<strong>JAEA</strong>-<strong>Review</strong> <strong>2010</strong>-014 題での地下水流動解析を実施した。その結果,整合的な結果が得られ,改良した解析コードの妥当性を 確認した。 参考文献 1) Trefry, M.G.; Muffels, C. (2007). "FEFLOW: a finite-element ground water flow and transport modeling tool". Ground Water 45 (5): 525–528. 4.1.4 地下水の地球化学に関する調査研究 (1) 実施概要 2008 年度は,第 1 段階で構築した地球化学概念モデルの妥当性を確認することおよび研究坑道掘削 が地球化学環境に与える影響を把握することを目的とした採水調査を実施した。採水調査は,1)研究坑 道掘削時の切羽および研究坑道内に設置した集水リング,2)深度 200m 予備ステージから掘削したボー リング孔(07MI07 号孔),3)地上から掘削した既存ボーリング孔(MSB-2 号孔および MSB-4 号孔)で実施 した。これらの採水調査の結果を踏まえ,地球化学概念モデルの妥当性評価と更新のための手法につ いて検討した。また,今後の研究坑道掘削に伴う地下水水質分布の変化を予測することを目的として, 地下水流動状態の変化を考慮した地下水水質分布に関する数値解析を実施した。その他,第 3 段階で 予定している物質移動に関する調査研究の基盤情報となる地下水中の金属元素の存在状態に関する 研究,地層処分で考慮される時間スケールでの地球化学環境の変遷を把握するための地質環境の長 期挙動に関する研究のうち地下水水質の変遷に関する研究を実施した。 (2) 実施内容 1) 調査試験 ① 立坑壁面および集水リングを用いた坑内湧水の採取・分析 壁面湧水は掘削直後の擾乱が少ない地下水の地球化学特性の把握,集水リングでは研究坑道掘削 の影響を経時的にとらえることを主目的として,それぞれでの湧水を対象とした測定・分析を実施した。採 水の頻度は,切羽湧水が切羽観察時の 1 回,集水リングでは設置後から 6 箇月間は 1 回/週,それ以 降は 1 回/月である。測定・分析項目は,物理化学パラメータ(水温,pH,酸化還元電位,電気伝導度, 溶存酸素濃度),蛍光染料濃度,主要成分,同位体(δ18O,δD, 3H, 14C)(年 2 回)などである。2008 年 度においては,壁面湧水は換気立坑の 1 箇所のみで採取できた。壁面湧水の採取箇所が少ない理由と して,主立坑では坑道沿いに認められる低透水性の断層,換気立坑ではプレグラウトによる湧水量の低 下などが考えられる。他方,主立坑および換気立坑に設置した集水リングでは,複数の区間から湧水を 採取した。それらの分析結果について,pH を図 4.1.4-1 に,塩化物イオン濃度を図 4.1.4-2 に示す。 分析の結果,pH については,主立坑および換気立坑ともに深度 200m 以浅では約 pH9 の値を示した。 これは,これまでの東濃地域の地下水の pH が 8~9 と報告 1) されていることと整合的である。ただし,集水 リングから採取した試料は,コンクリートライナーとの接触や脱ガスの影響により pH が原位置の値から変 化している可能性がある。深度 200m 以深については,主立坑および換気立坑ともに pH は 10 以上の値 を示し,換気立坑の深度 265m に設置された集水リングから採取した試料の pH は約 12 を示した。深度 200m を境に深部で pH が高い値を示す理由としては,コンクリートライナーやグラウト材との接触が考えら れる。特に換気立坑では,深度 200m から 220m の区間でグラウトが実施されており,深度 200m 以深の 集水リングより採取した地下水が深度 200m 以浅やグラウトを実施していない主立坑に対して高い pH を 示すことから,グラウト材と接触した地下水が広い範囲に浸透している可能性がある。塩化物イオン濃度 については,換気立坑では深度に対して上昇する深度依存性を示した。他方,主立坑では換気立坑と 異なり,深度 194m の集水リングから深度 264m の集水リングの区間において,塩化物イオン濃度が約 10mg/ℓ減少する傾向を示しており,深度に対して負の相関を示す。主立坑と換気立坑における塩化物イ - 58 -
<strong>JAEA</strong>-<strong>Review</strong> <strong>2010</strong>-014 オン濃度分布の違いや主立坑で塩化物イオン濃度が深度に対して正の相関を示さない原因としては, 両立坑における地下水流動特性の違いや集水リングへの浅部地下水の流入量の違いなどが考えられる。 ただし,現状ではそれらの原因は明確ではなく,今後は水質モニタリングを継続し,検討していく。 図 4.1.4-1 集水リングより採取した地下水の pH - 59 -