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第22回 ロボット聴覚特集 - 奥乃研究室 - 京都大学

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3.1. スパイキングニューロン神 経 細 胞 の 多 くは Fig.4 のように 細 胞 の 電 位 が 一時 的 にプラスからマイナスになる 活 動 電 位 (スパイク)という 現 象 を 示 す。この 現 象 を 含 め、 神 経 細 胞レベルの 物 理 的 モデル 化 はかなり 厳 密 に 行 われている[10]。スパイキングニューロンのモデルはその 中でも、 形 式 神 経 細 胞 [18]と 異 なり、スパイクの 現 象に 着 目 した 神 経 情 報 処 理 モデルである。この 情 報 処理 の 特 徴 は 動 的 特 性 にあり、 大 きくは 確 率 的 モデルである Spike Response Model と 決 定 論 的 モデルである Integrate and Fire Model に 分 かれる。 確 率 的 には 後 者 は 前 者 の 特 殊 な 例 とも 解 釈 でき、 目 的 により使 い 分 けが 必 要 である。 数 学 的 記 述 や 生 物 学 的 意 味に 関 しては[5] [16]などの 書 籍 を 参 照 されたい。このようなモデルにより 再 現 可 能 なスパイクイベントは、Fig.5 のような 時 間 イベントである。このようなイベント 系 列 により 情 報 を 表 現 することにより、時 間 的 に 動 的 な 情 報 処 理 が 可 能 になる。たとえば、2つの 細 胞 のスパイク 間 の 時 間 関 係 は2つの 情 報 の位 相 関 係 とその 動 的 変 化 を 表 し、1つの 細 胞 におけるスパイクの 時 間 間 隔 は 情 報 の 周 波 数 とその 動 的 変化 を 表 し、スパイクや 膜 電 位 の 時 間 パターンは 情 報の 強 弱 や 動 的 特 性 を 表 現 できる。さらに、スパイクは 情 報 を 伝 達 するだけでなく、 制 御 信 号 としても 用いることができるため、 時 間 軸 を 用 いて 情 報 を 統 合したり 分 離 したりすることもできる。また、 電 位 に変 化 を 与 えることで、ニューロンの 処 理 周 期 を 変 えたり、 他 のニューロンと 周 期 を 合 わせたりする 処 理制 御 を 行 うことができる。生 物 はこれらの 処 理 をサブミリ 秒 の 時 間 解 像 度 で行 っており、 神 経 細 胞 による 処 理 は、 柔 軟 性 、 適 応性 の 基 盤 となっているのだろう。しかし、 一 方 でこのような 処 理 を 現 在 のコンピュータで 行 おうとすると 非 常 に 効 率 が 悪 い。なぜなら、コンピュータの 情報 表 現 はビット 列 のみであり 時 間 情 報 はない。しかも、 神 経 細 胞 の 処 理 は 非 同 期 超 並 列 を 前 提 にしているのに 対 し、コンピュータは 同 期 逐 次 処 理 を 前 提 にしているからである。心 に 開 発 は 進 んでいるが、 音 源 位 置 、 環 境 変 化 が 限定 されたなかでの 技 術 となっている。行 動 実 験 による 反 響 ( 時 間 差 をもった音 )に 関 する生 物 の 聴 覚 特 性 からは 以 下 のような 知 見 が 報 告 されている[14][15][27]。まず、2つの 音 が1ミリ 秒 以 内 で 来 た 場 合 は1つの音 とされる。 例 えば、 対 面 する2つのスピーカーから 同 じ 音 を1ミリ 秒 以 内 で 聞 かせると、 仮 想 音 源が 定 位 される。1 ミリ 秒 を 超 え、20 ミリ 秒 程 度 ずれた 場 合 は、1つの 音 に 聞 こえるが、 先 に 聞 こえた 音の 位 置 に 定 位 する。20 ミリ 秒 を 超 え 30 ミリ 秒 くらいまでは2つの 音 に 聞 こえるが、 定 位 位 置 は 先 に 聞 こえた 音 に 引 っ 張 られ、30 ミリ 秒 を 超 えるようになって、2 つの 音 を 2 つの 位 置 に 定 位 できる。このことから 生 物 の 場 合 、20 ミリ 秒 以 内 の反 響 は先 行 する 音 を 優 先 し、 他 の 反 響 音 は 時 間 的 に 引 き 込まれるか 抑 制 されていると 考 えられる。Pollak[21]は、 下 丘 はその 下 位 で 処 理 された 様 々な 特 徴 を 統 合する 場 と 考 え、 外 側 毛 帯 と 上 オリーブ 複 合 体 が 反 響音 抑 制 に 関 与 していると 提 案 している。 外 側 上 オリーブ 核 は 同 側 の 外 側 毛 帯 背 側 にグリシンによる 抑 制性 の 投 射 、 対 側 の 外 側 毛 帯 背 側 に 興 奮 性 投 射 、 外 側毛 帯 背 側 は 対 側 に GABA による 抑 制 性 の 投 射 があることから、 下 記 のような 機 能 図 を 描 くことができる。3.2. スパイキングニューロンを 用 いた 聴 覚 処 理前 述 のようなスパイキングニューロンによる 情 報処 理 の 特 性 は、 聴 覚 のように 情 報 が 時 間 にのっており、しかも 実 時 間 性 を 必 要 とする 対 象 に 非 常 に 適 している。 特 にロボット 聴 覚 においては、 音 源 やロボットが 移 動 するため、 動 的 特 性 への 要 求 度 は 高 い。ここでは、 例 題 を 用 いて 簡 単 なモデルを 作 成 する。例 題 は 反 響 抑 制 である。ロボットが 環 境 中 で 音 源定 位 する 場 合 、ロボットは 移 動 するため、 環 境 ・ 位置 により 異 なる 反 響 にいかに 対 応 するかが 大 きな 問題 となる。 人 間 もあんまりひどい 反 響 があると 音 声認 識 が 困 難 になる。こうした 反 響 音 への 対 応 は 電 話などでも 重 要 な 技 術 であるため、 適 応 フィルタを 中Figure 7. Functional scheme of brainstem auditorysystem.この 機 能 図 では、 相 対 的 に「 強 度 の 強 い 音 に 関 する IID 情 報 と 周 波 数 」が 到 来 した 場 合 、その 音 源 方向 が 一 時 的 (20 ミリ 秒 ほど)に 優 先 され、それ 以 外 を抑 制 (マスク)する。 実 線 は 興 奮 性 、 破 線 は 抑 制 性の 結 合 である。 結 合 はすべてを 記 していない。これだけを 動 作 させるのであればアルゴリズムを書 いてもよいのだが、スパイキングニューロンで 構成 することでより 単 純 かつロバストになる。なぜなら、Fig.7 で 記 したようなインターフェースは 特 定 の機 能 的 側 面 を 見 ただけのものなので、 少 し 問 題 が 変わると 対 応 できない。スパイキングニューロンのイ39

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