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比例原則における事実と価値 - 早稲田大学リポジトリ

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202<br />

問 題 意 識 と 方 法 論 を 確 認 することは, 比 例 原 則<br />

に 付 きまとうアドホック・バランシングである<br />

という 批 判 に 対 する 強 力 な 反 論 となるだろう。<br />

彼 の 問 題 意 識 と 方 法 論 を 検 討 することは, 日 本<br />

における 比 例 原 則 の 理 解 を 深 め, 違 憲 審 査 基 準<br />

論 を 発 展 させるために 大 きな 意 義 を 持 つだろ<br />

う。<br />

2. 前 提 状 況<br />

(1) 比 例 原 則 の 根 源<br />

1949 年 制 定 のドイツ 連 邦 基 本 法 によって 連 邦<br />

憲 法 裁 判 所 が 設 置 され, 広 く 違 憲 審 査 に 従 事 す<br />

るようになるとその 審 査 手 法 が 問 題 となる。そ<br />

の 際 に, 実 効 的 に 基 本 権 を 保 障 するための 審 査<br />

手 法 として 参 考 にされたのが, 比 例 原 則 という<br />

法 原 則 であった。<br />

比 例 原 則 的 な 考 えの 萌 芽 は,18 世 紀 のプロ<br />

イセン 一 般 ラント 法 の 中 に 既 に 見 られるが<br />

[Krauss 1955: 4], 現 在 につながる 具 体 的 な 内 容<br />

を 明 らかにしたのはOtto Mayerの1895 年 の『 行<br />

政 法 』における「 警 察 権 の 限 界 」の 議 論 である。<br />

Mayerは,そこで「 警 察 権 力 は, 妨 害 が 人 に 起<br />

因 する 限 りにおいてのみ,その 当 該 個 人 に 義 務<br />

を 負 担 させるに 過 ぎない。 自 然 法 上 の 基 礎 から<br />

防 御 の 比 例 性 が 要 求 され,このことを 通 じて 警<br />

察 権 行 使 の 程 度 が 決 定 される。 法 律 が 警 察 活 動<br />

の 基 礎 となる 一 般 的 授 権 の 程 度 を 超 えて, 防 御<br />

のための 授 権 をすることを 受 け 入 れることはで<br />

きない」[Mayer 1961: 267]と 述 べ, 後 に 警 察<br />

比 例 の 原 則 と 呼 ばれる 原 則 を 明 らかにした。<br />

ここで 述 べられた 原 則 は,1931 年 にはプロイ<br />

セン 警 察 行 政 法 41 条 2 項 において「 警 察 は,で<br />

きる 限 り 関 係 人 及 び 公 衆 を 最 も 侵 害 しない 手 段<br />

を 選 択 しなければならない」という 規 定 として<br />

取 り 入 れられ (1) ,その 後 ,ドイツの 各 地 に 広 が<br />

りを 見 せる。このようにもともとは 警 察 法 上 の<br />

原 則 として, 比 例 原 則 は 使 われていた。その 比<br />

例 原 則 が, 憲 法 上 に 定 着 するのは 第 二 次 世 界 大<br />

戦 後 のことであった。<br />

憲 法 レベルでの 比 例 原 則 の 適 用 を, 戦 後 の<br />

早 い 段 階 で 主 張 していたのはKrügerやDürigで<br />

あった[Krüger 1950: 628, Dürig 1953: 370]。<br />

その 際 に 問 題 となったのが, 憲 法 上 の 比 例 原<br />

則 は 何 を 意 味 するのか,ということであった。<br />

もともとの 警 察 法 上 の 比 例 原 則 とは 上 述 のよう<br />

に 手 段 の 過 剰 性 を 戒 めるものであった[シュテ<br />

ルン 2009: 307]。しかし, 裁 判 で 国 家 行 為 の 比<br />

例 性 が 問 題 となった 場 合 , 比 例 原 則 によって 何<br />

が 許 され,または 規 制 されるのかは,それほど<br />

明 確 ではなく,それぞれの 裁 判 においてまちま<br />

ちであった[Hirschberg 1981: 5-7]。<br />

(2)Kraussによる 必 要 性 と 狭 義 の 比 例 性 の 分 離<br />

そこで 現 在 に 繋 がる 形 で 比 例 原 則 を 明 確 化<br />

し た の がRuprecht von KraussとPeter Lercheで<br />

あった。Kraussは,1955 年 の 論 文 において, 比<br />

例 原 則 と 呼 ばれているものを 必 要 性 と 狭 義 の 比<br />

例 性 に 分 けて 議 論 を 整 理 した[Krauss 1955: 14-<br />

18]。 具 体 的 には,1937 年 のダンツィヒの 警 察 行<br />

政 法 2 条 において「 必 要 な 措 置 」と「 正 当 な 評<br />

価 」を 分 けていたことから, 比 例 原 則 を「 措 置<br />

の 必 要 性 」と「 狭 義 の 比 例 性 」に 分 けられると<br />

して, 比 例 原 則 が 必 要 性 のみに 尽 きるものでは<br />

ないことを 示 した[Krauss 1955: 15]。その 後 の<br />

議 論 は, 比 例 原 則 を 部 分 原 則 に 分 けられると<br />

するこの 議 論 を 概 ね 受 け 入 れて 展 開 していく<br />

[Hirschberg 1981: 8ff.]。

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