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Kwansei Gakuin University Repository - 関西学院大学リポジトリ

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1.研究開発の概要<br />

「情報」という教科を,単なるパソコンの使い方やプログラミングの習得を行うに留まるのではなく,<br />

生徒の思考力,創造力,企画力の育成のための手段として位置づけて行きたいと考えている.そのため<br />

には,実社会における問題をシミュレーションしたような課題を取り入れることが好ましいが,当然,<br />

どのようなものでもよいわけではなく情報の授業の流れに沿ったものでなければならない.<br />

グリッドとは,コンピュータの世界の中だけではなく,対象が企業や一般の組織にも通じ,互いに信<br />

頼関係を結び,適材適所に仕事を配分(リソース資源の有効活用)することを意味する.グリッドの概<br />

念を学ぶことは,あらゆる場面で遭遇する問題の解決手段の一つを習得することにつながり,また同時<br />

に将来のコンピュータ環境で重要な位置を占めるであろうグリッド・コンピューティングの活用のため<br />

の基礎になるものである.このような考えから,本プロジェクトではグリッド教材を用いた情報教育の<br />

ためのカリキュラムおよびテキスト・教材の作成を目指している.<br />

本プロジェクトでは,1 年目に,メディア教室内のグリッド環境の構築,カリキュラムの作成と合わ<br />

せてグリッド教材についての検討・開発を行った.2 年目にはグリッド教材の引き続きの開発と合わせ<br />

て,テキストを製作,2 学期に 3 年選択クラスにて実践授業を行った.この実践授業では概ね期待した<br />

効果を得ることができたが,いくつかの課題もあらわになった.3 年目には,実践授業でわかった課題<br />

に合わせてカリキュラム,テキストを改変すると共に,1 年生での授業に向けてグリッド教材をより使<br />

いやすいものに変更,グラフィカルな応用アプリケーションを追加で製作した後,事前に模擬授業を行<br />

うなど準備を万全にした上で,1 年生全員(313 名)の実践授業に臨んだ.<br />

授業では,導入として Excel を使用した簡単なマクロ・プログラミングの学習を行った.これは今回<br />

のプロジェクトの狙いである『情報技術をそれ自身の習得を目的とするのではなく,問題解決能力の育<br />

成のための手段として位置づける』ということにもつながっている.最初にプログラミング言語の文法<br />

の学習から入るのではなく,課題を解くために Excel の機能を利用するといった形で,実習中心に進め<br />

たことは,受身の姿勢に陥らず,期待通り生徒の学習意欲向上にも役立ったようである.Excel の学習<br />

の次は,Windows から Linux へと環境を変えて,Linux の使い方,C 言語の学習,グリッド教材を使<br />

った学習へと進めた.この進め方に関しては,『「グリッドコンピューティングの習得」を目標に,一つ<br />

の系統立てられた流れ(カリキュラム)を作ること』を目指したものであり,最初の授業で年間の授業の<br />

流れを説明することにより,生徒の学習意欲を損なわないスムーズな授業展開とすることができた.<br />

グリッド教材では,「ジョブ振分最適化に関わる問題」を題材としている.いきなりプログラミング<br />

の世界に入るのではなく,最初は「レジ問題」を取り上げて問題に対する考察・Excel を使ったシミュ<br />

レーションをさせるなど,問題を日常生活に即して考えさせると同時に,課題に対する理解を深めさせ,<br />

『問題解決能力の育成』に配慮したものとした.この教材では 9 割以上の生徒が最終的に C 言語による<br />

スケジューリングのプログラムを作成するところまで達することができた.プログラミング演習の後に<br />

は,グリッドコンピューティング本来の有効性を示すための応用アプリケーションを体験させると共に,<br />

グリッドと社会組織の関連性についての説明を行い,グリッドの概念は現実の社会に発展的にあてはめ<br />

られる問題解決手法であることへと生徒の理解を導いた.<br />

実践授業の終わりに生徒の理解度をはかるために提出させたレポートからは,この授業を通して各自<br />

学習した内容,捉え方はさまざまであるが,共通して言えることは,考える力・合理的な思考力(問題<br />

形成と問題解決能力),洞察力,合理的な判断能力,社会に対する問題意識と社会に対する適応性,そ<br />

して,互いのコミュニケーション能力の向上が見て取れることであった.これは,本プロジェクトで想<br />

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