三枝 康雄（さえぐさ やすお） バングラデシュ視察で感じたこと

質 問 の 力
「 最 後 に 何 か 質 問 はありませんか」これは、 以 前 企 業 に 勤 めていた 頃 、 採 用 面 接 時 の
私 の 言 葉 である。 人 により 反 応 は 異 なるのであるが、 気 のせいか「 特 にありません」とい
う 回 答 が 多 かったように 思 う。この 答 えはとても 気 になる。 質 問 がないということをどう
捉 えたら 良 いのだろう。 本 当 に 全 部 理 解 できたということなのか、こんな 会 社 のことはも
う 聞 く 必 要 もないということなのか、あるいは 次 の 予 定 があるので 早 く 切 り 上 げて 欲 しい
というメッセージなのか
問 いを 発 する 側 として 言 えば、 相 手 の 意 欲 や 会 社 に 対 する 理 解 度 、コミュニケーション
力 などを、 相 手 からの 質 問 を 通 じて 見 たいという 思 いがあるので、あっさり「 特 にありま
せん」と 言 われると 拍 子 抜 けしてしまう。
会 議 の 場 面 などでも 質 問 の 果 たす 役 割 は 大 きい。 最 初 に 発 せられる 質 問 によって 議 論 が
活 発 になったり、 専 門 知 識 のない 人 の 素 朴 な 質 問 が、 議 論 を 本 質 的 なものに 導 くことを 経
験 された 方 も 多 いのではないだろうか。 自 分 の 考 えを 声 高 に 主 張 しなくとも、 効 果 的 に 議
論 をリードする 方 法 があるということだ。
会 議 は 全 体 を 振 り 返 り 反 省 をすることが 重 要 であるが、 質 問 の 効 用 を 理 解 しつつある 最
近 は、 野 球 解 説 者 が「あのプレーで 試 合 の 流 れが 決 まりましたね」などと 解 説 するのと 同
様 、「 今 日 の 会 議 はあの 質 問 ・ 発 言 で 流 れが 決 まったな」などと 分 析 し、 評 論 家 気 取 りで 楽
しんでいることもある。
ところが、 立 場 をかえて 今 度 は 自 分 が「 良 い 質 問 をしよう」とすると、これはなかなか
上 手 くいかない。 言 葉 にした 途 端 、あるいはその 場 で 気 付 かなくとも 後 々 振 り 返 って、 我
ながら 愚 問 だなと 感 じるケースが 多 いのである。
数 年 前 に『 質 問 力 』という 本 が 出 版 された。『 声 に 出 して 読 みたい 日 本 語 』で 有 名 な 斉 藤
孝 氏 の 著 書 である。この 本 の 中 で 斉 藤 氏 は、 著 名 人 の 具 体 的 な 対 話 から「いい 質 問 」の 例
を 示 し、 質 問 の 持 つ 意 味 やコミュニケーションにおける 技 の 紹 介 を 行 っている。 紹 介 され
ているような 質 問 の 巧 拙 まで 理 屈 立 てて 考 えたことはないが、「いい 質 問 」を 考 える 必 要 性
やその 効 用 については 同 感 である。
場 の 設 定 や 状 況 によってコミュニケーションの 意 味 も 異 なるのであろうが、どのような
場 合 であれ、その 時 間 を 有 意 義 なものとしなければ 実 にもったいない。 質 問 の 効 用 を 強 く
意 識 して、コミュニケーションの 効 果 を 上 げていきたいものである。
さて、ここまで 書 いてきたが「 最 後 に 何 か 質 問 はありませんか」
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