み 上 げているのを、 私 は 知 ったから。(EP8)※ 本 当 の 戦 人 はミステリーを 愛 し 続 けていました。そんな 戦 人 がノックスもヴァンダインも 知 らないなんてことがありえるでしょうか? むしろ 本 当 の 戦 人 がゲームに 参 加していたら、 第 一 の 晩 で 全 てのゲームの 謎 を 解 いたことでしょう。そしてそんなに 好 きなミステリーを 通 じて 交 流 した 紗 音 のことを 忘 れてしまうでしょうか? この 物 語 は戦 人 と 紗 音 、 二 人 の 勘 違 い 故 のすれ 違 いが 生 んだ 悲 劇 なのです。■ 一 人 二 役 ?※ベアトも 入 れると 一 人 三 役 ですが、どうしてもこれを 認 められない 人 の 為 に、 証 拠 の 抜 粋 を 以 下 に 列 挙 します。「……… 姉 さんは 相 変 わらず 不 器 用 だね。 奥 様 は 今 朝 から 虫 の 居 所 が 悪 い。 黙 って 俯 いてればいいものを、 余 計 なことを 言 うから」( 嘉 音 )(EP2)「…… 嘉 音 くん…」( 紗 音 )嘉 音 はいつの 間 にかそこにいた。……もともと 猫 のように 足 音 を 立 てず、 気 配 をさせない 彼 だ。いつからいたとしても、 彼 女 には 気 付 けなかっただろう…。※これは 嘉 音 の 人 格 が 意 識 の 表 層 に 出 てきたことを 意 味 するのでしょう。嘉 音 くんはまだ 少 し 納 得 できないような 表 情 を 浮 かべるが、それ 以 上 はしつこくせず、 姿 を 消 してくれた。(EP2)※これは「その 場 を 立 ち 去 った」という 意 味 ではなく、 嘉 音 の 人 格 が 意 識 の 表 層 から 消 えたことを 意 味 するのでしょう。あの 日 以 来 、ベアトリーチェは 時 折 、 紗 音 の 前 に 姿 を 現 すようになっていた。 依 然 として、 紗 音 にとって 彼 女 は 薄 気 味 悪 い 存 在 であることに 変 わりはない。…しかし、 譲 治との 縁 を 取 り 持 つ 魔 法 を 授 けてくれた 大 恩 人 でもあった。だから 紗 音 は 極 力 、 驚 いたり 怖 がったりしないように 努 めようとしているのだった。(EP2)※これは 紗 音 の 人 格 がベアトの 人 格 を 認 識 したということなのでしょう。紗 音 がベアトリーチェについて 知 っていることはそう 多 くない。まず、 彼 女 は 幽 霊 のような 存 在 で 神 出 鬼 没 。そして 誰 にでも 知 覚 できるわけではないらしい。 何 でも、 人 毎に 波 長 のようなものがあり、 魔 女 を 知 覚 できるか 否 かについては 激 しい 個 人 差 があるのだという。こうして 言 葉 を 交 わせるほどに 交 流 できるのは 紗 音 と 嘉 音 だけ。…その 気配 を 感 じられる 人 間 も 少 しはいるようだが、 多 くの 人 間 はそれすらも 感 じ 取 ることができなかった。(EP2)※ 本 人 ですから。…… 魔 女 は 知 っている。 仮 に 結 ばれたとて、 紗 音 も 譲 治 も、 嘉 音 も 朱 志 香 も、 必 ず 破 綻 し、 恋 の 地 獄 にて 永 遠 の 砂 漠 を 彷 徨 いながら、 永 遠 の 渇 きに 苦 しむことになる…!(EP2)※ 本 人 ですから。魔 女 はにやりと 笑 うと、 源 次 を 置 いてさっさと 歩 き 出 す。……その 足 取 りは、 屋 敷 の 中 を 充 分 に 知 った 家 人 のようだった。 源 次 はその 後 を 仕 えるように 追 う。ちょうどその時 、 客 間 から 霧 江 が 出 てきた。… 化 粧 直 しにでも 出 たのだろう。そして、 源 次 を 従 えるようにして 歩 く 魔 女 の 姿 を 見 て、 表 情 を 崩 さぬ 程 度 に 驚 いた。(EP2)「………… 初 めまして」( 霧 江 )「 留 弗 夫 の 後 妻 だったか」(ベアト)※ 紗 音 として 屋 敷 で 過 ごしていますし、 霧 江 とも 面 識 があります。「 真 里 亞 は、 以 前 にベアトリーチェと 会 ったことがあるの…?」( 楼 座 )(EP2)「うー。 毎 年 会 ってる」( 真 里 亞 )「 毎 年 …? この、 六 軒 島 のお 屋 敷 で?」( 楼 座 )「うー」( 真 里 亞 )「いつから 会 ってるの? 何 年 前 から!」( 楼 座 )「…うー。……わかんない」( 真 里 亞 )「わからない?! どうして! 去 年 ? 一 昨 年 ?!」( 楼 座 )「……もっと 前 から。……うー」( 真 里 亞 )…この 島 には 右 代 宮 家 の 屋 敷 があるだけだ。だから、この 島 に 自 分 の 知 る 以 外 の 人 間 がいるわけないのだ。なのに 真 里 亞 は、 何 と 毎 年 、 親 族 会 議 の 度 にあの 怪 しげな 女 と 出会 っていたという……。「うー! ベアトリーチェにね、お 手 本 書 いてもらうの! ほらほら、 見 て! 見 て!」( 真 里 亞 )真 里 亞 は 嬉 々としながら 手 提 げを 漁 る。……そして、 一 冊 の 自 由 帳 を 取 り 出 し、そのページを 開 き 始 めた。 真 里 亞 が 開 いたそれらのページには、これまた 不 気 味 な 魔 法 陣 が書 かれていた。……しかもそれは 一 目 見 て、 真 里 亞 が 書 いたものではないとわかった。 筆 圧 や 線 の 太 さ、 図 形 の 綺 麗 さ。……これだけから 書 いた 人 間 の 素 性 を 推 し 量 ることはできないが、 確 実 に 真 里 亞 より 年 齢 の 高 い 人 物 が 書 いたことは 理 解 できる。「うー。 真 里 亞 はベアトリーチェの 弟 子 だから、お 師 匠 の 言 うことはちゃんと 聞 くの」( 真 里 亞 )※ 嘘 をつかない 真 里 亞 が 毎 年 会 っていたと 言 い、そして 絵 まで 残 しています。ベアトは 六 軒 島 に 実 在 する 人 物 の 誰 かなのです。「…… 郷 田 さんはご 自 身 の 仕 事 に 専 念 され、 親 族 の 皆 さんのお 相 手 を、どうかよろしくお 願 いします…」( 源 次 )(EP2)「そのようなお 客 様 相 手 に、 源 次 さんならともかく、こんな 子 どもを 行 かせていいのですか?! もし 何 かの 粗 相 があったら 失 礼 に 当 たります」( 郷 田 )紗 音 が 厨 房 の 中 に 控 えているにもかかわらず、 郷 田 はそれをずけずけと 言 う。 源 次 が、ベアトリーチェの 部 屋 へ 食 事 を 運 ぶよう 指 名 したのは 紗 音 だった。それを 聞 き 俯 く 紗音 の 後 から 嘉 音 の 声 が 聞 こえた。… 嘉 音 は 死 角 に 当 たる、 入 り 口 の 廊 下 側 壁 に 寄 りかかって 話 を 聞 いていたのだ。※ 紗 音 と 嘉 音 の 関 係 を 知 らない 郷 田 の 前 には 二 人 同 時 に 現 れることは 出 来 ないため、 郷 田 の 死 角 から 話 をしているのです。「これでトドメだぜ。クソジジイ、お 前 に 復 唱 要 求 だ。“ 全 人 物 の 中 で、 異 なる 複 数 の 名 前 を 持 つ 人 物 は 存 在 しない”!!」( 戦 人 )(EP4)「で、… 出 来 、ぬ…………!! ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおぉおおおおおおおおッ!!」( 金 蔵 )「 源 次 さま。 紗 音 が( 親 族 会 議 の 日 に)シフトに 入 る 必 要 はないのでは。 僕 たちだけで 充 分 やれます」( 嘉 音 )(EP5)※ 多 くの 来 客 を 迎 える 親 族 会 議 の 日 に、 何 故 、 人 手 を 減 らしても 大 丈 夫 なのでしょう? 元 から 一 人 しかいないからです。「 本 来 、 人 は 人 であり、 人 格 そのものを 指 して 人 とは 呼 びません。しかし、 人 格 を 人 と 認 めるニンゲンたちにとって、それはさながら 他 人 のようなものでしょう…」( 幾 子 )(EP6)85


私 たちにとって 人 格 が 人 そのものならば。たとえ 同 じ 肉 体 を 共 有 していても、 異 なる 人 格 を 指 して 別 人 であると 言 い 切 れるだろう。 人 は 同 じ 人 間 であっても、 別 人 になる 得る。いや、 生 い 立 ちと 無 限 の 可 能 性 によって、 無 数 の 数 の 別 人 になる 得 るのだ。※ 人 格 を 人 として 認 識 してよいという 話 です。使 用 人 たちは 皆 、 一 年 で 最 大 の 行 事 の 準 備 のため、 早 朝 から 慌 しい…。 紗 音 と 嘉 音 は、ゲストハウスの 準 備 に 追 われていた。(EP6)「お 嬢 様 に、 一 緒 に 親 族 の 方 々をお 迎 えに 行 こうって 誘 われたのに、どうして 断 ったの?」( 紗 音 )(EP6)「……… 仕 事 があるし…」( 嘉 音 )「 嘘 。…… 仕 事 なんか、 何 もないくせに」( 紗 音 )本 当 は、 新 島 の 港 に 親 族 たちを 迎 えに 行 くのは、 朱 志 香 と 嘉 音 のはずだった。しかし、 嘉 音 が、 仕 事 があるからと 突 然 言 い 出 したので、 熊 沢 と 代 わったのだ。 嘉 音 には 仕 事など、なかった。それを 紗 音 は 知 っていた…。※ 多 くの 来 客 を 迎 える 親 族 会 議 の 日 に、 何 故 、 仕 事 がないのでしょう。 元 からいないからです。「 嘉 音 くんのことなら、 私 は 何 でもわかる」( 紗 音 )(EP6)「 本 当 にわかってるなら、どうして 聞 くんだッ! だから、…… 僕 なりに 応 援 してるんじゃないか!! そうでなかったら、…… 僕 だってッ!!」( 嘉 音 )「もし。…… 嘉 音 くんが 心 の 底 からお 嬢 様 を 愛 していて、……それが、 私 の 譲 治 さんへの 想 いと 同 じか、それ 以 上 だと 言 えるなら。……… 私 は、あなたと 決 着 をつけなきゃならない。それが、お 互 いのため。……… 嘉 音 君 の 思 いを、 私 を 理 由 に、 諦 めないで」( 紗 音 )「 僕 のわがままが、 姉 さんの 幸 せを 傷 つけるかもしれないのに……?」( 嘉 音 )「 私 も 自 覚 してるよ。…… 私 の 幸 せが、…… 嘉 音 くんを 傷 つけることを。 私 の 恋 が 実 っても。 君 の 恋 が 実 っても。…… 私 たちは 互 いを 祝 福 しよう」( 紗 音 )「うん。…… 約 束 する。そして 僕 が 勝 ったら。……お 嬢 様 を 愛 し、…… 姉 さんも 大 切 にする」( 嘉 音 )「ありがとう。でも、 私 が 勝 ったら。…… 君 と 島 を 忘 れて、ここを 永 遠 に 出 て 行 く」( 紗 音 )※ 何 故 、 紗 音 は 嘉 音 のことを 何 でもわかるのでしょう。どうして 決 着 をつけなければならないのでしょう。 紗 音 は 嘉 音 を 忘 れることが 出 来 るのに、 嘉 音 は 紗 音 を 忘 れることはできません。これは、 嘉 音 は 紗 音 が 生 み 出 した 人 格 であり、 人 間 としての 戸 籍 を 持 っているのは 紗 音 だけのためです。しかも、どうやら、 一 個 のブローチは、 一 度 の 奇 跡 しか 与 えられないかのような 描 写 が 見 て 取 れる。だから 紗 音 は、そのたった 一 つの 奇 跡 を 自 分 が 消 費 してしまうことで、嘉 音 の 恋 路 が 自 動 的 に 永 遠 に 閉 ざされてしまうことに、 躊 躇 していたかのように 思 えるのだ…。(EP6)※これはブローチが 一 度 しか 使 えないのではなく、 使 う 側 が 一 人 しかいないためです。「ここに 集 いしは、 奇 跡 なくして 恋 を 成 就 できぬ 呪 われし 者 たち。その 奇 跡 を 与 える、 黄 金 蝶 のブローチの 力 は、 泣 こうが 喚 こうが 今 宵 限 り、 最 後 のチャンス! それは1組 の 番 にしか 与 えられぬ!」( 姉 ベアト)(EP6)※ 紗 音 と 嘉 音 と 雛 ベアトは 同 一 人 物 だからです。「 朱 志 香 が 信 じぬというなら、 破 綻 の 最 後 だけ 語 ろう。…… 嘉 音 は 使 用 人 を 辞 め、この 島 を 去 る。 永 遠 にな」( 姉 ベアト)(EP6)「 君 は 島 を 出 て 思 い 人 を 探 す 旅 に 出 るだろうね。しかしそれは 決 して 報 われない!」(ゼパル)「そなたが 魔 法 の 奇 跡 を 紗 音 と 譲 治 に 譲 るなら。…… 二 人 は 結 ばれ、 島 を 出 る。……そして 嘉 音 もまた、 島 を 出 る。それは 避 け 得 ぬ、 運 命 なのだ」( 姉 ベアト)「で、……では、 魔 法 の 奇 跡 を 得 られたなら…?」( 雛 ベアト)「 無 論 、 嘉 音 は 島 に 留 まり、いつまでも 朱 志 香 の 傍 にいる」( 姉 ベアト)「……ただ。…その 場 合 は、 私 と 譲 治 さんもまた、 結 ばれません」( 紗 音 )「……… 僕 たちは、 自 らの 幸 せと 未 来 を 賭 けて、…… 戦 わねばならぬ、 運 命 なんです」( 嘉 音 )「……その 魔 法 の 奇 跡 は、そなた( 雛 ベアト)であっても、 享 受 できるものであるぞ。 黄 金 蝶 のブローチの 奇 跡 は、………そなたの 願 い、…… 戦 人 への 好 意 を 認 められたいという 願 いさえも、 叶 えることは 容 易 い。……そして、その 奇 跡 なくして、むすばれることも、また、…………ない」( 姉 ベアト)※これも、 紗 音 と 嘉 音 と 雛 ベアトは 同 一 人 物 だからです。マリアが 吠 えると 同 時 に、 客 間 全 体 が、 真 っ 赤 な 魔 法 障 壁 の 立 方 体 で 隔 離 される。 嘉 音 を 断 じて 逃 がさない 結 界 を、 概 念 化 した 密 室 だ。(EP6)「… 失 礼 します、 真 里 亞 さま。ゼパルさま、フルフルさまとの 契 約 により、お 命 、 頂 戴 致 します…!」( 紗 音 )「こんなところで 負 けてたら、 諦 めがつかないもの」( 紗 音 )「………そうさ。こんなとこで 負 けてたら、 諦 められない」( 嘉 音 )※ 何 故 、 結 界 の 中 に 紗 音 は 現 れることが 出 来 たのでしょう。 始 めからいたからです。 何 故 、 嘉 音 の 負 けがそのまま 紗 音 の 負 けになってしまうのでしょう。 体 が 一 つしかないからです。「 愛 し 合 う 二 人 以 外 に、 本 来 は 何 もいらないんだ」(ゼパル)(EP6)「だから、それが“ 二 人 ”でない 時 、…… 私 たちは 決 闘 でその 数 を“ 二 人 ”にしなくてはならない」(フルフル)「 世 界 を 生 み 出 す 最 小 の 人 数 は 二 人 」(ゼパル)「 二 人 が 揃 って 初 めて、 世 界 は 生 まれ、 恋 は 成 就 できる」(フルフル)「だからこの 決 闘 は、 必 要 なんだ」(ゼパル)「 彼 らがその 人 数 を 満 たすために」(フルフル)※ 一 つの 肉 体 に 複 数 の 人 格 が 宿 っているため、 決 闘 しなければ“ 二 人 ”にはなれないのです。「これは 破 綻 のための 決 闘 じゃない。…… 本 当 の 恋 を 成 就 させるための、 決 闘 」(フルフル)(EP6)「…… 私 には、……あなたたちの 言 っている 意 味 が、……わからない……!」( 雛 ベアト)「いいえ、わかりなさい。これは、…… 本 当 に 人 を 愛 することが 出 来 るニンゲンが、 誕 生 する 瞬 間 」(フルフル)※ 決 闘 をしなければ、 人 を 愛 する 資 格 すら 持 てないのです。「…… 嘉 音 も 呼 んで、 二 人 に 話 が 聞 きたい」(ウィル)(EP7)「 申 し 訳 ございません。 受 付 を 空 けることは 許 されておりませんので、 私 には 呼 びに 行 くことが 出 来 ません」( 紗 音 )「なら、 誰 か 代 わりを 呼 んできて 受 付 を 代 わらせる。あんたと 嘉 音 と 俺 。…… 理 御 を 知 らない 三 人 で、 一 緒 に、 話 がしたい」(ウィル)「…… 受 付 は1 人 でいいと、 仰 せつかっております」( 紗 音 )「2 人 いちゃいけねぇとは 言 われてねぇはずだ」(ウィル)「 本 日 は 人 手 が 足 りませんので、 受 付 に2 人 も 不 要 と 仰 せです」( 紗 音 )「 誰 がそう 命 じた。 金 蔵 か。 蔵 臼 か。それとも 理 御 か。 確 認 する」(ウィル)「 私 の、 命 令 権 者 です。 私 は 命 令 に、 逆 らえまセン」( 紗 音 )「その 命 令 権 者 は 誰 だ。そいつに 交 渉 する」(ウィル)「 交 渉 など、デキマセン。 私 たチの、 命 令 権 者 デス」( 紗 音 )「 嘉 音 を 呼 べ。お 前 たちに 確 かめたいことがある」(ウィル)「オ 呼 ビデキマセン。ソレデモナ オ、ソレヲゴ 希 望 デスカ……?」( 紗 音 )※ 探 偵 であるウィルの 前 には 紗 音 と 嘉 音 は 同 時 には 現 れることが 出 来 ないのです。「 戦 人 以 外 の 者 と、 新 しい 宇 宙 を 生 み 出 すしかない。その 誰 かを、 妾 が 与 えよう。そなたの 心 を 傷 を 埋 め、 癒 してくれる 存 在 だ。……そやつは、そなたを 裏 切 らぬ。……そう、……そなたの 新 しい 姉 弟 だ。…………そなたに 弟 を 与 えよう。 福 音 の 家 で 仲 の 良 かった、 実 の 弟 のように 可 愛 がってきた 少 年 。……そういう 存 在 を、そなたに 与 えよう」86


( 白 ベアト)(EP7)弟 の 設 定 は、 福 音 の 家 で 仲 の 良 かった、 年 下 の 男 の 子 。 名 前 は、…………… 福 音 の 家 のルールに 従 い、 音 の 一 字 を 与 えよう。 彼 は、…… 寡 黙 で 無 口 な 男 の 子 。 右 代 宮 家 には、新 しい 使 用 人 としてやって 来 た。そして、 紗 音 とすぐに 打 ち 解 ける。 紗 音 を 姉 と 慕 う 義 理 堅 い 彼 は、いつも 紗 音 の 味 方 になってくれる……。 源 次 と 同 じように、 金 蔵 に 直 接仕 えることが 許 されている、 特 別 な 使 用 人 ということにしよう。※ 嘉 音 を 生 み 出 す 場 面 が 描 写 されています。「…… 私 ( 紗 音 )が 譲 治 さまと 結 ばれる 世 界 と。あなた( 嘉 音 )がお 嬢 様 と 結 ばれる 世 界 が、 同 時 に 存 在 できるのが、 猫 箱 の 中 じゃない」( 紗 音 )(EP8)「………どんな 矛 盾 した 夢 も、 全 てが 同 時 に 存 在 できる 世 界 」( 嘉 音 )※ 何 故 、これが 矛 盾 なのでしょう?「…… 紗 音 が 殺 されると 同 時 に、 嘉 音 は 永 遠 に 行 方 不 明 となるわ。……… 以 後 、 嘉 音 は 殺 されたものとして 扱 う。 嘉 音 のマスターキーも 破 壊 されたものとして 扱 うわ」(ベルン)(EP8)「まあ、 無 粋 だから 割 愛 するけど、 紗 音 が 死 んだんだから、そういうことになるわよねぇ」(ラムダ)※ 何 故 、 無 粋 なのでしょう。 何 故 、“そういうことになる”のでしょう。この 際 、 紗 音 と 嘉 音 を 一 緒 に 連 れてはいけないので、うまくやらなければならない。( 我 告 )※ 何 故 、 一 緒 には 連 れて 行 けないのでしょう。「……ありがとうございます、ベアトリーチェさま。……じゃあね、 姉 さん。また、 次 のゲーム 盤 で」( 嘉 音 )( 我 告 )「うん。また 次 のゲーム 盤 で」( 紗 音 )ベアトリーチェがケーンを 振 るうと、 嘉 音 の 姿 は 煙 管 の 煙 に 溶 けて 消 え 去 る。※ 何 故 、 人 が 消 えてしまうのでしょう。うーん。 答 えになってしまうのであまり 言 いたくないのだけど、「ベアトリーチェと 戦 人 が 添 い 遂 げられてしまう」というのは「 紗 音 と 譲 治 、 朱 志 香 と 嘉 音 が 添 い 遂 げられない」ということを 確 定 させることでもあるんですよね。 三 組 の 恋 がそれぞれ 成 就 されるためには、 実 は 誰 も 成 就 してはいけないんですよね。(インタ)※ 何 故 、……。■フェザリーヌ・アウグストゥス・アウローラ※2つのキャラクターが 融 合 されていると 考 えられます。1つは『ひぐらしのなく 頃 に』に 登 場 する“ 羽 入 ”のスピンオフです。 頭 部 の 馬 蹄 状 記 憶 装 置 は 羽 入 の 角 の 代 わりであると 考 えられますし( 幾 子 が 本 体 で 馬 蹄 状 記 憶 装 置 は 羽 入 の 角 なのかも)“ 尊 厳 なる 観 劇 と 戯 曲 と 傍 観 の 魔 女 ”の 称 号 のうち“ 傍 観 ”は 物 語 に 主 体 的 に 関 わろうとせず“ 傍観 者 ”であり 続 けた 羽 入 の 立 場 を 表 しています。 羽 入 を“ 羽 =feather”と“ 入 =in”と 読 み、 繋 げると“フェザリーヌ”になります。また、 以 下 の 内 容 は 梨 花 と 羽 入 の 関 係に 当 てはまります。「 我 が 主 も、………ロジックエラーの 地 獄 に 落 ちたことがあるというのですか…?」(ヱリカ)(EP6)「あるわ。ロジックエラーを 起 こしたのはあの 子 ではないけれど」(ラムダ)「…… 主 がゲームマスターではない…?」(ヱリカ)「そうよ。…… 当 時 、あの 子 はまだ、 自 覚 さえしていない 小 さな 駒 だったわ。ロジックエラーを 起 こしたのは、ベルンの 主 であるゲームマスターだった」(ラムダ)「…… 我 が 主 も、…… 魔 女 の 駒 だったのですか」(ヱリカ)「えぇ。………あの 子 の 主 、……これがまた 酷 いヤツでねぇ。…… 自 分 で 作 ったゲームのはずなのに、 途 中 でゴールがわからなくなっちゃって。……スタートとゴールがつながった、ドーナツみたいな、 壊 れたすごろくを 作 ってしまったのよ」(ラムダ)「ゴールをなくしたとは……?」(ヱリカ)「ロジックエラーってことね。……どうやれば 自 分 の 望 むゴールに 辿 り 着 けるか、そいつは 自 分 のすごろくを、ロジックを 描 けなかった。だからいつまでも、すごろくは 壊れたままで、ゴールがなかった。……ならば 自 分 一 人 で、 静 かにそれを 悩 んで 考 え 出 せばいいのに。……そいつはあろうことか、その 考 えることさえも、 駒 であるベルンに任 せっきりにしたのよ。………“ 無 限 の 猿 の 定 理 ”って、 知 ってる?」(ラムダ)「…… 猿 が、 無 限 の 時 間 の 中 でデタラメにタイプライターを 打 ち 続 ければ。……いつか 偶 然 にも 文 字 列 が、ハムレットとまったく 同 じ 文 章 になるかもしれないという 理 論 、いえ、 暴 論 ですね」(ヱリカ)「………ひどい 地 獄 よね。………ベルンは、 無 限 の 時 間 の 間 、 意 味 もわからずデタラメにタイプライターを 叩 かせられて。………ゲームマスターは、 自 分 さえ 思 いつかないゴールを、 彼 女 に 作 らせようとしたのよ」(ラムダ)※もう1つは 八 城 幾 子 です。 姿 が 八 城 幾 子 の 姿 ですし、 以 下 のように 幾 子 本 人 も 自 分 がフェザリーヌであると 主 張 しています。「……… 物 語 の 中 に 登 場 した、フェザリーヌって 魔 女 。……あれは、あんたよね?」( 縁 寿 )(EP6)「 語 るのもおこがましいですが、そのつもりです」( 幾 子 )※ただ、 何 故 2 人 が 融 合 されているのかはわかりません。■プレイヤーの 戦 人 とは 一 体 何 者 なの?※“■ 戦 人 は 本 当 に 約 束 を 忘 れたの?”で 書 いたり、 取 り 上 げたりした 内 容 と 結 構 、 被 るのですが、 大 事 なことなので2 回 書 きます。「ノックス 第 8 条 、 提 示 されない 手 掛 かりでの 解 決 を 禁 ズ! これまでのあなたは 探 偵 デシタ! そのあなたが 今 回 は 探 偵 でなく、 私 見 を 交 える 観 測 者 であったことは 示 されていたのデスカ!! それがない 限 り、あなたには 主 張 を 偽 る 権 利 はありマセンッ!!」(ドラ)(EP5)※EP1~4の 戦 人 は 探 偵 だったわけです。ということは 単 なる 駒 ではありません。しかし、 戦 人 本 人 であるかというと、それもありえません。遺 品 整 理 の 時 、 彼 ( 戦 人 )が 自 室 に、 本 当 にたくさんの 推 理 小 説 を 積 み 上 げているのを、 私 ( 縁 寿 )は 知 ったから。(EP8)※ 戦 人 はミステリーマニアだったのです。………ノックス 十 戒 ってのは、どんなのだったっけ……? ドラノールが 俺 ( 戦 人 )をぶちのめしながら、そのほとんどを 説 明 してくれたはずだ。もちろん 俺 だって、うろ 覚えはしている。 第 1 条 は、…… 何 だったっけ……。(EP5)※ところが、プレイヤーの 戦 人 はノックスさえまともに 知 らないのです。さらに 決 定 的 なのが 以 下 の 内 容 です。俺 の 椅 子 の 後 には、………まるで、…… 血 の 詰 まった 西 瓜 をまとめて 十 個 くらいを、…… 叩 き 潰 したような、……ぐちゃぐちゃぼきゅぼきゅの、…… 山 があった…。そしてその 血 と 挽 き 肉 の 山 の 周 りに、…… 縁 寿 の 着 ていた 服 や 靴 が、…… 脱 ぎ 捨 てたようにぐしゃぐしゃに 潰 れていた…。でも、……その 肉 と 服 の 山 の 上 に、……ちょこんと 転 がるのは、………… 間 違 いなく、あいつが 頭 に 付 けていた、ピンクの 珠 の… 髪 飾 りだ。 正 直 、 彼 女 にはちょっと 子 どもっぽ 過 ぎてあまり 似 合 っていないなと 思 っていた…。……だからよく 覚 えている。…………… 縁 寿 は 何 だって、こんな 安 っぽい 髪 飾 りをずっと……?(EP4)「……はい。…… 確 かに 私 は、 島 を 脱 出 した 前 後 のことは、 今 でも 記 憶 があやふやです。しかし、それ 以 外 のことはほとんどを 思 い 出 しました。………たとえば、あなたが大 事 にしていたピンクの 髪 飾 りは、 私 が 遊 園 地 のゲームコーナーで 取 ってあげたものだとか」( 十 八 )(EP8)※ 十 八 が 覚 えていたことを、プレイヤーの 戦 人 は 覚 えていませんでした。つまり、2 人 は 別 人 なのです。これは 竜 騎 士 07さんも 以 下 のように 言 っています。彼 ( 戦 人 )はその 罪 を 全 然 覚 えてないんですよね。(すべて)( 聞 き 手 )なぜ 戦 人 は 覚 えていないんですか?なんででしょうね。 戦 人 が 戦 人 じゃないからですか?( 聞 き 手 )やっぱりそうなんですか。87


EP2でもその 伏 線 は 出 てきているんですよ。「あなたが 右 代 宮 戦 人 だと 証 明 できますか?」って。※では、プレイヤーの 戦 人 とは 一 体 何 者 なのでしょう? 答 えは 端 的 に 言 ってしまうと“EP6に 出 てきた 雛 ベアトの 戦 人 版 ”です。 雛 ベアトとは 以 下 のような 存 在 です。「……あなたは、 何 で 右 代 宮 戦 人 を、お 父 様 と 呼 ぶの?」( 縁 寿 )(EP6)「わ、 私 という 駒 を、 生 み 出 して 下 さったからです…」( 雛 ベアト)「……では、どうして 右 代 宮 戦 人 にそこまで 尽 くすの? 駒 は、 生 み 出 した 造 物 主 に 絶 対 服 従 しなくてはならないルールでもあるの?」( 縁 寿 )「そんなルールはない。…… 駒 は 道 具 、…あるいはナイフだ。……ゲームマスターが 上 手 に 扱 えば 便 利 な 道 具 になる。しかし、 扱 いを 間 違 えれば 自 らを 傷 つけもする。……道 具 になろうと 凶 器 になろうと、そこに 道 具 の 意 志 はない。ただ 結 果 があるだけだ」(フェザ)「じゃあ、どうしてあんたはお 兄 ちゃんにああも 尽 くすの? まるでそれは、……あなたという 駒 の 目 的 かのようだわ」( 縁 寿 )「は、………はい。…それが、 私 が 生 み 出 された 目 的 だからです」( 雛 ベアト)「あんたを 生 み 出 したお 兄 ちゃん 自 身 が、その 目 的 を 与 えたの?」( 縁 寿 )「それは 違 う。…… 戦 人 はゲームマスターとして、“そういう 役 目 を 持 った 駒 ”を、 盤 上 に 置 いたに 過 ぎない。……そして、 彼 女 という 駒 を 生 み 出 したのは、このゲームを生 み 出 した 最 初 のゲームマスターである、ベアトリーチェ 自 身 だ…」(フェザ)※“ 千 年 という 名 の6 年 ”を 経 る 前 の、 戦 人 への 恋 心 だけを 持 つ 駒 なのです。プレイヤーの 戦 人 もこれとほぼ 同 じなのですが、 雛 ベアトとは 少 し 違 う 部 分 があります。 紗 音にとっては“ 約 束 を 忘 れ、6 年 間 も 紗 音 を 放 置 した 戦 人 ”なのです。ミステリーにも 興 味 を 失 い、かつての 知 識 は 完 全 に 失 われています。「 自 分 との 約 束 を 忘 れたのだから、ミステリーへの 興 味 も 失 ってしまったに 違 いない」と 紗 音 は 考 えたのでしょう。ゲームマスターにそのように 設 定 されてしまった 駒 なのです。そのため、ベアトは 赤 字 で 以下 のように 保 証 できるわけです。「ついでに 言 おう。《 赤 :そなた( 戦 人 )は 無 能 だ》! くっくくくっくくくくく、《 赤 :ひーっひひっひひひひひひひひひひひひ》!!」(ベアト)(EP2)※ベアトはこんな 戦 人 に 一 体 何 をさせたかったのでしょう。 自 分 との 約 束 を 忘 れ、ミステリーの 知 識 も 失 って 無 能 に 成 り 下 がった 戦 人 が、 自 分 が 何 年 もかけて 生 み 出 した 渾身 のミステリーを 解 くという 奇 跡 を 成 し 遂 げたなら、 自 分 を 愛 してくれた 戦 人 が 帰 ってくるという 奇 跡 もまた、 起 こりうる。ベアトはそのように 考 え、このゲームを 始 めたのではないでしょうか? そして 戦 人 はEP5に 至 ってようやく、 復 活 を 果 たしたのです。「 前 回 のゲームで。お 前 は 自 分 の 親 の 死 に 顔 が 見 れないと 嘆 いたな? だから 残 したぞ。しっかり 残 したッ!! よく 拝 んでおけ、 間 違 いなく 父 親 たちが 殺 されたことを!!」(ベアト)(EP2)「そ……ぅかよ、そいつぁサービス 満 点 だぜ、 気 に 入 った!! 俺 はてめぇの 息 の 根 を 止 めたら 顔 面 耕 してやろうと 誓 ってたが、そいつは 取 り 消 してやるぜ、てめぇのハラワタを 引 きずり 出 してやるッ!!!」( 戦 人 )※このやり 取 りで“プレイヤーの 戦 人 ”はEP1の 戦 人 が2 周 目 以 降 に 入 った 存 在 であることが 分 かります。また、 以 下 の 発 言 もあります「ふん。…… 成 駒 如 きのあんた( 戦 人 )に 同 情 されるとは、 私 も 焼 きが 回 ったもんね」(ベルン)(EP8)※つまり“ 雛 ベアトの 戦 人 版 ”として 生 み 出 された“プレイヤーの 戦 人 ”は 真 相 に 至 ったことにより 全 ての 記 憶 を 取 り 戻 し“ゲームマスターに 成 った”わけです。■ベアトリーチェの 容 姿 は?※ベアトは 六 軒 島 で 登 場 人 物 に 目 撃 されています。はたしてどのような 容 姿 をしているのでしょうか?そこは、ベアトリーチェの 肖 像 画 の 前 。そして、 真 里 亞 が 飛 びつくのは、………… 肖 像 画 の、… 人 物 。(EP1)魔 女 はにやりと 笑 うと、 源 次 を 置 いてさっさと 歩 き 出 す。……その 足 取 りは、 屋 敷 の 中 を 充 分 に 知 った 家 人 のようだった。 源 次 はその 後 を 仕 えるように 追 う。ちょうどその時 、 客 間 から 霧 江 が 出 てきた。… 化 粧 直 しにでも 出 たのだろう。そして、 源 次 を 従 えるようにして 歩 く 魔 女 の 姿 を 見 て、 表 情 を 崩 さぬ 程 度 に 驚 いた。(EP2)「………… 初 めまして」( 霧 江 )「 留 弗 夫 の 後 妻 だったか」(ベアト)「 左 様 でございます。 留 弗 夫 さまの 今 の 奥 方 様 であられます、 霧 江 さまでございます」( 源 次 )そのやり 取 りで、 霧 江 は 初 対 面 の 彼 女 が、 右 代 宮 家 においてかなり 格 の 高 い 賓 客 であることを 理 解 する。………そして、それほどの 賓 客 であるという 事 実 と、…… 彼 女 が 背負 う 玄 関 ホールの 肖 像 画 の 面 影 が 重 なり、…… 霧 江 の 目 は 見 る 見 るうちに 見 開 かれていった…。「…… 私 も、ちょっと 玄 関 ホールに 出 た 時 に 挨 拶 をしただけです。 二 十 歳 ちょっとくらいに 見 えたわ。 私 は 名 乗 ったんだけど、 彼 女 は 名 乗 らなかった。… 源 次 さんに 案 内 されて、 二 階 へ 上 って 行 くのを 見 たの」( 霧 江 )(EP2)謎 の 女 は 霧 江 に 言 った。 名 乗 らず、うすうす 想 像 がついているくせにと 嘲 笑 った。……そこから 連 想 する 人 物 。…そして、 彼 女 と 瓜 二 つの、 肖 像 画 の 魔 女 …。服 は 違 うが、……その 顔 は、あの 肖 像 画 の 魔 女 にそっくり……。2 階 のバルコニーから、…… 傘 を 差 しながら 身 を 乗 り 出 し 上 機 嫌 に 手 を 振 っているのは、…… 紛 れもなく、…… 肖 像 画 の 魔 女 、…ベアトリーチェ………!!(EP4)※ 遠 目 に 見 る 分 には、 肖 像 画 と 見 分 けがつかないほどにそっくりなようです。「はい。(ヤスには)…… 若 き 日 の、 九 羽 鳥 庵 のお 嬢 様 の 面 影 が、よく 残 っております」( 熊 沢 )(EP7)※ベアトの 扮 装 をしていなくても、やはり 元 から 似 ているようです。もっともこの 台 詞 は 熊 沢 のおべっかが 入 っている 可 能 性 がありますが。彼 女 が 肖 像 画 の 魔 女 のドレスを 着 て 酔 狂 に 笑 うのもまた、…… 碑 文 の 謎 を 解 いた 者 にのみ 許 される 愉 悦 なのかもしれない。( 我 告 )「こ、……こら 驚 いたわ……。まさに 肖 像 画 の 魔 女 に 瓜 二 つやで……。そのドレス、 特 注 したんかいな……」( 秀 吉 )※しかし、 流 石 に 至 近 距 離 だと 正 体 が 判 明 するようです。この 秀 吉 の 台 詞 は 明 らかに 面 識 のある 相 手 へのものです。ちなみにEP7のお 茶 会 では 以 下 の 通 りです。「……この 姉 ちゃん、 大 した 肝 っ 玉 やで」( 秀 吉 )(EP7)※ 秀 吉 はベアトが 紗 音 であることに 気 がついていません。これはこの 秀 吉 が 駒 である 為 です。■ベアトリーチェは 駒 のベアトとゲームマスターのベアト、 二 人 いる?※EP5のTIPSを 見 ると、ベアトリーチェは 二 人 いることがわかります。(ベアトリーチェのTIPS) 彼 女 自 身 は 駒 に 過 ぎず、 上 層 界 の 当 人 はゲームマスターを 退 いているため、 第 5のゲームの 真 相 を 知 り 得 る 立 場 にない。(ベアトリーチェのTIPS の[Resurrect])この 世 界 を 生 み 出 した、 最 上 層 のベアトリーチェ。 第 4のゲームにて 全 てを 戦 人 に 託 し、ゲームマスターの 座 を 降 りた。※EP1~4でプレイヤーの 戦 人 と 対 戦 しているベアトは、 駒 のベアトの 方 ではないでしょうか? 彼 女 の 目 的 は“ 戦 人 を 屈 服 させて 自 らを 魔 女 と 認 めさせ、 黄 金 卿 を 開 くこと”です。しかし、ゲームマスターであるベアトの 目 的 は“ 戦 人 に 自 分 との 約 束 を 思 い 出 してもらうこと”です。ですから、 駒 ベアトが 勝 利 しそうになると 干 渉 され、 結 局 勝 てないのではないでしょうか?「… 妾 は 生 まれた 時 からその 屋 敷 におった。そして 屋 敷 の 中 だけで 生 きた。もちろん、 庭 には 出 られたが、 敷 地 はとても 高 い 柵 で 囲 まれており、それを 出 ることは 出 来 ず、また 出 てはならないと 厳 しく 言 われておった。…… 妾 はな、 屋 敷 と 庭 は 自 由 に 歩 けたが、その 外 へは、 自 らの 意 思 ではたった 一 歩 、 出 ることさえ 叶 わなかったのだ」(ベアト)(EP3)「……………そりゃどういう 意 味 だよ。… 物 心 ついた 時 から、ずっと 篭 の 鳥 だったって 言 いたいのか」( 戦 人 )「……そういうモノだと 思 っていた。 何 しろ、 気 付 いた 時 からそういう 生 活 だったからな。 疑 問 にも 思 わなかった」(ベアト)「お 前 、………… 一 体 、 何 者 なんだ」( 戦 人 )「それよ。それこそ、 妾 もまた 望 んだものだった」(ベアト)※ベアトは 九 羽 鳥 庵 のベアトのことを 自 分 のこととして 話 しています。 本 来 は 別 人 のはずですが、 駒 ベアトはゲームマスターのベアトにそのように 設 定 された 駒 なので、それが 事 実 だと 信 じているのです。88


「…… 今 、 俺 は 漠 然 と 思 ったことがある。………どうして 俺 がお 前 と、こんなおかしなゲームを 延 々と 続 けてるのかだ。……これは 俺 を 屈 服 させるためのゲームじゃない。……お 前 が、 本 当 の 意 味 で、 無 限 の 魔 女 に 認 められるための 試 験 ではないのか、ってな」( 戦 人 )(EP3)「…し、……… 知 らぬわ。… 妾 がそなたにゲームを 申 し 込 んでいるのはその、…… 単 なる 暇 潰 しだ…。 誰 の 思 惑 でもないわ」(ベアト)※この“ 誰 の 思 惑 でもない”という 発 言 は 不 自 然 ではないでしょうか? 何 故 ベアトが 戦 人 にゲームを 申 し 込 むのに、ベアト 以 外 の 思 惑 が 絡 むのでしょう?「 前 回 。 黄 金 郷 の 扉 がようやく 開 いたが、お 前 はサインを 拒 んだ。…… 記 憶 にはないだろうがな。お 前 がサインを 拒 んだ 為 、この 世 界 を 再 び 闇 に 閉 ざしてしまったのだ」( 金蔵 )(EP3)※EP2 終 盤 の 戦 人 は、プレイヤーが 駒 から 離 れていると 考 えられますが、それならばゲームマスターが 自 由 に 出 来 るはずで、サインを 拒 ませる 理 由 がありません。「ほらほら 早 く」(ベアト)(EP3)「そこに、サインを」(ワルギ)「…………ぇ…?」( 戦 人 )「 早 く」(ベアト)「サインを」(ワルギ)…… 何 だか 二 人 が、 妙 に 気 持 ち 悪 い 笑 顔 で、 俺 にサインを 強 請 って 来 て…。※こんな 疑 われるようなことをしなければ、 戦 人 は 素 直 にサインをしたはずです。これはこのベアトよりもさらに 上 の 存 在 からの 干 渉 なのではないでしょうか?「そうそう。 次 期 当 主 のテストであったな。そなたと 喋 るのが 楽 しくて、ついついさっきから 脱 線 してしまうわ。………それでは 次 期 当 主 のテストを 始 める。そなたに、 右代 宮 家 次 期 当 主 としての 資 格 があるかどうかを 問 う。 心 して 答 えるが 良 い」(ベアト)(EP4)さっきまで、 酔 っ 払 いのようにふざけていた 魔 女 が、その 威 厳 を 取 り 戻 す。……その 姿 はまさに、あの 貫 禄 ある 肖 像 画 から 抜 け 出 してきたかのようだった…。「……… 我 こそは 右 代 宮 家 顧 問 錬 金 術 師 、 黄 金 の 魔 女 にして 無 限 の 魔 女 、ベアトリーチェ。…… 右 代 宮 家 の 家 督 と 我 が 黄 金 の 全 てを 継 承 する 資 格 があるかどうか。それを 妾が 問 う。………そなたの 名 を 名 乗 るが 良 い」(ベアト)「………… 右 代 宮 、 戦 人 だ」( 戦 人 )先 ほどまでの 様 子 からは 想 像 もつかないその 貫 禄 に、 俺 は 何 の 迷 いもなく、 返 事 をしてしまう。……それくらいに、……その 姿 はなるほど、…… 本 当 の 意 味 で、この 島 の 女王 と 名 乗 るに 相 応 しかった。※この 急 激 なベアトの 変 化 は、 駒 にゲームマスターのベアトが 宿 ったためではないでしょうか?「つまり、この 島 の 本 来 の 人 数 は18 人 じゃなく17 人 だったんだ。そこに 未 知 の 人 物 Xが 隠 れ 潜 んでいて、 犯 行 を 行 なったんだ。……どうだベアトッ?! 出 て 来 い、 前 回の 最 後 の、 最 大 の 謎 は 今 、 解 けたぞ!!」( 戦 人 )(EP4)※ 戦 人 が 言 っているのはEP3の“ 南 條 殺 し”のことなのですが、 以 下 のようにこの 謎 を 出 題 したのはベアトではなく、エヴァです。「 南 條 を 殺 した 犯 人 は、 動 物 などの 類 ではないわよ。それはすでに 赤 で 宣 言 済 みよ? 人 間 以 外 は 一 切 、 考 慮 から 外 しなさい。ロボットなんかも 駄 目 よ。《 赤 : 人 間 以 外 の一 切 の 要 素 は、このゲーム 盤 に 関 与 しない》! ゆえにこうも 言 えるわね。《 赤 : 南 條 を 殺 したのは、 確 かに 人 間 である》!《 赤 : 地 に 足 の 付 いた 人 間 が、 凶 器 をかざし、それにて 殺 した! 眼 前 にて!》 ただし、その 人 間 は 魔 法 が 使 えたかもしれないわ。……それは 即 ち、 魔 女 だったということ。……それがつまり、この 私 。 黄 金 の 魔 女 、ベアトリーチェ!!」(エヴァ)(EP3)※ところがベアトは 以 下 のように 自 分 が 出 題 者 であるかのように 振 舞 っていますし、 戦 人 もベアトが 出 題 者 であると 認 識 しています。それならばEP3の 終 盤 でエヴァと 戦 ったベアトは 一 体 何 だったのでしょう? 駒 のベアトは“ 碑 文 の 謎 が 解 かれたら 儀 式 ( 殺 人 )をやめなくてはならない”のですが、それはあくまで“ 駒 のベアトの 約 束 ”であり、ゲームマスターのベアトには 関 係 がないのです。ですから“EP3において 譲 治 と 南 條 を 殺 したのはゲームマスターのベアト”と 考 えることが 出 来 ます。「くっくっく、くっはははははは…! ブラヴォー、ブラヴォー。そなた 如 き 無 能 にしては、ようやくの 感 は 否 めぬが、 兎 にも 角 にも、ひとつの 解 答 を 出 してみせた。 思 考停 止 ならコンクリートの 塊 でも 出 来 る! つまり、そなたはようやく 今 、ようやく 知 性 ある 存 在 に 進 化 できたわけだ。……ただ 涙 を 流 し、 歯 噛 みしながら 妾 の 靴 を 舐 めるだけの 存 在 から、ようやく 一 歩 を 踏 み 出 したと 言 えようぞ。くっくっくっく!」(ベアト)(EP4)「さらに 続 けて 第 3のゲームだ。 六 連 結 の 連 鎖 密 室 、 楼 座 叔 母 さんと 真 里 亞 の 殺 人 、 親 父 たちのホールでの 死 亡 、 蔵 臼 伯 父 さんと 夏 妃 伯 母 さんの 殺 人 、その 全 ては《 青 : 絵羽 伯 母 さんを 犯 人 に 仮 定 することで 説 明 可 能 だ。》これは 当 時 すでに 論 破 済 み。それに 対 しお 前 がエヴァを 通 して 出 題 してきた 最 後 の 難 題 、《 青 : 南 條 先 生 殺 しも18 人 目 の未 知 の 人 物 Xで 説 明 可 能 。》これで 第 3のゲームまで 全 て 打 ち 破 ったぞ!!! 反 論 はあるかッ!」( 戦 人 )(EP4)「この 黄 金 郷 には、ベアトが 望 まない 限 り、 誰 も 辿 り 着 けないのか」( 戦 人 )(EP5)「えぇ。……ドラノールをここへ 呼 んだのは、この 子 なのですよ」(ワルギ)「………………………………」(ベアト)「………ベアトが、……あいつをここへ 呼 び、 俺 に 会 わせたのか…」( 戦 人 )……しかし 俺 は、ベアトが 望 まない 人 間 がここに 辿 り 着 いたことがあるのを 知 っている。 縁 寿 だ。… 前 回 のゲームで、 縁 寿 は 招 かれざる 客 人 でありながら、……ここへ 一 人 、辿 り 着 いて 見 せた。あれも、……ベアトが 望 んだこと、……なのか……?「…… 縁 寿 ……? ………ベアト、 縁 寿 だ……!!」( 真 里 亞 )(EP4)「……………どうやってここ( 黄 金 郷 )へ…? ……… 引 き 取 られよ。 妾 はもはや、ここへは 誰 も 招 かぬのだ」(ベアト)※つまり“ 駒 のベアト”は 真 里 亞 と 二 人 で 黄 金 郷 に 閉 じこもることを 選 びましたが“ゲームマスターのベアト”は 縁 寿 を 黄 金 郷 に 招 き 入 れたのです。EP4 でゲームマスターのベアトは 終 盤 大 きく 干 渉 し、その 結 果 、 戦 人 が 約 束 を 思 い 出 しそうもないため、 失 望 してゲームを 降 りました。EP5 では“ 駒 のベアト”だけがゲーム 盤 に 残 り、 夏 妃 の 為に 頑 張 っているのだと 考 えられます。そしてEP5のラストで“ゲームマスターのベアト”が 消 えたため、その 駒 である“ 駒 のベアト”も 消 えてしまったのでしょう。ですからEP6で 戦 人 は 新 たに“ 雛 ベアト”を 生 み 出 す 必 要 があったのです。「《 赤 : 初 めまして、こんにちは! 探 偵 ッ、 古 戸 ヱリカと 申 します!! 招 かれざる 客 人 ですが、どうか 歓 迎 を!!》《 赤 : 我 こそは 来 訪 者 ッ、 六 軒 島 の18 人 目 の 人 間ッ!!!》」(ヱリカ)(EP7)「………… 申 し 訳 ないが、」( 戦 人 )「《 赤 :そなたを 迎 えても、》」(ベアト)「《 赤 :17 人 だ。》」( 戦 人 &ベアト)※“ 紗 音 ”“ 嘉 音 ”“ベアトリーチェ”3つの 人 格 があると 考 えれば 人 数 が 合 いませんが、そもそも“ベアトリーチェの 人 格 ”などないとしたらどうでしょうか? “ゲームマスターのベアト”が 宿 った 駒 をプレイヤー 達 が“ベアトリーチェの 人 格 ”だと 誤 解 させられているのではないでしょうか。■ベアトリーチェは 何 故 、 蜘 蛛 の 巣 が 苦 手 なの?「(ベアトに) 他 にも 蜘 蛛 の 巣 が 魔 除 けに 効 くとも 聞 きました」( 紗 音 )(EP6)「あれ? それは 悪 食 島 の 悪 霊 が 苦 手 な 方 じゃなかったっけ? 熊 沢 さんが 詳 しいよな、そういうの」( 朱 志 香 )「ある 夜 、 紫 の 雷 が 鎮 守 の 社 を 打 ち 砕 いたのです。 島 々の 者 たちは、 凶 兆 だと 囁 き 合 いました。おぉ、 今 思 えば、あれこそがベアトリーチェさま 復 活 の 徴 だったに 違 いありません」( 熊 沢 )(EP6)「その 鎮 守 の 社 は、 悪 食 島 の 悪 霊 を 封 じるために、 旅 の 修 験 者 が 建 立 した。そうでしたね?」(ヱリカ)「ええ、そうでございます。 強 い 神 通 力 をお 持 ちだったということで、その 力 を 鏡 に 込 め」( 熊 沢 )「 霊 鏡 として 社 に 奉 納 し、 悪 霊 を 封 印 した。…… 少 し 違 和 感 を 覚 えます。…… 悪 食 島 の 悪 霊 を 封 印 する 社 が、どうしてベアトリーチェも 封 印 するんです?」(ヱリカ)「は、……はぁ…。それはその、 霊 鏡 の 神 通 力 が…」( 熊 沢 )89


「……なるほど。 東 洋 の 悪 霊 も 西 洋 の 魔 女 もOKの、 便 利 な 霊 鏡 だったから、というわけですか。……わかりました。すっきりはしませんが、そこは 折 れることにしましょう。しかし、どうしてベアトリーチェが 蜘 蛛 の 巣 を 嫌 うのかわかりません」(ヱリカ)伝 説 では、 悪 食 島 の 悪 霊 は 蜘 蛛 の 巣 を 嫌 ったため、 魔 除 けとして 近 隣 の 島 々でも 尊 ばれたらしい。「しかし、それ、 悪 食 島 伝 説 の 話 です。そもそもベアトリーチェの 魔 女 伝 説 の 発 祥 は、この 島 に 引 っ 越 してきた 右 代 宮 金 蔵 が、ミステリアスな 黄 金 伝 説 と、それを 授 けた 魔女 という 名 の 愛 人 を 吹 聴 してから 始 まったものです。つまり、 悪 食 島 の 悪 霊 と、 黄 金 の 魔 女 ベアトリーチェは 本 来 、まったく 異 なる 存 在 のはずなんです。なのに、 設 定 が 同じになっています。 金 蔵 さんの 書 斎 のドアノブは、サソリの 魔 法 陣 が 描 かれていて、それは 西 洋 魔 術 では 魔 除 けを 意 味 する、だから 西 洋 魔 女 のベアトリーチェは、ドアノブに 触 れられない。……これは 理 解 できるんです。でも、 蜘 蛛 の 巣 に 限 っては、ベアトリーチェが 嫌 う 理 由 がありません。 私 の 知 る 限 りでも、 西 洋 魔 女 の 苦 手 なものに、 蜘 蛛の 巣 があったという 記 憶 はありません。むしろ 蜘 蛛 は、 魔 女 の 仲 間 や 眷 属 では? 思 うに。…… 悪 食 島 伝 説 の 悪 霊 と、 魔 女 伝 説 のベアトリーチェ。この2つの 異 なる 伝 説 が、少 し 混 交 しているように 思 います。いえ、 混 交 どころか 融 合 かもしれません」(ヱリカ)「ほっほっほ、ベアトリーチェさまの 悪 戯 では 困 りましたねぇ。でも、 魔 女 が 相 手 なら、おまじないで 何 とか 出 来 るかもしれませんよ?」( 熊 沢 )(EP7)熊 沢 さんは、あれはどこにあったっけ、と 言 いながら、 厨 房 の 棚 を 漁 り 始 める。ようやく 見 つけてもって 来 てくれたそれは、 何 と、 凧 糸 だった。それをピンと 葉 って 見 せ、50cmくらいの 長 さに 包 丁 で 切 ってくれた。「これの 端 に 鍵 を 括 りつけ、 反 対 の 端 は、ポケットのボタンのところでも、 目 立 たないように 括 りつけておきましょう。……これは、 蜘 蛛 の 糸 のおまじないなのですよ」( 熊沢 )「 蜘 蛛 の 糸 ? 六 軒 島 の 悪 霊 が 恐 れたという?」(ヤス)「そう、よく 覚 えていますね。この 島 の 蜘 蛛 の 糸 には 霊 力 が 宿 っていて、 強 い 魔 除 けの 力 を 持 っていると 言 われていました。ほら,こうしてピンと 張 ると、 蜘 蛛 の 糸 のようでしょう? ほっほっほ、これで 蜘 蛛 の 糸 が 苦 手 なベアトリーチェさまは、もう 悪 戯 が 出 来 ないというわけですよ」( 熊 沢 )※この 場 面 が、ベアトが 蜘 蛛 の 巣 が 苦 手 になった 瞬 間 です。ベアトの 悪 戯 に 対 抗 するための、 蜘 蛛 の 糸 のおまじない。そして、 蜘 蛛 の 巣 が 苦 手 な 悪 食 島 の 悪 霊 。 熊 沢 がとっさにこの2つを 結 び 付 けてしまったため、ベアトは 蜘 蛛 の 巣 が 苦 手 になってしまったのです。■ベルンカステル※『ひぐらしのなく 頃 に』からのスピンオフです。 古 手 梨 花 (ふるでりか)が 自 分 が 飲 んでいたワインに 書 かれていた 名 前 と 自 分 の 名 前 から 作 ったペンネーム、フレデリカ=ベルンカステルが 元 になっています。ちなみに「ベルンは 悪 者 だ」だと 思 っている 人 が 多 いでしょうが、おそらくそういうわけではないと 思 います。EP8 の 戦 人 は“もう 一つの 真 実 ”を 見 せることによって 縁 寿 を 導 こうとしました。しかし、 同 時 に“ 一 なる 真 実 ”からは 縁 寿 を 遠 ざけようとしました。ベルンは「これでは 本 当 に 解 決 にはならない」と 考 えたのではないでしょうか。あるいは「 縁 寿 には 真 実 に 堪 える 力 がある」と 見 込 んだのかもしれません。ですからあえて 悪 役 を 引 き 受 けることで、 縁 寿 を 導 いたのだと 思 います。■ 魔 女 の 碑 文※“ 地 下 貴 賓 室 に 至 る 方 法 ”を 示 しているわけですが、 以 下 の 部 分 は 何 を 意 味 しているのでしょう?魔 女 は 賢 者 を 讃 え、 四 つの 宝 を 授 けるだろう。 一 つは、 黄 金 郷 の 全 ての 黄 金 。 一 つは、 全 ての 死 者 の 魂 を 蘇 らせ。 一 つは、 失 った 愛 すらも 蘇 らせる。 一 つは、 魔 女 を 永 遠 に眠 りにつかせよう。 安 らかに 眠 れ、 我 が 最 愛 の 魔 女 ベアトリーチェ。※これは 金 蔵 からの 源 次 へのメッセージなのではないでしょうか? まず“ 黄 金 郷 の 全 ての 黄 金 ”これはそのまま10トンの 黄 金 です。“ 全 ての 死 者 の 魂 を 蘇 らせ” 金 蔵 はビーチェも 九 羽 鳥 庵 のベアトもその 存 在 ごと 抹 殺 してしまいました。それを“ 蘇 らせ”るということは、ビーチェと 九 羽 鳥 庵 のベアトの 存 在 を 認 め、その 子 どもである 紗 音に、あるいは 親 族 に、きちんと 説 明 をする、ということではないでしょうか。“ 失 った 愛 すらも 蘇 らせる”これは 金 蔵 にとって1967 年 に 死 んでしまったはずの 理 御 が 生きていたと 判 明 することで、その 存 在 を“ 蘇 らせる”ことが 出 来 るということではないでしょうか。 最 後 の“ 魔 女 を 永 遠 に 眠 りにつかせよう”これは 自 分 が 愛 したベアトリーチェはもう 死 んでしまったことを 認 め、 全 てを 清 算 するということではないでしょうか。「どうやら、この 葬 儀 は、 隠 したがゆえに 弔 うことが 出 来 なかった 二 人 のベアトリーチェのためのようですね……」( 理 御 )(EP7)※もし 金 蔵 が 紗 音 と 面 会 した 時 に 死 ななければ、 実 際 にこのような 葬 儀 をしたものと 思 われます。ちなみに“ 魔 女 の 碑 文 ”は 九 羽 鳥 庵 のベアトに 黄 金 と 家 督 を 継 がせるために 礼 拝 堂 とセットで 用 意 したものだと 考 えられます。 思 いがけない 事 故 の 為 に、 実 際 に 使 われる 時 期 が 大 幅 にずれ 込 みましたが…。■ 魔 法 とはどのようなもの?「…… 魔 女 は 魔 法 を 以 ってしても、 自 らに 出 来 ないことを 出 来 ない。…… 自 らに 出 来 ることのみ、 魔 法 で“ 装 飾 ”できる」( 縁 寿 )(EP6)“ 魔 法 は、 出 来 ることしか、 出 来 ない”。つまり、 魔 法 なくして 出 来 ることのみが、 魔 法 で 残 せる 結 果 なのだ。はっきり 言 い 切 ろう。 魔 法 は 大 別 して2 種 類 がある。 巨 人 を呼 び 出 したり、 塔 を 地 面 から 生 やしたり。……でも、 蓋 を 開 けてみれば、 薔 薇 庭 園 には 何 一 つ 起 こっていなかった、というタイプの 魔 法 。これはただの“ 幻 想 ”。 魔 女 の 言うところの、 半 魔 法 の 毒 素 が 一 切 ない 場 所 での、 観 測 者 なき“ 嘘 ”だ。 結 果 を 伴 う 必 要 のない 魔 法 は、もっとも 簡 単 な 魔 法 で、そして“ 嘘 ”だ。これは 取 るに 足 らない 妄 想 、幻 想 、 白 昼 夢 に 同 じ。そしてもう1 種 類 が、 本 当 の 魔 法 とも 言 うべき、“ 結 果 を 伴 う 魔 法 ”。つまりこの 場 合 で 言 えば、 観 測 者 が、 実 際 に 中 身 が 空 であることを 確 認 して 伏 せたカップの 中 に 飴 玉 が 現 れ、それを 実 際 に 観 測 者 が 得 られるという、“ 結 果 を 伴 う 魔 法 ”だ。 幻 想 の 魔 法 と 違 い、 結 果 の 伴 う 魔 法 は、すでに 私 ( 縁 寿 )が 看 破 しているある 大きなルールがある。それは 自 分 の 成 し 得 たことの 観 測 者 なき 過 程 のみを、 人 は 魔 法 に 昇 華 できる、というもの。もっと 平 たく、 冷 酷 に 言 い 切 ろう。つまり、 全 ての 魔 法 は 手品 なのだ。“ 魔 法 なくして 出 来 ることしか、 結 果 を 伴 えない”(EP6)■ 真 里 亞 の 読 解 力 は 高 いの?「…うー。……そこにオウゴンキョウへの、…カギが、ネムる。うー! 読 めた!」( 真 里 亞 )(EP1)「うー!! 駄 目 ぇ、 真 里 亞 が 読 むの! 真 里 亞 がみんなに 読 んで 聞 かせなさいって 言 われたの!!」( 真 里 亞 )(EP1)「……… 真 里 亞 ちゃん、その 封 筒 はどうしたの?」「うー! 傘 を 貸 してくれた 時 にベアトリーチェにもらった。ご 飯 が 終 わったら、 真 里 亞 がみんなに 読 んで 聞 かせろって 言 われた!」( 真 里 亞 )「 読 む。うー」( 真 里 亞 )真 里 亞 の 口 から 出 る 言 葉 なのに、なぜかいつもと 違 う 声 のような 気 がして。「なお、 回 収 の 手 始 めとしてすでに、 右 代 宮 本 家 の 家 督 を 受 け 継 いだことを 示 す“ 右 代 宮 家 当 主 の 指 輪 ”をお 預 かりさせていただきました。 封 印 の 蝋 燭 にてそれを、どうかご 確 認 くださいませ」( 真 里 亞 )※ 碑 文 にしても、 魔 女 の 手 紙 にしても、とても 小 学 3 年 生 に 読 めるような 文 章 ではありません。しかも、 碑 文 は 読 むのに 苦 労 しているのに、 魔 女 の 手 紙 はスラスラ 読 んでいます。 自 分 で 手 帳 に 書 き 記 し、 読 み 方 も 教 えてもらったであろう 碑 文 がなかなか 読 めないのに、 何 故 、 初 見 の 魔 女 の 手 紙 はあっさり 読 めてしまうのでしょう。これは 後 者 はゲーム 盤 であるため、 幻 想 補 正 が 入 っていると 考 えられます。 本 当 はうまく 読 めなかったけれども、うまく 読 めたように 修 飾 されたか、もしくは 駒 であるため、 能 力 が 補 正されているのです。そして 前 者 は、1986 年 の10 月 4 日 に 実 際 にあった 場 面 なのかもしれませんし、あるいは 単 にゲーム 盤 の 外 で 幻 想 補 正 がないため、うまく 読 めないだけなのかもしれません。■ 真 里 亞 の 薔 薇 は 結 局 どうなったの?「 本 日 は、ご 来 賓 の 皆 様 が 大 層 お 気 に 入 りでございました 薔 薇 の 庭 園 にちなみまして、パンナコッタをローズガーデン 風 に 仕 上 げてみました。 散 らしてございます 薔 薇 の 花びらは 当 家 の 庭 園 より 先 ほど 採 取 してきたものでございます」( 郷 田 )(EP1)90


※ 郷 田 に 召 し 上 げられてしまった、という 説 がありますが、 見 栄 っ 張 りの 郷 田 が、わざわざ 見 映 えの 悪 い 薔 薇 を 使 うとは 思 えません。また、 料 理 以 外 の 雑 事 を 厭 う 郷 田 が、料 理 に 専 念 できる 立 場 にあるときに、ゴミのついた 見 映 えの 悪 い 薔 薇 を 見 つけたとしても、 手 を 出 すとも 思 えません。ベアトが 真 里 亞 を 孤 立 させて 手 紙 を 渡 すために 抜 いたという 説 がありますが、これもありえません。「……さ、 真 里 亞 。もうすぐお 昼 よ。ママと 一 緒 にお 屋 敷 に 行 きましょう」( 楼 座 )(EP2)「うー。 行 かない。ベアトリーチェがね、もうすぐ 来 るの。だから 待 ってるの」( 真 里 亞 )※ベアトは 真 里 亞 と 薔 薇 庭 園 で 会 う 約 束 をしていたのです。ですから 薔 薇 の 消 失 は、むしろ 余 計 なアクシデントだったのです。「…………ふむ。 諸 行 無 常 よの。 残 念 だな、 真 里 亞 。…この 風 雨 に、そなたの 薔 薇 は 耐 えられなかったらしい」(ベアト)(EP3)「うー……。それじゃ、 真 里 亞 の 薔 薇 は………?」( 真 里 亞 )「 風 雨 に 散 り、すでにこの 世 のものではない」(ベアト)※ベアトが 断 言 していますので、 実 際 その 通 りなのでしょう。■ 真 里 亞 は 自 閉 症 ?( 真 里 亞 は) 感 情 をあまり 表 に 出 さないので、 何 を 考 えているのかわかりにくい。( 戦 人 )(EP1)「 真 里 亞 ちゃんは 素 直 な 子 だから、そういう 冗 談 でも 真 に 受 けちゃうんだよ」( 譲 治 )(EP1)「うー? 約 束 したから 揉 ませる! 真 里 亞 、 約 束 は 守 る! 絶 対 守 る、うー!!」( 真 里 亞 )(EP1)「うー! 真 里 亞 は 忘 れっぽいからちゃんと 書 く! ママに 言 われたからちゃんと 書 く!」( 真 里 亞 )(EP1)俺 たちが 手 分 けして 探 そうとすると、 不 機 嫌 そうな 顔 をした 真 里 亞 が 俺 の 上 着 を 引 っ 張 る。…… 他 所 へ 行 くなという 意 思 表 示 に 感 じられた。(EP1)「 何 だよ、どうした」( 戦 人 )「……うー。 真 里 亞 の 薔 薇 はここなの。ここにあるの…!」( 真 里 亞 )真 里 亞 は 地 団 太 を 踏 む。…… 間 違 いなくそこにあったと 言 って 指 し 示 すのだが、 現 にそこにはない。「 真 里 亞 はたまに、すごくどうでもいいことを 気 にし 始 めちゃうんだよ。それがどうにかなる 時 はいいんだけど…」( 朱 志 香 )(EP1)真 里 亞 は 馬 鹿 が 七 つ 付 くほどの 正 直 だから、……ないものを 探 していなさいと 命 じたら、ずっとずっと 探 し 続 けている。…… 雨 が 降 り 出 しても…!!(EP1)「いや。 昔 から 愚 直 なぐらい 正 直 で 真 面 目 だよ。 普 通 なら 聞 いただけで 嘘 とわかるような 冗 談 すら 鵜 呑 みにするタイプだぜ? 真 里 亞 から 冗 談 を 言 い 出 すなんて 聞 いたこともない。……… 真 里 亞 に 関 してだけは、 何 かの 比 喩 とか 冗 談 とか、そういうことは 考 えられねぇぜ。… 額 面 通 りの 意 味 だと 思 うべきだろうよ」( 朱 志 香 )(EP1)「…………… 真 里 亞 ちゃん、この 一 年 でずいぶん 立 派 になりましたね」( 霧 江 )(EP2)「………そう 見 えます…? 未 だに 自 分 のお 洋 服 を 畳 むことすらできないんですよ」( 楼 座 )「………ない…。ない……。 目 印 を 付 けた、…… 真 里 亞 の 薔 薇 がない…。……うー。…………うー!!」( 真 里 亞 )(EP3)真 里 亞 は 確 かに 記 憶 していた。その 薔 薇 は、 花 壇 のここのここにあった。なのにない。黄 金 の 蝶 たちは 輝 きを 強 め、 数 を 増 やし、そしてベアトリーチェが 天 高 く 指 す、その 指 先 に 集 まっていく…。それこそが、 黄 金 の 魔 法 の 奇 跡 …。そして 黄 金 の 蝶 たちは、 眩しく 輝 く 一 粒 の 黄 金 に 凝 縮 されていく。……それは 金 色 に 輝 く 一 粒 の 種 だった。それがベアトリーチェの 指 先 に 乗 り、 黄 金 の 芽 を 芽 吹 かせ、 黄 金 の 葉 を 開 く。そしてぽとりと 指 先 から 落 ち、 花 壇 の 泥 の 中 に 潜 り 込 み、ぐんぐんと 成 長 していく…。(EP3)「…ふむ。 立 派 な 花 を 思 い 出 したようだな。……だが、このままでは 他 の 薔 薇 たちに 混 じってしまい、 区 別 がつかなくなってしまうというものよ。もうひとつサービスしておくか」(ベアト)ベアトリーチェは、なおも 唸 り 続 けて 集 中 を 続 けている 可 愛 い 見 習 い 魔 女 のために、もうひとつだけ 魔 法 を 掛 けることにする。パチンと 指 を 鳴 らすと、 黄 金 の 蝶 が 一 匹 現 れ、ひらひらと 舞 い、 蘇 ったばかりの 花 に 止 まる。それは 再 び、パチンと 弾 けて 姿 を 消 すと、 金 色 のモールになって 目 印 となってくれた…。「これで 良 かろう。…… 真 里 亞 。もう 目 を 開 けても 良 いぞ」(ベアト)「………うー? 薔 薇 はどこ? ない。ない」( 真 里 亞 )「そっちではないぞ、こっちだ。…ほれ。 金 モールで 印 を 付 けておいてやったぞ」(ベアト)真 里 亞 お 姉 ちゃんは、クラスの 子 たちと 比 べて、いつもテンポがひとつ 遅 かった。 感 受 性 も、ものの 考 え 方 も 少 し 特 徴 的 で、…… 彼 らに 溶 け 込 むには、 少 し 個 性 的 過 ぎた。成 績 もかなり 低 く、それでいて 得 意 とするオカルト 分 野 には 饒 舌 だったものだから、クラス 中 から 奇 人 扱 いを 受 けていた。(EP4)真 里 亞 はごちゃごちゃの 部 屋 の 中 を 漁 り 始 める。 楼 座 によく 片 付 けるようにと 言 われるのだが、どうにもお 部 屋 の 片 付 けは 苦 手 だ。(EP4)※ 自 閉 症 的 傾 向 は 間 違 いなくあります。 自 閉 症 の 人 の 中 に、ごく 稀 に“サヴァン 症 候 群 ”と 呼 ばれる 驚 異 的 な 能 力 を 持 った 人 がいます。サヴァンの 一 つに“ 映 像 記 憶 ”があります。 一 度 見 たものを 写 真 に 撮 ったように 記 憶 できる 能 力 です。 真 里 亞 はこの“ 映 像 記 憶 ”を 持 っているため、 薔 薇 のあった 場 所 を 確 信 しているのでしょう。そして、ベアトはそのことを 知 っていたようです。ですから、 真 里 亞 が 覚 えていないであろう 場 所 にあった 薔 薇 にモールを 括 り 付 けて、 真 里 亞 の 薔 薇 が 蘇 ったことにしたのです。■メッセージボトルとはどのようなもの?それから 数 年 後 。 近 隣 の 島 の 埠 頭 にて 波 間 を 漂 う 不 思 議 なワインボトルが、 漁 師 によって 引 き 上 げられました。その 中 にはびっしりと 細 かい 文 字 で 書 かれ、 細 く 丸 めたノート 片 が 詰 め 込 まれておりました。それこそが、…………この、 物 語 。 謎 に 包 まれた1986 年 10 月 4 日 からの 謎 と 怪 異 に 満 ちた 二 日 間 の 正 体 を、 人 々はこのノート 片 によって 初 めて 知 ることになります。そしてワインボトルのノート 片 は、この 謎 に 満 ちた 事 件 を 語 りつつも、その 真 相 については 語 っていません。 書 き 記 した 人 物 の 自 著 によれば、… 彼 女 の 名 前 は 右 代 宮 真 里 亞 。(EP1)※ 見 つかったのは 事 件 の 数 年 後 です。 僕 は 当 初 、これは 六 軒 島 から 脱 出 したヤスが 事 件 後 に 書 いたものだと 考 えていました。そう 考 えると 色 々と 都 合 がよいのです( 縁 寿 が 来ないことや 台 風 の 到 来 を 予 見 しているため)。しかし、それは 間 違 いでした。「…… 事 件 の 数 年 後 、 近 隣 の 島 に 流 れ 着 いたメッセージボトル。それは 好 事 家 の 手 に 渡 った。アポイントは、 一 応 取 ってあるの」( 縁 寿 )(EP4)「 式 根 島 の 若 い 漁 師 が、 手 紙 入 りのワインボトルを 拾 っていたことがわかったのです。この 若 い 漁 師 は 興 味 本 位 からそれをたまたま 保 管 していました。それが、 右 代 宮 蔵 書で 六 軒 島 が 世 界 的 注 目 を 浴 びた 為 、 公 表 したというのです。ワインボトル 内 のノート 片 には、 右 代 宮 家 のとある 人 物 の 署 名 がされていました。 右 代 宮 真 里 亞 という 少 女 です。しかし、 彼 女 の 遺 品 の 肉 筆 から、 別 人 の 筆 跡 であることが 確 認 されました。 少 なくとも、 少 女 より 達 筆 で 年 齢 のある 人 物 によって 書 かれたことは 疑 いようがないでしょう。彼 女 の 名 前 を 騙 った、 何 者 かが 執 筆 した 可 能 性 が 極 めて 高 かったのです。よって、この 時 点 ではノート 片 の 内 容 の 信 憑 性 は 薄 いと 考 えられました」( 大 月 )(EP4)ところが、 後 に、 同 様 のメッセージボトルが、 事 故 当 日 に 警 察 による 遺 留 品 捜 索 で 周 辺 海 域 から 回 収 されていたことが 判 明 し、センセーションを 巻 き 起 こす。「 警 察 は 現 場 の 状 況 とボトルの 封 印 状 況 から、 捏 造 の 可 能 性 は 低 く、 事 故 直 前 の 数 日 以 内 に 投 棄 したものと 判 断 したようです。また 双 方 の 筆 跡 は 一 致 しました。これにより、漁 師 の 発 見 したノート 片 の 信 憑 性 が 増 すこととなりました」( 大 月 )2つのワインボトルの 中 には、ノート 片 が 何 枚 もぎっしり 詰 められていた。それは、 右 代 宮 真 里 亞 を 名 乗 る 本 人 以 外 の 何 者 かによる、 事 故 前 日 から 当 日 を 日 記 風 に 記 した 膨大 な 手 記 だった。そしてこの 内 容 こそが、「 魔 女 伝 説 連 続 殺 人 事 件 」、そして「 黄 金 の 魔 女 ベアトリーチェの 謎 」の 始 まりだったのである。「この 奇 妙 な 日 記 風 手 記 には、 台 風 で 島 に 釘 付 けにされた 右 代 宮 家 の 親 族 たちが、 魔 女 復 活 の 儀 式 に 巻 き 込 まれ、 次 々に 不 可 解 な 方 法 で 殺 されていく 様 子 が 記 されていました。そして 最 後 に 黄 金 の 魔 女 ベアトリーチェが 蘇 り、 全 てを 黄 金 郷 に 飲 み 込 む。……まるで、それこそが 当 日 の 全 容 であるかのように 記 されていました。また、 当 時 の 島 の状 況 についても 非 常 に 詳 しく 描 写 されており、 右 代 宮 家 に 勤 務 したことがある 元 の 使 用 人 たちは、 間 違 いなく 内 部 に 詳 しい 人 間 が 書 いたに 違 いないと 証 言 しました」( 大 月 )※ 実 際 に 書 かれたのは 事 故 の 数 日 前 でした。そして 上 記 内 容 によって、 大 抵 の 人 が 想 定 しているであろう“EP1と2=2つのメッセージボトルの 内 容 ”という 前 提 が 崩 れます。日 記 にせよ 手 記 にせよ、 一 人 称 、もしくは 三 人 称 で 書 かれるものです。そして 署 名 が 真 里 亞 ということですから、メッセージボトルは 真 里 亞 の 一 人 称 、もしくは 三 人 称 で 書かれていたことになります。ところが 各 EPは 戦 人 の 一 人 称 、もしくは 三 人 称 で 書 かれています。つまりEP1と2がメッセージボトルの 内 容 の 訳 がないのです。また、メッセ91


ージボトルはワインボトルの 中 に 入 っていたノート 片 ですが、“ 何 枚 も”と 書 かれています。“ 何 十 枚 も”ではありません。『うみねこのなく 頃 に Episode1』は 小 説 としても出 版 されていますが、 上 下 で 約 600ページあります。どんなに 細 かい 字 で 書 いたところで、ワインボトルに 収 まるものではないことがわかります。ではメッセージボトルには 一 体 何 が 書 かれているのでしょうか。「…… 確 か、 漁 師 のノート 片 と、 警 察 のノート 片 で、 内 容 がまったく 違 うと 聞 きましたが」( 縁 寿 )(EP4)「 左 様 です。このせいで、 六 軒 島 ミステリーはさらに 面 白 みが 増 したのです。2つのボトルの 中 身 は、どちらも 事 故 前 日 から 当 日 までを 記 した 日 記 風 の 手 記 です。しかし、その 内 容 はまったく 異 なったのです。まるで、どちらかが 真 実 で、どちらかが 虚 偽 のように。あるいは 両 方 とも 虚 偽 なのかもしれない。…しかし、 始 まりと 終 わりだけは 一致 するのです。 始 まりは、 親 族 たち18 人 は 台 風 で 島 に 閉 じ 込 められた。そして 終 わりは、 全 員 が 死 に、 黄 金 の 魔 女 が 蘇 り、 全 ては 黄 金 郷 に 飲 み 込 まれる」( 大 月 )2つの 日 記 は、どちらも 魔 女 の 碑 文 に 沿 った 連 続 殺 人 を 描 いているのだが、 犠 牲 者 の 順 番 も 死 に 方 も、“ 二 日 間 の 物 語 ”さえも 違 う。しかし、どちらも 最 後 は 全 員 が 死 亡 し、魔 女 が 復 活 するという 同 じ 顛 末 を 描 いている。メッセージボトルが 本 当 に 日 記 であるかは 大 いに 疑 わしい。…… 何 しろ、 文 章 量 が 膨 大 だ。 実 際 に 連 続 殺 人 の 渦 中 にあった 人物 が、 冷 静 にそれらを 記 せたとは 考 え 難 い。だとすると、この 日 記 は、 事 故 前 日 までにゆっくりと 時 間 を 掛 けて 執 筆 されたという 方 が 現 実 的 だろう。※ 大 月 教 授 の 話 をそのまま 受 け 取 るのなら、 台 風 の 到 来 が 始 まりになります。これは 雨 が 降 り 始 めた 時 間 帯 、 真 里 亞 が 薔 薇 を 探 すために 薔 薇 庭 園 に 一 人 残 った 時 間 帯 なのではないでしょうか? つまりあの 場 面 こそがメッセージボトルの 始 まりだと 考 えられるのです。ということは、EP1 の 空 港 の 場 面 や 船 の 場 面 はメッセージボトルには 含 まれないことになります。EP2の 譲 治 と 紗 音 の 沖 縄 デート、 文 化 祭 も 同 じくです。 後 のEPで“ゲーム 盤 ”と 呼 ばれる 場 面 、あれこそがメッセージボトルの 中 身 なのではないでしょうか。また、ノート 片 は“ 何 枚 も”ですから、ゲーム 盤 部 分 だけでも 書 ききれません。しかし、 粗 筋 だけでは 逆 に 何 枚 も 必 要 ないでしょう。ゲーム 盤 の 出 来 事 を、 真 里 亞の 視 点 で 粗 筋 以 上 、 全 文 未 満 の 内 容 で 記 したもの、それがメッセージボトルなのだと 考 えられます。そして“■ 偽 書 とはどのようなもの?”でも 説 明 したとおり、 偽 書 はメッセージボトルに 似 せて 書 かれているため、スタイルや 文 章 量 もメッセージボトルに 準 じると 考 えられます。その 証 拠 と 考 えられるのが 以 下 の 部 分 です。「さ。……どうぞ、 続 きを 読 んで。 文 字 を 追 うあなたの 顔 を 見 るのが、 何 よりも 楽 しいの。そして、 言 葉 を 交 し 合 うことも…」( 幾 子 )(EP6)「 物 書 きは 感 想 に 飢 えてるってのは 本 当 ね。……でも 申 し 訳 ないけど、こんな 分 厚 い 原 稿 を、 延 々と 読 んでる 時 間 はないの。それより 私 はあなたに、……………」( 縁 寿 )「…… 時 間 なんて、いくらでもあるでしょうに……」( 幾 子 )彼 女 の 後 ろにある、 凝 った 意 匠 の 飾 り 時 計 は、…… 振 り 子 も 秒 針 も、ずっと 動 かし 続 けている。なのに、…… 全 然 、さっきから 時 間 が 経 っていない。この 部 屋 に 通 されてから、まだ3 分 くらいしか 経 っていないのだ…。「ね? 時 間 など、 気 にすることもないでしょう。……あなたが 読 み 終 わるまで、 全 ての 時 間 はあなたを 追 い 立 てない…」( 幾 子 )「お 嬢 、 次 のページ、 次 のページ」( 天 草 )天 草 に 次 のページをせがまれるので、…… 私 は 再 び、 物 語 の 世 界 へ 戻 る。縁 寿 と 八 城 の 物 語 を 巡 る 議 論 は、 物 語 を 読 み 終 えても、 長 く 続 けられていた。それはとても 真 剣 で、…… 熱 のあるものだった。 縁 寿 は、この 物 語 がふざけた 創 作 ではなく、…… 六 軒 島 より、 真 実 の 一 つを 知 らせるために12 年 前 より 再 び 流 れ 着 いた、 新 しいボトルメッセージだと、 認 めていた…。そして、………この 物 語 の 語 ろうとする 真 実 を、彼 女 なりの 見 方 で、 見 つけられたようだった。……もちろん、それは、ある 一 つの 真 実 であって、それをもって、 彼 女 の 旅 が 終 わるわけではない。しかし、……こういう 解釈 もあってもいい。それだけで、 彼 女 の12 年 の 心 の 空 白 は 埋 まらないけれど。……でも 今 は、…… 少 しだけ 余 韻 を、 八 城 の 淹 れた 苦 い 珈 琲 で 味 わっても 良 かった。…… 窮屈 なはずの、 他 所 の 家 のソファーなのに、……すっかり 自 宅 みたいに 馴 染 んでしまっていて、 何 だか 不 思 議 な 気 持 ちだった。でも、 時 計 は、ここで 彼 女 と 会 ってから、せいぜい2~3 時 間 を 回 った 程 度 だ。…… 時 間 の 感 覚 が、とても 不 思 議 だった…。(EP6)※ 何 故 、 時 間 が 進 んでいなかったかというと、 縁 寿 は3 分 で 読 める 程 度 しか、 偽 書 の 内 容 を 読 んでいなかったのです。というかこの 時 点 ではゲーム 盤 の 場 面 まで 読 み 進 めていないため、そもそもまだ 読 み 始 めてもいないでしょう。そして、 偽 書 を 読 みながら 議 論 をし、 読 み 終 わってからも 長 時 間 、 話 をしたのに2~3 時 間 しか 経 過 しませんでした。もしこれが『Episode6 Dawn of the golden witch』を 読 んだのだとしたら、とてもこんな 時 間 では 終 わらなかったでしょう。つまり、 偽 書 はその 程 度 の 文 章 量 しかないのです。ちなみに 以 下 に 書 かれているほどの 文 章 量 が 偽 書 にあるわけがないため、この 場 面 は 幻 想 修 飾 されていると 考 えられます。 個 人 的 にはこれは 感 心 しません。 幾 子が 見 せるのならワインボトル 数 枚 程 度 という 偽 書 の 体 裁 は 守 るべきで、この 文 章 量 にするならフェザリーヌが 見 せたほうが 良 かったと 思 います。 幻 想 と 現 実 が 混 在 しているこの 場 面 で、 現 実 まで 幻 想 修 飾 するというのはやりすぎです。彼 女 ( 八 城 幾 子 )は 鍵 の 掛 かった 引 き 出 しから、 分 厚 い 何 かの 入 った 大 きな 茶 封 筒 を 出 していた。 中 にはぎっしり、 印 字 されたプリンター 用 紙 が 詰 まっているようだった。…… 彼 女 の 原 稿 を 印 刷 したものだろうか。そして 茶 封 筒 には 万 年 筆 の 達 筆 な 字 で、……「Dawn」と 記 されていた。Dawnの 名 で 始 まる 偽 書 は 存 在 しない。……と、いうことは……。…… 直 感 する。これは、 新 作 なのだ。 彼 女 の 未 発 表 の 最 新 偽 書 ……。「Dawn of the golden witch」…(EP6)縁 寿 の 読 む 原 稿 は、 無 論 、まだ 物 語 の 途 中 だ。……しかし、あと 数 枚 で 終 わってしまう。 続 く 物 語 の 原 稿 は? まだまだ 続 くはず。 相 応 の 原 稿 の 束 が、まだあるはず……。それは、 別 の 茶 封 筒 に 入 って、……… 八 城 の 手 元 にあった。 八 城 は、にやにやと 笑 いながら、その 厚 みある 茶 封 筒 を 振 る。(EP6)■メッセージボトルの 不 思 議※メッセージボトルには 不 思 議 な 点 が2つあります。1つは 縁 寿 が 当 日 島 に 来 ないことを 予 見 していたこと、もう1つは、 嵐 によって 親 族 が 島 に 閉 じ 込 められ、 一 日 余 計 に過 ごすことを 予 見 していたことです。( 縁 寿 は)「いつも 季 節 の 変 わり 目 に 風 邪 を 引 くんです」( 霧 江 )(EP1)緊 張 して 体 調 を 崩 しやすかった 縁 寿 が、 何 度 も 六 軒 島 へ 行 けたとは 思 えない。(EP8)「 縁 寿 は 幼 い。そして、 体 調 を 崩 し、 六 軒 島 へ 来 ないことも 多 かった。…… 私 をよく 覚 えては、いないだろう」( 金 蔵 )(EP8)※ 幼 く、 体 調 を 崩 しやすかった 縁 寿 は、もし 誰 か 来 ない 人 間 がいるとしたら 断 トツの 最 有 力 候 補 です( 大 人 たちは 生 きている 限 り、 這 ってでも 来 るでしょう)。 縁 寿 が 来 ると在 島 者 の 数 は17 人 になります。チェスの 駒 は16。このゲームをチェスに 例 えるベアトにとって、この16という 数 字 は 守 りたいものであったため、 縁 寿 は 来 なかったことにしたのだと 考 えられます。 縁 寿 が 来 た 時 用 のバージョンも 用 意 していたのかもしれませんが、 運 命 のルーレットに 身 を 任 す 主 義 のベアトらしくないので、その 可 能 性 は低 いと 考 えられます。「ちょっと 天 気 が 怪 しいものねぇ」( 絵 羽 )(EP1)絵 羽 伯 母 さんが 待 合 ロビーのテレビを 見 ている。そこには 天 気 予 報 が 映 し 出 されていて、 関 東 地 方 に 台 風 が 近 付 きつつあることを 教 えてくれていた。「また 台 風 か。…… 親 族 会 議 が 毎 年 10 月 ってんじゃ、これは 宿 命 だぜ。もうちょい 時 期 を 選 んでくれりゃあいいのによ」( 留 弗 夫 )※“■ 親 族 会 議 ”でも 取 り 上 げましたが、 親 族 会 議 が 毎 年 10 月 ということ 自 体 、 既 に 創 作 の 可 能 性 があります。また、 嵐 によって 孤 立 した 孤 島 は、クローズドサークルの定 番 ですので、ベアトにとって 外 せない 舞 台 です。ですから 台 風 で 親 族 が 島 に 足 止 めされたのも、 運 命 のルーレットの 結 果 なのでしょう。もしかすると 縁 寿 が 来 たり、 台 風が 来 なかったりしたら、 紗 音 は 事 件 を 起 こさなかったかもしれません。 縁 寿 が 来 ず、 台 風 が 来 る、それは 決 して 高 い 確 率 ではありません。だからこそ、 紗 音 は「 自 分 が 書 いたメッセージボトルと 同 じ 内 容 になったら 事 件 を 起 こそう」と 決 心 したとも 考 えられるのです。■メッセージボトルは 誰 が 持 っているの?※EP1のメッセージボトルは 特 定 できています。「わかってるわ。…… 事 件 の 数 年 後 、 近 隣 の 島 に 流 れ 着 いたメッセージボトル。それは 好 事 家 の 手 に 渡 った。アポイントは、 一 応 取 ってあるの」( 縁 寿 )(EP4)「そうそう。 最 後 にもうひとつだけ 質 問 を。…… 先 生 は、メッセージボトルの 実 物 をご 覧 になったことは?」( 縁 寿 )(EP4)「ありますとも」( 大 月 )「では、その 筆 跡 についてもお 詳 しいですか?」( 縁 寿 )「もちろん。その 道 の 専 門 家 ではありませんが、メッセージボトルの 筆 跡 に 関 してだけは、 日 本 でもっとも 詳 しいと 自 負 していますとも」( 大 月 )そのページには、“ 親 愛 なる 魔 女 見 習 いへ”から 始 まる 手 書 きの 文 書 が 記 されていた。……そして 末 尾 には、カタカナでベアトリーチェとのサインが。 一 目 見 た 瞬 間 。 男 の92


顔 面 は 蒼 白 になる。「このページに 記 されている 文 章 の 筆 跡 は、メッセージボトルの 筆 跡 と 一 致 しますか…?」( 縁 寿 )「い。いやその、……も、 持 ち 帰 って 詳 しく 調 べないことには…」( 大 月 )※ 縁 寿 も 大 月 教 授 も 恍 けていますが、 大 月 教 授 で 間 違 いないでしょう。 問 題 はEP2のメッセージボトルです。 当 初 は 証 拠 品 として 警 察 が 押 収 していたと 思 われます。しかし、 以 下 の 描 写 があります。警 察 は 遺 留 品 捜 索 の 際 、 大 量 のガラクタを 収 集 。それらは 律 儀 にも 捜 査 終 了 後 、 右 代 宮 家 に 返 却 された。(EP4)※とありますので、 絵 羽 が 持 っていた 可 能 性 が 一 番 高 いです。あるいは 証 拠 品 として 今 も 警 察 に 保 管 されているでしょう。■メッセージボトルは 何 のために 書 かれたの?「ねぇ、 見 えてる? クレル? ………あなたもまた、この 真 実 を 隠 したかったのよね? あなたは 戯 れに、 憧 れる 推 理 小 説 のラストのように、メッセージボトルに 封 じるつもりで、 猫 箱 の 物 語 をいくつも 書 いていた。それをあなたは、 海 に 投 じたわ。この 真 実 を 知 ったら 苦 しむだろう 者 を 救 うためにね…!!」(ベルン)(EP7)「 前 から 聞 きたかったんだが、あのメッセージボトルは 何 なんだ?」( 戦 人 )(EP8)「そなたとのゲームを 練 りながら、その 過 程 で 生 み 出 した 派 生 の 物 語 のようなものよ。 一 つのゲーム 盤 から、 異 なる 複 数 の 物 語 を 無 限 に 紡 ぎ 出 せることに 気 付 き、 面 白 くなってしまってな…!」(ベアト)「いつか 俺 に 読 ませようと、 書 き 溜 めてたわけか」( 戦 人 )「うむ! あまりの 力 作 に、そなたを 待 つのが 惜 しくなってな…! アガサ・クリスティーに 倣 い、 妾 もそれを 瓶 に 封 じて 海 に 投 じてみたのだ。ミステリアスであろう?!」(ベアト)※まず、 紗 音 が 事 故 前 に 予 想 していた 現 実 世 界 での 結 末 は“ 誰 も 碑 文 の 謎 が 解 けず、 全 員 が 全 ての 証 拠 と 共 に 爆 死 ”というものでした。 全 てを 猫 箱 に 封 じ、あらゆる 可 能 性の 実 現 を 願 った 彼 女 には“ 真 実 の 追 求 者 ”と“ 真 実 の 語 り 手 ”を 生 み 出 す 必 要 がありました。そのための“きっかけ”としてメッセージボトルを 書 いたと 考 えられます。しかし、 実 際 には 碑 文 は 解 かれ、 絵 羽 が 生 還 しました。そのため、 彼 女 が 想 定 していた 未 来 は 訪 れなかったのです。■モーターボート「 蔵 臼 さまのボートは 今 、 修 理 中 で 島 にありません…。ですので、 月 曜 の 船 を 待 つ 他 ないかと……」( 源 次 )(EP1)私 ( 紗 音 )は、 教 えてもらったばかりのモーターボートで、この 小 島 にやって 来 た。(EP2)戦 人 とベアトの 姿 は、…… 六 軒 島 の 地 下 の 潜 水 艦 基 地 の 廃 墟 にあった。ベアトは 水 際 に 下 りると、 大 きなシートを 取 り 払 う。そこには 一 艘 のモーターボートがあった。(EP8)「そなたはモーターボートの 経 験 は?」(ベアト)(EP8)「あるわけないぜ」( 戦 人 )手 馴 れてはいなかったが、ベアトは 何 度 かの 試 行 錯 誤 の 末 、エンジンを 掛 ける。※ベアトは 蔵 臼 のボートを 修 理 に 出 したことにして、 潜 水 艦 基 地 の 廃 墟 に 隠 していたのではないでしょうか? もっとも、 金 はあるので 自 分 で 買 ったのかもしれませんが。ちなみに 鏡 割 りの 場 面 は、 事 件 の 数 年 前 と 考 えられますが、そんなに 練 習 する 機 会 もなかったでしょうから、1986 年 になっても 自 在 に 操 るというわけにはいかなかったのでしょう。■ヤス= 幾 子 説※ヤスが 戦 人 と 共 に 六 軒 島 を 脱 出 し、 八 城 幾 子 になったとする 説 です。 十 八 =18= 戦 人 の 年 齢 、 幾 子 =19=ヤスの 年 齢 、という 共 通 点 がありますし、それを 裏 付 けるような 以 下 の 記 述 も 存 在 します。しかしこれらの 作 品 群 ( 八 城 の 書 いた 偽 書 )は、その 規 模 、 完 成 度 において、 限 りなく、「 右 代 宮 真 里 亞 」 本 人 が 記 してきたそれまでの 物 語 に 近 いと 評 価 されていた。(EP6)この 八 城 十 八 という 人 物 を 好 きになるのは、あまりに 困 難 だ。……しかし、 彼 女 が 書 くこの 偽 書 は、……まだ 冒 頭 の 部 分 だけとはいえ、 確 かにメッセージボトルの 物 語 と、とてもよく 似 た 何 かを 感 じる。メッセージボトルを 記 した“ベアトリーチェ”と、 八 城 十 八 は 別 人 。……であるにもかかわらず、その 物 語 は、 同 じ 匂 いを 持 つ…。(EP6)※ 同 一 人 物 が 書 いているのですから 当 然 です。月 日 を 重 ねぬうちに、 私 (ヤス)は 学 校 の 図 書 館 の 推 理 小 説 を 全 て 読 み 尽 くし、 大 人 向 けの 推 理 小 説 にも 手 を 出 し 始 める。(EP7)「あれだけ 古 今 東 西 の 様 々な 推 理 小 説 に 精 通 していて、 素 人 ということはないと 思 います」( 十 八 )(EP8)※ヤスも 幾 子 も 推 理 小 説 に 精 通 しています。幾 子 と 名 乗 った 女 性 は、 私 ( 縁 寿 )よりずっと 年 上 のはずなのに、 信 じられないくらいに 若 々しいのが 印 象 的 だった。お 化 粧 が 上 手 とか、 若 作 りが 上 手 いとか、そういう 感 じじゃない。こう 言 っては 変 だけど…。 不 老 不 死 だから 老 けない、とでもいうような、……そんな 不 思 議 な 神 秘 性 を 感 じた。(EP8)※ 縁 寿 とヤスの 年 齢 差 は13 歳 です。ずっと 年 上 というほどではありません。などなど 多 くの 証 拠 があります。しかし、この 説 だと 以 下 の 出 会 いの 場 面 の 説 明 がつかないのです。傘 を 広 げ、 運 転 手 らしき 人 影 が、 私 ( 十 八 )に 近 付 いてくるのが 見 える…。(EP8)「………ここはそなたの 庭 か?」( 幾 子 )人 影 は 問 い 掛 ける。 無 論 、 私 には 返 事 をすることも 出 来 ない…。「……そなたの 庭 ならば、 私 は 謝 らなければならないな。なるほど、このような 良 き 天 気 の 日 には、 昼 寝 と 洒 落 込 みたくなるような 素 晴 らしき 庭 だ。……しかし、 私 の 記 憶が 確 かなら」( 幾 子 )人 影 がしゃがみ 込 み、 私 の 顔 を 覗 く。……… 女 だった。「ここは 天 下 の 公 道 だ。そなたは 挽 き 肉 になりたいのか? ……あるいはすでに 挽 き 肉 なのか。どちらなのか 教 えて 欲 しい」( 幾 子 )私 は、…… 下 腹 に 力 を 込 める。 何 かの 返 事 を 返 し、 意 思 を 疎 通 させなければならないと 思 った。だからようやく、……うぅ、という 短 い 唸 り 声 を 発 することが 出 来 た。「……なるほど。まだ 挽 き 肉 ではなかったようだな」( 幾 子 )それが 私 と、……… 幾 子 との 出 会 いだった。※ 無 理 やりに 解 釈 すると、この 時 は 本 物 の 八 城 幾 子 で、 以 下 の 場 面 ではヤスに 入 れ 替 わっている、と 考 えることも 出 来 ます。 現 に18 歳 であることを 否 定 するような 内 容 もあります。「…… 非 常 に 衰 弱 しております。あと、 記 憶 障 害 の 可 能 性 が 高 いですな。CTを 見 ないことにはわかりませんが、 脳 にダメージがある 可 能 性 もあります」( 医 者 )(EP8)「ダメージ 程 度 で 済 んで 大 いに 結 構 でした。あそこであのまま 寝 ていれば、それどころでは 済 まなかったでしょうから」( 幾 子 )「……ですな。 何 れにせよ、 大 きな 病 院 で 一 度 見 せた 方 がいいでしょう」( 医 者 )「ありがとう、 先 生 。………この 件 は 内 密 に。これはわずかですが、 往 診 のお 車 代 に」( 幾 子 )「わざわざ 他 言 はしませんが、……いやいやっ、こんなにたくさんいただくわけには…」( 医 者 )結 局 、 医 者 は 金 を 受 け 取 り、 他 言 はしないと 誓 わされた。やがて、 八 城 が 戻 ってくる。「おや、 起 きていたのですか。 具 合 は 如 何 です…?」( 幾 子 )私 は 小 さく 頷 き、とりあえず 悪 くはないことを 意 思 表 示 した。……しかし、ここはどこだろう。まったく 知 らない 家 、……まったく 知 らない 部 屋 だった。そしてそれ 以 前 に、まったく 知 らない 女 性 だった……。「まずは 私 の 自 己 紹 介 から。 私 は 八 城 幾 子 。 八 城 家 はこの 辺 りではちょっと 知 られた 大 地 主 の 名 家 。…… 出 来 のいい 兄 たちと 違 い、わたしはどこかズレた 変 わり 者 。 色 々と 悪 さが 過 ぎまして、とうとう 親 たちからも 愛 想 を 尽 かされて 追 い 出 され。 今 はここで 蟄 居 をさせられています。…… 趣 味 は 推 理 小 説 を 読93


むことと、そして 書 くこと。 歳 は 秘 密 の 独 身 女 。 心 は 女 子 でも、そろそろそれを 語 るにはおこがましいかなという 年 頃 です」( 幾 子 )(EP8)自 分 の 年 齢 はと 自 問 した 時 、 浮 かんできた 数 字 が、18だった。 正 直 なところ、 自 分 に18 歳 だという 自 覚 は 少 し 薄 い。…… 心 はそれよりずっと 幼 いように 感 じるし、……愚 鈍 な 体 は、それよりずっと 老 いて 感 じられた。 私 は 八 城 十 八 と 名 乗 ることになった。 体 がうまく 動 かないのは、 恐 らく 交 通 事 故 のせいだという。 私 はあの 日 、あそこで 車にはねられ、 倒 れているところを、 幾 子 に 拾 われたのだ。 八 城 幾 子 は、 海 の 見 える 町 の、 小 高 い 丘 の 上 に、 小 さいがとても 立 派 な 邸 宅 に 住 んでいた。ゆっくりと 時 間 を 掛 けて、リハビリを 進 め、 私 は 体 の 自 由 を 少 しずつ 取 り 戻 していった。(EP8)※ 幾 子 と 共 に 暮 らしていた 十 八 はある 日 、 以 下 の 事 件 を 起 こすのです。「………… 彼 はある 日 、 自 分 と、 受 け 容 れられぬもうひとりの 自 分 との 板 ばさみに、 発 作 的 に…………」( 幾 子 )(EP8)「……………………………………」( 十 八 )「 運 良 く、 一 命 を 取 り 留 めましたが、その 後 遺 症 で、 車 椅 子 で 生 活 せざるを 得 ない 体 に…」( 幾 子 )※そして、 再 び 記 憶 を 失 ったため、 使 用 人 として 側 に 仕 えていたヤスは 幾 子 と 入 れ 替 わって、 十 八 と 一 緒 に 暮 らすようになるのです。彼 女 ( 幾 子 )の 実 際 の 年 齢 はわからない。 婚 期 的 には、まだ 取 り 返 しのつく 年 齢 らしいが、こんなところで 一 人 で 隠 居 していては、 出 会 いもあるわけがない。(EP8)※その 時 にはヤスは 二 十 代 後 半 くらいになっていたわけです。実 際 に 島 から 出 ていって「 添 い 遂 げられました」という 事 実 が 確 定 するとベアトリーチェの 中 では 残 り 二 組 の 恋 愛 を 否 定 することにつながってしまう。 残 り 二 組 も 幸 せでいるためにはベアトという 猫 箱 は 伏 せたまま、 閉 められたままでなければならないんですよ。でもそのまま 戦 人 に 島 から 連 れ 出 されたら 猫 箱 が 開 いてしまう……うーん、ここはお 茶 を 濁 したいな。(インタ)※ヤスはベアトの 人 格 を 殺 し、 別 の 人 格 として 生 きることで、 猫 箱 を 閉 じたのです。 一 応 筋 は 通 ります。しかし、 僕 はこれはありえないと 考 えます。 何 故 なら、ヤス= 幾 子説 が 真 実 だったのなら、もっとそれっぽく 書 けるためです。 僕 がこの 設 定 で 書 くなら 以 下 のようにします。まず、ヤスは 事 前 に 八 城 家 と 交 渉 し、 八 城 幾 子 という 人 物 をでっちあげてもらいます。もしくは 八 城 幾 子 と 交 渉 し、その 存 在 を 売 ってもらいます。 幾 子 だって 蟄 居 生 活 はイヤだったでしょうから、 渡 りに 船 だったはずです。そして 六 軒 島から 脱 出 してきて、 八 城 幾 子 として、 戦 人 と 共 に 暮 らし 始 めます。ところが、 戦 人 は 事 件 の 真 相 を 抱 え 続 ける 辛 さに 耐 え 切 れず、 自 殺 を 図 ります。 自 殺 に 失 敗 した 戦 人 が 目を 覚 ました 時 に、 側 にいるのは 使 用 人 です。ヤスは 何 らかの 事 情 でたまたま 席 をはずしていたのです。 目 を 覚 ました 戦 人 と 話 をした 使 用 人 は、 戦 人 が 記 憶 を 失 っていることに 気 がつきます。ヤスはその 話 を 聞 き、 一 芝 居 打 つことにします。 自 分 と 戦 人 は 初 対 面 で、 事 故 に 遭 った 戦 人 をたまたま 自 分 が 助 けたのだと。あとはEP8の 展 開 通 りです。つまり、この 作 品 ではヤス= 幾 子 説 が 成 り 立 つような 展 開 を 意 図 的 に 避 けているのです。これこそが 竜 騎 士 07さんからの 答 えなのではないでしょうか。■ヤスは 男 ?推 理 すれば、 譲 治 が 描 く 結 婚 後 の 未 来 像 が 彼 女 を 苦 しめていた、という 考 えには 十 分 至 れるかと 思 います。( 中 略 )「 将 来 は 多 くの 孫 に 囲 まれて 過 ごしたい」と、 譲 治 はやたらと 子 どもがいる 未 来 にこだわるんですよね。 子 沢 山 が 彼 の 憧 れなんですかね。それが 彼 女 にとって 非 常 にプレッシャーとなったことは、 推 測 可 能 だと 思 います。( 最 考 散 )(KEIYA)ヤスはEP7で「 恋 をすることも 出 来 ない 体 」と 言 っていましたね。その 発 言 を 踏 まえれば、 恐 らくは 性 的 に 何 か 不 全 な 要 素 があるのだろう。ということが 推 測 できると 思 います。戦 人 が 本 当 に 紗 音 のおっぱいを 揉 んでいたら、 胸 が 偽 物 だということに 気 づいたかもしれない。 紗 音 は 常 に「バレるならバレろ」という 気 持 ちだったんでしょうね。( 最 考散 )※ 以 上 の 内 容 で、 紗 音 は 妊 娠 できないこと、そして 胸 がないことがわかります。私 ( 夏 妃 )はお 父 様 から 赤 子 を 預 けられ、 三 日 も 経 ない 内 に、…… 殺 してしまったのです…!(EP5)※ 夏 妃 は 数 日 間 、 赤 子 と 過 ごしています。その 夏 妃 が“19 年 前 の 男 ”に 違 和 感 を 覚 えなかったことから、 赤 子 は 男 であったことがわかります。「でも、その 赤 ん 坊 は 生 きていたのね?」(フルフル)(EP7)「 左 様 です。…… 無 論 、 大 怪 我 でしたとも。あれだけの 怪 我 をして、 生 き 永 らえたのは 奇 跡 でした」( 南 條 )※ 如 何 に 大 怪 我 をしたとはいえ、それは 赤 ん 坊 時 代 のことです。 将 来 、 胸 が 発 達 しないほどのダメージと、 体 内 に 二 つある 卵 巣 が 二 つとも 機 能 不 全 になるようなダメージ、そんなダメージを 負 った 赤 ん 坊 が 生 き 永 らえるものでしょうか? ここは 男 が 体 外 に 露 出 している 生 殖 器 を 失 い、 女 として 生 きざるを 得 なかったと 考 えた 方 が 自 然 です。また、 理 御 は 当 然 、ヤスと 性 別 が 同 じはずですが、 以 下 のように 理 御 はどう 考 えても 男 です。「 朱 志 香 。もう 少 し 妹 らしい 言 葉 遣 いは 出 来 ないのかい? ついでに 言 うと、もう 少 し 年 頃 の 女 性 らしい 言 葉 遣 いにも 気 を 付 けてみるべきだね」( 理 御 )(EP7)※ 理 御 は 自 分 は 男 としての 言 葉 遣 いをしていて、 朱 志 香 に 女 らしい 言 葉 遣 いを 求 めています。これが 女 であるとは 考 えられません。あの 頑 固 なお 父 様 が、 女 でも 当 主 を 継 げるようにして、しかも 兄 を 飛 ばして 私 ( 絵 羽 )を 当 主 に 選 んでくれるなんて、……いくらなんでも 考 えられない。(EP3)「……… 理 御 はどこか…! 肩 を 貸 せ」( 金 蔵 )(EP7)「 当 主 様 …! ただいま」( 理 御 )※ 男 尊 女 卑 の 金 蔵 が 女 に 肩 を 借 りるでしょうか? そもそも 女 を 当 主 にしようとするでしょうか?お 勤 めのない 日 は 新 島 の 寮 に 帰 り、 自 分 に 与 えられた 部 屋 で 自 由 に 過 ごすことが 出 来 る。 一 応 、 大 人 の 寮 母 がいて 食 事 や 消 灯 の 時 間 を 厳 しく 管 理 していたが、 福 音 の 家 でそういう 生 活 に 離 れているので、 苦 にはならなかった。 部 屋 は、 少 し 大 きめのものでそれぞれが3 人 部 屋 になっていた。しかし、 人 数 の 関 係 か 幸 運 なのか、 我 は3 人 部 屋 にはならなかった。(EP7)「ねぇ、ガラシさん~。 何 でヤスだけは3 人 部 屋 じゃないわけですかー」(レヴィアタン 使 用 人 )(EP7)「 知 らないわよ、 部 屋 の 割 り 振 りは 源 次 様 が 決 めてんだもの。 私 だって 納 得 いかないわよ」(ルシファー 使 用 人 )※ 源 次 はヤスが 金 蔵 の 子 どもだから 特 別 扱 いしたわけではなく、 男 だから 他 の 使 用 人 とは 同 じ 部 屋 に 出 来 なかったと 考 えられます。「…… 同 じ 過 ちが、…… 繰 り 返 されるのではないか。…… 私 はそう、 思 いました」( 源 次 )(EP7)※つまり 源 次 はヤスが 金 蔵 にカマを 掘 られるのではないかと 心 配 したわけです。あるいは 整 形 手 術 で 女 としての 形 は 整 えられていたのかもしれません。「いくら 金 蔵 でもそんなことは…」と 考 える 人 もいるかもしれませんが、 金 蔵 のことをよく 知 る 人 たちなら 以 下 のように 答 えてくれるでしょう。「いや、 金 蔵 さんならありえますな」( 南 條 )(EP5)「 親 父 ならやりかねねぇ」( 留 弗 夫 )「お 父 様 だものねぇ……」( 絵 羽 )「 武 勇 伝 の 多 いお 人 や。それくらいじゃ 驚 きもせんで」( 秀 吉 )■ラムダデルタ※『ひぐらしのなく 頃 に』からのスピンオフです。ベルンカステルと 比 べると 若 返 っているため、わかり 辛 いのですが、 髪 の 色 に 注 目 です。ラムダデルタはギリシャ 数 字 の34だそうです。■ 楼 座 に 愛 が 視 えない?※「 愛 がなければ 視 えない」このキャッチフレーズを 胸 に 数 々の 真 実 に 至 った 僕 なのですが、どうやっても 愛 が 視 えなかったのが 楼 座 です。 探 せば 探 すほどに 愛 のなさだけが 視 えます。これはどういうことなのでしょうか? 何 か 意 味 があるはずなので 発 想 を 転 換 してみました。そもそも 何 故 、 楼 座 には 愛 がないのでしょう。それは 以 下 の 通 りです。「 楼 座 さまは、とても 聡 明 な 方 です。…… 連 帯 保 証 人 を 引 き 受 けることが、どういう 意 味 を 持 つか、よく 考 えもせず、 引 き 受 けたわけがありません」( 嘉 音 )(EP6)「…………… 籍 こそまだだったけれど、……これから 結 婚 する 相 手 で、パートナーだと 思 ってた。 私 の 名 前 がなければ 借 りられないお 金 なら、それに 協 力 するのが、 未 来 の94


妻 の 役 目 だと 思 ったのよ」( 楼 座 )「…… 未 来 は、 来 ましたか」( 嘉 音 )「…………………………」( 楼 座 )未 来 は、 来 なかった。だからいつまで 経 っても、…… 楼 座 は、ひとりぼっち。そしていつまでも、…… 真 里 亞 に 父 親 はいない。でも、 時 間 は 進 んでいる。 二 人 の 結 晶 のはずだった 真 里 亞 だけは 成 長 を 続 け、まるで、 楼 座 の 這 う 地 獄 を 量 る、 生 きた 砂 時 計 のようだった……。だから、 真 里 亞 の 成 長 が、…… 辛 い。※ 楼 座 にとって 真 里 亞 の 存 在 は、 自 分 が 裏 切 られた 証 なのです。ですから、 真 里 亞 の 存 在 そのものが 楼 座 の 心 の 傷 を 抉 るのです。しかし、そもそも 楼 座 の 夫 は 本 当 に 楼 座 を裏 切 ったのでしょうか?「そうよ。……… 彼 の 夢 を 応 援 したいなんて 甘 えたことを 言 ったあの 日 に、 私 は 多 分 、もう 死 んでいた。………やっぱり、あの 日 は 後 悔 すべき 日 だったのかしら? 俺 には夢 がある。 海 外 を 巡 りたい。このちっぽけな 日 本 を 飛 び 出 して、 必 ず 大 物 になって 帰 ってくる。…… 懐 かしいわね…」( 楼 座 )(EP6)「… 私 はその 負 けを 美 化 して、…… 男 の 海 外 への 挑 戦 を 笑 顔 で 見 送 り、 甲 斐 甲 斐 しく 娘 と 帰 りを 待 つ 良 き 女 の 幻 想 に 酔 ってるだけ。……… 電 話 一 本 寄 越 さず、 彼 が 教 えてくれた 住 所 への 郵 便 も、 転 居 先 不 明 で 戻 ってくるのにね…」( 楼 座 )(EP6)※わかっている 事 実 はこれだけです。 楼 座 を 裏 切 った 事 実 など、どこにも 存 在 しないのです。もしかしたら、 今 も 楼 座 の 為 に 大 物 を 目 指 して 頑 張 っているのかもしれません。あるいは 何 らかのトラブルに 巻 き 込 まれ、 楼 座 のことを 想 いながら 異 郷 の 地 で 果 てたのかもしれません。もしも 楼 座 が 愛 を 信 じることが 出 来 たなら、 真 里 亞 は 裏 切 りの 証 ではなく、 愛 の 結 晶 だったのです。つまり 愛 を 信 じられなかったがゆえに、 楼 座 は 自 ら 地 獄 に 落 ちたのです。 娘 の 真 里 亞 が 母 の 愛 を 信 じることで 幸 せになれたのとは 対 照 的 な姿 です。■ロジックエラーとはどんなもの?「 物 語 の 表 裏 が 合 わぬこと、 矛 盾 することでございます。……これが 生 じると、ロジックエラーと 呼 ばれる 致 命 的 な 反 則 手 となり、 即 座 にゲーム 盤 は 破 綻 、 崩 壊 いたします。魔 女 側 が 犯 せぬ、 最 大 最 悪 のミスです」( 源 次 )(EP6)「ロジックエラーとは…。……“ 不 可 能 になってしまった 手 品 ”という 意 味 ね」( 縁 寿 )(EP6)筋 が 通 ることを、ロジックという。そしてそれが 矛 盾 して 通 らなくなる 時 、これをロジックエラーと 呼 ぶ…。それが 意 味 するのは、…… 魔 女 のゲームの、 破 綻 。(EP6)「 人 間 に 説 明 可 能 なゲームがこの 世 界 。…… 即 ち、 全 ての 魔 法 は“トリックでも” 可 能 なようになっていなければならない。……トリックで 不 可 能 だったら、 人 間 側 は 打 つ手 なしのステイルメイト」( 縁 寿 )「いいや 違 う。それこそが、ロジックエラーと 呼 ぶ 致 命 的 かつ 最 悪 の 反 則 手 だ。……これを 魔 女 側 が 犯 した 場 合 、 即 座 にゲームは 破 壊 され、 致 命 的 敗 北 となる…」(フェザ)「……ロジックエラーになったら、ゲーム 盤 がぶっ 飛 ぶのよ。……あんたは、ベアトからこのゲーム 盤 を 受 け 継 いだわ。………あんたの 大 切 なベアトから 受 け 取 った、……唯 一 の 形 見 なんでしょ。だからあんたは、 断 じてロジックエラーを 受 け 入 れない」(ラムダ)(EP6)※ロジックエラーは 単 なる 敗 北 ではなく、ゲーム 盤 そのものの 消 失 を 引 き 起 こすようです。しかし、 以 下 のように 即 座 に 作 動 するものではないようです。ロジックエラーは、…… 魔 女 がそれを 認 めて 初 めて 成 立 する。 言 い 逃 れできる 新 たなロジックを 考 え 続 ける 限 り、…… 死 なない、 死 ねない。しかしそれは、…… 永 遠 に 終 わらない、 思 考 の 生 き 地 獄 に 閉 じ 込 められるのと 同 じことだ。■ 六 軒 島 の 電 話 事 情朱 志 香 は 自 分 の 部 屋 に 駆 け 戻 ってくると、 転 送 した 電 話 を 取 る。(EP5)電 話 が 鳴 った。 夏 妃 はテレビを 消 し、 受 話 器 を 取 る…。(EP5)「お 休 みのところ、 申 し 訳 ございません。 源 次 でございます。 奥 様 に 外 線 からお 電 話 でございます。……ですが、 名 前 をお 名 乗 りになられません」( 源 次 )「 名 乗 らない…?」( 夏 妃 )「はい。 先 方 は 話 せばわかるとは 申 しておりますが…。 如 何 しますか。 悪 戯 かもしれません」( 源 次 )「どんな 相 手 です?」( 夏 妃 )「 恐 らく、 若 い 男 性 ではないかと。お 心 当 たりはございませんか…?」( 源 次 )「 若 い、…… 男 性 ?」( 夏 妃 )夏 妃 には、まったく 心 当 たりがなかった。そもそも 彼 女 の 知 人 に、 名 乗 らないような 失 礼 な 人 間 はひとりもいない。その 上 、 若 い、… 男 性 ……? 腹 立 たしい 電 話 なら、 名乗 らない 電 話 は 二 度 と 取 り 次 がないよう、 源 次 に 厳 命 すればいいだけの 話 だ。 夏 妃 はそう 考 え、やはり 切 りますかと 言 う 源 次 に、 繋 ぐように 伝 え、 一 度 、 受 話 器 を 置 く。しばらくすると、 再 び 電 話 が 鳴 り 響 いた……。「…………もしもし」( 夏 妃 )これは 内 線 ではない。 源 次 が 転 送 した 外 線 電 話 だ。だからもう、 直 接 、 謎 の 男 と 電 話 は 繋 がっているはず。※ 外 線 は 一 旦 、 使 用 人 室 に 繋 がり、そこから 転 送 されるようです。ということは、EP5で 夏 妃 に2 日 目 以 降 に 掛 かってきた 電 話 は 内 線 だということになります。■ 六 軒 島 の 料 理 事 情「 郷 田 さんがいる 時 のメシは 楽 しみなんだよ。あの 人 、どこぞの 有 名 ホテルでシェフをやってたらしくて、かなり 料 理 の 腕 があるんだぜ!」( 朱 志 香 )(EP1)「はっはっは、 秀 吉 さん。うちの 郷 田 を 引 き 抜 かれるのですか? これは 困 った。 郷 田 の 待 遇 をもっとよくしないと 引 き 抜 かれてしまいそうだ」( 蔵 臼 )(EP1)「くすくす、そうした 方 がいいわねぇ。じゃないと 引 き 抜 かれて、 三 食 が 熊 沢 さんの 鯖 料 理 にされちゃうわよぅ?」( 絵 羽 )厨 房 では、 熊 沢 が 張 り 切 って 料 理 をしていた。 色 々なお 皿 が 並 び、 郷 田 の 芸 術 料 理 からはだいぶ 見 劣 るにしても、 充 分 に 華 やかなものだった。 落 ち 込 んだ 心 を、 少 しでも 食事 で 盛 り 上 げたいという 熊 沢 の 気 遣 いだった。 熊 沢 は、 郷 田 のような 職 業 的 料 理 人 にはだいぶ 劣 るが、 決 して 下 手 なわけではない。…むしろ 漁 村 育 ちの 彼 女 の 手 による 素 朴な 料 理 は、 時 にとても 高 い 評 価 を 受 けるのだった。(EP1)熊 沢 が 調 理 を 終 えた 料 理 を、 嘉 音 が 教 えられながら 皿 に 盛 り 付 けていた。 嘉 音 も 時 には 厨 房 を 手 伝 うが、それが 役 割 として 与 えられることは 少 なかったため、 懸 命 ではあったが 少 々だけ 稚 拙 だった…。 盛 り 付 けがうまくできていないことを 自 覚 し、 嘉 音 は 少 しだけ 表 情 を 曇 らせる。でも 熊 沢 はそれでいいと 微 笑 んでいた。(EP1)「ほっほっほ、 綺 麗 に 盛 り 付 けられてますよ。 嘉 音 くんもお 上 手 ですよ?」( 熊 沢 )「…………… 紗 音 姉 さんだったら、…もっと 綺 麗 に…」( 嘉 音 )盛 り 付 けの 手 を 少 しだけ 止 め、 嘉 音 が 俯 く…。 熊 沢 の 料 理 の 補 助 はいつも 紗 音 だった。… 嘉 音 は 今 夜 、それを 代 わっている。……そして、 紗 音 の 面 影 と、 無 惨 な 最 期 を 思 い出 し、 顔 を 歪 める…。「ほっほっほ。 最 近 は 全 然 ですけど、 昔 の 源 次 さんは、それはもう、 色 々なお 料 理 を 作 ってくれたんですよ。 特 にお 菓 子 作 りはお 上 手 で…!」( 熊 沢 )(EP6)※ 料 理 をするのは、 郷 田 と 熊 沢 だけのようです。 使 用 人 歴 10 年 の 紗 音 がしないということは、 福 音 の 家 出 身 の 他 の 使 用 人 もしないのでしょう。95


■コラムコーナー2■ 第 ∞ 回 偽 書 作 家 コンテスト~あなたも 今 日 から 偽 書 作 家 ~主 催 … 右 代 宮 グループ後 援 … 元 老 院 天 界 大 法 院《 募 集 内 容 》あの 伊 藤 幾 九 郎 〇 五 七 六 を 輩 出 した 推 理 小 説 界 の 名 門 ・ 偽 書 作 家 コンテストの 募 集 をいたします。オリジナルの 短 編 ミステリーで、 未 発 表 の 日 本 語 で 書 かれた 作 品 に 限 ります。《 賞 品 》大 賞 (1 名 ) 煉 獄 の 七 杭 (7 本 セット)入 賞 (4 名 ) ウィンチェスターM1894 ソードオフ( 弾 丸 は.45ロング・コルト 弾 、410ゲージショットシェルどちらか 一 方 をお 好 みに 合 わせてお 選 びいただけます)※ 銃 刀 法 に 抵 触 するおそれがありますが、 警 察 への 対 応 は 自 己 責 任 となります。《 選 考 委 員 》ウィラード・H・ライト( 元 SSVD 主 席 異 端 審 問 官 ) 右 代 宮 縁 寿 ( 右 代 宮 家 当 主 ) ドラノール・A・ノックス(アイゼルネ・ユングフラウ 主 席 異 端 審 問 官 ) フェザリーヌ・アウグストゥス・アウローラ( 尊 厳 なる 観 劇 と 戯 曲 と 傍 観 の 魔 女 ) ベアトリーチェ( 黄 金 の 魔 女 ) ベルンカステル( 奇 跡 の 魔 女 ) ラムダデルタ( 絶 対 の 魔 女 )《 応 募 資 格 》年 齢 ・ 性 別 ・ 職 業 ・ 国 籍 ・ 種 族 は 問 いません。《 応 募 規 定 》既 存 のノート( 種 類 不 問 )に 数 枚 程 度 。 手 書 き 原 稿 のみ(ワープロ 原 稿 不 可 )。ベアトのゲーム 盤 のルールを 遵 守 し、 文 体 は“ 右 代 宮 真 里 亞 ”の 一 人 称 で 統 一 してください。《 原 稿 の 締 切 》無 期 限《 応 募 方 法 》1986 年 10 月 5 日 以 前 に 出 荷 された 適 当 なワインボトルに 詰 め、 水 濡 れのないよう 厳 重 に 封 をしたうえで、 新 島 港 から 海 に 流 してください(ラベルを 剥 がす 等 、 製 造 年 月日 が 特 定 できないようにしてあれば、1986 年 10 月 6 日 以 降 に 出 荷 されたものでもかまいません)。 不 法 投 棄 の 現 行 犯 となるおそれがありますが、 警 察 への 対 応 は 自 己 責任 となります。《 注 意 事 項 》海 に 浮 かばない 場 合 は 選 考 の 対 象 となりません。 応 募 原 稿 は 返 却 しようがありませんので 控 えのコピーをお 取 りのうえご 応 募 下 さい。 二 重 投 稿 はご 遠 慮 下 さい( 失 格 条 件 となりうる)。なお、 応 募 原 稿 に 関 する 問 い 合 わせには 応 じようがありません。■ 憐 極 の 七 姉 妹膨 満 のルシファー( 太 りすぎです)Shitのリヴァイアタン( 糞 野 郎 です)糞 塗 のサタン( 糞 野 郎 です)帯 駄 のベルフェゴール( 駄 目 駄 目 オーラを 帯 びています)乞 浴 のマモン(お 風 呂 に 入 れて!)亡 職 のベルゼブブ( 仕 事 頂 戴 !)死 期 翌 のアスモデウス(まもなく 死 にます)■『うみねこ』の 謎 解 きは“ 国 語 の 読 解 ”僕 の 考 察 を 読 んで「 引 用 ばっかで 自 分 の 文 章 が 全 然 ないじゃねーか!」と 思 われる 方 がいらっしゃると 思 います。しかし、 僕 にとってこれは 必 然 なのです。 何 故 なら、 作者 である 竜 騎 士 07さんが「 答 えは 全 て 本 文 の 中 にある」と 言 っている 為 です。むしろ「 本 文 中 に 根 拠 を 示 せない 考 察 は 信 用 できない」というのが 僕 のスタンスです。これは 我 々が 学 校 でさんざんに 学 んだ( 人 によっては 現 在 学 んでいる)“ 国 語 の 読 解 ”なのだと 思 います。 国 語 のテストで「 作 者 の 考 えを 本 文 中 から 見 つけ、30 文 字 以 内 で 抜 き出 しなさい」という 問 題 がありますが、まさにそれなのだと 思 います。ただ、その 本 文 が 小 説 に 換 算 して5000ページにもなろうかというとんでもない 分 量 であるだけで…。ミステリーに 全 く 縁 の 無 かった 僕 が、 今 のレベルまで 至 れたのはこの 点 が 大 きいのだと 思 います。 僕 は 子 どもの 頃 からよく 本 を 読 んだためか、 国 語 の 成 績 は 結 構 良 かったのです。また、それが 理 由 で“ 伝 えることの 難 しさ”も 感 じています。高 校 時 代 に 定 期 テストで『 山 月 記 』が 出 題 された 時 、1 人 の 友 人 が「この 問 題 が 解 らなかった」と 言 って 持 ってきた 問 題 がありました。それは 主 人 公 が「 俺 の 毛 皮 が 濡 れたのは 夜 露 の 為 だけではない」と 言 ったのはどういう 意 味 か 問 う 問 題 でした。 僕 にとってこの 問 題 は、 問 われることさえ 馬 鹿 らしい 問 題 で、 問 題 になってない 問 題 でした。しかし、その 友 人 は「 解 らなかった」と 言 い、そもそも“ 問 題 として 成 立 する”ということは、 理 解 できない 人 間 がいるということなのです。 上 から 目 線 で 非 常 に 申 し 訳 ないことなのですが、 僕 にとって“ 理 解 できないことが 理 解 できない”レベルの 読 解 力 しか 持 たない 人 がいます。 僕 にとっては「この 説 明 で 理 解 できるだろう」と 思 ったことでも 理 解 できない 人 がいますし、さらに 言 えば“どう 説 明 しても 理 解 できない” 人 もいます。 残 念 なことですが、そのような 人 を 納 得 させるだけの 力 は 僕 にはありません。竜 騎 士 07さんもこの 問 題 には 苦 しんでいるだろうなーと 思 います。96


■ 考 察 法 指 南僕 の 考 察 では 満 足 できなくて「 自 分 でもっと 考 察 したい」と 思 われる 方 もいらっしゃるでしょうから、 僕 がどのようにして 考 察 したのか、その 方 法 を 公 開 しておきます。まずゲームをプレイしながら“ 理 解 できなかった 内 容 ”“ 疑 問 を 持 った 内 容 ”“ 重 要 だと 思 った 内 容 ”これらを 抜 き 出 しました。そして 抜 き 出 した 内 容 をテーマごとにまとめ“ 考 察 の 柱 ”を 建 てました。 例 えば“■ 赤 字 とはどのようなもの?”などです。そしてもう 一 度 ゲームをプレイし“ 考 察 の 柱 ”を 支 える 材 料 となる 内 容 を 抜 き 出 して“ 考 察の 柱 ”にくっつけました。それと 同 時 に“ 考 察 の 柱 ”を 否 定 する 材 料 がないかも 確 認 しました。それから 自 分 の 考 えを“ 考 察 の 柱 ”にくくりつけて 完 成 です。これらの 作 業の 過 程 で 新 たな“ 考 察 の 柱 ”になると 思 われる 内 容 に 気 がついたら、 再 びゲームに 戻 り“ 柱 ”を 支 える 材 料 が 揃 えば、 新 たな“ 考 察 の 柱 ”とする。これのくり 返 しです。一 つ 気 をつけていただきたいのは“ 自 分 に 都 合 の 良 い 材 料 だけを 集 めない”ということです。これをすると 明 らかに 成 立 しない“ 考 察 の 柱 ”が 濫 立 する 事 態 になりかねません。 場 合 によっては“ 柱 ”を 支 える 材 料 がいくつも 揃 っているのに、たった 一 つのそれを 否 定 する 材 料 の 為 に“ 柱 ”を 倒 さなければならない 場 合 もありますが、ここをきちんとしないと 考 察 でも 何 でもなくなってしまいます。しかし、ある 程 度 材 料 の 集 まった“ 柱 ”は 大 抵 の 場 合 、 否 定 する 材 料 をさらに 否 定 する 材 料 が 見 つかることが 多 いです。それによって 新 たな“ 考 察 の 柱 ”が 見 つかる 場 合 もありますので、 建 てることを 諦 めた“ 柱 ”も 安 易 に 撤 去 しないことをオススメします。とりあえず 寝 かせておくと、新 たな 材 料 が 見 つかることで、また 建 てることが 出 来 るかもしれません。“ 考 察 の 柱 ”が 出 尽 くしたら、 他 のプレイヤーに 尋 ねてみる。もう 一 度 ゲームを 通 してプレイする( 新たな 視 点 を 得 るためにテキストだけを 読 む、 声 に 出 して 読 む、EP8からプレイする、など 変 化 をつけると 良 いかも)などの 手 段 を 使 うと、より 理 解 が 深 まります。■ 他 人 と 考 察 をぶつけ 合 う 価 値僕 が 自 分 の 考 察 を 掲 示 板 に 書 き 込 むようになって、 初 めて 気 がついたことがあります。それは“ 解 ったつもりと 解 ったは 違 う”ということです。 自 分 ではとことん 考 えて“ 決 定 版 ”として 繰 り 出 した 考 察 が、いともあっさり 論 破 されてしまったり、 理 解 されなかったり、ということがあるのです。あるいは 凄 い 考 察 をする 人 が、とても 基 本 的なことを 見 落 としていたりもします。きっと1 人 では“ 客 観 化 ”に 限 界 があるのです。ですから 自 分 の 考 察 はどんどん 人 に 見 せて、 意 見 を 聞 くことが 大 切 だと 思 います。 不思 議 なことに 自 分 では「 吟 味 に 吟 味 を 重 ねてこれ 以 上 は 書 くことはない」と 思 った 内 容 でも「○○さんにはどう 説 明 したら 理 解 してもらえるだろう?」と、 特 定 の 個 人 を 対象 にしたとき、それまでは 思 いもつかなかった 内 容 が 書 けることがあります。さらに 自 分 1 人 ではどう 考 えても 解 らなかったのに、 掲 示 板 に「○○が 解 りません」と 書 き 込んだ 次 の 日 に、 自 己 解 決 することもあります。これは 本 当 に 不 思 議 なのですが、きっと 課 題 を 他 者 に 投 げかけることで、 自 分 から 切 り 離 し、 客 観 視 できるようになるのだと思 います。 時 には 考 察 を 全 面 否 定 され、 自 分 の 人 格 まで 否 定 された 気 分 になるかもしれませんが、その 悔 しさを 考 察 にぶつけることで、より 高 みに 上 ることができると 思 います。 他 者 との 関 わりがあってこそ、 今 の 僕 があるのです。“まとめWiki”の 掲 示 板 に 常 駐 していますので、 考 察 を 戦 わせたくなったり、 疑 問 に 思 うことがあったら 訪 ねてきてください。 僕 を 指 名 していただければ、いかなる 内 容 であれ、 応 対 させていただきます。■ 考 察 はまだ 終 わらない僕 はこの 作 品 を6 周 半 したわけですが、これで 終 わりだとは 思 っていません。 解 らないことがまだまだあるからです。 今 だって 考 察 を 読 み 返 すと「あ、この 説 明 ではまずい」と 修 正 することがちょくちょくあります。 僕 は 現 時 点 では、ここまでしか 至 っていませんが( 今 は 再 プレイする 気 力 が 湧 きませんが、 何 年 かしたらまた 挑 戦 します)、 僕の 考 察 を 読 めば、 僕 より 更 なる 高 みに 至 ることのできる 人 も 沢 山 いると 思 います。どうか、 僕 を 超 えてください。そしてまだ 見 ぬ 世 界 に 僕 を 連 れて 行 ってください。それだけが 僕 の 願 いです。■『うみねこ』への 理 解 を 深 めるための 参 考 作 品『 好 色 五 人 女 』 井 原 西 鶴『 嵐 が 丘 』ヱミリ・ブロンテ( 岩 波 文 庫 の 河 島 弘 美 訳 がオススメ)『カルメン』プロスペル・メリメ『 二 十 年 後 』『 賢 者 の 贈 り 物 』O・ヘンリ『 林 檎 の 樹 』ゴールズワージー『 名 探 偵 に 薔 薇 を』 城 平 京『 心 の 旅 路 』( 映 画 )『Wの 悲 劇 』 夏 樹 静 子『AURA~ 魔 竜 院 光 牙 最 後 の 闘 い~』 田 中 ロミオ『ハサミ 男 』 殊 能 将 之※ネタバレになる 作 品 がありますので“ 何 故 この 作 品 なのか?”については 解 説 しません。『うみねこ』を 理 解 できなかった、『うみねこ』をもっと 深 く 理 解 したい、そんな方 はこれらの 作 品 に 触 れてみると 良 いと 思 います。ちなみに 僕 はミステリーをほとんど 読 んでいないため、ミステリー 成 分 は 少 なめです。また、 作 中 で 取 り 上 げられた 作 品は 除 外 しています。97


■あとがき僕 が『うみねこ』と 本 当 の 意 味 で 出 会 ったのは、2 周 目 として、PS3 版 のEP1をプレイし 終 えた 時 でした。 犯 人 も“ベアトの 心 臓 ”も 理 解 しているため、それぞれの 事件 のトリックが 手 に 取 るように 理 解 できました。「こんなに 簡 単 な 答 えで 本 当 にいいの?」と『 最 終 考 察 』と『 真 相 解 明 読 本 』を 読 んでみてビックリしました。 誰 もきちんと正 解 を 出 せていないのです。そのEPで 正 解 を 出 せないのなら 理 解 できるのですが、EP7のウィルの 謎 解 きの 解 釈 の 時 点 で 正 解 を 出 せていないのです。 僕 はミステリーは 苦 手で『うみねこ』もミステリーではなく、ただの 物 語 として 受 け 止 めていました。ですから 謎 解 きには 全 く 興 味 がなく『 最 終 考 察 』や『 真 相 解 明 読 本 』も 謎 解 きの 部 分 は 適 当に 読 み 飛 ばしていたため、これには 気 がつかなかったのです。。このとんでもない 惨 状 に、 僕 は 失 望 すると 同 時 に 俄 然 やる 気 が 出 てきました。「 誰 も 正 解 を 出 していないのなら 僕 が 出 してやる!」そう 意 気 込 んで、PS3 版 のEP1~4をプレイし 終 わりました。それでも 結 局 、EP3 の 南 條 殺 しが 理 解 できなくてネットの 掲 示 板 に 助 けを 求 めました。そこでのやり 取 りで 気 がついたのは“この 作 品 を 理 解 できている 人 間 はあまりに 少 ない”ことと“ 理 解 できない 人 間 にはとことん 理 解 できない”ということでした。これも 衝 撃 的 な 事 実 でした。 僕 がPS3 版 のEP1をプレイしたのは2011 年 の10 月 です。 完 結 から10ヶ 月 も 経 っています。それなのにろくに 考 察 もしなかった 僕 でも 明 らかにおかしいと 理 解 できる“トンデモ 説 ”を 恥 ずかしげもなく 披 露 している 人 間 がいるのです。 僕 はそれまで“ 正 解 を 見 せられたら 誰 もが 納 得 する”ものだと 思 っていました。しかし、それは 間 違 いでした。“どう 説 明 しても、 理 解 できない 人間 には 理 解 できないし、 信 じない 人 間 は 信 じない”のです。おそらく 竜 騎 士 07さん 本 人 が 掲 示 板 に 現 れ、 匿 名 で 真 実 を 書 いたところで、 認 めない 人 間 は 認 めないでしょう。「 人 間 とは 難 しいものだな」とつくづく 思 い 知 りました。 他 人 には 何 の 希 望 も 見 出 せない 以 上 、 頼 りになるのは 自 分 だけ。 僕 は 謎 を 見 つけるたびに 周 回 を 繰 り 返 し、 現 在 6周 半 にまで 至 っています。その 甲 斐 あって「ここまで 至 っているのは 日 本 中 で 僕 くらいのものでは?」と 思 えるくらいまで 至 ることができました。そこまで 至 って 思 ったのが「 何 故 これほどの 作 品 が 正 当 に 評 価 されないのだろう?」ということです。 僕 と 同 じレベルまで 至 ったなら、この 作 品 の 評 価 をガラリと 変 える人 もいるはずなのです。しかし、 竜 騎 士 07さんは 猫 箱 を 守 り 続 けます。「これではいつまで 経 っても『うみねこ』が 正 当 に 評 価 されることはない。 理 解 できない 人 間 がいることは 仕 方 がないとしても、 理 解 できる 人 間 には 理 解 して 欲 しい」。そんな 思 いからこの 本 を 作 ることを 決 めました。 僕 の 思 いが1 人 でも 多 くの 人 に 届 くことを 願 っています。そして 誰 よりも 悔 しい 思 いをしているはずの 竜 騎 士 07さんに、ここまで 至 った 人 間 がいることを 知 ってもらいたいです。 竜 騎 士 07さん、 貴 方 は 胸 を 張 って 良 いです。こんなにも 素 晴 らしい 作 品 を 生 み 出 すことが 出 来 たのですから。 理 解 できないのは 理 解 できない 人 間 が 悪 いのです。 貴 方 は 素 晴 らしい 仕 事 をしました。これからも 素 晴 らしい作 品 で 僕 を 楽 しませてください。 貴 方 を 超 えられるのは 貴 方 だけです。最 後 になりますが、“まとめWiki”でずっと 僕 の 相 手 をしてくれたちびゆかさん、 本 当 にありがとうございます。 貴 方 がいなければ、 今 の 僕 はいなかったです。平 成 24 年 6 月ケーナ■ 更 新 履 歴2012 年 6 月 25 日 誤 字 の 修 正 及 び 加 筆98

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