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第22回 ロボット聴覚特集 - 奥乃研究室 - 京都大学

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おける 方 法 論 に 関 しては 制 約 が 多 い。 最 大 の 制 約 は言 語 を 扱 える 動 物 が「ヒト」しか 見 当 たらないという 点 である。しかし、 近 年 は fMRI などの 非 侵 襲 の 脳 計 測 手 法 が発 達 し、ヒトの 脳 の 活 動 がある 程 度 計 測 できるようになった。そのような 画 像 化 手 法 と 脳 損 傷 の 観 測 をあわせることで、 新 たな 知 見 が 加 速 度 的 に 増 えている。 言 語 処 理 に 関 わる 脳 領 域 に 関 しても、その 領 域は Broca 野 ,Wernicke 野 だけでなく、かなり 広 範 な 部分 が 重 要 な 機 能 を 果 たしていることがわかりつつある[20]。つまり、 脳 における 言 語 情 報 処 理 を 解 明 するためには、どこかが 活 動 しているというような 場 所 の 情報 解 析 より 各 脳 部 位 活 動 との 時 空 間 的 関 係 や 変 化 の情 報 の 解 析 が 必 要 である。そのような 観 点 で、 聴 覚情 報 を 軸 に、 脳 を 眺 めてみる。Fig.1 に 感 覚 信 号 ・ 運動 信 号 と 脳 の 主 要 部 位 との 関 係 を 図 示 した。Figure 1. Hierarchical structure of a brain.身 体 から 得 られる 感 覚 情 報 は 脳 幹 を 通 し、 基 底 核や 間 脳 に 至 り、さらに 辺 縁 系 、そして 最 後 に 大 脳 新皮 質 へ 至 る。 信 号 を 伝 達 するのには 時 間 がかかるため、このようなシステムでは、 実 時 間 の 処 理 や 実 行は 下 位 で 行 われ、 実 時 間 性 の 少 ないものが 上 位 に 配置 されると 考 えられる。聴 覚 処 理 では 実 時 間 性 は 必 須 である。 言 語 対 話 などの 能 力 を 外 した 動 物 聴 覚 においては、 実 時 間 性 は敵 や 餌 を 見 つける 上 で 極 めて 重 要 である。 言 語 対 話でも、 対 話 の 概 のシナリオをもって 話 すこともあるが、 大 抵 の 対 話 は 反 射 的 だったりその 場 的 だったりする。 瞬 時 に 入 力 情 報 を 認 識 し 発 話 することが 大 切であるが、 一 方 で 意 味 は 後 からわかったりする。 聴覚 処 理 では Fig.7 の 下 位 部 の 重 要 性 が 高 い。ヒトの 脳 は 進 化 により 発 達 したものであり、その構 造 は 進 化 的 に 古 いものの 上 に 新 しい 脳 を 重 ねるようにしてできている。Fig.1 の 場 合 、 下 位 部 にあたる脳 幹 、 基 底 核 、 小 脳 、 間 脳 は 魚 類 から 引 き 継 いだ 脳構 造 であり、 両 生 類 、 爬 虫 類 で 基 底 核 がさらに 発 達すると 共 に 原 始 的 な 辺 縁 系 ができ、 哺 乳 類 は 大 脳 皮質 をもつに 至 った。ヒトの 対 話 は、 動 物 聴 覚 にヒトのみがもつのであろう 広 範 囲 の 皮 質 内 連 合 情 報 処 理が 加 わったことにより 実 現 されている。このような 古 い 脳 と 新 しい 脳 の 階 層 化 は、 聴 覚 以外 にも 共 通 したものであるが、 脳 における 聴 覚 処 理が 他 の 感 覚 情 報 と 異 なる 点 は、 古 い 聴 覚 情 報 処 理 経路 が 種 の 進 化 を 経 ても 保 持 されている 点 にある。 対極 は 視 覚 である。 視 覚 の 古 い 情 報 経 路 である 視 蓋 は残 存 してはいるが、 主 要 経 路 とはなっていない。 視覚 情 報 は 進 化 の 過 程 で、 脳 幹 を 通 らずに 間 脳 にある視 床 経 由 で 新 皮 質 に 入 る 経 路 ができ、 新 と 旧 の 並 列経 路 を 用 いるようになっている。 聴 覚 の 場 合 、 哺 乳類 が 言 語 を 話 すようになって 間 もないので、 古 い 脳の 動 物 聴 覚 を 保 持 しているとも 考 えられるが、それだけではなさそうである。その 一 つが、 古 い 脳 での 情 報 処 理 の 複 雑 性 にある。聴 覚 情 報 の 場 合 、 蝸 牛 からの 聴 神 経 は 蝸 牛 核 、 上 オリーブ 核 、 外 側 毛 帯 核 、 下 丘 を 経 て 視 床 に 向 かう。一 方 、 視 覚 情 報 の 古 い 経 路 は、 網 膜 神 経 節 細 胞 からの 信 号 が 中 脳 視 蓋 で 処 理 され、すぐに 視 床 に 向 かう。ところが、この 中 脳 視 蓋 の 処 理 だけで、 両 生 類 などの 動 物 は 敵 と 餌 を 見 分 けたり、 障 害 物 を 検 知 したりするのである[8]。さらに 複 雑 な 回 路 をもつ 古 い 脳 での 聴 覚 処 理 は、 想 像 を 超 えた 処 理 を 行 っている 可 能性 が 高 く、そのため、もはや 捨 てることができない回 路 となっているのであろう。二 つめは、 新 しい 脳 である 新 皮 質 との 協 調 処 理 である。 前 述 の 複 雑 性 も 関 係 するが、 古 い 脳 の 聴 覚 処理 においては、 蝸 牛 核 、 上 オリーブ 核 、 外 側 毛 帯 核 、下 丘 といった 核 群 間 でのインタラクションが 頻 繁 になされる。それらを 通 して、 音 の 定 位 、マスク、 分離 、 分 類 などがなされているが、その 相 互 作 用 処 理が 新 皮 質 を 輪 の 中 に 入 れることを 容 易 にすると 共 に、輪 の 中 に 入 った 新 皮 質 との 関 係 をより 強 固 なものにしていると 考 えられる。三 つめが、 身 体 に 最 も 近 いが 所 以 の 身 体 性 である。身 体 と 感 覚 情 報 や 運 動 情 報 をやりとりする 最 前 線 が脳 幹 である。そこでは、 感 覚 情 報 以 外 にも、 身 体 の状 況 を 表 すドーパミン、セロトニン、アセチルコリン、ノルアドレナリンなどを 放 出 する 細 胞 が 群 居 している。 中 脳 終 端 では、 視 覚 、 聴 覚 、 運 動 といった情 報 が 上 丘 ( 視 蓋 )で 結 びついている。 基 底 核 では、感 覚 情 報 を 運 動 情 報 と 結 びつけ 無 意 識 に 運 動 できるしくみがあり、 前 述 のように 言 語 処 理 に 強 く 関 わっている 可 能 性 が 示 されている。次 節 では、この 古 い 脳 の 聴 覚 処 理 を 中 心 にいくつかの 知 見 を 紹 介 する。2.2. 古 い 脳 での 聴 覚 処 理聴 覚 に 関 する 研 究 は 古 くはピタゴラスによる「 音が 空 気 の 振 動 である」という 洞 察 に 始 まるだろうか。その 後 、16 世 紀 に Vesalius, Fallopio, 18 世 紀 にCorti らにより 耳 の 解 剖 学 的 構 造 が 明 らかにされ、1936

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