27.12.2013 Views

比例原則における事実と価値 - 早稲田大学リポジトリ

比例原則における事実と価値 - 早稲田大学リポジトリ

比例原則における事実と価値 - 早稲田大学リポジトリ

SHOW MORE
SHOW LESS

Create successful ePaper yourself

Turn your PDF publications into a flip-book with our unique Google optimized e-Paper software.

210<br />

ものを 見 つけようとする Schlinkの 問 題 意 識 は,<br />

一 貫 したものであるいえる[シュリンク 1992:<br />

265]。<br />

もう 一 つの 重 要 な 論 点 は,Schlinkの 背 景 に<br />

ある 基 本 権 論 が 何 に 基 礎 付 けられているかで<br />

ある。 結 論 先 取 で 答 えを 端 的 に 言 ってしまえ<br />

ば, 市 民 的 法 治 国 家 論 に 基 づく 基 本 権 論 に 大 き<br />

く 影 響 を 受 けているといえる。 学 問 的 人 脈 とし<br />

ては,Schlinkは, 市 民 的 法 治 国 家 論 に 好 意 的<br />

な Böckenfördeの 下 で 助 手 を 勤 め,Habilitation<br />

もその 指 導 の 下 で 書 いている。そして 何 より 基<br />

本 権 論 の 内 容 において, 市 民 的 法 治 国 家 論 に 基<br />

づく 基 本 権 論 との 共 通 性 を 見 て 取 れる。パレー<br />

ト 最 適 としての 必 要 性 審 査 に 個 人 権 利 擁 護 の 方<br />

向 を 与 えているのは,「 原 則 として 無 限 定 な 個<br />

人 と 原 則 として 限 定 された 国 家 」[シュミット<br />

1974: 155]というSchmittに 代 表 される 市 民 的<br />

法 治 国 家 論 である (18) 。<br />

また 裁 判 所 による 価 値 判 断 を 否 定 するという<br />

点 でも 上 述 の 論 者 と 共 通 性 を 見 出 すことができ<br />

る[Schmitt 2011; Forsthoff 1959]。<br />

6. 比 例 原 則 における 事 実 と 価 値<br />

(1) 憲 法 上 の 比 例 原 則 における 事 実 と 価 値<br />

Schlinkの 狭 義 の 比 例 性 不 要 論 とは,ある 国<br />

家 行 為 が, 適 合 性 審 査 と 必 要 性 審 査 を 通 過 し<br />

た,すなわちこれ 以 上 パレート 改 善 する 余 地 が<br />

ないという 意 味 でパレート 最 適 である 場 合 , 他<br />

にパレート 最 適 な 選 択 肢 があったとしても,そ<br />

れを 理 由 として 違 憲 という 判 断 をくだすべきで<br />

はないというものである。 事 実 問 題 ならば, 正<br />

確 に 把 握 できたか 否 かが 問 題 となるので, 議 会<br />

の 認 識 が 不 正 確 であるならば, 裁 判 所 の 判 断 を<br />

それに 上 書 きしても 問 題 はない。しかし,ある<br />

国 家 行 為 とその 他 の 選 択 肢 それぞれパレート 最<br />

適 であった 場 合 , 効 果 が 強 いことを 優 先 するの<br />

か 副 作 用 が 弱 いことを 優 先 するのかは, 価 値 判<br />

断 でしかなく,どちらを 優 先 すべきかに 関 して<br />

は 憲 法 上 の 根 拠 がない。それゆえ,この 種 の 価<br />

値 判 断 は 裁 判 所 が 行 うべきでなく, 民 主 的 正 統<br />

性 を 持 つ 議 会 であるとした (19) 。<br />

狭 義 の 比 例 性 を 擁 護 する 論 者 は, 狭 義 の 比 例<br />

性 を 放 棄 するという Schlinkの 結 論 にこそ 賛 同<br />

しなかったが, 問 題 意 識 と 方 法 論 は 受 け 入 れ,<br />

狭 義 の 比 例 性 の 基 準 の 無 さを 一 定 程 度 認 めつ<br />

つ, 判 断 過 程 を 合 理 化 することによって, 価 値<br />

問 題 に 対 処 しようとしている。<br />

(2) 裁 判 所 が 判 断 すべきものとは<br />

必 要 性 審 査 を 重 視 す る 比 例 原 則 理 解 の<br />

Schlinkは,Schmitt 学 派 の 論 者 と 同 様 に 基 本 権<br />

問 題 を 扱 う 際 に 価 値 判 断 を 排 除 しようとする。<br />

彼 は, 価 値 判 断 を 排 した 代 わりに 効 用 比 較 とい<br />

う 形 の 事 実 問 題 として 事 案 を 解 決 しようとし<br />

た。Schmittは 価 値 比 較 が 経 済 領 域 でのみ 正 し<br />

く 使 われると 述 べていたが,Schlinkは 経 済 領<br />

域 外 でも 使 われるようになった 価 値 を 効 用 とい<br />

う 経 済 概 念 に 置 き 換 えることによって 比 較 を 可<br />

能 にした。<br />

Schlinkによれば, 裁 判 所 が 判 断 すべきなの<br />

は, 当 該 措 置 が 目 的 を 達 成 するのに 適 合 的 であ<br />

るのか, 目 的 を 達 成 するのに 必 要 であるのかと<br />

いう 事 実 認 識 ・ 事 実 判 断 の 問 題 であって, 価 値<br />

判 断 ではないのである。<br />

比 例 原 則 に 関 する 事 実 と 価 値 の 問 題 の 性 質 の<br />

差 をここまで 述 べてきた。ここで 立 ち 返 るべき<br />

問 いは, 裁 判 所 は 何 を 判 断 すべきで, 議 会 は 何<br />

を 判 断 すべきかという 問 題 である。Böckenförde

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!