卒業論文 - 桜美林大学

こからは、 具 体 的 にどういった 歴 史 的 背 景 のとき、どのような 主 体 が 何 の 目 的 をもって 作
られていったかについてみていきたい。
戦 前 はとくに 国 家 レベルの 主 体 が 中 心 となっていた。 国 家 レベルの 国 際 文 化 交 流 事 業 の
開 始 は 1900 年 の 義 和 団 事 件 が 関 連 し、その 賠 償 金 を 用 いて 開 始 された 1923 年 からの 対 支
文 化 事 業 がある。 日 本 の 外 務 省 は 中 国 政 府 から 得 た 賠 償 金 を 基 金 にして、 中 国 からの 留 学
生 の 受 け 入 れ 事 業 や、 中 国 の 学 術 研 究 などを 支 援 していった。その 他 1935 年 にアジアから
の 留 学 生 支 援 を 目 的 とする 国 際 学 友 会 が 設 立 された 例 もある。 以 上 のように、 戦 前 は 国 家
レベルでの 公 的 な 主 体 を 中 心 に、 海 外 に 日 本 の 文 化 を 伝 えていくような 事 業 のもと、アジ
ア 諸 国 との 関 係 を 深 めていくような 目 的 がとられていったという 傾 向 がある[ 榎 田 1996:
33]。
次 に 戦 後 から 1970 年 代 までをみていきたい。この 時 代 は 戦 争 によって 失 った 信 用 を 回 復
し、 国 際 社 会 で 他 国 と 協 働 していくという 目 的 があった。とくに 米 国 を 中 心 として 欧 米 の
交 流 が 主 流 だったといえる。
この 時 代 の 代 表 的 な 民 間 レベルの 主 体 として 1952 年 に、 国 際 文 化 会 館 が 設 立 された。 国
際 文 化 会 館 は 米 国 のジョン・D・ロックフェラー3 世 の 資 金 協 力 により、 松 本 重 治 などに
よって 設 立 された。 日 米 双 方 の 政 府 と 友 好 的 な 関 係 を 保 ちながら 主 体 性 をもって 活 動 する
という 目 的 をもち、 民 間 団 体 としての 活 動 の 在 り 方 を 日 本 において 初 めて 確 立 した。
そしてこの 時 代 の 主 体 に 関 してとくにいえることは、これらの 活 動 に 実 際 に 関 わること
ができたのがエリートに 限 られていたということである。 国 際 文 化 交 流 事 業 は 人 と 人 との
交 流 が 基 本 とされるが、この 時 代 においては 一 般 市 民 ではなく、エリート 2 が 直 接 的 な 主 体
として 主 に 交 流 活 動 に 関 わっていた。
1970 年 以 降 については、 国 際 文 化 交 流 活 動 全 体 に 大 きな 変 化 をもたらした 歴 史 的 背 景 が
いくつか 挙 げられる。1971 年 の 米 国 によるニクソンショックや 日 本 の 経 済 や 日 本 人 の 生 活
に 変 化 を 与 えた 1964 年 のオリンピック 開 催 、そして 海 外 渡 航 解 禁 、 高 度 経 済 成 長 という 背
景 があり、 大 きな 要 因 となって 国 際 文 化 交 流 の 担 い 手 に 変 化 をもたらしていった[ 榎 田
1996:33]。
カンボジア 紛 争 の 影 響 からは、それを 契 機 に 日 本 において NGO という 市 民 によって 形 成
された 国 際 協 力 を 行 う 団 体 が、 国 際 文 化 交 流 の 活 動 内 容 を 広 げていったという 点 が 挙 げら
れる。1980 年 以 降 、カンボジア 難 民 支 援 活 動 を 通 じて、 市 民 団 体 レベルの 主 体 である NGO
団 体 が 急 増 していった。カンボジア 紛 争 やベトナムからのボートピープルを 経 て、インド
シナ 難 民 問 題 が 日 本 にも 伝 わるようになったことが 原 因 である。 日 本 政 府 は 国 際 難 民 条 約
を 批 准 して、インドシナ 難 民 の 受 入 れを 開 始 した。この 問 題 により、 日 本 では 海 外 に 向 け
て 大 きく 視 野 を 広 げ 関 心 を 深 める 市 民 が 増 え、NGO の 設 立 は 急 増 していった。
1971 年 のニクソンショックによって、それまでの 日 米 関 係 は 壊 され、 米 国 への 信 頼 を 失
い 始 めた。とくに 日 本 の 経 済 大 国 化 によって 生 じた 日 米 の 経 済 摩 擦 が 主 な 要 因 となり、そ
2 ここで 言 うエリートというのは、「 国 際 的 な 事 柄 に 知 的 関 心 をもち、 国 際 社 会 とつながり
を 持 つことができ、 得 られた 知 識 や 情 報 を 社 会 に 的 確 に 伝 達 する 術 をもつ 影 響 力 のある
人 々[ 榎 田 1996:35]」のことを 指 す。
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