3 レベルのマルチレベル方式の半導体素子に 発生 ... - 長岡技術科学大学
3 レベルのマルチレベル方式の半導体素子に 発生 ... - 長岡技術科学大学 3 レベルのマルチレベル方式の半導体素子に 発生 ... - 長岡技術科学大学
3 レベルのマルチレベル 方 式 の 半 導 体 素 子 に 発 生 する 損 失 に 対 する 一 考 察 樫 原 有 吾 * , 伊 東 淳 一 ( 長 岡 技 術 科 学 大 学 ) A consideration of power semiconductor loss of three-level multilevel topologies Yugo Kashihara, Jun-ichi Itoh (Nagaoka University of Techonology) 1.はじめに 先 行 研 究 において, 様 々なマルチレベル 変 換 器 の 回 路 ト ポロジーが 提 案 , 検 討 されている (1)-(3) 。すべてのマルチレベ ル 変 換 器 は, 図 1 のような 2 つのスイッチと 1 つのキャパ シタをセルとして 構 成 される 一 般 的 なマルチレベル 方 式 ( 以 下 GM 方 式 )から 派 生 している (3) 。そのため,スイッチに 発 生 する 損 失 もスイッチングパターンが 同 じであれば 法 則 性 があると 考 えられる。 本 論 文 では 第 1 段 階 として,6 つの 3 レベル 方 式 に 発 生 す る 損 失 を 回 路 の 特 徴 ごとに 分 類 し 考 察 する。その 結 果 ,3 レベルインバータの 効 率 を 向 上 させるポイントを 明 確 にす る 2.マルチレベルトポロジー 図 1 に GM 方 式 の 回 路 図 を 示 す。GM 方 式 はキャパシタ とスイッチによって 入 力 電 圧 をクランプし, 階 段 状 の 電 圧 を 出 力 する。 図 2 に GM 方 式 から 派 生 した 5 つの 回 路 方 式 を 示 す。 図 2(a)はダイオード-キャパシタクランプ(DCC) 方 式 であり,こ れはダイオードとキャパシタ 2 つの 素 子 で 中 性 点 電 圧 をク ランプし, 階 段 状 の 電 圧 を 出 力 する。また, 図 2(b)はフラ イングキャパシタ(FC) 方 式 であり,フライングキャパシタ C 1 と 直 流 平 滑 キャパシタ C 2 ,C 3 によって 電 圧 を 加 減 算 する ことで, 階 段 状 の 電 圧 を 出 力 する。さらに, 図 2(c)のダイ オードクランプ(DC) 方 式 はダイオードによってクランプさ れた 電 圧 を 選 択 することで, 階 段 状 の 電 圧 を 出 力 する (1) 。 最 近 注 目 されている 図 2(d)の T-type 中 性 点 クランプ(T-type NPC) 方 式 はダイオードクランプ(DC) 方 式 と 同 様 であるが, 双 方 向 スイッチによってクランプされた 電 圧 を 選 択 するこ とで, 階 段 状 の 電 圧 を 出 力 する。 図 2(e)はアクティブ 中 性 点 クランプ(ANPC)であり (2) ,ANPC 方 式 はスイッチによっ てクランプされた 電 圧 を 選 択 することで, 階 段 状 の 電 圧 を 出 力 する。 3.マルチレベルトポロジーの 分 類 図 3 にマルチレベル 方 式 を 2 つのカテゴリーに 分 類 した 図 を 示 す。 図 1,2 に 示 した 回 路 方 式 は 2 章 で 述 べた 各 回 路 の 特 徴 から 図 3 のように 分 類 できる (3) 。マルチレベル 変 換 器 C 2 S 3 S C1 S 1 C 1 S C2 S 2 C 3 S 4 Fig.1. Three-level Generalized multilevel inverter topology. S 3 S 1 C 2 C 2 D 1 S 2 C 1 D 2 C 3 S 2 C 1 S 1 S 4 (a) Three-level Diode- and Capacitor-Clamped (b) Three-level Flying Capacitor inverter topology. inverter topology. S C1 , S C2 (GM) D 1 , D 2 S C1 , S C2 (GM) remove S 1 C 1 C 1 S 1 D 1 S 2 D 2 S 3 S S C 4 3 2 C 2 S 2 S 4 (c) Three-level Diode (d) Three-level T-type Clamped inverter topology. Neutral-Point-Clamped S C1 , S C2 (GM) D 1 , D 2 inverter topology. C 1 (GM) remove S C1 , S C2 (GM) S 3 , S 4 S 3 , S 4 , C 1 (GM) remove C 1 C 2 S 3 S 4 S 5 S 6 (e) Three-level Active Neutral-Point-Clamped inverter topology. C 1 (GM) remove Fig. 2 Multi level converter topologies. は,スイッチングによって 複 数 の 電 位 を 加 減 算 して 調 整 さ れた 電 圧 を 出 力 する 回 路 (カテゴリーA)とクランプされた 電 圧 をスイッチで 選 択 して 出 力 する 回 路 (カテゴリーB)に S 1 S 2 C 3 S 3 S 4
- Page 2: 分 けることができる。FC
3 レベルのマルチレベル 方 式 の 半 導 体 素 子 に<br />
発 生 する 損 失 に 対 する 一 考 察<br />
樫 原 有 吾 * , 伊 東 淳 一 ( 長 岡 技 術 科 学 大 学 )<br />
A consideration of power semiconductor loss of three-level multilevel topologies<br />
Yugo Kashihara, Jun-ichi Itoh (Nagaoka University of Techonology)<br />
1.はじめに<br />
先 行 研 究 において, 様 々なマルチレベル 変 換 器 の 回 路 ト<br />
ポロジーが 提 案 , 検 討 されている (1)-(3) 。すべてのマルチレベ<br />
ル 変 換 器 は, 図 1 のような 2 つのスイッチと 1 つのキャパ<br />
シタをセルとして 構 成 される 一 般 的 なマルチレベル 方 式<br />
( 以 下 GM 方 式 )から 派 生 している (3) 。そのため,スイッチに<br />
発 生 する 損 失 もスイッチングパターンが 同 じであれば 法 則<br />
性 があると 考 えられる。<br />
本 論 文 では 第 1 段 階 として,6 つの 3 レベル 方 式 に 発 生 す<br />
る 損 失 を 回 路 の 特 徴 ごとに 分 類 し 考 察 する。その 結 果 ,3<br />
レベルインバータの 効 率 を 向 上 させるポイントを 明 確 にす<br />
る<br />
2.マルチレベルトポロジー<br />
図 1 に GM 方 式 の 回 路 図 を 示 す。GM 方 式 はキャパシタ<br />
とスイッチによって 入 力 電 圧 をクランプし, 階 段 状 の 電 圧<br />
を 出 力 する。<br />
図 2 に GM 方 式 から 派 生 した 5 つの 回 路 方 式 を 示 す。 図<br />
2(a)はダイオード-キャパシタクランプ(DCC) 方 式 であり,こ<br />
れはダイオードとキャパシタ 2 つの 素 子 で 中 性 点 電 圧 をク<br />
ランプし, 階 段 状 の 電 圧 を 出 力 する。また, 図 2(b)はフラ<br />
イングキャパシタ(FC) 方 式 であり,フライングキャパシタ<br />
C 1 と 直 流 平 滑 キャパシタ C 2 ,C 3 によって 電 圧 を 加 減 算 する<br />
ことで, 階 段 状 の 電 圧 を 出 力 する。さらに, 図 2(c)のダイ<br />
オードクランプ(DC) 方 式 はダイオードによってクランプさ<br />
れた 電 圧 を 選 択 することで, 階 段 状 の 電 圧 を 出 力 する (1) 。 最<br />
近 注 目 されている 図 2(d)の T-type 中 性 点 クランプ(T-type<br />
NPC) 方 式 はダイオードクランプ(DC) 方 式 と 同 様 であるが,<br />
双 方 向 スイッチによってクランプされた 電 圧 を 選 択 するこ<br />
とで, 階 段 状 の 電 圧 を 出 力 する。 図 2(e)はアクティブ 中 性<br />
点 クランプ(ANPC)であり (2) ,ANPC 方 式 はスイッチによっ<br />
てクランプされた 電 圧 を 選 択 することで, 階 段 状 の 電 圧 を<br />
出 力 する。<br />
3.マルチレベルトポロジーの 分 類<br />
図 3 にマルチレベル 方 式 を 2 つのカテゴリーに 分 類 した<br />
図 を 示 す。 図 1,2 に 示 した 回 路 方 式 は 2 章 で 述 べた 各 回 路<br />
の 特 徴 から 図 3 のように 分 類 できる (3) 。マルチレベル 変 換 器<br />
C 2<br />
S 3<br />
S C1<br />
S 1<br />
C 1<br />
S C2<br />
S 2<br />
C 3<br />
S 4<br />
Fig.1. Three-level Generalized multilevel inverter topology.<br />
S 3<br />
S 1<br />
C 2 C 2<br />
D 1<br />
S 2<br />
C 1<br />
D 2<br />
C 3<br />
S 2<br />
C 1<br />
S 1<br />
S 4<br />
(a) Three-level Diode- and<br />
Capacitor-Clamped<br />
(b) Three-level Flying Capacitor<br />
inverter topology.<br />
inverter topology.<br />
S C1 , S C2 (GM) D 1 , D 2<br />
S C1 , S C2 (GM) remove<br />
S 1<br />
C 1<br />
C 1<br />
S 1<br />
D 1 S 2<br />
D 2 S 3<br />
S S<br />
C 4 3<br />
2 C 2<br />
S 2<br />
S 4<br />
(c) Three-level Diode<br />
(d) Three-level T-type<br />
Clamped inverter topology. Neutral-Point-Clamped<br />
S C1 , S C2 (GM) D 1 , D 2 inverter topology.<br />
C 1 (GM) remove<br />
S C1 , S C2 (GM) S 3 , S 4<br />
S 3 , S 4 , C 1 (GM) remove<br />
C 1<br />
C 2<br />
S 3<br />
S 4<br />
S 5<br />
S 6<br />
(e) Three-level Active Neutral-Point-Clamped inverter topology.<br />
C 1 (GM) remove<br />
Fig. 2 Multi level converter topologies.<br />
は,スイッチングによって 複 数 の 電 位 を 加 減 算 して 調 整 さ<br />
れた 電 圧 を 出 力 する 回 路 (カテゴリーA)とクランプされた<br />
電 圧 をスイッチで 選 択 して 出 力 する 回 路 (カテゴリーB)に<br />
S 1<br />
S 2<br />
C 3<br />
S 3<br />
S 4
分 けることができる。FC 方 式 は,フライングキャパシタの<br />
電 位 の 加 減 算 を 行 い 任 意 の 電 圧 に 調 整 して 電 圧 を 出 力 する<br />
ため,カテゴリーA に 分 類 できる。 一 方 で,DC 方 式 や T-type<br />
NPC 方 式 ,ANPC 方 式 はクランプされている 電 圧 から 任 意<br />
の 電 圧 を 選 択 するためカテゴリーB に 分 類 できる。GM 方 式<br />
や DCC 方 式 は, 他 の 方 式 と 比 較 してクランプ 素 子 が 複 数 有<br />
り,スイッチングの 自 由 度 が 高 いため,カテゴリーA,B 両<br />
方 の 動 作 を 取 ることができる。<br />
4.マルチレベル 変 換 器 の 半 導 体 素 子 の 損 失<br />
変 調 方 式 を 位 相 が 異 なる 複 数 のキャリアを 用 いた 位 相 シ<br />
フト 変 調 方 式 とすると,カテゴリーA の 変 調 波 A は(1) 式 で<br />
得 られる。<br />
asin<br />
................................................................. (1)<br />
A<br />
ここで,a は 変 調 率 ,は 出 力 電 流 位 相 である。 一 方 で,<br />
カテゴリーB の 変 調 率 は(2) 式 となる。<br />
asin<br />
when 0 <br />
B <br />
.................... (2)<br />
asin<br />
1<br />
when 2<br />
変 換 器 の 半 導 体 素 子 に 発 生 する 損 失 P loss は 次 式 で 表 すこ<br />
とができる (4) 。<br />
P<br />
loss<br />
P P .....................................................(3)<br />
con<br />
sw<br />
ここで,P con は 導 通 損 失 ,P sw はスイッチング 損 失 である。<br />
スイッチの 導 通 損 失 の 平 均 値 P con はスイッチのオン 電 圧<br />
とスイッチに 流 れる 電 流 から 導 出 することができ(4) 式 ,(5)<br />
式 にて 表 せる。<br />
P<br />
v<br />
Switch<br />
on<br />
1<br />
<br />
2<br />
<br />
<br />
v i d<br />
..........................................(4)<br />
on sw<br />
<br />
r I .....................................................(5)<br />
on<br />
v 0<br />
ここで,v on はスイッチのオン 電 圧 ,i Sw は 素 子 に 流 れる 電<br />
流 ,とは 電 流 の 流 れている 期 間 ,r on はスイッチのオン 抵<br />
抗 ,v 0 は 0A の 時 のオン 電 圧 降 下 である。<br />
出 力 周 波 数 1 周 期 あたりのスイッチング 損 失 は, 次 式 で<br />
表 すことができる。<br />
P<br />
Switch<br />
Vdc<br />
<br />
n 1<br />
1 y<br />
e<br />
on<br />
eoff<br />
f<br />
sw x<br />
2<br />
i<br />
out<br />
d<br />
.................... (6)<br />
ここで,V dc は 入 力 電 圧 ,n はレベル 数 ,e on ,e off は 瞬 時 タ<br />
ーンオン/オフエネルギー,f sw はスイッチング 周 波 数 ,x と<br />
y は 電 流 が 正 または 負 の 始 まりと 終 わりの 位 相 角 ,i out は 出<br />
力 電 流 である。<br />
5. 回 路 方 式 における 損 失 の 比 較<br />
(1),(4) 式 により, 回 路 条 件 ( 使 用 しているスイッチング 素<br />
子 )が 同 じであれば, 導 通 損 失 は 被 変 調 波 のみに 依 存 し, 回<br />
路 方 式 が 異 なってもカテゴリーA の 回 路 方 式 のスイッチに<br />
発 生 する 導 通 損 失 は 同 じになる。ただ,GM 方 式 ,DCC 方<br />
式 は, 導 通 損 失 やスイッチング 損 失 とは 別 にスイッチング<br />
Power loss S1[W]<br />
0.14<br />
0.12<br />
0.1<br />
0.08<br />
0.06<br />
0.04<br />
0.02<br />
0<br />
FC 方 式<br />
(Fig.3)<br />
カテゴリーA<br />
任 意 電 圧 に 調 整<br />
時 に 横 流 が 発 生 するので,それに 伴 う 損 失 が 発 生 する。し<br />
かし, 横 流 による 損 失 は 他 の 損 失 に 対 して 十 分 小 さく 無 視<br />
できると 仮 定 している。<br />
GM 方 式<br />
(Fig.1)<br />
DCC 方 式<br />
(Fig.2)<br />
図 4 に,カテゴリーA の 回 路 (GM,DCC,FC 方 式 )のスイ<br />
ッチ S1 の 導 通 損 失 を 比 較 した 図 を 示 す。 図 1 より, 全 ての<br />
回 路 方 式 の 導 通 損 失 が 一 致 していることがわかる。<br />
カテゴリーB の 回 路 では, 方 式 毎 に 異 なるスイッチング<br />
テーブルを 持 ち, 回 路 内 のスイッチにおいても 変 調 波 の 波<br />
形 に 対 して 半 周 期 もしくは 1 周 期 全 ての 期 間 で 導 通 するな<br />
どスイッチング 動 作 が 異 なる。しかしながら,それぞれの<br />
方 式 において 電 圧 をクランプする, 出 力 電 圧 を 選 択 するス<br />
イッチの 動 作 を 1 つのスイッチで 担 う,もしくは 1 つのス<br />
イッチで 分 担 して 行 っているため,スイッチのパラメータ<br />
が 同 じ 場 合 , 変 調 波 の 期 間 ごとの 損 失 は 一 致 する (5) 。<br />
これらのことから, 変 換 器 の 変 調 方 式 と 電 圧 の 出 力 方 法<br />
が 同 じであれば, 回 路 方 式 による 効 率 の 際 はスイッチング<br />
素 子 の 性 能 により 決 定 づけられる。 従 って, 回 路 方 式 の 特<br />
性 に 応 じたデバイス 選 定 が 重 要 となる。<br />
今 後 は, 各 方 式 の 電 圧 レベルを 5 として 損 失 を 検 討 し,<br />
マルチレベル 変 換 器 の 損 失 一 般 化 について 検 討 を 行 う。<br />
文 献<br />
カテゴリーB<br />
任 意 電 圧 を 選 択<br />
DC 方 式<br />
(Fig.4)<br />
T-type NPC 方 式<br />
(Fig.5)<br />
ANPC 方 式<br />
(Fig.6)<br />
Fig.3. Category of multilevel topologies.<br />
GM DCC FC<br />
Fig.4 Conduction loss comparison of S1.<br />
Switching loss<br />
Conducsion loss<br />
Calculation condition: Output power 1kW, Input voltage 350V,<br />
Output current 5.1Arms, Duty command 0.8, On-resistance 0.008m,<br />
Power factor 1.<br />
(1) A. Nabae, et.al,:IEEE trans. on I.A. Vol.17, pp.518-523(1981)<br />
(2) P. Barbosa, et.al,:PESC, pp.2296-2301(2005)<br />
(3) F. Z. Peng: IEEE trans. on I.A. Vol.37, pp.611-618(2001)<br />
(4) Y. Kashihara, J. Itoh: CIPS, pp.67-72(2012)<br />
(5) 樫 原 有 吾 , 伊 東 淳 一 , 森 田 一 徳 , 宗 島 正 和 , 小 倉 和 也 :<br />
SPC-12-159(2012)