Honbun-6218

早 稲 田 大 学 審 査 学 位 論 文
博 士 ( 人 間 科 学 )
地 域 在 住 男 性 高 齢 者 の 矢 状 面 脊 柱 アライメントと
身 体 機 能 との 関 係
Relationship between spinal sagittal alignment and physical
function in community-dwelling elderly men
2013 年 1 月
早 稲 田 大 学 大 学 院 人 間 科 学 研 究 科
宮 﨑 純 弥
Miyazaki, Junya
研 究 指 導 教 員 : 鈴 木 秀 次 教 授
i

目 次
[ 頁 ]
第 1 章 序 論 ............................................................................................................................ 1-4
第 1 節 はじめに .................................................................................................................... 2-5
第 2 章 先 行 研 究 小 史 ............................................................................................................... 6-13
第 1 節 高 齢 者 の 姿 勢 分 類 ..................................................................................................... 7-8
第 2 節 脊 柱 彎 曲 測 定 方 法 ................................................................................................... 9-11
第 3 節 高 齢 者 の 脊 柱 変 形 に 関 する 研 究 ......................................................................... 12-13
第 3 章 Spinal Mouse を 使 用 した 脊 柱 彎 曲 角 測 定 の 再 現 性
― 裸 体 と 肌 着 着 用 での 違 いについて― ................................................................. 14-21
第 1 節 目 的 ......................................................................................................................... 15
第 2 節 方 法 .................................................................................................................... 16-17
第 3 節 結 果 .................................................................................................................... 18-19
第 4 節 考 察 ......................................................................................................................... 20
第 5 節 まとめ ......................................................................................................................... 21
第 4 章 地 域 在 住 男 性 高 齢 者 の 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 身 体 機 能 との 相 関 関 係
― 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 下 肢 筋 力 が 歩 行 能 力 の 予 測 因 子 となり 得 るか?― 22-37
第 1 節 目 的 .................................................................................................................... 23-24
第 2 節 方 法 .................................................................................................................... 25-27
第 3 節 結 果 .................................................................................................................... 28-32
第 4 節 考 察 .................................................................................................................... 33-36
第 5 節 まとめ ......................................................................................................................... 37
第 5 章 総 合 論 議 .................................................................................................................... 38-40
謝 辞 ................................................................................................................................................. 41
研 究 業 績 .................................................................................................................................... 42-43
参 考 文 献 .................................................................................................................................... 44-51
i

第 1 章 序 論
1

第 1 節 はじめに
近 年 の 急 激 な 高 齢 者 人 口 の 増 加 にともない 医 療 費 等 の 社 会 的 コストの 増 加 が
深 刻 な 社 会 問 題 となっている。2011 年 の 総 務 省 が 発 表 した 日 本 国 内 における6
5 歳 以 上 の 人 口 は 総 人 口 の 23.3%となっており、 今 後 も 増 加 の 一 途 をたどると
している。このような 状 況 から、 高 齢 者 の 健 康 維 持 や 予 防 医 学 に 対 する 社 会 的
意 義 は 高 いと 考 えられる。
人 間 の 脊 柱 は、 頚 椎 7 個 ・ 胸 椎 12 個 ・ 腰 椎 5 個 ・ 仙 骨 ・ 尾 骨 より 成 り 立 っ
ている。 胎 生 期 、 新 生 児 の 脊 柱 は 一 時 彎 曲 のみで C 字 型 の 彎 曲 をしている( 矢
状 面 )。 発 達 、すなわち 首 が 据 わり、 座 位 保 持 から 直 立 姿 勢 へ 変 化 し 歩 行 獲 得 時
期 へと 姿 勢 や 動 作 が 変 化 してくると、 脊 柱 の 形 状 も 変 化 し 二 次 彎 曲 と 呼 ばれる
頚 椎 部 、 腰 椎 部 の 前 彎 が 出 現 する。そして、10 歳 頃 には 逆 S 状 の 脊 柱 カーブ(い
わゆる 脊 柱 の 生 理 的 彎 曲 )が 完 成 する。また 前 額 面 で 見 た 脊 柱 構 造 は、 骨 盤 の
上 に 長 方 形 の 積 み 木 を 重 ねたような 構 造 をしている。 人 間 の 立 位 姿 勢 は、 物 理
的 に 不 安 定 な 姿 勢 であるが、 筋 ・ 靱 帯 ・ 椎 間 板 などの 巧 みな 働 きによって、 重
い 頭 部 を 支 えながら 種 々の 作 業 が 遂 行 可 能 となっている。さらに 小 さなエネル
ギー 消 費 で 円 滑 な 直 立 二 足 歩 行 ができるのは、 頚 部 や 体 幹 の 分 節 的 な 巧 緻 運 動 、
前 後 左 右 の 微 妙 なバランス 調 整 によるものであると 考 えられる。
脊 柱 の 基 本 は、 頚 椎 ・ 胸 椎 ・ 腰 椎 ・ 仙 骨 ・ 尾 骨 からなる 生 理 的 彎 曲 であり、
その 形 状 は、 椎 骨 の 椎 体 部 分 、 椎 間 板 の 状 態 、 椎 間 関 節 の 可 動 性 、 筋 の 緊 張 度 ・
伸 縮 性 などによって 決 まる。 脊 柱 が 十 分 な 機 能 ・ 役 割 を 果 たすためにも 椎 間 板 、
靱 帯 、 筋 など 脊 柱 周 囲 組 織 が 関 与 している。 脊 柱 の 生 理 的 彎 曲 は、 年 齢 を 重 ね
るに 従 って 生 理 的 彎 曲 が 変 形 を 起 こす。 特 に 骨 、 関 節 、 関 節 周 囲 組 織 、 筋 肉 の
退 行 性 変 化 は 筋 力 低 下 や 関 節 可 動 域 の 減 少 を 引 き 起 こし 1,2) 、さらに 運 動 機 能
の 低 下 に 関 与 していると 考 えられる。これまで 加 齢 に 伴 う 歩 行 能 力 やバランス
2

能 力 が 変 化 することについては、 多 くの 研 究 が 報 告 されている 3 - 5)
。
高 齢 者 の 姿 勢 変 化 は 筋 骨 格 系 や 神 経 系 の 形 態 的 、 機 能 的 変 化 の 結 果 として 捉
えることができる。 筋 骨 格 系 の 疾 患 では 脊 柱 変 形 による 亀 背 など、 神 経 系 の 疾
患 ではパーキンソン 病 患 者 における 前 屈 姿 勢 など、 疾 患 に 特 有 の 肢 位 、 姿 勢 が
知 られている。これらの 姿 勢 は 疾 患 の 症 候 の 一 部 として 診 断 学 的 に 論 じられる
か、 健 常 者 の 体 型 分 類 に 利 用 されてきた。
脊 柱 の 計 測 は 主 に 矢 状 面 を 中 心 に 行 われてきた。X 線 写 真 による 計 測 を 除 き、
その 他 の 方 法 では、 脊 柱 棘 突 起 を 身 体 表 面 から 触 れて、その 配 列 を 脊 柱 彎 曲 と
している。 最 も 正 確 に 測 定 するには X 線 を 連 続 撮 影 することであるが、 医 師 や
放 射 線 技 師 以 外 の X 線 使 用 は 出 来 ずまた、 被 爆 のリスクがあり 地 域 在 住 高 齢 者
の 調 査 に 使 用 す ることは 非 常 に 困 難 である。
近 年 、 脊 柱 の 彎 曲 角 度 を 被 験 者 背 部 の 体 表 面 から 測 定 できる Spinal Mouse
( Idiag 社 製 ,スイス)という 測 定 機 器 が 注 目 されている。この Spinal Mouse
6-10)
は 比 較 的 容 易 に 脊 柱 彎 曲 角 度 を 測 定 できることから 多 くの 研 究 に 使 用
され、Mannion ら 11) や Poat ら 12) は Spinal Mouse を 使 用 し 成 人 男 性 と 成
人 女 性 を 対 象 として 信 頼 性 の 検 討 を 行 い、 男 性 ・ 女 性 ともに 高 い 信 頼 性 が 得 ら
れたと 報 告 している。また Spinal Mouse の 妥 当 性 については、 宝 亀 ら 13) は
男 女 5 名 に 対 し X 線 による 測 定 値 と Spinal Mouse での 測 定 値 を 比 較 してほぼ
同 様 の 値 を 示 したと 報 告 している。また Ripani ら 14) や Consmuller ら 15)
も 同 様 の 研 究 を 行 い Spinal Mouse の 妥 当 性 について 問 題 のないことを 報 告 し
ている。これら 全 てに 共 通 していることは、 測 定 時 に 肌 を 露 出 する 必 要 があり
我 々が 実 施 している、 地 域 での 調 査 や 臨 床 場 面 においては、 被 験 者 が 裸 体 にな
ることに 抵 抗 を 感 じ、 測 定 ができない 場 合 も 少 なくない。そのために 肌 着 程 度
の 被 服 を 着 用 して 測 定 した 場 合 の 測 定 値 に 信 頼 性 があるか 否 かの 問 題 がある。
3

この 問 題 を 解 決 する 方 法 を 検 討 する 必 要 がある。
矢 状 面 脊 柱 アライメント( 脊 柱 彎 曲 角 ) と 身 体 機 能 の 関 係 について、 健 常 人
においてバランスのとれた 姿 勢 を 維 持 するには、 矢 状 面 脊 柱 アライメントの 維
持 の 重 要 性 を 報 告 している 16-20) 。しかし、 年 齢 を 重 ねるに 従 って 生 理 的 彎
曲 が 変 形 を 起 こす。これに 骨 粗 鬆 症 などの 疾 患 が 重 なることでその 変 形 度 合 い
は 強 くなる。 女 性 高 齢 者 の 脊 柱 変 形 に 関 する 研 究 では、Miyakoshi ら 21) の 骨
粗 鬆 症 患 者 を 対 象 とした Quality of life( QOL) に 関 する 研 究 、Miyakoshi ら
22)
や Hongo ら 23) 24)
の 骨 粗 鬆 症 患 者 の 背 筋 力 に 関 する 研 究 、 森 の 脊 柱 圧 迫
骨 折 患 者 の Activities of daily living( ADL) に 関 する 研 究 、Katzman ら 25)
の hyperkyphosis に 関 する 研 究 がある。これらの 研 究 は 骨 粗 鬆 症 患 者 を 対 象 と
した 研 究 であり、 脊 柱 彎 曲 角 が 骨 粗 鬆 症 による 圧 迫 骨 折 による 影 響 が 大 きい 事
を 示 している。 我 が 国 の 骨 粗 鬆 症 の 有 病 率 について 大 内 は 男 性 と 比 較 して 女 性
は 約 5 倍 とされている。また、 脊 椎 圧 迫 骨 折 の 有 病 率 は 女 性 は 男 性 の 約 3 倍 と
されている 26) 。このような 背 景 が 女 性 高 齢 者 を 対 象 とした 脊 柱 変 形 の 研 究 が
多 い 要 因 と 考 えられる。これまでの 矢 状 面 脊 柱 アライメントの 研 究 は、 骨 粗 鬆
症 を 起 因 する 脊 椎 圧 迫 骨 折 患 者 を 対 象 にしたものが 多 いことから 必 然 的 に 高 齢
女 性 を 対 象 とした 研 究 が 多 く 高 齢 男 性 を 対 象 とした 研 究 は 少 ない 22,27- 32) 。
これからの 超 高 齢 化 社 会 を 迎 えるにあたって 男 性 高 齢 者 の 増 加 も 必 然 である。
また、 男 性 高 齢 者 は 骨 粗 鬆 症 になっていないにもかかわらず 姿 勢 異 常 を 呈 して
いる。このようなことから 男 性 高 齢 者 の 日 常 生 活 活 動 や 生 活 の 質 を 維 持 してい
くためには、 男 性 高 齢 者 の 脊 柱 アライメントと 身 体 機 能 の 関 係 について 検 討 し、
その 結 果 を 今 後 の 男 性 高 齢 者 ヘルスプロモーションや 理 学 療 法 の 基 礎 データと
して 活 用 することが 重 要 である。 従 って 本 研 究 の 目 的 は、Spinal Mouse を 使
用 して 地 域 在 住 男 性 高 齢 者 の 矢 状 面 脊 柱 アライメントを 測 定 し、 身 体 機 能 との
4

関 係 を 明 らかにし 矢 状 面 脊 柱 アライメントが 歩 行 能 力 に 影 響 を 与 える 因 子 とな
りうるかを 検 討 することとした。 そこで 第 一 の 研 究 として Spinal Mouse の 裸
体 と 肌 着 を 着 た 場 合 の 再 現 性 について 検 討 した 上 で、 第 二 の 研 究 として 地 域 在
住 男 性 高 齢 者 の 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 身 体 機 能 との 相 関 関 係 ならびに 矢 状
面 脊 柱 アライメントと 下 肢 筋 力 が 歩 行 能 力 の 予 測 因 子 として 当 てはまるか 否 か
を 検 討 した。
5

第 2 章 先 行 研 究 小 史
6

第 1 節 高 齢 者 の 姿 勢 分 類
我 々 人 間 は、 四 つ 這 い 歩 行 に 始 まり、 二 足 歩 行 へと 成 長 していき、 加 齢 と 共
に 身 体 構 造 に 変 化 を 生 じるようになる。これまでの 姿 勢 分 類 では Wiles の 分 類
が 有 名 である 33) 。これは 姿 勢 を 5 つに 分 類 している。1 正 常 2 平 背 3 凹 背 4
円 背 5 円 凹 背 であ る( 図 1)。 この 分 類 によると 脊 柱 彎 曲 角 異 常 と 骨 盤 傾 斜 度 お
よび 胸 腰 椎 移 行 部 の 性 状 との 関 係 は、1: 骨 盤 傾 斜 度 減 少 と 可 動 性 のよい 脊 椎
は「 平 背 」2: 骨 盤 傾 斜 度 減 少 と 胸 腰 椎 移 行 部 後 彎 は「 円 背 」3: 骨 盤 傾 斜 度
増 大 と 可 動 性 のよい 脊 椎 は「 腰 椎 前 彎 増 強 」4: 骨 盤 傾 斜 度 増 大 と 胸 腰 椎 移 行
部 後 彎 は「 凹 背 」とされている。このように 分 類 が 煩 雑 で 臨 床 場 面 では 使 用 さ
れることは 少 ない。
図 1:Wiles の 姿 勢 分 類
左 から 正 常 、 平 背 、 凹 背 、 円 背 、 円 凹 背 となっている。これと 骨 盤
傾 斜 度 によって 分 類 されるため 非 常 に 煩 雑 となる 。(33 から 引 用 )
7

34)
そこで、 仲 田 は 高 齢 者 の 姿 勢 分 類 を4つに 分 類 した。 我 が 国 において 参
考 とされているのは 仲 田 の 分 類 である。 仲 田 は 高 齢 者 の 特 徴 的 な 姿 勢 を 脊 柱 だ
けでなく 下 肢 関 節 の 影 響 も 考 慮 して、 伸 展 型 ・S 字 型 ・ 屈 曲 型 ・ 手 膝 上 型 の4
つの 分 類 とした( 図 2)。しかしながら 仲 田 の 分 類 は、 目 視 で 分 けられたもので
あり 客 観 性 があるとは 言 い 難 い。
図 2: 仲 田 による 高 齢 者 の 姿 勢 分 類
左 から 伸 展 型 、S 字 型 、 屈 曲 型 、 手 膝 上 型 と 呼 ばれている。
( 34 から 引 用 )
8

第 2 節 脊 柱 彎 曲 測 定 方 法
脊 柱 の 計 測 は 主 に 矢 状 面 を 中 心 に 行 われてきた。X 線 写 真 による 計 測 を 除 き、
その 他 の 方 法 では、 脊 柱 棘 突 起 を 身 体 表 面 から 触 れて、その 配 列 を 脊 柱 彎 曲 と
している。 具 体 的 には 最 も 簡 便 な 方 法 として 自 在 曲 線 定 規 を 脊 柱 の 彎 曲 にあわ
せて 測 定 する 方 法 である。Mckenzie 35) は、パントグラフを 用 いて 脊 柱 彎 曲 の
縮 尺 描 記 する 方 法 を 考 案 している( 図 3)。
図 3:パントグラフによる 脊 柱 彎 曲 測 定
Mckenzie による 脊 柱 彎 曲 測 定 方 法 である。この 方 法 では
縮 小 した 脊 柱 彎 曲 測 定 が 可 能 であるが 彎 曲 角 を 測 定 するこ
と は 困 難 である。( 35 から 引 用 )
9

また
Cureton 3 6 ) は、 多 数 の 金 属 棒 で 構 成 されている 姿 勢 測 定 装 置
( Cureton-Gunby conformateur)を 用 いた( 図 4)。しかしながら、 上 記 の 二
つの 方 法 では 脊 柱 の 形 状 は 判 別 できたとしても 彎 曲 角 を 測 定 することは 困 難 で
あり、 自 由 局 在 定 規 以 外 の 測 定 方 法 は 装 置 が 大 掛 かりでかつ 複 雑 であり 臨 床 的
には 使 用 しづらいものである。
図 4: Cureton-Gunby conformateur
Cureton が 開 発 した 姿 勢 測 定 装 置 である。 前 面 の2 本 の 金 属 棒
は 胸 骨 上 端 と 恥 骨 結 合 と 一 致 するようにして 固 定 している。 後
面 の 金 属 棒 を 脊 柱 に 合 わせ、 金 属 棒 先 端 の 描 く 曲 線 から 脊 柱 の
彎 曲 を 記 録 する。( 36 から 引 用 )
10

脊 柱 彎 曲 角 を 最 も 正 確 に 測 定 するには X 線 を 連 続 撮 影 したり、CT や MRI を 使
用 して 計 測 することである。しかし、X 線 ・ CT・ MRI は 医 師 や 放 射 線 技 師 以
外 では 使 用 は 出 来 ずまた、X 線 と CT は 被 爆 のリスクがあり、 簡 便 性 に 欠 ける
ため 地 域 在 住 高 齢 者 の 調 査 に 使 用 することは 非 常 に 困 難 である。
近 年 、 脊 柱 の 彎 曲 角 度 を 被 験 者 背 部 の 体 表 面 から 非 侵 襲 的 に 測 定 できる
Spinal Mouse( Idiag 社 製 ,スイス)が 開 発 された。この Spinal Mouse は、3
つの 加 速 度 計 を 内 蔵 し 、トラッキングホイールを 第 7 頚 椎 から 第 3 仙 椎 までの
脊 椎 棘 突 起 に 沿 って 動 かすことにより 測 定 されたデータが PC に 送 られ、 脊 柱
の 各 椎 体 の 相 対 的 位 置 が 知 的 再 帰 アルゴリズムにより 算 出 される 仕 組 みになっ
ている。つまり、 脊 柱 棘 突 起 上 を 頚 椎 から 仙 椎 まで、コンピューターのマウス
を 使 用 するようになぞるだけで 脊 柱 の 形 状 と 胸 椎 後 彎 角 と 腰 椎 前 彎 角 が 測 定 で
きる。また 図 5 に 示 す 様 に 測 定 デバイスは 非 常 に 小 さくノートパソコンと 無 線
で 継 っており、どこにでも 持 ち 運 べるため、 地 域 在 住 高 齢 者 等 の 調 査 には 非 常
に 便 利 な 測 定 機 器 である。
図 5: Spinal Mouse よる 脊 柱 彎 曲 角 測 定
図 に 示 すようなデバイスを 脊 柱 棘 突 起 に 沿 わせることで 脊 柱
彎 曲 角 が 容 易 に 測 定 することが 可 能 である。
11

第 3 節 高 齢 者 の 脊 柱 変 形 に 関 する 研 究
これまでの 高 齢 者 特 有 の 脊 柱 変 形 については、 骨 粗 鬆 症 を 起 因 する 脊 椎 圧 迫
骨 折 後 の 胸 椎 後 彎 増 大 に 関 する 研 究 が 報 告 されている 21,23,37) 。しかしな
がら、 多 くの 高 齢 者 は 脊 椎 圧 迫 骨 折 等 の 既 往 が 無 いにもかかわらず
hyperkyphosis と 評 される 異 常 な 姿 勢 をとっている 38) 。 このような 異 常 姿 勢
は、 寝 たきりや 歩 行 能 力 の 低 下 など 複 数 の 健 康 への 悪 影 響 を 及 ぼしていること
が 示 唆 されている 27, 38,39) 。 また、 矢 上 面 脊 柱 アライメント 異 常 は、 胸 椎
後 彎 角 の 増 大 と 腰 椎 前 彎 角 の 減 少 、さらに 骨 盤 後 傾 位 を 取 ることで、 股 関 節 と
膝 関 節 が 屈 曲 位 となる 姿 勢 になってしまい 40, 41) 、 大 腿 四 頭 筋 や 背 筋 群 の 筋
力 が 発 揮 しづらい 状 況 となり、 結 果 的 に 歩 行 能 力 低 下 につながるとされている
28,42)
。したがって 高 齢 者 の 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 身 体 機 能 の 関 係 を 明
らかにすることは、 高 齢 者 の 日 常 生 活 活 動 や 生 活 の 質 を 維 持 していくために 重
要 な 課 題 であると 考 えられる。また 矢 状 面 脊 柱 アライメント 異 常 の 予 防 やトレ
ーニングをすることで 身 体 機 能 の 向 上 につながると 考 えられる。
これまでの 矢 状 面 脊 柱 アライメントの 研 究 は、 骨 粗 鬆 症 を 起 因 する 脊 椎 圧 迫
骨 折 患 者 を 対 象 にしたものが 多 いことから 必 然 的 に 高 齢 女 性 を 対 象 とした 研 究
が 多 く 高 齢 男 性 を 対 象 とした 研 究 は 少 ない 22,27-32) 。しかし、 高 齢 化 社 会
を 迎 えた 現 在 、 男 性 高 齢 者 を 対 象 とした 研 究 が 必 要 と 思 われる。また、 男 性 と
女 性 の 脊 柱 彎 曲 の 差 について、Janssen ら 17) は、 若 年 者 を 対 象 とし X 線 を 使
用 して 検 討 しその 結 果 、 女 性 の 方 が 胸 椎 部 において 傾 きが 大 きいと 報 告 してい
る。しかしながら、 高 齢 者 の 脊 柱 彎 曲 角 の 性 差 に 関 する 研 究 は 少 なく、 統 一 し
た 見 解 はなされていないのが 現 状 である。この 理 由 としては、 青 年 期 には 生 活
習 慣 の 影 響 は 受 けにくいが、 高 齢 者 はそれまでの 仕 事 内 容 やや 日 常 生 活 の 影 響
を 強 く 受 ける 為 、 個 人 差 が 大 きくなり 性 差 よりもこれらの 事 が 重 要 視 されてい
12

ることが 考 えられる。
13

第 3 章 Spinal Mouse を 使 用 した 脊 柱 彎 曲 角 度 測 定 の
再 現 性
― 裸 体 と 肌 着 着 用 での 違 いについて―
14

第 1 節 目 的
臨 床 場 面 において、 高 齢 者 の 脊 柱 後 彎 変 形 を 呈 した 患 者 を 多 く 見 かける。
これまで、 高 齢 者 の 脊 柱 変 形 は、 女 性 高 齢 者 において 胸 椎 後 彎 と 身 体 機 能 に 関
6 , 7,30,43- 45)
する 研 究 が 多 くなされており、どの 研 究 も 脊 柱 変 形 が 身 体
機 能 に 及 ぼす 影 響 について 報 告 している 6,7,30,43- 45) 。
34)
一 方 、 高 齢 者 の 矢 状 面 における 脊 柱 の 評 価 は、Staffel の 分 類 や 仲 田 らの
34)
分 類 などが 行 われるが、それらは 写 真 や X 線 を 使 用 したものである。X 線
の 使 用 は、 我 々 理 学 療 法 士 には 使 用 が 許 可 されておらず、 写 真 撮 影 では 肌 を 露
出 する 必 要 があり、 被 験 者 の 同 意 を 得 ることが 困 難 な 場 合 が 多 い。
近 年 、 脊 柱 の 彎 曲 角 度 を 被 験 者 背 部 の 体 表 面 から 測 定 できる Spinal Mouse
( Idiag 社 製 ,スイス)という 測 定 機 器 が 注 目 されている。この Spinal Mouse
6-10)
は 比 較 的 容 易 に 脊 柱 彎 曲 角 度 を 測 定 できることから 多 くの 研 究 に 使 用
され、Mannion ら 11) や Poat ら 12) は Spinal Mouse を 使 用 し 成 人 男 性 と 成
人 女 性 を 対 象 として 信 頼 性 の 検 討 を 行 い、 男 性 ・ 女 性 ともに 高 い 信 頼 性 が 得 ら
れたと 報 告 している。しかしながら、 両 研 究 ともに 肌 の 露 出 という 問 題 は 解 決
していない。 我 々が 実 施 している、 地 域 での 調 査 や 臨 床 場 面 においては、 被 験
者 が 裸 体 になることに 抵 抗 を 感 じ、 測 定 ができない 場 合 も 少 なくない。このよ
うな 問 題 点 があるにも 関 わらず、Spinal Mouse を 使 用 して、 裸 体 の 場 合 と 肌
着 1 枚 着 用 の 場 合 で 再 現 性 にどの 程 度 差 があるのかを 検 討 した 報 告 は 見 当 たら
ない。
そこで 本 章 の 目 的 は、Spinal Mouse を 使 用 して 脊 柱 彎 曲 角 を 測 定 し、 裸 体
と 肌 着 での 測 定 で 再 現 性 に 差 があるか 否 かを 検 討 することとした。
15

第 2 節 方 法
1. 対 象
体 幹 ・ 下 肢 に 病 的 な 機 能 障 害 が 認 められない A 大 学 に 在 学 中 の 男 子 学 生 20
名 ( 年 齢 : 22.4±6.8 歳 、 身 長 : 168.6±4.7cm、 体 重 : 64.8±6.7kg) とした。
対 象 者 には 研 究 の 趣 旨 と 内 容 や 得 られたデータは 研 究 目 的 以 外 には 使 用 しない
こと、および 個 人 情 報 の 取 り 扱 いには 十 分 に 配 慮 することを 説 明 し、 了 承 を 得
たうえで 実 施 した。また、 本 研 究 は 目 白 大 学 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 受 けて 実 施 し
た。
2. 方 法
脊 柱 彎 曲 角 は Spinal Mouse を 使 用 し、 裸 体 の 場 合 と 肌 着 1 枚 着 用 の 場 合 ( 以
下 肌 着 )を 各 2 回 ずつ 測 定 し、 測 定 順 はランダムとした。 測 定 肢 位 は 安 静 立 位
とし、 第 7 頸 椎 から 第 3 仙 椎 までの 棘 突 起 上 にセンサー 部 を 当 て、 頭 側 から 尾
側 へ 移 動 させて 測 定 した。 今 回 分 析 に 使 用 したのは、 第 1 胸 椎 と 第 12 胸 椎 で
作 られる 胸 椎 後 彎 角 、および 第 1 腰 椎 と 第 5 腰 椎 で 作 られる 腰 椎 前 彎 角 と した
( 図 6)。なお、 肌 着 の 測 定 時 には、 各 棘 突 起 を 触 診 しながら 慎 重 に Spinal Mouse
を 操 作 した。
16

¥
図 6:Spinal Mouse による 脊 柱 彎 曲 角 測 定 方 法
胸 椎 後 彎 角 と 腰 椎 前 彎 角 の 算 出 方 法 を 示 す。 胸 椎 は 1 番 から 12 番
の 各 椎 間 がなす 角 度 の 総 和 を 胸 椎 後 彎 角 としている。 腰 椎 は 1 番 から
5 番 の 各 椎 間 がなす 角 度 の 総 和 を 腰 椎 前 彎 角 としている。
3. 統 計 処 理
統 計 処 理 は、SPSS version17.0 for Windows を 使 用 し、 裸 体 と 肌 着 の 再 現 性
については、 検 者 内 級 内 相 関 係 数 (Intraclass Correlation coefficient, 以 下
ICC)によって 検 討 した。また、 裸 体 と 肌 着 の 脊 柱 彎 曲 角 の 比 較 には、 対 応 の
ある t 検 定 を 用 い 危 険 率 5% 未 満 を 有 意 とした。
17

第 3 節 結 果
再 現 性 の 結 果 を 表 1 に 示 す。 胸 椎 後 彎 角 は、 裸 体 1 回 目 が 平 均 33.4±7.3 度
( 最 低 値 22 度 , 最 高 値 48 度 )、 2 回 目 が 平 均 33.3±7.1 度 ( 最 低 値 23 度 , 最
高 値 48 度 )であり、2 群 間 に 有 意 差 は 認 められなかった。また ICC は 0.974
であり 高 い 再 現 性 を 示 した。 肌 着 1 回 目 が 平 均 35.1±8.0 度 ( 最 低 値 16 度 , 最
高 値 46 度 )、2 回 目 が 平 均 34.4±7.9 度 ( 最 低 値 14 度 , 最 高 値 47 度 )であり、
2 群 間 に 有 意 差 は 認 められなかった。また ICC は 0.892 で 良 好 な 再 現 性 を 示 し
た。
腰 椎 前 彎 角 は、 裸 体 1 回 目 が 平 均 18.8±4.7 度 ( 最 低 値 11 度 , 最 高 値 28 度 )、
2 回 目 が 平 均 19.5±4.7 度 ( 最 低 値 8 度 , 最 高 値 26 度 )であり、2 群 間 に 有 意
差 は 認 められなかった。また ICC は 0.939 であり 高 い 再 現 性 を 示 した。 肌 着 1
回 目 が 平 均 20.1±6.8 度 ( 最 低 値 9 度 , 最 高 値 30 度 )で 2 回 目 が 平 均 21.2±
5.4 度 ( 最 低 値 9 度 , 最 高 値 30 度 )であり、2 群 間 に 有 意 差 は 認 められなかっ
た。また ICC は 0.883 で 良 好 な 再 現 性 を 示 した。
表 1: 測 定 値 の 再 現 性
1 回 目 2 回 目 ICC 95% 信 頼 区 間
胸 椎 後 彎 角 ( 度 ) 裸 33.4±7.9 33.3±7.1 0.974 0.938-0.989
肌 着 35.1±8.0 34.4±7.9 0.892 0.754-0.955
腰 椎 前 彎 角 ( 度 ) 裸 18.8±4.7 19.5±4.7 0.939 0.855-0.974
肌 着 20.1±6.8 21.2±5.4 0.883 0.728-0.934
平 均 ± 標 準 偏 差 ,ICC= Intraclass correlation coefficient
18

測 定 値 を 裸 体 と 肌 着 で 比 較 すると、 胸 椎 後 彎 角 において 裸 体 が 平 均 33.3±7.1
度 , 肌 着 が 平 均 34.8±7.9 度 であり、 有 意 差 は 認 められなかった。 腰 椎 前 彎 角
においては、 裸 体 が 平 均 19.1±4.6 度 , 肌 着 が 平 均 20.6±5.9 度 であり、 有 意
差 は 認 められなかった( 表 2)。
表 2: 裸 と 肌 着 の 脊 柱 彎 曲 角 の 比 較
裸 肌 着 p 値
胸 椎 後 彎 角 ( 度 ) 33.3±7.1 34.8±7.9 0.74
腰 椎 前 彎 角 ( 度 ) 19.1±4.6 20.6±5.9 0.69
平 均 ± 標 準 偏 差
胸 椎 後 彎 角 ・ 腰 椎 前 彎 角 において、 肌 着 の 平 均 値 から 裸 体 の 平 均 値 を 引 くと、
胸 椎 および 腰 椎 ともに 1.5 度 であり、この 差 が 胸 椎 後 彎 角 ・ 腰 椎 前 彎 角 に 占 め
る 割 合 は、 胸 椎 後 彎 角 が 4%で 腰 椎 前 彎 角 が 8%であった。
19

第 4 節 考 察
加 齢 に 伴 う 脊 柱 変 形 は、 胸 椎 の 後 彎 が 最 も 多 いと 報 告 されている 46) 。また
脊 柱 彎 曲 角 が 歩 行 や 下 肢 筋 力 などの 身 体 機 能 に 及 ぼす 影 響 についても 報 告 され
ている 6,7) 。これらのことからも、 脊 柱 変 形 を 測 定 する 意 義 は 高 く、 測 定 が 容
易 に 行 えることは 重 要 と 考 えられる。
そこで 本 章 は、 皮 膚 表 面 から 脊 柱 の 矢 状 面 アライメントを 計 測 できる Spinal
Mouse を 使 用 して、 裸 体 の 場 合 と 肌 着 1 枚 着 用 している 場 合 で 再 現 性 に 差 があ
るか 否 かを 検 討 した。その 結 果 、 胸 椎 後 彎 角 において ICC は 裸 体 で 0.974、 肌
着 で 0.892、 腰 椎 前 彎 角 の ICC は 裸 体 で 0.939、 肌 着 で 0.883 であり、ICC に
よる 再 現 性 の 解 釈 (0.8 以 上 が 良 好 、0.9 以 上 が 優 秀 ) 47,48) に 基 づくと、 裸
体 では 胸 椎 後 彎 角 ・ 腰 椎 前 彎 角 ともに「 優 秀 」であり、 肌 着 では 胸 椎 後 彎 角 ・
腰 椎 前 彎 角 ともに「 良 好 」であった。 裸 体 と 肌 着 では ICC に 差 があり、 裸 体 の
場 合 の 方 が 再 現 性 は 高 かったが、 肌 着 でも ICC は 0.8 後 半 であり、 研 究 調 査 や
臨 床 場 面 で 使 用 するには 問 題 ない 再 現 性 であることが 確 認 された。
次 に 裸 体 と 肌 着 の 脊 柱 彎 曲 角 を 比 較 すると、 胸 椎 後 彎 角 ・ 腰 椎 前 彎 角 ともに
有 意 差 は 認 められなかった。また、 裸 体 と 肌 着 の 測 定 値 の 差 は、 胸 椎 後 彎 角 ・
腰 椎 前 彎 角 ともに 1.5 度 であった。Mannion ら 11) の 研 究 結 果 における 裸 体 で
の 測 定 値 の 差 は、 胸 椎 後 彎 角 で 約 1 度 、 腰 椎 前 彎 角 で 約 0.5 度 であり、 本 研 究
結 果 と 近 似 した 値 を 示 した。このことから、 裸 体 になることが 困 難 な 場 合 には
肌 着 着 用 でも 信 頼 できる 測 定 値 が 得 られることが 示 唆 された。
これらの 知 見 から、Spinal Mouse を 使 用 して 肌 着 のような 薄 手 の 被 服 を 着
用 した 状 態 でも 脊 柱 彎 曲 角 を 客 観 的 かつ 容 易 に 測 定 できることが 確 認 された。
20

第 5 節 まとめ
本 章 は、Spinal Mouse の 脊 柱 彎 曲 角 の 再 現 性 についてこれまで 先 行 研 究 で
行 われた 裸 体 での 測 定 に 加 え、 肌 着 を 着 用 した 状 態 での 測 定 の 再 現 性 を 検 討 し
た。その 結 果 、 裸 体 とともに 肌 着 を 着 用 した 状 態 でも 十 分 に 信 頼 できる 値 が 得
られることが 明 らかになった。
21

第 4 章 地 域 在 住 男 性 高 齢 者 の 矢 状 面 脊 柱 アライメント
と 身 体 機 能 との 相 関 関 係
― 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 下 肢 筋 力 が 歩 行 能 力 の
予 測 因 子 となり 得 るか?―
22

第 1 節 目 的
人 間 の 脊 柱 は 生 理 的 彎 曲 により 成 り 立 っている。 過 去 の 研 究 では、 健 常 人 に
おいてバランスのとれた 姿 勢 を 維 持 するには、 矢 状 面 脊 柱 アライメントの 維 持
の 重 要 性 を 報 告 している 16- 20) 。しかし、 年 齢 を 重 ねるに 従 って 生 理 的 彎 曲
が 変 形 を 起 こす。これに 骨 粗 鬆 症 などの 疾 患 が 重 なることでその 変 形 度 合 いは
強 くなる。この 様 に 高 齢 者 特 有 の 脊 柱 変 形 については、 骨 粗 鬆 症 を 起 因 する 脊
椎 圧 迫 骨 折 後 の 胸 椎 後 彎 増 大 に 関 する 研 究 が 報 告 されている 21, 23,37) 。し
かしながら、 多 くの 高 齢 者 は 脊 椎 圧 迫 骨 折 等 の 既 往 が 無 いにもかかわらず
hyperkyphosis と 評 される 異 常 な 姿 勢 をとっている 38) 。 このような 異 常 姿 勢
は、 寝 たきりや 歩 行 能 力 の 低 下 など 複 数 の 健 康 への 悪 影 響 を 及 ぼしていること
が 示 唆 されている 27,38,39) 。 また、 矢 上 面 脊 柱 アライメント 異 常 は、 胸 椎
後 彎 角 増 大 と 腰 椎 前 彎 角 減 少 し、 骨 盤 後 傾 位 を 取 ることで、 股 関 節 と 膝 関 節 が
屈 曲 位 となる 姿 勢 になってしまい 40, 41) 、 大 腿 四 頭 筋 や 背 筋 群 の 筋 力 が 発 揮
しづらい 状 況 となり、 結 果 的 に 歩 行 能 力 低 下 につながるとされている 28,42) 。
したがって 高 齢 者 の 異 常 姿 勢 と 身 体 機 能 の 関 係 を 明 らかにすることは、 異 常 姿
勢 の 予 防 やトレーニングをすることで 身 体 機 能 の 向 上 につながると 考 えられる。
しかし、これまでの 矢 状 面 脊 柱 アライメントの 研 究 は、 骨 粗 鬆 症 を 起 因 する 脊
椎 圧 迫 骨 折 患 者 を 対 象 にしたものが 多 いことから 必 然 的 に 高 齢 女 性 を 対 象 とし
た 研 究 が 多 く 高 齢 男 性 を 対 象 とした 研 究 は 少 ない 22, 27,28-32) 。
このように 高 齢 者 にとっての 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 歩 行 能 力 を 中 心 とす
る 身 体 機 能 は QOL を 維 持 するために 重 要 な 要 素 と 考 えられる。しかし、 矢 状
面 脊 柱 アライメントと 身 体 機 能 の 関 係 について 検 討 した 研 究 は 少 なく、 男 性 高
齢 者 を 対 象 としていない 場 合 が 多 い。しかし、 高 齢 化 社 会 を 迎 えた 現 在 、 男 性
高 齢 者 を 対 象 とした 研 究 が 必 要 と 思 われる。
23

本 章 の 目 的 は、 男 性 高 齢 者 を 対 象 として 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 身 体 機
能 との 相 関 関 係 をしらべるとともに 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 下 肢 筋 力 が 歩 行
能 力 の 予 測 因 子 として 当 てはまるか 否 かを 明 らかにすることである。
24

第 2 節 方 法
1. 対 象
対 象 は 福 岡 県 F 町 の 高 齢 者 交 流 事 業 に 参 加 登 録 している 65 歳 以 上 の 高 齢 者
634 名 のうち、 平 成 19 年 8 月 から 平 成 22 年 9 月 に 実 施 した 健 康 調 査 に 参 加 し
た 587 名 の 高 齢 者 の 中 から、 本 研 究 で 使 用 した 測 定 項 目 全 てを 測 定 出 来 た 男 性
高 齢 者 124 名 とした。 対 象 者 の 平 均 年 齢 は 73.0±7.2 歳 であり、 平 均 身 長 は
159.4±15.4cm、 平 均 体 重 は 59.4±8.8kg であった。
対 象 者 は 自 家 用 車 や 自 転 車 、あるいは 徒 歩 によって 自 ら 調 査 に 参 加 できる 程
度 に 自 立 した 高 齢 者 であり、 要 介 護 認 定 を 受 けた 者 や 重 度 の 認 知 症 が 疑 われる
者 (Mini-Mental State Examination; MMSE で 20 点 以 上 )、および 脳 血 管
障 害 や 関 節 リウマチなどによる 典 型 的 な 身 体 障 害 を 有 する 者 はいなかった。な
お、 対 象 者 には、 研 究 の 趣 旨 と 内 容 、 得 られたデータは 研 究 目 的 以 外 には 使 用
しないこと、および 個 人 情 報 の 取 り 扱 いには 十 分 に 配 慮 することを 説 明 し、 理
解 を 得 た 上 で 協 力 を 求 めたが、 研 究 への 参 加 は 自 由 意 志 であり、 被 験 者 になら
なくても 不 利 益 にならないことを 口 答 と 書 面 で 説 明 し、 了 承 を 得 たうえで 測 定
を 実 施 した。また、 本 研 究 は 早 稲 田 大 学 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 受 けて 実 施 した( 承
認 番 号 2009- 055)。
2. 方 法
測 定 項 目 は、 矢 状 面 脊 柱 アライメント、 最 大 歩 行 速 度 (Maximum walk speed :
Maximal WS)、 Timed Up and Go test( TUG)、 10m 障 害 物 歩 行 時 間 (10-m
obstacle walking time)、 6 分 間 歩 行 距 離 テスト(6-minute walk distance:
6-min walk)、 最 大 膝 伸 展 筋 力 (Knee extensor strength)、バランステストと
して 開 眼 片 足 立 ち 保 持 時 間 (Balance test: Balance time) とした。
25

脊 柱 アライメントの 測 定 には、Spinal Mouse( Idiag AG, Switzerland)を
使 用 した( 図 5)。 こ の Spinal Mouse での 測 定 は、 従 来 の 脊 柱 可 動 域 測 定 と 比
較 して 非 常 に 簡 便 でありまた、 信 頼 性 が 高 い 11,12) ことから 採 用 した。 測 定
肢 位 は 安 静 立 位 とし、 第 7 頸 椎 から 第 3 仙 椎 までの 棘 突 起 上 にセンサー 部 を 当
て、 頭 側 から 尾 側 へ 移 動 させて 脊 柱 アライメントを 測 定 した。 今 回 分 析 に 使 用
したのは、 第 1 胸 椎 と 第 12 胸 椎 で 作 られる 胸 椎 後 彎 角 ( 度 )( thoracic kyphosis
angle:TKA)、 第 1 腰 椎 と 第 5 腰 椎 で 作 られる 腰 椎 前 彎 角 ( 度 )( lumbar lordosis
angle:LLA)であった( 図 6)。 角 度 表 示 は、 後 彎 角 を プラス 表 示 、 前 彎 角 を
マイナス 表 示 とした( 図 6) 。 脊 柱 アライメントの 測 定 は 3 回 実 施 し、その 平
均 値 を 採 用 した。
Maximal WS は、5m の 測 定 区 間 を 中 間 に 含 む 11m の 平 地 を 最 速 で 歩 行 する
よう 指 示 し、2 回 試 行 して 得 られた 速 度 (m/sec)を 算 出 した。なお、 計 測 には
ストップウォッチを 使 用 し、 各 試 行 間 は3 分 間 とした。
10-m obstacle walking time は、スポンジ 製 の 高 さ 20cm の 障 害 物 が、2m 間
隔 で 6 個 設 置 された 10m の 直 線 の 最 速 歩 行 とした。 所 要 時 間 (sec)をストッ
プウォッチにて 2 回 測 定 し、その 最 短 時 間 を 代 表 値 とした。 各 試 行 間 は3 分 間
と した。
TUG は、Podsiadlo ら 49) の 方 法 に 従 って、 椅 子 座 位 から 立 ち 上 がり、3m
先 の 目 標 物 で 方 向 転 換 し 着 座 するまでの 時 間 (sec)とした。 計 測 はストップウ
ォッチを 使 用 した。2 回 測 定 し、その 最 速 時 間 を 代 表 値 とした。
6-min walk は、1 周 30 m の 室 内 スペースを 利 用 し、6 分 間 にできる 限 り 長
い 距 離 を 歩 くよう 指 示 し、その 歩 行 距 離 を 1m 単 位 で 測 定 した。
Knee extensor strength の 測 定 は、ハンドヘルドダイナモメーター(μTas F-1
アニマ 社 製 )を 使 用 し、 椅 子 座 位 で 膝 関 節 90 度 屈 曲 位 の 被 験 者 に 対 し、 左 右 2
26

回 ずつ 行 った。その 最 大 値 を 大 腿 四 頭 筋 筋 力 値 ( kg)とした。 各 試 行 間 は3 分
間 とした。
Balance time の 測 定 は、 開 眼 片 足 立 ち 位 で 姿 勢 保 持 できる 時 間 を 120 秒 を 上
限 としてデジタルストップウォッチを 使 用 して 左 右 2 回 ずつ 行 い、その 最 長 時
間 を 代 表 値 とした。この 際 、 被 験 者 に 裸 足 になること、 両 上 肢 は 軽 く 体 側 につ
けること、2m 前 方 の 視 線 と 同 じ 高 さの 点 を 注 視 することを 指 示 した。
3. 統 計 処 理
統 計 処 理 は、 各 測 定 値 の 関 連 についてピアソンの 相 関 係 数 を 使 用 した。また
各 歩 行 能 力 と TKA、LLA の 関 係 性 を 検 討 するために、 従 属 変 数 を 各 歩 行 能 力 、
独 立 変 数 に TKA、LLA、Knee extensor strength、Balance time を 投 入 したス
テップワイズ 法 による 重 回 帰 分 析 を 行 った。 統 計 解 析 には SPSS 18.0 (SPSS
Japan, Tokyo, Japan)を 用 い、 危 険 率 5% 未 満 を 有 意 とした。
27

第 3 節 結 果
全 て 測 定 項 目 が 安 全 に 行 われ、 有 害 な 事 象 は 報 告 されなかった。 各 測 定 値 の
平 均 値 と 標 準 偏 差 は、MMSE 26.6±3.8 点 、TKA 35.8±9.7 度 、LLA -13.1±9.3
度 、Maximal WS 2.2±0.8m/s、10-m obstacle walking time 7.1±4.3 秒 、TUG
5.6±3.4 秒 、6-min walk 467.4±97.9m、Knee extensor strength 38.7±10.7kg、
Balance time 39.3±37.7 秒 であった( 表 5)。
表 5: 各 測 定 項 目 と 対 象 者 の 組 成 ( n=124)
Measurement Mean SD
Age (year) 73.0 7.2
Height (cm) 159.4 15.4
Weight (kg) 59.4 8.8
MMSE 26.6 3.8
TKA (゜) 35.8 9.7
LLA (゜) -13.1 9.3
Maximal WS (m/sec) 2.2 0.8
10-m obatacle walking time (sec) 7.1 4.3
TUG (sec) 5.6 3.4
6-min walk (m) 467.0 97.9
Knee extensor strength (kg) 38.7 10.7
Balance time (sec) 39.3 37.7
28

相 関 関 係 は、TKA については LLA のみに 有 意 な 相 関 を 認 め(r=-0.36,p

ステップワイズ 法 による 重 回 帰 分 析 により, 各 歩 行 能 力 に 影 響 を 及 ぼす 因 子
として 抽 出 された 項 目 は、LLA と Knee extensor strength の 2 項 目 であった。
Maximal WS では LLA( p

図 6: 膝 伸 展 筋 力 と 各 歩 行 能 力 と Balance テストの 散 布 図
31

図 7:LLA と 各 歩 行 能 力 と Balance テストの 散 布 図
32

第 4 節 考 察
加 齢 に 伴 う 矢 状 面 脊 柱 アライメント 変 化 と 身 体 機 能 低 下 について 検 討 するこ
とは、これまでの 研 究 から 見 ても 意 義 深 いものである。しかも 男 性 高 齢 者 を 対
象 とする 研 究 が 少 ない 事 からも、 興 味 深 い 研 究 と 考 えられる。 本 章 は、 地 域 在
住 男 性 高 齢 者 を 対 象 として 歩 行 能 力 と 矢 状 面 脊 柱 アライメントの 関 係 について
検 討 した。その 結 果 、LLA は 計 測 した 各 歩 行 能 力 と Knee extensor strength、
Balance test と 有 意 な 相 関 を 示 した。また、 重 回 帰 分 析 の 結 果 、 各 歩 行 能 力 に
影 響 を 与 える 因 子 として LLA と Knee extensor strength が 抽 出 された。
高 齢 者 の 歩 行 能 力 に 関 しては、Brown ら 50) は 膝 関 節 伸 展 筋 力 と 歩 行 能 力 は
相 関 すると 報 告 し、Rantanen ら 51) は 脚 伸 展 筋 力 と 歩 行 速 度 は 高 齢 者 の 自 立
に 関 係 していると 述 べている。また、Judge ら 52) は 膝 伸 展 筋 の 筋 力 増 強 が 歩
行 速 度 の 増 加 につながると 報 告 している。 本 研 究 でも 各 歩 行 能 力 は
Knee
extensor strength と 有 意 な 相 関 を 示 したことはこれらの 報 告 と 一 致 する 結 果
であった。
歩 行 能 力 と 矢 状 面 脊 柱 アライメントの 関 係 について Imagama ら 53) は 脊 柱
後 彎 は 歩 行 能 力 と 関 連 していると 報 告 し、Ryan ら 54) も 同 様 の 報 告 をしてい
る。また Sarwahi ら 42) は Flat back 患 者 21 名 と 健 常 者 の 歩 行 速 度 を 比 較 し、
Flat back 患 者 は 健 常 者 の 61%の 歩 行 速 度 しかなかったと 報 告 している。 本 研
究 においても LLA も 各 歩 行 能 力 と 有 意 な 負 の 相 関 を 認 めており、 先 行 研 究 と 同
様 の 結 果 であった。つまり、LLA が 減 少 すれば 歩 行 能 力 が 低 下 することが 示 唆
された。 高 齢 者 の 脊 柱 変 形 は TKA が 最 も 増 大 し,その 彎 曲 の 頂 点 が 下 方 に 下
がることによる 彎 曲 の 範 囲 増 大 により、LLA の 減 少 が 生 じる 55) 。さらに、そ
の 代 償 として 頚 椎 の 前 彎 は 増 強 し、LLA が 減 少 して 力 学 的 平 衡 を 保 つ。また、
骨 盤 は 後 傾 位 をとるようになる。このような 姿 勢 では、 膝 関 節 が 屈 曲 位 をとる
33

ことになる。したがって、 通 常 重 心 線 は 膝 関 節 の 前 方 を 通 過 するが,LLA が 減
少 した 高 齢 者 では 重 心 線 は 膝 関 節 の 後 方 に 位 置 することとなる。この 結 果 、 筋
群 では 背 筋 群 , 大 腿 直 筋 , 腓 腹 筋 が 過 剰 に 働 き、 筋 の 易 疲 労 性 などをもたらし、
二 次 的 に 筋 力 の 低 下 を 引 き 起 こすと 考 えられる。Tae ら 56) は、LLA が 減 少 す
ると 背 筋 群 の 筋 力 が 11.7% 低 下 すること 報 告 している。また、Mangione ら 57)
は 腰 椎 後 彎 の 増 強 は 股 関 節 周 囲 筋 の 筋 力 低 下 をもたらすと 報 告 している。この
ように 男 性 高 齢 者 においては 骨 粗 鬆 症 が 無 いにも 関 わらず 腰 椎 前 彎 角 減 少 とい
う 変 形 が 明 らかになり、 下 肢 筋 力 低 下 や 歩 行 速 度 低 下 につながっていることが
示 唆 された。
各 歩 行 能 力 に 影 響 を 及 ぼす 因 子 として Knee extensor strength と LLA が 抽
出 された。Knee extensor strength と 歩 行 速 度 の 関 係 については 正 の 相 関 関 係
が 成 立 することは 先 行 研 究 から 明 らかにされている。また、10-m obstacle
walking time、 TUG、 6-min walk と Knee extensor strength の 関 係 について
も 10-m obstacle walking time、 TUG、 6-min walk が 歩 行 速 度 に 依 存 するこ
とを 考 えれば 当 然 の 結 果 と 思 われる。
TKA と 歩 行 能 力 には 相 関 関 係 が 示 されなかった。 本 章 結 果 からこの 関 係 を 明
らかにするのは 困 難 である。しかし 考 えられる 理 由 として、 日 本 人 女 性 高 齢 者
の 脊 柱 変 形 の 多 くは TKA の 増 大 であることが 示 されているが、 男 性 高 齢 者 で
は TKA 増 大 は 多 くないことと 今 回 の 対 象 者 が 健 康 高 齢 者 だったことが 考 えら
れる。しかし、この 関 係 については 今 後 も 検 討 が 必 要 と 考 えられた。
バランステストは TKA 以 外 の 測 定 項 目 に 相 関 関 係 を 認 めた。LLA との 関 係
について、 腰 椎 が 後 彎 傾 向 を 呈 すると 骨 盤 が 後 傾 し、 重 心 線 は 膝 関 節 の 後 方 を
通 過 することになる。したがって、 片 足 立 ちを 保 持 しようとすると、 膝 伸 展 筋
に 大 きな 負 荷 が 掛 かることが 考 えられる。 従 って LLA と 片 足 立 ち 保 持 時 間 は 負
34

の 相 関 を 示 したと 考 えられる。また、バランス 能 力 と 歩 行 能 力 の 関 係 について
は、Arai ら 58) は Balance time と Maximal WS は 相 関 関 係 が 認 められると 報
告 している。また、 下 肢 筋 力 と Balance time の 関 係 についても 相 関 関 係 が 認
められている。これらの 報 告 は 本 研 究 結 果 と 一 致 している。Balance time と
Maximal WS に 相 関 関 係 が 認 められることから 59,60) 、 本 章 において TUG、
10-m obstacle walking time、 6-min walk の 測 定 項 目 と Balance time に 相 関
関 係 を 認 められたことは、 妥 当 な 結 果 と 考 えられた。
本 研 究 で LLA が 抽 出 されたことは 注 目 されるべき 事 柄 である。これまで 脊 柱
30)
変 形 と 身 体 機 能 に 関 する 研 究 は 転 倒 のリスクに 関 する 報 告 や QOL に 関 係
21, 23,37)
する 研 究 が 認 められるが、これらは 高 齢 女 性 を 対 象 とした 研 究 で
ある 場 合 が 多 い。 本 章 は 男 性 高 齢 者 を 対 象 とし、その 歩 行 能 力 に 着 目 して LLA
との 関 係 を 示 した。このような 研 究 は 少 ないことから、 今 後 貴 重 なデータにな
りうると 考 えられる。 歩 行 速 度 は 生 存 率 に 関 連 しているとする 研 究 も 認 められ
る 61,62 ) 。このように 歩 行 能 力 は、 高 齢 者 の QOL を 維 持 する 上 で 最 も 重 要
な 基 本 動 作 能 力 であることは 疑 いのことである。これらのことから 矢 状 面 脊 柱
アライメントを 理 想 的 な 位 置 に 保 つことが 重 要 と 思 われる。そのためには、
Knee extensor strength 強 化 トレーニング 共 に LLA 減 少 予 防 対 するアプロー
チが 必 要 と 思 われる。
今 後 の 研 究 課 題 として、 本 研 究 の 対 象 は 健 康 度 の 高 い 高 齢 者 であり、また
一 部 地 域 の 男 性 に 限 定 したため、 今 回 の 結 果 が 要 介 護 状 態 の 高 齢 者 を 含 むすべ
ての 男 性 高 齢 者 に 該 当 するとは 限 らない。また、 脊 柱 アライメントの 測 定 に
Spinal Mouse を 使 用 したが、それは 静 的 なアライメントを 計 測 するものであ
る。よって、 歩 行 能 力 測 定 など 運 動 中 の 脊 柱 アライメントの 変 化 を 検 討 できな
いことが 本 章 の 限 界 である。また、 本 研 究 では R が 50% 未 満 であったことに
35

ついて、そもそも 歩 行 能 力 は 膝 関 節 伸 展 筋 力 だけで 判 断 出 来 ず、 股 関 節 周 囲 筋
や 足 関 節 周 囲 筋 の 影 響 も 考 慮 する 必 要 があり、それらを 入 れて 検 討 モデルを 構
築 すべきであった。しかしながら、 臨 床 場 面 では 膝 関 節 伸 展 筋 力 が 簡 便 かつ 身
体 機 能 を 反 映 している 点 で 有 益 であることか 膝 関 節 伸 展 筋 と 被 爆 の 危 険 性 が 無
く 測 定 できる Spinal Mouse を 使 用 して 関 係 を 検 討 した 点 で 有 益 であったと 思
われる。 今 後 は、 対 象 者 数 や 対 象 とする 身 体 機 能 レベルの 範 囲 を 増 やし、 本 章
結 果 を 一 般 化 することが 課 題 である。
36

第 5 節 まとめ
本 章 は、 地 域 在 住 男 性 高 齢 者 の 歩 行 能 力 と 矢 状 面 脊 柱 アライメントとの 関 係
について 検 討 した 結 果 、LLA が 各 歩 行 能 力 と 相 関 関 係 があることを 明 らかにし
た。また、 各 歩 行 能 力 に 影 響 を 与 える 因 子 として LLA と Knee extensor
strength が 抽 出 された。このことから LLA が 歩 行 能 力 に 影 響 を 及 ぼすことが
示 唆 され、 高 齢 者 の 評 価 項 目 の 一 つになる 可 能 性 があると 思 われる。
37

第 5 章 総 合 論 議
38

人 間 の 脊 柱 は、 胎 生 期 、 新 生 児 では 一 時 彎 曲 のみで C 字 型 の 彎 曲 をしている
( 矢 状 面 )が、10 歳 頃 には 逆 S 状 の 脊 柱 カーブ(いわゆる 脊 柱 の 生 理 的 彎 曲 )
が 完 成 する。その 後 、 加 齢 等 の 影 響 により 様 々な 変 化 を 生 じてくる。 脊 柱 の 変
形 は 外 観 上 の 異 常 を 認 めるだけではなく、 脊 柱 およびその 周 囲 に 存 在 する 脊 髄 、
末 梢 神 経 、 筋 組 織 、 靱 帯 、 心 臓 、 肺 、 消 化 管 など 全 身 に 少 なからず 影 響 を 与 え
ていると 考 えられる。さらに 高 齢 者 の 日 常 生 活 活 動 においても、 精 神 心 理 面 、
起 居 移 動 動 作 など 基 本 的 動 作 能 力 に 影 響 を 及 ぼしていると 考 えられる。
これまで、 脊 柱 形 状 の 評 価 で 使 用 されているのは X 線 撮 影 である。しかしな
がら 被 爆 のリスクがあり、 誰 でも 使 用 できる 訳 ではないので 利 便 性 に 欠 けてい
る。 本 論 文 で 使 用 した Spinal Mouse は 体 表 面 から 脊 柱 彎 曲 角 を 測 定 ができ、
携 帯 性 も 良 いので 地 域 在 住 高 齢 者 の 測 定 に 適 している。これまでの Spinal
Mouse の 先 行 研 究 から 裸 体 での 信 頼 性 は 確 認 されている。しかし、 高 齢 者 の 調
査 や 臨 床 場 面 では 裸 になることに 抵 抗 をしめす 方 が 認 められ、 測 定 を 拒 否 され
ることがある。この 問 題 を 解 決 するために、 肌 着 程 度 の 被 服 を 着 用 した 状 態 で
の Spinal Mouse の 信 頼 性 を 検 討 することを 第 一 の 研 究 として 行 った。その 結
果 、 肌 着 程 度 のものであれば 着 用 して 測 定 しても 十 分 に 信 頼 性 のあるデータが
得 られることを 確 認 した。この 第 一 の 研 究 から Spinal Mouse は 臨 床 場 面 で 脊
柱 彎 曲 角 を 簡 便 に 測 定 でき、さらに 信 頼 性 のあるデータを 採 取 することが 可 能
と 考 えられた。
次 に、 第 二 の 研 究 は、 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 身 体 機 能 との 関 係 について
と 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 下 肢 筋 力 が 男 性 高 齢 者 の 歩 行 能 力 を 反 映 している
かを 検 討 した。その 結 果 、 相 関 関 係 については 胸 椎 後 彎 角 よりも 腰 椎 前 彎 角 と
身 体 機 能 は 相 関 していることが 示 唆 された。 特 に 歩 行 能 力 に 関 する 項 目 につい
て 相 関 関 係 が 認 められたことから、 腰 椎 前 彎 角 は 歩 行 能 力 との 関 係 が 深 いこと
39

考 えられた。この 結 果 を 基 に 重 回 帰 分 析 を 行 った 結 果 、 腰 椎 前 彎 角 と 下 肢 筋 力
は 歩 行 能 力 を 反 映 していることが 示 唆 された。 男 性 高 齢 者 では 骨 粗 鬆 症 が 無 い
にも 関 わらず 腰 椎 前 彎 角 が 減 少 し 歩 行 能 力 に 影 響 を 及 ぼしていることが 明 らか
になった。
本 研 究 で 得 られた 知 見 は、 男 性 高 齢 者 のヘルスプロモーションおよび 理 学 療
法 に 貢 献 できる 可 能 性 が 高 いと 思 われる。 また、 人 間 科 学 の 観 点 からも 脊 柱 ア
ライメントの 重 要 性 を 再 確 認 できる 知 見 と 考 えられる。 超 高 齢 者 社 会 を 迎 えよ
うとする 我 が 国 では、 高 齢 者 の 健 康 増 進 、 予 防 医 学 の 発 展 はなくてはならない
ものと 考 えられる。 高 齢 者 の ADL や QOL の 維 持 に 重 要 な 要 素 である 歩 行 能 力
を 維 持 するために 脊 柱 変 形 を 予 防 することが 重 要 と 考 えられる。そのためには、
脊 柱 アライメントを 整 える 理 学 療 法 や 下 肢 筋 力 強 化 が 必 要 と 考 えられる。
以 上 のように、 本 論 文 で 明 らかにされた 結 果 は、 脊 柱 アライメントが 男 性 高
齢 者 の 身 体 機 能 に 影 響 を 及 ぼすことについて、 新 たな 知 見 を 加 え、 今 後 の 高 齢
者 のヘルスプロモーションや 理 学 療 法 プログラム、 人 間 科 学 の 基 礎 的 知 見 とし
て 役 立 つことを 切 に 願 う。
40

謝 辞
本 論 文 の 作 成 にあたり, 懇 切 丁 寧 に 指 導 して 頂 いた 鈴 木 秀 次 教 授 に 心 から 謝
意 を 表 します。 本 論 文 の 内 容 に 関 する 貴 重 な 御 指 導 、 御 助 言 を 頂 いた 人 間 科 学
研 究 科 の 藤 本 浩 志 教 授 、 竹 中 晃 二 教 授 に 心 より 御 礼 申 し 上 げます。 本 研 究 を 進
めるにあたり、 多 岐 に 渡 って 惜 しみないご 指 導 とご 協 力 を 賜 りました 京 都 橘 大
学 の 村 田 伸 教 授 、 神 戸 国 際 大 学 の 堀 江 淳 准 教 授 に 深 い 感 謝 の 意 を 評 します。そ
して、 英 語 での 論 文 投 稿 作 成 に 悪 戦 苦 闘 していた 際 に、 英 文 法 だけでなく 内 容
に 関 する 得 難 い 助 言 を 頂 いた University of Groningen の Tibor Hortobágyi 教 授 に
厚 く 御 礼 申 し 上 げます。
本 研 究 を 行 うにあたり、 福 岡 県 田 川 郡 福 智 町 役 場 の 職 員 の 方 々には、お 忙 し
い 中 にも 関 わらず、 日 程 調 整 や 調 査 活 動 広 報 にご 協 力 頂 き 感 謝 の 意 を 表 します。
さらに、この 調 査 研 究 に 参 加 して 頂 いた 高 齢 者 の 皆 様 方 に 厚 く 御 礼 申 し 上 げま
す。そして、 多 岐 にわたって 協 力 頂 いた 早 稲 田 大 学 人 間 科 学 部 運 動 制 御 ・バイ
オメカニクス 研 究 室 の 大 学 院 生 や 学 部 生 の 皆 様 に 心 より 感 謝 します。 特 に、 本
研 究 にアドバスを 頂 いた、 同 研 究 室 出 身 の 植 松 梓 氏 に 心 より 深 謝 申 し 上 げます。
最 後 に、 博 士 課 程 での 研 究 活 動 や 調 査 出 張 で 家 を 留 守 にしたり、 家 庭 サービ
スを 御 座 成 りしていることについて、 何 も 言 わず 学 位 取 得 に 全 面 的 に 支 援 して
くれた 妻 の 美 佐 に 深 く 感 謝 致 します。また 両 親 にも 深 く 感 謝 致 します。
41

研 究 業 績
本 論 文 の 内 容 の 一 部 は 以 下 の 学 術 雑 誌 に 掲 載 されている。
1. 宮 﨑 純 弥 、 村 田 伸 、 大 田 尾 浩 、 堀 江 淳 、 村 田 潤 、 鈴 木 秀 次 :2009 男 性 高
齢 者 の 矢 状 面 脊 柱 アライメントと 身 体 機 能 の 関 係 . 理 学 療 法 科 学 , 24 巻 ,
907- 911 貢 .
2. 宮 﨑 純 弥 、 村 田 伸 、 荒 川 千 秋 、 鈴 木 秀 次 :2010 Spinal Mouseを 使 用 した
脊 柱 彎 曲 角 度 の 再 現 性 . 理 学 療 法 科 学 , 25 巻 ,223- 226 貢 .
3. 宮 﨑 純 弥 、 村 田 伸 、 堀 江 淳 、 鈴 木 秀 次 :2010 男 性 高 齢 者 における30 秒 間
の 開 眼 片 足 立 ち 保 持 ができる 意 義 . 理 学 療 法 科 学 , 25 巻 ,379- 383 貢 .
4 . 宮 﨑 純 弥 、 村 田 伸 、 堀 江 淳 、 鈴 木 秀 次 :2010 高 齢 者 の 長 座 体 前 屈 距 離 と
脊 柱 可 動 性 ならびに 下 肢 伸 展 挙 上 可 動 域 との 関 係 . 理 学 療 法 科 学 ,25 巻 ,683
- 686 貢 .
5.Junya Miyazaki, Shin Murata, Jun Horie, Azusa Uematsu, Tibor Hortobágyi,
Shuji Suzuki : 2013 Lumbar lordosis angle (LLA) and leg strength predict
walking ability in elderly males. Archives of Gerontology and Geriatrics, 56,
141-147.
本 論 文 の 内 容 の 一 部 は 以 下 の 学 会 において 発 表 されている。
( 国 内 学 会 )
1. 宮 﨑 純 弥 、 村 田 伸 、 堀 江 淳 、 鈴 木 秀 次 : 男 性 高 齢 者 の 片 足 立 ち 保 持 時 間 と
身 体 機 能 の 関 連 . 第 45 回 日 本 理 学 療 法 学 術 大 会 (2010 年 5 月 , 岐 阜 市 )
理 学 療 法 学 第 37 巻 大 会 特 別 号 O2-061
42

( 国 際 学 会 )
1.Miyazaki J、 Murata S、 Horie J、 Suzuki S: Relation between spinal sagittal
alignment and physical function of community-dwelling elderly men. American
College of Sports Medicine 57th Annual Meeting, Baltimore, USA, Jun 1-5,
2010, Medicine & Science in Sports & Exercise 42(5) 1806
2.Miyazaki J、 Murata S、 Horie J、 Suzuki S: Relationship between 30-Second
One-Leg standing time with eyes open and Physical Function of Elderly Men.
11th International Congress of the Asian Confederation for Physical Therapy,
Bali, Indonesia, Oct 10-13, 2010, Program pp74
3 .Miyazaki J、Murata S、Horie J、Suzuki S:Relationship between spinal sagittal
alignment and physical function of community-dwelling elderly. 16th
International World Confederation for Physical Therapy Congress, Amsterdam,
Netherland, June 20-23, 2011, program 306-14
4.Miyazaki J、Murata S、Horie J、Suzuki S: Relationship between spinal sagittal
alignment and physical function of community-dwelling elderly women.
EuroSpine 2011, Mirano, Italy, Oct19-20, 2011, e-poster No78
5 . Miyazaki J、 Murata S、 Horie J、 Hortobágyi T、 Suzuki S: Lumbar lordosis
angle predicts walking ability in community-dwelling elderly men. American
College of Sports Medicine 59th Annual Meeting, SanFrancisco, USA,
May30-Jun2, 2012, Medicine & Science in Sports & Exercise 44(5) 1428
43

参 考 文 献
1) 林 泰 史 : 骨 粗 鬆 症 に 対 するリハ・ アプローチ.リハ 医 学 , 1997, 34: 400
‐ 404.
2) 笠 原 とし 子 , 渡 辺 英 夫 , 笠 原 貴 紀 : 関 節 可 動 域 . 総 合 リハ,1991,19:297
‐ 300.
3)Hageman PA, Blanke DJ:Comparison of gait of young women and elderly
women. Phys Ther, 1980, 66: 1382-1387.
4)Murray MP, Kory RC, Clarkson BH:Walking patterns in healthy old men.
J Gerontol, 1969, 24: 169-178.
5)Winter DA, Patla AE, Frank JS, Walt SE:Biomechanical walking pattern
changes in the fit and healthy elderly. Phys Ther, 1990, 70: 340-347.
6) 村 田 伸 , 村 田 潤 , 津 田 彰 : 地 域 在 住 女 性 高 齢 者 の 足 把 持 力 と 胸 椎 後 彎 角
との 関 係 . 理 学 療 法 科 学 , 2008, 23: 601-607.
7) 坂 光 徹 彦 , 浦 部 幸 夫 , 山 本 圭 彦 : 脊 柱 後 彎 変 形 とバランス 能 力 および 歩 行
能 力 の 関 係 . 理 学 療 法 科 学 , 2007, 22: 489-494.
8) 甲 斐 義 浩 , 村 田 伸 , 大 田 尾 浩 ・ 冨 永 浩 一 ・ 松 本 武 士 ・ 吉 浦 勇 次 ・ 北 嶋 秀 一 ・
角 典 洋 : 地 域 在 住 女 性 高 齢 者 の 脊 椎 加 齢 変 と 下 肢 筋 力 との 関 連 . 理 学 療 法
科 学 , 2009, 24: 45-48.
9) 城 由 起 子 , 青 木 一 治 , 友 田 淳 雄 : 腰 椎 椎 間 関 節 症 患 者 の 脊 柱 アライメン
と 腰 痛 の 関 係 . 理 学 療 法 科 学 , 2009, 24: 65-69.
10) Horie J, Murata S, Inoue Y, Nakamura S, Maeda Y, Matsumoto Y,
Sannomiya T, Horikawa E : Study of the influence of the pulmonary
function on the angles of thoracic kyphosis and lumber lordosis in
community-dwelling elderly women. J.Phys.Ther. Sci, 2009, 21: 169-172.
44

11 ) Mannion AF, Knecht K, BalabanG, Dvorak J, Grob D : A new
skin-surface device for measuring the curvature and global and
segmental ranges of motion of the spine: reliability of measurements and
comparison with data reviewed from the literature. Eur Spine J, 2004,
13: 122-136.
12) Post RB, Leferink VJM: Spinal mobility: sagittal range of motion
measured with the spinal mouse, a new non-invasive device. Arch Othop
Trauma Surg, 2004, 124:187-192.
13) 宝 亀 登 , 里 見 和 彦 :スパイナルマウスによる 日 本 人 健 常 成 人 の 姿 勢 分 析 .
東 日 本 整 災 会 誌 , 2004, 16: 293-297.
14) Ripani M, Dicesare A, Giombini A, Agnello L, Fagnani F, Pigozzi F :
Spinal curvature: comparison of frontal measurements with the spinal
mouse and radiographic assessment. J Sports Med Phys Fitness, 2008,
48: 488-498.
15)Consmuller T, Rohlmann A, Weinland D, Druschel C, Duda G, Taylor W :
Comparative evaluation of a novel measurement tool to assess lumbar
spine posture and range of motion. Eur Spine, 2012, 21: 2170-2180.
16) Berthonnaud E, Dimnet J, Roussouly P, Grimard G, Vaz G, Dimnt J :
Analysis of the sagittal balance of the spine and pelvis using shape and
orientation parameters. J. Spinal. Disord. Tech, 2005, 18: 40-47.
17) Janssen MMA, Drevelle X, Humbert L, Skalli W, Castelein RM :
Differences in male and female spino-pelvic alignment in asymptomatic
young adults. Spine, 2009, 34: E826-E832.
18) Mac-Thiong JM, Labelle H, Berthonnaud E, Betz RR, Roussouly P :
45

Sagittal spinopelvic balance in normal children and adolescents. Eur.
Spine. J, 2007, 16: 227-234.
19)Roussouly P, Gollogly S, Berthonnaud E, Dimnet J : Classification of the
normal variation in the sagittal alignment of the human lumbar spine
and pelvis in the standing position. Spine, 2005, 30: 346-353.
20) Vialle R, Levassor N, Rillardon L, Templier A, Skalli W, Guigui P :
Radiographic analysis of the sagittal alignment and balance of the spine
in asymptomatic subjects. J. Bone. Joint. Surg. Am, 2005, 87: 260-267.
21) Miyakoshi N, Itoi E, Kobayashi M, Kodama H: Impact of postural
deformities and spinal mobility on quality of life in postmenopausal
osteoporosis. Osteoporos. Int, 2003, 14: 1007-1012.
22) Miyakoshi N, Hongo M, Maekawa S, Ishikawa Y, Shimada Y, Itoi E :
Back extensor strength and lumbar spinal mobility are predictors of
quality of life in patients with postmenopausal osteoporosis. Osteoporos.
Int, 2007, 18: 1397-1403.
23)Hongo M, Itoi E, Sinaki M, Miyakoshi N, Shimada Y, Maekawa S, Okada
K, Mizutani Y : Effect of low-intensity back exercise on quality of life
and back extensor strength in patients with osteoporosis: a randomized
controlled trial. Osteoporos. Int, 2007, 18: 1389-1395.
24) 森 諭 史 : 骨 粗 鬆 症 患 者 の 椎 体 圧 迫 骨 折 , 脊 柱 変 形 と ADL 低 下 の 関 連 .
日 本 腰 痛 会 誌 , 2002, 8 : 58-63.
25 ) Katzman W, Vittinghoff E, Kado D: Age-related hyperkyphosis,
independent of spinal osteoporosis, is associated with imparired
mobility in older community-dwelling women. Osteoporos. Int. 2011,
46

22:85-90.
26) 大 内 尉 義 : 骨 粗 鬆 症 の 性 差 .Clinical Calcium, 2003, 13: 1383.
27) Kado DM, Huang MH, Karlamangla AS, Barrett-Connor E, Greendale
GA: Hyperkyphotic posture predicts mortality in older
community-dwelling men and women: a prospective study. J. Am.
Geriatr. Soc, 2004, 52: 1662-1667.
28) Imagama S, Matsuyama Y, Hasegawa Y, Sakai Y, Ito Z, Ishiguro N,
Hamajima N : Back muscle strength and spinal mobility are predictors of
quality of life in middle-age and elderly males. Eur. Spine. J, 2011, 20:
954-961.
29) Mika A, Unnithan VB, Mika P : Differences in thoracic kyphosis and in
back muscle strength in women with bone loss due to osteoporosis. Spine.
2005, 30: 241-246.
30) Sinaki M, Brey RH, Hughes CA, et al: Significant reduction in risk of
falls and back pain in osteoporotic-kyphotic women through a Spinal
Proprioceptive Extension Exercise Dynamic (SPEED) program. Mayo Clin
Proc, 2005, 80: 849-855.
31) Tsauo JY, Chien MY, Yang RS : Spinal performance and functional
impairment in postmenopausal women with osteoporosis and osteopenia
without vertebral fracture. Osteoporos. Int, 2002, 13: 456-460.
32) Liu-Ambrose T, Eng JJ, Khan KM, Mallinson A, Carter ND, Mckay HA :
The influence of back pain on balance and functional mobility in 65- to
75-year-old women with osteoporosis. Osteoporos. Int, 2002, 13: 868-873.
33) Wiles P :Postual deformities of anteroposterior curves of the spine.
47

Lancet 2, 1937: 911-919.
34) 仲 田 和 正 , 岩 谷 力 , 関 谷 仁 : 別 冊 整 形 外 科 No12 高 齢 者 の 脊 椎 疾 患 , 高
齢 者 の 姿 勢 . 南 江 堂 , 東 京 ,1987: 2-6.
35 ) Mckenzie RT : Exercise in Education and Medicine. Saunders,
Philadelphia, 1923: 145-168.
36)Cureton TK:The validity of antero-posterior spinal measurements. Res
Quart, 1931, 2: 101-113.
37) Hogan, DB, 1987. Idiopathic gait disorder of the elderly. Clin. Rehabil.
1, 17-22.
38)Kado DM, Prenovost K, Crandall C : Narrative review: hyperkyphosis in
older persons. Ann. Intern. Med, 2007, 147: 330-338.
39)Milne JS, Williamson J : A longitudinal study of kyphosis in older people.
Age. Ageing, 1983, 12: 225-233.
40)Driscoll C, Aubin CE, Labelle H, Dansereau J : The relationship between
hip flexion / extension and the sagittal curves of the spine. Stud. Health.
Technol. Inform, 2008, 140: 90-95.
41) Barrey C, Roussouly P, Perrin G, Le Hues JC, : Sagittal balance
disorders in severe degenerative spine. Can we identify the
compensatory mechanisms. Eur. Spine. J, 2011, 20: Suppl 5, 626-633.
42) Sarwahi V, Boachie-Adjei O, Backus SI, Taira G : Characterization of
gait function in patients with postsurgical sagittal (flatback)
deformity: a prospective study of 21 patients. Spine, 2002, 27:
2328-2337.
43) 宮 腰 尚 久 , 本 郷 道 生 , 前 川 重 人 ・ 石 川 慶 紀 ・ 島 田 洋 一 ・ 井 樋 栄 二 : 骨 粗 鬆
48

症 患 者 の QOL に 対 する 背 筋 力 と 脊 柱 可 動 性 .Osteoporosis Japan, 2006,
14: 257-259.
44) 畠 邦 晃 , 中 野 哲 雄 , 越 智 龍 弥 ・ 稲 葉 大 輔 ・ 安 岡 寛 理 : 健 常 女 性 と 圧 迫 骨
折 を 有 する 高 齢 女 性 の 脊 柱 アライメントの 検 討 .Therapeutic Research,
2008, 29: 597-600.
45) 粕 川 雄 司 , 宮 腰 尚 久 , 石 川 慶 紀 : 骨 粗 鬆 症 患 者 における 脊 柱 可 動 性 , 重 心
動 揺 および 筋 力 の 差 異 が 転 倒 に 及 ぼす 影 響 .Geriatric Medicine,2006,44:
211-214.
46) 川 田 倫 子 , 谷 俊 一 , 石 田 健 司 ・ 永 野 靖 典 ・ 山 本 博 司 : 高 齢 者 の 脊 柱 後 彎
と 日 常 の 活 動 性 および 生 活 の 満 足 度 . 骨 ・ 関 節 ・ 靱 帯 ,2006,19:611-615.
47) 桑 原 洋 一 , 斎 藤 俊 弘 , 稲 垣 義 明 : 検 者 内 および 検 者 間 の Reliability( 再 現
性 , 信 頼 性 )の 検 討 . 呼 と 循 , 1993, 41: 945-952.
48) 今 井 樹 , 潮 見 泰 蔵 : 理 学 療 法 研 究 における 評 価 の 信 頼 性 の 検 査 法 . 理 学
療 法 学 科 , 2004, 19: 261-265.
49)Podsiadlo D, Richardson : The timed “Up & Go”:a test of basic functional
mobility for frail elderly persons. J Am Geriate Soc, 1991, 39:142-148.
50) Brown M, Sinacore D.R, Host H.H : The Relationship of Strength to
Function in the Older Adult. J. Gerontol. A. Bio. Sci. Med. Sci, 1995, 50:
55-59.
51) Ratanen T, Avela J : Leg extension power and walking speed in very old
people living independently. J. Gerontol, 1997, 52A: M225-M231.
52) Judge JO, Underwood M, Gennosa T : Exercise to improve gait velocity
in the older persons. Arch. Phys. Med. Rehabil, 1993, 74: 400-406.
53) Imagama S, Hasegawa Y, Matsuyama Y, Sakai Y, Ito Z, Hamajima N,
49

Ishiguro N : Influence of sagittal balance and physical ability
associated with exercise on quality of life in middle-aged and elderly
people. Arch. Osteoporos, 2011, 6: 13-20.
54) Ryan SD, Fried LP : The impact of kyphosis on daily functioning. J. Am.
Geriatr. Soc, 1997, 45: 1479-1486.
55) Takemitsu Y, Harada Y, Iwahara T, Miyamoto M, Miyatake Y, : Lumbar
degenerative kyphosis. Clinical, radiological and epidemiological
studies. Spine, 1988, 13: 1317-1326.
56) Tae SB, Museong M : Effect of lumbar lordotic angle on lumbosacral
joint during isokinetic exercise: A simulation study. Clin. Biomech,
2010, 25: 628-635.
57)Mangione P, Senegas J : Sagittal balance of the spine. Rev. Chir. Orthop.
Reparatrice. Appar. Mot, 1997, 83: 22-32.
58) Arai T, Obuchi S, Inaba Y, Shiba Y, Satake K : The relationship between
physical condition and change in balance functions on exercise
intervention and 12-month follow-up in Japanese community-dwelling
older people. Arch Gerontol Geriatr, 2009, 48: 61-66.
59)Nagasaki H, Itoh H, Furuna T : A physical fitness model of older adults.
Aging, 1995, 7: 369-397.
60) Daubeny M, Culham E : Lower-extremity muscle force and balance
performance in adults aged 65 years and older. J Am Geriate Soc, 1999,
39: 142-148.
61)Studenski S, Perera S, Patel K, Rosano C, Faulkner K, Inzitari M, Brach
J, Chandler J, Cawthon P, Connor EB, Nevitt M, Visser M, Kritchevsky
50

S, Badinelli S, Harris T, Newman AB, Cauley J, Ferrucci L, Guralnik J :
Gait Speed and survival in older Adults. JAMA, 2011, 305: 50-58.
62) Hardy SE, Perera S, Roumani YF, Chandler JM, Studenski S :
Improvement in usual gait speed predicts better survival in older
adults. J. Am. Geriatr. Soc, 2007, 55: 1727-1734.
51