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18. トラジェクトリ予測の誤差要因解析 - ENRI

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電 子 航 法 研 究 所 研 究 発 表 会 ( 第 10 回 平 成 22 年 6 月 )トラック 角V M R T(4)TASここで M はマック 数 、 は 比 熱 比 、 R は 気 体定 数 、T は 外 気 温 である。 指 示 対 気 速 度 設 定 による 運 航 とマック 数 設 定 による 運 航 の 境 界 である 遷 移 高 度 を 求 め、それより 下 の 高 度 を 飛 行 する場 合 は 指 示 対 気 速 度 、 遷 移 高 度 よりも 上 の 高 度 を飛 行 する 場 合 はマック 数 から 真 対 気 速 度 を 求 める。対 地 速 度 は 図 1 のとおり 真 対 気 速 度 と 風 のベクトル 和 で 算 出 する。 定 常 状 態 では、 入 手 可 能 な観 測 値 からは 以 下 の 式 で 算 出 できる [4] 。VTGND V cosWcos( ) (5)TAS真 北真 対 気 速 度ベクトルV TASD図 1 航 空 機 進 行 方 向 と 風 の 関 係ここでVGNDは 対 地 速 度 、 V TASは 真 対 気 速 度 、W は 風 速 、 Wは 風 ベクトルの 方 向 、 Tは 真 トラック 角 である。 Dは 偏 流 角 で 以 下 の 式 で 求 められる。 W sin 1 sin( )DW(6)TVTAS航 空 機 の 上 昇 と 降 下 時 の 運 動 計 算 には、 航 空 機を 質 点 としたエネルギー 保 存 則 に 基 づくモデルを 使 用 する。dh dVTAS( T D)VTAS mg mV(7)TASdt dtここで、T は 推 力 、D は 抗 力 , VTASは 真 対 気 速度 、 m は 航 空 機 重 量 、 h は 高 度 、 t は 時 間 を 示す。これは、 航 空 機 に 作 用 する 力 ( 推 力 と 抗 力 )の 仕 事 率 が、 機 体 の 位 置 エネルギーと 運 動 エネルギーの 増 加 率 と 等 しくなるモデルである。ここで、D偏 流 角W W風 ベクトルWV GND対 地 速 度ベクトルT名 称表 1 気 象 モデルの 比 較GSMグローバルスケールMSM(GPV)メソスケール範 囲 全 域 日 本 周 辺 域北 緯 22.4 - 47.6 度東 経 120 - 150 度更 新 6 時 間 3 時 間間 隔水 平 緯 度 0.5 度 緯 度 0.1 度間 隔高 度間 隔経 度 0.5 度 経 度 0.125 度GSM と MSM に 共 通1,000hPa (364 ft), 925hPa(2,500 ft),850hPa(4,781 ft), 700hPa(9,882 ft),600hPa(13,801ft), 500hPa(18,289 ft),400hPa(23,574ft), 300hPa(30,065 ft),250hPa(33,999ft), 200hPa(38,662 ft),150hPa(44,647 ft), 100hPa(53,083 ft)MSM( 共 通 部 に 加 えて)975hPa(1,061 ft), 950hPa(1,773 ft),900hPa(3,243 ft), 800hPa(6,394 ft)位 置 エネルギーは 高 度 、 運 動 エネルギーは 速 度 に対 応 する。 例 えば、アイドル 推 力 による 定 速 の 降下 では、 推 力 、 抗 力 、 速 度 から 降 下 率 を 算 出 することができる。軌 道 予 測 モデルが 使 用 するデータには、 航 空 機性 能 データ、 運 航 データ、 航 法 データベース、 気象 予 報 データなどがある。 航 空 機 性 能 データは、航 空 機 の 型 式 毎 のフライトエンベロープ( 最 高 速度 、 最 低 速 度 など)、エアロダイナミクス( 翼 面積 、 抗 力 係 数 )、エンジン 推 力 、 燃 料 消 費 量 などのデータである。また、 運 航 データは、 上 昇 、 巡航 、 降 下 時 の 標 準 的 な 飛 行 速 度 などのデータである。これらは、 欧 州 ユーロコントロールが 公 開 している BADA(Base of Aircraft Data) を 使 用 する [5] 。 航 法 データは、 経 路 やウェイポイントの 位置 データである。気 象 予 報 データは、 大 気 の 3 次 元 ( 緯 度 、 経 度 、高 度 )の 格 子 点 の 風 向 、 風 速 、 気 温 のデータである。 気 象 庁 の GSM(Global Scale Model: 全 球数 値 予 報 モデル)と MSM(Meso Scale Model:メソ 数 値 予 報 モデル)を 使 用 する。 気 象 業 務 支 援センターから 配 信 されるデータについて、 両 者 の特 徴 を 表 1 に 示 す。また、 図 2 に 両 者 の 格 子 点 の− 82 −


電 子 航 法 研 究 所 研 究 発 表 会 ( 第 10 回 平 成 22 年 6 月 )飛 行 距 離 差 がある。 巡 航 段 階 では、レーダ 誘 導 による 経 路 との 飛 行 距 離 差 がある。 降 下 段 階 では、目 的 空 港 の 着 陸 滑 走 路 の 違 いによる 経 路 の 飛 行距 離 差 、レーダ 誘 導 による 標 準 到 着 経 路 との 飛 行距 離 差 がある。 速 度 誤 差 の 要 因 については、 速 度モデルの 差 と 気 象 予 報 の 差 に 区 分 して、 以 下 に 詳しく 述 べる。4.2 対 地 速 度 予 測 の 誤 差 要 因軌 道 予 測 モデルの 対 地 速 度 の 誤 差 要 因 を 解 析する。 対 地 速 度 を 算 出 する 式 (5)の 全 微 分 を 求 めると 各 要 素 の 寄 与 分 との 関 係 は 式 (8)となる。dVGNDVGNDWVGNDVTASdW dVTASVGNDWdWVGNDTdT(8)式 (7)において、 8例 えば dW は 風 速 の 誤 差 、 偏微 分 係 数 VGNDWは 風 速 の 誤 差 の 対 地 速 度 の誤 差 に 対 する 影 響 度 を 意 味 する。この 偏 微 分 係 数は 風 ベクトルと 対 地 速 度 ベクトルの 位 置 関 係 により 変 化 し、 両 者 が 平 行 な 場 合 は 風 速 の 誤 差 による 対 地 速 度 の 誤 差 への 影 響 が 大 きく、 垂 直 の 場 合は 影 響 が 小 さい。真 対 気 速 度 を 外 気 温 と 指 示 対 気 速 度 で 表 すと式 (8)は 式 (9)となる。また、 外 気 温 とマック 数 で表 すと 式 (10)となる。dVdVGNDGNDVGNDWVGNDTVWGNDVTdW dT dW GNDdT VGNDWVGNDVCASVGNDWVMdGNDWdVdCASWdM VGNDTVGNDT(9)dT(10)dこれらの 式 では、 誤 差 の 主 要 要 素 を、 風 速 誤 差 、風 向 誤 差 、 外 気 温 誤 差 、トラック 角 誤 差 、 指 示 対気 速 度 誤 差 またはマック 数 誤 差 に 区 分 する。 前 の3 項 目 は 気 象 に 関 する 予 報 誤 差 であり、 後 の 2 項目 は 運 航 に 関 する 誤 差 である。4.3 各 誤 差 要 因 の 対 地 速 度 への 寄 与表 2 に 4 機 の 予 測 値 と 実 測 値 について、 誤 差要 因 の 数 値 計 算 結 果 を 示 す。ここで、 実 測 値 の 測T定 精 度 は 分 からないが、 実 際 にその 場 で 計 測 と 計算 されている 値 であるため、 実 測 値 を 真 値 と 仮 定して 予 測 値 と 比 較 参 照 する。 上 昇 と 降 下 段 階 では、航 空 機 毎 の 高 度 変 化 率 の 違 いによる 予 測 値 と 実測 値 の 高 度 差 が 影 響 するが、 今 回 は 速 度 の 解 析 が主 目 的 であるため、 高 度 は 実 測 値 を 使 用 して、 各速 度 の 予 測 値 を 算 出 した。表 の 中 で 積 平 均 および 積 標 準 偏 差 は 各 誤 差 要因 と 偏 微 分 係 数 との 積 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 である。ここで、 偏 微 分 係 数 は 飛 行 状 況 によって 変 化する。 式 (1)から 式 (10)で 求 めた 数 値 により 数 値 偏微 分 して 求 めた。 数 値 偏 微 分 は 式 を 陽 関 数 で 表 現し、 各 変 数 をわずかに 変 化 させ、 変 化 の 比 を 計 算した。 表 のサンプル R2 の 風 速 積 平 均 が 0.32 ktというのは、R2 のサンプルにおいて 風 速 の 誤 差が 対 地 速 度 に 平 均 的 に 寄 与 するのは 0.32 kt の 速度 誤 差 であることを 示 す。 平 均 値 は 全 区 間 における 平 均 的 な 予 測 誤 差 への 影 響 の 大 きさを 示 し、 標準 偏 差 は 部 分 的 な 影 響 の 大 きさを 示 す。各 誤 差 要 因 の 数 値 を 比 較 すると、ほとんどのサンプルで 気 象 に 関 する 誤 差 より、 運 航 に 関 する 誤差 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 が 大 きい。サンプル R100では、 部 分 的 に 風 速 の 予 報 値 と 実 測 値 に 差 があったため、 風 速 積 平 均 の 絶 対 値 が 大 きくなっている。気 象 に 関 する 誤 差 の 中 では、 風 速 と 風 向 の 誤 差 の影 響 が 大 きく、 外 気 温 の 影 響 は 小 さい。この 表 の 例 は 代 表 値 である。 同 様 にして 100機 を 越 える 実 測 値 を 解 析 した 結 果 、いくつかのサンプルでは 大 きな 予 測 誤 差 が 見 られた。この 原 因を 解 析 すると 対 地 速 度 誤 差 への 影 響 が 大 きいのは、1マック 数 もしくは 指 示 対 気 速 度 の 実 測 値 がモデル 値 と 離 れている 場 合 、2 気 象 予 報 の 高 層 風のデータが 実 測 値 と 大 きくずれている 場 合 であり、ほとんどが1の 理 由 であることが 分 かった。初 期 的 なトラジェクトリ 管 理 をまとめた「 初 期4D トラジェクトリデータリンクの 運 用 コンセプト」では、 今 後 の 解 析 と 検 証 が 必 要 とあるが、 時間 予 測 精 度 の 要 件 は 航 空 路 区 間 が 30 秒 、ターミナル 区 間 が 10 秒 と 述 べられている [6] 。 各 速 度 の比 較 結 果 から、 航 空 機 の 速 度 計 画 を 軌 道 予 測 モデルに 反 映 できれば、 航 空 路 区 間 の 予 測 精 度 30 秒が 実 現 可 能 であると 考 えられる。航 空 機 の 速 度 設 定 は、 型 式 、 機 体 重 量 、 燃 料 コスト、 天 候 、 遅 延 の 有 無 などのさまざまな 条 件 を− 85 −


電 子 航 法 研 究 所 研 究 発 表 会 ( 第 10 回 平 成 22 年 6 月 )表 2. 誤 差 要 因 毎 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 の 比 較サンプル 番 号 R2 R3 R20 R100風 速 積 平 均 (kt) 0.32 1.28 1.48 -3.56風 速 積 標 準 偏 差 (kt) 5.21 4.29 7.77 8.20風 向 積 平 均 (kt) -0.05 0.93 -1.19 1.05風 向 積 標 準 偏 差 (kt) 4.89 4.63 4.06 5.02外 気 温 積 平 均 (kt) -0.60 0.03 -0.03 -0.07外 気 温 積 標 準 偏 差 (kt) 1.28 0.53 0.17 0.21真 対 気 速 度 積 平 均 (kt) -4.38 -6.99 -3.52 1.43真 対 気 速 度 積 標 準 偏 差 (kt) 10.12 9.35 6.84 17.26マック 数 積 平 均 (kt) -2.41 -4.32 -1.81 0.58マック 数 積 標 準 偏 差 (kt) 10.41 9.27 7.00 17.06指 示 対 気 速 度 積 平 均 (kt) 9.20 -2.90 -8.11 -11.75指 示 対 気 速 度 積 標 準 偏 差 (kt) 14.16 9.67 8.18 16.49全 体 平 均 (kt) 1.51 4.59 2.30 1.19全 体 標 準 偏 差 (kt) 14.25 12.60 11.21 19.37考 慮 して 決 められている。フライト 毎 の 速 度 計 画を 出 発 前 に 取 得 して 軌 道 予 測 に 反 映 することが望 ましいが、その 環 境 が 実 現 するまでは 全 体 的 な速 度 設 定 の 傾 向 を 解 析 して、 運 航 モデルに 反 映 する 方 法 が 有 効 と 考 えられる。また、 飛 行 中 の 航 空機 のマック 数 と 指 示 対 気 速 度 の 現 在 値 については、SSR(Secondary Surveillance Radar)モード S のデータ 通 信 機 能 により 地 上 側 で 取 得 することが 可 能 である。このような 監 視 情 報 を 軌 道 予測 に 取 り 込 むことも 有 効 と 考 えられる。5. おわりに航 空 機 の 軌 道 予 測 に 対 する 誤 差 要 因 について検 討 した。 初 めに、 気 象 予 報 ( 風 向 、 風 速 、 外 気温 )と 航 空 機 の 速 度 について、 予 測 モデルで 算 出した 予 測 値 と 航 空 機 で 測 定 した 実 測 値 の 比 較 例を 示 した。 次 に、 対 地 速 度 予 測 の 誤 差 要 因 について、 航 空 機 の 速 度 モデルに 起 因 する 誤 差 と 気 象 予報 に 起 因 する 誤 差 を 解 析 した。その 結 果 、 気 象 予報 に 起 因 する 誤 差 より、 航 空 機 の 速 度 モデルに 起因 する 誤 差 が 大 きく、 対 地 速 度 誤 差 が 大 きい 場 合は、 航 空 機 のマック 数 や 指 示 対 気 速 度 がモデル 値と 差 がある 場 合 が 多 いことがわかった。今 後 は、 気 象 の 予 測 値 が 実 測 値 と 異 なる 部 分 についての 詳 細 な 解 析 、 気 象 の 空 間 と 時 間 変 化 を 考慮 した 補 間 方 法 の 検 討 、 上 昇 と 降 下 区 間 での 予 測誤 差 の 解 析 、 誤 差 要 因 を 低 減 する 方 法 の 検 討 を 進める 予 定 である。謝 辞本 研 究 にご 協 力 頂 きました 関 係 各 位 に 感 謝 致します。参 考 文 献[1] ICAO,“Global Air Traffic ManagementOperational Concept ” , ICAO Doc9854AN/458, 2005.[2] 白 川 , 福 田 , 瀬 之 口 ,“ 航 空 機 性 能 モデルを用 いた 航 空 機 軌 道 予 測 ”, 信 学 技 報 SANE2008-99,2009 年 1 月[3] 白 川 , 福 田 , 瀬 之 口 ,“ 航 空 機 性 能 データを用 いた 軌 道 モデル 誤 差 推 定 , 電 子 航 法 研 究 所研 究 発 表 会 講 演 概 要 ”,2009 年 6 月[4] 白 川 , 福 田 , 瀬 之 口 ,“ 航 空 機 軌 道 予 測 における 誤 差 要 因 の 解 析 ”, 信 学 技 報 SANE2009-167,2010 年 2 月[5] Eurocontol Experimental Center,“UserManual for the Base of Aircraft Data(BADA), revision 3.7 ” , EECTechnical/Scientific Report No.2008-0003,March 2009.[6] “Initial 4D – 4D Trajectory Data Link(4DTRAD) Concept of Operations ” ,EUROCONTROL, Dec. 2008.− 86 −

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