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ビザンティン聖堂の儀礼化研究序説 - 早稲田大学リポジトリ

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124<br />

リアや 聖 人 の 伝 記 サイクルが 挿 入 されて 饒 舌 なまでに 多 層 化 する。こうした 一 般 的 な 傾 向 と 筆 者<br />

の 目 撃 した 変 化 を 儀 礼 化 の 定 義 に 照 らせば、 後 期 ビザンティンでも 典 礼 や 図 像 に 対 する 理 解 が 改<br />

まり、 儀 礼 化 が 中 期 以 上 に 進 展 ・ 深 化 したと 考 えられる。<br />

後 期 ビザンティン 聖 堂 の 儀 礼 化 研 究 の 第 一 歩 となる 本 稿 の 目 的 は、 初 期 ビザンティン(4 ~ 8<br />

世 紀 )から 遡 って 聖 所 のプログラムの 変 遷 を 辿 り、 過 去 のプログラムと 比 較 することで、 後 期 ビ<br />

ザンティン 聖 堂 の 特 質 や 個 性 を 明 確 化 すること、 換 言 するならば、 以 後 の 研 究 全 ての 基 礎 となる<br />

序 説 を 書 くことである。 本 稿 では 論 述 の 対 象 を 聖 堂 東 側 に 位 置 する 聖 所 の 主 副 アプシスに 限 定 す<br />

る。それは 聖 所 が 聖 体 の 秘 蹟 に 関 連 する 儀 式 を 執 り 行 う 堂 内 で 最 も 多 機 能 な 場 所 であること、そ<br />

れゆえに 儀 礼 化 の 進 展 を 最 も 如 実 に 反 映 すると 想 定 されることに 起 因 する。 隣 接 する 図 像 と 呼 応<br />

して 新 たな 意 味 を 創 出 するため、 主 副 アプシス 周 辺 の 図 像 も 重 要 であることは 言 うまでもないが、<br />

記 述 が 煩 雑 になるのを 避 けるために 敢 えて 省 いた。<br />

なお、 稿 を 起 こすにあたり、 時 代 と 地 域 を 問 わず、362 作 例 を 集 めてリスト 化 した。 主 副 アプシ<br />

スに 限 定 したとはいえ、データは 膨 大 な 件 数 に 上 り、 本 稿 に 付 すことはできなかった。 収 集 資 料<br />

のデータは「Iconographic Program of the Sanctuary of Byzantine Churches」 6 という 別 稿 を 準 備<br />

しているので、そちらもあわせて 参 照 されたい。<br />

初 期 ビザンティン(4 ~ 8 世 紀 )<br />

収 集 資 料 において、 初 期 ビザンティンの 図 像 プログラムを 有 する 聖 堂 は 43 例 を 数 える。 建 築<br />

様 式 は 単 廊 式 が 28 例 と 最 も 多 く、 三 廊 式 バシリカ 8 例 、 集 中 式 2 例 、ドームド・バシリカ 2 例 、<br />

三 葉 形 が 1 例 、 十 字 形 1 例 、 内 接 十 字 式 1 例 となる。 初 期 ビザンティンの 作 例 は 首 都 コンスタン<br />

ティノポリスにはなく、ローマやエジプト、カッパドキアといった 周 縁 部 に 多 く 残 存 する。<br />

アプシスの 図 像 プログラムは、コンクとコンク 下 部 とを 上 下 二 段 に 分 割 して 装 飾 された 聖 堂 が<br />

29 例 、コンクのみを 装 飾 する、あるいはアプシス 全 体 を 一 つの 主 題 が 占 める 聖 堂 が 15 例 となる。<br />

イタリアでは、 大 規 模 なバシリカ 式 の 聖 堂 でもモザイクでコンクのみを 飾 り、コンク 下 部 を 大 理<br />

石 板 で 覆 う 傾 向 がある。これに 対 して、カッパドキアやエジプトの 聖 堂 は 概 して 規 模 が 小 さいた<br />

め、2 層 のプログラムが 採 られなかったと 考 えられる。<br />

初 期 ビザンティンにおいて、アプシスには「 主 の 顕 現 ( テオファニア )」を 表 す 主 題 が 置 かれる。<br />

ナクソス、パナギア・ドロシアニ 聖 堂 (7 世 紀 、 図 1) 7 はアプシスを 上 下 二 段 に 分 節 して「 昇 天 」<br />

を 表 す。 保 存 状 態 は 芳 しくないものの、コンク 上 段 には、 光 背 を 帯 びて 玉 座 に 坐 すキリストが 二<br />

人 の 天 使 に 天 へと 運 ばれる 様 子 が 確 認 できる。 下 方 には 十 二 使 徒 が 配 され、 天 に 昇 るキリストを<br />

6<br />

ヨーロッパ 中 世 ・ルネサンス 研 究 所 編 『エクフラシス 別 冊 第 1 号 : 資 料 集 第 1 巻 ― 宗 教 運 動 の 作 用 ・ 反 作 用 』<br />

(2013 年 ) 所 収 予 定 。<br />

7<br />

N. Drandakis, “Panagia Drosiani,” in ed. by M. Chatzidakis, Naxos, Athens, 1999, pp. 18-26.

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