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自閉症の「発見」と精神分析/加地雄一 - 東京成徳大学

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東 京 成 徳 大 学 研 究 紀 要 ― 人 文 学 部 ・ 応 用 心 理 学 部 ― 第 19 号 (2012)<br />

Ovidiusの 時 代 までさかのぼることができる。それでは、 今 日 の「 自 閉 症 」はいつ「 発 見 」されたの<br />

だろうかこの 点 について 次 に 述 べる。<br />

6.Early infantile autism (Kanner, L., 1943, 1944)<br />

Kanner, L. は1943 年 に 今 日 の「 自 閉 症 」について、 初 めての 症 例 報 告 を 行 った(Kanner, L.,<br />

1943)。 彼 は「これまでに 報 告 されてきたことのない 非 常 にユニークな 症 状 を 呈 する 一 群 の 子 どもた<br />

ち」( 邦 訳 p.10)11 例 ( 男 性 8 名 、 女 性 3 名 )を 報 告 し、この 子 どもたちを「 情 緒 的 交 流 の 自 閉 的 障 害<br />

(Autistic Disturbances of Affective Contact)」と 呼 んだ。そして 翌 年 の1944 年 に、この 障 害 を「 早<br />

期 小 児 自 閉 症 (Early infantile autism)」と 名 づけた(Kanner, L., 1944)。Kanner, L.(1943, 1944)<br />

が 用 いたAutism(Autistic)という 言 葉 は、 先 述 のBleuler, E.(1911)のAutismusが 由 来 である。<br />

Kanner, L.(1943)は、 自 閉 症 の 子 どもたちの 特 徴 として「 極 端 な 自 閉 的 な 孤 立 」、「 自 発 的 構 文 の<br />

欠 如 と 反 響 言 語 的 構 成 」、「 同 一 性 保 持 への 強 迫 的 願 望 」などを 挙 げている。これらの 特 徴 につい<br />

て、Kanner, L.(1943)が“CASE 1”として 最 初 に 報 告 した“Donald T.”の 症 例 に 沿 って 見 てい<br />

く。<br />

極 端 な 自 閉 的 な 孤 立 :「 部 屋 の 中 に 入 れられると、 彼 は 人 を 無 視 して、 物 、それも 回 すことのでき<br />

る 物 のところにすぐ 行 った。どうしても 無 視 できない 命 令 や 行 動 は 迷 惑 でありじゃまであり 不 快 に 思<br />

われた。しかし 彼 は 干 渉 する 人 にはけっして 腹 を 立 てなかった。 彼 はじゃまな 手 を、あるいは 彼 のブ<br />

ロックを 踏 みつけた 足 を 怒 って 押 しのける」( 邦 訳 p.14)。Kanner, L.(1943)はこの 特 徴 を「 極 端 な<br />

自 閉 的 な 孤 立 」と 表 現 し、「 分 裂 病 的 な 子 どもやおとなのように、 初 めに 存 在 していた 関 係 からの 離<br />

脱 」でもなく、「 以 前 存 在 していた 参 加 からの『ひきこもり』」でもなく、「 初 めから、 外 からやっ<br />

てくるものはなるべく 無 視 してかえりみず、 閉 め 出 そうとする」ものとしている( 邦 訳 p.44)。<br />

自 発 的 構 文 の 欠 如 と 反 響 言 語 的 構 成 :「 話 しかけられ 聞 いたことばをおうむ 返 ししているようで、<br />

聞 いたままの 人 称 代 名 詞 を 用 い、その 抑 揚 までまねた」( 邦 訳 p.13)。Kanner, L.(1943)はこれを<br />

「 自 発 的 構 文 の 欠 如 と 反 響 言 語 的 構 成 」と 呼 び、「じゃまされないでいたいという 欲 求 」の 強 さと、<br />

「 外 部 からもたらされること、 外 的 なあるいは 内 的 な 環 境 を 変 えること」が「 恐 るべき 侵 入 」である<br />

とみなされるためであるとした( 邦 訳 p.47)。<br />

同 一 性 保 持 への 強 迫 的 願 望 :「 自 発 的 な 行 動 にははっきり 限 界 がある。 笑 いながら 歩 き 回 り、 指 を<br />

常 同 的 に 動 かし、それらを 空 中 で 交 差 させた。 頭 を 左 右 に 振 り、3 拍 子 でつぶやいたりした。 回 せる<br />

ものなら 何 でも 喜 んで 回 した。 床 に 物 を 投 げつづけ、その 音 を 楽 しんでいるようだった。 彼 は、ビー<br />

ズや 棒 やブロックをさまざまな 系 列 の 色 にわけて 配 列 した。これらの 行 為 の 一 つが 完 成 したときはい<br />

つでも、きいきい 声 をあげて 飛 び 跳 ねた。それ 以 外 のことはいつも( 母 親 からの) 指 示 を 要 し、 彼<br />

が 夢 中 になる 限 られたものごと 以 外 に 自 発 的 に 行 動 することはなかった」( 邦 訳 pp.12-13)。Kanner,<br />

L.(1943)はこうした 特 徴 を「 同 一 性 保 持 への 強 迫 的 願 望 」( 邦 訳 p.48)と 呼 び、「 外 観 と 位 置 を 変<br />

えない 物 は 同 一 性 を 保 持 しており、 子 どもの 孤 立 をじゃまするおそれがまったくないので、 自 閉 的 な<br />

子 どもにすんなりと 受 け 入 れられる」( 邦 訳 p.50)としている。<br />

Kanner, L.(1943)が 挙 げたこれらの 特 徴 は、 今 日 のDSM(アメリカ 精 神 医 学 会 が 定 めた『 精 神<br />

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