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Kwansei Gakuin University Repository - 関西学院大学リポジトリ

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研究指定校番号 7<br />

平成18年度IT人材育成プロジェクト<br />

研究開発実施報告書(第3年次)<br />

平成 19年 4月 6日<br />

関西学院高等部


目次<br />

1.研究開発の概要............................................................................................................................................................... 3<br />

2.研究開発の経緯............................................................................................................................................................... 5<br />

2-1.3 ヵ年の実施内容 ...................................................................................................................5<br />

2-2.2006 年度の実施内容..............................................................................................................5<br />

3.研究開発の内容等........................................................................................................................................................... 8<br />

3-1.研究開発実施対象学科と対象人数の規模 ...............................................................................8<br />

3-2.研究開発の体制 ......................................................................................................................8<br />

3-3.研究開発の目的・ねらい ......................................................................................................11<br />

3-4.開発カリキュラム,教材の位置付け ....................................................................................12<br />

3-5.2006 年度の研究開発実施内容 .............................................................................................15<br />

3-6.留意事項 ...............................................................................................................................20<br />

4.2006 年度の実践授業...................................................................................................................................................21<br />

4-1.2006 年度年間カリキュラム.................................................................................................21<br />

4-2.授業内容から見た実践報告と考察........................................................................................23<br />

4-3.教育内容からみた実践報告と考察........................................................................................30<br />

4-4.教育方法 ...............................................................................................................................34<br />

5.研究開発の評価.............................................................................................................................................................36<br />

5-1.プロジェクト全体の評価 ......................................................................................................36<br />

5-2.開発カリキュラム,教材の評価 ...........................................................................................37<br />

6.研究開発実施上の問題点及び今後の課題など.......................................................................................................38<br />

6-1.問題点...................................................................................................................................38<br />

6-2.今後の課題............................................................................................................................38<br />

6-3.ICTスクール 2006 へ参加して..........................................................................................39<br />

8.転載について.................................................................................................................................................................40<br />

7.添付資料..........................................................................................................................................................................40<br />

2


1.研究開発の概要<br />

「情報」という教科を,単なるパソコンの使い方やプログラミングの習得を行うに留まるのではなく,<br />

生徒の思考力,創造力,企画力の育成のための手段として位置づけて行きたいと考えている.そのため<br />

には,実社会における問題をシミュレーションしたような課題を取り入れることが好ましいが,当然,<br />

どのようなものでもよいわけではなく情報の授業の流れに沿ったものでなければならない.<br />

グリッドとは,コンピュータの世界の中だけではなく,対象が企業や一般の組織にも通じ,互いに信<br />

頼関係を結び,適材適所に仕事を配分(リソース資源の有効活用)することを意味する.グリッドの概<br />

念を学ぶことは,あらゆる場面で遭遇する問題の解決手段の一つを習得することにつながり,また同時<br />

に将来のコンピュータ環境で重要な位置を占めるであろうグリッド・コンピューティングの活用のため<br />

の基礎になるものである.このような考えから,本プロジェクトではグリッド教材を用いた情報教育の<br />

ためのカリキュラムおよびテキスト・教材の作成を目指している.<br />

本プロジェクトでは,1 年目に,メディア教室内のグリッド環境の構築,カリキュラムの作成と合わ<br />

せてグリッド教材についての検討・開発を行った.2 年目にはグリッド教材の引き続きの開発と合わせ<br />

て,テキストを製作,2 学期に 3 年選択クラスにて実践授業を行った.この実践授業では概ね期待した<br />

効果を得ることができたが,いくつかの課題もあらわになった.3 年目には,実践授業でわかった課題<br />

に合わせてカリキュラム,テキストを改変すると共に,1 年生での授業に向けてグリッド教材をより使<br />

いやすいものに変更,グラフィカルな応用アプリケーションを追加で製作した後,事前に模擬授業を行<br />

うなど準備を万全にした上で,1 年生全員(313 名)の実践授業に臨んだ.<br />

授業では,導入として Excel を使用した簡単なマクロ・プログラミングの学習を行った.これは今回<br />

のプロジェクトの狙いである『情報技術をそれ自身の習得を目的とするのではなく,問題解決能力の育<br />

成のための手段として位置づける』ということにもつながっている.最初にプログラミング言語の文法<br />

の学習から入るのではなく,課題を解くために Excel の機能を利用するといった形で,実習中心に進め<br />

たことは,受身の姿勢に陥らず,期待通り生徒の学習意欲向上にも役立ったようである.Excel の学習<br />

の次は,Windows から Linux へと環境を変えて,Linux の使い方,C 言語の学習,グリッド教材を使<br />

った学習へと進めた.この進め方に関しては,『「グリッドコンピューティングの習得」を目標に,一つ<br />

の系統立てられた流れ(カリキュラム)を作ること』を目指したものであり,最初の授業で年間の授業の<br />

流れを説明することにより,生徒の学習意欲を損なわないスムーズな授業展開とすることができた.<br />

グリッド教材では,「ジョブ振分最適化に関わる問題」を題材としている.いきなりプログラミング<br />

の世界に入るのではなく,最初は「レジ問題」を取り上げて問題に対する考察・Excel を使ったシミュ<br />

レーションをさせるなど,問題を日常生活に即して考えさせると同時に,課題に対する理解を深めさせ,<br />

『問題解決能力の育成』に配慮したものとした.この教材では 9 割以上の生徒が最終的に C 言語による<br />

スケジューリングのプログラムを作成するところまで達することができた.プログラミング演習の後に<br />

は,グリッドコンピューティング本来の有効性を示すための応用アプリケーションを体験させると共に,<br />

グリッドと社会組織の関連性についての説明を行い,グリッドの概念は現実の社会に発展的にあてはめ<br />

られる問題解決手法であることへと生徒の理解を導いた.<br />

実践授業の終わりに生徒の理解度をはかるために提出させたレポートからは,この授業を通して各自<br />

学習した内容,捉え方はさまざまであるが,共通して言えることは,考える力・合理的な思考力(問題<br />

形成と問題解決能力),洞察力,合理的な判断能力,社会に対する問題意識と社会に対する適応性,そ<br />

して,互いのコミュニケーション能力の向上が見て取れることであった.これは,本プロジェクトで想<br />

3


定していた教育目標,目的を達成,それ以上の教育効果が得られたと判断できる.グリッドと言う概念<br />

を学習させることにより,「適材適所と信頼関係とコミュニケーション」,「今ある資源を最大限活かす<br />

には,どのようにすると良いか」と言う意識付けを生徒に持たせることができた点に関し,本プロジェ<br />

クトの取り組みは成功したと考えている.<br />

4


2.研究開発の経緯<br />

2-1.3 ヵ年の実施内容<br />

本プロジェクトの 3 カ年の実施内容は下記の通りである.<br />

5<br />

研究開発の内容<br />

第 1 年度 1.グリッド環境の構築(ドキュメント作成)<br />

2.グリッド教材の調査と製作<br />

3.次年度向けカリキュラム(3 年選択クラス)の作成<br />

4.グリッド研修会の実施<br />

第 2 年度 1.3 年選択クラスの実践授業<br />

2.テキスト,教材の再検討・追加作成<br />

3.次年度向けカリキュラム(1 年全体)の作成<br />

4.グリッドの応用教材としてのコンテンツの作成<br />

5.グリッド研修会の実施<br />

第 3 年度 1.3 年選択クラスの実践授業(2 度目)<br />

2.1 年全体の実践授業<br />

3.テキスト,教材の再検討・追加作成<br />

4.3 年選択クラス向けの発展カリキュラムの検討(1 年次のグリッド授業受講者<br />

向け)<br />

5.環境構築ガイドの検証,追記など(他校での実践のための検証)<br />

2-2.2006 年度の実施内容<br />

2006 年度は下記の内容を実施した.<br />

実施月 実施内容<br />

平成 18 年 <br />

7月~8 月 ・2 学期,3 学期に行うグリッド授業のためのテキスト作成<br />

17 年度使用した 3 年選択クラス向けテキストを改変<br />

9 月<br />

7/24,8/3 に大学生を対象に模擬授業を実施<br />

運営委員会で発表<br />

平成 18 年<br />

4月<br />

5 月<br />

4月~7月<br />

8 月<br />

9 月<br />

<br />

・18 年度の実践授業での様子を元に生徒の使い勝手などを改善<br />

改善点の検討<br />

Linux 環境の変更<br />

グリッド教材の改造<br />

グリッド教材の動作確認


10月~12 月<br />

平成 19 年<br />

1月~2 月<br />

平成 18 年<br />

4月<br />

10 月~11 月<br />

12 月<br />

平成 19 年<br />

2 月<br />

平成 18 年<br />

9月~11 月<br />

12月<br />

平成 19 年<br />

1月~2 月<br />

2月<br />

平成 18 年<br />

9月<br />

平成 19 年<br />

3月<br />

運営委員会で発表<br />

実践授業で利用(3 年選択)<br />

実践授業で利用(1 年)<br />

<br />

・発展教材用のグリッドを利用したコンテンツを追加開発<br />

(グラフィカルで,より生徒の興味を引きつけるコンテンツの開発)<br />

コンテンツ案を検討<br />

コンテンツの開発<br />

実践授業で利用(3 年選択)<br />

実践授業で利用(1 年)<br />

<br />

・前年度作成したカリキュラムに沿った実践授業を実施<br />

グリッド教材を使用した演習<br />

グリッド概念の説明,応用アプリケーションによる理解<br />

<br />

・前年度作成したカリキュラムに沿った実践授業を実施<br />

グリッド教材を使用した演習<br />

グリッド概念の説明,応用アプリケーションによる理解<br />

<br />

9/29 (有)TRIARTの津村忠助さんを講師として招き,セミナーを開催<br />

『モバイルにおけるグリッドシステム』<br />

平成18 年 9 月 29 日 関学会館<br />

13:00~14:00 自己紹介,プロジェクトの紹介<br />

14:00~15:00 事例紹介<br />

15:00~16:00 質疑応答<br />

内容が機密にかかわる点が多いため講師からの要請で運営指導委員およびプ<br />

ロジェクトの関係者だけを対象とするセミナーとして開催.モバイルの現状・<br />

今後,モバイルの特徴・開発環境,モバイルにおけるグリッドサービスなどの<br />

講演を頂いた後に,講師を交えてグリッドの可能性についての積極的な討議を<br />

行った.<br />

<br />

・翌々年度(3 年選択)向けのカリキュラムの検討<br />

1 年でグリッド学習を行った生徒向けの 3 年選択授業のカリキュラムについて<br />

検討<br />

6


平成 18 年<br />

9月<br />

随時<br />

平成 19 年<br />

2月<br />

平成 18 年<br />

7月<br />

8月<br />

平成 18 年<br />

4月<br />

5月<br />

8月<br />

10月<br />

12月<br />

平成 19 年<br />

1月<br />

3月<br />

<br />

第1回運営委員会(9/29)<br />

グリッド教材,カリキュラム,テキストの改変部分の報告<br />

メーリングリストで進行状況を常時報告し,その都度アドバイスなどを頂いた<br />

<br />

2/5 東京工業大学にて,川合 PM,松田 PM に進捗状況を報告.<br />

<br />

第一法規社向けにプロジェクトの取り組み原稿を執筆(松田 PM からの依頼)<br />

8/26-27 情報処理学会 SSS2006 にパネラーとして参加<br />

<br />

4/27 教材配布・バックアップ環境,グリッド教材の改善点,追加応用アプリ<br />

ケーションについて検討<br />

(IBM 濱崎,大藤,丹羽)<br />

5/16 Linux 環境の設定について<br />

(IBM 濱崎,丹羽,内田洋行担当者)<br />

5/26 グリッド教材の改善方法について<br />

(IBM 濱崎,大藤,丹羽)<br />

8/4 グリッド教材の確認<br />

(IBM 濱崎,大藤,丹羽)<br />

8 /29 グリッド教材の動作確認<br />

(IBM 濱崎,神沼,大藤,丹羽)<br />

8 /29 テキスト,カリキュラムについて<br />

(神沼,大藤,丹羽)<br />

10/13 応用アプリケーションの検討<br />

(IBM 濱崎,丹羽)<br />

12/14 2 学期の反省会<br />

(大藤,谷,丹羽,金沢)<br />

1/5 年度内の実施内容・予算状況について<br />

(丹羽,金沢)<br />

3/08 報告書の打ち合わせ<br />

(丹羽,金沢)<br />

7


3.研究開発の内容等<br />

3-1.研究開発実施対象学科と対象人数の規模<br />

(1)2005 年度<br />

全日制 普通科 3年 選択クラス ・・・ 18 名<br />

(2)2006 年度以降<br />

全日制 普通科 1年 全クラス ・・・ 約 300 名<br />

全日制 普通科 3年 選択クラス ・・・ 約 20 名<br />

3-2.研究開発の体制<br />

(1)研究開発の体制<br />

運営指導委員会<br />

関西学院高等部<br />

教諭:丹羽時彦<br />

非常勤講師:大藤泰生<br />

関西学院大学<br />

教授:雄山真弓<br />

IBM<br />

システム・デザイン・センター:濱田正彦<br />

グリッドビジネス事業部:根岸史季<br />

公共システム事業部:浅沼良治<br />

グリッド構築:小出理史,石川公基<br />

日立システムアンドサービス<br />

研究開発センター:田中一義,猪川徳信,中垣智宏<br />

8<br />

アドバイザー<br />

関西学院大学情報メディア教育センター<br />

助教授:高田茂樹<br />

大阪大学大学院基礎工学研究科<br />

教授:白旗慎吾<br />

(前)前橋工科大学情報工学科<br />

教授:神沼靖子<br />

教育システム開発コーディネーター<br />

メディアプラス<br />

代表取締役:金沢勇


(2)運営指導委員会<br />

運営指導委員会は,下記の委員から組織している.<br />

氏名 所属・職名 備考(専門分野など)<br />

丹羽時彦<br />

大藤泰生<br />

雄山真弓<br />

高田茂樹<br />

白旗慎吾<br />

神沼靖子<br />

濱田正彦<br />

小出理史<br />

石川公基<br />

根岸史季<br />

浅沼良治<br />

田中一義<br />

猪川徳信<br />

中垣智宏<br />

金沢勇<br />

関西学院高等部 教諭<br />

関西学院高等部 非常勤講師<br />

関西学院大学 文学部教授<br />

関西学院大学 情報メディア教育センター<br />

助教授<br />

大阪大学大学院基礎工学研究科 教授<br />

(前)前橋工科大学情報工学科 教授<br />

日本IBM株式会社<br />

〃<br />

〃<br />

〃<br />

〃<br />

日立システムアンドサービス<br />

〃<br />

〃<br />

株式会社メディアプラス<br />

9<br />

情報理論(Shannon 流),確率論,<br />

数学,統計学<br />

グリッド教育アシスタント<br />

データマイニング<br />

マルチメディアデータベース<br />

数理統計学,数理情報学<br />

情報教育全般<br />

グリッド環境構築<br />

〃<br />

〃<br />

〃<br />

〃<br />

グリッド対応アプリケーション<br />

製作<br />

〃<br />

教育システム開発コーディネー<br />

ト,プロジェクト管理,報告書<br />

取りまとめ等<br />

2006 年度は,下記のように運営会議を実施すると共に,メーリングリストを活用してリアルタイム<br />

に実施状況を報告,各委員からのアドバイスを頂くなど行った.<br />

実施月 実施内容<br />

平成 18 年 9月<br />

平成 18 年 4月<br />

平成 18 年 5月<br />

9/29 第1回運営委員会<br />

グリッド教材,カリキュラム,テキストの改変部分の報告<br />

<br />

4/10 選択クラス(3 年)開始前の状況について<br />

4/19 選択クラス 2 回目の授業状況にいて<br />

4/27 選択クラス 3 回目の授業状況について<br />

4/27 1 年生(300 人)向けのグリッド環境の準備状況について<br />

5/8 「Linux と C 言語」のテキスト修正について<br />

5/11 選択クラス 3 回目の授業状況について


平成 18 年 6月<br />

平成 18 年 8月<br />

平成 18 年 9月<br />

平成 18 年 10 月<br />

平成 18 年 11 月<br />

平成 18 年 12 月<br />

平成 19 年 1月<br />

5/16 Linux 環境の準備状況について<br />

5/27 選択クラス 5 回目の授業状況について<br />

6/15 選択クラス 7,8 回目の授業状況について<br />

6/20 選択クラス 9 回目の授業状況について<br />

8/6 模擬授業の実施結果について<br />

9/8 1年生のグリッド授業開始について<br />

9/28 選択クラスの授業の様子<br />

10/3 応用アプリケーション(案)について<br />

10/12 1 年生の授業報告<br />

10/25 選択クラスでのグリッド授業について<br />

11/17 1 年生,選択クラスでの授業の進捗状況について<br />

12/12 選択クラスの授業を終えて<br />

1/23 1 年生のグリッド授業状況について<br />

10


3-3.研究開発の目的・ねらい<br />

(1)研究開発の目的<br />

研究開発の目的は,「IT の知識を実社会の問題解決に発展的に応用していける人材」の育成のための<br />

カリキュラム・教材作りである.<br />

当校は全日制普通科であるため,パソコンやプログラミングの習得を期待して入学してきた生徒では<br />

ない.そこで,「情報」と言う教科を,生徒の思考力,創造力,企画力の育成のための手段として位置づ<br />

けたい.実社会においてある問題に遭遇したとき,今まで学習または研究してきた知識を最大限に利用<br />

して私たちは判断し,実行しなければならない.しかし,今まで,学校教育においてそのような機会は<br />

なかなか与えられることがなかった.そこで,このプロジェクトでは,グリッドを用いて,実社会で起<br />

こる現象や問題を発生させ,それをどのような知識を用いることにより,合理的に解決することができ<br />

る生徒の育成を目指して行きたい.したがって,より高度なプログラミングの習得,ネットワークの構<br />

築など専門的な知識の向上を目指すものではない.と言うものの,グリッドを利用する以上ある程度の<br />

プログラミングの知識の習得,また,ネットワークを利用するので,それに伴う情報倫理の教育も随時<br />

行なっていく.<br />

(2)研究開発のねらい<br />

現在,教科「情報」の学習指導要領において,コンピューターを扱っている単元に関するポイント項目<br />

は,<br />

① ハードウェアの基礎<br />

② ソフトウェアの基礎(OS,基本ソフトエアの役割)<br />

③ データ通信の概要(コンピューター間の通信)<br />

④ 計測・制御の概要(コンピューターによるコンピュータの計測,制御)<br />

⑤ アルゴリズム1(プログラミング,コンピュータ言語の習得)<br />

⑥ アルゴリズム2(最適化アルゴリズム,探索アルゴリズム)<br />

⑦ 図形と画像処理(レンダリング等)<br />

⑧ シミュレーション<br />

等が挙げられている.しかし,これらのポイントは一つ一つが独立しているため,授業展開(動機付け)<br />

が難しい現状がある.一方,研究対象としているグリッドコンピューティングは,これらのポイントを<br />

多く含んでおり,それぞれをうまく結びつけるための教材として適していると考えられる.<br />

そこで,研究開発のねらいを,<br />

『コンピューター教育の大きな目標を「グリッドコンピューティングの習得」とし,<br />

それに伴った「一つの系統立てられた流れ(カリキュラム)の製作」』<br />

としたい.また,情報技術の習得が目的となるのではなく,手段として発展的に活用できるようになる<br />

ことを期待して,<br />

『問題解決能力の育成につながるグリッド教材の開発』<br />

ともしたい.<br />

なお,これらの製作物が,より広く一般に普及されるように,環境構築から記載されたマニュアル書<br />

の製作にも取り組んでいきたい.<br />

11


3-4.開発カリキュラム,教材の位置付け<br />

本プロジェクトで開発したカリキュラム,教材は下記にあげる関西学院高等部教科「情報」の概念を<br />

基本としている.<br />

関西学院高等部教科「情報」の概念<br />

教育目的 「生きる力」の習得<br />

第15 期中央教育審議会 第一次答申(1996(平成8)年7月 「21世紀を展望した我が国の<br />

教育の在り方について(第1次答申)」)<br />

教育目標<br />

情報 B(学習指導要領の解説より)<br />

ア 情報活用の実践力<br />

教育課程の基準の改善のねらいの一つである「自ら学び,自ら考える力」を育成することと密接に<br />

つながる「問題解解決的な学習,調べ方や学び方の育成を図る学習」と「自ら調べ・まとめ・発表す<br />

る活動,話し合いや討論の活動」と通して「情報活用の実践力」が高まり,また,「情報活用の実践力」<br />

が高まることにより,これらの活動が一層活発になっていく<br />

イ 情報の科学的な理解<br />

情報活用を問題解決の視点から捉えて,問題解決の手順を考えること,また,結果を評価し改善<br />

につなげること<br />

ウ 情報社会に参画する態度<br />

カリキュラムの位置付け,関連性を図示すると,次のようになる.<br />

このカリキュラム<br />

グリッドの概念<br />

グリッドコンピューティング<br />

12<br />

情報 B<br />

第 15 期中教審第一次答申<br />

「生きる力」<br />

高等学校<br />

新学習指導要領「情報」


教<br />

科<br />

「<br />

情<br />

報<br />

」<br />

学<br />

習<br />

指<br />

導<br />

要<br />

領<br />

基<br />

盤<br />

第 15 期中央教育審議会第一次答申と高等学校教科「情報」学習指導要領との関連<br />

情報活用の実践力 情報の科学的な理解 情報社会に参画する態度<br />

課題や目的に応じて情報手段を適切<br />

に活用することを含めて,必要な情報を<br />

主体的に収集・判断・表現・処理・創造<br />

し,受けての状況などを踏まえて発信・<br />

伝達できる能力<br />

キーフレーズ<br />

・ 自ら学び,考え自ら考える力<br />

・ 体験的な学習<br />

・ 問題形成,問題解決能力の育成<br />

・ 調べ方や学び方の育成を図る学習<br />

・ 自ら調べ,まとめ,発表する活動<br />

・ 話し合いや討論の活動<br />

情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と,情報を適<br />

切に扱ったり,自らの情報活用を評価・改善するための基礎<br />

的な理論や方法の理解<br />

キーフレーズ<br />

・ 情報そのものについて,種類,性質,加工のしやすさ,伝<br />

わり方などを理解すること<br />

・ 情報活用を問題解決の視点から捉えて,問題解決の手順を<br />

考えること,また,結果を評価し改善につなげること<br />

・ 情報を正確にやり取りするために必要な人間の近く,記<br />

憶,思考などについての特性を理解すること<br />

・ 社会科学や人文科学を含む情報に関わるあらゆる学問の<br />

中から,情報を適切に活用するために必要な基礎的な理論<br />

や方法を学び実践すること<br />

13<br />

社会生活の中で情報や情報技術が果た<br />

している役割や及ぼしている影響を理解<br />

し,情報モラルの必要性や情報に対する責<br />

任について考え,望ましい情報社会の創造<br />

に参画しようとする態度<br />

キーフレーズ<br />

・ 情報活用の舞台として社会を意識<br />

・ 情報社会を観念的に捉えてはいけな<br />

い<br />

・ 情報社会を情報や情報技術の視点か<br />

ら考えていくことにより,実感をとも<br />

なう具体的な理解を得る<br />

・ 情報社会を固定的に捉えることは避<br />

ける<br />

第15期中央教育審議会 第一次答申 (1996(平成8)年7月 「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第1次答申)」)<br />

「生きる力」とは<br />

我々はこれからの子供たちに必要とするものは,いかに社会が変化しようと,自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,<br />

よりよく問題を解決する資源や能力 -以下省略-<br />

キーフレーズ<br />

・ 自ら学び,自ら考える主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資源や能力<br />

・ 自ら律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心など,豊かな人間性


情報 B とグリッドコンピューティングの関連<br />

情 報 B グリッドコンピューティング<br />

(1) 問題解決とコンピュータの活用<br />

ア 問題解決における手順とコンピュータの活用<br />

イ コンピュータによる情報処理の特徴<br />

(2) コンピュータの仕組みと働き<br />

ア コンピュータにおける情報の表し方<br />

・ 表計算ソフトを用いて,金種計算,円周率,バイオリズムなどのマクロの作成<br />

・ C言語を用いて,深入りしない単純なプログラム(カレンダー)の作成<br />

・ 人間グリッドとグリッドの体験<br />

・ 表計算ソフトによるグラフの作成(データの視覚化).<br />

・ C言語を通して学習<br />

イ コンピュータにおける情報の処理 ・ 表計算ソフトによるマクロ<br />

・ C言語<br />

・ グリッドコンピューティング<br />

ウ 情報の表し方と処理手順の工夫の必要性 ・ グリッドコンピューティング<br />

(3) 問題のモデル化とコンピュータを活用した解決<br />

ア モデル化とシミュレーション<br />

・ レジ問題<br />

・ 表計算を用いたマクロ<br />

イ 情報の蓄積・管理とデータベースの活用 (グリッドコンピューティング)<br />

(4) 情報社会を支える情報技術<br />

ア 情報通信と計測・制御の技術<br />

・ グリッドコンピューティング<br />

イ 情報技術における人間への配慮 ・ 表計算を用いたマクロ<br />

・ C言語によるプログラミング<br />

ウ 情報技術の進展が社会に及ぶす影響 ・ グリッドコンピューティング<br />

14


3-5.2006 年度の研究開発実施内容<br />

(1)18 年度用テキストの作成<br />

2005 年度に行った 3 年選択クラスでの実践授業の反省を元に一部順序を入れ替えるなど,生徒の理<br />

解向上を目的に全体的に見直して修正を行った後,大学生を対象に模擬授業を行い検証を行った.また<br />

作成したテキストを運営指導委員に示し,最終的な確認を行った.<br />

(テキストの内容に関しては,添付資料を参照)<br />

(2)グリッド教材の改善①<br />

2005 年度での実践授業で使用したグリッド教材は,全てを Linux のコマンドライン上から行わなけ<br />

ればならず,コマンドラインに慣れていない生徒にとって馴染み難さがあったため,GUI を追加して使<br />

いやすい教材にリニューアルを行った.(教材自体の手順などは変更していない)


(3)グリッド教材の開発②<br />

発展教材用のグリッドプログラムのサンプルは 2005 年度にも作成してあったが,より生徒の興味を<br />

引くものとして,グラフィカルなものが好ましいとの意見から,マンデンブロを題材とした応用アプリ<br />

ケーションを新たに開発し,カリキュラムに取り入れた.<br />

(4)実践授業<br />

2 学期に 3 年生の選択クラス,3 学期には 1 年生全クラスにおいて,グリッド教材を使った実践授業<br />

を実施した.<br />

グリッド教材の内容<br />

・導入<br />

-エクセルによる,スーパーのレジを題材にした<br />

スケジューリングに関する演習(最適化,探索)<br />

・人間グリッド<br />

-生徒たちがコンピュータの代わりとなって,ネットワーク上でパソコン同士が連携するグ<br />

リッドの動きを体感<br />

・スケジューリングのプログラミング<br />

-グリッドコンピューティングにおけるスケジューリングに関するプログラミング学習<br />

(C 言語で問題の振分をプログラミング)<br />

・サンプルプログラムの理解<br />

-本格的なグリッドコンピューティングを利用したサンプル(マンデンブロ)<br />

-プログラムによるグリッドコンピューティングの有効性の理解<br />

-進みの速い生徒には,プログラム構造の学習にも利用<br />

16


1 年生全クラスにおける実践授業の詳細,考察については,「4.2006 年度の実践授業」を参照.<br />

(5)グリッド研修会の実施<br />

平成18 年 9 月 29 日に,(有)TRIARTの津村忠助さんを講師として招き,セミナーを開催した.<br />

『モバイルにおけるグリッドシステム』<br />

平成18 年 9 月 29 日 関学会館<br />

13:00~14:00 自己紹介,プロジェクトの紹介<br />

14:00~15:00 事例紹介<br />

15:00~16:00 質疑応答<br />

内容が機密にかかわる点が多いため講師からの要請で運営指導委員およびプロジェクトの関係者だ<br />

けを対象とするセミナーとして開催.モバイルの現状・今後,モバイルの特徴・開発環境,モバイルに<br />

おけるグリッドサービスなどの講演を頂いた後に,講師を交えてグリッドの可能性についての積極的な<br />

討議を行った.<br />

<br />

●ケータイ事情<br />

ユーザー利用動向<br />

NMP とは<br />

韓国の NMP 事情<br />

通信速度の高速化<br />

ドコモの展開<br />

AU の展開<br />

ソフトバンクの展開<br />

なぜケータイを区別するか<br />

17


●ケータイと PC の比較<br />

ケータイコンテンツの特徴<br />

ケータイのできること<br />

ケータイコンテンツの特徴<br />

サーバーの負荷<br />

ケータイコンテンツのセキュリティ<br />

通信速度の落とし穴<br />

キャリア間の比較<br />

●ケータイアプリ<br />

3キャリアのケータイアプリ<br />

BREW の企画<br />

開発環境<br />

開発期間<br />

Java アプリにない BREW の優位性<br />

●モバイルにおけるグリッドサービス<br />

キーワード<br />

クロスメディア<br />

通信速度の高速化<br />

Wi-Fi を利用したサービス<br />

18


(6)カリキュラムの検討<br />

1 年次でのグリッド学習の目的・目標を再確認した上で,3 年選択授業(1年次にグリッド学習を受<br />

けた生徒向け)の目的・目標を設定し,内容・カリキュラムについて検討を行った.3 年次の内容とし<br />

ては,グリッドコンピューティングの応用として,生徒自らが選択した問題をもとにプログラミング実<br />

習する方向は決まったが,対象とする問題をどのようにするかについては,今後検討していく必要があ<br />

る.<br />

1 年次(必修,300 名対象)<br />

目的:グリッドコンピューティングの理解<br />

目標:グリッドコンピューティングのための基礎知識の習得<br />

内容:タイピング,ワード<br />

Excel を使ったマクロプログラミング<br />

Linux の学習,C 言語の学習<br />

グリッド教材による実習<br />

グリッドコンピューティングの背景,概念,現状などに関する学習<br />

学習形態:グループ学習(ポケモン学習法) グループ自体がグリッドとなる<br />

3 年次(選択,30 名対象)<br />

目的:問題解決のための IT 技術の効果的な活用方法の理解<br />

目標:グリッドコンピューティングを問題解決に応用できる知識と技術の習得<br />

内容:生徒が自ら選択した問題を,グリッドコンピューティングによって解く演習中心型授業<br />

検討中の 3 年選択クラス カリキュラム案<br />

1 学期前半 C言語の発展学習<br />

・関数,ポインタ,配列など<br />

1 学期後半 Globus Toolkit の学習<br />

・ライブラリの理解<br />

・簡単なグリッドプログラムの演習<br />

2 学期前半 プログラミング課題の設定<br />

・グリッドコンピューティング応用事例の学習<br />

・プログラミング課題の設定(生徒自身に問題を選択させる)<br />

2 学期後半 グリッドコンピューティングのプログラミング実習<br />

・選択した問題を解くためのプログラミング実習<br />

19


(7)グリッド教材の実行環境構築マニュアルの検証・追記<br />

グリッド教材を他校で実践するために必要な環境の構築マニュアルを実際に使って,試しに環境を構<br />

築してみることにより,マニュアルの不備などがないか検証し必要な箇所に追記を行った.試しに構築<br />

した環境は,年度末成果報告会においてデモ機として活用した.<br />

(「グリッド教材実行環境構築ガイド」は,添付資料を参照)<br />

3-6.留意事項<br />

本プロジェクトで取り上げたテーマであるグリッドコンピューティングは,それ自体が発展段階にあ<br />

ることに留意して,グリッドコンピューティングに普段から実際に取り組んでいる企業の研究者に運営<br />

委員会に加わってもらうとともに,毎年,第一線の研究者を招いてのセミナーを開催することにより,<br />

常に最新の情報を得ることができるような体制を整えている.<br />

また逆に,一般的なテーマでないとして敬遠されることのないように,グリッドコンピューティング<br />

の動向に捕らわれすぎることなく,あくまでも情報教育の手法として,他の情報教諭にも興味をもって<br />

もらえるような研究成果とできるように注意をしている.<br />

なお,本プロジェクトにおいては,グリッドコンピューティングを広義の意味にとらえ,コンピュー<br />

ティングだけに留まるものではなく,広く社会一般に通じる概念としてグリッドをとらえている.<br />

20


4.2006 年度の実践授業<br />

4-1.2006 年度年間カリキュラム<br />

2006 年度において,以下に示すカリキュラムに従い,1学期 19 時間,2学期 20 時間,3学期 14 時<br />

間の授業回数で実践した.(1 学期は市販のテキスト,2 学期以降はオリジナルのテキストを使用)<br />

学期 回数 AC 組 B 組 D 組 EFG 組 内容 詳細<br />

1 学期<br />

2 学期<br />

1 2006/4/14 2006/4/14 2006/4/11 2006/4/13 Windows<br />

21<br />

「情報」とは? メディア教室の利用方法,Windows<br />

の操作,ユーザーID 配布など<br />

2 4/17 4/17 4/13 4/17 タイピング タイピング練習(Gold Finger)Step1~5<br />

3 4/21 4/21 4/18 4/20 タイピング タイピング練習(Gold Finger)Step6~8<br />

4 4/24 4/24 4/20 4/24 タイピング タイピング練習(Gold Finger)Step9~10<br />

5 4/28 4/28 4/25 4/27 タイピング 中間テスト(タイピング)<br />

6 5/1 5/1 4/27 5/1 Word 教科書 P54 練習 22 Word の起動/文章の入力<br />

7 5/8 5/8 5/9 5/8 Word 教科書 P59 実習 6 実習 7 英文・漢詩の入力<br />

8 5/12 5/12 5/11 5/11 Word 教科書 P82 例題 5 編集機能(1)<br />

9 5/22 5/22 5/23 5/22 Word 教科書 P85 93 例題 6 例題7 編集機能(2)<br />

10 5/26 5/26 5/25 5/25 Word 教科書 P96 例題 8 イラストの貼り付け<br />

11 5/29 5/29 5/30 5/29 ペイント<br />

12 6/2 6/2 6/1 6/1 Word 〃<br />

13 6/5 6/5 6/6 6/5 Word 〃<br />

14 6/9 6/9 6/8 6/8 Word 〃<br />

15 6/12 6/12 6/13 6/12 Excel<br />

16 6/19 6/19 6/20 6/19 Excel<br />

ペイントの操作方法,Word への埋め込み,創作課<br />

題(カレンダー・ウェブページ・動画・プログラムなど<br />

の作成)<br />

教科書 P118 例題 11 Excel の起動・データ入力の<br />

基礎<br />

教科書 P124 例題 12 数式・関数(SUM・<br />

AVERAGE)<br />

17 6/23 6/23 6/22 6/22 Excel 教科書 P128 例題 14 ワークシートの書式設定<br />

18 6/26 6/26 6/27 6/26 Excel<br />

教科書 P135-139 例題 15 グラフ(棒グラフ・折れ線<br />

グラフ・円グラフ)<br />

19 6/30 6/30 6/29 6/30 Word,Excel 期末テスト(Word,Excel)<br />

1 9/8 9/8 9/7 9/7 Excel テキスト P1-4 Excel 応用編 オートフィル<br />

2 9/11 9/11 9/12 9/11 Excel テキスト P4 1 次関数~3 次関数のグラフ作成<br />

3 9/15 9/15 9/14 9/14 Excel テキスト P4 円(x 2 +y 2 =1)のグラフ作成<br />

4 9/20 9/20 9/19 9/20 Excel 〃<br />

5 9/22 9/22 9/21 9/21 Excel<br />

テキスト P5 SIN 関数を用いたバイオリズムのグラフ<br />

作成


3 学期<br />

6 9/25 9/25 9/26 9/25 Excel テキスト P6 IF 関数<br />

7 9/29 9/29 10/5 10/5 Excel テキスト P6 IF 関数による金種計算<br />

8 10/6 10/6 10/10 10/6 Excel テキスト P7-8 RAND 関数<br />

9 10/13 10/13 10/12 10/12 Excel テキスト P9-10 乱数による円周率推定問題<br />

10 10/16 10/16 Excel 〃<br />

11 10/23 10/23 10/24 10/23 Excel 中間テスト(Excel 応用)<br />

12 10/27 10/27 10/26 10/26 Linux<br />

22<br />

テキスト P14-21 Linux の基本操作,C 言語プログラ<br />

ミングの基本<br />

13 11/10 10/30 10/31 10/30 C 言語 テキスト P22-23 例題 1,2 printf 関数<br />

14 11/13 11/10 11/7 11/9 C 言語<br />

テキスト P24-27 例題 3,4,5,6 printf 関数による書式<br />

設定,変数の利用<br />

15 11/17 11/13 11/9 11/13 C 言語 テキスト P28-32 例題 7,8 if 関数<br />

16 11/20 11/17 11/14 11/16 C 言語 テキスト P33-34 例題 9,10 for 関数,while 関数<br />

17 11/24 11/20 11/16 11/20 C 言語<br />

テキスト P35-38 例題 11,12,13,14 scanf 関数,rand<br />

18 11/27 11/24 11/21 11/27 C 言語 テキスト P39-43 各自で練習問題に挑戦<br />

19 11/27 C 言語 〃<br />

20 12/1 12/1 11/28 11/30 C 言語 期末テスト(C 言語)<br />

関数<br />

21 11/30 自習<br />

1 2007/1/12 2007/1/12 2007/1/11 2007/1/11 Grid<br />

2 1/15 1/15 1/16 1/15 Grid<br />

3 1/19 1/19 1/18 1/18 Grid 〃<br />

4 1/22 1/22 1/23 1/22 Grid<br />

テキスト P44-46 グリッドコンピューティング入門 班<br />

分け パズル(6人の作家)<br />

テキスト P47-51 レジ問題のシュミレーション<br />

(Excel)<br />

テキスト P52-57 GridCalc の操作方法,人間グリッ<br />

5 1/26 1/26 1/25 1/25 Grid テキスト P58-64 スケジューラーによる自動配信<br />

6 1/29 1/29 1/30 1/29 Grid<br />

7 2/2 2/2 2/1 2/1 Grid 〃<br />

8 2/5 2/5 2/6 2/5 Grid 〃<br />

9 2/7 2/7 2/8 2/8 Grid 〃<br />

10 2/9 2/9 2/13 2/15 Grid 〃<br />

11 2/15 Grid 〃<br />

12 2/19 2/19 2/20 2/19 Grid<br />

13 2/23 2/23 2/22 2/22 Grid レポート作成<br />

ド<br />

テキスト P65-78 problem2~10 のスケジューリン<br />

グ,実行速度の計測,考察<br />

14 2/26 2/26 2/27 2/26 Grid レポート作成<br />

テキスト P79-86 グリッドコンピューティングとは?<br />

マンデルブロ集合描画の実演


4-2.授業内容から見た実践報告と考察<br />

4-2-1.1学期授業内容(授業回数19回)<br />

(1)オリエンテーション<br />

授業回数:1回<br />

使用教材:自主教材<br />

授業形態:個人学習<br />

授業内容:関西学院高等部における情報機器の利用方法とID・PWの重要性<br />

授業目標:関西学院高等部情報機器利用規則を理解させる.<br />

項 目:各自のIDとパスワードの意味の説明と配布,マイドキュメントの利用方法,プリンターの<br />

利用方法,放課後のPC利用方法について<br />

実践報告:<br />

・ 1クラス(45名)中ほぼ全員の家庭にPCがあることを確認.そのうち,ワードやエクセルを利用<br />

した授業を受けた生徒は10名程度,プログラミング経験者は1,2名程度であることを確認.<br />

・ 生徒全員,ネットワーク環境下のPC利用が初めてであるため,IDやパスワードの重要性につい<br />

て説明を行った.関西学院高等部,情報機器利用規則に関する説明も行った.しかし,生徒の様子<br />

から,利用したことがないため,その重要性と自己管理の必要性に関し,十分認識させることがで<br />

きたと感じられなかった.今後,利用させながら,その都度,説明していく必要がある.<br />

(2)タイピング<br />

授業回数:4時間<br />

使用教材:ゴールドフィンガー<br />

授業形態:個人学習<br />

授業目標:ネットワークを体験,キーボードに慣れさせる<br />

項 目:Step1~Step10<br />

実践報告:<br />

・ タッチタイプを通し,当然キーボードに慣れさせることをねらいとするが,このソフトはネットワ<br />

ークを利用した成績管理を行うため,IDとPWの重要性に関する指導も同時に行った.<br />

・ 生徒は,ゲーム感覚で,とても楽しく集中して取り組むことができた.ただ,Step1~Step5 までは,<br />

決められた指の動きでなくても(基本的な指の動きの習得していなくても)高得点が得られるが,短<br />

文や長文,英単語の分野になってくると全く太刀打ちができないので,もう一度,基本的な分野ま<br />

で戻って学習するように指導した生徒が多くいた.<br />

・ 授業の最後に正常終了しなければデータはサーバーに転送されない仕組みであるにもかかわらず,<br />

強制終了をしたため 1 時間分のデータが書き込まれないミスを犯す生徒が数名いた.よい経験をし<br />

たように思う.この失敗は,放課後 3 時 30 分から 6 時までメディア教室を開放しているので,その<br />

時間を利用すれば十分取り返すことが可能であるシステムにしている.本来,このシステムは,欠<br />

席者に対応するようにしているものである<br />

・ ソフトには,生徒の練習時の履歴がグラフとなって表示される仕組みになっている.発達の様子は,<br />

基本的な分野では,急速に伸びるが,指の基本的な動きを習得していない者は,レベルが上がるに<br />

つれ,指の動きが極端に悪くなり,成績が上がらない傾向が見受けられた.また,基本的な指の動<br />

23


きを習得できている生徒でも,成績は単調増加するわけではなく,何回かプラトー(高原状態)を経<br />

て,成績が上がっていった.その主な上昇の傾向は,滑らかに上昇していくのではなく,突如,す<br />

ごく良い成績となる傾向にあった.あまり成績が上昇しないから意欲を無くす生徒も多くいるが,<br />

このグラフを見せることにより,続けて練習するよう指導していった.<br />

・ 最後5回目に3種類の新しい問題を作成し,30分間のテストを行った.<br />

(3)ワードとエクセル<br />

授業回数:14時間<br />

使用教材:テキスト 『30時間でマスター Word & Excel 2003』(実教出版,2004 年)<br />

授業形態:個人学習<br />

授業目標:ワードとエクセルの基本操作の習得<br />

項 目:各時間習得内容を詳細に設定<br />

実践報告:<br />

・ 生徒全員が利用できる提示用フォルダ内に各時間習得内容が記載されたファイル「1 学期 Word 評価<br />

ポイント&作成アドバイス」,「1 学期 Excel 評価ポイント&作成アドバイス」をおき,それを参考<br />

にしながら生徒は自らその指示に従って課題を完成させるシステムをとった.評価するとき,生徒<br />

にすでにどのようなところを採点するか連絡しているので,とても明確に採点することが可能であ<br />

った.<br />

・ この教材内容は,とても熱心に取り組むことができた.しかし一方で,経験の差が大きく影響を及<br />

ぼし,設定した1時間ごとの作業目標を短時間で達成するものもいれば,数時間かかってようやく<br />

仕上げる生徒もいた.これら遅進生に対する対処方法は,放課後のメディア教室の利用,また,人<br />

数に応じて昼休みのメディア教室の開放で対処した.<br />

・ ワードとエクセルに関する35分間テストを行った.約 260 名の生徒が 40 点以上の得点を取る一方<br />

で,1桁台の生徒も存在している.この生徒たちに対する対応が,今後の課題である.<br />

人数<br />

100<br />

90<br />

80<br />

70<br />

60<br />

50<br />

40<br />

30<br />

20<br />

10<br />

0<br />

得点分布<br />

1 2 3 1 2 2 2 1 3 1 1 4 4 1 2<br />

8 4 3 3<br />

24<br />

9 6<br />

12 15 15 22<br />

18<br />

15<br />

11<br />

6 17 20 23 25 28 30 34 36 38 40 42 44 46 48 50<br />

点数<br />

33<br />

20<br />

89<br />

クラス 平均<br />

A 44.1<br />

B 45.6<br />

C 42.4<br />

D 43.2<br />

E 45.6<br />

F 42.3<br />

G 44.9<br />

総計 44.0


4-2-2.2学期授業内容(授業回数20回)<br />

(1)エクセル<br />

授業回数:11回<br />

使用教材:自主教材<br />

授業形態:個人学習<br />

授業内容:エクセルの関数を用いた計算<br />

授業目標:2学期後半より始まるC言語を想定し,エクセルの関数を1行からなるプログラムであると<br />

理解し,問題を解決するための流れを作る能力の育成.<br />

項 目:オートフィルや SUM 関数を用いたグラフの作成,DATE 関数を用いたバイオリズムの作成,IF<br />

関数を用いた金種計算の作成,RAND 関数を用いて円周率πを求めるプログラムの作成<br />

実践報告:<br />

・ 最初,戸惑いを見せたものの,評価ポイント&作成アドバイスを見ながら各自最後の課題までこな<br />

すことができた.特に,バイオリズムにおいては,生まれてから何日生きてきたのか,生まれた日<br />

の曜日は何曜日であったのか知りたいために,ともに教えあいながら意欲的に取り組めた.また,<br />

中には,身内の方にも教えたいのか,そのプログラムを拡張し外部入力がしやすいように工夫し,<br />

自分なりにプログラムを修正しているものが多くいた.この教材はとても生徒の興味を引く教材で<br />

あった.<br />

・ 金種計算は,答えが明確に出てくるため,プログラムを組みながら確かめ,また,プログラムを修<br />

正する作業を繰り返しながら,徐々に望みのプログラムへと近づいていった.課題を早く終了した<br />

生徒には,例外処置(入力ミス)に対応するプログラム作りに取り組ませた.<br />

・ この単元において,次の単元でC言語が登場するため,プログラム製作ということを意識した.特<br />

に,IF()関数に着目し,ひとつの条件を例外措置も含め,どのように分解することができるか,と<br />

いう能力の育成に着目し指導した.指示通り行うことはできるものの,新しい課題に対し自ら利用<br />

することができる生徒は残念ながら少数であった.場合分けを,自らの力で行う能力の育成がとて<br />

も難しいことを痛感した.<br />

・ エクセルに関する30分間テストを行った.1学期と比較し,平均点が低い結果となった.1学期<br />

の内容は,プログラム作成の要素がなかったが,2学期のエクセルの内容はプログラム的な要素が<br />

含まれているため,このような結果となったと考えられる.すなわち,作成したい事柄を実行する<br />

ためには,どのような条件が必要か,その場合を想定し,それに対する対処方法を分類して考察し,<br />

coding しなければならないからである.<br />

25


人数<br />

60<br />

50<br />

40<br />

30<br />

20<br />

10<br />

0<br />

2<br />

17<br />

40<br />

50<br />

得点分布<br />

55<br />

37<br />

0- 5- 10- 15- 20- 25- 30- 35- 40- 45- 50-<br />

点数<br />

(2) Red Hat Linux<br />

授業回数:1回<br />

使用教材:自主教材<br />

授業形態:個人学習<br />

授業内容:Red Hat Linux の沿革<br />

授業目標:Windows と異なるOSもあることを認識させ,その利用方法の習得<br />

項 目:<br />

・ Windows や Mac OS と異なる OS もあることを理解する.ID と PW に関する説明も行う.<br />

・ これから行うC言語に関する説明にも少し触れた.<br />

・ Windows 以外の OS があることを知り,多くの生徒は驚いた.<br />

50<br />

26<br />

24<br />

26<br />

5<br />

1<br />

クラス 平均<br />

A 25.0<br />

B 24.4<br />

C 23.8<br />

D 27.1<br />

E 25.1<br />

F 24.4<br />

G 22.4<br />

総計 24.6<br />

(3) C言語<br />

授業回数:8回<br />

使用教材:自主教材<br />

授業形態:個人学習<br />

授業内容:関数を利用した簡単なプログラミングとカレンダーの製作<br />

授業目標:プログラミングの作成からコンパイルそして実行する流れの習得とともに,頭の中で考えて<br />

いるプログラムをC言語を用いて実行することができる能力の育成.<br />

項 目:<br />

・ C言語のねらいを,<br />

① 実行ファイルを作成するまでの手順の習得<br />

② printf,if 文(条件文),変数,for 文(繰り返し)の扱いの習得(特に,if 文は3学期グリッ<br />

ドコンピューティングで用いられるため重要項目である)<br />

③ 与えられた問題や自ら取り組もうとする問題を分析し,条件文で表現する能力の育成<br />

と定めた.多くの生徒はテキスト(指示)通り作業をこなすことはできたが,自ら利用することはで<br />

きなかった.その主な原因として,<br />

① 授業時数が8回と言う極めて少ない時間であったこと<br />

② 基本的な事柄に対する例題が多く,生徒にとって動機付けが十分でなかったこと<br />

が挙げられる.来年度,この点を十分考慮して授業時数の配分を行なわねばならない.


・ 基本的な事柄を理解することができた生徒は,C言語に興味を持もち,例題を拡張しようと試みて<br />

いた.特に,カレンダーの製作に関し,約3割程度の生徒はいろいろと工夫を凝らして取り組むこ<br />

とができていた.<br />

・ 授業の最後にテストを行なった.その度数分布が,以下のグラフである.<br />

人数<br />

140<br />

120<br />

100<br />

80<br />

60<br />

40<br />

20<br />

0<br />

13<br />

118<br />

101<br />

14 14<br />

得点分布<br />

6<br />

19 16 20<br />

27<br />

15 14<br />

0-4 5-9 10-14 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50<br />

点数<br />

クラス 平均<br />

A 19.2<br />

B 21.8<br />

C 12.0<br />

D 13.2<br />

E 19.1<br />

F 15.1<br />

G 22.5<br />

総計 17.6<br />

2学期中間試験と比較し,学力差が一段と明確なものとなっている.printf と if 文を中心に出題<br />

したが,このグラフから理解できるように多くの生徒はその基本的な事柄は習得しているものの,<br />

新しい問題に対しどのように対処すればよいのか分からなかったようである.また,テスト問題の<br />

提示,内容にも問題があり,一つの問題を分割した構成になっているため,最初の問題でつまずけ<br />

ば,最後の問題まで間違いとなってしまった.今後,どのような問題作成を行なえばよいか検討す<br />

る必要がある.<br />

・ 多くの生徒は,コンパイルすることが始めてであったため,実行ファイルを実行することにより,<br />

文字が出力されただけで,とても感動していた.<br />

・ 3学期より行なわれるグリッド教育において,if 文に関する説明を多く行い,完全に習得すること<br />

ができるような時間配分を行なった.<br />

4-2-3.3学期授業内容(授業回数14回)<br />

(1)班分け パズル(6人の作家)<br />

授業回数:1回<br />

使用教材:自主教材<br />

授業形態:グループ学習<br />

授業内容:班分け,パズル(6人の作家)<br />

授業目標:1つの問題を互いに相談しながら解く<br />

項 目:これから行なう単元内容を見ながら,その単元内容に即した責任者を決定する.また,ボー<br />

ナス問題を,責任者を中心に解法していく.<br />

実践報告:<br />

・ 班は,座っている席で適当に決めたため,生徒同士の相性がうまくいくかどうかとても心配してい<br />

た.その後,1件,いじめている生徒とそのターゲットとなる生徒が同一の班があることが判明し<br />

た.今回のケースの場合,このグループ学習を始めたのが3学期であったため,周囲の者も良くそ<br />

のことを知っていたため,両者をうまく取り持ってくれたため,返ってよい効果を得たように考え<br />

られる.また,グループの一人の者がある発見,問題解決を行なったような場合グループ全員の得


点となる形式(グループ得点形式)を取ったので,いじめられている生徒が発見すれば,いじめてい<br />

る生徒にも得点があるため,互いに協力し合ったように考えられる.<br />

・ パズルの問題は,とても生徒の食いつきがよく,他の授業でもその問題を考えているくらい熱中し<br />

ていた.解答が出た場合,グループの生徒にも披露することも良かったように考えられる.<br />

・ どの生徒がどの問題を受け持つか,今後の得点とも絡んでくるため真剣に取り組むことができた.<br />

(2)エクセルによるレジ問題<br />

授業回数:2回<br />

使用教材:自主教材<br />

授業形態:グループ学習<br />

授業内容:レジ問題の意味<br />

授業目標:レジ問題を解決するためにはどのような情報が必要か,どのように解決すると良いか,問題<br />

形成<br />

項 目:普段目にするレジのようすから,問題を形成していき,何が問題なのか明確にする.また,<br />

ある程度,問題が形成すると,ある仮説のもとにシミュレーションを行い処理速度を求め,<br />

どのような配列が最適か検討する.<br />

実践報告:<br />

・ 内容がとても具体的なものであったため,何が問題なのか,何を問題としているのか詳細について<br />

の説明は極力控えるような授業を行った.そのため,1時間目はグループ内で討論しあって検討す<br />

るような体制となった.教師としては,とても不安感を抱く授業となった.しかし,2時間目から<br />

は教師に頼ることをあきらめ,理解している生徒がリーダー役となって説明するようになった.<br />

・ 理解しだすと,本当に集中して取り組むようになった.最後のレポートにも書かれているように,<br />

どのような振り分けが最適なのか,ゲーム感覚でとても楽しむ取り組むことができた.この単元に<br />

かける授業時数も,2時間は少なすぎ,グリッドの授業の動機付けともかかわるため4時間くらい<br />

は来年度必要であろう.<br />

・ 並ばせ方の例をヒントとして与えたが,この点に関しても授業時数を増やすことが可能であれば,<br />

生徒に考察させると良いように思う.<br />

(3)人間グリッド<br />

授業回数:1回<br />

使用教材:自主教材<br />

授業形態:グループ学習<br />

授業内容:レジ問題の考え方と仮定をPCに移植<br />

授業目標:レジ係を node,購入物を演算子,客を数式,客の振り分け係を head node に対応つけを理解<br />

し,どの数式をどの node へ振り分けると最も速く処理を完了することが可能であるのか考<br />

察する.また,ネットワークを通し数式が送られることを体験する.この実習では,数式の<br />

流れ方を理解するため,演算をPCにさせるのではなく,生徒自らが計算し問題の内容をよ<br />

り深めさせる.<br />

項 目:<br />

・ 与えられた数式を,ネットワークを利用して,異なる node へ振り分けることが初めての経験でとて<br />

28


も驚きつつ,楽しく取り組んでいた.<br />

・ その処理速度を公表することにより,より一層ゲーム感覚で取り組むようになったが,どの数式を<br />

どの生徒に振り分けるか決めるなど,グループ内で話し合って最速値を求めるようになった.コミ<br />

ュニケーションがグループ内で,活発に行なわれるようになってきた.<br />

(3)グリッドコンピューティング<br />

授業回数:10回<br />

使用教材:自主教材(添付資料1)<br />

授業形態:グループ学習<br />

授業内容:この単元では,「グリッド」の概念を「グリッドコンピューティング」と言う教材を通して理解<br />

する.<br />

授業目標:グリッドの意味を理解すると同時に,その考え方を身近なものへ適応する能力を育成する.<br />

項 目:<br />

・ 実習問題は,problem1~problem10 まで事前に公表され,各問題内の数式の数が順に増加していく.<br />

生徒は,それらの問題を見ながら,どの数式をどの node で処理するのか,あらかじめ各 node の特<br />

性とこれから送信しようとする数式の特性を考慮しながらスケジューリングを作成し,その処理時<br />

間を評価する.最後の授業においては,公表されていない問題を3題与え,生徒が作成したスケジ<br />

ューラーを利用して処理速度を競い合わせる.<br />

・ 数式の数が少ないような場合は,処理速度が速い node に多くの数式を配信するようなスケジューリ<br />

ングを組む傾向が見られた.そのうち,数式の数が多くなり生徒たちは,処理速度が速い node ばか<br />

りに多くの仕事をさせるよりも,遅い node にもその特性にあった数式を送信する方が全体の処理速<br />

度が速くなるということに気がついてくる.どうして,処理速度が遅い node にも仕事をさせたほう<br />

が良いのか,生徒にとってとても不思議に感じたところであったように思う.やがて,相談しあい<br />

ながら,数式の特性と node の特性を見比べながらスケジューリングを行なうようになってきた.ま<br />

た,最後の時間にまだ与えられていない3つの問題にチャレンジするため,汎用性のあるスケジュ<br />

ーリングを作成するようになった.<br />

・ 一方,教師は,この現象が社会生活,組織においてどのような現象と対応つけることが可能である<br />

のか,具体的に多くの例<br />

① どのような組織であっても,その人材の特性を見ながら適材適所へ配分することにより,不要<br />

である人材はいない.したがって,配分する能力に大きく依存する.<br />

② 今ある資源を最も効果的に利用するには,処理速度が速い者も,処理速度が遅い者も,仕事が<br />

終わる時間がなるべく同じになるように配分すると良い.<br />

③ 現在,作業しているグループ自体がグリッドを考慮した構成になっている.<br />

・ 配分の仕方を少しでも変化させれば,処理速度が大きく変化することに感動していた.<br />

・ この単元も授業時数が足りなかったようで,もう少し十分に時間をかけることにより,もっと深く<br />

考察できたように思う.来年度に向けての課題であろう.<br />

29


4-3.教育内容からみた実践報告と考察<br />

① 問題分析,問題形成と問題解決<br />

これから取り組む問題は,身近に起こる現象を,単に現象として捉えるのではなく,その現象がな<br />

ぜ起こるのか深く洞察することを根底におく.また,その思考する過程を身につけさせることもねら<br />

いとする.<br />

【授業を終えて】<br />

・ 生徒の思考過程<br />

Step.1 レジ問題において<br />

(1) どのような情報が必要であるか考察する<br />

(2) レジ係の能力と客の購入物により,いろいろな並ばせ方があることに気がつく<br />

(3) 処理時間の計算の仕方を学習する(問題形成)<br />

(4) 与えられた並ばせ方に対する処理時間を計算する(問題解決)<br />

Step.2 レジ問題と数式の関連において<br />

(1)レジ問題を数式問題に置き換える(問題形成)<br />

Step.3 人間グリッドにおいて(手動配信人間計算)<br />

(1) アプリケーションのコマンドと利用方法の理解<br />

(2) レジ問題と数式問題の関連の理解<br />

(3) 問題点の理解<br />

(4) 試行錯誤を繰り返すことにより,問題点が明確となる(問題形成)<br />

(5) 問題数が少数であるため問題解決に至る<br />

Step.4 グリッドコンピューティング(自動配信自動計算)<br />

(1) 問題数が多い場合どのようにすると問題が解決するか<br />

(2) 増加することに関する問題の理解<br />

(3) node が持っている特性を見ながら,どの数式をどの node へ配信をすればよいか,最初は<br />

適当に job を配信<br />

(4) 徐々にシミュレーションを繰り返しながら,問題(処理速度を速くすることが問題)を理解<br />

する(問題形成)<br />

(5) 最初は適当に配信していたが,やがて,考察するようになる(グループ討論が活発となる)<br />

(6) 一つ一つ式を見ながら配信していたが,やがて,どのような数式のグループが与えられた<br />

としても対応できる,汎用性のあるスケジューリングを考察するようになる<br />

(7) 考察しては検証し,考察しては検証する繰り返し<br />

(8) 処理速度が速い node に多くの job が偏るスケジューリング<br />

(9) 数式の数が少ない場合は,(10)の方法が効果的であるが,配信する数式の数が多くなれば,<br />

処理速度が遅い node へも配信するほうが効果的であるということに気がつく このこと<br />

は,生徒にとって意外に感じ取られた<br />

(10) やがて,どの node へも処理時間が同じになるように配信すればよいことに気が付く<br />

(11) しかし,その考え方をどのようにスケジューリングに活かせばよいか,次のレベルの試行<br />

錯誤が始まる<br />

30


・ このように,テーマは一つであるが,それぞれの段階に応じて,問題形成,問題解決のレベルがあ<br />

がっていくところがこのカリキュラムの特徴である.<br />

・ Step4 の最初の部分までは,ほぼ全員理解できたように思うが,最後の汎用性のあるスケジューリ<br />

ングまで考察した生徒は全体の 3 分の 1 程度に終わった.この原因として,「3 学期の授業時間が少<br />

ないこと」,「授業の進行方法が確立されていなかったため,生徒が問題と感じるところが把握でき<br />

ていなかったこと」が挙げられる.<br />

・ 「今まで問題にしていなかったことを,考えるようになった」と言う感想も見受けられ,問題意識の<br />

向上したように考えられる.<br />

・ 考える姿勢が,身につくようになったように感じられる.<br />

・ 教育評価に関し,テストを行わず課題提出としたが,テーマを幅広く捉えることができるため,と<br />

ても評価することが困難であった.<br />

② レジ問題の認識<br />

なるべく生徒にとってイメージを作りやすい,身近に起こる事象を題材に取り上げた.各生徒が店の<br />

オーナーとなり,目の前にいる客をどのレジへ誘導すれば,最も効率よく会計を処理することが可能で<br />

あるか考察させる.<br />

(1) 効率よく処理するには,どのような情報が必要であるのか<br />

(2) どのような誘導方法があるのか<br />

(3) エクセルを用いて,(2)で考察した方法を用いた時の処理時間を計算させる.<br />

【授業を終えて】<br />

・ 授業中の様子やレポートから,ゲーム感覚が功を奏したのか,エクセルを用いて生徒は夢中になっ<br />

て取り組むことができた.<br />

・ グループ学習ということで,最初のうちはグループといっても余り効果は無いと考えていたが,教<br />

材が適していたためか,互いに相談しながらとても熱心に取り組むことができた.<br />

・ グループ分けのとき,席の順で決めたため,いじめ問題にとても心配していた.その中,あるグル<br />

ープにおいて,学年のいじめアンケートから,いじめられている生徒といじめている生徒がたまた<br />

ま同じグループであることが発覚した.休みがちのいじめられている生徒は,授業も遅れがちであ<br />

ったが,隣の生徒がそれをフォローするようになった.また,グループ点と称して,グループで成<br />

果を挙げればグループ全員にボーナス点を与えると言うシステムにしたため,真意のほどはわから<br />

ないが,両者は友人を介しコミュニケーションをとっていた.<br />

・ グループ学習の効果は,この授業においてとても効果的であるように考えられる.<br />

③ 数式の配信の仕方の利用方法(検索方配信,汎用型配信)<br />

数式を客,演算子を購入物,node をレジ係,head node を店長(生徒各人)とみなし,スケジューリン<br />

グを作成させる.そのうち,2種類の配信方法があることに気がついてくる.<br />

(1) どの数式をどの node へ送信すると,効率よく処理することが可能であるか.送信しようと<br />

する全式が既知である時,事前にどの数式をどの node へ送信すればよいのか見当をつけて送信<br />

する方法.<br />

(2) どのような式があるのか分からないときであっても,手元にある情報をもとに,最善の送<br />

信をする方法.<br />

野球において,(1)の場合は,ピッチャーが事前にバッターへどのような球を投げるか予告している場<br />

31


合で,(2)の場合は知らされていない場合が挙げられる.<br />

仕事(処理速度)が速い者へ多くの仕事を,仕事の遅い者へは少ない仕事を振り分ける方法より,仕事<br />

の終了時間が同じように振り分けていけばよいことに気づかせる.やがて,みんなで協力して行う振り<br />

分けの方が,優れていることに気がついてくる.1 人たりとも,不必要な人材はいなく,問題は各人の<br />

能力を見抜き,振り分けるリーダーの采配が大きな影響を及ぼしている.資源は短期間に変えることは<br />

不可能であるが,組み合わせは変えることは可能である.<br />

内容が身近に起こる具体的な例であったため,問題が把握しやすく,昨年,一昨年と3年生の選択で<br />

実践を行なってきたが,理解度と考察面に関しては若干の隔たりは見受けられるが,問題形成,問題解<br />

決能力と言う面から見た場合,両者に大きな差異は見受けられなかったため,この教材は,幅広い学年<br />

で利用することが可能であることが分かった.<br />

また,トピックスが数多く含まれているため,生徒や教師の興味に応じて深い教育に発展することも<br />

可能であることも分かった.<br />

【授業を終えて】<br />

・ レジ問題から数式へ移行するとき,大きな壁<br />

(1) 客に数式,購入物に演算し,レジに node が対応<br />

(2) C 言語を用いてスケジューリングを作成する<br />

(3) アプリケーションの利用方法<br />

(4) 数式の割り当て<br />

が立ちはだかり,生徒の理解を拒む.多くの生徒はグループメンバーや教師の助けにより,これら<br />

を乗り越えていくが,興味の薄い少数の生徒(クラスに2,3名)は,自分でスケジューリングする<br />

楽しさまでたどり着くことはできなかった.時間数不足が大きな原因であると考えられる.<br />

・ ねらいとしている汎用性のあるスケジューリングに取り組めたのは,全体の3分の1程度で,残り<br />

は検索型スケジューリングに取り組んでいた.これは,関数の意味と問題の意味の理解が浅かった<br />

ためで,来年度もう少しこの点に関して詳細に説明することが必要である.<br />

④ グリッドコンピューティングのセキュリティーとスケジューリングの概念<br />

今まで利用してきたアプリケーションは,グリッド環境が整っているので,利用することが可能<br />

であることを理解させる.そこで,グリッド環境の概念を理解させる(このとき,詳細までは触れな<br />

いでおく).<br />

【授業を終えて】<br />

・ 人と人,会社と会社,組織と組織の信頼関係は,どのように形成されているのか,例を挙げて説明<br />

した.<br />

・ 別の node にプログラムが配信され,答えが帰ってくるには,互いの node 同士が信頼関係で結ばれ<br />

ているから,自由に計算式を配信することが可能である.そこで,grid-proxy-init の意味を説明<br />

した.<br />

・ それ以上の説明を行おうとしたが,授業の雰囲気を見て棄却した.<br />

⑤ グリッドとグリッドコンピューティングと社会組織の関連性を理解する<br />

グリッドの言葉の意味とコンピュータおよび社会組織への適応に関し,どのような関連性がある<br />

のか理解する.グリッドの考え方を大きく捉え,その考え方をコンピュータに採用したものがグリ<br />

32


ッドコンピューティングであることであり,この考え方は,社会組織にも適応することが可能であ<br />

ることに着目させる.<br />

【授業を終えて】<br />

・ この内容に関し,具体的な例をいくつも取り上げて説明したことにより,生徒は理解しやすかった<br />

ようである.<br />

・ 現実において適応する現象が多くあり,生徒の今まである組織に関する考え方に大きな影響を及ぼ<br />

す結果となった.生徒は,クラブ,家族,日直,学友会,就職後,そして,あらゆる組織において<br />

(1) 問題解決と問題形成<br />

(2) 仕事の配分の方法(適材適所に分配,互いの信頼関係の大切さ,コミュニケーションの重要<br />

性)<br />

の考え方を,活かしていきたいと考えている.<br />

33


4-4.教育方法<br />

(1) グループを中心に,互いに討論できる形式を取った(このグループ討論自体が,グリッドとなって<br />

いる).<br />

(2) テキストは,各授業において必要な分だけ配布した.<br />

(3) 授業形態は,実習主体とした.<br />

(4) 評価はグループ評価と,グリッドに関する個人の考察を中心とした.<br />

【全体のグリッドコンピューティングの授業を終えて(生徒のレポートを読んで)】<br />

授業を終了し,レポートを読みカテゴライズしようと試みた.この授業の目的でもあるように,「個々<br />

の意見を持ち自ら考え,自ら判断し…」とあるので仕方がないことであるが,それぞれがこの授業に対<br />

する自分の意見を持ったため,カテゴライズできないほどさまざまな意見や感想が出てきた.したがっ<br />

て,採点の基準も,意見や感想が正しいことか,そうでないのかと言う点に着目すると,実際に時間が<br />

経たなければ分からないことであり,また,感想に関しては,各自がそのように考えたのだから仕方が<br />

ないようにも感じた.そこで,とにかくレポートの採点基準を授業展開の初めに設定したように,「授<br />

業で感じた,または,学習した内容を,いかに理論の展開できたのか」と言う点に着目し採点すること<br />

にした.<br />

(1) エクセルを利用したレジ問題に関する取り組みに関して<br />

・ 非常に問題定義が明確なため,生徒はパズルのように感じ,熱心に取り組むことができた.<br />

・ 並び方が異なれば,待ち時間がとても異なることを数値の上で体験することが出来た.<br />

・ 待ち時間をなるべく少なくすることが,客に対する大きなサービスとなることが学習できた.日ご<br />

ろ,そのようなことに,気がついていなかったようである.<br />

(2) グリッドコンピューティングを用いたレジ問題とその拡張に関して<br />

・ この件に関して,レポートにあるようにとても理解することに時間が要しられた.つまり,レジ問<br />

題と数式との関連がなかなか理解できなかったようである.<br />

・ C 言語の扱いに関しても,まだ,その扱いが不十分であったことも理解を妨げた要因である.<br />

・ 数値を少し変化させるだけで,処理時間に大きく影響を及ぼすことは,レジ問題において客の待ち<br />

時間に大きく影響を及ぼす,すなわち,客に対するサービスに大きな影響を及ぼすことに気がつい<br />

たことは,自らが経営者であると言う設定であるので,生徒の考察する意欲を向上させた.多くの<br />

生徒は,4時間目くらいよりがむしゃらに食いついてくるようになった.<br />

・ そのような状態になって,もう一度,グリッドとグリッドコンピューティングの概念を説明したこ<br />

とは,グリッドを理解する上でとても効果的であった.<br />

・ 生徒のレポートより,この授業を通し,各自学習した内容,捉え方はさまざまであるが,共通して<br />

言えることは,考える力・合理的な思考力(問題形成と問題解決能力),洞察力,合理的な判断能力,<br />

社会に対する問題意識と社会に対する適応性,そして,互いのコミュニケーション能力の向上が挙<br />

げられる.これは,私たちが想定していた教育目標,目的を達成,否,それ以上の教育効果が得ら<br />

れたように考えられる.<br />

・ グリッドコンピューティングの概念を拡張し,グリッドと言う概念に拡張することにより生まれた,<br />

「適材適所と信頼関係とコミュニケーション」,「今ある資源を最大限活かすには,どのようにすると<br />

34


良いか」と言う点に関し,現段階において,この取り組みは成功したように考えられる.<br />

・ この教育は,グリッドコンピューティング環境で行なうことにより,最大の効果が得られるが,単<br />

純なネットワーク環境においても生徒は試行錯誤が可能であるといえよう.<br />

・ 3年選択生と1年全員を比較すると,考察に余り大きな変化が見られず,この教材の特徴はどの学<br />

年においても,適応することが可能であることが分かった.<br />

(3) 今後の取り組み<br />

・ 今年度で,生徒のつまずくところ,理解できるところなど,大体の傾向が分かったので,この経験<br />

を活かし,カリキュラムと内容のブラシュアップを図りたい.<br />

・ 一方で,300名中数十名はとても情報教育に興味を持ち,3年生で開講される選択授業を希望す<br />

る生徒が出てきた.この生徒の希望を裏切らないように,選択授業の教材作成を行なう必要がある.<br />

・ 教育評価と,この授業自体の評価に関し,定量的評価を試みる必要がある.<br />

35


5.研究開発の評価<br />

5-1.プロジェクト全体の評価<br />

今年度のプロジェクトでは,17 年度に実施した 3 年選択授業での反省を元に,カリキュラム・テキ<br />

ストの見直し,グリッド環境の変更,グリッド教材の改善に取り組み,2 学期に 3 年選択クラス,3 学<br />

期に 1 年生 313 名全員に対して実践授業を行った.また,グリッドに関する情報収集のためのセミナー,<br />

翌々年度に予定している 1 年次にグリッド教育を受けた生徒向けの 3 年選択授業でのグリッドを題材に<br />

したカリキュラムの検討も行った.<br />

今年度,1 年生全員を対象にした実践授業を行うにあたって,昨年度の 3 年選択クラスの授業でわか<br />

った問題点以外に,1 年生向けにグリッド教材をより使いやすくすること,大勢の生徒を相手にする教<br />

師の手間を極力減らす環境作りなどが課題としてあがっていた.これには,十分な時間をかけて準備に<br />

取り組み,グリッド環境,テキストに関しては模擬授業により事前検証を行うなど万全を期して授業に<br />

臨んだ.その結果,大きな問題が発生することなく計画通りに授業を進行することができた.残念なが<br />

ら,興味をあまり持てずスケジューリングのプログラミングの楽しさまでたどり着けなかった生徒が1<br />

クラス中 2,3 名でてはしまったが,これは時間数不足が一番の問題となっていると思われる.全体の 9<br />

割以上が実際に C 言語でスケジューリングのプログラムを作成し課題を解くことができたこと,グリッ<br />

ドの概念は現実の社会に発展的にあてはめられる問題解決手法であることへと生徒の理解を導けたこ<br />

とから,今年度の目標としていた 1 年生全員の授業への適用は成功したと考えている.<br />

本研究では,グリッドをテーマに取り入れたカリキュラム・テキスト・教材を開発して実践授業を行<br />

ったが,目的はグリッドコンピューティングの習得だけでなく,グリッドの概念を理解し,発展的に現<br />

実の問題解決に応用できるようになることであった.この点に関し,授業の終わりに生徒の理解度を測<br />

るために提出させたレポートから分析したところ,授業を通して各自学習した内容,捉え方はさまざま<br />

であるが,共通して言えることは,考える力・合理的な思考力(問題形成と問題解決能力),洞察力,判<br />

断能力,社会に対する問題意識と社会に対する適応性,そして,互いのコミュニケーション能力の向上<br />

が見られ,狙った効果がでていることがわかった.また,グリッド概念の発展から,「適材適所と信頼<br />

関係とコミュニケーション」,「今ある資源を最大限活かすには,どのようにすると良いか」と言った意<br />

識付けを生徒に持たせることもできたこともわかっており,この点から本プロジェクトの取り組みは成<br />

功したと考えている.<br />

36


5-2.カリキュラム,教材の評価<br />

本プロジェクトでグリッド教材を開発するにあたり,特に注意した点は,「グリッド教材が生徒の学<br />

習意欲の向上に役立つものであるか?」,「1 年生全員(300 名)に対して適正な教材であるか?」,「実<br />

社会の問題解決へと生徒の意識を向けられるか?」,「グループ学習がうまく機能するか?」といったこ<br />

とであった.これらに関して,下記に考察する.<br />

・グリッド教材による学習意欲の向上<br />

グリッド教材による実習を行って一番印象的だったのは,実習が進むにつれ,生徒の 9 割以上が開始<br />

5 分前に着席,終了のチャイムが鳴っても席を立たないで熱中するようになっていったことだった.平<br />

成 17 年度 3 年選択クラスでの反省からカリキュラムを見直して,座学と実習の順番入れ替え,グリッ<br />

ド教材による実習前に考察・Excel でシミュレーションする場面を設けたことが功を奏したようで,身<br />

近に起こるレジ問題の考え方をPCへ置き換えていくという流れを理解させるのに余分な時間が必要<br />

ではあったが,徐々に問題点が明確になるにつれて生徒自らが思考し始め,生徒の意欲がどんどん上が<br />

っていくのを感じる取ることができた.<br />

・1 年生全員(300 名)に対する課題としての適正性<br />

今年度同じ教材を用いて,3年選択クラスと 1 年生全員でグリッド教材を使った授業を行った結果,<br />

問題形成,問題解決能力に関して比較すると,2つの学年でさほど差異は感じられなかった.当初,1<br />

年生では少し難しいのではと考えていたが,3年の理系希望者と比較するとやや差異はあるものの,概<br />

ね3年生の取り組みと差異無く授業を進めることができた.このことから,グリッド教材は,問題形成,<br />

問題解決能力の育成という面において,年齢差,学力差に依存しない教材であり,1 年生全体を対象と<br />

した授業で使用することに問題ないことがわかった.<br />

・実社会の問題解決への意識付け<br />

授業の後半で,グリッド概念をどのように組織へ適応させると良いか考察させるために,下記のよう<br />

な課題をレポート提出させたところ,多くの生徒たちがグリッド概念を適用できる問題であることを理<br />

解し,「問題解決と問題形成」,「仕事の配分の方法(適材適所に分配,互いの信頼関係の大切さ,コミュ<br />

ニケーションの重要性)」といった側面をレポート内で考察することができていた.生徒の今まである組<br />

織に関する考え方に大きな影響を及ぼしていることが見て取れたことから,ねらいとしている実社会へ<br />

の問題解決への意識付けに効果的に機能していると考えられる.<br />

レポート課題:<br />

(1) 今年,年賀状を出す人が減少した.もし,あなたが郵便局長ならば,この減少をどのように分<br />

析し,どのように対処するか? 下記のキーワードを用いて考察せよ.<br />

キーワード:グリッド,世代(年齢層),売上,コミュニケーション,携帯電話やPCの普及<br />

(2)人間社会や組織(クラブ,バイト,家族など)に対し,今回学習したグリッド(グリッドコンピュー<br />

ティング)の考え方をどのように応用することが可能であるか考察せよ.<br />

37


・情報教育におけるグループ学習の有効性<br />

グリッド教材であることから複数の PC を使って実習を進める必要があり,必然的に班単位でのグル<br />

ープ学習といった手法をとることとなったのだが,授業を始める前の段階ではいじめの問題など若干の<br />

不安を持っていた.しかし,実際の授業においては,予想以上にグループ内で活発な討論が行われ,グ<br />

リッド教材はグループ学習の課題として非常に適していることがわかった.これには,グループで仕事<br />

の分担を行なうこと自体がグリッド概念と結びついている点,PCという機材がグループ内での活発な<br />

議論を導き出す要素となっている点があると思われる.<br />

6.研究開発実施上の問題点及び今後の課題など<br />

6-1.問題点<br />

グリッド教材を使った授業に対しては大半の生徒が意欲的に取り組むことができたものの,興味をあ<br />

まり持てずにプログラミングの楽しさにたどり着けなかった生徒が 1 クラス中に2,3名ほど出ていた.<br />

これに関しては,時間数の不足が一番の問題と思われる.グリッド教材を動かすためには PC が同時に<br />

6台必要となることから,1年生全員を対象としている中では放課後に自由に PC を使用させるといっ<br />

たことも難しく,1台の PC 上で擬似的にグリッド教材を動作させる環境を作成するなど,追加の教材<br />

開発を検討する必要性が上がってきている.<br />

6-2.今後の課題<br />

(1)カリキュラム,テキストの見直し<br />

今年度で,生徒のつまずくところ,理解できるところなど,大体の傾向が分かったので,この経験を<br />

活かし,カリキュラムとテキストの内容のブラシュアップを図りたい.<br />

(2)平成 20 年度の 3 年選択クラス向け教材の準備<br />

今年授業を行った 1 年生全員(313 名)のうち数十名の生徒はとても情報教育に興味を持ち,既に3<br />

年生で開講される予定の選択授業を希望する生徒が出てきている.この生徒たちの希望を裏切らないよ<br />

うに,2 年後の選択授業に向けて,教材作成などの準備を行なっていく必要がある.<br />

(3)研究成果の普及について<br />

プロジェクト開始当初より,研究成果を他校でも活用してもらえるようにと,できるだけ追加のハー<br />

ドウェアやソフトウェアを購入せずに準備できる環境を検討すること,新たに特殊な知識を学ばなくて<br />

も情報教諭が取り組めるようなマニュアルを整備することを目的の一つとして進めてきており,今年度<br />

マニュアルの検証を行い環境構築が他校で可能であることまで確認したが,まだ実際に他校で実践授業<br />

を行ってもらうところまではできていない.今後,実際に取り組んでもらえる学校を見つけ,グリッド<br />

教材を利用した授業を行ってもらうと共に,追加で必要なマニュアルなどの整備を進めていきたい.<br />

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6-3.ICTスクール 2006 へ参加して<br />

2006 年度には 3 名の生徒が ICT スクールに参加させていただいたが,全員が情報技術の習得に対し<br />

て以前にも増して意欲的になり,非常によい刺激を受けたことがうかがえる.<br />

●参加クラス: 推薦[和田クラス]<br />

生徒名:境井<br />

ICT スクール 2006 で作成したゲームを元に作成したシューティングゲーム『キッチン大戦』を夏休<br />

み明けの校内文芸コンクールに出品.ICT スクール時のネットワーク対戦機能は再現不可だったが,ゲ<br />

ームとしての動作は完成しており,1年生ながら佳作に選ばれた.<br />

11 月の文化祭においても ICT スクール 2006 についての説明とともに自らの作品を展示し,内外に向<br />

け成果報告を行った.1年生情報科におけるC言語やグリッドコンピューティングなどの課題にも積極<br />

的に取り組み,優秀な成績を残した.今後2年間の高校生活においてもプログラム作成,コンピュータ<br />

関連の資格取得などを通じて技術を修得し,活かしていきたいとのこと.<br />

生徒名:中野<br />

ICT スクール 2006 で作成したゲームを元に作成した戦略シミュレーションゲーム『俺の野望』を夏<br />

休み明けの校内文芸コンクールに出品.プログラムの動作や操作性に難があり,賞は逃したが,この教<br />

訓を活かし今後は完成度の高いプログラムを心がけるよう指導した.<br />

11 月の文化祭においては ICT スクール 2006 についての説明とともに自らの作品を展示し,内外に向<br />

け成果報告を行った.1年生情報科におけるC言語やグリッドコンピューティングなどの課題にも積<br />

極的に取り組み,優秀な成績を残した.今後2年間の高校生活においてもプログラム作成,コンピュー<br />

タ関連の資格取得などを通じて技術を修得し,活かしていきたいとのこと.<br />

●参加クラス:公募[並木クラス]<br />

生徒名:戸谷<br />

一般公募枠として参加した.本来,C++に興味を持っていたが,この授業をきっかけに,Java<br />

にも興味を持ち,いろいろな言語に興味を持つようになった.また,それらを利用して,昨年の文化祭<br />

において3Dによる学校案内ソフトを作成し,大いに学校にも貢献した.大学の併設校の為,1月に理<br />

工学部情報科学科に合格が決まり,それと同時に,大学で学習活動を始めている.今回の,ICTスク<br />

ール参加により,本人の能力と共に,学習に対する意欲が著しく向上した.<br />

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8.転載について<br />

本報告書内の写真については,冊子,ホームページへの転載不可.<br />

添付資料2『生徒のレポートより』の内容については,冊子,ホームページへの転載不可.<br />

7.添付資料<br />

添付資料として,下記のものを添付する.<br />

添付資料1: テキスト『2006 年度 1 年生教科「情報」2学期 グリッドコンピューティング』<br />

添付資料2: 『生徒のレポートより』<br />

添付資料3: マニュアル『グリッド教材実行環境構築ガイド』<br />

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