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2.159. ツチカブリ 219ひだはごく 密 で 柄 に 直 ⽣ないし 上 ⽣(もしくは 垂⽣ 状 に 直 ⽣)し、⽩⾊であるが⽼ 成 すればいくぶんクリーム⾊を 帯 び、しばしば⾚ 褐 ⾊のしみを⽣じ、しばしば⼆⼜ 分 岐 し、 幅 は 狭 い。 柄 はほぼ 上下 同 ⼤で⻑さ 2~9cm、 径 1-3 cm 程 度 、 表 ⾯は 粘 性なくかさとほぼ 同 ⾊、 中 実 で 堅 くしまっている。胞 ⼦ 紋 はごく 淡 いクリーム⾊を 呈 する。 胞 ⼦ は広 卵 形 ないし 類 球 形 で、ごく 微 細 ないぼと、 個 々のいぼの 基 部 同 ⼠を 連 結 する 細 い 脈 (ヨウ 素 溶 液で⻘⿊⾊に 染 まる)とをこうむる。シスチジア は、ひだの 側 ⾯にも 縁 にもひんぱんに 認 められ、 細 ⻑い 紡 錘 形 ないし 円 筒 状 または 中 間 部 が 膨 らんだ 便腹 状 をなし、 無 ⾊あるいは 淡 ⻩⾊(ヨウ 素 溶 液 中では 明 るい 橙 ⻩⾊)で、 先 端 はしばしば 尖 っている。かさの 表 ⽪ 層 は 僅 かにゼラチン 化 することがあり、かさの 表 ⾯に 平 ⾏に 匍 匐 した 菌 ⽷ で 構 成 されており、 個 々の 菌 ⽷の 末 端 細 胞 は 時 にやや⽴ち上 がっているが、かさシスチジアは 認 められない。きのこの 組 織 中 には、 不 規 則 に 屈 曲 した 太 い 菌 ⽷( 隔 壁 は 少 ない)が 混 在 し、その 内 部 には 微 細 な 泡状 をなして 乳 液 が 満 たされている。すべての 菌 ⽷は、 隔 壁 部 にかすがい 連 結 を 持 たない。2.159.2 生 態夏 から 秋 にかけ、 広 葉 樹 (ブナ・ミズナラ・コナラ・クヌギ・クリ・シイ・シラカンバ など)の 林内 、あるいはこれらの 樹 ⽊と 針 葉 樹 (アカマツ・モミ・ツガ・カラマツ など)との 混 交 林 内 の 地 上に 発 ⽣する。これらの 樹 ⽊の⽣きた 細 根 に 外 ⽣ 菌根 を 形 成 して⽣ 活 していると 考 えられ、 培 養 は難 しい。2.159.3 分 布北 半 球 全 域 に 広 く 産 し、オーストラリア にも 分布 する。⽇ 本 では、 北 海 道 から 沖 縄 県 ( 名 護 市 ・⽯ 垣 島 ・⻄ 表 島 )までの 地 域 で 分 布 が 確 認 されている * [1] * [2]。2.159.4 類 似 種アオゾメツチカブリ(Lactarius glaucescens Crossland)は、ツチカブリの⼀ 変 種 としてとりあつかわれることもあるが、 全 体 にやや⼩ 形 であること・ 乳 液は 初 めは⽩⾊であるが、 次 第 に 鈍 い 灰 緑 ⾊に 変 ⾊すること・ 胞 ⼦ 表 ⾯の 細 い 脈 が、ときに 繊 細 な 網⽬ 状 をなすことなどの 点 で 区 別 されている。ツチカブリモドキ(Lactarius subpiperatus Hongo)は、ひだがはるかに 疎 であることで 異 なる。さらにケシロハツ(Lactarius velleus (Fr.) Fr.)や ケシロハツモドキ(Lactarius subvelleus (Fr.) Fr.)は、かさや 柄 の 表⾯が 粗 ⽑におおわれている 点 で 区 別 される。これらは、いずれも⽩⾊の 乳 液 を 分 泌 し、 著 しい⾟ 味を 有 する 点 で 共 通 しており、ツチカブリ 節 (SectionAlbati)にまとめられている。2.159.5 分 類 学 上 の 位 置 づけ本 種 は、 形 態 分 類 学 上 のチチタケ 属 (Lactarius)のタイプ 種 である。 分 ⼦ 系 統 解 析 の 結 果 からは、むしろチチタケ(Lactarius volemus(Fr.) Fr.)に 近 縁 であり、 外 観 が 類 似 していてツチカブリとともにツチカブリ 節 (Section Albati)に 置 かれているケシロハツ とは、むしろやや 縁 が 遠 い。この⼀ 例 からして、 形 態 情 報 のみによる 従 来 の 分 類 体 系 は、チチタケ 属 に 対 しては 信 頼 性 に⽋ける 点 があると 考えられる。 最 近 では、 形 態 分 類 に 基 づく 旧 来 の 概念 によるチチタケ 属 の⼀ 部 と、 同 じくベニタケ 属(Russula)の⼀ 部 とを 併 合 し、 新 属 ウズゲツチイロタケ 属 (Multifurca)が 提 案 されている * [3]。2.159.6 食 ・ 毒 性あまりにも⾟ 味 が 強 いことから、 従 来 は⽇ 本 でも海 外 でも「 有 毒 」あるいは「⾷⽤に 不 適 」であるとして 扱 われてきた。 実 際 に、 本 種 が 原 因 となって、 胃 痛 や 嘔 吐 などの 消 化 器 系 統 の 中 毒 症 状 をきたしたと 思 われる 例 も 知 られている * [4].きのこを⼩さく 刻 み、じゅうぶんに⽔にさらすことで、 強 い 刺 激 性 を 持 つ 乳 液 を 洗 い 去 れば⾷⽤にできる。さらに、ゴマ 油 のような 沸 点 の⾼い 油 脂で 熱 処 理 すれば、⾟ 味 は 消 えるとされている。また、⻘トマト などとともに、⾹⾟ 料 や 岩 塩 を⽤いて 漬 け 込 んだものは、ロシア 料 理 では⾼ 級 な 前菜 として 賞 味 されるという * [5]。2.159.7 成 分脂 肪 酸 として、ステアリン 酸 ・オレイン 酸 ・リノール 酸 などを 含 有 しているが、 特 にステアリン 酸 の存 在 ⽐ 率 が⾼く、⼀⽅でラクタリン 酸 (6-keto ステアリン 酸 )が 存 在 しないのが 特 徴 である * [6]。 本種 には⼆ 種 類 のチアミナーゼ が 含 まれており、 少なくとも⻑ 期 的 に⾷⽤に 供 することは 避 けるのが賢 明 であると 考 えられる * [7]。なお、ツチカブリの⼦ 実 体 からは、ラクタピペロラノール(A-D)ほか 8 種 のセスキテルペン 系 化 合 物 が⾒ 出 されているが、すべてが⾃ 然 界 では 未 知 のものであったという * [8] * [9]。さらに、ツチカブリの⼆ 次 代 謝 産物 の 中 には、オーキシン 類 似 の 発 根 ホルモン が 含まれており、ハシバミ やブナ・ナラ などの 発 根 を促 す 作 ⽤があるという * [10]。2.159.8 名 称和 名 は 古 名 を 採 ⽤したものであるという * [11] が、その 出 典 は 明 らかではない * [12]。なお、 別 名 としてカワチチタケの 名 も⽤いられることがある。 従来 、カワチチタケには Lactarius pergameus (Sowerby:Fr.) Fr. の 学 名 が 与 えられ、 別 種 として 扱 われていたが、 現 在 ではツチカブリと 同 ⼀ 種 であるとされている。

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