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二つの世界があり、第一は神様の世界で、第二は人類の世界である。人類の世界<br />
には霊魂と身体があり、身体を霊魂に上げる理由は次のようだ。神様は霊魂を守<br />
っているけれど、身体が付いていない場合はきちんと守れないのだ。だから、身<br />
体が死んだとたん、また赤ちゃんの身体を上げるわけである。そうしないと、霊<br />
魂もなくなる恐れがあり、死亡すれば、神様の力が弱まってしまう。確かに、僕<br />
は神様のために働いている。<br />
身体の付いていない霊魂は少しは音楽みたいなものである。見えなくて、ただ空<br />
気の中に流れている。音楽を聴くこともあるかもしれないけれど、たいてい音楽<br />
が聞こえることにはあまり気が付いていない。身体の付いていない霊魂は同じよ<br />
うだ。どこにいるか分かることもあるかもしれないけれど、たいてい霊魂がすぐ<br />
そばにいても、どこにいるか気が付いていないのである。<br />
94D1027TTMOが信幸の身体から別れられたことで神様はあまりに怒り、僕は<br />
「夜八時になる前に見付ける」と命令された。けれど、見つけられなくて、どう<br />
しようかと悩んでいた。<br />
もつ焼き屋の店員さんが「営業中」の看板を取り去り、閉店する準備を終えた。<br />
今夜、最後のもつ焼きを食べ、最後のビールを飲み、最後の煙草を吸った。もつ<br />
焼き屋を出たとたん、雨が滝のように降ってきた。傘をさしず、早足で地下鉄駅<br />
に向けていった。四番線から十二時過ぎに発車する電車に乗り、港湾区域に位置<br />
する塔の近くの駅に降りた。<br />
今朝、港湾区域に男性の遺体が発見され、警察によると自殺で命を絶ったという<br />
ことです。<br />
僕は自殺したわけではない。ただ僕の身体を殺し、神様は94D1027TTMOが信<br />
幸の身体に戻ってきたと思うようになんとか山嵜信幸の身体に入ってきたのだ。<br />
神様は僕の身体が死んだことは分かっているけれど、赤ちゃんの身体をもらうど<br />
ころか、94D1027TTMOの代わりに信幸の身体に入ったことには気が付いてい<br />
ない。<br />
94D1027TTMOは身体なしで神様に守ってもらわずに、迷惑がかからないとこ<br />
ろで生きているのであろう。<br />
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