1.関西国際空港マルチラテレーション導入評価 1. 関西国際空港 ... - ENRI
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電 子 航 法 研 究 所 研 究 発 表 会 ( 第 10 回 平 成 22 年 6 月 )<br />
<strong>1.</strong> <strong>1.</strong> 関 西 国 際 空 港 マルチラテレーション 導 入 評 価<br />
通 信 ・ 航 法 ・ 監 視 領 域 ※ 上 田 栄 輔 , 宮 崎 裕 己 , 二 瓶 子 朗 , 角 張 泰 之<br />
機 上 等 技 術 領 域 古 賀 禎<br />
航 空 交 通 管 理 領 域 山 田 泉<br />
企 画 課 長 谷 川 努<br />
<strong>1.</strong> はじめに<br />
関 西 国 際 空 港 では,2 期 工 事 による B 滑 走 路 運<br />
用 開 始 やこれに 伴 うスポットの 増 設 など 空 港 容<br />
量 の 拡 張 が 進 められている。このような 状 況 でも<br />
管 制 官 が 空 港 内 における 航 空 機 の 位 置 を 正 確 に<br />
把 握 するための 飛 行 場 管 制 支 援 機 能 の 一 部 とし<br />
てマルチラテレーションの 導 入 が 進 められてい<br />
る。<br />
マルチラテレーションとは, 現 用 の 空 港 面 探 知<br />
レーダー(ASDE)で 指 摘 されている 問 題 点 を 克<br />
服 できる 特 徴 を 持 つ 監 視 システムである。このた<br />
め,ASDE と 組 み 合 わせて 運 用 することで, 空 港<br />
内 を 走 行 する 航 空 機 の 位 置 をより 正 確 に 把 握 す<br />
ることが 可 能 である。 当 研 究 所 では, 仙 台 空 港 の<br />
基 礎 評 価 をもとに, 東 京 国 際 空 港 および 成 田 国 際<br />
空 港 において 導 入 評 価 を 進 めてきた [1][2] 。<br />
このマルチラテレーションにおいて 十 分 な 性<br />
能 を 発 揮 させるためには, 導 入 する 空 港 の 構 造 に<br />
対 応 した 適 切 な 位 置 に 受 信 局 アンテナを 配 置 す<br />
ることが 極 めて 重 要 である。そして, 建 造 物 が 多<br />
数 存 在 するエリアにおいては, 必 要 な 性 能 を 得 る<br />
ために 事 前 評 価 を 実 施 することが 不 可 欠 である。<br />
関 西 国 際 空 港 は, 四 方 が 海 に 囲 まれていること,<br />
そしてターミナルビルの 屋 上 が 活 用 できないこ<br />
と, 入 り 組 んだ 配 置 のエプロンエリアなど, 受 信<br />
局 アンテナの 設 置 に 大 きな 制 約 がある。このよう<br />
な 背 景 から, 当 研 究 所 は 国 土 交 通 省 大 阪 航 空 局 か<br />
らの 請 負 により, 関 西 国 際 空 港 におけるマルチラ<br />
テレーションの 導 入 評 価 を 実 施 した。<br />
本 稿 では, 初 めにマルチラテレーション 評 価 装<br />
置 の 概 要 について 述 べ, 次 に 車 両 走 行 試 験 による<br />
評 価 結 果 を 示 し, 最 後 に 評 価 結 果 に 対 する 改 善 策<br />
を 適 用 した 再 評 価 結 果 を 示 す。<br />
2. マルチラテレーションの 概 要<br />
マルチラテレーションは, 航 空 機 のトランスポ<br />
ンダから 送 信 されるスキッタや 二 次 監 視 レーダ<br />
(SSR)のモード S 応 答 [3]を 複 数 の 受 信 局 で 検 出<br />
する。そして, 受 信 局 間 の 検 出 時 刻 差 を 距 離 差 に<br />
変 換 して, 距 離 差 が 一 定 からなる 双 曲 線 同 士 の 交<br />
点 を 求 めることで 航 空 機 の 位 置 を 算 出 する。 図 1<br />
に 測 位 原 理 を 示 す。<br />
マルチラテレーションは, 双 曲 線 同 士 の 交 点 に<br />
より 位 置 を 算 出 するため, 双 曲 線 同 士 が 直 交 する<br />
ような 受 信 局 アンテナの 配 置 ,すなわち 受 信 局 ア<br />
ンテナで 航 空 機 をより 広 く 囲 む 場 合 に 良 好 な 位<br />
置 精 度 が 得 られる。また, 受 信 局 間 の 検 出 時 刻 差<br />
から 位 置 を 求 めるため, 各 受 信 局 の 時 刻 同 期 が 必<br />
須 となり,このための 基 準 送 信 局 を 設 置 している。<br />
この 基 準 送 信 局 と 航 空 機 の 送 信 信 号 を 確 実 かつ<br />
正 確 に 検 出 することも 重 要 な 要 素 となる。<br />
一 方 , 性 能 低 下 の 外 的 な 要 因 として, 建 造 物 や<br />
大 地 面 などによるマルチパスの 影 響 が 挙 げられ<br />
る。マルチパスは, 信 号 の 誤 検 出 や 検 出 ロスの 原<br />
因 となるため, 空 港 の 構 造 や 電 波 環 境 を 充 分 考 慮<br />
した 受 信 局 アンテナの 配 置 が 重 要 である。<br />
Ta<br />
Tc-Ta<br />
Tc<br />
受 信 局 A<br />
受 信 局 C<br />
Ta-Tb<br />
Tb<br />
Tc-Tb<br />
受 信 局 B<br />
図 1 マルチラテレーションの 測 位 原 理<br />
2.1 マルチラテレーション 評 価 用 装 置 の 概 要<br />
図 2 に 関 西 国 際 空 港 におけるマルチラテレー<br />
ション 評 価 用 装 置 の 配 置 を 示 し, 図 3 に 本 評 価 装<br />
置 の 構 成 を 示 す。マルチラテレーション 評 価 用 装<br />
置 は,リモート 局 , 処 理 部 ,および 基 準 送 信 局 か<br />
ら 構 成 される。 以 下 に 各 装 置 の 概 要 を 説 明 する。<br />
− 5 −
電 子 航 法 研 究 所 研 究 発 表 会 ( 第 10 回 平 成 22 年 6 月 )<br />
8 9<br />
基 準 送 信 局 :1<br />
送 受 信 局 :5<br />
受 信 局 :10<br />
4<br />
5<br />
15<br />
2<br />
1<br />
13<br />
14<br />
3<br />
12<br />
10 11<br />
6 7<br />
図 2 評 価 用 マルチラテレーションの 配 置<br />
(1) リモート 局<br />
リモート 局 は, 受 信 局 もしくは 送 受 信 局 で 構 成<br />
される。 受 信 局 は, 航 空 機 から 送 信 された 信 号 を<br />
受 信 解 読 してターゲットレポートにまとめ,10ns<br />
単 位 のタイムスタンプを 付 して 処 理 装 置 に 出 力<br />
する。 送 受 信 局 は, 受 信 局 の 機 能 に 加 えて, 航 空<br />
機 に 対 してモード S 質 問 を 送 信 する。 航 空 機 に 対<br />
して 質 問 する 理 由 は,コールサインを 画 面 表 示 す<br />
るためにビーコンコードを 取 得 することや,スキ<br />
ッタが 得 られない 場 合 でもモード S 応 答 を 得 て<br />
検 出 率 の 低 下 を 防 ぐことなどが 挙 げられる。<br />
今 回 の 評 価 では, 図 2 の 配 置 図 に 示 すように<br />
15 局 のリモート 局 ( 受 信 局 10 局 , 送 受 信 局 5 局 )<br />
を 使 用 した。<br />
基 準 送 信 局<br />
リモート 局<br />
( 送 ) 受 信 局 1<br />
( 送 ) 受 信 局 2<br />
( 送 ) 受 信 局 15<br />
LAN<br />
HUB<br />
図 3 評 価 装 置 の 構 成<br />
処 理 部<br />
モニタ 装 置<br />
ターゲット<br />
処 理 装 置<br />
(2) 基 準 送 信 局<br />
基 準 送 信 局 は,リモート 局 間 の 時 刻 同 期 および<br />
システムモニタのためにスキッタ 信 号 を 送 信 す<br />
る。 評 価 用 装 置 では, 既 知 の 位 置 に 基 準 送 信 局 を<br />
設 置 して, 定 期 的 にスキッタ 信 号 を 送 信 させて 測<br />
定 位 置 を 継 続 的 にモニタしている。そして, 不 正<br />
確 な 位 置 が 測 定 された 場 合 は, 測 定 位 置 が 正 確 に<br />
既 知 の 位 置 となるようにリモート 局 のクロック<br />
を 自 動 的 に 校 正 させることでリモート 局 間 の 時<br />
刻 同 期 を 行 う。 関 西 国 際 空 港 では, 空 港 のほぼ 中<br />
心 に 位 置 して, 全 リモート 局 の 見 通 しが 得 られる<br />
ホテル 日 航 屋 上 に 基 準 送 信 局 を 1 局 配 置 した。<br />
(3) 処 理 部<br />
処 理 部 は,ターゲット 処 理 装 置 およびモニタ 装<br />
置 で 構 成 される。ターゲット 処 理 装 置 では, 各 リ<br />
モート 局 から 出 力 されたレポートをターゲット<br />
毎 にまとめて,マルチラテレーション 測 位 , 追 尾<br />
処 理 ,および 相 関 処 理 等 が 行 われる。モニタ 装 置<br />
では,ターゲットの 表 示 ,データの 収 集 ,および<br />
システムパラメータの 設 定 等 が 行 われる。 処 理 部<br />
は 関 西 空 港 事 務 所 内 に 設 置 した。<br />
空 港 面 のマルチラテレーションでは, 信 号 の 反<br />
射 によるマルチパスが 多 発 することから, 算 出 位<br />
置 が 本 来 の 位 置 から 大 きく 外 れる 場 合 がある。<br />
− 6 −
電 子 航 法 研 究 所 研 究 発 表 会 ( 第 10 回 平 成 22 年 6 月 )<br />
このため, 算 出 位 置 を 基 に 追 尾 処 理 を 行 い,その<br />
追 尾 処 理 結 果 ( 平 滑 位 置 )を 最 終 的 な 測 定 位 置 と<br />
して 出 力 している。 追 尾 処 理 にはカルマンフィル<br />
タを 採 用 している。<br />
予 測 ゲートを 大 きめに 設 定 すると 高 い 検 出 率<br />
が 達 成 可 能 となるが, 一 方 では 不 正 確 な 計 算 解 も<br />
採 用 されてしまうため, 位 置 精 度 の 低 下 をもたら<br />
す 可 能 性 も 大 きくなる。このように 検 出 率 と 位 置<br />
精 度 はトレードオフの 関 係 にあるため, 追 尾 処 理<br />
や 予 測 ゲートに 関 する 設 定 パラメータは 慎 重 に<br />
選 定 する 必 要 がある。<br />
評 価 項 目 は, 主 として 位 置 精 度 と 位 置 検 出 率 に<br />
ついて 実 施 した。 位 置 精 度 はキネマティック<br />
GPS 測 位 で 得 られた 基 準 位 置 と 評 価 装 置 で 得 ら<br />
れた 測 定 値 の 差 を 誤 差 として,その 95% 信 頼 度<br />
から 求 めた。 一 方 , 検 出 率 は 一 定 時 間 の 間 隔 内 で<br />
位 置 が 検 出 された 場 合 を「 検 出 」として, 一 定 時<br />
間 を 超 えても 位 置 検 出 ができない 積 算 時 間 を 減<br />
算 して, 全 時 間 に 対 する 検 出 時 間 の 割 合 から 求 め<br />
た。これらは, 欧 州 (EUROCAE)が 制 定 した<br />
最 尐 運 用 性 能 要 求 (MOPS)を 参 考 にした 算 出 方<br />
法 である [4] 。<br />
(4) リモート 局 の 配 置<br />
空 港 面 において, 航 空 機 の 位 置 を 2 次 元 で 測 位<br />
するためには, 最 低 3 局 のリモート 局 で 信 号 を 検<br />
出 する 必 要 がある。しかしながら, 不 正 確 な 計 算<br />
解 を 排 除 するために, 位 置 計 算 に 必 要 とする 最 低<br />
リモート 局 数 の 設 定 を 4 局 以 上 とした。<br />
高 い 位 置 精 度 を 得 るには, 発 信 源 を 取 り 囲 むよ<br />
うにリモート 局 のアンテナを 配 置 する 必 要 があ<br />
り, 発 信 源 から 見 てリモート 局 アンテナを 均 等 な<br />
角 度 と 距 離 に 配 置 することで 最 良 となる。また,<br />
建 造 物 や 航 空 機 の 遮 蔽 をさけるためにアンテナ<br />
を 高 所 に 設 置 する 必 要 がある。<br />
関 西 国 際 空 港 では, 図 2 に 示 すように 空 港 の 中<br />
心 部 に 位 置 し, 空 港 全 体 の 見 通 しが 得 られる 管 制<br />
塔 上 部 に メ イ ン と な る リ モ ー ト 局 ア ン テ ナ<br />
(RU1,2)を 配 置 して,これを 中 心 軸 に 各 エリア<br />
( 滑 走 路 , 誘 導 路 ,エプロン 周 り)を 4 局 以 上 で<br />
囲 めるように 外 側 のアンテナを 配 置 した。また,<br />
建 造 物 による 遮 蔽 や, 配 置 上 の 問 題 など 管 制 塔 上<br />
部 に 設 置 したリモート 局 が 活 用 できないエリア<br />
に 対 しては,リモート 局 を 追 加 して 部 分 的 に 補 完<br />
することで 空 港 全 体 をカバーすることとした。<br />
3. 評 価 試 験<br />
関 西 国 際 空 港 は 2 本 の 滑 走 路 および 誘 導 路 ,エ<br />
プロンエリアから 成 り, 滑 走 路 においては 交 互 に<br />
閉 鎖 して 保 守 を 行 っている。この 閉 鎖 日 を 利 用 し<br />
て 滑 走 路 および 誘 導 路 ,エプロンをエリア 分 割 し<br />
て 評 価 を 実 施 した。 評 価 は, 図 4 に 示 すように 実<br />
験 用 車 両 に 航 空 機 用 トランスポンダおよび 基 準<br />
位 置 検 出 用 として GPS 受 信 機 を 搭 載 して 各 エリ<br />
アを 分 割 走 行 して 評 価 試 験 を 実 施 した。<br />
基 準 位 置 検 出 用<br />
GPSアンテナ<br />
トランスポンダ<br />
アンテナ<br />
図 4 実 験 用 車 両 およびアンテナ 外 観<br />
約 3m<br />
3.1 評 価 結 果<br />
表 1 に 評 価 結 果 を 示 し, 図 5 に 実 験 用 車 両 の 航<br />
跡 記 録 例 を 示 す。 表 1 の 括 弧 内 の 番 号 は, 図 5<br />
のエプロンエリアの 番 号 に 対 応 し,スポットにつ<br />
いては 性 能 要 件 を 満 たしていないものを 示 す。<br />
本 評 価 では, 図 5 に 示 すように A 滑 走 路 やタ<br />
ーミナルエプロンなど,A 滑 走 路 に 面 したエリア<br />
では 概 ね 性 能 要 件 が 満 たされる 事 を 確 認 した。<br />
しかしながら, 同 図 に 示 すように B 滑 走 路 の<br />
北 側 と 南 側 ,Ⅰ 期 島 とⅡ 期 島 を 繋 ぐ 誘 導 路 (J3,<br />
J4)の 東 側 , 貨 物 地 区 の 北 側 エプロンや 南 ウイン<br />
グエプロンなど 複 数 のエリアで 性 能 要 件 を 満 た<br />
していないことを 確 認 した。<br />
B 滑 走 路 両 端 における 性 能 低 下 の 原 因 として,<br />
航 空 機 と 受 信 局 アンテナの 位 置 関 係 で 決 まる<br />
DOP の 悪 化 が 挙 げられる。B 滑 走 路 側 に 配 置 さ<br />
れた 受 信 局 (RU8,9)においては, 見 通 しが 良<br />
好 であるにも 拘 わらず, 図 6 に 示 すように 信 号 の<br />
検 出 ロスが 複 数 のエリアで 確 認 された。これらの<br />
受 信 局 は,B 滑 走 路 を 取 り 囲 むために 必 要 となる<br />
外 側 に 位 置 するアンテナ 配 置 であるため, 信 号 検<br />
出 ロスが 発 生 すると DOP が 大 きく 悪 化 して 性 能<br />
低 下 を 招 いたものと 考 えられる。<br />
− 7 −
電 子 航 法 研 究 所 研 究 発 表 会 ( 第 10 回 平 成 22 年 6 月 )<br />
表 1 車 両 走 行 試 験 の 評 価 結 果 ( 初 期 評 価 )<br />
エリア 位 置 精 度 検 出 率<br />
性 能 要 件 性 能 値 性 能 要 件 性 能 値<br />
A 滑 走 路 & 誘 導 路<br />
6.5m<br />
100%<br />
B 滑 走 路 & 誘 導 路 7.5m 以 下 9.2m 99.9% 以 上 100%<br />
J3&J4 誘 導 路 (Ⅱ 期 島 ) (95% 信 頼 性 レベル) 11m ( 各 2 秒 間 隔 ) 100%<br />
J3&J4 誘 導 路 ( 貨 物 地 区 ) 14.6m 100%<br />
J1&L 誘 導 路 (ターミナル& 北 ウイングエプロン) 7.7m 100%<br />
北 ウイングエプロン 誘 導 路<br />
12m 以 下 17.1m 98% 以 上 98.2%<br />
南 ウイングエプロン 誘 導 路 (95% 信 頼 性 レベル) 46.9m ( 各 2 秒 間 隔 ) 100%<br />
Ⅱ 期 島 エプロン(1)<br />
6.1m<br />
100%<br />
貨 物 地 区 RUN UPエプロン(2) 9.2m 100%<br />
北 ウイングエプロン(3) 6<strong>1.</strong>1m 100%<br />
南 ウイングエプロン(4) 20m 以 下 46.3m 99.9% 以 上 100%<br />
スポット34( 南 ウイング) (95% 信 頼 性 レベル) 2<strong>1.</strong>4m ( 各 5 秒 間 隔 ) 100%<br />
スポット41( 南 ウイング) 50m 100%<br />
スポット201( 貨 物 地 区 ) 32m 100%<br />
スポット110( 貨 物 地 区 ) 42.8m 100%<br />
位 置 精 度 が 性 能 要 件 を 満 たす 航 跡<br />
位 置 精 度 が 性 能 要 件 を 満 たさない 航 跡<br />
キネマティックGPS 航 跡<br />
20mメッシュ<br />
20mメッシュ<br />
B 滑 走 路 & 誘 導 路<br />
J3&J4 誘 導 路<br />
(1)<br />
(4)<br />
(3)<br />
20mメッシュ<br />
(2)<br />
20mメッシュ<br />
貨 物 地 区 & 南 ウイングエプロン<br />
A 滑 走 路<br />
& 誘 導 路<br />
ターミナル& 北 ウイングエプロン<br />
図 5 初 期 評 価 時 マルチラテレーション 航 跡 記 録 例<br />
− 8 −
電 子 航 法 研 究 所 研 究 発 表 会 ( 第 10 回 平 成 22 年 6 月 )<br />
北 ウイングエプロンエリアでは, 車 両 走 行 試 験<br />
で 性 能 要 件 を 満 たしていないことが 確 認 された<br />
が,エアライン 機 による 航 跡 評 価 では 良 好 な 結 果<br />
が 得 られた。これは 実 験 用 車 両 のトランスポンダ<br />
アンテナ 高 に 起 因 していることが 判 明 した。エア<br />
ライン 機 のアンテナ 高 は 10m 以 上 であるのに 対<br />
して, 実 験 用 車 両 では 3m 程 度 と 低 く, 場 周 道 路<br />
のフェンスおよび 周 囲 の 航 空 機 による 遮 蔽 によ<br />
って 必 要 な 受 信 局 (RU9,12)の 信 号 が 検 出 で<br />
きないため, 性 能 が 低 下 していた。<br />
他 のエリアにおける 性 能 低 下 の 原 因 としては,<br />
建 造 物 による 遮 蔽 とマルチパスによる 信 号 検 出<br />
ロスが 挙 げられる。 特 に 南 ウイングエプロンエリ<br />
アは, 図 7 に 示 すように 四 方 が 高 い 建 造 物 に 囲 ま<br />
れており,マルチパスが 発 生 しやすい 環 境 にある。<br />
マルチパスは, 信 号 検 出 ロスの 増 加 や 信 号 検 出 時<br />
刻 の 誤 差 となり,マルチラテレーションにおける<br />
性 能 低 下 を 引 き 起 こす 最 大 の 原 因 となる。<br />
3.2 性 能 低 下 エリアに 対 する 改 善 策<br />
初 期 の 評 価 で 性 能 低 下 が 発 生 したエリアに 対<br />
して 以 下 に 述 べる 改 善 策 を 実 施 した。<br />
(1) B 滑 走 路 & 誘 導 路 エリア<br />
B 滑 走 路 に 配 置 されたアンテナについて, 一 般<br />
的 に 有 効 とされる 高 所 への 位 置 変 更 に 加 えて, 信<br />
号 の 検 出 ロスによる DOP の 低 下 を 防 ぐため, 受<br />
信 局 を 2 局 追 加 して 冗 長 性 を 持 たせた。<br />
(2) 貨 物 地 区 & 南 ウイングエプロンエリア<br />
これらのエリアは, 建 造 物 に 取 り 囲 まれている<br />
ため, 遮 蔽 およびマルチパスが 発 生 しやすい。<br />
RU8の 検 出 ロス<br />
RU9の 検 出 ロス<br />
8 9<br />
管 制 塔 & 空 港 事 務 所 建 屋<br />
南 ウイングエプロンエリア<br />
ターミナルビル<br />
図 6 B 滑 走 路 における 信 号 検 出 ロス 発 生 箇 所<br />
図 7 南 ウイングエプロンエリアの 外 観 図<br />
位 置 精 度 が 性 能 要 件 を 満 たす 航 跡<br />
位 置 精 度 が 性 能 要 件 を 満 たさない 航 跡<br />
キネマティックGPS 航 跡<br />
20mメッシュ<br />
20mメッシュ<br />
8 9<br />
追 加 受 信 局<br />
(a) B 滑 走 路 & 誘 導 路<br />
追 加 受 信 局<br />
追 加 受 信 局<br />
5 1<br />
アンテナ 位 置 変 更<br />
20mメッシュ<br />
20mメッシュ<br />
追 加 受 信 局<br />
(b) 貨 物 地 区 & 南 ウイングエプロンエリア<br />
13( 指 向 性 アンテナに 変 更 )<br />
図 8 再 評 価 時 マルチラテレーション 航 跡 記 録 例 ( 改 善 策 適 用 後 )<br />
− 9 −
電 子 航 法 研 究 所 研 究 発 表 会 ( 第 10 回 平 成 22 年 6 月 )<br />
このため,2 局 の 受 信 局 (RU1,5)についてア<br />
ンテナ 位 置 を 変 更 し,このエリアに 対 する 良 好 な<br />
見 通 しを 確 保 するとともに,さらに 冗 長 性 を 持 た<br />
せるために 2 局 の 受 信 局 を 追 加 した。<br />
また, 南 ウイングエプロンエリア 奥 側 に 配 置 さ<br />
れた 受 信 局 (RU13)について,マルチパス 対 策<br />
として 無 指 向 性 アンテナから 前 方 にビームを 絞<br />
った 指 向 性 アンテナに 変 更 した。そして,アンテ<br />
ナ 後 方 に 位 置 する 基 準 送 信 局 の 信 号 を 検 出 する<br />
ための 指 向 性 アンテナを 上 段 に 追 加 して, 合 成 器<br />
で 航 空 機 および 基 準 送 信 局 の 信 号 を 合 成 した。<br />
3.3 改 善 策 を 適 用 した 評 価 試 験 結 果<br />
図 8 に 改 善 策 適 用 後 の 車 両 走 行 航 跡 記 録 例 を<br />
示 す。また, 以 下 に 各 エリアの 再 評 価 結 果 を 示 す。<br />
(1) B 滑 走 路 & 誘 導 路 エリア<br />
再 評 価 結 果 について, 表 2 に 改 善 策 適 用 前 と 比<br />
較 して 示 す。 改 善 策 の 適 用 により 位 置 精 度 は<br />
6.3m と 向 上 し, 滑 走 路 ・ 誘 導 路 に 対 しては, 性<br />
能 要 件 を 満 たすことが 確 認 できた。<br />
(2) 貨 物 地 区 & 南 ウイングエプロンエリア<br />
表 3 に 再 評 価 結 果 を 改 善 策 の 適 用 前 後 で 比 較<br />
して 示 す。 再 評 価 の 結 果 , 貨 物 地 区 では 全 てのエ<br />
リアで 性 能 要 件 を 満 たす 事 が 確 認 できた。<br />
表 2 滑 走 路 ・ 誘 導 路 における 性 能 値<br />
位 置 精 度<br />
検 出 率<br />
エリア<br />
(95% 信 頼 性 レベル) (2 秒 間 隔 )<br />
適 用 前 適 用 後 適 用 前 適 用 後<br />
B 滑 走 路 9.2m 6.3m 100% 100%<br />
J3&J4 誘 導 路<br />
( 貨 物 地 区 )<br />
14.6m 7.2m 100% 100%<br />
性 能 要 件 7.5m 以 下 99.9% 以 上<br />
表 3 エプロンエリアにおける 性 能 値<br />
位 置 精 度<br />
検 出 率<br />
エリア (95% 信 頼 性 レベル)<br />
適 用 前 適 用 後 適 用 前 適 用 後<br />
エプロン<br />
誘 導 路<br />
46.9m 43m 100% 99%<br />
スポット34 2<strong>1.</strong>4m 11m 100% 100%<br />
スポット41 50m 57.1m 100% 40.7%<br />
スポット201 32m 5.9m 100% 100%<br />
スポット110 42.8m 6.7m 100% 100%<br />
エプロン 誘 導 路 エプロン 誘 導 路<br />
性 能 要 件<br />
12m 以 下<br />
98% 以 上 (2 秒 )<br />
スポット<br />
スポット<br />
20m 以 下<br />
99.9%(5 秒 )<br />
南 ウイングエプロンエリアでは,38 番 スポッ<br />
トより 奥 に 位 置 する 一 部 のエリアを 除 いて 性 能<br />
要 件 を 満 たす 事 が 確 認 できた。<br />
性 能 要 件 が 満 たされていないエリアについて<br />
は, 四 方 が 建 造 物 に 囲 まれているためマルチパス<br />
による 信 号 検 出 ロスが 多 発 して, 期 待 した 信 号 検<br />
出 率 が 得 られなかったことが 原 因 と 考 えられる。<br />
4. まとめ<br />
関 西 国 際 空 港 におけるマルチラテレーション<br />
導 入 評 価 では,リモート 局 の 配 置 について, 管 制<br />
塔 を 中 心 軸 として 空 港 全 体 を 囲 む 最 小 限 の 局 数<br />
で 評 価 試 験 を 行 った。 初 期 評 価 で 必 要 な 性 能 が 得<br />
られなかったエリアに 対 しては,アンテナ 設 置 位<br />
置 の 変 更 や,リモート 局 の 追 加 などの 改 善 策 を 適<br />
用 して 再 評 価 を 実 施 した。<br />
再 評 価 の 結 果 , 一 部 のエリアを 除 いて 性 能 要 件<br />
を 満 たしていることが 確 認 できた。また, 性 能 要<br />
件 が 満 たされていない 一 部 のエリアに 対 しては,<br />
実 運 用 装 置 ではリモート 局 を 追 加 配 置 すること<br />
で 更 なる 性 能 向 上 が 期 待 できることから, 関 西 国<br />
際 空 港 におけるマルチラテレーションの 導 入 に<br />
対 する 見 通 しを 得 ることができた。<br />
最 後 に, 本 評 価 を 実 施 するにあたり, 国 土 交 通<br />
省 大 阪 航 空 局 , 関 西 空 港 事 務 所 , 関 西 国 際 空 港 株<br />
式 会 社 , 航 空 保 安 大 学 校 ,およびご 協 力 頂 いた 各<br />
航 空 会 社 の 関 係 各 位 に 感 謝 の 意 を 表 します。<br />
参 考 文 献<br />
[1] 宮 崎 , 二 瓶 , 松 久 保 , 古 賀 , 青 山 :“ 東 京 国 際<br />
空 港 におけるマルチラテレーション 監 視 シス<br />
テムの 評 価 結 果 ”, 第 7 回 電 子 航 法 研 究 所 研 究<br />
発 表 会 講 演 概 要 , 平 成 19 年 6 月<br />
[2] 林 , 二 瓶 , 宮 崎 , 上 田 , 角 張 , 古 賀 , 青 山 ,<br />
山 田 :“ 成 田 国 際 空 港 におけるマルチラテレ<br />
ーション 監 視 システムの 導 入 評 価 ”, 第 9 回<br />
電 子 航 法 研 究 所 研 究 発 表 会 講 演 概 要 , 平 成<br />
21 年 6 月<br />
[3]ICAO: Aeronautical Telecommunications<br />
ANNEX 10 Volume4, July 2007<br />
[4]EUROCAE:ED-117,Minimum Operation Performance<br />
Specification for Mode-S Multilateration System for<br />
Use in Advanced Surface Movement Guidance and<br />
Control System, November 2003<br />
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