<strong>JAEA</strong>-<strong>Review</strong> <strong>2010</strong>-014 生じた。また,深度 300m 研究アクセス坑道での掘削に伴う湧水により最大約 40m の全水頭の低下が生じ た。また,深度 300m 研究アクセス坑道側の連結部の発破で約 85m の全水頭の低下が生じた。 なお,すべての区間において換気立坑側での作業に伴う全水頭の変化は確認されなかった。 本孔では主に主立坑側での作業による影響が確認でき,主立坑深度あるいは,湧水深度が観測区間 の深度に近づくに従い全水頭の変化が生じ,主立坑掘削深度が観測区間より深くなると全水頭の変化 が小さくなる傾向を示していると考えられる。 07MI09 号孔においては,5 区間で観測を実施しており,データ回収に伴うトラブル等による欠測期間 (2008 年 4 月 1 日~4 月 5 日,2008 年 4 月 11 日~4 月 15 日および 2009 年 1 月 13 日~1 月 20 日) が生じた。また, No.5 では深度 300m 換気立坑側ボーリング横坑掘削時の作業(探り削孔)において急 激な全水頭の低下が生じ,水圧モニタリング装置口元からの湧水が確認できなくなったため,2008 年 12 月以降は水圧モニタリング装置口元の圧力センサーによる連続観測からロープ式水位計による定期観 測へと観測方法を変更している。 観測区間の結果を整理すると,換気立孔深度が約 250m に達するまでは全ての観測区間で全水頭の 変化は見られずほぼ一定の全水頭であった。この間,茨城県沖地震の発生の日時から約 4 箇月間に全 水頭が長期的に約 1m 上昇し,その後に緩やかに低下するという傾向が見られた。この茨城県沖地震に よる影響は,次章以降に述べる研究所用地内のボーリング孔の MSB-3 号孔および広域地下水流動研 究で掘削されたボーリング孔の DH-2 号孔でも確認できている。 換気立坑深度約 250m 以深においては,全ての観測区間で深度 200m 換気立坑側ボーリング横坑で のボーリング孔掘削に伴う湧水による全水頭の低下(最大約 13m)が生じた。また,No.4~5 では換気立 坑での発破による全水頭の変化が確認でき,No.4 では約 28m,No.5 では約 7m の全水頭の低下が生じ た。 なお,主立坑の掘削,深度 300m 研究アクセス坑道の掘削作業に伴う全水頭の変化は全ての観測区 間で確認できなかった。 本孔においては主に換気立坑側での作業に伴う全水頭の変化が確認できる。なお,換気立坑深度約 250m に達するまで全水頭の変化が生じなかった理由の一つとしては,立坑掘削時のプレグラウトにより 掘削に伴う影響(湧水)が抑制されたためと考えられる。 各ボーリング孔で得られた水頭の変化を整理すると,05ME06 号孔では主立坑の掘削と主立坑沿いに 分布する断層の南西側(換気立坑深度 200m ボーリング横坑)での作業に伴う変化,07MI08 号孔では主 立坑の掘削と主立坑沿いに分布する断層の北東側(研究アクセス坑道)での作業に伴う変化,07MI09 号 孔では換気立坑での作業による全水頭の変化が確認できた。また,茨城県沖地震による影響は主立坑 南西側のボーリング孔である 07MI09 号孔(および MSB-3 号孔深部,DH-2 号孔)でのみ確認された。こ れらのことから,主立坑沿いに分布する断層は研究所用地周辺の地下水流動を規制していることが確認 された。 また,研究坑道近傍の全水頭は 07MI09 号孔 No.5 区間を除き,いずれも 2009 年 3 月 31 日時点の立 坑掘削深度(標高-100m 程度)よりも高い全水頭であることが確認できる。このことから,研究坑道ごく近 傍の狭い範囲において大きな動水勾配が生じている可能性が考えられる。よって,研究坑道掘削を考慮 した地下水流動解析を実施する際には,ここで観測された水圧分布を再現するために人工構造物による 影響を含むスキン効果を考慮する必要性があると考えられる。 - 44 -
<strong>JAEA</strong>-<strong>Review</strong> <strong>2010</strong>-014 図 4.1.3-8 研究坑道での作業と全水頭の変化(05ME06 号孔 2008/5/7~2008/5/20) - 45 - 主立坑および換気立坑で は,掘削が同時期に実施 されている。 ただし,05ME06 号孔の全 水頭の変化を確認すると, 主立坑側の発破のタイミン グで全水頭が変化してい る。 茨城県沖地震では,全水 頭が上下に微動している が,地震発生時刻を境に 長期的な自然変動の傾向 が変わる(トレンドの変化) といった傾向は見られな い。