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MSFAS - 障害者職業総合センター

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第 2 節 幕 張 ストレス・ 疲 労 アセスメントシート( <strong>MSFAS</strong>)<br />

1. 幕 張 ストレス・ 疲 労 アセスメントシートの 開 発 経 過<br />

(1)これまでの 経 過<br />

障 害 者 職 業 総 合 センター 評 価 ・ 相 談 研 究 部 門 では、 精 神 障 害 や 高 次 脳 機 能 障 害 を 有 する 人 に 対 する 評<br />

価 技 法 の 開 発 を 目 的 とし、 職 場 や 作 業 場 面 でのストレスや 疲 労 の 現 れ 方 を 把 握 し、それらのマネジメン<br />

ト 方 法 を 検 討 するツールとして 、「 幕 張 ストレス・ 疲 労 アセスメントシート ( 旧 版 )( 以 下 、「 旧 <strong>MSFAS</strong>」<br />

という 。) 」を 開 発 してきた。これまでの 開 発 では、 職 業 リハビリテーションの 専 門 家 を 旧 <strong>MSFAS</strong> の<br />

主 たる 利 用 者 と 設 定 し、 職 業 リハビリテーション・サービスの 実 施 場 面 での 評 価 や 支 援 計 画 の 立 案 等 を<br />

中 心 として 活 用 方 法 の 検 討 を 行 ってきた( 参 照 ;「<br />

精 神 障 害 者 等 を 中 心 とする 職 業 リハビリテーション<br />

技 法 に 関 する 総 合 的 研 究 ( 中 間 報 告 書 )」 。<br />

(2)これまでのシートの 目 的 と 構 成 、 活 用 方 法<br />

旧<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

は、 応 用 行 動 分 析 の 基 本 的 アプローチである 機 能 分 析 の 手 法 を 取 り 入 れ、ストレスや 疲<br />

労 状 態 の 生 起 過 程 を 機 能 的 に 整 理 し、 支 援 計 画 を 立 案 ・ 実 施 するものである。 作 成 にあたっては、 次 の<br />

視 点 を 基 本 としている。<br />

・ストレスや 疲 労 の 生 起 を 環 境 との 相 互 作 用 の 視 点 から 捉 える。<br />

・ 本 人 の 興 味 や 関 心 など、ストレスや 疲 労 の 解 消 につながる 緩 衝 要 因 の 把 握 を 重 視 する。<br />

・ 精 神 障 害 だけではなく、 多 様 な 障 害 を 有 する 人 に 活 用 できるものとする。<br />

これらの 作 成 方 針 を 基 本 としながら、 旧<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

は、 大 きく3つのパートから 構 成 されていた。 一<br />

つは、 本 人 や 家 族 、 支 援 者 への 聞 き 取 りを 中 心 とした 情 報 収 集 ・ 整 理 の 様 式 (1フェイスシート2 病 気<br />

と 健 康 に 関 する 基 礎 情 報 3 生 活 歴 4 興 味 ・ 関 心 5 支 援 体 制 6ストレス・ 疲 労 に 関 する 周 辺 情 報 )、もう<br />

一 つは 、 相 談 や 指 導 ・ 支 援 場 面 等 で 見 られた 対 処 行 動 について 記 録 する 様 式 ( 7 対 処 行 動 観 察 記 録 表 )、<br />

そして、ストレスや 疲 労 の 生 起 過 程 を 分 析 し 支 援 計 画 を 立 案 する 様 式 (8 機 能 分 析 と9 支 援 計 画 )であ<br />

る。<br />

また、 旧<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

では、これらの 内 容 を 記 入 し 活 用 する 方 法 として、 職 業 リハビリテーション 専 門<br />

家 を 中 心 に、 面 接 や 相 談 、 行 動 観 察 等 による 情 報 の 収 集 整 理 を 基 本 とした。さらに 旧<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

を 活 用<br />

する 場 面 については、 面 接 や 相 談 をはじめ、あらゆる 職 業 リハビリテーション・サービスの 現 場 を 想 定<br />

した。<br />

旧 <strong>MSFAS</strong> の 具 体 的 な 活 用 手 続 きを、 表 2-2-1のような 手 続 きを 想 定 し、 試 行 を 行 ってきた。<br />

-49-


step<br />

表 2-2-1. 旧 <strong>MSFAS</strong> の 活 用 手 続 き<br />

内<br />

a: 本 人 に 対 し、 <strong>MSFAS</strong> の 機 能 と 目 的 を 説 明 する。ニーズを 確 認 し、 同 意 を 得 る。<br />

b: 本 人 、 支 援 者 との 面 接 により、 <strong>MSFAS</strong> に 基 き、 情 報 を 収 集 ・ 整 理 する。<br />

c: 実 際 に 作 業 を 行 う 中 で、ストレスや 疲 労 の 現 れ 方 について 情 報 収 集 する。<br />

d: 収 集 した 情 報 をもとに、 個 人 に 特 有 のストレスや 疲 労 の 生 起 過 程 を 分 析 する。<br />

e: 「 現 状 」を「 目 標 」である 望 ましい 状 態 に 変 えるための「 対 応 案 」を 検 討 する。<br />

f: eで 検 討 したアプローチをもとに、 本 人 とともに、 支 援 計 画 を 作 成 する。<br />

g: 経 過 を 把 握 し、 支 援 計 画 を 修 正 する。<br />

h: 支 援 の 終 了 時 に、 本 人 とともに 総 括 をする。<br />

i: 支 援 者 により、 支 援 の 振 り 返 りを 行 なう。<br />

容<br />

(3) 試 行 実 施 における 問 題 点<br />

旧 <strong>MSFAS</strong> は、 障 害 者 職 業 総 合 センター 職 業 センター 利 用 者 を 対 象 に、 職 業 センターの 職 業 カウンセラ<br />

ーが 行 うサービスや 幾 つかの 精 神 障 害 者 の 福 祉 機 関 等 で、 試 行 を 行 った。<br />

その 結 果 、 旧 <strong>MSFAS</strong> に 含 まれる 項 目 や 様 式 の 目 的 については、 一 定 の 評 価 がなされたものの、 次 のよ<br />

うな 点 について、 問 題 点 として 指 摘 された。<br />

1 記 入 に 要 する 時 間 や 人 的 コストが 高 く、 効 率 的 な 利 用 が 難 しい。<br />

2 機 能 分 析 や 支 援 計 画 の 様 式 は、 専 門 家 でも 記 入 することが 難 しい。<br />

3 対 処 行 動 観 察 記 録 表 は 観 察 の 場 面 や 観 察 後 の 活 用 方 法 がわかりにくい。<br />

4 全 体 にこれまで 情 報 収 集 用 の 様 式 等 と 重 複 する 項 目 が 多 く、 業 務 上 の 負 荷 が 高 い。<br />

一 方 で、これらの 様 式 のうち 情 報 収 集 ・ 整 理 の 様 式 群 については、 比 較 的 経 験 の 浅 い 専 門 家 が 作 成 して<br />

も、 対 象 者 本 人 が 作 成 しても、 時 間 的 にも 内 容 的 にもそれほど 大 きな 差 は 見 られなかったという 試 行 結 果<br />

も 報 告 された。<br />

これらの 指 摘 を 受 け、 旧 <strong>MSFAS</strong> の 問 題 点 を 改 善 し、より 効 率 的 かつ 機 能 的 なものとするため、 以 下 の<br />

ような 改 訂 を 行 うこととした。<br />

2. <strong>MSFAS</strong> の 改 訂<br />

旧<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

の 試 行 結 果 から、ストレス・ 疲 労 の 捉 え 方 や 対 処 行 動 の 確 立 に 向 けた 具 体 的 な 支 援 方 法<br />

の 検 討 に 役 立 つことを 大 きな 目 的 として 、「 幕 張 ストレス・ 疲 労 アセスメントシート( 改 訂 版 )<br />

( Makuhari Stress Fatigue Assessment Sheet. 以 下 <strong>MSFAS</strong> という)」を 作 成 することとした。 改 訂 版<br />

の 作 成 にあたっては、ストレスや 疲 労 に 関 する 情 報 収 集 に 主 眼 をおくのではなく、ストレス・ 疲 労 に 関 する<br />

自 己 理 解 の 促 進 や、 具 体 的 な 対 処 行 動 の 提 案 とその 確 立 に 向 けた 支 援 に 繋 がるものを 指 向 することとした。<br />

そのため、ストレス・ 疲 労 の 生 起 については、 単 に 個 人 内 の 状 態 の 変 化 と 捉 えるのではなく、 認 知 障<br />

害 をはじめとした 個 々の 障 害 状 況 と 環 境 との 相 互 関 係 の 中 で 生 じる 認 知 や 体 調 等 を 含 めた 障 害 の 現 れ 方<br />

の 変 化 として 考 えること、また、それらへの 対 処 行 動 を 個 々 人 の 持 つ 行 動 特 性 として 受 けとめるのでは<br />

なく、これまでの 生 活 の 中 で 生 じた 変 化 に 対 し 個 人 が 学 習 してきた 行 動 の 一 つとして 捉 える 等 、 応 用 行<br />

動 分 析 的 な 視 点 をより 多 く 取 り 入 れることとした。<br />

-50-


このような 視 点 に 立 つことで、ストレス・ 疲 労 の 生 起 については、 環 境 や 個 人 への 働 きかけにより 防<br />

止 したり 回 避 できる 可 能 性 のあるものと 考 えることができる。また、 対 処 行 動 についても、 行 動 の 選 択<br />

肢 の 提 示 等 により 対 処 行 動 のレパートリーを 増 やし、より 適 切 な 行 動 を 学 習 できる 可 能 性 があると 考 え<br />

ることができる。 改 訂 した <strong>MSFAS</strong> については、 巻 末 『 資 料 1』に 示 した。<br />

本 節 では、 <strong>MSFAS</strong><br />

の 改 訂 にあたって、 取 り 入 れた 考 え 方 ・ 視 点 について 整 理 したうえで、 <strong>MSFAS</strong><br />

の 基 本 的 なコンセプトや 概 要 、 詳 細 な 内 容 について 解 説 を 行 う。<br />

(1)ストレス・ 疲 労 と 職 業 生 活<br />

一 般 に、ストレスや 疲 労 のセルフマネージメントをすることは、 自 分 自 身 の 作 業 能 力 を 十 分 に 職 業 生 活<br />

の 中 で 発 揮 し、 生 活 の 質 の 向 上 を 果 たすための 必 須 能 力 であると 考 えられる。 障 害 者 が、ストレスや 疲 労<br />

を 適 切 にセルフマネージメントするためには、 自 分 自 身 の 障 害 やストレス・ 疲 労 による 障 害 への 影 響 等 に<br />

ついて、よく 理 解 しておくことが 必 要 となる。また、 自 分 自 身 の 労 働 意 欲 がどんなふうな 状 況 になってい<br />

るのか、 作 業 遂 行 力 がきちんと 今 日 も 維 持 されているのか、といった 個 人 内 の 状 態 の 変 化 についても 意 識<br />

をしていく 必 要 がある。 特 に、 精 神 障 害 等 により 不 安 定 な 状 態 が 生 じやすい 障 害 特 性 がある 場 合 には、 過<br />

度 なストレス・ 疲 労 による 疾 病 の 再 発 といった 点 についても 注 意 を 向 け、その 予 防 に 向 けて 意 識 的 に 生 活<br />

をしていくことも 求 められる。<br />

(2)ストレス・ 疲 労 と 認 知 障 害<br />

精 神 障 害 者 や 高 次 脳 機 能 障 害 者 に 対 し、 職 業 リハビリテーション・サービスを 実 施 する 際 には、 他 の<br />

身 体 障 害 者 や 知 的 障 害 者 以 上 に、ストレスや 疲 労 についての 把 握 とアプローチの 必 要 性 が 指 摘 されてい<br />

る。<br />

また、これらの 精 神 障 害 者 や 高 次 機 能 障 害 者 には、 遂 行 機 能 障 害 や 記 憶 の 障 害 といった 認 知 の 障 害 が<br />

みられることも 多 い。 このような 認 知 の 障 害 は、 それ 自 体 が 疲 労 やストレスに 繋 がる 場 合 もありえるが、<br />

日 々 懸 命 に 仕 事 をすることによりストレスや 疲 労 が 発 生 することもありえる。 認 知 の 障 害 とストレス・<br />

疲 労 の 発 生 が 同 時 に 生 じている 場 合 に、どのように 対 処 していくかが、これらの 障 害 特 性 を 有 する 者 の<br />

ストレス・ 疲 労 の 対 処 行 動 を 支 援 するうえで、 特 異 的 な 問 題 と 考 えることができる。 認 知 障 害 により 疲<br />

労 やストレスへの 対 処 行 動 がうまくとれない 場 合 に、 不 適 切 な 疲 労 やストレスへの 不 適 切 な 対 処 行 動 を<br />

続 けると、 認 知 障 害 にさらに 悪 影 響 を 及 ぼしたり、 却 ってストレスを 増 幅 するような 結 果 にも 繋 がりう<br />

る。このような 悪 循 環 が、ストレス・ 疲 労 の 蓄 積 という 状 態 と 考 えられる。<br />

認 知 障 害 による 不 適 切 な 対 処 行 動 が、ストレスや 疲 労 を 招 き、これがさらに 認 知 障 害 を 悪 化 させ、ス<br />

トレスや 疲 労 を 蓄 積 させていく。このような 悪 循 環 が 幾 重 にも 重 なることで、 本 人 自 身 では 解 決 困 難 な<br />

状 況 に 陥 ってしまう。その 結 果 、「 明 日 はもう 仕 事 には 行 けない 」、 「しばらく 会 社 の 同 僚 の 顔 は 見 たく<br />

ない 」、といった 状 況 も 現 れてくる。 特 に、 精 神 障 害 者 の 場 合 には、そのようなストレスや 疲 労 が 蓄 積<br />

していく 中 で、 病 気 の 再 発 という 好 ましくない 事 態 に 陥 る 事 例 も 多 く 見 られている。<br />

-51-


(ア)ストレス 過 程 の 機 能 分 析<br />

ストレス 過 程 を、 応 用 行 動 分 析 の 基 本 的 な 分 析 手 法 である 機 能 分 析 を 用 いて 分 析 すると、 図 2-2-<br />

1のようになる。 図 内 のストレス 過 程 には、 職 場 内 での 病 気 の 説 明 というコミュニケーション 場 面 を 例<br />

とした。<br />

まず、この 障 害 者 が、 同 僚 に 病 気 を 話 さずに 勤 めているという 状 況 にある。そのような 状 況 の 中 、 何<br />

日 か 続 けて 休 んだことや 本 人 が 発 病 して 入 院 していた 時 のことを 同 僚 から 聞 かれる、という 場 面 を 想 定<br />

して 欲 しい。その 時 、 障 害 者 本 人 の 中 に、 不 安 感 が 生 じ、 同 時 に 同 僚 に 対 して、つっけんどんな 態 度 で<br />

「プライバシーに 干 渉 しないで」と 答 えてしまった。すると、 同 僚 は 驚 いてとても 嫌 な 顔 をした、という<br />

展 開 であったとしよう。<br />

その 結 果 、 過 去 のことを 聞 か<br />

れたことそのもののストレスに<br />

加 えて、 自 分 のとった 対 処 行 動<br />

の 結 果 、 嫌 な 顔 をされてしまい<br />

マイナスの 人 間 関 係 というスト<br />

レスも 重 なり、ストレスが 蓄 積<br />

していくこととなった。<br />

しかし、 本 人 がやむを 得 ずと<br />

った 対 処 行 動 は 本 人 の 状 況 事 象<br />

図 2-2-1.<br />

ストレス 過 程 の 機 能 分 析<br />

を 何 も 解 決 しておらず、 ストレスは 蓄 積 されたままとなっており 、 再 び 同 様 のきっかけが 生 じた 時 には、<br />

さらに 大 きなストレスとして 本 人 にのしかかってくる 可 能 性 がある。これが 現 状 のストレスの 機 能 分 析<br />

の 一 例 である。<br />

(イ) 疲 労 過 程 の 機 能 分 析<br />

疲 労 過 程 の 機 能 分 析 を 行 う<br />

と 図 2-2-2のようにな<br />

る。 図 内 の 疲 労 過 程 は、 暖 か<br />

な 日 の<br />

OA<br />

作 業 において 疲 労<br />

している 場 面 の 例 である。<br />

ある 春 先 のとても 暖 かな 日<br />

にパソコンを 使 って 仕 事 をし<br />

ている 人 がいる。 一 人 で 黙 々<br />

とデータ 入 力 をしていると、<br />

図 2-2-2.<br />

疲 労 過 程 の 機 能 分 析<br />

だんだん 頭 がボーッとしてくる。このとき、 本 人 は「あぁ、 疲 れたな」と 感 じているが、みんな 頑 張 って<br />

働 いている 様 子 もあり、 我 慢 して 作 業 を 続 けていく。 同 僚 や 上 司 は、 本 人 の 疲 労 に 気 付 かず、 誰 にも 気<br />

-52-


遣 いをもらえないまま 疲 労 が 蓄 積 していくという 結 果 となっている。<br />

このような 状 況 が 高 次 脳 機 能 障 害 者 等 の 場 合 には、 疲 労 が 認 知 障 害 の 現 れにつながり、 例 えば 作 業 上<br />

のミスとなって、 大 きなマイナスとなることも 考 えられる。これが 疲 労 過 程 の 機 能 分 析 の 一 例 である。<br />

(ウ)ストレス・ 疲 労 に 対 する 対 処 行 動 の 捉 え 方<br />

ストレス・ 疲 労 に 対 する 対 処 行 動 は 、「 個 人 がこれまでに 学 習 してきた 必 ずしも 適 切 とはいえない 行<br />

動 」をも 含 んでいることに 気 づく。<br />

例 えば 、(ア)(イ)で 分 析 したように、ストレス・ 疲 労 への 対 処 行 動 には、つっけんどんな 態 度 を<br />

とったり、 我 慢 をして 作 業 を 続 けるなどの 他 にも、 自 分 で 何 とかしようとする、ミスを 隠 そうとするな<br />

どのように 事 業 所 によっては 問 題 行 動 と 判 断 される 可 能 性 があるものも 多 い。このような 行 動 を、 応 用<br />

行 動 分 析 的 な 視 点 では 、「ミスを 出 して 怒 られる」というストレッサーを 回 避 するために、これまでに<br />

本 人 が 学 習 してきた 対 処 行 動 であると 捉 えることができる。このような 行 動 を、ストレスや 疲 労 に 対 し<br />

て 学 習 された 対 処 行 動 と 捉 えると、 他 の 対 処 行 動 を 行 動 レパートリーとして 学 習 することで、ストレス<br />

や 疲 労 に 対 する 対 処 の 仕 方 を 広 げることが 可 能 となる。<br />

このような 行 動 に 対 し、 新 たな 対 処 行 動 として 、「 自 分 自 身 の 病 気 についての 説 明 の 仕 方 をあらかじ<br />

め 決 めておき、 同 僚 から 質 問 された 際 には、 準 備 していた 説 明 を 行 うようにする 方 法 」や「 頭 がボーッ<br />

としてきたことを 上 司 に 話 し、5 分 間 休 憩 を 申 し 出 る 方 法 」が、より 適 切 なものと 考 えられるが、この<br />

ような 方 法 についてあらかじめ 練 習 したり 準 備 を 整 えることで、これまでとは 異 なる 対 処 行 動 のレパー<br />

トリーを 獲 得 することが 可 能 となる。<br />

このように 対 処 行 動 を 応 用 行 動 分 析 的 な 視 点 で 捉 えると、ストレスや 疲 労 に 対 するこれまでに 学 習 さ<br />

れた 対 処 行 動 が、 必 ずしも 適 切 とはいえない 行 動 である 場 合 には、 新 たな 行 動 レパートリーを 検 討 し、<br />

そのために 必 要 な 準 備 ・ 練 習 を 重 ねることにより、 対 象 者 本 人 が 実 際 の 場 面 で 選 択 できる 行 動 の 選 択 肢<br />

を 拡 大 することができると 考 えられる。<br />

(3) <strong>MSFAS</strong> の 開 発 と 機 能 の 基 本 的 コンセプト<br />

<strong>MSFAS</strong> の 改 訂 にあたっては、 大 きく 3 つの 基 本 的 なコンセプトを 持 った。<br />

第 一 の 視 点 は、 環 境 を 包 括 的 に 把 握 するということである。 生 活 の 中 のどの 場 面 でどんな 条 件 が 重 な<br />

ると、その 人 にストレスや 疲 労 を 与 えられるのか、その 人 はストレスや 疲 労 を 感 じるのか 等 、 一 人 一 人<br />

のストレス 過 程 や 疲 労 過 程 はさまざまである。そのため、ある 人 がさらされている 環 境 を 網 羅 的 に 把 握<br />

し、 個 々 人 の 全 体 像 を 捉 えていくことが 必 要 である。<br />

第 二 の 視 点 は、ストレスや 疲 労 の 指 標 を 明 確 にすることである。 個 人 の 障 害 の 特 性 や 性 格 特 徴 あるい<br />

は 生 活 の 中 での 行 動 傾 向 等 を 把 握 し、それらがストレス・ 疲 労 との 関 係 の 中 で 現 れてくるものなのか、<br />

ストレス・ 疲 労 とどのように 結 びついているのかを 捉 えることを 重 視 した。<br />

第 三 の 視 点 は、ストレス・ 疲 労 の 解 消 方 法 を 検 討 し、 解 決 策 を 講 じることである。 一 人 一 人 の 興 味 や<br />

-53-


関 心 、ストレスの 発 散 のために 行 っている 具 体 的 な 方 法 等 を 把 握 した 上 で、さらに 効 果 的 な 方 法 を 検 討<br />

し、 実 践 に 結 びつけていくということが、 職 業 リハビリテーション・サービスの 充 実 といった 観 点 から<br />

も 不 可 欠 である。<br />

また、これらの 視 点 を 実 現 するには、 疲 労 ・ストレスという 非 常 に 個 人 的 な 体 験 について 対 処 してい<br />

くこととなるため、これらの 検 討 ・ 提 案 が 支 援 者 からの 押 しつけとならないよう、 個 人 と 支 援 者 が 課 題<br />

を 共 有 して 検 討 できるよう 工 夫 されている。<br />

(4) <strong>MSFAS</strong> の 目 的<br />

<strong>MSFAS</strong> は、 障 害 者 と 支 援 者 が、 職 場 適 応 という 目 標 の 妨 げとなるストレスや 疲 労 を 分 析 し、 具 体 的<br />

な 対 処 行 動 や 環 境 整 備 の 方 法 について 具 体 的 に 検 討 ・ 計 画 し、 効 率 的 な 職 業 リハビリテーションが 実 施<br />

できることを 目 指 している。 端 的 に 言 えば、 障 害 者 本 人 と 支 援 者 を 具 体 的 な 支 援 で 結 びつける 架 け 橋 的<br />

な 機 能 を 果 たすことを 目 指 している。<br />

これを 実 現 するため、 <strong>MSFAS</strong> は『 情 報 の 収 集 → 情 報 の 整 理 → 情 報 の 共 有 →ストレス・ 疲 労 の 機 能 分<br />

析 → 対 処 行 動 確 立 に 向 けた 支 援 計 画 の 作 成 』といった 過 程 を 経 る。これらの 過 程 を、 障 害 者 本 人 が 上 手<br />

く 自 分 自 身 の 力 で 行 っていけるよう 支 援 者 は 支 援 していくこととなる。<br />

これらの 目 的 に 対 し、 障 害 者 本 人 と 支 援 者 が 協 力 して 取 り 組 むためには、 目 的 について 共 通 認 識 を 持<br />

つことが 必 須 である。そこで、 図 2-2-3に、 <strong>MSFAS</strong><br />

を 活 用 する 際 に 利 用 者 に 提 示 する 活 用 のねら<br />

いをまとめた。<br />

・どんな 時 に、ストレスを 感 じたり、 疲 れやすいのかを 知 る。<br />

・ストレスを 感 じたり、 疲 れたときの、 心 や 体 のサインを 知 る。<br />

・ストレスや 疲 れをためないための 対 処 方 法 を 考 える。<br />

図 2-2-3.<br />

<strong>MSFAS</strong> を 活 用 するねらい<br />

(5) <strong>MSFAS</strong> の 概 要<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

では、 利 用 者 と 支 援 者 が 互 いに 協 力 しながら、 具 体 的 なストレスや 疲 労 への 対 処 方 法 を 確 立<br />

していく。そのため、 <strong>MSFAS</strong> は 、「 利 用 者 用 シート」と「 支 援 者 用 ( 相 談 用 )シート」の2 部 構 成 と<br />

なっている 。「 利 用 者 用 シート」は、 対 象 者 本 人 や 家 族 が 作 成 し 、「 支 援 者 用 ( 相 談 用 )シート」は 支<br />

援 者 が 対 象 者 本 人 や 家 族 等 との 面 接 ・ 相 談 、 作 業 中 の 状 況 等 を 把 握 した 結 果 を 基 に 作 成 するものである。<br />

「 利 用 者 用 シート」は、ストレス・ 疲 労 に 関 連 する 周 辺 情 報 を 整 理 する 様 式 から、 病 気 ・ 障 害 の 状 況<br />

やストレス・ 疲 労 の 現 状 等 を 把 握 する 様 式 までの6 種 ( 表 2-2-2のA~F)から 構 成 されている。<br />

「 支 援 者 用 ( 相 談 用 )シート」は、 医 療 情 報 やリハビリテーションの 経 過 等 を 整 理 するシートから、<br />

ストレス・ 疲 労 の 機 能 分 析 や 支 援 計 画 を 立 案 するシートまで7 種 ( 表 2-2-2のG~M)から 構 成 さ<br />

れている。<br />

-54-


これらのシートは 、 対 象 者 の 状 況 やニーズに 合 わせて 選 択 し 、 組 み 合 わせて 用 いることも 可 能 である。<br />

表 2-2-2.<br />

<strong>MSFAS</strong> の 構 成<br />

< 利 用 者 用 シート><br />

< 支 援 者 用 ( 相 談 用 )シート><br />

A 自 分 の 生 活 習 慣 ・ 健 康 状 態 をチェックする G 医 療 情 報 整 理 シート<br />

B ストレスや 疲 労 の 解 消 方 法 を 考 える H ストレス・ 疲 労 に 関 する 探 索 シート<br />

C ソーシャルサポートについて 考 える I 服 薬 / 治 療 ・リハビリの 経 過 整 理 シート<br />

D これまで 携 わった 仕 事 について 考 える J 支 援 手 続 きの 課 題 分 析 シート<br />

E 病 気 ・ 障 害 に 関 する 情 報 を 整 理 する K 対 処 方 法 の 検 討 シート<br />

F ストレスや 疲 労 が 生 じる 状 況 について 整 理 する L 支 援 計 画 立 案 シート<br />

M<br />

フェイスシート<br />

(6) <strong>MSFAS</strong> における 各 シートの 内 容 と 機 能<br />

利 用 者 用 のシートは 全 部 で 6 種 類 、 A から F まで 分 かれている。<br />

自 分 自 身 のことを 他 者 に 伝 えることは、 非 常 にストレスフルな 行 動 である。 病 気 のことや 自 分 の 生<br />

活 のこと、 自 分 のプライベートな 情 報 について 話 をすることは、だれにとっても 大 きなストレスを 伴 う<br />

ことである。 <strong>MSFAS</strong><br />

ではこのようなストレスに 配 慮 し、 利 用 者 用 シートを 比 較 的 負 荷 の 低 い 周 辺 情 報<br />

から、 徐 々に 課 題 に 向 き 合 って、 実 際 の 解 決 策 を 検 討 するために 必 要 な 課 題 に 直 接 関 係 する 本 質 的 情 報<br />

を 得 る、 負 荷 を 少 しずつ 高 めていくよう 配 列 している。また、これらの 様 式 はそれぞれ 単 独 で 記 入 でき<br />

るよう 作 られている。 記 入 の 順 番 として、 A から F の 順 序 を 基 本 としているが 利 用 者 が 興 味 のあるも<br />

の、 情 報 を 整 理 してみたいものがあれば、 順 番 にこだわらず 活 用 することができる。 個 々の 状 況 やニー<br />

ズに 合 わせて 柔 軟 に 順 序 や 組 み 合 わせを 変 えて 用 いることができる。<br />

A<br />

のシートは、 自 分 の 生 活 習 慣 ・ 健 康 状 態 をチェックするものである。このシートは、 生 活 習 慣 や 健<br />

康 状 態 がストレス・ 疲 労 の 内 的 な 環 境 因 として 作 用 するという 考 え 方 から、これらの 情 報 を 整 理 するた<br />

めに 用 意 されている。 特 に、 睡 眠 時 間 や 食 事 の 時 間 が 乱 れると、それ 自 体 がストレスや 疲 労 の 原 因 にな<br />

ったり、ストレスや 疲 労 の 影 響 が 現 れやすくなる。 自 分 自 身 の 適 性 な 生 活 習 慣 はどのようなものか、 生<br />

活 習 慣 が 乱 れた 時 はどのようになるのかを、 質 問 に 答 えていくことで 整 理 できる。<br />

B のシートは、ストレスや 疲 労 を 解 消 する 方 法 を 考 えるものである。 自 分 にとって 気 持 ちのいい、 心<br />

軽 やかになるような 状 況 を 整 理 することで、この 後 のシートで 直 面 するより 難 しい 問 題 についても 取 り<br />

組 みやすくなるよう 配 置 されている。このシートでは、ストレス・ 疲 労 の 解 消 方 法 として 自 分 が 行 って<br />

いることをピックアップすることで 、 自 分 の 趣 味 、 得 意 なこと 、 好 きな 物 、 興 味 のあることを 捉 え 直 し、<br />

日 々の 余 暇 の 過 ごし 方 というあまり 意 識 することのない 情 報 を 整 理 することができる。<br />

C のシートは、ソーシャルサポートについて 考 えるものである。 利 用 者 は、ストレスや 疲 労 がたまっ<br />

た 時 、 自 分 自 身 では 十 分 に 対 応 することができないことも 多 い。 友 達 に 相 談 すること、あるいは 家 族 に<br />

訴 えかけることで、 多 少 なりともストレスや 疲 労 が 緩 和 されることもある。 誰 に、どのように 話 をして<br />

-55-


いくか、 日 頃 自 分 自 身 が 頼 りにしている 人 は 誰 なのかといったようなことを、 整 理 できる。 特 に、 障 害<br />

者 の 場 合 には、 様 々な 機 関 に 支 援 を 受 けていることも 多 いことから、 相 談 機 関 や 利 用 の 頻 度 、 担 当 者 等<br />

の 情 報 を 整 理 することができる。<br />

Dのシートは、これまでに 携 わった 仕 事 について 考 えるものである。 職 場 というのは 非 常 にストレス<br />

の 高 い 場 面 である。 自 分 自 身 がこれまでに 就 いた 仕 事 の 中 で、ストレスを 感 じたこと、あるいは 楽 しか<br />

ったこと、 仕 事 を 辞 めた 時 の 原 因 等 を 整 理 することで、 自 分 自 身 が 何 にストレスを 感 じ 易 いのか、 何 を<br />

どの 程 度 続 けると 疲 れるのかといったことを 考 えることができるシートとなっている。<br />

Eのシートは、 病 気 ・ 障 害 に 関 する 情 報 を 整 理 する 様 式 である。 自 分 自 身 が、 自 分 の 病 気 や 障 害 をど<br />

のように 考 えているのか、 病 気 になったり 障 害 をうけた 前 後 で、 自 分 自 身 がどのように 変 わったのか、<br />

自 分 自 身 が 病 気 や 障 害 の 影 響 を 強 く 感 じた 時 、どのように 対 処 してきたか、どのような 支 援 をうけてき<br />

たのかということを 整 理 するものである。 特 に、 精 神 障 害 者 の 場 合 には、 病 気 が 再 発 したり 悪 化 したと<br />

感 じた 時 には、 自 分 の 周 りではどのようなことが 起 きていたのかという 情 報 も 整 理 できるよう 作 成 され<br />

ている。さらに、リハビリや 服 薬 によって 障 害 を 軽 減 している 場 合 、またそれらを 自 己 管 理 している 場<br />

合 には、 服 薬 状 況 を 明 確 に 把 握 することで、 自 分 自 身 のストレスや 疲 労 に 対 処 できる 可 能 性 がある。そ<br />

のため 、 自 分 自 身 の 服 薬 状 況 についても 整 理 することができるようになっている。 また 、「 支 援 者 用 ( 相<br />

談 用 )シート」に 服 薬 状 況 を 含 めた 治 療 の 経 過 を 時 系 列 で 整 理 し、 障 害 の 表 れ 方 や 服 薬 により 障 害 を 調<br />

整 してきた 過 程 を 整 理 する 様 式 がある。Eのシートの 最 後 には、その 相 談 用 シートの 利 用 ニーズを 確 認<br />

する 質 問 が 設 定 されている。<br />

Fのシートはストレスや 疲 労 に 関 する 利 用 者 の 考 えを 整 理 するものである。 自 分 自 身 がストレスや 疲<br />

労 を 感 じたりする 状 況 はどういう 状 況 か、そのときに 自 分 はどういうふうに 行 動 するのか、 周 囲 はどの<br />

ように 受 け 止 めていると 感 じたのか 等 について 整 理 する。 特 に、 自 分 自 身 がストレスや 疲 れを 感 じた 時<br />

に 何 かサインがあるのか、 自 覚 症 状 が 何 かあるのかという 情 報 についてもチェックすることが 求 められ<br />

ており、 一 つの 重 要 な 指 標 ・サインに 関 する 情 報 に 繋 がっている。<br />

支 援 者 用 シートは 7 種 類 のシートから 構 成 されている。<br />

支 援 者 用 シートは 利 用 者 やその 家 族 等 と 協 同 で 作 成 していくものである。そのため、ストレスや 疲 労<br />

に 直 接 影 響 を 及 ぼすような 本 質 的 な 情 報 を 十 分 に 聴 取 できるよう 、 細 かな 部 分 まで 記 入 することにした。<br />

特 に、 支 援 を 立 案 する 際 に、 利 用 者 との 相 談 の 中 で、 利 用 者 の 同 意 を 得 ながらストレス・ 疲 労 への 対 処<br />

行 動 の 確 立 に 向 けた 支 援 方 法 を 計 画 できるように 工 夫 されている。<br />

Gのシートは、 医 療 情 報 を 整 理 するシートである。このシートでは、 医 療 情 報 として 利 用 者 や 家 族 が<br />

医 師 から 聞 いた 診 断 や 障 害 部 位 、 高 次 脳 機 能 障 害 の 場 合 であれば CT や MRI 等 の 脳 画 像 の 診 断 の 結 果<br />

等 を 整 理 できる。また、 高 次 脳 機 能 障 害 、 精 神 障 害 の 方 の 場 合 、 様 々な 神 経 心 理 学 的 な 検 査 の 結 果 につ<br />

いても 整 理 できるようになっている。<br />

H のシートは、ストレス・ 疲 労 に 関 する 探 索 シートである。このシートは 利 用 者 から 聴 取 した 状 況<br />

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や 行 動 観 察 の 結 果 を 他 者 から 見 た 状 況 として 整 理 をしていくものである。これを 利 用 者 が 整 理 したスト<br />

レス・ 疲 労 に 関 するシートと 対 比 をし、 異 なっている 部 分 を 把 握 し、 利 用 者 と 他 者 から 見 た 状 況 を 調 整<br />

していく 相 談 等 で 役 立 てることができる。<br />

I<br />

のシートは、 服 薬 や 治 療 ・リハビリの 経 過 を 整 理 するものである。これは 利 用 者 からのニーズを 受<br />

けて 治 療 経 過 や 服 薬 経 過 を 整 理 する 場 合 に 用 いるものと 考 えているが、 薬 の 種 類 や 量 の 変 化 、いつ 頃 ど<br />

のように 変 更 されたのか、 利 用 者 にその 時 どのような 状 況 が 発 生 していたのかを 整 理 し、 服 薬 の 経 過 か<br />

らストレスや 疲 労 との 関 係 性 を 把 握 ・ 検 討 することができるものである。また、 治 療 ・リハビリの 経 過<br />

を 整 理 するシートでは、リハビリの 経 過 や 内 容 等 を 時 系 列 的 に 書 き 込 むことでリハビリテーション 段 階<br />

の 把 握 や 今 後 の 見 通 しを 考 える 際 に 役 立 つ。<br />

Jのシートは、 支 援 手 続 きを 課 題 分 析 するためのシートである。この 部 分 では、まずストレスが 発 生<br />

している 現 状 の 機 能 分 析 を 行 った 後 、そのストレス・ 疲 労 の 現 状 を 改 善 していくための 目 標 をたてる。<br />

次 に、 現 状 から 改 善 目 標 に 向 かって 何 をどのように 変 えていくのか、どう 変 えるとストレスや 疲 労 のセ<br />

ルフマネージメントが 可 能 となるのかを 具 体 的 に 検 討 するシートとなっている。<br />

Kのシートは、 対 処 方 法 の 検 討 シートである。これはJの 課 題 分 析 シートで 整 理 した 問 題 点 や 具 体 化<br />

した 支 援 方 法 について、 相 談 の 中 で 利 用 者 自 身 が、 再 度 現 状 を 分 析 していく 際 に 用 いる。 支 援 者 は、こ<br />

のシートを 使 ってJのシートで 検 討 した 支 援 方 法 を 利 用 者 と 一 緒 に 再 検 討 する。この 時 、 支 援 者 は 利 用<br />

者 が 適 切 と 考 える 対 処 方 法 は 何 か、その 方 法 を 選 択 することでどんな 結 果 が 予 測 されるのか 等 について<br />

も 整 理 していく。そして、 利 用 者 にとって 良 い 方 法 を 選 択 し、 支 援 者 とともに 実 践 の 方 法 を 検 討 する。<br />

このような 相 談 場 面 でこのシートを 活 用 すると、 対 処 方 法 の 適 切 な 選 択 という 方 法 を 通 してサービス 内<br />

容 についてのインフォームドコンセントを 得 ることにもつながる。<br />

L のシートは、 支 援 計 画 の 立 案 シートである。 利 用 者 と 相 談 をして 決 定 した 支 援 内 容 や 対 処 方 法 を 具<br />

体 的 にどのように 支 援 していくか、どの 機 関 が 実 施 するのか 等 を 検 討 する 際 に 用 いるものである。 支 援<br />

目 標 や 支 援 内 容 、 実 施 主 体 を 書 き 込 むことにより、ケースマネジメントに 役 立 つ。 幾 つかの 支 援 内 容 に<br />

ついて、 有 効 性 順 位 と 実 効 性 順 位 とを 検 討 ・ 整 理 し、 優 先 順 位 の 高 いものを 選 択 し、 支 援 することがで<br />

きる。<br />

Mのシートは、フェイスシートである。 本 来<br />

M<br />

シートは、すべてのシートの 冒 頭 にあるのが 一 般 的<br />

だが、 様 々な 場 面 ・ 機 関 での 使 用 を 想 定 し、 重 複 する 項 目 の 記 入 を 避 けて 効 率 的 な 活 用 をはかるため、<br />

あえて 最 後 のシートとして 設 定 した。 既 に 既 存 の 様 式 で 同 様 の 情 報 が 整 理 されているのであれば、この<br />

シートを 用 いる 必 要 はないと 考 えている。<br />

以 上 が<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

全 体 の 構 成 である。 非 常 に 多 くの 様 式 と、 項 目 が 含 まれているが、ストレス・ 疲 労<br />

に 関 連 する 情 報 を 網 羅 的 に 収 集 し、 整 理 、 分 析 する 様 式 として 多 様 な 活 用 可 能 性 を 提 案 している。<br />

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3. <strong>MSFAS</strong> の 活 用 方 法<br />

(1) <strong>MSFAS</strong> の 基 本 的 活 用 方 法<br />

<strong>MSFAS</strong> の 活 用 に 際 しては 、「 障 害 者 本 人 と 支 援 者 による 協 同 作 業 」により 作 成 することを 推 奨 して<br />

いる。このような 作 成 過 程 は、 多 くの 情 報 の 整 理 に 係 るコストを 低 減 するだけでなく 対 象 者 と 支 援 者 の<br />

信 頼 関 係 を 構 築 することに 繋 がるものである。<br />

特 に、ストレスや 疲 労 に 影 響 する 様 々な 要 因 は、 個 々 人 によってその 影 響 力 が 異 なるだけでなく、 多<br />

くは 対 象 者 個 々 人 のプライベートな 情 報 と 密 接 に 結 びついている。そのため、 対 象 者 にとっては 信 頼 関<br />

係 が 確 立 していない 人 には 話 しにくい 内 容 であるが、 支 援 者 にとっては 支 援 計 画 を 検 討 する 際 に 不 可 欠<br />

で 重 要 な 情 報 となる。<br />

そこで、 <strong>MSFAS</strong><br />

では、 対 象 者 の 心 理 的 負 担 感 を 軽 減 するため、 自 分 の 状 況 を 比 較 的 負 荷 の 低 い 周 辺<br />

情 報 から 、 課 題 に 向 き 合 い 解 決 策 を 検 討 するといった 本 質 的 情 報 へと 段 階 的 に 作 成 することにしている。<br />

また、 後 半 では、ストレスや 疲 労 に 関 する 機 能 分 析 や、 対 処 行 動 の 獲 得 に 向 けた 課 題 分 析 を、 支 援 者 と<br />

の 相 談 の 中 で、 徐 々に 考 えていくツールとして 用 いられるよう 工 夫 されている。これらの 使 用 上 の 工 夫<br />

について 図 2-2-4にまとめた。<br />

障 害 者 : 信 頼 できる 支 援 者 を 得 るために・・・<br />

自 分 の 状 況 を 徐 々に 表 現 する「 負 荷 の 低 い 周 辺 情 報 」から<br />

課 題 に 向 き 合 い、 解 決 策 を 検 討 する「 課 題 に 直 接 関 係 する 本 質 的 情 報 」へ<br />

< 利 用 者 用 シート> 対 象 者 や 家 族 が 作 成 する 様 式<br />

支 援 導 入 段 階 の 初 期 面 接 で 使 用 し、 周 辺 情 報 を 把 握 する。<br />

支 援 者 : 支 援 計 画 を 立 案 するために・・・<br />

障 害 状 況 やストレス 要 因 等 の「 課 題 に 直 接 関 係 する 本 質 的 情 報 」から<br />

ストレスや 疲 労 に 影 響 を 及 ぼしうる「 偶 発 的 な 環 境 要 因 」の 分 析 へ<br />

< 支 援 者 用 ( 相 談 用 )シート> 支 援 者 と 協 同 で 作 成 する 様 式<br />

支 援 立 案 等 、 評 価 や 訓 練 後 の 計 画 立 案 時 の 相 談 において、 活 用 し 協 議<br />

の 中 でインフォームドコンセントを 行 いつつ 支 援 計 画 を 立 てる。<br />

図 2-2-4.<br />

<strong>MSFAS</strong> の 基 本 的 活 用 方 法<br />

(2)トータルパッケージにおける <strong>MSFAS</strong> の 活 用 方 法<br />

<strong>MSFAS</strong> の 活 用 については、 以 下 の 理 由 によりトータルパッケージの 中 での 活 用 を 推 奨 する。<br />

1ワークサンプル( 幕 張 版 )( 以 下 MWS<br />

という)は、 作 業 の 量 や 難 易 度 を 段 階 的 に 設 定 することが<br />

できるため、 難 易 度 に 応 じた、ストレスや 疲 労 の 現 れ 方 を 把 握 することができる。<br />

2エラーの 質 的 分 析 により、ストレスや 疲 労 が 作 業 に 及 ぼす 影 響 、 認 知 障 害 との 関 係 を 推 測 すること<br />

ができる。<br />

3 認 知 障 害 や 作 業 の 難 易 度 等 に 応 じたストレスや 疲 労 の 現 れ 方 を 整 理 することができれば、その 対 処<br />

方 法 も、 併 せて 整 理 することが 可 能 となる。<br />

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4トータルパッケージでは、 WCST<br />

から 推 測 された 認 知 障 害 や、 作 業 におけるストレスや 疲 労 の 現<br />

れ 方 に 応 じて、 補 完 手 段 などの 支 援 方 法 を 導 入 することができる。 補 完 手 段 の 効 果 により、スト<br />

レス・ 疲 労 を 軽 減 する 対 処 行 動 を 推 測 することができる。<br />

5 MWS は、より 実 際 の 作 業 に 近 い 形 態 を 持 っているため、 現 場 でのストレスや 疲 労 の 現 れ 方 を 予 測<br />

しやすい。<br />

トータルパッケージの 活 用 には、 以 上 のような 利 点 がある。このような 利 点 を 活 かすことで、 利 用 者<br />

毎 の 障 害 状 況 に 合 わせて、 疲 労 やストレスを 調 整 していく 機 会 を 設 定 することができる。 自 己 の 障 害 認<br />

識 がうまくできない 人 やストレス・ 疲 労 のモニタリングが 適 切 にできない、また、 適 切 な 対 処 行 動 をと<br />

れないという 課 題 を 解 決 するには、トータルパッケージを 通 じて、 認 知 障 害 とストレス・ 疲 労 の 関 係 、 作<br />

業 に 対 する 影 響 、 補 完 手 段 や 対 処 行 動 の 獲 得 等 により 具 体 的 な 解 決 策 を 経 験 できるよう 支 援 することが<br />

有 効 と 考 えられる。<br />

表 2-2-3に、トータルパッケージにおける<br />

<strong>MSFAS</strong> の 活 用 手 順 をまとめた。<br />

表 2-2-3. トータルパッケージにおける <strong>MSFAS</strong> の 活 用 手 順<br />

1 初 日 ~3 日 目 の 間 に、シートA~Fを 記 入 する。 記 入 後 、 作 成 されたシートを 元 に、 30 分 ~ 1<br />

時 間 程 度 、 個 別 相 談 を 行 う。<br />

2 <strong>MSFAS</strong>、 及 び 個 別 相 談 より 得 た 情 報 、 MWS( 簡 易 版 )の 作 業 状 況 より、 対 象 者 のストレス・<br />

疲 労 のサインを 把 握 する。<br />

3 1 週 目 のトータルパッケージの 実 施 状 況 より 、「<br />

J 支 援 手 続 きの 課 題 分 析 シート」をもとに、<br />

ストレス・ 疲 労 の 生 起 過 程 を 機 能 分 析 し、 支 援 方 針 を 立 てる。<br />

4 再 度 、 個 別 相 談 を 実 施 し、 対 象 者 に、トータルパッケージの 実 施 状 況 をフィードバックし、 課<br />

題 と 目 標 について 話 し 合 う。 必 要 に 応 じ 、「K<br />

対 処 方 法 の 検 討 シート」を 活 用 しながら、 対<br />

処 行 動 確 立 の 必 要 性 と、 対 処 行 動 について 検 討 する。<br />

5 作 業 評 価 課 題 ( 訓 練 版 )を 活 用 し、 対 処 行 動 ・ 補 完 手 段 獲 得 の 訓 練 を 行 なう。<br />

6 トータルパッケージ 終 了 前 後 に、 振 り 返 りの 相 談 を 行 なう。 必 要 に 応 じ 、「K<br />

対 処 方 法 の 検<br />

討 シート」を 活 用 しながら、 対 処 行 動 を 確 認 し、 支 援 計 画 を 再 検 討 する。<br />

7 トータルパッケージでの 実 施 目 標 と 支 援 手 続 きを 、「J<br />

支 援 手 続 きの 課 題 分 析 シート」を 用<br />

いて、 追 加 、 修 正 し、 整 理 する。<br />

4. <strong>MSFAS</strong> の 機 能 と 効 果<br />

(1) <strong>MSFAS</strong> の 活 用 によるメリット<br />

(ア) <strong>MSFAS</strong> の 活 用 による 対 象 者 と 支 援 者 への 効 果<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

を 用 いて、ストレス・ 疲 労 の 周 辺 状 況 や 機 序 を 分 析 していく 過 程 は、 対 象 者 や 支 援 者 の 障 害<br />

に 対 する 考 え 方 や 対 処 の 仕 方 について、 変 化 をもたらす。<br />

まず、 対 象 者 は 自 分 自 身 の 状 況 や 障 害 、それらへの 対 処 方 法 等 を<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

を 作 成 したり 相 談 してい<br />

く 中 で 学 んでいくことができる。つまり、 対 象 者 は 自 分 の 障 害 について 積 極 的 に 対 処 する 方 法 を 学 習 す<br />

ることになり、 積 極 的 に 障 害 を 受 容 できるようになる。また、 <strong>MSFAS</strong> を 用 いて、 支 援 者 からの 的 確 な<br />

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説 明 を 受 けることで、 対 象 者 は、 自 分 のストレス・ 疲 労 の 状 態 を 支 援 者 が 理 解 していると 感 じられるだ<br />

けでなく、 信 頼 できる 支 援 者 を 得 ることとなる。さらに、 <strong>MSFAS</strong><br />

を 用 いて 様 々な 支 援 者 とのラポール<br />

の 拡 大 に 積 極 的 に 活 用 する 等 、 自 分 の 障 害 を 適 切 に 他 者 に 伝 えるためのコミュニケーションツールとし<br />

て 機 能 する 可 能 性 も 考 えられる。<br />

一 方 で、 支 援 者 は 対 象 者 のストレス・ 疲 労 の 状 況 を 把 握 する 中 で、 対 象 者 のプライベート・イベント<br />

( 内 的 体 験 )について 触 れる 機 会 が 多 くなり、その 結 果 として 対 象 者 との 間 にラポールを 形 成 しやすく<br />

なる。また、 適 切 なストレス・ 疲 労 の 分 析 を 行 うことで、 対 象 者 の 対 処 行 動 の 形 成 に 向 けた 支 援 策 を 検<br />

討 することでき、より 具 体 的 なサービスを 行 うことができるようになる。<br />

(イ)ストレス・ 疲 労 の 発 生 機 序 に 関 する 機 能 分 析<br />

支 援 者 用 ( 相 談 用 )シートは、ストレス・ 疲 労 の 発 生 機 序 を 整 理 し、 対 象 者 の 感 じているストレスや<br />

疲 労 を 対 象 化 することを 目 指 している。 例 えば、 対 象 者 がストレスや 疲 労 を 感 じる 前 に 作 業 上 のミスや<br />

確 認 行 動 の 頻 度 が 多 くなるのであれば、それらを 外 的 なストレスや 疲 労 のサインとして 特 定 する。この<br />

ような、ストレス・ 疲 労 の 前 駆 段 階 も 含 めた 機 能 分 析 は、ストレス・ 疲 労 を 対 象 者 が 訴 える 前 の 段 階 で<br />

状 態 の 変 化 を 把 握 することに 繋 がり、 早 期 に 対 応 できる 可 能 性 を 高 めるものとなる。<br />

(ウ)ストレス・ 疲 労 への 対 処 行 動 を 確 立 するための 支 援 段 階 の 課 題 分 析<br />

支 援 者 用 ( 相 談 用 )シートに 支 援 手 続 きの 課 題 分 析 シートがある。このシートはストレス・ 疲 労 に 関<br />

連 した 問 題 の 現 状 と、 望 ましい 対 処 行 動 を 含 めた 目 標 を 設 定 し、 課 題 分 析 の 技 法 を 用 いて 現 状 と 目 標 を<br />

つなぐ 支 援 方 法 を 具 体 的 ・ 段 階 的 に 検 討 するものである。この 課 題 分 析 により、 対 象 者 が 抱 えている 問<br />

題 と 具 体 的 な 支 援 方 法 が 明 確 化 されるだけでなく、 段 階 的 な 支 援 方 法 を 分 析 することにより、 支 援 の 進<br />

捗 状 況 の 把 握 や、 支 援 上 の 新 たな 課 題 等 にスピーディに 対 応 できるようになる。<br />

また、このような 課 題 分 析 の 結 果 を 支 援 段 階 のリストとして 対 象 者 に 提 示 することで、 対 象 者 のモチ<br />

ベーションをあげ 積 極 的 な 対 処 行 動 の 実 行 へつなげることも 可 能 となる。<br />

このような 機 能 分 析 や 課 題 分 析 は、 対 象 者 の 職 場 適 応 力 を 向 上 させるだけでなく、 支 援 者 の 支 援 スキ<br />

ルをナチュラルサポートに 結 びつけ 得 るものであるとも 考 えられる。<br />

(エ) 面 接 にかかるコストの 軽 減<br />

<strong>MSFAS</strong> 作 成 にかかる 所 要 時 間 は、 利 用 者 用 が 30 分 ~ 90 分 、その 後 の 聞 き 取 りが、 30 分 ~ 60 分 で<br />

ある。トータルパッケージは2 週 間 程 度 の 期 間 で 実 施 しており、 一 定 の 対 処 行 動 の 確 立 を 目 指 すには、<br />

短 時 間 で 効 率 よく 情 報 を 得 ることが 必 要 である。 本 人 の 同 意 のもと、 <strong>MSFAS</strong><br />

を 活 用 することで、 情 報<br />

提 供 を 受 けるだけではなく、より 具 体 的 な、 核 心 に 近 い 話 をすることができ、 短 期 間 で 対 象 者 と 支 援 者<br />

が 目 標 を 共 有 することが 可 能 となる。<br />

(2) 職 業 リハビリテーション・サービスにおける <strong>MSFAS</strong> の 機 能 と 効 果<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

は、 職 業 相 談 や 職 業 能 力 評 価 、 職 業 準 備 の 訓 練 、 職 場 適 応 促 進 の 支 援 場 面 等 、 職 リハの 様 々<br />

な 過 程 で 用 いる。それらの 過 程 の 中 で <strong>MSFAS</strong> は『 情 報 の 収 集 → 情 報 の 整 理 → 情 報 の 共 有 → ストレス<br />

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・ 疲 労 の 機 能 分 析 → 対 処 行 動 確 立 に 向 けた 支 援 計 画 の 作 成 』といった 機 能 を 果 たす。また、 <strong>MSFAS</strong> の<br />

作 成 過 程 は、 多 くの 情 報 の 整 理 に 係 るコストを 低 減 し、 対 象 者 と 支 援 者 の 信 頼 関 係 の 構 築 にも 役 立 つ。<br />

このような 一 連 の 機 能 を 職 業 リハビリテーション・サービスの 流 れにそって 見 ると、 以 下 のように 整<br />

理 できる。<br />

図 2-2-5.<br />

<strong>MSFAS</strong> による 対 象 者 と 支 援 者 への 効 果<br />

(ア) 初 期 の 相 談 場 面 ( 情 報 の 収 集 、 情 報 の 整 理 )<br />

利 用 者 : 個 々の 置 かれている 状 況 を 整 理 し 障 害 状 況 を 受 容 する 一 過 程 となるとともに、 他 者 に 効 率 よく<br />

自 分 の 情 報 を 伝 えるツールとして 機 能 する。<br />

支 援 者 : 相 談 場 面 では 対 象 者 から 得 られにくい 情 報 についても 端 的 に 得 られるため、 利 用 者 の 障 害 状 況<br />

も 含 め 基 礎 情 報 の 把 握 に 有 用 である。<br />

これらの 様 式 はまた、 多 くの 情 報 を 網 羅 的 に 把 握 できることから、 様 々な 視 点 からストレス・ 疲 労 を<br />

検 討 できる 重 要 な 資 料 となる。<br />

(イ) 評 価 場 面 ( 情 報 の 整 理 、 情 報 の 共 有 )<br />

利 用 者 : 認 知 的 負 荷 の 係 る 課 題 や 作 業 等 での 疲 労 ・ストレスの 状 況 について 把 握 できる。 必 然 的 に 他 人<br />

に 自 分 自 身 の 情 報 を 伝 えることとなり、 自 分 の 障 害 について 自 ら 伝 達 ・ 告 知 することになる。<br />

支 援 者 :これらの 情 報 を 相 談 場 面 の 情 報 と 併 せて 検 討 することで、 対 象 者 の 認 知 障 害 の 状 況 やストレス<br />

や 疲 労 の 要 因 となりがちな 環 境 条 件 を 特 定 することが 可 能 となる。 利 用 者 からの 情 報 提 供 によ<br />

り、ラポールの 形 成 に 役 立 つ。<br />

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(ウ) 評 価 後 の 相 談 場 面 ( 情 報 の 再 整 理 、 情 報 の 共 有 、ストレス・ 疲 労 の 機 能 分 析 )<br />

利 用 者 : 利 用 者 は 対 処 行 動 の 必 要 性 や、 現 状 の 対 処 行 動 に 不 適 切 さがあることに 気 づくことができる。<br />

支 援 者 : 認 知 障 害 も 含 めたストレス・ 疲 労 に 関 する 問 題 の 分 析 の 過 程 であり、 利 用 者 の 疲 労 やストレス<br />

の 発 生 過 程 を 明 確 化 することができる。<br />

(エ) 職 業 準 備 性 の 向 上 訓 練 (ストレス・ 疲 労 の 機 能 分 析 、 支 援 計 画 立 案 、 支 援 の 実 施 )<br />

利 用 者 :この 過 程 の 中 では、 望 ましい 対 処 行 動 は 何 かということを 理 解 することができる。 適 切 な 対 処<br />

方 法 を 体 験 できる。 障 害 を 自 ら 積 極 的 に 受 容 し 能 動 的 に 自 らの 障 害 に 働 きかけるようになる。<br />

支 援 者 : 利 用 者 の 疲 労 やストレスについての 認 知 を 変 えるための 支 援 が 可 能 となる。 利 用 者 の 疲 労 やス<br />

トレスに 対 する 対 処 行 動 を 変 容 することができる。<br />

初 期 相 談 や 評 価 場 面 での 疲 労 ・ストレスの 状 況 をもとに、 対 処 行 動 の 確 立 に 向 けた 計 画 を、 協 同 して<br />

策 定 することができる。 <strong>MSFAS</strong><br />

は「 共 に 作 成 し 考 えること」を 基 本 とした 様 式 であり、 障 害 者 自 身 の<br />

自 己 決 定 がスムーズに 行 えるよう 工 夫 されており、インフォームドコンセントの 重 要 性 がうたわれる 昨<br />

今 では、 職 業 リハビリテーション 計 画 のような 個 人 の 将 来 に 関 わる 方 針 については、 利 用 者 本 人 との 協<br />

議 が 必 須 である。<br />

ストレス・ 疲 労 への 対 処 行 動 確 立 の 支 援 の 効 果 を 検 証 することができる。 <strong>MSFAS</strong><br />

は 個 々 人 にあわせ<br />

て 計 画 された 支 援 が、 効 果 を 発 揮 しているか、 一 定 の 成 果 が 得 られたら 次 の 段 階 ではどのように 支 援 を<br />

行 えばよいか 等 、 段 階 的 な 支 援 が 計 画 できる。<br />

(オ) 職 場 適 応 促 進 の 支 援 場 面 ( 支 援 計 画 見 直 し、 支 援 の 実 施 )<br />

利 用 者 :これらの 経 過 を 通 して、 自 分 自 身 を 支 援 者 とするセルフマネージメントスキルの 促 進 をはかる<br />

ことができる。 <strong>MSFAS</strong><br />

を 用 いて、 自 己 を 取 り 巻 く 環 境 を 記 述 し 対 象 化 することによって、 自<br />

己 の 状 況 を 客 観 視 し、 自 己 内 の 具 体 的 な 問 題 を 認 識 し、それまでのサービスを 参 考 に 自 己 をマ<br />

ネージメントするための 方 法 を 検 討 することが 可 能 となる。<br />

支 援 者 : 利 用 者 のセルフマネージメントを 意 識 した 支 援 計 画 を 立 てることで、 利 用 者 のセルフマネージ<br />

メントスキルの 向 上 を 図 ることができる。これまでの 支 援 経 過 をもとに、ナチュラルサポート<br />

の 確 立 に 向 けた 支 援 方 法 を 検 討 できるだけでなく、 他 機 関 との 連 携 が 必 要 になる 場 合 には、 利<br />

用 者 の 同 意 を 得 て、 整 理 した 情 報 を 提 供 するツールとしても 活 用 できる。<br />

5. <strong>MSFAS</strong> の 活 用 における 課 題 と 留 意 点 とその 対 策<br />

(1) 課 題<br />

(ア) 課 題 分 析 、 機 能 分 析 の 困 難 さ<br />

これまでの 試 行 の 中 で、 <strong>MSFAS</strong><br />

については、ストレスや 疲 労 の 機 能 分 析 、 支 援 方 法 検 討 の 課 題 分 析<br />

の 作 成 にかかる 難 しさが 指 摘 されている。これらの 分 析 手 法 を 使 いこなすためには、 職 業 リハビリテー<br />

ション 専 門 家 に、 応 用 行 動 分 析 の 基 本 的 な 知 識 はもとより、 複 数 事 例 による 分 析 の 経 験 とスーパーバイ<br />

-62-


ザーによる 指 導 ・ 支 援 が 必 要 と 考 えられる。<br />

(イ) 対 処 方 法 検 討 シートの 活 用<br />

Kの 対 処 方 法 検 討 シートを 相 談 場 面 で 効 果 的 に 活 用 するためには、 相 談 の 場 で 直 接 利 用 者 と 一 緒 に 作<br />

成 するのではなく、 事 前 にJの 支 援 手 続 きの 課 題 分 析 シートを 用 いて 問 題 となるストレス・ 疲 労 の 機 能<br />

分 析 、 支 援 方 法 の 課 題 分 析 を 行 っておくことが 望 ましい。しかし 、(ア)でも 述 べたようにこれらの 分<br />

析 には、 一 定 の 経 験 と 指 導 ・ 支 援 が 必 要 とされることから、 実 際 の 相 談 で 用 いる 際 に 支 援 者 が 困 難 さを<br />

感 じることも 考 えられる。<br />

(2) 課 題 への 対 策<br />

1 課 題 分 析 リストの 作 成<br />

機 能 分 析 や 課 題 分 析 の 困 難 さを 解 決 するため、これまでの 試 行 結 果 から 、「J<br />

支 援 手 続 きの 課 題 分<br />

析 シート」を 抽 出 し、 個 々のシートで 分 析 対 象 となった 課 題 を 整 理 し、 課 題 毎 に 共 通 部 分 を 集 約 した 上<br />

で、より 詳 細 な 課 題 分 析 シートを 作 成 し、リスト 化 した。 作 成 した 課 題 分 析 リストは、 巻 末 『 資 料 2』<br />

に 示 した。 支 援 者 は 同 様 の 問 題 を 抱 えた 利 用 者 へのサービスを 検 討 する 際 に、このような 課 題 分 析 リス<br />

トを 用 いることで 、 現 状 から 目 標 にいたるまでのステップや 各 項 目 の 記 入 内 容 を 参 考 にすることができ、<br />

<strong>MSFAS</strong> の 活 用 の 問 題 点 である 機 能 分 析 ・ 課 題 分 析 に 係 るコストを 軽 減 できると 考 えられる。<br />

2 課 題 分 析 リストの 内 容<br />

表 2-2-4に 課 題 分 析 リストの 内 容 を 示 す。 個 々のシートは、 対 象 者 に 生 じがちな 問 題 について、<br />

厳 しい 現 状 から、より 高 い 目 標 までを 網 羅 できるよう 作 成 している。また、 課 題 分 析 リストは 目 標 とな<br />

る 行 動 により 分 類 されており、また 指 導 ・ 支 援 の 方 向 によってキーワードを 整 理 している。 内 容 の 分 類<br />

とキーワードにより 利 用 者 の 問 題 に 近 いシートを 絞 り 込 み、 参 照 できるよう 工 夫 されている。<br />

3 課 題 分 析 リストの 活 用<br />

このリストを 活 用 する 場 合 には、 目 的 に 応 じて 個 々のシートを 特 定 したうえで、シートをそのまま 用<br />

いるのではなく、シート 内 の 必 要 な 部 分 を 参 考 にしながら、 対 象 者 に 応 じた 支 援 策 を 検 討 することが 望<br />

ましい。また、 <strong>MSFAS</strong> を、 対 象 者 の 認 知 変 容 を 促 すツールとして 活 用 するには、 対 象 者 の 話 を 十 分 に<br />

聞 きながら、 適 切 な 機 能 分 析 を 行 なうことが 必 要 であり、 応 用 行 動 分 析 に 関 する 知 識 を 身 に 付 けている<br />

ことは 必 須 であると 考 えられる。これらの 知 識 を 習 得 するためには、 幾 つかの 応 用 行 動 分 析 の 参 考 文 献<br />

を 活 用 することが 望 まれる。<br />

-63-


表 2-2-4.<br />

<strong>MSFAS</strong> における 課 題 分 析 リスト<br />

No 分 類 キーワード1 キーワード2 キーワード3 目 標<br />

1 記 入 記 憶 障 害 の 補 完 のためメモリーノートの 記 入 支 援 をする<br />

2 行 動 管 理 記 憶 の 補 完 手 段 としてメモリーノートを 活 用 し、 行 動 管 理 を 行 う<br />

3 参 照 記 憶 の 補 完 手 段 、 情 報 共 有 ツールとしてメモリーノートを 参 照 できるようにする<br />

記 憶 障 害 補 完<br />

4 習 慣 化 記 憶 の 補 完 手 段 として、メモリーノートの 記 入 ・ 参 照 を 習 慣 化 する<br />

5 行 動 管 理 記 憶 障 害 の 補 完 手 段 としてメモリーノートを 活 用 することにより、 予 定 や 行 動 を 管 理 する<br />

6<br />

コミュニケーション 記 憶 障 害 の 補 完 手 段 としてメモリーノートを 自 立 的 に 活 用 することにより、コミュニケーションのトラブルを 回 避 する<br />

7 約 束 記 憶 障 害 の 補 完 手 段 としてメモリーノートを 活 用 することにより、 日 常 の 行 動 を 自 己 管 理 する<br />

8 行 動<br />

作 業 記 憶 障 害 の 補 完 手 段 としてメモリーノートを 活 用 することにより、 作 業 における 注 意 事 項 等 を 自 己 管 理 する<br />

メモリーノート 自 己 管 理<br />

9<br />

参 照 メモリーノートを 参 照 し、 自 立 的 な 行 動 を 取 れるようにする<br />

10<br />

不 安 軽 減 メモリーノートを 自 立 的 に 活 用 し、 不 安 の 軽 減 を 図 る<br />

11 参 照 増 加 スケジュール・ 今 日 の to-do について、 参 照 行 動 を 増 加 させ、メモリーノートの 記 入 を 促 す<br />

記 入<br />

12<br />

指 示 理 解 指 示 された 内 容 を 理 解 してメモリーノートに 記 入 する 習 慣 をつける<br />

13 自 発 的 行 動 メモリーノートを 使 用 することにより、 自 発 的 に 行 動 する<br />

14 遂 行 機 能 障 害 計 画 遂 行 機 能 障 害 の 補 完 手 段 として、メモリーノートを 用 いた 計 画 の 立 て 方 を 習 得 する<br />

15 対 人 不 安 対 処 行 動 メモリーノートを 活 用 することにより、 対 人 的 な 不 安 やイライラを 解 決 し、 適 切 な 対 処 行 動 を 取 る<br />

16<br />

疲 労 作 業 日 程 表 複 数 指 示 作 業 日 程 表 を 用 いた 計 画 の 立 て 方 を 習 得 することにより、 複 数 の 作 業 指 示 に 伴 う 不 安 や 疲 労 を 軽 減 する<br />

17 記 憶 障 害 の 補 完 手 段 として 指 示 書 ( 作 業 内 容 記 録 表 )を 活 用 することにより、 休 憩 をとることへの 不 安 を 軽 減 する<br />

休 憩<br />

18<br />

記 憶<br />

指 示 書<br />

記 憶 障 害 の 補 完 手 段 として 指 示 書 を 活 用 することにより、 休 憩 をとることへの 不 安 を 軽 減 する<br />

19<br />

不 安 記 憶 障 害 の 補 完 手 段 として 指 示 書 ( 作 業 内 容 記 録 表 )を 活 用 することにより、 手 順 を 忘 れることへの 不 安 を 軽 減 する<br />

20 確 認 認 知 障 害 の 補 完 手 段 として、 確 認 行 動 を 徹 底 することにより、 正 確 性 の 向 上 を 図 る<br />

正 確 性<br />

21<br />

補 完<br />

不 安 補 完 手 段 の 活 用 により 正 確 性 を 向 上 させることで、 不 安 の 原 因 となるネガティブなフィードバックを 抑 制 する<br />

22<br />

補 完 手 段 の 活 用 を 通 じて 作 業 に 関 し 成 功 体 験 をつむ<br />

作 業 遂 行<br />

23 確 認 行 動 維 持 確 認 行 動 の 形 成 により 正 確 性 の 維 持 、 向 上 を 図 る<br />

正 確 性<br />

24<br />

手 順<br />

作 業 を 正 しく 指 示 された 手 順 どおりに 遂 行 する<br />

25 感 情 抑 制 集 中 力 感 情 のコントロールを 意 識 することにより、 作 業 への 集 中 力 を 高 めて 作 業 ミスを 防 止 する<br />

ミス<br />

26<br />

記 憶 手 順 書 記 憶 障 害 の 補 完 手 段 として、 手 順 書 を 活 用 することにより、ミスを 出 すことへの 不 安 を 軽 減 する<br />

27 依 存 自 己 強 化 他 者 に 依 存 しがちな 強 化 を 自 己 に 内 在 化 させ、 自 立 的 な 作 業 遂 行 を 促 す<br />

28<br />

作 業 結 果 確 認 行 動 モニタリング 作 業 結 果 の 確 認 行 動 を 徹 底 することにより、 正 しいモニタリングができるようにする<br />

29 行 動 作 業 指 示 を 理 解 し、 行 動 する<br />

30 作 業 理 解<br />

指 示 作 業 指 示 理 解 が 難 しいため、 指 示 方 法 を 確 立 する<br />

31<br />

電 話 職 務 遂 行 電 話 の 職 務 を 遂 行 する<br />

32 成 功 自 己 強 化 認 知 障 害 の 補 完 手 段 を 整 理 し、 作 業 の 成 功 体 験 を 積 むことにより、 自 己 強 化 と 障 害 認 識 を 促 進 する<br />

補 完<br />

33<br />

リストアップ 不 安 補 完 手 段 のリストアップにより、 活 用 することへの 不 安 感 を 軽 減 する<br />

障 害 理 解<br />

34 成 功 作 業 を 通 じて 成 功 体 験 を 積 むことにより、 障 害 認 識 を 促 進 する<br />

作 業<br />

35<br />

整 理<br />

作 業 を 通 して、 自 分 の 出 来 ること、 出 来 ないことを 整 理 し、 障 害 理 解 をすすめる<br />

36 固 定 指 示 者 作 業 負 荷 を 固 定 し、 指 示 者 が 休 憩 をコントロールする<br />

作 業 負 荷<br />

37<br />

コントロール<br />

作 業 負 荷 をコントロールする<br />

38 安 定 疲 労 に 応 じ、 適 切 なタイミングで 自 発 的 に 休 憩 を 取 ることにより、 安 定 した 作 業 遂 行 を 可 能 とする<br />

休 憩<br />

39 疲 労<br />

自 発 的<br />

休 憩 適 切 なタイミングで 休 憩 を 取 ることにより、 疲 労 の 蓄 積 による 作 業 への 影 響 を 軽 減 する<br />

40<br />

マネジメント 自 発 的 に 休 憩 を 取 り、 疲 労 をセルフマネジメントできるようにする<br />

41<br />

定 期 的<br />

定 期 的 に 休 憩 をとる<br />

42 表 情 の 変 化 支 援 者 が 感 情 のコントロールの 意 識 化 を 促 し、 対 人 関 係 上 のトラブルを 回 避 する<br />

感 情 抑 制 対 人 関 係<br />

43 対 処 行 動<br />

コミュニケーション 感 情 のコントロールを 意 識 することにより、 職 場 の 上 司 との 対 人 関 係 上 のトラブルを 回 避 する<br />

44<br />

イライラ レパートリー イライラを 抑 制 する 対 処 行 動 のレパートリーを 獲 得 する<br />

45 不 安 指 示 書 作 業 指 示 の 方 法 を 視 覚 化 することにより、 新 規 場 面 での 疲 労 ・ 不 安 を 軽 減 する<br />

環 境 調 整<br />

疲 労<br />

46<br />

新 規 場 面 休 憩 事 業 所 の 環 境 を 調 整 することにより、 新 規 場 面 での 疲 労 を 軽 減 する<br />

47 タイミング 適 切 なタイミングで 質 問 が 出 来 るようにする<br />

質 問<br />

自 発 的<br />

48<br />

自 発 的 に 質 問 をできるようにする<br />

49 コミュニケーション 意 見 受 け 容 れ 自 分 と 異 なる 意 見 を 受 け 容 れやすい 環 境 にする<br />

(3) 留 意 点<br />

(ア) 事 前 の 理 解<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

は、 個 人 のプライベートな 情 報 を 含 んでいるため、これらの 作 成 ・ 活 用 に 際 しては 十 分 な<br />

配 慮 が 必 要 である。 特 に、 <strong>MSFAS</strong><br />

は、 支 援 者 と 対 象 者 が 共 同 でストレスや 疲 労 のマネジメント 方 法 を<br />

考 えるツールであることから、 作 成 時 には 対 象 者 に 対 し、 <strong>MSFAS</strong> 作 成 の 目 的 と 本 人 の 協 力 が 必 要 である<br />

ことを 説 明 し 同 意 を 得 ることが 必 要 である。<br />

また、 以 下 に 支 援 者 が 留 意 すべき 事 項 と 利 用 者 に 作 成 を 依 頼 する 際 の 留 意 事 項 を 列 挙 する。<br />

-64-


1 支 援 者 が 留 意 すべき 事 項<br />

・ 医 療 情 報 等 、プライベート 情 報 の 取 り 扱 いに 注 意 すること<br />

・ 医 療 情 報 による 判 断 は 有 資 格 者 でなくては 行 えないこと<br />

・ 利 用 者 は 自 己 の 状 況 を 整 理 することで 不 安 定 になる 可 能 性 があること<br />

・ 個 人 情 報 の 整 理 、 伝 達 は 利 用 者 にとって 大 きなストレスとなるため、 無 理 強 いをしないこと<br />

・ 作 成 する 前 に、 目 的 を 十 分 説 明 すること<br />

・ 利 用 者 の 状 態 を 確 認 し、 書 くのがつらい 項 目 について 把 握 すること<br />

・わからないところは 無 理 に 記 入 せず、 質 問 してもかまわないこと<br />

・ 全 部 を 一 気 に 書 く 必 要 はなく、 数 回 に 分 けて 記 入 すればよいこと<br />

・まとめたいが 提 出 したくない 場 合 は、 相 談 の 上 取 り 扱 い 方 を 決 定 すること<br />

2 利 用 者 に 伝 えるべき 留 意 事 項<br />

・ 仕 事 を 続 けるには、ストレスや 疲 労 との 上 手 な 付 き 合 い 方 を 身 に 付 けることが 大 切 であること<br />

・どんな 時 に、ストレスや 疲 れを 感 じるのかを 整 理 したり 対 処 方 法 を、 支 援 者 と 一 緒 に 考 えるためのシ<br />

ートであること<br />

・ 記 入 の 時 間 や 記 入 場 所 に 制 限 はないので 時 間 をかけて 書 いてよいこと<br />

・ 記 入 は 無 理 強 いされるものではなく 書 きたくない 項 目 は 記 入 しなくてもよいこと<br />

・わからないところは 無 理 に 記 入 せず、 質 問 してもかまわないこと<br />

・ 全 部 を 一 気 に 書 く 必 要 はなく、 数 回 に 分 けて 記 入 すればよいこと<br />

・まとめたいが 提 出 したくない 場 合 は、 相 談 の 上 取 り 扱 い 方 を 決 定 すること<br />

利 用 者 の 障 害 状 況 によっては、 口 頭 による 説 明 のみでは 十 分 理 解 を 得 ることができないことも 考 えら<br />

れる。 利 用 者 への 説 明 事 項 を 視 覚 的 に 提 示 することが 有 効 な 場 合 もあることから、 図 2-2-6に 利 用<br />

者 への 説 明 用 資 料 を 示 した。<br />

(イ) 個 別 相 談 の 重 要 性<br />

<strong>MSFAS</strong> の「E 病 気 ・ 障 害 に 関 する 情 報 を 整 理 する 」「F ストレスや 疲 労 が 生 じる 状 況 について 整<br />

理 する」については、 対 象 者 により、 記 入 される 量 や 内 容 に 差 がある。これらのシートは 障 害 受 容 の 程<br />

度 が 反 映 される 項 目 であり、 記 入 量 の 少 なさ、あるいは 内 容 からは、 障 害 受 容 への 抵 抗 や 自 己 防 衛 の 強<br />

さを 読 み 取 ることができる。しかし、 質 問 内 容 の 理 解 が 難 しい 項 目 もあるため、 面 接 等 を 通 じて、 共 同 で 作<br />

成 したり、 作 成 された 内 容 をもとに 聞 き 取 りを 行 なうことが 重 要 である。また、 障 害 の 開 示 に 抵 抗 があ<br />

る 場 合 には、 期 間 をおいて、 記 入 を 求 めることにより、 変 化 を 把 握 することも 必 要 である。<br />

(ウ) 支 援 者 の 要 件<br />

利 用 者 の 中 には、ストレスや 疲 労 を 感 じた 時 に 、「 我 慢 する 」「<br />

声 をかけられるのを 待 つ」という 行<br />

-65-


動 を 取 っており、ストレスや 疲 労 が 蓄 積 したときには、 欠 勤 や 対 人 関 係 のトラブルなどの 問 題 行 動 とし<br />

て 現 れる 人 が 少 なくない。<br />

<strong>MSFAS</strong><br />

による 情 報 の 整 理 や 検 討 、ストレス・ 疲 労 のセルフマネージメントトレーニング 等 は、 対 象<br />

者 へ 相 当 の 負 荷 がかかるため、 <strong>MSFAS</strong><br />

の 作 成 を 通 じて、 本 人 から 情 報 を 得 るだけではなく、 医 療 機 関<br />

等 と 連 携 をし、 認 知 障 害 の 状 況 、 配 慮 事 項 、 調 子 を 崩 す 時 の 状 態 等 について 情 報 をることができる 場 合<br />

は、その 上 で 実 施 することが 望 ましい。<br />

また、 支 援 者 は、 対 象 者 のストレスや 疲 労 の 現 われ 方 に 応 じて、 作 業 の 負 荷 をコントロールすること<br />

が 必 要 であることや、ストレスや 疲 労 サインへの 気 づきと、 対 象 者 の 行 動 上 の 課 題 を、 認 知 障 害 から 生<br />

じるストレスや 疲 労 の 結 果 として 捉 える 視 点 を 持 っていることが 必 要 である。<br />

<strong>MSFAS</strong> 作 成 時 の 注 意 事 項<br />

●<br />

●<br />

●<br />

●<br />

●<br />

●<br />

●<br />

●<br />

仕 事 を 続 けていくにあたっては、ストレスや 疲 労 と<br />

の 上 手 な 付 き 合 い 方 を 身 に 付 けておくことが 大 切 です。<br />

自 分 がどんな 時 に、ストレスや 疲 れを 感 じるのかを<br />

整 理 し、ストレスや 疲 れをためないための 対 処 方 法 を、<br />

支 援 者 と 一 緒 に 考 えていきましょう。<br />

このシートをまとめることで 自 分 の 状 況 を 整 理 する<br />

ことができます。<br />

これからの 自 分 のためにまとめましょう<br />

記 入 の 時 間 制 限 はないので、 時 間 をかけて 書 いて 下 さい。<br />

あまり 書 きたくないな、と 思 う 項 目 は、 記 入 しなくても<br />

かまいません。<br />

この 場 で 記 入 せず、 家 に 帰 って 書 いてもかまいません。<br />

質 問 項 目 の 意 味 や 答 え 方 がわからない 場 合 、 支 援 者 に<br />

聞 いてください。<br />

作 業 や 仕 事 との 関 係 がわかりにくい 時 は、 別 の 機 会 に<br />

書 くこともできます。<br />

作 成 したシートは 今 後 の 相 談 などでも、 使 いますので<br />

支 援 者 に 提 出 してください。<br />

もし 提 出 したくない 時 には、 相 談 してください。<br />

図 2-2-6.<br />

利 用 者 への 説 明 用 資 料<br />

-66-

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