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『サンシャイン 63』 構成・演出:高山明 - フェスティバル/トーキョー

『サンシャイン 63』 構成・演出:高山明 - フェスティバル/トーキョー

『サンシャイン 63』 構成・演出:高山明 - フェスティバル/トーキョー

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問 合 せ:<strong>フェスティバル</strong>/<strong>トーキョー</strong> 実 行 委 員 会 事 務 局 〒170-0001 東 京 都 豊 島 区 西 巣 鴨 4-9-1 NPO 法 人 アートネットワーク・ジャパン 内 TEL 03-5961-5202/FAX 03-5961-5207 制 作 担 当 :クラウトハイム・ウルリケ u-krautheim@anj.or.jp F/T 広 報 担 当 : 及 位 (のぞき)、ハッセル toiawase@anj.or.jp お<br />

Port B ツアー・パフォーマンス<br />

<strong>『サンシャイン</strong> <strong>63』</strong><br />

構 成 ・ 演 出 : 高 山 明<br />

3 月 4 日 ( 水 )~8 日 ( 日 )/11 日 ( 水 )~15 日 ( 日 )[ 全 10 日 間 ]<br />

於 : 池 袋 周 辺 地 域<br />

演 劇 の 枠 を 超 えた、まちあるきパフォーマンス。<br />

第 二 次 世 界 大 戦 後 、 巣 鴨 プリズン 跡 地 に 建 てられた<br />

池 袋 サンシャイン 60 周 辺 を 5 人 一 組 の 観 客 が 巡 る。<br />

参 加 者 一 人 一 人 がつくる、 日 本 の 戦 後 と「いま」をたどる「 時 のツアー」。<br />

Matsushima Kohei (c)


史 的 な 場 所 中 心 に、 戦 後 の63 年 をたどる「 時 のツアー」が 始 まる。ツアーの 作 り 手 は5 人 一 組 となった 観 客 一 人 一 人 。 約 3 時 間 半 かけてサンシャイン60を 巡 る16ヶ 所 を「 旅 」し、そして 最 終 訪 問 地 へ…。 建 設 当 時 は 東 洋 一 の 高 さを 誇 ったサンシャイン60。それが60 階 建 ての 高 層 ビルであることは 周 知 の 事 実 でも、 歴<br />

級 戦 犯 7 名 を 含 む60 名 が 処 刑 された 巣 鴨 プリズン 跡 地 に 建 てられたことはあまり 知 られていない。そのサ ンシャイン60が、ツアーを 通 じて 的 オブジェへと 異 化 され、“ 戦 後 史 のランドマーク”へと 変 容 していく。 1946 年 から2009 年 まで、63 年 間 の 歴 史 が、 参 加 者 一 人 の 記 憶 と 想 起 によって 紡 がれるだろう。 A<br />

加 者 は、5 人 一 組 となって 池 袋 の 街 を 散 策 する。 受 付 で 渡 され 参<br />

地 図 を 頼 りに 赴 く 先 は、 誰 かの 住 まいだったり、ホテルの 一 室 だ ったり、 巨 大 書 店 の 一 角 だったりと 色 々だが、すべてに 共 通 してい るのはどこの 窓 からもサンシャイン60が 見 えること。 参 加 者 はサ た<br />

眺 めながら、 巣 鴨 プリズンについてのインタビュー や 東 京 裁 判 に 関 するドキュメントの 朗 読 を 聴 いたり、 部 屋 の 住 人 と サンシャインを 背 景 に 記 念 写 真 を 撮 ったり、 記 憶 や 忘 却 ンシャイン60を<br />

議 論 したり。 みんなで<br />

公 演 の“ 舞 台 ”は 都 市 である。Port Bは、 舞 台 装 置 で 都 市 を 創 りだすのではなく、 実 際 に 存 在 する 都 市 を「 演 劇 公 演 」という 枠 組 みの 中 に「 引 用 」する。 日 常 的 に 接 している 都 市 が、 観 客 の“ツ この<br />

参 加 によって 普 段 と 異 なる 様 相 を 呈 し、 非 日 常 的 な「もの」に 変 容 していく。「ツアー・パフォーマンス」は、 その 様 子 を 観 客 一 人 一 人 に 体 験 してもらうことで 都 市 を「インスタレーション」の 場 に 変 える 新 しいタイプの 演 劇 アー”<br />

作 品 について<br />

<strong>『サンシャイン</strong><br />

<strong>63』</strong>、<br />

』、そして<br />

そして『 雲 。 家 。』。Port B による 2 作 品 再 創 造 ・ 同 時 再 演 。<br />

サンシャイン 60/ 戦 後 史 のランドマーク<br />

台 公 演 にとどまらず、 演 劇 を 越 境 する 試 みで 注 目 を 集 める 高 山 明 とPort B(ポルト・ビー)。これまでの 活 動 の 集 大 成 として、<strong>フェスティバル</strong>/<strong>トーキョー</strong>で 代 表 作 2 作 品 を 再 創 造 ・ 同 時 再 演 する。 互 いに 呼 応 し 対 を 成 す 両 作 品 、その 一 方 が“ツアー・パフォーマンス”<strong>『サンシャイン</strong><strong>63』</strong>。2008 年 3 月 に<strong>『サンシャイン</strong>62』として 発 表 舞<br />

話 題 作 が、 一 年 のときを 経 てさらに 深 化 し、 再 び 池 袋 の 街 に 展 開 される。 された<br />

二 次 世 界 大 戦 後 、 巣 鴨 プリズン 跡 地 に 建 てられた 池 袋 サンシャイン60。 戦 後 日 本 の 出 発 点 とも 言 えるこの 第<br />

である。<br />

1


らは、 演 劇 に 関 して 再 考 を 促 す。しかも、 都 市 まるごとを 演 劇 作 品 の 舞 台 装 置 として 用 いるという 方 法 で。こ の 大 胆 さ! 実 験 的 な 演 劇 とやらは、とかく 理 屈 が 先 行 しがちで 退 屈 なものが 多 いなか、 彼 らは 一 線 を 画 す。 新 川 貴 詩 ( 美 術 & 演 劇 評 論 家 ) 彼<br />

刊 SPA! 2008 年 3 月 11 日 号 このツアー・パフォーマンスには、いわゆる 演 じ 手 はいない。 私 たち 観 客 は 受 動 的 に 観 るのではなく、 場 の 外 週<br />

観 に 出 かける。そして 舞 台 を 観 る 代 わりに 街 を 読 み、 新 しい 発 見 をする。 扇 田 昭 彦 ( 演 劇 評 論 家 ) に<br />

年 6 月 号 Port Bの 作 品 <strong>『サンシャイン</strong>62』は、 第 二 次 世 界 大 戦 という 暗 い 時 代 を 扱 う。 公 演 の 中 心 に 立 つのは、 東 京 の ダンスマガジン2008<br />

市 部 、 池 袋 にあるビル「サンシャイン60」である。〔…〕 多 くの 人 々を 引 き 寄 せるこの 複 合 施 設 をその 暗 い 前 史 と 結 び 付 ける 者 は 誰 もいない。〔…〕Port B 作 品 の 参 加 者 たちは、「サンシャイン60」の 周 囲 を 巡 る 旅 に 送 り 出 される。そして 旅 の 中 で 彼 らは、この 建 造 物 と 何 度 も 何 度 も 向 き 合 うことになるのである。 都<br />

ウルス・シェトリ(ジャーナリスト)<br />

チューリッヒ 新 聞 (Neue Zuercher Zeitung)2008 年 7 月 9 日 深 く 歴 史 を 掘 り 起 こし、 互 いに 絡 み 合 う 豊 かな 内 容 をそなえた 高 山 明 の<strong>『サンシャイン</strong>62』は、 現 代 における 最 新<br />

興 味 深 い 作 品 の 一 つである。 高 山 は 日 本 の 歴 史 の 中 から、 罪 を 負 った 過 去 の 破 片 を 飛 び 散 らせる。そしてこ の 記 憶 のかけらたちを 自 分 だけの 想 起 へと 変 容 させることが、 一 人 一 人 の 参 加 者 に 委 ねられるのである。 クラウス・デアムーツ( 演 劇 批 評 ) も<br />

ドイツ 新 聞 (Sueddeutsche Zeitung)2008 年 8 月 7 日 南<br />

全 体 が、われわれに 対 して、 具 体 的 な 空 間 において 歴 史 を 思 考 させようとそそのかしていると 言 えるのではないだろうか。つまり、ヴィリリオが 書 いたように 歴 史 と 地 理 の 欠 如 を 経 験 電 脳 世 界 に 住 むわれわれが、 歴 史 と 地 理 を 奪 還 しようとするとき、あるいは、そのような 試 みを 演 劇 という 表 象 の 形 式 の 中 に このプロジェクト<br />

めて 引 き 寄 せようとするとき、このプロジェクトで 試 みられている 戦 略 が 極 めて 有 効 な 表 現 の 形 式 であるだろ うと 私 には 思 われるのである。 鴻 英 良 ( 演 劇 批 評 ) 改<br />

劇 評<br />

「シアターアーツ」 第 35 号 、2008 年<br />

2


年 生 まれ。1994 年 より 渡 欧 。 演 出 助 手 として 研 鑽 を 重 ね、 多 数 の 舞 台 、オ ペラ 等 に 携 わりながら 演 出 ・ 戯 曲 執 筆 行 う。 帰 国 後 2002 年 ユニットPort B(ポ ルト・ビー)を 結 成 。 演 劇 を 専 門 としない 表 現 者 たちとの 共 同 作 業 によって、 既 存 1969<br />

演 劇 の 枠 組 を 超 えた 前 衛 的 な 作 品 を 次 々と 発 表 。 創 作 の 拠 点 「にしすがも 創 造 舎 」がある 池 袋 ・ 巣 鴨 一 体 では、サンシャイン60が 象 徴 する 日 本 戦 後 史 を 巡 の<br />

年 東 京 にて 結 成 。 高 山 明 がドイツで 培 った 演 出 メソッドを 叩 き 台 に、 演 劇 以 外 の 活 動 に 携 わるアーティス トや 職 人 を 中 心 に 演 劇 的 実 験 を 繰 り 返 す。 活 動 は 多 岐 にわたる。「 演 劇 ( 的 )テクスト」に 取 り 組 んだ 舞 台 には、ブレヒトの 第 一 詩 集 『 家 庭 用 説 教 集 』を 素 2002<br />

とした『シアターΧ・ブレヒト 演 劇 祭 における10 月 1 日 /2 日 の 約 1 時 間 20 分 』(03 年 )、H.ミュラー『ホラテ ィ 人 』(05 年 )、E.シュレーフ『ニーチェ』(06 年 )、E.イェリネク『 雲 。 家 。』(07 年 )がある。 他 方 、 高 島 平 をフィールドワークし 団 地 で 暮 らす 人 達 を 舞 台 に 招 き 入 れた『Museum: Zero Hour 〜J.L.ボルヘ 材<br />

都 市 の 記 憶 〜』(04 年 )や、 隅 田 川 をフィールドワークした 成 果 と 謡 曲 『 隅 田 川 』をクロスさせた スと<br />

〜 隅 田 川 と 古 隅 田 川 の 行 方 ( 不 明 )〜』(05 年 )はドキュメンタリー 性 の 強 い 舞 台 である。 近 年 は 更 に、 実 際 の 都 市 をインスタレーション 化 する“ツアー・パフォーマンス”なるものを 企 画 。「おばあちゃん の 原 宿 」 巣 鴨 地 蔵 通 りを 舞 台 にした『 一 方 通 行 路 』(06 年 )、 東 京 観 光 の 代 名 詞 はとバスを 使 東 京 /オリ 『Re:Re:Re:place<br />

年 )、 池 袋 サンシャイン60の 周 囲 を5 人 一 組 の 参 加 者 が 巡 った<strong>『サンシャイン</strong>62』(08 年 )は、 各 種 メディアに 取 り 上 げられるなど 好 評 を 博 した。 ンピック』(07<br />

アーティスト・プロフィール<br />

構 成 ・ 演 出 : 高 山 明 Akira Takayama<br />

Port B(ポルト<br />

ポルト・ビー<br />

ビー) http://portb.net/<br />

部 作 として、 舞 台 作 品 『 雲 。 家 。』、ツアーパフォーマンス<strong>『サンシャイン</strong>62』、 演 劇 的 インスタレーション『 荒 地 』を 発 表 し、 演 劇 界 のみならず 現 代 アートの 文 脈 からも 大 きな 注 目 を 集 めた。 現 実 の 都 市 や 社 会 に 存 在 する 記 憶 や 風 景 、メディ る3<br />

引 用 し 再 構 成 しながら 作 品 化 する 手 法 は、「 来 るべきもの」としての 現 代 演 劇 の 可 能 性 を 提 示 する 試 みとして、 国 内 はもとより 海 外 の<strong>フェスティバル</strong>や 美 術 展 でも 大 きな 注 目 と 期 待 を 集 めている。 アなどを<br />

また、“ 演 劇 的 インスタレーション”と 称 される 作 品 の 系 譜 に、 旧 豊 島 区 立 中 央 図 書 館 における『 荒 地 』(08 年 )、 旧 ソウル 駅 駅 舎 を 使 った『 東 西 南 北 』(08 年 )、 茨 城 県 取 手 市 井 野 団 地 での『 団 地 大 図 鑑 』(08 年 )があり、これ らは 現 代 美 術 の 領 域 においても 注 目 を 集 めた。<br />

3<br />

活 動 においても「 演 劇 とは 何 か」という 問 いが 根 底 にあり、「きたるべきもの」としての 現 代 演 劇 を 追 求 している。 いずれの


10 「シアターΧブレヒト 的 ブレヒト 演 劇 祭 における10 月 1 日 /2 日 の 約 1 時 間 20 分 」 構 成 ・ 演 出 (シアターΧ)<br />

「ベルリン 演 劇 祭 ・ 若 手 演 劇 人 の 為 の 国 際 フォーラム」 参 加 2003 9 『Museum: Zero Hour ~J.L.ボルヘスと 都 市 の 記 憶 ~』 構 成 ・ 演 出 (シアターΧ) 2004 12 インスタレーション『inter-view』 制 作 (ギャラリー・アップリンク)<br />

3 H.ミュラー 作 『ホラティ 人 』 構 成 ・ 演 出 (シアターΧ)<br />

5 ベルリン「Intransit 演 劇 祭 」より 招 聘 、パフォーマンス 作 品 の 構 成 ・ 演 出 ( 世 界 文 化 の 家 ) 2005 年 12 月 『Re:Re:Re: place ~ 隅 田 川 と 古 隅 田 川 の 行 方 ( 不 明 )~』 構 成 ・ 演 出 (アサヒ・アートスクア)<br />

E.シュレーフ 作 『ニーチェ』 演 出 (BankArt NYKホール) 2006 一 方 通 行 路 ~サルタヒコへの 旅 ~』 構 成 ・ 演 出 ( 巣 鴨 地 蔵 通 商 店 街 )<br />

にてE.イェリネク 作 『 雲 。 家 。』 (にしすがも 創 造 舎 特 設 会 場 )<br />

11 はとバス・ツアー・パフォーマンス『 東 京 /オリンピック』 構 成 ・ 演 出 ( 東 京 全 域 ) 2007 東 京 国 際 芸 術 祭 にて『 東 京 /オリンピック』 再 演<br />

3 ツアー・パフォーマンス<strong>『サンシャイン</strong>62』 構 成 ・ 演 出 ( 池 袋 周 辺 地 域 )<br />

6 演 劇 的 インスタレーション『 荒 地 』 構 成 ・ 演 出 ( 旧 豊 島 区 立 中 央 図 書 館 ) 2008 年 10 月 ソウルの 現 代 美 術 展 「プラットフォーム」にてインスタレーション『 東 西 南 北 』 制 作 ( 旧 ソウル 駅 )<br />

2008 年 10 月 「 取 手 アートプロジェクト」にてインスタレーション『 団 地 大 図 鑑 』 制 作 ( 取 手 井 野 団 地 )<br />

高 山 明 および PortB 作 品 上 演 歴<br />

4


貴 詩 ( 美 術 & 演 劇 評 論 家 ) Port B(ポルト・ビー)の 作 品 は 演 劇 なのか、それとも 美 術 なのか? 川<br />

問 いは 不 毛 であり、 彼 らの 活 動 をカテゴリーで 分 け 隔 てることにあまり 意 義 は 見 出 せない。というのも、 演 劇 であり 美 術 でもあるのがPort Bの 表 現 だからである。2002 年 に 出 家 の 高 山 明 を 中 心 に 結 成 された 彼 らは、 次 のように 自 らを 紹 介 している。 この<br />

演 劇 とは 何 か」という 問 いが 根 底 にあり、「きたるべきもの」としての 現 代 演 劇 追 求 している』( 註 )。 この 一 文 には、 演 劇 と 呼 ばれる 表 現 形 式 をあらためて 検 証 し、 演 劇 の 再 定 義 を 図 ろうとする 彼 らの 果 敢 な 姿 『「<br />

がはっきりと 現 れている。その 一 方 で、 彼 らの 表 現 は 美 術 の 流 れの 中 でも 確 実 に 位 置 づけられる。とりわけ、 彼 らがここ 数 年 取 り 組 んでいる「ツアー・パフォーマンス」と 称 する 一 連 の 作 品 はこのことが 顕 著 だ。 ツアー・パフォーマンスとは、 都 市 まるごとをインスタレーション 化 し、Port Bが 企 てたルートに 従 って 観 客 が 街 勢<br />

歩 き 回 る 試 みである。2006 年 に 巣 鴨 地 蔵 通 りで 発 表 した『 一 方 通 行 路 ~サルタヒコへの 旅 ~』を 皮 切 りに、 翌 年 実 際 のはとバスを 利 用 し 主 に1964 年 の 東 京 五 輪 ゆかりの 建 物 を 巡 る『 東 京 /オリンピック』、そして08 年 3 月 には<strong>『サンシャイン</strong>62』を 実 施 した。その 発 展 的 再 演 にあたるのが、 今 回 の<strong>フェスティバル</strong>/<strong>トーキョー</strong>におけ を<br />

本 稿 では、 前 作 <strong>『サンシャイン</strong>62』を 軸 に、 美 術 シーンの 潮 流 を 踏 まえつつ Port Bについて 語 りたい。 る<strong>『サンシャイン</strong><strong>63』</strong>である。そこで<br />

Bによる<strong>『サンシャイン</strong>62』は、5 人 1 組 となった 観 客 が 地 図 を 頼 りに 池 袋 一 帯 を 巡 るツアー・パフォーマン スである。 廃 校 やホテルの 一 室 、 老 朽 化 したアパート、 巨 大 書 店 、 小 さな 喫 茶 店 など、その 場 からサンシャイン 60が 眺 められる 十 数 カ 所 の 場 所 を 約 3 時 間 かけて 歩 き 回 り、そして 先 に 進 むにつれて、かの 超 高 層 ビルが 多 様 Port<br />

意 味 を 孕 んでいることに 喚 起 されるといった 内 容 である。 こうした 試 みは、 美 術 でいうサイトスペシフィック・アートに 通 じる。サイトスペシフィック・アートとは、 所 の 特 性 を 重 んじ、 周 囲 の 景 観 や 地 域 の 歴 史 、 風 土 なども 積 極 採 り 入 れた 作 品 のことである。このような 作 品 傾 な<br />

は50 年 代 頃 から 現 れたが、 日 本 では90 年 代 以 降 に 加 速 的 に 展 開 され、 廃 工 場 や 空 きビル、 競 馬 場 、 営 業 中 の 商 店 などありとあらゆる 場 所 で、その 場 に 応 じた 作 品 が 設 置 される 機 会 が 繰 り 広 げられてきた。 向<br />

Bの<strong>『サンシャイン</strong>62』は、 戦 後 日 本 の 暗 部 と 驚 異 的 な 経 済 成 長 を 象 徴 するサンシャイン60という 建 物 のみに 焦 点 があてられているわけではない。 訪 問 先 のひとつひとつが 丁 寧 に 選 ばれ、さらにはその 場 に ふさわしい 仕 掛 けが 巧 みに 設 定 されている。つまり、 十 数 カ 所 におけるサイトスペシフィック・アートの 集 積 によ そしてPort<br />

大 きなサイトスペシフィック・アートとして 構 成 されているのである。このように 複 合 って、<strong>『サンシャイン</strong>62』という<br />

特 別 寄 稿<br />

演 劇 であり 美 術 でもあるPort Bの 作 品 世 界 新<br />

体 的 な 性 格 を 持 つ 本 作 は、さまざまな 顔 つきを 備 える 池 袋 の 街 とまさに 呼 応 する。したがって、 場 所 の 特 色 を 的 確 に 読 み 取 った 上 で 作 品 と 街 とを 一 体 化 させた 本 作 は、 紛 れもなくサイトスペシフィック・アートであると 考 え られる。 また、 最 近 では 美 術 と 街 を 結 びつけ、 街 の 随 所 に 設 置 した 作 品 を 巡 るクルージング 型 の 展 覧 会 が 相 次 ぐ。08<br />

5<br />

の 秋 に 限 っただけでも、「 金 沢 アートプラットホーム2008」や「カフェ・イン・ 水 戸 2008」、 横 浜 の「 黄 金 町 バザー ル」、「Akasaka Art Flower 08」など 街 ぐるみの 展 覧 会 が 各 地 で 目 白 押 しだった。なお、やはり08 年 の 秋 に 開 催 年


展 覧 会 「 取 手 アートプロジェクト2008」では、 彼 らは 多 くの 美 術 家 たちに 混 じってインスタレーション 作 品 を 発 表 したほどだ。そしてPort Bのツアー・パフォーマンスは、こうした 趣 向 の 展 覧 会 と 共 通 点 がある。それは、こ<br />

種 のクルージング 型 展 覧 会 が 地 図 を 片 手 に 観 客 が 街 を 巡 る 設 定 であることだけに 限 らない。 先 ほど 述 べた された<br />

複 数 の 訪 問 先 の 集 積 がひとつの 作 品 として 成 り 立 つという 点 において、 彼 らの 作 品 は 展 覧 会 的 な 性 格 を 備 えていることも 指 摘 しておきたい。 さらに<strong>『サンシャイン</strong>62』は、 観 客 参 加 型 アートの 観 点 からも 語 ることができる。 従 来 の 美 術 作 品 はアーティスト とおり、<br />

手 によってつくられ、 観 客 はそれを 鑑 賞 するという 一 方 向 的 な 関 係 にすぎなかった。だが、やはり90 年 代 以 降 、 アーティストと 観 客 が 共 同 で 作 品 制 作 に 携 わるといった 双 方 向 的 なスタイルが 増 えていった。 本 作 も 同 様 に、 観 の<br />

は 積 極 的 に 作 品 に 関 わり、 主 体 的 な 行 動 も 求 められる。というのも、 本 作 のツアーの 間 、5 人 1 組 の 観 客 には それぞれの 役 割 が 与 えられ、 各 自 が 作 業 を 担 うことによって 初 めて 本 作 は 成 り 立 つ 仕 組 みとなっているからだ。 よって 本 作 は、 観 客 はただの 鑑 賞 者 ではなく、 個 々がつくり 手 の 一 人 である。そのうえ、 観 客 は 出 演 者 とも 化 客<br />

筆 者 が 池 袋 を 巡 ったときのこと──。 明 るい 時 間 帯 に5 人 の 男 女 でラブホテルから 出 た 矢 先 に、 通 りすがり の 青 年 に 好 奇 心 に 満 ちた 眼 差 しで 目 を 向 けられてしまった。さしづめわれわれは、 特 殊 な 性 嗜 好 の 持 ち 主 集 団 だと 思 われたに 違 いない。 青 年 の 呆 然 とした 表 情 は、いまも 忘 れられない。つまり、 本 作 では 観 客 さえも 見 られ す。<br />

立 場 となる。Port Bは、つくり 手 と 受 け 手 の 垣 根 を 軽 々と 越 えると 同 時 に、 見 る/ 見 られるといった 関 係 に 揺 さぶりをかけるのだ。 る<br />

昨 今 の 美 術 動 向 に 基 づいても、Port Bの 作 品 は 十 分 に 語 りうる。 実 際 、 彼 らの 活 動 は 演 劇 界 のみ ならず 美 術 界 からも 注 目 され、 先 述 した 展 覧 会 の 他 にも、 出 品 依 頼 が 相 次 ぐ。これは 美 術 の 観 点 からとらえて も、 彼 らの 表 現 が 他 の 美 術 家 たちに 比 べ 群 を 抜 いているからだろう。 このように<br />

劇 と 美 術 が 交 差 する 点 に 位 置 する 表 現 ──それがPort Bの 作 品 世 界 なのである。 ( 註 )Port B 公 式 サイトより 引 用 演<br />

川 貴 詩 ( 美 術 & 演 劇 評 論 家 ) 1967 年 生 まれ。 早 稲 田 大 学 第 一 文 学 部 卒 業 、 同 大 学 院 修 士 課 程 ( 情 報 通 信 専 攻 ) 修 了 。 美 術 ジャーナリストとして 新 聞 や 雑 誌 に 現 代 アートを 中 心 に 文 章 を 執 筆 するほか、 展 覧 会 企 画 や 学 校 教 員 、ワークショップ 講 師 などを 務 める。 編 著 書 に『 明 和 電 機 会 社 新<br />

内 』、『 小 沢 剛 世 界 の 歩 き 方 』ほかがある。 案<br />

6


成 ・ 演 出 地 図 作 製 構<br />

源 製 作 技 術 音<br />

ツアー・サポート<br />

・ドラマトゥルク 製 作 ( 初 演 ) 制<br />

催 主<br />

山 明 蓮 沼 昌 宏 高<br />

賀 神 雅 裕 、 高 山 明 井 上 達 夫 、 宇 賀 神 雅 裕 、 郷 田 真 理 子 宇<br />

上 達 夫 、 猪 股 剛 、 宇 賀 神 雅 裕 、 郷 田 真 理 子 、 萩 原 ヴァレントヴィッツ 健 、 蓮 沼 昌 宏 、 林 立 騎 井<br />

立 騎 Port B 林<br />

<strong>フェスティバル</strong>/<strong>トーキョー</strong><br />

キャスト/スタッフ<br />

スタッフ<br />

7


場 所 池 袋 周 辺 地 域<br />

http://festival-tokyo.jp ぷれいす( 電 話 03-5468-8113( 平 日 11:00-18:00) 電 子 チケットぴあ0570-02-9999 (Pコード 予 約 ) http://pia.jp/t ※<strong>『サンシャイン</strong><strong>63』</strong>と『 演 劇 / 大 学 09 春 』は 対 象 外 イープラスhttp://eplus.jp ※<strong>『サンシャイン</strong><strong>63』</strong>と『 演 劇 / 大 学 09 春 』は 対 象 外 <strong>フェスティバル</strong>/<strong>トーキョー</strong>(HPのみ)<br />

指 定 席 の 場 合 開 演 時 間 に 遅 れたお 客 様 はご 指 定 のお 席 にお 座 りになれない 場 合 がございます。<br />

未 就 学 児 童 のご 入 場 はお 断 りさせていただきます。 ・ 受 付 開 始 及 び 当 日 券 の 販 売 は 開 演 1 時 間 前 、 開 場 は30 分 前 からとなります。 ・チケットの 払 戻 、 観 劇 日 の 変 更 はできません。<br />

料 金 には 消 費 税 が 含 まれます。<br />

パフォーマンスを、 選 んで 観 る。 全 部 観 る。 誘 って 観 る。 学 生 も 観 る。 F/Tパフォーマンス<br />

<strong>フェスティバル</strong>/<strong>トーキョー</strong><br />

<strong>トーキョー</strong>ならではのお<br />

得 なチケット<br />

チケットでお<br />

楽 しみください。 ※<strong>フェスティバル</strong>/<strong>トーキョー</strong>・ぷれいすのみ 取 扱 い<br />

回 数 券 選 んで 観 る! ※お 好 きな 演 目 を 選 んでご 覧 いただけます。(<strong>『サンシャイン</strong><strong>63』</strong>は 対 象 外 ) 3 演 目 \10,000(\3,333/ 枚 )、5 演 目 \15,000(\3,000/ 枚 )<br />

演 目 ) 全 部 観 る! ※ 全 ての 演 目 をご 覧 になれます。(<strong>『サンシャイン</strong><strong>63』</strong>は 対 象 外 ) \30,000(\2,300/ 枚 ) ※F/T 回 数 券 、F/Tパス(13 演 目 )のお 取 扱 いについて ・2 月 13 日 ( 金 )18:00まで 販 売 ( 限 定 枚 数 ) ◇F/Tパス(13<br />

観 劇 演 目 ・ 日 時 が 未 定 でも 購 入 できます。<br />

購 入 後 は 演 目 ・ 時 のご 予 約 を 受 付 けます。 ・ 予 約 なしでも 当 日 ご 入 場 出 来 ます。 但 し、 満 席 時 はご 入 場 頂 けない 場 合 がございます。<br />

確 実 にご 覧 頂 くためには 演 目 ・ 日 時 予 約 をお 勧 めいたします。 ・ 回 数 券 ・パスはご 本 人 様 のみ 有 効 です。 ◇ペアチケット 誘 って 観 る! チケット2 枚 分 の 料 金 から10%OFFでご 購 入 頂 けます。 ( 例 /\4,500×2 枚 =\9,000→\8,100)<br />

名 同 日 時 観 劇 のみお 受 けいたします。 ※ 当 日 券 のご 用 意 はございません。 ※『 演 劇 / 大 学 09 春 』は 対 象 外 です。 ◇ 学 生 料 金 学 生 も 観 る! 学 生 全 演 目 \3,000( 要 学 生 証 提 示 ) 高 校 生 以 下 全 演 目 \1,000 ※ 東 京 芸 術 劇 場 中 ホール 公 演 はS 席 ※ 当 日 でもご 購 入 できます。 ※2<br />

Bセット 券 (『 雲 。 家 。』<strong>『サンシャイン</strong><strong>63』</strong>)\6,400(\3,200/ 枚 ) ※ぷれいすのみ 取 扱 ※2 月 13 日 ( 金 )18:00まで 販 売 ( 限 定 枚 数 ) ◇Port<br />

\10,000 3,333/ F/Tパス \30,000(\ 2,300/ 枚 ) 5 演 目 \15,000(\ 3,000/ 枚 ) ペアチケット 10% OFF 3<br />

公 演 /チケット<br />

情 報<br />

F/Tパフォーマンス<br />

チケット 2008 年 12 月 18 日 ( 木 ) 前 売 開 始 扱 取 ■チケット ※F/T<br />

程 3 月 4 日 [ 水 ]〜8 日 [ 日 ]、11 日 [ 水 ]〜15 日 日 ] 全 10 日 間 出 発 時 刻 11:00〜15:00<br />

5 人 一 組 のグループで20 分 おきに 出 発 [ 各 日 13 組 /65 名 ]。 日<br />

各 組 全 3 時 間 半 ほどのツアー・パフォーマンス。 チケット 料 金 一 般 4,000 円 、 学 生 3,000 円 ( 要 学 生 証 提 示 ) お 取 扱 い <strong>フェスティバル</strong>/<strong>トーキョー</strong>(HPのみ)、ぷれいす( 電 話 のみ) ・<br />

加 作 品 は 対 象 外 参<br />

8


名 称 <strong>フェスティバル</strong>/<strong>トーキョー</strong>09 春 Festival/Tokyo spring<br />

会 期 ・ 会 場 2009 年 2 月 26 日 ( 木 )〜3 月 29 日 ( 日 )<br />

京 芸 術 劇 場 中 ホール 小 ホール1・2 あうるすぽっと( 豊 島 区 立 舞 台 芸 術 交 流 センター) にしすがも 創 造 舎 東 プログラム F/Tパフォーマンス 14 演 目 F/T 参 加 作 品 5 演 目<br />

主 東 京 都 財 団 法 人 東 京 都 歴 史 文 化 財 団 F/Tプロジェクト(シンポジウム/ステーション/クルー)<br />

実 行 委 員 会 豊 島 区 、 財 団 法 人 としま 未 来 文 化 財 団 、NPO 法 人 アートネットワーク・ジャパン<br />

共 催 社 団 法 人 国 際 演 劇 協 会 (ITI/UNESCO) 日 本 センター <strong>フェスティバル</strong>/<strong>トーキョー</strong> 事 業 共 催 国 際 交 流 基 金<br />

協 賛 アサヒビール 株 式 会 社 、 株 式 会 社 資 生 堂<br />

助 成 財 団 法 人 アサヒビール 術 文 化 財 後 援 外 務 省 、 社 団 法 人 日 本 芸 能 実 演 家 団 体 協 議 会 、 社 団 法 人 日 本 劇 団 協 議 協 力 東 京 商 工 議 所 豊 島 支 部 豊 島 区 商 店 街 連 合 会 、 豊 島 区 町 会 連 合 会 、 豊 島 区 観 光 協 会 、 社 団 法 人 豊 島 産 業 協 会 、 社 団 法 人 豊 島 法 人 会<br />

宣 伝 協 力 株 式 会 社 ポスターハリス・カンパニー<br />

成 20 年 度 文 化 庁 国 際 芸 術 交 流 支 援 事 業<br />

提 携 事 業 東 京 芸 術 見 本 市 2009 平<br />

<strong>フェスティバル</strong>/トーキョ<br />

<strong>トーキョー</strong>09<br />

春 開 催 概 要<br />

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(c) Kohei Matsushima<br />

<strong>『サンシャイン</strong> <strong>63』</strong> 写 真 2<br />

ず 併 記 してください。 (c) Kohei Matsushima 必 のクレジット」を 家 真 写 「<br />

写 真 /クレジット<br />

一 覧<br />

<strong>『サンシャイン</strong> <strong>63』</strong> 写 真 1<br />

(c) Kohei Matsushima (c) Kohei Matsushima<br />

ポートレート 高 山 明<br />

(c) 不 要<br />

(c) 不 要<br />

(c) 不 要<br />

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