アジアのRE市場と欧米企業(1375KB) - JETRO

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アジアの RE 市 場 と 欧 米 企 業 海 外 調 査 部 風 力 発 電 と 太 陽 光 発 電 の 市 場 は、 欧 州 、 米 国 、 日 本 の 3 国 ・ 地 域 が 牽 引 してきたが、2010 年 には 風 力 の 国 別 設 置 能 力 で 中 国 が 米 国 を 抜 き 世 界 1 位 に、インドが 5 位 に 浮 上 した。 太 陽 光 ではまだ 欧 、 米 、 日 が 圧 倒 しているものの、 中 国 、インドをはじめとするアジア 地 域 の 成 長 には 目 を 見 張 るものがある。こうした 動 きをとらえ、 欧 米 の 再 生 可 能 エネルギー(RE) 関 連 企 業 は、アジアを 市 場 、 製 造 拠 点 として 重 視 し 始 めている。インド、 中 国 、 韓 国 、マ レーシアの 風 力 、 太 陽 光 発 電 市 場 と 欧 米 企 業 の 動 きを 海 外 調 査 部 ( 北 米 課 、 欧 州 ロシア CIS 課 )、およびブリュッセル 事 務 所 でまとめた。 目 次 1. 中 国 、インドに 欧 米 の 再 生 可 能 エネルギー 企 業 が 相 次 ぎ 進 出 ( 総 論 ) .................... 2 2. 開 発 余 地 の 大 きい 風 力 市 場 (インド・ 欧 州 ・ 米 国 )................................................. 7 3. 欧 米 の 風 力 発 電 技 術 が 浸 透 (インド・ 欧 州 ・ 米 国 )............................................... 12 4. 有 望 市 場 に 布 石 を 打 つ 欧 米 の 太 陽 電 池 企 業 (インド・ 米 国 ・ 欧 州 )...................... 17 5. 中 国 の 風 力 発 電 設 備 容 量 が 世 界 最 大 に( 中 国 ・ 欧 州 ・ 米 国 ) ................................ 23 6. ガメサ、 現 地 化 促 進 と 技 術 向 上 で 競 争 力 強 ( 中 国 ・スペイン)............................. 30 7. シーメンス、 上 海 電 気 との 提 携 で 洋 上 風 力 を 強 化 ( 中 国 ・ドイツ)...................... 37 8. 参 入 障 壁 高 い 太 陽 光 発 電 市 場 ( 中 国 ・ 米 国 ・ 欧 州 )............................................... 41 9. 太 陽 光 発 電 市 場 、 中 国 と 米 国 が 急 成 長 ( 中 国 ・ 米 国 ・ 欧 州 ) ................................ 46 10. 国 内 産 業 を 育 成 、 洋 上 風 力 大 国 を 目 指 す( 韓 国 ・ 欧 州 ・ 米 国 )............................. 52 11. 太 陽 電 池 の 発 電 市 場 としても 注 目 (マレーシア・ 米 国 ・ 欧 州 )............................. 55 【 免 責 条 項 】 ジェトロは 本 レポートの 記 載 内 容 に 関 して 生 じた 直 接 的 、 間 接 的 損 害 及 び 利 益 の 喪 失 に ついては 一 切 の 責 任 を 負 いません。 これは、たとえジェトロがかかる 損 害 の 可 能 性 を 知 らされていても 同 様 とします。 本 レポートの 無 断 転 載 を 禁 じます。 Copyright (C) 2012 JETRO. All rights reserved. 1

アジアの RE 市 場 と 欧 米 企 業<br />

海 外 調 査 部<br />

風 力 発 電 と 太 陽 光 発 電 の 市 場 は、 欧 州 、 米 国 、 日 本 の 3 国 ・ 地 域 が 牽 引 してきたが、2010<br />

年 には 風 力 の 国 別 設 置 能 力 で 中 国 が 米 国 を 抜 き 世 界 1 位 に、インドが 5 位 に 浮 上 した。 太<br />

陽 光 ではまだ 欧 、 米 、 日 が 圧 倒 しているものの、 中 国 、インドをはじめとするアジア 地 域<br />

の 成 長 には 目 を 見 張 るものがある。こうした 動 きをとらえ、 欧 米 の 再 生 可 能 エネルギー(RE)<br />

関 連 企 業 は、アジアを 市 場 、 製 造 拠 点 として 重 視 し 始 めている。インド、 中 国 、 韓 国 、マ<br />

レーシアの 風 力 、 太 陽 光 発 電 市 場 と 欧 米 企 業 の 動 きを 海 外 調 査 部 ( 北 米 課 、 欧 州 ロシア CIS<br />

課 )、およびブリュッセル 事 務 所 でまとめた。<br />

目 次<br />

1. 中 国 、インドに 欧 米 の 再 生 可 能 エネルギー 企 業 が 相 次 ぎ 進 出 ( 総 論 ) .................... 2<br />

2. 開 発 余 地 の 大 きい 風 力 市 場 (インド・ 欧 州 ・ 米 国 )................................................. 7<br />

3. 欧 米 の 風 力 発 電 技 術 が 浸 透 (インド・ 欧 州 ・ 米 国 )............................................... 12<br />

4. 有 望 市 場 に 布 石 を 打 つ 欧 米 の 太 陽 電 池 企 業 (インド・ 米 国 ・ 欧 州 )...................... 17<br />

5. 中 国 の 風 力 発 電 設 備 容 量 が 世 界 最 大 に( 中 国 ・ 欧 州 ・ 米 国 ) ................................ 23<br />

6. ガメサ、 現 地 化 促 進 と 技 術 向 上 で 競 争 力 強 ( 中 国 ・スペイン)............................. 30<br />

7. シーメンス、 上 海 電 気 との 提 携 で 洋 上 風 力 を 強 化 ( 中 国 ・ドイツ)...................... 37<br />

8. 参 入 障 壁 高 い 太 陽 光 発 電 市 場 ( 中 国 ・ 米 国 ・ 欧 州 )............................................... 41<br />

9. 太 陽 光 発 電 市 場 、 中 国 と 米 国 が 急 成 長 ( 中 国 ・ 米 国 ・ 欧 州 ) ................................ 46<br />

10. 国 内 産 業 を 育 成 、 洋 上 風 力 大 国 を 目 指 す( 韓 国 ・ 欧 州 ・ 米 国 )............................. 52<br />

11. 太 陽 電 池 の 発 電 市 場 としても 注 目 (マレーシア・ 米 国 ・ 欧 州 )............................. 55<br />

【 免 責 条 項 】<br />

ジェトロは 本 レポートの 記 載 内 容 に 関 して 生 じた 直 接 的 、 間 接 的 損 害 及 び 利 益 の 喪 失 に<br />

ついては 一 切 の 責 任 を 負 いません。<br />

これは、たとえジェトロがかかる 損 害 の 可 能 性 を 知 らされていても 同 様 とします。<br />

本 レポートの 無 断 転 載 を 禁 じます。<br />

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1. 中 国 、インドに 欧 米 の 再 生 可 能 エネルギー 企 業 が 相 次 ぎ 進 出 ( 総 論 )<br />

(1) インド: 風 力 が 牽 引 、 太 陽 光 はこれから<br />

10 年 末 のインドの 風 力 発 電 累 積 導 入 量 は、13 ギガワット(GW、11 年 3 月 の 最 新 データ<br />

では 14.2GW)で 世 界 5 位 。 新 規 導 入 量 も 過 去 5 年 間 で 毎 年 平 均 約 1,700 メガワット(MW)<br />

の 伸 びをみせている。 世 界 風 力 発 電 協 会 (GWEC)は、30 年 までに 累 積 導 入 量 は 最 大 で 累<br />

計 160GW になると 見 込 んでいる。<br />

インドでは 発 電 量 全 体 の 10.9%(11 年 4 月 時 点 )を RE が 占 める。その 約 7 割 が 風 力 発<br />

電 だ。しかし 過 去 に 建 設 された 多 くの 風 力 発 電 所 は、 税 制 優 遇 策 目 当 てで 効 率 が 悪 く、 電<br />

力 系 統 に 接 続 していないものが 多 い。 今 後 の 風 力 市 場 の 成 長 は「 未 開 拓 の 陸 上 風 力 」と、<br />

古 い 発 電 所 を 高 効 率 発 電 所 に 刷 新 する「リパワリング」にかかっている。<br />

国 内 の 風 力 発 電 機 市 場 シェア(10 年 )は、 地 場 のスズロンが 42.0%と 首 位 。しかし 近 年 、<br />

エネルコン(ドイツ)、ベスタス(デンマーク)、ガメサ(スペイン)などの 欧 州 系 タービ<br />

ンメーカーも 参 入 し、シェアを 伸 ばしている。 米 国 内 でシェアの 高 いゼネラル・エレクト<br />

リック(GE)は、インドでのシェアはほとんどない。インドで 風 況 の 良 い 地 域 への 発 電 機<br />

設 置 が 飽 和 に 近 づき、 弱 い 風 でも 効 率 的 に 発 電 できる 高 性 能 のタービンが 求 められている<br />

ためだ。<br />

また、スペインの 独 立 系 発 電 事 業 者 (IPP)アクシオナはインドを 優 先 戦 略 国 と 位 置 付 け、<br />

11 年 10 月 、インドで 3 つ 目 の 風 力 発 電 所 (53.1MW)を 稼 働 させた。このほかウィンウィ<br />

ンド(フィンランド)、シーメンス(ドイツ)、ライトナー・シリラム(イタリア)、ケネル<br />

シス(ドイツ)などがインドに 進 出 ( 販 売 、 生 産 、 協 業 、OEM 生 産 などを 含 む。 以 下 同 じ)<br />

している。<br />

太 陽 光 発 電 の 設 置 量 は、10 年 末 で 64MW(「PV Magazine」)にすぎず、 風 力 に 比 べかな<br />

り 小 さい。10 年 1 月 にシン 首 相 が 提 唱 した「ジャワハーラル・ネルー・ナショナル・ソー<br />

ラー・ミッション(JNNSM)」は、22 年 までに 22GW の 太 陽 光 発 電 能 力 を 目 標 としている。<br />

現 在 の 350 倍 という 壮 大 な 構 想 だ。ジェトロのインタビューに 対 し、インド 政 府 の 高 官 は<br />

口 をそろえて「 達 成 可 能 な 数 字 」と 述 べた。インドでは 人 口 の 3 分 の 1 が 電 力 が 供 給 され<br />

ない 無 電 化 地 域 に 住 んでいる。 他 方 で 供 給 能 力 はピーク 需 要 に 16% 足 りない(インド・ソ<br />

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ーラー・エナジー 協 会 )という 状 況 だ。<br />

石 炭 が 主 な 発 電 源 だが、 供 給 が 足 りない 上 、ロジスティクスの 問 題 があって、 当 面 石 炭<br />

不 足 は 解 消 されないようだ。そこで RE、 中 でも 未 開 拓 の 太 陽 光 に 期 待 がかかる( 本 稿 では<br />

取 り 上 げないが 太 陽 熱 への 期 待 も 大 きい。この 分 野 では 米 国 の e ソーラーやアモニックス<br />

が 参 入 している)。 一 般 に、 一 定 規 模 の 太 陽 光 発 電 所 を 建 設 するには、 人 口 集 積 地 への 長 距<br />

離 の 送 電 網 が 不 可 欠 だが、「インドでは 無 電 化 の 人 口 集 積 地 が 多 数 点 在 しているという 特 殊<br />

事 情 」( 政 府 高 官 )があるため、 消 費 地 のすぐ 近 くに 発 電 所 を 建 設 するという。<br />

地 場 の 太 陽 電 池 企 業 のほか、 欧 米 から Q セルズ、BP(タタとの 合 併 。ただし、タタパワ<br />

ーが BP 保 有 の 株 式 をすべて 買 い 取 り、100% 子 会 社 化 することで 11 年 末 に 合 意 した)、シ<br />

ョット・ソーラー、ボッシュ・ソーラー、SMA テクノロジー、ファーストソーラー、アバ<br />

ウンドソーラー、ダウコーニング、 中 国 のカナディアンソーラー、サンテック、 台 湾 のモ<br />

ーテックなどがインド 市 場 に 進 出 している。<br />

(2) 中 国 : 風 力 は 競 争 激 化 、 太 陽 光 で 日 米 欧 に 商 機<br />

中 国 は 10 年 、 風 力 発 電 の 容 量 が 大 きく 伸 びて 累 計 44GW となり、 米 国 の 40GW を 抜 い<br />

て 世 界 1 位 になった(3 位 はドイツの 27GW、4 位 がスペインの 20GW)。 第 12 次 5 ヵ 年<br />

(12・5) 規 画 (11~15 年 )では 電 力 について、15 年 までに 100GW の 風 力 発 電 設 備 を 設<br />

置 するという 目 標 を 策 定 中 だ。 非 常 に 成 長 が 早 い 市 場 で、そのぶん 競 争 も 年 々 厳 しくなっ<br />

ている。<br />

今 後 中 国 の 風 力 市 場 は、a. 参 入 する 中 国 企 業 の 増 加 、 欧 米 企 業 の 相 対 的 シェアの 低 下 、b.<br />

価 格 競 争 の 激 化 、 企 業 の 淘 汰 (とうた)、c. 現 地 調 達 率 の 引 き 上 げと 現 地 生 産 の 拡 大 、d. 研<br />

究 開 発 (R&D) 拠 点 の 設 置 を 検 討 する 欧 米 企 業 の 増 加 (ガメサは 検 討 中 、シーメンスは 上<br />

海 電 機 との 合 弁 会 社 を 設 立 )、e. 生 き 残 りのため 中 国 企 業 も 海 外 展 開 を 模 索 、という 展 開 が<br />

考 えられる。<br />

風 力 大 手 ガメサによると、 同 社 の 中 国 での 風 力 ファーム 開 発 は、 中 国 企 業 との 合 弁 で 実<br />

施 するという。しかしタービンなどの 製 造 は 単 独 資 本 を 維 持 し、 完 成 品 の 販 売 だけ 行 う。<br />

ファームの 運 営 はしないという。ほかの 地 域 でもこのビジネスモデルは 変 わらない。 価 格<br />

と 品 質 のバランスについては、 自 社 のタービンなどによるエネルギー 生 産 コストに 加 えて、<br />

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メンテナンス 費 用 も 併 せて 見 積 もり、そのトータルコストで 勝 負 する。 最 も 重 要 なのは 技<br />

術 のため、100% 現 地 調 達 に 頼 ることはないという。 欧 米 企 業 ではガメサのほか、ベスタス、<br />

GE、ノルディックス、シーメンスなどが 中 国 の 風 力 市 場 に 参 入 している。<br />

太 陽 光 市 場 はどうか。 中 国 は 太 陽 電 池 の 生 産 力 では 世 界 の 過 半 を 占 める 存 在 になったが、<br />

発 電 導 入 量 は 10 年 の 設 置 容 量 ベースで 約 900MW。 欧 州 ( 同 29.3GW)、 日 本 (3,622MW)、<br />

米 国 (2,727MW)には 及 ばない。 策 定 中 の 電 力 業 界 の 12・5 規 画 では、 同 期 間 内 に 15GW<br />

の 太 陽 光 発 電 を 導 入 するとしている。 増 大 する 自 国 のエネルギー 需 要 を 賄 うため、クリー<br />

ンで 持 続 可 能 な 国 産 エネルギーが 不 可 欠 なことに 加 えて、 欧 州 市 場 での 固 定 価 格 買 い 取 り<br />

制 度 (FIT)の 縮 小 や 米 国 との 通 商 摩 擦 を 受 けて、 内 需 を 拡 大 しなければ 自 国 メーカーの 経<br />

営 が 立 ち 行 かなくなる、との 焦 りもあるようだ。<br />

国 家 発 展 改 革 委 員 会 は 11 年 7 月 、 全 国 レベルの 太 陽 光 発 電 向 け FIT を 制 定 した。 省 レベ<br />

ルでも、プロジェクト 誘 致 に 積 極 的 な 地 域 で 独 自 の FIT を 制 定 する 動 きがある。 日 照 量 の<br />

豊 富 な 西 北 部 を 中 心 に、メガソーラープロジェクトの 話 が 持 ち 上 がっている。<br />

しかし 政 府 の 優 先 順 位 が 風 力 、 水 力 発 電 の 促 進 にあるとみられていること、 西 北 部 の 発<br />

電 適 地 と 沿 海 部 の 電 力 消 費 地 が 離 れていること、FIT の 価 格 設 定 が 発 電 事 業 者 が 採 算 を 得 る<br />

のには 低 いこと〔キロワット 時 (kWh) 当 たり 約 13 円 〕などから、 風 力 のような 普 及 ペー<br />

スは 見 込 みにくい。<br />

外 資 は 参 入 の 際 、「 地 元 政 府 や 地 場 企 業 との 人 脈 、アライアンスの 醸 成 がないと 難 しい」<br />

( 現 地 コンサルタント)という。パネル 市 場 は 中 国 企 業 のシェアが 圧 倒 しており、 国 内 で<br />

もだぶついている。しかしインバーターなど 周 辺 機 器 市 場 に 関 しては、 中 国 企 業 のシェア<br />

はまだ 低 く、 実 績 と 力 のある 日 米 欧 企 業 には 商 機 があるといえる。 欧 米 企 業 では、ファー<br />

ストソーラー、Q セルズ、ボッシュ・ソーラー、REC ソーラー、SMA ソーラーテクノロジ<br />

ー、ヘムロック・セミコンダクター、ワッカー・ポリシリコン、シーメンスなどが 参 入 し<br />

ている。<br />

(3) 韓 国 : 洋 上 風 力 大 国 を 目 指 す<br />

韓 国 については 風 力 を 取 り 上 げる。 韓 国 政 府 は「グリーン 成 長 戦 略 」を 掲 げ、RE 導 入 拡<br />

大 を 図 るとともに、 関 連 する 国 内 産 業 の 育 成 を 推 進 している。 風 力 発 電 と 太 陽 光 発 電 は、<br />

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商 業 発 電 が 開 始 された 04 年 時 点 で 国 内 発 電 量 の 0.1% 程 度 だったが、10 年 には 0.9% 程 度<br />

まで 伸 ばしている。 風 力 発 電 の 設 備 容 量 は、00 年 には 6MW 程 度 にすぎなかったが、10 年<br />

には 379MW まで 拡 大 している。<br />

10 年 時 点 では、 風 力 タービン 累 積 設 置 容 量 の 9 割 以 上 を 欧 州 大 手 タービンメーカーのベ<br />

スタス、アクシオナが 占 め、 韓 国 メーカーのシェアは 数 %にとどまる。しかし、 政 府 主 導<br />

のプロジェクトの 下 、AMSC( 米 国 )などの 欧 米 企 業 と 組 んだ 国 内 大 手 重 工 や、 独 自 技 術<br />

でタービン 製 造 を 始 めた 地 場 のユニスンが 台 頭 し、 今 後 は 欧 州 大 手 メーカーの 地 位 を 脅 か<br />

すことになりそうだ。<br />

注 目 されるのは、 西 南 の 海 上 ( 黄 海 )での 国 家 プロジェクトだ。 政 府 は 10 年 11 月 「 海<br />

上 風 力 推 進 協 議 会 」を 開 き、「 海 上 風 力 推 進 ロードマップ」を 発 表 した。11 年 11 月 には「 西<br />

南 海 2.5GW 海 上 風 力 総 合 推 進 計 画 」を 発 表 し、 世 界 トップ 3 に 入 る 洋 上 風 力 大 国 を 目 指 す<br />

と 宣 言 した。19 年 をめどに、 総 発 電 容 量 2,500MW(2.5GW) 規 模 の 洋 上 風 力 ファームを<br />

建 設 する。<br />

(4) マレーシア: 太 陽 電 池 のアジアでの 生 産 拠 点 に<br />

マレーシアについては 太 陽 光 発 電 を 紹 介 する。11 年 11 月 、パナソニックがシリコンから<br />

モジュールまでの 一 貫 生 産 工 場 を 建 設 すると 発 表 した( 稼 働 は 12 年 12 月 の 予 定 )。 欧 米 パ<br />

ネルメーカーも、セル・モジュール 生 産 工 場 を 構 えており、マレーシアはアジアでの 太 陽<br />

光 パネルの 重 要 生 産 拠 点 になりつつある。<br />

一 方 、 太 陽 光 発 電 の 導 入 量 はまだ 10MW にも 満 たない。 業 界 関 係 者 によると、 現 時 点 の<br />

導 入 事 例 は、 政 府 が 主 導 する 地 方 や 島 などの 無 電 化 地 域 での 小 規 模 なプロジェクトが 中 心<br />

だという。しかし 韓 国 の LG は、 現 地 企 業 と 組 んでメガソーラープロジェクトに 参 加 してい<br />

る。また RE 関 連 の 展 示 会 には、 中 国 のパネルメーカーが 積 極 的 に 出 展 していた。 発 電 効 率<br />

の 高 さと 信 頼 性 が 評 価 されている 日 本 勢 にとっては、 市 場 が 拡 大 するタイミングを 逃 さな<br />

いことが 肝 要 だ。<br />

系 統 への 大 規 模 な 導 入 に 関 しては、11 年 12 月 から 施 行 された FIT が 効 を 奏 するかどう<br />

かがカギになる。マレーシア 政 府 は、30 年 までに 太 陽 光 発 電 設 置 量 1,370MW を 目 指 し、<br />

発 電 規 模 によって kWh 当 たり 約 21~30 円 で 21 年 間 の 買 い 取 りを 保 証 している。しかし<br />

関 係 者 からは「 期 間 は 妥 当 だが、 例 えば 家 庭 向 け 電 力 料 金 が kWh 当 たり 約 10 円 と 安 価 な<br />

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マレーシアでは、なかなか 普 及 しないだろう」との 声 が 聞 こえる。 加 えて、 電 力 会 社 は 発<br />

電 された 全 量 を 買 い 取 るわけではなく、11 年 は 9MW まで、12 年 は 20MW までと 年 間 の<br />

買 い 取 り 総 量 に 上 限 があり、 発 電 側 にとっては 不 透 明 感 のある 制 度 だ。 欧 米 企 業 では、フ<br />

ァーストソーラー、Q セルズ、ボッシュ・ソーラー、MEMC などが 参 入 している。<br />

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2. 開 発 余 地 の 大 きい 風 力 市 場 (インド・ 欧 州 ・ 米 国 )<br />

インドの 風 力 発 電 は、 新 規 導 入 発 電 容 量 が 過 去 5 年 平 均 で 毎 年 約 1,700 メガワット(MW)<br />

の 勢 いで 増 えるなど、 急 成 長 している。 世 界 風 力 エネルギー 協 会 (GWEC)は、2030 年 ま<br />

でに 累 積 発 電 容 量 は 最 大 で 16 万 741MW になると、 現 状 の 10 倍 以 上 の 成 長 を 見 込 んでい<br />

る。その 成 長 推 進 力 は「 未 開 拓 の 陸 上 風 力 」と、 旧 型 タービンを 高 効 率 発 電 タービンに 刷<br />

新 する「リパワリング」だ。<br />

(1) 累 積 容 量 は 10 年 間 で 約 60 倍 に<br />

10 年 末 のインドの 風 力 発 電 の 累 積 発 電 容 量 は 1 万 3,065MW となり、 中 国 、 米 国 、ド<br />

イツ、スペインに 続 き 世 界 5 位 となった(11 年 3 月 の 最 新 データではさらに 増 強 して 1 万<br />

4,157MW、 図 1 参 照 )。<br />

10 年 の 新 規 導 入 発 電 容 量 は 2,139MW と、 中 国 、 米 国 に 次 いで 3 位 。この 新 規 導 入 量<br />

だけをとっても、 日 本 の 累 積 容 量 (2,440MW:10 年 末 )と 大 差 ない 規 模 で、 日 本 に 比 べ 普<br />

及 が 格 段 に 進 んでいることが 分 かる。 過 去 5 年 間 、 平 均 で 毎 年 約 1,700MW の 勢 いで 増 えて<br />

いる。00 年 の 220MW( 累 積 容 量 )に 比 べると、10 年 間 で 約 60 倍 という 驚 異 的 な 成 長 だ。<br />

(2) 各 種 優 遇 政 策 が 貢 献<br />

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風 力 発 電 が 成 長 した 要 因 として、まず 政 府 の 経 済 成 長 計 画 が 挙 げられる。 政 府 は 第 11 期<br />

5 ヵ 年 計 画 〔07 年 度 (06 年 4 月 ~07 年 3 月 )~11 年 度 〕で、 年 平 均 9%の GDP 成 長 率 と、<br />

11 年 度 までに 全 家 庭 に 電 力 を 供 給 するという 目 標 を 立 てている。 高 度 成 長 のためには、 慢<br />

性 的 な 電 力 不 足 を 早 急 に 解 消 する 必 要 があった。そこで 注 目 されたのが 再 生 可 能 エネルギ<br />

ー(RE)、 特 に 風 力 発 電 で、 政 策 的 に 導 入 が 推 し 進 められた 結 果 、10 年 末 の 総 発 電 容 量 に<br />

対 する RE の 比 率 は 10.9%と、 比 較 的 高 い 割 合 を 占 めるようになった。その 約 7 割 が 風 力<br />

発 電 によるもので、 風 力 による 発 電 が 定 着 しつつある。<br />

次 の 要 因 として、 政 府 の 各 種 優 遇 政 策 が 挙 げられる。 風 力 発 電 の 歴 史 は 古 く、1980 年 代<br />

にさかのぼる。ただし、この 時 代 に 建 設 された 多 くの 風 力 発 電 所 は、 電 力 不 足 解 消 や RE の<br />

普 及 という 名 目 で 建 設 されたのではなく、 特 殊 な 税 制 優 遇 策 目 当 てだった。「 加 速 度 減 価 償<br />

却 」といわれ、 風 力 発 電 所 (またはタービン)を 所 有 すると、 有 利 な 条 件 で 減 価 償 却 や 所<br />

得 税 との 相 殺 が 行 えるというものだ。<br />

インセンティブ 目 当 てにセメントやテキスタイル 企 業 などが 風 力 発 電 所 ・タービンをと<br />

りあえず 所 有 し、 自 家 発 電 による 電 力 代 節 約 と 税 制 優 遇 のダブルメリットを 享 受 してきた。<br />

しかし 現 在 、これらの 風 力 発 電 所 は 旧 型 タービンで 発 電 能 力 も 低 く、 電 力 網 に 未 接 続 など<br />

さまざまな 問 題 を 抱 えており、 解 決 策 が 求 められている。<br />

また、 欧 米 で RE 普 及 の 立 役 者 だった 固 定 価 格 買 い 取 り 制 度 (FIT)の 導 入 も 追 い 風 とな<br />

った。ただ、FIT は 各 州 で 価 格 が 違 う( 表 参 照 )。<br />

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(3) 眠 る 未 開 発 地 域<br />

風 力 発 電 の 集 積 地 は 南 部 のタミルナドゥ 州 だ。 同 州 には 5,904MW の 累 積 容 量 (11 年 3<br />

月 時 点 、 以 下 同 様 )があり、 全 体 の 約 4 割 を 占 めている。 南 部 はモンスーンなどから 強 い<br />

風 が 得 られるため、 風 力 発 電 には 好 条 件 だ。また、アラビア 海 沿 岸 にも 強 い 風 が 吹 くため、<br />

マハラシュトラ 州 にも 2,311MW の 累 積 容 量 がある。 同 州 は 商 都 ムンバイを 抱 え、 旺 盛 な 電<br />

力 需 要 がある 地 域 だ。 風 力 発 電 の 企 業 もタミルナドゥ 州 、マハラシュトラ 州 に 多 く 集 積 し<br />

ている。インドの 風 況 地 図 は 風 力 技 術 センター(C-WET)のウェブサイトでダウンロー<br />

ドできる。<br />

インド 風 力 エネルギー 協 会 によると、ポテンシャルの 高 い 地 域 は 南 部 のカルナタカ 州 と<br />

アンドラ・プラデシュ 州 で、それぞれ 1 万 1,531MW と 8,968MW のポテンシャルがあると<br />

いう( 陸 上 風 力 のみ、 以 下 同 様 。 図 2 参 照 )。カルナタカ 州 の 累 積 容 量 はまだ 1,730MW と<br />

限 定 的 で、 約 7 倍 のポテンシャルがある。アンドラ・プラデシュ 州 にいたっては 累 積 容 量<br />

200MW とほとんど 開 拓 されておらず、 大 量 の 風 力 が 眠 っている。<br />

世 界 風 力 エネルギー 協 会 (GWEC)は、インド 全 体 で 20 年 までに 6 万 5,181MW、30<br />

年 までに 16 万 741MW と、 現 状 の 10 倍 以 上 の 成 長 を 見 込 んでいる。 見 込 みにはさまざま<br />

な 試 算 があり、 例 えば 国 際 エネルギー 機 関 (IEA)は 20 年 までに 2 万 4,026MW、30 年 ま<br />

でに 3 万 526MW と 控 え 目 だ。ジェトロに 対 し、インド 風 力 関 係 者 は 口 をそろえて「イン<br />

ド 風 力 の 成 長 は 約 束 されている」と 強 気 の 姿 勢 を 崩 さない。<br />

世 界 経 済 の 行 方 にもよるが、インド 風 力 市 場 は 今 後 も 着 実 に 成 長 するだろう。<br />

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(4) 陸 上 風 力 とリパワリングに 商 機 あり<br />

インド 風 力 関 係 者 は 一 様 に、 今 後 の 成 長 推 進 力 として「 未 開 拓 の 陸 上 風 力 」と、 過 去 に<br />

設 置 された 旧 型 タービンを 高 効 率 タービンに 刷 新 する「リパワリング」を 挙 げる。 洋 上 風<br />

力 の 可 能 性 について 聞 くと、「 洋 上 風 力 は 早 すぎる。なぜなら 陸 上 にあり 余 るほどの 風 力 の<br />

ポテンシャルがあるからだ」と 答 える。 洋 上 風 力 は 陸 上 風 力 に 比 べ 建 設 費 やメンテナンス<br />

費 などが 高 コストで、 導 入 には 高 いハードルが 横 たわっている。むしろ、 安 価 でまだ 開 拓<br />

の 余 地 が 大 きい 陸 上 風 力 に 優 先 的 に 取 り 組 むというのは、リーズナブルな 選 択 といえる。<br />

「リパワリング」に 関 しては、 過 去 に 設 置 された 旧 型 タービンが 数 多 く 存 在 し、GWEC<br />

によると、10 年 末 時 点 で 約 46%のタービン( 発 電 容 量 の 約 18%に 相 当 )が、500 キロワ<br />

ット(KW) 以 下 と 発 電 能 力 が 低 い。この 旧 型 タービンを、 現 在 主 流 の 2MW 以 上 の 大 型 タ<br />

ービンに 刷 新 するだけでも、 相 当 量 の 発 電 容 量 アップにつながる。また、これらの 発 電 所<br />

は 初 期 に 設 置 されているので、 概 して 風 況 が 良 い 場 所 を 確 保 している。そのため、 新 たな<br />

場 所 を 調 査 ・ 検 証 し 新 規 で 設 置 するよりも、 旧 型 を 新 型 に 置 き 換 える 方 がはるかに 効 率 が<br />

いい。<br />

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課 題 として 関 係 者 は「 行 政 手 続 きの 煩 雑 さ」「 低 風 力 でも 効 率 的 に 発 電 するタービンの 必<br />

要 性 」を 挙 げた。インドは 州 政 府 の 力 が 強 いこともあり、 風 力 発 電 建 設 でも 国 レベルだけ<br />

ではなく、 州 レベルでも 手 続 きが 必 要 だ。その 手 続 きの 多 さが、ビジネスの 障 害 になって<br />

いるという。 特 に 土 地 取 得 についてはそれが 顕 著 で、 土 地 所 有 者 など 利 害 関 係 者 との 調 整<br />

や 行 政 対 応 などに 相 当 の 時 間 がかかる。<br />

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3. 欧 米 の 風 力 発 電 技 術 が 浸 透 (インド・ 欧 州 ・ 米 国 )<br />

インドの 風 力 発 電 機 器 市 場 では 欧 米 企 業 が 地 場 企 業 と 協 業 するなど 存 在 感 を 示 す。「 技 術 の<br />

欧 米 」と「マネジメントのインド」という 絶 妙 な「 相 互 補 完 」によって 市 場 が 形 成 されて<br />

いる。 欧 米 企 業 は、 低 迷 が 予 想 される 欧 州 や 米 国 といったこれまでの 市 場 よりも、 成 長 が<br />

期 待 されるインド 市 場 に 熱 い 視 線 を 送 っている。<br />

(1) 地 場 企 業 発 展 の 陰 に 欧 米 企 業 の 技 術 あり<br />

2010 年 末 のインドの 風 力 タービン 市 場 のシェア( 新 規 導 入 発 電 容 量 )は、 第 1 位 がイン<br />

ドのスズロン(42.0%)で、ドイツのエネルコン(19.0%)、デンマークのベスタス(9.1%)、<br />

スペインのガメサ(5.3%)と 続 く( 図 参 照 )。この 数 字 だけをみると、スズロンが 市 場 で 商<br />

品 力 ・ 販 売 力 とも 独 占 的 な 立 場 にあり「 地 場 企 業 の 独 り 勝 ち」のようにみえるが、 実 は 同<br />

社 の 発 展 の 陰 には 欧 州 企 業 の 技 術 供 与 が 大 きく 貢 献 している。<br />

スズロンは 07 年 、ドイツ 風 力 タービン 大 手 のリパワーを 傘 下 に 収 めており、スズロンの<br />

タービン 製 造 技 術 の 基 盤 はリパワーから 移 管 されている。そのほかの 地 場 企 業 も 欧 米 企 業<br />

のライセンスアウトや 技 術 供 与 などを 受 けているケースが 多 く、むしろ 欧 米 企 業 の 影 響 を<br />

受 けていない 企 業 のほうが 少 数 派 だ( 表 1 参 照 )。<br />

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インド 風 力 タービン 製 造 協 会 会 員 をみると、 現 在 インドには 6 社 の 欧 米 系 タービンメー<br />

カーが 進 出 しており( 表 2 参 照 )、 合 計 で 35.1%(10 年 末 )のシェアを 占 める。ただし、<br />

これは 欧 米 系 ブランド 名 でのシェアで、ライセンスアウトなどによる 間 接 的 関 与 を 含 める<br />

と、 大 半 は 欧 米 企 業 のシェアと 言 い 換 えることができるだろう。また、ギアボックス、ブ<br />

レード、 発 電 機 、ベアリングから 規 格 認 証 にいたるまで、 数 多 くの 欧 米 系 企 業 などが 進 出<br />

し、すそ 野 産 業 を 形 成 している。<br />

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(2) 技 術 の 欧 米 とマネジメントのインド<br />

風 力 タービンには、 設 計 から 製 造 、 現 場 設 置 、メンテナンスにいたるまで 高 い 技 術 と 品<br />

質 が 求 められる。 例 えば、ブレードには 空 気 力 学 が 重 要 で、 大 型 化 が 進 むタービンに 対 応<br />

するブレードには 高 い 技 術 が 必 須 だ。その 点 、 欧 米 企 業 の 方 がタービン 製 造 の 歴 史 が 古 い<br />

こともあり、 圧 倒 的 に 強 みを 持 つ。 風 の 強 い 立 地 は 飽 和 状 態 になりつつあり、 少 風 力 でも<br />

効 率 的 に 発 電 できるタービンが 必 要 とされており、その 点 でも 欧 米 企 業 に 一 日 の 長 がある。<br />

また、 現 在 設 置 されている 旧 型 タービンを 高 効 率 発 電 タービンに 刷 新 する「リパワリング」<br />

分 野 でも 同 様 だ。<br />

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一 方 、マネジメントに 関 してはインド 特 有 の 法 規 制 、 煩 雑 な 行 政 対 応 、 営 業 活 動 などに<br />

インド 側 に 強 みがある。 従 ってインドに 進 出 している 欧 米 企 業 のマネジメント 部 門 には 欧<br />

米 人 スタッフは 少 なく、 技 術 部 門 に 在 籍 しているケースが 多 いようだ。「 技 術 の 欧 米 」と「マ<br />

ネジメントのインド」という 絶 妙 な「 相 互 補 完 」によって、インドの 風 力 市 場 は 形 成 され<br />

ている。<br />

(3) インドに 熱 い 視 線 を 送 る 欧 米 企 業<br />

風 力 発 電 機 器 市 場 はスズロン、ベスタス、ガメサなどのいわゆる「タービンメーカー」<br />

がイニシアチブを 取 って 拡 大 してきたが、 最 近 は 独 立 系 発 電 事 業 者 (IPP)も 重 要 なプレー<br />

ヤーになっている。 地 場 系 ではタタ・パワー、マイトラ・エナジー( 旧 カパロ・エナジー)、<br />

欧 州 系 ではアクシオナ(スペイン)などが 風 力 開 発 に 積 極 的 だ。<br />

アクシオナは 約 5 年 前 にインド 市 場 に 参 入 。 現 在 、 南 部 バンガロール 近 郊 に 3 つの 風 力<br />

発 電 所 〔 合 計 85.8 メガワット(MW)〕を 所 有 しており、11 年 10 月 に 3 つ 目 の 風 力 発 電 所<br />

(53.1MW、ベスタス 製 タービンを 採 用 )を 稼 働 させたばかりだ。<br />

同 社 はジェトロに 対 し、「3 つ 目 の 風 力 発 電 所 は 欧 州 で 培 った 最 新 の 技 術 やノウハウを 駆<br />

使 し、(インドには 希 少 な)メンテナンスフリーの 発 電 所 を 目 指 している」と 最 新 鋭 の 設 備<br />

を 強 調 した。また、「 欧 州 の 成 長 に 期 待 できないこともあって、グローバル 市 場 で 11 の 優<br />

先 戦 略 国 を 決 めており、インドはその 1 つ。インドではしばらくは 年 150~200MW の 成 長<br />

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( 新 規 導 入 量 )を 見 込 んでおり、どんどん 投 資 していきたい」と 将 来 に 期 待 している。<br />

欧 米 企 業 は、 低 迷 が 予 想 される 欧 州 や 米 国 に 見 切 りをつけ、インドに 熱 い 視 線 を 送 って<br />

いる。ガメサは 11 年 第 3 四 半 期 報 告 で、11 年 1~9 月 の 地 域 別 売 上 高 比 率 (MW ベース)<br />

が、 本 国 スペインの 6%に 対 しインドは 20%と 高 い 割 合 になり、 前 年 同 期 比 で 2.8 倍 の 高<br />

成 長 を 達 成 したとした。この 割 合 は 国 別 では 中 国 の 21%に 次 いで 第 2 位 だ。また、 同 社 は<br />

2,500 万 ユーロを 投 資 し、11 年 末 に 西 部 のグジャラート 州 にブレードの 製 造 拠 点 を 稼 働 、<br />

同 年 には 南 部 チェンナイに 研 究 開 発 (R&D)センターも 設 立 している。<br />

このほか、ベスタスは 11 年 2 月 、 既 存 の R&D センター(チェンナイ)を 拡 張 し、300<br />

人 体 制 とした。ゼネラル・エレクトリック(GE)も 11 年 10 月 、 地 場 企 業 のグリーンコと<br />

の 共 同 事 業 としてインドの 風 力 開 発 に 5,000 万 ドルの 投 資 を 発 表 するなど、 欧 米 企 業 によ<br />

るインド 事 業 拡 大 のニュースは 枚 挙 にいとまがない。 欧 米 企 業 は 成 長 するインド 風 力 市 場<br />

を 懸 命 に 取 り 込 もうとしている。<br />

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4. 有 望 市 場 に 布 石 を 打 つ 欧 米 の 太 陽 電 池 企 業 (インド・ 米 国 ・ 欧 州 )<br />

インド 政 府 は 太 陽 光 発 電 能 力 を 2022 年 までに 現 在 の 350 倍 に 拡 大 する 構 想 を 掲 げている。<br />

欧 米 の 太 陽 電 池 関 連 企 業 は、 成 長 が 加 速 し 始 めたインドに 期 待 をかける。<br />

(1) 22 年 までに 太 陽 光 発 電 能 力 を 現 在 の 350 倍 に<br />

現 在 インドは 世 界 の 太 陽 光 発 電 市 場 でほとんど 存 在 感 がなく、 国 別 シェアでは、 通 常 「そ<br />

の 他 」に 分 類 される。 設 置 された 太 陽 光 発 電 容 量 は 10 年 末 で 64 メガワット(MW)にす<br />

ぎず(「PV Magazine」)、これから 立 ち 上 がる 市 場 といえるだろう。しかし 既 に 市 場 拡 大 を<br />

見 込 み、 欧 米 から Q セルズ、BP(タタとの 合 弁 。ただし、 両 社 は 11 年 末 、タタパワーが<br />

BP 保 有 の 株 式 をすべて 買 い 取 り、100% 子 会 社 化 することで 合 意 した)、ショット・ソーラ<br />

ー、ボッシュ・ソーラー、SMA テクノロジー、ファーストソーラー、ダウコーニングなど<br />

が 市 場 に 進 出 している( 生 産 、 販 売 、 協 業 を 含 む。 以 下 同 じ)。<br />

中 国 からもカナディアンソーラー、サンテック、 台 湾 からはモーテックなどが 進 出 する<br />

など 参 入 が 活 発 化 している( 本 稿 では 取 り 上 げないが 太 陽 熱 も 有 望 だ。この 分 野 では 米 国<br />

の e ソーラーやアモニックスが 参 入 している)。<br />

10 年 1 月 にシン 首 相 によって 提 唱 された「ジャワハーラル・ネルー・ナショナル・ソー<br />

ラー・ミッション(JNNSM)」は、22 年 までに 20 ギガワット(GW)の 太 陽 光 発 電 能 力 を<br />

目 標 としている。 現 在 の 350 倍 という 壮 大 な 構 想 だ。インドは 既 に 発 電 源 に 占 める 再 生 可<br />

能 エネルギー(RE)の 割 合 が 14%を 超 えているが( 調 査 機 関 の Ren21)、そのほとんどは<br />

風 力 発 電 だ。<br />

政 府 には「 新 ・ 再 生 可 能 エネルギー 省 」も 創 設 されている。 同 省 はこれまで「 非 既 存 エ<br />

ネルギー 省 」といっていたが、06 年 に 現 在 の 名 前 に 改 変 、RE の 普 及 を 推 進 している。<br />

米 国 の 場 合 、RE を 担 当 するのが 化 石 燃 料 を 主 に 扱 うエネルギー 省 のため、 省 内 でしばし<br />

ば 利 益 が 相 反 する。また 米 国 では、 省 エネ 担 当 もエネルギー 省 の 中 に 設 置 されている。イ<br />

ンドでは 電 力 省 の 下 部 組 織 に 省 エネを 担 当 する「 省 エネルギー 担 当 局 」が 存 在 する。 米 国<br />

では 省 の 中 でさまざまな 利 害 が 錯 綜 (さくそう)する 形 態 になっているのに 対 し、インド<br />

は 省 庁 の 性 格 付 けがはっきりしている。 一 方 、 政 策 に 統 一 性 がない、 縦 割 りとの 批 判 が 起<br />

きやすい 面 もある。<br />

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(2) 無 電 化 の 人 口 集 積 地 が 散 在 し、オフ・グリッド 発 電 所 が 重 要 な 役 割<br />

ジェトロに 対 し、 政 府 高 官 は 口 をそろえて 目 標 としている 22 年 の 20GW は「 達 成 可 能 な<br />

数 字 」と 述 べた。インドでは 人 口 の 3 分 の 1 が 無 電 化 地 域 に 住 む。それにもかかわらず、<br />

電 力 の 供 給 能 力 はピーク 需 要 に 16% 足 りない(インド・ソーラー・エナジー 協 会 )とされ<br />

る。<br />

発 電 源 の 約 40%を 占 めるのは 石 炭 。しかし 供 給 不 足 が 続 いている 上 、ロジスティクスの<br />

問 題 があって 当 面 石 炭 不 足 は 解 消 されないという。 今 後 無 電 化 地 域 に 電 気 を 通 そうとすれ<br />

ば 発 電 能 力 の 増 強 が 避 けられない。<br />

そこで 風 力 や 未 開 拓 の 太 陽 光 への 期 待 が 高 まっている。マハラシュトラ 州 、アンドラ・<br />

プラデシュ 州 、グジャラート 州 など 複 数 の 州 で 固 定 価 格 買 い 取 り 制 度 (FIT)が 導 入 され、<br />

太 陽 光 の 普 及 を 後 押 しすると 期 待 されている( 国 レベルでの FIT は 未 導 入 )。また 無 電 化 地<br />

域 に 供 給 される 電 気 は、 停 電 が 少 ない、 周 波 数 変 動 が 少 ないといった「 質 」がそれほど 求<br />

められないことも、RE 電 源 に 活 躍 の 場 を 提 供 している。<br />

一 般 に、 一 定 規 模 の 太 陽 光 発 電 所 を 建 設 するには、 発 電 所 から 人 口 集 積 地 への 長 距 離 の<br />

送 電 網 建 設 が 不 可 欠 だが、「インドでは 無 電 化 の 人 口 集 積 地 が 散 らばって 存 在 するという 特<br />

殊 事 情 」( 新 ・ 再 生 可 能 エネルギー 省 ディレクターのバルガバ 博 士 )があるため、 発 電 所 を<br />

消 費 地 の 比 較 的 近 くに 建 設 できるし、そうしなければコストに 合 わないという。<br />

同 博 士 は「22 年 目 標 の 20GW の 多 くはオン・グリッド( 系 統 連 系 )だ。しかし 農 村 部 で<br />

はオフ・グリッドも 重 要 な 役 割 を 果 たす。インドでは 長 い 送 電 網 を 建 設 する 必 要 性 が 薄 い<br />

だけでなく、 合 理 的 でない」としている。<br />

(3) 出 展 では 少 数 派 の 日 ・ 中 ・ 台<br />

11 年 11 月 9 日 にハイデラバードで 開 かれた、 太 陽 光 発 電 関 連 のコンファレンス・ 展 示 会<br />

のソーラーコン(SolarCon)では、 欧 米 企 業 の 出 展 が 目 に 付 いた。 全 体 110 社 の 出 展 のう<br />

ち、 米 国 企 業 が 12 社 、ドイツが 10 社 、 英 国 とノルウェーが 各 3 社 、その 他 欧 州 が 8 社 、<br />

展 示 ブースを 構 えた。3 社 に 1 社 は 欧 米 企 業 で、 日 本 は 4 社 、 中 国 系 台 湾 系 も 計 4 社 にすぎ<br />

ない。 米 国 や 欧 州 で 開 かれる 太 陽 電 池 の 展 示 会 では、 中 国 系 台 湾 系 企 業 の 存 在 が 非 常 に 目<br />

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立 つのに、インドではごく 少 数 派 だった。<br />

下 表 が 主 な 欧 米 の 展 示 企 業 。 多 くは 既 にインド 国 内 に 製 造 、 販 売 などの 拠 点 を 持 ってい<br />

る。シリコン 系 太 陽 電 池 の 場 合 、ローカルコンテント 要 求 が 課 せられ、 国 内 で 一 定 の 組 み<br />

立 てをする 必 要 がある。このためセル 以 降 の 生 産 工 程 のシリコン 系 企 業 は、 軒 並 みインド<br />

に 拠 点 を 持 っている。 検 査 装 置 、 制 御 装 置 、トラッキング、ケーブル 関 連 の 企 業 の 展 示 も<br />

目 立 った。<br />

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(4) インドを「 輸 出 市 場 」としてみるアバウンド<br />

米 国 の 薄 膜 ベンチャー 企 業 として 注 目 されるアバウンド・ソーラーも 出 展 していた。 同<br />

社 はインド 内 に 生 産 拠 点 はなく、インドを「 輸 出 市 場 」としてみている。カドミウム・テ<br />

ルル 化 合 物 (CdTe)ベースの 太 陽 電 池 といえば 米 国 ファーストソーラーが 有 名 だが、アバ<br />

ウンド・ソーラーは 07 年 創 業 の 若 い 企 業 ながら、 今 のところ 唯 一 ファーストソーラーに 対<br />

抗 できる CdTe 製 品 を 量 産 している。コロラド 州 立 大 学 で 研 究 開 発 が 始 まり、 米 国 再 生 可 能<br />

エネルギー 研 究 所 の 支 援 も 受 けながら、09 年 に 商 業 生 産 にこぎ 着 けた。<br />

アバウンド・ソーラーのベッキー・エルゼイ 氏 (マーケティング・コミュニケーション・<br />

マネジャー)は、 以 下 のとおり 説 明 した。<br />

○ 一 般 的 な 条 件 の 下 では、CdTe よりもシリコン 系 太 陽 電 池 の 方 が 変 換 効 率 は 高 い。しかし<br />

インドの 気 候 は 高 温 でほこりが 多 いという 特 徴 がある。 高 温 になるとシリコン 系 の 太 陽 電<br />

池 は 効 率 が 落 ちるが CdTe は 一 定 している。また、ほこりをかぶるとシリコン 系 は 効 率 が 下<br />

がるのに 対 し、CdTe にはその 影 響 が 少 ない。CdTe はインドに 適 した 化 合 物 といえる。<br />

○インドではシリコン 系 太 陽 電 池 にはローカルコンテント 要 求 が 課 せられるのに 対 し、CdTe<br />

や CIGS( 銅 ・インジウム・ガリウム・セレン 化 合 物 )などの 薄 膜 系 には 課 せられない。 国<br />

内 に 薄 膜 系 メーカーがほとんどないためだ。ファーストソーラーもインドに 輸 出 している。<br />

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CdTe の 有 害 性 については、 当 社 が 納 めた 製 品 は、 寿 命 が 来 ればすべて 当 社 で 引 き 取 り、 主<br />

要 部 品 は 再 利 用 される。 当 社 は 太 陽 電 池 再 利 用 協 会 (PV Cycle)の 会 員 だ。 安 全 と 環 境 性<br />

能 はわれわれが 最 も 重 視 している 点 だ。<br />

○ 米 国 商 務 省 は 強 く 支 援 してくれている。インドの 会 うべき 人 たちも 紹 介 してくれ、この 展<br />

示 会 への 参 加 を 勧 めたのも 商 務 省 だ。またエネルギー 省 の 低 金 利 ローンやローン 保 証 も 利<br />

用 している。<br />

○ファーストソーラーは 良 きライバルだ。 非 常 に 価 格 競 争 力 がある。ただし、われわれのコ<br />

スト 削 減 のスピードは 創 業 以 来 彼 らを 上 回 っており、 彼 らの 価 格 を 下 回 る 日 も 近 い。12 年<br />

末 には 1 ワット 当 たり 1 ドルを 切 る 予 定 だ。<br />

○インドに 工 場 を 設 ける 計 画 は 今 のところない。すべて 米 国 産 だ。コロラド 州 に 3 つ、イン<br />

ディアナ 州 に 1 つの 生 産 ラインを 建 設 中 だ。 一 部 は 既 に 量 産 を 始 めている。 現 在 の 製 造 能<br />

力 は 年 65MW だが、13 年 末 までに 年 840MW にまで 拡 大 する 計 画 だ。<br />

○インドには 15MW の 太 陽 光 発 電 所 をつくった。ラジャスタン 州 とグジャラート 州 にある。<br />

プロジェクト 開 発 は 担 わず、 製 品 の 製 造 に 特 化 している。EPC(エンジニア、 製 品 調 達 、<br />

建 設 を 担 う 企 業 )はプロジェクトごとにどの 製 品 が 最 適 かを 決 定 する。そのため、 技 術 チ<br />

ームは 地 元 の EPC と 協 議 を 重 ね、インドの 気 候 、 風 土 、ニーズにあったモジュールの 設 計<br />

に 努 力 している。<br />

○インド 市 場 で 苦 労 する 点 は、 第 1 にロジスティクスが 悪 いこと。 道 路 や 鉄 道 だけでなく、<br />

今 回 の 展 示 会 に 参 加 するだけでも 実 にたくさんの 書 類 やラベリンングが 必 要 で、それが 州<br />

ごとに 必 要 だった。 第 2 に、 州 によって 政 策 や 規 制 がかなり 異 なり、 誰 と 話 をするのかを<br />

見 極 めなければならないことだ。<br />

最 後 にエルゼイ 氏 は「 当 社 はドイツ、スペイン、イタリアの 大 規 模 太 陽 光 発 電 所 に 製 品<br />

を 納 めてきたが、インド 市 場 は 今 後 当 社 にとって 最 大 の 市 場 になるだろう」との 見 通 しを<br />

示 した。<br />

(5) 上 流 のウエハー 製 造 装 置 をインドから 欧 州 に 輸 出<br />

また 展 示 会 に 参 加 していた 日 本 のウエハー 製 造 装 置 の 企 業 は、インドで 製 造 装 置 を 組 み<br />

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立 て 欧 州 に 輸 出 しているという。インドは 距 離 的 にも 欧 州 市 場 に 近 い 上 、ウエハー 製 造 な<br />

どの 上 流 は、 競 合 相 手 が 限 られるため 地 の 利 を 生 かせるという。ほとんどを 輸 出 している<br />

が、インド 国 内 向 けも 少 しずつ 受 注 が 出 始 めた。 今 後 は 国 内 での 販 売 にも 期 待 していると<br />

いう。<br />

このほか、 展 示 会 には 出 ていなかったが、BP ソーラーはタタグループと 組 んで 太 陽 光 発<br />

電 プロジェクト 開 発 を 進 めている。 両 社 は、 合 弁 は 解 消 したが、13 年 まで 技 術 協 力 関 係 を<br />

維 持 する。<br />

インドの 太 陽 光 市 場 は、まだ 厚 みはないものの、 徐 々にプレーヤーの 顔 ぶれがそろい 始<br />

めている。<br />

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5. 中 国 の 風 力 発 電 設 備 容 量 が 世 界 最 大 に( 中 国 ・ 欧 州 ・ 米 国 )<br />

中 国 の 風 力 発 電 設 備 容 量 ( 累 積 )は 2010 年 末 に 4 万 4,733 メガワット(MW)に 達 し、<br />

米 国 の 4 万 180MW を 抜 いて 世 界 最 大 になった。 中 国 の 風 力 発 電 産 業 は 06 年 に 導 入 された<br />

再 生 可 能 エネルギー(RE) 法 により、 過 去 5 年 間 で 急 速 に 発 展 した。 急 速 な 発 展 に 伴 い、<br />

価 格 競 争 が 激 化 して 外 国 メーカーのシェアが 低 下 したほか、グリッドへの 接 続 問 題 や 電 力<br />

網 の 整 備 の 遅 れが 認 識 され 始 めた。また、 欧 米 メーカーにとって 重 要 な 品 質 維 持 のための<br />

技 術 をめぐり、 各 社 の 研 究 開 発 (R&D) 戦 略 が 問 われようとしている。<br />

(1) 10 年 だけで 約 2 万 MW の 新 規 容 量<br />

10 年 末 の 中 国 の 累 積 風 力 発 電 設 備 容 量 は 前 年 までトップだった 米 国 を 抜 いて、 世 界 1 位<br />

になった( 表 1 参 照 )。 中 国 の 10 年 の 新 規 設 備 導 入 容 量 は 1 万 8,928MW に 達 し、 世 界 新<br />

規 導 入 量 のほば 半 分 を 占 めた( 表 2 参 照 )。 中 国 の 新 規 導 入 量 はインドの 累 積 発 電 容 量 を 上<br />

回 っており、10 年 は「 中 国 の 年 」だったともいえる。<br />

中 国 の 過 去 10 年 間 の 風 力 発 電 累 積 容 量 をみると、01 年 の 404MW から 10 年 の 4 万<br />

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4,733MW へと 100 倍 以 上 に 増 加 し、 特 に 06 年 以 降 、 新 規 導 入 量 が 加 速 的 に 増 加 した( 図<br />

参 照 )。これには、06 年 に 最 初 の RE 法 が 発 効 した 影 響 が 大 きく、07 年 9 月 に「 再 生 可 能<br />

エネルギー 中 長 期 発 展 規 画 」が、08 年 3 月 には「 再 生 可 能 エネルギー 発 展 第 11 次 5 ヵ 年<br />

規 画 」が 発 表 され、 各 分 野 別 の 目 標 が 設 定 されて、 拡 大 に 向 けた 具 体 的 な 方 針 が 示 されこ<br />

とが 背 景 にある。<br />

(2) 外 国 メーカーのシェアは 低 下 も、 量 は 他 国 の 新 規 導 入 量 全 体 を 上 回 る<br />

新 規 導 入 量 の 急 速 な 拡 大 とともに、05 年 時 点 では 7 割 以 上 を 占 めていた 新 規 導 入 設 備 に<br />

占 める 外 国 メーカーのシェアが、10 年 には 10.5%まで 低 下 した。10.5%といえども、ほか<br />

の 国 の 新 規 導 入 量 に 比 べ、インドの 新 規 導 入 量 全 体 (2,139MW)に 匹 敵 し、スペイン<br />

(1,516MW)、ドイツ(1,493MW)といった 欧 州 主 要 市 場 の 新 規 導 入 量 より 大 きく、 続 く<br />

フランスの 2 倍 で、 中 国 市 場 の 大 きさが 際 立 っている。<br />

在 日 中 国 大 使 館 によると、 国 家 エネルギー 局 は 11 年 12 月 15 日 、RE 産 業 の 第 12 次 5<br />

ヵ 年 規 画 を 発 表 し、 風 力 による 累 積 発 電 容 量 を 15 年 までに 100 ギガワット(GW、1GW=<br />

1,000MW)とする 目 標 値 を 掲 げた。この 計 画 はまだパブリックコメントを 募 集 中 の 案 で、<br />

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変 更 する 可 能 性 があるともいわれているが、 大 きな 変 更 はないというのが 一 般 的 な 見 方 だ。<br />

このことは 12 年 から 15 年 の 間 に、ほぼ 50GW の 風 力 発 電 設 備 が 増 設 されることを 意 味 す<br />

る。<br />

さらに、 国 家 発 展 改 革 委 員 会 が 11 年 10 月 19 日 に 発 表 した「 中 国 風 力 発 電 発 展 ロードマ<br />

ップ 2050」によると、 風 力 発 電 の 累 積 容 量 は 20 年 までに 200GW、30 年 までに 400GW、<br />

50 年 までに 1,000GW に 達 するという 長 期 的 な 予 測 値 が 掲 げられており、 国 として 風 力 発<br />

電 産 業 の 発 展 を 強 く 後 押 しする 姿 勢 がうかがえる。<br />

(3) 現 地 生 産 拡 大 を 急 ぐ 欧 州 企 業<br />

中 国 に 進 出 している 外 国 タービン 製 造 セットメーカーは 現 在 、ベスタス(デンマーク)、<br />

ガメサ(スペイン)、ゼネラル・エレクトリック(GE、 米 国 )、スズロン(インド)、ノル<br />

デックス、シーメンス(ともにドイツ)の 6 社 だけだ。リパワー(ドイツ)は 外 国 企 業 の<br />

比 率 低 下 と 上 位 10 社 で 市 場 をほぼ 寡 占 している 状 況 を 理 由 に、11 年 に 撤 退 を 決 めた。<br />

10 年 の 累 積 発 電 容 量 でみると、 上 位 10 社 で 市 場 の 85%を 占 め、この 中 にランクインし<br />

た 外 国 企 業 はベスタス(4 位 )、ガメサ(6 位 )、GE(8 位 )の 3 社 だけ。スズロンが 11 位 、<br />

ノルデックスが 14 位 と 続 いているが、 後 発 のシーメンスに 至 っては 上 位 20 位 にも 入 って<br />

いない。 上 位 3 社 は 華 鋭 風 電 (シノベル)、 金 風 科 技 (ゴールドウィンド)、 東 方 電 気 (ド<br />

ンファン・エレクトリック)の 中 国 企 業 で 占 められ、この 3 社 だけで 市 場 シェアの 56%を<br />

占 めている( 表 3 参 照 )。<br />

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現 在 、 中 国 で 活 動 する 風 力 関 連 企 業 はタービン 製 造 セットメーカーだけで 60~70 社 、 部<br />

品 メーカーは 100 社 を 超 えているといわれ、 生 産 能 力 過 剰 の 状 態 で、 大 手 企 業 は 輸 出 ドラ<br />

イブがかかっているという。このため、 価 格 競 争 が 年 々 激 しくなっており、11 年 10 月 に 北<br />

京 で 開 催 された 中 国 風 力 発 電 (CWP)2011 展 示 会 に 出 展 した 多 くの 欧 州 企 業 から、 現 地 生<br />

産 を 拡 大 する、 欧 州 からの 輸 入 をやめて 現 地 生 産 に 間 もなく 切 り 替 える、または 検 討 を 始<br />

めたといった 方 針 や 意 見 が 一 様 に 聞 かれた。<br />

他 方 、 品 質 ではガメサやベスタスなどの 外 国 製 品 が 優 位 で、 中 国 製 品 は 安 全 面 で 信 用 が<br />

ないものもあるため、ガメサなどの 欧 州 企 業 は 単 純 に 価 格 で 競 争 するのではなく、 品 質 と<br />

のバランスや、 長 期 的 にみた 電 力 生 産 コストで 勝 負 していく 意 向 を 示 している。11 年 に 入<br />

り、 中 国 企 業 もようやく 品 質 の 重 要 性 を 認 識 し 始 めたとの 意 見 が 多 く 聞 かれた。 今 後 、 価<br />

格 と 品 質 の 両 面 での 競 争 により、 中 国 企 業 が 淘 汰 (とうた)されていくとみられている。<br />

(4) 中 国 メーカーは R&D と 海 外 展 開 を 強 化<br />

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華 北 電 力 大 学 の 田 徳 教 授 によると、「 中 国 企 業 の 技 術 はガメサやベスタスなどの 欧 州 企 業<br />

の 技 術 に 依 存 している」という。 業 界 2 位 の 金 風 科 技 は 風 力 発 電 設 備 の 国 産 化 を 進 める 国<br />

家 重 点 科 学 技 術 プロジェクトとして、1999 年 にドイツのヤコブ( 現 リパワー)の 技 術 を 導<br />

入 、600 キロワット(kW) 級 の 風 力 発 電 設 備 を 国 産 化 率 30% 超 で 製 造 した。 同 社 の Yao Yu<br />

広 報 課 長 によると、もともとは 新 疆 ウイグル 自 治 区 発 祥 の 企 業 で、 当 初 は 1989 年 にデンマ<br />

ークから 輸 入 した 150kW 級 の 風 力 発 電 設 備 により、アジア 最 大 ( 当 時 )の 達 坂 城 風 力 発 電<br />

所 を 建 設 した。<br />

2001 年 に 現 在 の 社 名 に 変 更 し、08 年 にドイツのベンシスの 買 収 を 完 了 、 同 社 との 合 弁 で<br />

ギアボックスを 必 要 としないタービンを 開 発 した。ギアボックスが 不 要 なため、メンテナ<br />

ンス 費 用 を 低 減 できることを 強 みとしてきた。 金 風 の 永 久 磁 石 界 磁 ・ 直 駆 動 技 術 は 20 年 の<br />

歴 史 を 持 つベンシスが 基 礎 になっている。 日 中 経 済 協 会 北 京 事 務 所 電 力 室 は「 金 風 の 部 品<br />

の 98%は 中 国 製 だが、すべてドイツ 技 術 のライセンス 製 造 で、いわば 中 国 製 のドイツ 製 品<br />

だ」と 説 明 する。<br />

また、 金 風 の Yao Yu 広 報 課 長 は、 将 来 的 に 同 社 が 中 国 市 場 でトップの 座 を 確 保 すること<br />

を 望 んでいるが、「 最 も 良 い 技 術 の 製 品 を 顧 客 に 届 ける」ことが 最 優 先 課 題 だと 強 調 、 高 い<br />

満 足 度 が( 同 社 への)ロイヤルティーにつながると 補 足 する。<br />

風 力 発 電 タービンのライフサイクルを 20 年 ととらえて、 効 率 性 を 追 求 するとともに、R<br />

&D 機 能 を 強 化 するほか、 欧 米 市 場 という 主 要 市 場 に 加 えて、 新 興 市 場 への 海 外 展 開 に 当<br />

たっては 現 地 化 を 進 める 意 向 を 示 した。 金 風 は 日 本 市 場 にも 強 い 関 心 を 持 っているとみら<br />

れる。ちなみに、 米 国 拠 点 では 約 20 人 の 体 制 で 展 開 しているが、 中 国 人 は 1 人 もおらず、<br />

完 全 に 現 地 化 しているという。なお、10 年 の 輸 出 販 売 実 績 をみると、キューバに 6 基 輸 出<br />

しただけだった。<br />

(5) 認 識 され 始 めたグリッド 接 続 と 送 電 網 整 備 の 遅 れ<br />

そのほかの 課 題 としては、グリッド 接 続 問 題 が 生 じている。 中 国 国 内 の 風 力 発 電 タービ<br />

ンは 10 年 末 で 1 万 2,904 基 設 置 〔 中 国 風 力 発 電 協 会 (CWEA) 統 計 〕されており、 国 家 電<br />

網 が 発 電 所 まで 送 電 網 を 拡 張 して 受 給 することになっているが、 送 電 網 の 整 備 が 遅 れてお<br />

り、グリッドに 接 続 できていない 発 電 施 設 が 多 数 ある。 送 電 網 の 整 備 の 遅 れは 11 年 になっ<br />

てようやく 認 識 され、 対 応 が 検 討 され 始 めたという。<br />

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特 に、 中 国 の 風 力 発 電 は 北 部 と 北 東 部 に 集 中 しているが、 電 力 の 消 費 は 南 東 部 が 中 心 で、<br />

グリッド 接 続 だけでなく、 送 電 網 の 整 備 も 喫 緊 の 課 題 になっている。<br />

また、 華 北 電 力 大 学 の 田 徳 教 授 は「 風 力 発 電 は 供 給 が 安 定 せず、 季 節 による 変 動 が 大 き<br />

いため、 別 の 電 力 とハイブリッドにする 必 要 がある」と 説 く。 最 近 ではメーカーが 利 益 を<br />

確 保 するため、 風 力 発 電 タービンの 大 型 化 を 進 めているが、 大 型 化 すると、 電 力 供 給 が 一<br />

層 不 安 定 になることを 指 摘 する。この 点 でも R&D 強 化 による 技 術 開 発 が 必 要 になってく<br />

る。<br />

欧 州 企 業 の 中 では、ガメサのように 100% 単 独 出 資 を 守 り、 独 自 の 技 術 を 保 持 しつつ R<br />

&D センターの 現 地 化 について 検 討 中 の 企 業 と、シーメンスのように 上 海 電 気 との 合 弁 企<br />

業 設 立 を 決 め、 中 国 での 新 技 術 の 研 究 ・ 開 発 までをコミットした 企 業 との 間 で 戦 略 の 違 い<br />

が 出 始 めている。<br />

(6) 将 来 の 発 展 のカギを 握 る 長 期 的 な 電 力 料 金 政 策<br />

中 国 の 風 力 発 電 産 業 は 優 遇 政 策 などにより、 過 去 5 年 で 急 速 に 発 展 した。 市 場 の 成 長 ス<br />

ピードが 速 い 半 面 、 価 格 競 争 の 激 化 、 品 質 の 問 題 、グリッド 接 続 や 電 力 網 整 備 の 必 要 性 な<br />

ど 解 決 すべき 問 題 も 浮 上 している。しかし、 風 力 発 電 は 二 酸 化 炭 素 (CO2)を 排 出 しない<br />

利 点 がある。<br />

J-POWER( 電 源 開 発 ) 北 京 事 務 所 の 石 渡 康 夫 所 長 は、 中 国 での 風 力 発 電 の 稼 働 率 は 23%<br />

で、 日 本 の 17~18%に 比 べて 高 く、1 キロワット 時 (kWh) 当 たりのコストは 風 力 4 等 級<br />

で 0.61 元 ( 約 7.5 円 、1 元 = 約 12.2 円 )と、 日 本 の 9 円 強 と 比 べても、 風 況 が 良 い 点 を 強<br />

調 する。ちなみに、 中 国 の 風 力 発 電 料 金 は 風 の 強 さによって、 風 力 基 準 毎 秒 10 メートル(1<br />

等 級 )、8.5 メートル(2 等 級 )、7.5 メートル(3 等 級 )、6.5 メートル(4 等 級 )がそれぞれ<br />

0.51 元 、0.54 元 、0.58 元 、0.61 元 となっている。<br />

こうした 風 力 発 電 による 電 力 料 金 の 生 産 コストと 価 格 設 定 は 今 後 のさらなる 発 展 に 大 き<br />

く 影 響 する。15 年 までの 累 積 発 電 容 量 の 目 標 100GW のうち、5GW は 洋 上 風 力 で 賄 うこと<br />

が 想 定 されている。 洋 上 風 力 の 建 設 費 は 陸 上 の 2 倍 程 度 といわれることから、 中 長 期 的 な<br />

電 力 生 産 コストと 料 金 設 定 が 一 層 重 要 になる。<br />

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中 国 電 力 連 合 会 の 統 計 によると、 風 力 発 電 による 電 力 生 産 量 は 10 年 で 全 体 の 0.612%、<br />

11 年 で 0.871%、15 年 の 予 測 でも 1.501%にすぎない。「 中 国 風 力 発 電 発 展 ロードマップ<br />

2050」ではこの 数 値 が 50 年 には 17%まで 上 昇 すると 予 測 しているが、この 意 味 でも 今 後<br />

の RE に 関 する 料 金 政 策 が 一 層 重 要 になる。<br />

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6. ガメサ、 現 地 化 促 進 と 技 術 向 上 で 競 争 力 強 ( 中 国 ・スペイン)<br />

中 国 の 風 力 発 電 ビジネスに 関 する 2 回 目 は、 欧 州 企 業 として 既 に 6 つの 工 場 を 稼 働 させ<br />

ているスペインの 風 力 設 備 大 手 ガメサについて。ガメサの 中 国 事 業 の 特 徴 は、 顧 客 の 電 力<br />

会 社 と 合 弁 で 風 力 発 電 施 設 群 (ウインドファーム)を 開 発 し、その 電 力 会 社 に 風 力 発 電 設<br />

備 を 販 売 するが、 電 力 会 社 との 競 合 を 避 けるため、ウインドファームは 運 営 しないことだ。<br />

また、 市 場 での 価 格 競 争 激 化 に 対 応 して、 現 地 化 とより 安 価 な 電 力 を 生 産 する 風 力 発 電 設<br />

備 の 開 発 で、 競 争 力 を 高 めていく 方 針 だ。<br />

(1) ウインドファーム 開 発 と 風 力 発 電 設 備 の 製 造 ・ 販 売 が 両 輪<br />

ジェトロは 2011 年 10 月 24 日 、ガメサのホアン・イグナシオ・モティロア 中 国 支 社 長 兼<br />

最 高 執 行 責 任 者 (CCO)に、 同 社 の 中 国 での 事 業 展 開 や 活 動 方 針 について 聞 いた。その 内<br />

容 を 中 心 に、 今 後 の 後 のガメサの 中 国 での 展 開 も 含 めて、 同 社 の 特 徴 を 解 説 する。<br />

モティロア 支 社 長 よると、ガメサの 設 立 は 1976 年 までさかのぼる。 当 初 は 航 空 機 部 品<br />

を 生 産 していたが、94 年 に 風 力 発 電 分 野 に 転 じた。 一 時 は、 太 陽 光 分 野 も 手 掛 けたが、 売<br />

却 し、 現 在 では 風 力 発 電 だけに 注 力 している。ガメサは 現 在 、 世 界 中 で 約 7,000 人 を 雇 用<br />

し、スペインのほか、 米 国 ・フィラデルフィア、 中 国 、インド、ブラジルに 工 場 を 持 つ。<br />

ガメサは 中 国 で 風 力 発 電 設 備 を 製 造 する 一 方 、ウインドファームも 開 発 している。しか<br />

し、 自 社 でウインドファームは 運 営 しない。 進 出 初 期 には、ウインドファームのライセン<br />

ス 取 得 や、 風 況 が 良 い 場 所 の 分 析 、 風 力 発 電 機 の 設 置 も 行 っていたが、 所 有 していたウイ<br />

ンドファームはすべて 売 却 し、それ 以 降 、 運 営 は 一 切 行 っていないという。<br />

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モティロア 支 社 長 は「われわれは 独 立 系 電 力 事 業 者 (IPP)ではない。 自 分 たちでウイン<br />

ドファームを 運 営 しない 理 由 は、ウインドファームを 運 営 すると、 顧 客 と 競 合 してしまう<br />

からだ。 顧 客 の 競 合 相 手 にはなりたくない。メーンビジネスは 風 力 発 電 機 を 製 造 し、 販 売<br />

することだ。 世 界 規 模 でウインドファームを 開 発 することには 関 心 を 持 っている」と 説 明<br />

する。<br />

ガメサは 現 在 、 世 界 全 体 で 約 22 ギガワット(GW)の 風 力 発 電 開 発 と 販 売 を 行 っており、<br />

22GW のうち、 約 3GW が 中 国 だという。 中 国 で 最 初 に 販 売 したのは 10 年 前 で、モティロ<br />

ア 支 社 長 は「 最 も 重 要 な 市 場 はスペインと 中 国 だ」と 強 調 する。05 年 に 風 力 エネルギー 分<br />

野 は 非 常 に 重 要 なものになったとし、 同 分 野 には 風 、ラボラトリーシステム、 電 力 の 売 買<br />

に 関 するルールの、3 つの 要 素 が 必 要 だと 説 く。それに 必 要 なのが 電 力 グリッドで、 電 力 グ<br />

リッドのアップデートと、そのための 設 備 投 資 が 必 要 だと 指 摘 する。<br />

(2) 天 津 を 中 心 に 6 工 場 を 稼 働 、7 つ 目 を 内 モンゴルに 建 設 中<br />

ガメサは 05 年 に 天 津 に 工 場 を 開 設 したが、それには 2 つの 理 由 があったという。1 つは<br />

天 津 が 税 制 面 でとても 魅 力 的 なオファーをしてきたこと、2 つ 目 は(こちらの 方 がより 重 要 )<br />

中 国 の 重 要 な 港 から 近 く、 欧 州 からの 部 品 を 搬 入 しやすいことだった。 風 力 発 電 地 域 はだ<br />

いたい 北 京 から 北 東 に 広 がっている。 吉 林 省 や 内 モンゴル 自 治 区 、 甘 粛 省 などだ。 天 津 で<br />

は 多 くの 競 合 相 手 が 同 様 の 理 由 で 工 場 を 設 置 している。<br />

05 年 に 天 津 に 開 設 した 最 初 の 工 場 はナセル 工 場 だった。ナセルはタービンの 頭 部 。 次 の<br />

工 場 はタービンの 主 要 部 品 となる 発 電 機 。3 つ 目 の 工 場 はギアボックス、4 つ 目 はブレード<br />

だった。5 つ 目 として、11 年 6 月 に 完 成 した 吉 林 省 の 工 場 がある。11 年 11 月 末 には、 天<br />

津 に 6 つ 目 の 工 場 を 新 設 した。 新 工 場 では 制 御 装 置 を 生 産 し、 中 国 でのプレゼンスを 一 層<br />

強 化 するという。6 つの 工 場 のうち 5 つが 天 津 にあり、7 つ 目 として 内 モンゴルに 工 場 を 建<br />

設 中 だという。さらに、 北 京 には 中 国 統 括 拠 点 があり、 上 海 に 小 さな 調 達 拠 点 がある。<br />

最 初 に 製 造 したタービンは 850 キロワット(kW)のとても 小 さなもので、10 年 から 2<br />

メガワット(MW)のタービンを 製 造 し 始 めた。これまで 中 国 では 合 計 で 2,300MW に 相 当<br />

する 機 器 を 販 売 し、 同 量 のガメサ 風 力 発 電 機 が 現 在 、 中 国 で 稼 働 している。<br />

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(3) 最 大 の 顧 客 は 5 大 電 力 会 社 、ウインドファームの 共 同 開 発 も<br />

ガメサの 最 大 の 顧 客 は 中 国 国 電 集 団 、 中 国 華 能 集 団 、 中 国 大 唐 集 団 、 中 国 広 東 核 電 集 団 、<br />

中 国 華 電 集 団 という 大 手 電 力 会 社 5 社 。この 5 社 は 05 年 に 政 府 の 政 策 に 従 い、 社 内 に 風 力<br />

エネルギー 部 門 を 創 設 した。これら 企 業 は 再 生 可 能 エネルギー 企 業 を 創 設 したが、 主 に 風<br />

力 発 電 で、ガメサはこれらの 企 業 に 風 力 タービンを 販 売 している。<br />

また、ガメサにとってウインドファームの 開 発 はコマーシャル・ツールで、それは 顧 客<br />

に 既 に 広 く 知 られている。ガメサが 優 位 なのは、 顧 客 にタービンを 販 売 するだけではなく、<br />

顧 客 と 一 緒 にウインドファームを 開 発 していることだ。ウインドファームの 開 発 は 04 年 か<br />

ら 行 っており、これによって、 顧 客 との 太 いパイプを 形 成 していると 強 調 する。<br />

タービンの 生 産 ・ 販 売 ビジネスは 100%ガメサ 出 資 だ。ウインドファーム 開 発 は 顧 客 の 中<br />

国 企 業 との 合 弁 事 業 で、 山 東 省 のウインドファーム 開 発 は 中 国 広 東 核 電 集 団 と 共 同 で 行 っ<br />

ており、 彼 らは 同 時 に 顧 客 でもある。<br />

ガメサの 戦 略 モデルを 整 理 すると、(1) 顧 客 とともにウインドファームの 開 発 を 行 う、(2)<br />

顧 客 の 準 備 が 整 ったらタービンを 販 売 する、(3) 顧 客 との 競 合 を 避 けるため、ウインドフ<br />

ァームの 運 営 は 行 わない、となり、このビジネスモデルは 世 界 のほかの 地 域 でも 同 様 だと<br />

いう。<br />

(4) 現 地 化 の 推 進 で 激 しい 価 格 競 争 に 対 応<br />

現 在 、 中 国 とインドがガメサにとってアジア 最 大 の 市 場 になっている。ガメサの 売 上 高<br />

の 約 30%が 中 国 とインドだ。 中 国 事 業 だけみても、そのシェアは 11 年 9 月 末 時 点 で 総 売 上<br />

高 の 21%まで 拡 大 している。 同 社 は 00 年 に 中 国 に 進 出 し、これまでに 全 国 60 ヵ 所 以 上 に<br />

3,000 基 近 くの 発 電 設 備 を 設 置 してきた。ウインドファーム 開 発 事 業 では、これまでに 参 加<br />

した 合 弁 プロジェクトが 計 2,900MW 超 に 達 している。<br />

中 国 での 従 業 員 は 約 1,200 人 で、99%は 中 国 人 だ。スペインからの 駐 在 員 は 5~6 人 にす<br />

ぎない。95~96%の 機 械 は 現 地 生 産 している。これは、 部 品 をほとんど 輸 入 していないと<br />

いうことだ。それには 2 つ 理 由 がある。1 つは 価 格 競 争 が 厳 しいため、 欧 州 や 米 国 から 部 品<br />

を 輸 入 できないこと。 輸 入 関 税 や 輸 送 費 などが 加 わると、とても 高 額 になり、 厳 しい 競 争<br />

市 場 には 耐 えられない。 現 地 生 産 化 するしか、 生 き 残 る 術 がないのが 実 情 だ。<br />

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もう1 つの 理 由 は 輸 送 時 間 の 短 縮 だ。しかし、 主 な 理 由 は 前 者 のコストの 問 題 で、その<br />

ため 中 国 で 生 産 し、 中 国 で 販 売 するという 現 地 化 戦 略 になる。<br />

10 年 に 中 国 市 場 は 大 きく 成 長 し、10 年 末 の 新 規 設 備 導 入 容 量 は 1 万 8,928MW だった。<br />

これは 10 年 だけの 数 字 で、 累 積 発 電 容 量 は 4 万 4,733MW となり、 米 国 を 抜 き、 世 界 一 の<br />

風 力 発 電 市 場 に 成 長 した。 中 国 は 5 ヵ 年 計 画 で、すべての 分 野 に 目 標 が 設 定 されており、<br />

風 力 発 電 については 15 年 までに 100GW(10 万 MW)という 目 標 が 設 定 されている。これ<br />

は、12 年 から 15 年 の 間 に、 少 なくともほぼ 50GW の 風 力 発 電 設 備 が 増 設 されることを 意<br />

味 し、 非 常 に 重 要 だ。<br />

スペインは 風 力 発 電 で 世 界 4 位 の 市 場 規 模 があり、10 年 末 の 設 備 設 置 容 量 は 21GW。 中<br />

国 は 10 年 の 1 年 間 だけでスペインの 過 去 15 年 間 と 同 等 の 風 力 発 電 設 備 容 量 を 設 置 した。<br />

市 場 の 成 長 率 という 意 味 では、 欧 州 や 米 国 は 中 国 にはとてもかなわない。そして、 中 国 の<br />

次 はインドだ。 中 国 は 毎 年 の 成 長 率 が 高 いため、ガメサにとって 非 常 に 重 要 な 市 場 だが、<br />

11 年 の 新 規 設 備 設 置 容 量 は 10 年 と 比 べスローダウンする 見 込 みだ。とはいえ、まだ、50GW<br />

の 需 要 がある 点 を 忘 れてはならない。<br />

(5) 品 質 重 視 の 傾 向 がプラスに 作 用<br />

中 国 市 場 はこれまで 成 長 一 本 やりできたが、 品 質 をあまり 重 視 してこなかった。その 結<br />

果 、11 年 に 品 質 問 題 が 中 国 企 業 に 突 き 付 けられた。 政 府 は 少 しペースを 緩 め、 成 長 から 品<br />

質 重 視 にかじを 切 ろうとしており、ガメサにとっては 有 利 だ。<br />

2 つ 目 の 問 題 は、 政 府 が 6.1%(インタビュー 時 最 新 統 計 の 11 年 9 月 時 点 )というイン<br />

フレ 率 を 懸 念 し、 資 金 供 給 を 絞 っていることだ。 中 国 の 中 央 銀 行 は 商 業 銀 行 に 対 して、 保<br />

証 金 としてとても 高 いデポジットを 求 めており、そのため、ガメサの 顧 客 への 資 金 供 給 が<br />

不 十 分 になっている。 資 金 供 給 のタイト 化 が 融 資 問 題 に 発 展 している。<br />

生 産 面 での 規 制 という 意 味 では、100% 単 独 資 本 で 生 産 する 場 合 には 70% 以 上 のローカ<br />

ルコンテンツ 規 制 があったが、10 年 で 廃 止 された。 当 初 は、70% 以 上 の 部 品 を 現 地 化 する<br />

ことで、100% 独 資 としてスタートした。<br />

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他 方 、ウインドファームの 開 発 にはだいたい 2 年 ぐらいかかる。 中 央 政 府 や 地 方 政 府 か<br />

らのライセンス 取 得 にも 時 間 がかかる。その 後 、 銀 行 から 必 要 な 資 金 を 調 達 する。さらに、<br />

建 設 会 社 と 調 整 し、 設 備 の 導 入 やサービスステーションの 設 置 、グリッド 接 続 となる。こ<br />

うした 部 分 は 中 国 電 力 会 社 との 合 弁 で 行 っており、ガメサはマイノリティー(50% 未 満 )<br />

となる。<br />

タービン 販 売 後 、3~4 年 の 保 証 をすると、1 つのサイクルが 終 わる。1MW ごとに 100<br />

万 ユーロかかる 世 界 で、 多 くの 投 資 資 金 が 必 要 だ。 多 くのウインドファームを 開 発 できれ<br />

ば、それだけタービンを 販 売 できる。ガメサの 現 在 の 中 国 パートナー 企 業 は 3~4 社 で、タ<br />

ービンの 販 売 先 はすべて 中 国 企 業 だ。<br />

販 売 した 機 材 の 保 証 期 間 は、ものによるが 2~4 年 、 平 均 で 3 年 だ。ガメサはオペレーシ<br />

ョンは 行 わないので、メンテナンスはしない。その 後 、 中 国 企 業 がどのように 利 用 するか<br />

までは 保 証 しない。いくら 良 い 機 材 でも、オイル 交 換 など 十 分 なケアを 行 わなければ、 故<br />

障 につながるが、それは 保 証 とは 別 と 考 えている。<br />

(6) エネルギー 生 産 コストを 重 視<br />

価 格 と 品 質 のバランスについて、 中 国 製 の 機 材 は 外 国 製 より 安 いため、 外 国 製 が 売 れな<br />

いかといえば、そうではない。タービンは 20 年 間 使 用 される。しかも 非 常 に 厳 しい 天 候 状<br />

況 の 下 で 使 用 される。 気 温 が 低 かったり、 高 かったりする。 重 要 なことはエネルギー 生 産<br />

のコストだ。 機 材 のコストではない。もし、20 年 間 使 用 するとすれば、メンテナンス 費 用<br />

も 含 めて 金 額 を 見 積 もり、それを 年 間 のエネルギー 生 産 量 で 割 って 単 価 を 算 出 する。これ<br />

がエネルギーコストだ。<br />

現 在 、ガメサが 販 売 した 機 材 は 99%が 稼 働 している。 中 国 製 の 安 い 機 材 は、この 稼 働 率<br />

が 低 いことが 問 題 だ。ギアボックスや 発 電 機 に 問 題 が 生 じる。このタービンが 20 年 間 でど<br />

れぐらいのエネルギーを 生 産 するかということが 重 要 だ。 機 材 の 価 格 は 安 いに 越 したこと<br />

はないが、 品 質 とのバランスが 重 要 で、 顧 客 は 品 質 が 良 ければ 価 格 が 上 がることも 理 解 し<br />

ている。 中 国 企 業 も 品 質 を 重 視 し 始 めたと 考 えている。そのため、 価 格 と 品 質 のバランス<br />

は 大 変 重 要 だ。<br />

甘 粛 省 では、いくつかのタービンがグリッド 接 続 されていない。タービンには 低 電 圧 を<br />

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保 つという 重 要 な 機 能 があるが、 中 国 製 機 材 はこれができないため、グリッドにつないで<br />

いない。これは 安 い 製 品 だからだ。<br />

ガメサにとって 最 も 重 要 なのは 技 術 なので、 合 弁 事 業 で 風 力 発 電 設 備 を 製 造 することは<br />

ない。そのため、 重 要 な 技 術 を 他 社 とシェアすることはない。 現 地 調 達 するのは 部 品 だけ<br />

だ。<br />

インドには 安 価 な 中 国 製 部 品 を 送 付 している。 鋳 物 などのいくつかの 大 きな 部 品 は 安 価<br />

な 中 国 で 製 造 し、 米 国 にも 送 付 している。しかし、 部 品 だけで、 機 材 はない。 完 成 品 の 輸<br />

出 はコストが 掛 かりすぎる。<br />

中 国 はとても 重 要 な 市 場 のため、 本 社 直 轄 になっており、スペインにいる 社 長 と 直 接 や<br />

り 取 りしている。インドも 同 様 だ。アジア・ 太 平 洋 地 域 の 販 売 統 括 という 意 味 では、シン<br />

ガポールが 地 域 統 括 だ。ベトナム、フィリピンなどビジネスのボリュームが 大 きくない 国<br />

を 対 象 としている。 工 場 がなく、オペレーションしていない 国 はシンガポールで 統 括 して<br />

いる。<br />

日 本 市 場 は 大 きいため、 方 針 などの 決 定 はスペインの 社 長 が 行 うが、 初 期 の 段 階 では、<br />

シンガポールが 担 当 する。 日 本 の 顧 客 と 話 をすることはあるが、 管 轄 はシンガポールだ。<br />

もし、 機 材 を 日 本 に 輸 出 するとすれば、 距 離 的 に 近 いこともあり、シンガポールではなく、<br />

中 国 からというのはあり 得 る。<br />

(7) 今 後 5 年 で 企 業 淘 汰 が 進 む 見 通 し<br />

中 国 市 場 は、15 年 には 世 界 で 最 も 大 きく 重 要 な 市 場 になる。 発 電 容 量 という 意 味 では 世<br />

界 最 大 で、 市 場 競 争 はますます 厳 しくなる。 次 の 60 ヵ 月 で、 多 くの 企 業 が 倒 産 し、 淘 汰 (と<br />

うた)が 進 むだろう。 外 国 企 業 ではドイツのリパワーが 11 年 9 月 に 撤 退 を 決 めた。 中 国 企<br />

業 には 倒 産 するところが 出 てくるだろう。 問 題 は 品 質 だ。12 年 は 淘 汰 のプロセスが 始 まる<br />

年 になるだろう。タフだが、 最 大 の 市 場 。また、 企 業 数 があまりに 多 すぎる。<br />

競 争 力 を 向 上 させる 唯 一 の 方 策 は 技 術 だ。 研 究 ・ 開 発 投 資 を 続 けて、 技 術 を 向 上 させて<br />

いくしかない。 価 格 では( 中 国 企 業 に) 太 刀 打 ちできないため、 技 術 で 上 回 るしかない。<br />

技 術 向 上 とは、より 安 い 電 力 を 生 産 する 機 材 を 作 ることだ。 安 い 機 材 を 作 ることではない。<br />

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顧 客 もより 安 い 電 力 を 生 産 する 機 材 の 調 達 で 利 益 が 上 がればハッピーだ。<br />

ガメサの 戦 略 は、 中 国 に 最 善 の 技 術 を 最 初 にもたらすことだ。 最 後 では 駄 目 だ。 知 的 財<br />

産 権 の 問 題 もあるが、 競 争 していく 唯 一 の 方 法 は 最 善 の 技 術 を 導 入 することだ。 研 究 開 発<br />

(R&D)センターはまだ 中 国 にはないが、 検 討 している。<br />

ガメサは 11 年 9 月 、 中 国 での 地 位 強 化 に 向 けて、 新 しい 風 力 発 電 設 備 の 開 発 用 に 生 産 施<br />

設 を 拡 張 、 適 応 させるため、12 年 中 に 現 在 の 投 資 規 模 を 3 倍 に 引 き 上 げると 発 表 した。09<br />

年 までに 計 4,200 万 ユーロを 生 産 施 設 などに 投 資 してきたが、10~12 年 は 9,000 万 ユーロ<br />

以 上 を 投 資 する 計 画 だ。 中 国 への 投 資 残 高 は 1 億 3,000 万 ユーロ 以 上 となる。これにより、<br />

急 成 長 するアジア 諸 国 の 風 力 発 電 需 要 に 応 えるとともに、 新 モデルの「G9X-2.0(MW)」<br />

や「G10X-4.5(MW)」、 洋 上 風 力 発 電 設 備 の 中 期 的 な 現 地 生 産 ニーズに 対 応 していく 方 針<br />

だ。<br />

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7. シーメンス、 上 海 電 気 との 提 携 で 洋 上 風 力 を 強 化 ( 中 国 ・ドイツ)<br />

中 国 の 風 力 発 電 ビジネスに 関 する 3 回 目 は、 欧 州 企 業 として 後 発 参 入 したドイツの 電 機<br />

大 手 シーメンスについて。2011 年 12 月 の 上 海 電 気 との 戦 略 提 携 締 結 と、 強 みのある 洋 上<br />

風 力 分 野 での 受 注 を 足 掛 かりに、 中 国 市 場 攻 略 強 化 を 急 ぐ。<br />

(1) 上 海 電 気 との 合 弁 企 業 2 社 設 立<br />

中 国 の 風 力 発 電 設 備 容 量 は 10 年 末 の 累 積 で 44 ギガワット(GW)に 達 しており、15 年<br />

に 100GW、20 年 に 200GW に 届 くと 予 測 されている。シーメンスが 風 力 発 電 事 業 に 乗 り 出<br />

したのは、04 年 にデンマークの 風 力 タービン 大 手 ボーナス・エナジーを 買 収 したのがきっ<br />

かけで、 中 国 で 風 力 タービン 生 産 工 場 を 稼 働 させたのは 10 年 になってからと、 外 国 企 業 の<br />

中 でも 後 発 だ。<br />

シーメンスの 中 国 での 事 業 活 動 には 139 年 の 歴 史 があり、 上 海 に 営 業 所 を 開 設 したのは<br />

1904 年 にさかのぼる。インフラ 事 業 やヘルスケアなどさまざまな 事 業 を 展 開 しているため、<br />

このタイミングでの 風 力 事 業 強 化 に 意 外 感 もあるが、シーメンスは 04 年 から、 上 海 電 気 と<br />

共 同 でガスタービン 事 業 を 実 施 するなどしており、これが 風 力 発 電 事 業 を 展 開 する 上 で、<br />

有 利 に 作 用 するとみられる。<br />

シーメンスと 上 海 電 気 は 11 年 12 月 8 日 、 中 国 での 風 力 発 電 事 業 で 戦 略 的 提 携 をするた<br />

めの 合 弁 会 社 2 社 を 設 立 する 契 約 を 締 結 した。 両 社 とも 事 業 期 間 を 20 年 間 とし、 出 資 比 率<br />

はシーメンスが 49%、 上 海 電 気 が 51%。この 契 約 は 中 国 当 局 の 認 可 を 得 る 必 要 がある。<br />

合 弁 2 社 のうち、1 社 は 風 力 発 電 設 備 用 のタービンやナセル、ハブ、 部 品 を 設 計 ・ 開 発 ・<br />

製 造 し、 中 国 市 場 のほか、シーメンスが 世 界 に 持 つ 製 造 拠 点 に 供 給 する。 同 社 はシーメン<br />

スが 09 年 に 上 海 に 設 立 した 100% 子 会 社 のシーメンス・ウインド・パワー・タービンズ<br />

(SWPT)を 母 体 として 合 弁 会 社 化 され、 社 名 を 今 後 スマートパワー・ウインド・タービン<br />

ズに 改 名 する。SWPT は 風 力 発 電 設 備 のキャビンや 部 品 を 設 計 ・ 開 発 ・ 製 造 している。<br />

もう1 社 は、 中 国 での 風 力 発 電 設 備 の 販 売 やマーケティング、プロジェクトのマネジメ<br />

ントと 実 施 、サービスを 中 核 事 業 とする。 社 名 は 暫 定 的 に 上 海 電 気 ウインド・エナジーと<br />

する 予 定 。<br />

今 回 の 提 携 では、シーメンスが 風 力 発 電 用 タービンの 先 進 技 術 やプロジェクトマネジメ<br />

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ントの 国 際 的 なノウハウと 経 験 を 提 供 するほか、 洋 上 風 力 のリーディング 企 業 として、 洋<br />

上 風 力 事 業 の 専 門 的 なノウハウを 提 供 する。 一 方 、 上 海 電 気 は 中 国 市 場 の 顧 客 アクセスや<br />

事 業 展 開 のノウハウを 提 供 する。<br />

シーメンスはほかの 事 業 も 含 めると、 中 国 で 16 の 研 究 開 発 (R&D)センターと 69 の 事<br />

業 会 社 、64 の 地 方 事 務 所 を 展 開 しており、 従 業 員 は 2 万 5,000 人 を 超 え、10 年 には 550<br />

億 ユーロの 収 益 を 上 げた。これまでの 事 業 規 模 と 歴 史 的 な 経 緯 からも、ガメサと 異 なり、R<br />

&D の 現 地 化 という 点 で 抵 抗 感 が 小 さいとみられる。<br />

シーメンスの 取 締 役 で、エネルギー 部 門 の 最 高 経 営 責 任 者 (CEO)のミヒャエル・ズュ<br />

ース 氏 は 今 回 の 長 期 的 な 提 携 について、「 世 界 で 最 も 重 要 な 風 力 発 電 市 場 である 中 国 での 事<br />

業 のブレークスルーになる。われわれの 目 標 は 風 力 発 電 タービンで 世 界 を 主 導 するサプラ<br />

イヤーの 1 つになることだ」と 強 調 した。シーメンスは 中 国 の 風 力 発 電 市 場 参 入 では 後 発<br />

組 で、10 年 の 新 規 導 入 量 では 34 位 。 世 界 全 体 の 風 力 発 電 市 場 では 9 位 だ。<br />

一 方 、 上 海 電 気 の 徐 建 国 ・ 会 長 兼 CEO はシーメンスとの 戦 略 提 携 について、「 中 国 の 風<br />

力 発 電 産 業 の 製 造 能 力 を 改 善 するとともに、 上 海 電 気 の 風 力 発 電 ビジネスを 技 術 、マネジ<br />

メント、 人 材 面 で、 新 たなレベルに 引 き 上 げ、 国 際 的 な 風 力 発 電 ビジネスへの 足 掛 かりを<br />

築 く 上 での 強 みになる。また、 新 たなエネルギー 戦 略 実 施 のチャンスになる」と 述 べ、 同<br />

社 の 今 後 のビジネス 発 展 を 後 押 しするとして、 期 待 を 寄 せている。<br />

なお、シーメンスと 上 海 電 気 は 約 15 年 前 から 発 電 や 送 電 設 備 事 業 で 協 力 関 係 にあり、 同<br />

事 業 で 現 在 、6 社 の 合 弁 会 社 を 所 持 している。<br />

(2) 洋 上 風 力 では 中 国 最 大 のプロジェクトを 受 注<br />

シーメンスが 04 年 に 買 収 したボーナス・エナジーは 洋 上 風 力 のパイオニアで、その 事 業<br />

基 盤 を 引 き 継 いでいるため、 洋 上 風 力 タービンに 強 みを 持 っている。 洋 上 風 力 分 野 に 限 れ<br />

ば、 世 界 でもベスタスに 次 ぐ 地 位 にある。<br />

11 年 6 月 には 龍 源 電 力 (ロンユアンパワー)の 子 会 社 の 江 蘇 ロンユアン・オフショア・<br />

ウインド・パワーから 江 蘇 省 南 通 市 如 東 県 沖 の 中 国 最 大 の 洋 上 風 力 プロジェクト 向 けに、<br />

2.3MW の 風 力 タービン 21 基 を 受 注 した。これには 5 年 間 のサービスとメンテナンス 契 約<br />

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が 含 まれている。シーメンスにとって、 中 国 での 初 めての 総 量 約 50MW に 及 ぶ 洋 上 風 力 発<br />

電 プロジェクトの 受 注 獲 得 は、 同 社 の 再 生 可 能 エネルギー 戦 略 を 飛 躍 的 に 前 進 させた。<br />

再 生 可 能 ネルギー 産 業 協 会 (CREIA)は、 中 国 の 洋 上 風 力 による 発 電 設 備 容 量 は 15 年 ま<br />

でに 5GW、20 年 までに 30GW まで 拡 大 すると 予 測 する。このため、11 年 6 月 の 洋 上 風 力<br />

分 野 での 受 注 について、シーメンスの 風 力 発 電 事 業 部 門 の CEO、ジャン=ピーター・サウ<br />

ル 氏 は「 今 回 の 受 注 は、 急 速 に 成 長 する 中 国 風 力 発 電 市 場 に 参 入 するための 重 要 なステッ<br />

プだ」という。<br />

シーメンスは 国 際 戦 略 の 一 環 として、10 年 に 英 国 、ドイツ、 米 国 、 中 国 に 洋 上 風 力 事 業<br />

のための 事 務 所 を 開 設 した。さらに 同 年 11 月 に、 上 海 に 中 国 で 初 めてのローター・ブレー<br />

ドの 製 造 工 場 を 開 設 し、11 年 春 には 同 じく 上 海 でナセルの 製 造 工 場 も 稼 働 させた。<br />

同 社 にとって 風 力 発 電 は 環 境 ビジネスの 一 部 でもある。10 年 の 同 社 の 環 境 ビジネスの 収<br />

益 は 280 億 ユーロ、11 年 は 300 億 ユーロと 伸 びており、シーメンスを 環 境 配 慮 型 技 術 を 身<br />

に 付 けた 世 界 有 数 のサプライヤーの 地 位 に 押 し 上 げている。 同 社 は 同 社 の 製 品 とソリュー<br />

ションにより、10 年 には 2 億 7,000 万 トン、11 年 には 3 億 2,000 万 トンの 二 酸 化 炭 素 (CO2)<br />

排 出 削 減 を 顧 客 にもたらしたと 強 調 している。<br />

なお、 中 国 風 力 発 電 (CWP)2011 展 示 会 で、シーメンス・ブースの 国 際 調 達 責 任 者 はジ<br />

ェトロに 対 し、「 部 品 供 給 企 業 を 探 しており、 日 本 の 先 進 技 術 は 可 能 性 がある」と、 日 本 企<br />

業 とのビジネスの 可 能 性 を 示 唆 した。<br />

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8. 参 入 障 壁 高 い 太 陽 光 発 電 市 場 ( 中 国 ・ 米 国 ・ 欧 州 )<br />

増 大 するエネルギー 需 要 を 賄 うために、 国 産 エネルギーが 不 可 欠 な 中 国 。 第 12 次 5 ヵ 年<br />

規 画 (2011~15 年 )では、 各 種 再 生 可 能 エネルギー(RE)の 積 極 導 入 が 明 示 された。ただ、<br />

太 陽 光 発 電 は、パネルの 生 産 量 こそ 世 界 の 半 分 を 占 めるが、 導 入 量 は、 累 計 で 世 界 一 にな<br />

った 風 力 発 電 に 比 べるとまだ 微 少 で 成 長 の 余 地 はある。ただ、エンフィニティ(ベルギー)、<br />

ファーストソーラー( 米 国 )、MEMC( 米 国 )などの 進 出 事 例 はあるものの、 欧 米 企 業 にと<br />

っては 上 流 から 下 流 にわたり 参 入 障 壁 が 高 そうだ。<br />

(1) まだ 限 られる 欧 米 企 業 の 進 出 事 例<br />

ファーストソーラーは 11 年 5 月 、 中 電 国 際 新 能 源 (CPNE)と 20 年 までに 中 国 内 で 2<br />

ギガワット(GW) 規 模 の 太 陽 光 発 電 プロジェクトを 共 同 開 発 することに 合 意 した。シリコ<br />

ンウエハーメーカーの 米 MEMC も 同 年 3 月 、 中 国 の JA ソーラーと 合 弁 を 組 み、 揚 州 に 250<br />

メガワット(MW) 規 模 のパネル 工 場 を 建 設 することに 合 意 した。ベルギーの RE 関 連 のデ<br />

ベロッパーのエンフィニティは、 中 国 が 太 陽 光 発 電 市 場 としてはまだ 注 目 されていない 09<br />

年 から 現 地 企 業 と 提 携 関 係 を 結 び、いくつかの 発 電 プロジェクトに 参 画 している( 表 1 参<br />

照 )。<br />

このように、 中 国 を 製 造 拠 点 、 販 売 市 場 ととらえて 進 出 している 欧 米 企 業 の 大 型 案 件 事<br />

例 はいくつかある。 成 長 する 中 国 の 太 陽 光 産 業 を 象 徴 する 動 きだ。しかし、これ 以 外 はま<br />

だ 目 立 った 進 出 事 例 がなく、 今 後 増 える 見 込 みも 薄 い。<br />

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環 境 ・エネルギー 分 野 の 調 査 ・コンサルティングを 手 掛 ける 北 京 真 友 堂 コンサルタント<br />

の 白 文 花 代 表 は「エネルギーは 国 策 に 深 くかかわる 上 、 太 陽 光 発 電 については 自 国 産 業 育<br />

成 の 狙 いもある。パネルは 安 価 な 中 国 製 が 市 場 を 席 巻 している。デベロッパーとして 参 入<br />

する 場 合 も、 土 地 取 得 、 系 統 連 系 、 採 算 性 の 3 点 が 外 資 にとって 障 壁 になろう。 中 国 でビ<br />

ジネスをするには 地 元 政 府 や 地 場 企 業 とのコネクション、 提 携 関 係 を 築 くことが 不 可 欠 だ」<br />

という。<br />

09 年 10 月 、エンフィニティと 中 国 広 東 核 電 集 団 との 戦 略 的 提 携 関 係 の 調 印 式 には、ベル<br />

ギーのファンロンパウ 首 相 ( 当 時 )と 中 国 の 習 近 平 国 家 副 主 席 が 出 席 した。トップセール<br />

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スが 背 景 にあっての 成 果 だと 白 氏 はみる。<br />

既 に 累 計 導 入 量 で 世 界 一 を 誇 る 風 力 発 電 に 比 べて、 太 陽 光 発 電 の 導 入 はここ 2 年 でやっ<br />

と 軌 道 に 乗 ってきた 状 況 だ。 厳 しい 障 壁 を 覚 悟 しつつも、 欧 州 市 場 の 縮 小 を 受 けて 行 き 場<br />

を 失 った 各 国 の 関 連 企 業 としては、 中 国 市 場 の 立 ち 上 がりをとらえて 参 入 の 動 きを 加 速 し<br />

たいところだ。<br />

(2) 太 陽 光 発 電 を 5 年 間 で 15 倍 に<br />

中 国 は 米 国 を 抜 き、 今 や 世 界 最 大 のエネルギー 需 要 国 だ。 今 後 も 伸 び 続 ける 需 要 にどう<br />

対 応 するかは、 国 家 政 策 の 根 幹 にかかわる。10 年 には 原 油 の 輸 入 量 が 国 内 生 産 量 を 超 えた。<br />

現 在 主 流 のエネルギー 源 である 石 炭 でも 不 足 分 は 賄 いきれないとみられている。 原 子 力 発<br />

電 は、 日 本 での 原 発 事 故 を 受 けて、それまで「 積 極 的 に」 推 進 するとしていたスタンスを<br />

「 高 効 率 に」していくとトーンダウンした。そこで 期 待 がかかるのが、 各 種 の RE だ。<br />

第 12 次 5 ヵ 年 規 画 では、 期 間 内 の 新 設 容 量 の 目 標 として、 水 力 12 万 MW、 風 力 7 万<br />

MW 以 上 、 太 陽 光 5,000MW 以 上 を 掲 げている。その 後 、RE のみの 第 12 次 5 ヵ 年 規 画 策<br />

定 が 進 んでおり、 報 道 によると 風 力 10 万 MW、 太 陽 光 1 万 5,000MW の 目 標 が 議 論 されて<br />

いるという。<br />

中 国 の 現 在 の 太 陽 光 発 電 導 入 量 は、10 年 の 設 置 容 量 ベースで 約 900MW と、 世 界 市 場 を<br />

牽 引 する 欧 州 (2 万 9,300MW)や 日 本 (3,622MW)、 米 国 (2,727MW)に 比 べると 小 さい。<br />

それを 今 後 5 年 間 で 15 倍 に 引 き 上 げるとの 目 標 は 意 欲 的 といえよう。クリーンで 持 続 可 能<br />

な 国 産 エネルギーは 不 可 欠 だ。 欧 州 市 場 での 固 定 価 格 買 い 取 り 制 度 (FIT)の 縮 小 や 米 国 市<br />

場 での 保 護 主 義 の 高 まりを 受 けて、 国 内 の 発 電 市 場 を 拡 大 しなければ 中 国 製 パネルの 行 き<br />

場 がなくなる、との 焦 りも 垣 間 見 える。<br />

(3) FIT は 起 爆 剤 になり 得 るか<br />

国 家 発 展 改 革 委 員 会 は 11 年 7 月 、 全 国 レベルの 太 陽 光 発 電 向 けの FIT を 制 定 した( 表 2<br />

参 照 )。 発 電 プロジェクトの 誘 致 に 前 向 きな 江 蘇 省 、 青 海 省 、 山 東 省 が 独 自 の FIT を 制 定 す<br />

る 動 きもある。これらの 省 と 日 照 量 の 豊 富 な 西 北 部 を 中 心 に、メガソーラープロジェクト<br />

が 増 えていくとみられている。<br />

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日 中 経 済 協 会 北 京 事 務 所 電 力 室 の 萬 木 勝 敏 氏 は「 太 陽 光 発 電 プロジェクトの 進 捗 は 必 ず<br />

しも 順 調 には 行 かないという 見 方 も 多 い」と 話 す。「 恐 らく 政 府 にとっては、より 大 規 模 に<br />

導 入 できる 水 力 、 風 力 発 電 の 開 発 に 優 先 度 がある。また、 中 国 では 太 陽 光 発 電 の 適 地 の 西<br />

北 部 と 電 力 消 費 地 の 沿 海 部 が 離 れている。 全 国 版 FIT の 価 格 も、これまでのプロジェクト<br />

での 売 電 価 格 を 基 に 算 出 されたが、それらのプロジェクトでは 地 場 電 力 会 社 がなんとして<br />

も 落 札 するためにかなり 安 価 な 額 を 提 示 した。 十 分 な 採 算 が 見 込 めるのは、 日 照 量 の 豊 富<br />

な 西 北 部 に 限 られるとみられる」と 説 明 する。<br />

北 京 で 開 催 された 太 陽 光 発 電 関 連 の 展 示 会 「インターソーラー・チャイナ」(11 年 12 月<br />

6~8 日 )に 出 展 した 各 企 業 の 評 価 はさまざまだ。「 成 長 はしているが、まだ 時 間 が 必 要 だ」<br />

「 縮 小 したとはいえ、まだ 主 要 な 市 場 は 欧 州 だ」「FIT の 価 格 が 不 十 分 ( 低 すぎる)」といっ<br />

た 慎 重 な 見 方 があった。 他 方 、「 太 陽 光 発 電 システム 全 体 の 価 格 も 下 がっているので、 採 算<br />

は 十 分 取 れる」「 新 設 導 入 量 が 約 500MW だった 10 年 に 比 べて 11 年 は 約 2GW と、1 年 間<br />

で 4 倍 の 成 長 を 遂 げる 市 場 だ。 今 からコミットしておく 必 要 がある」と 意 気 込 む 企 業 もあ<br />

り、 各 企 業 の 戦 略 の 違 いが 出 ていた。<br />

(4) 力 のある 企 業 には 周 辺 機 器 市 場 に 商 機<br />

パネル 市 場 は 中 国 メーカーが 国 内 市 場 をほぼ 席 巻 している。 実 際 に「インターソーラー・<br />

チャイナ」では、 欧 米 のパネルメーカーの 出 展 はなかった。 各 社 とも 11 年 後 半 の 業 績 悪 化<br />

でそれどころではないのと、 米 国 企 業 は 中 国 の 太 陽 光 パネルについてダンピング 提 訴 中 で<br />

あることが 出 展 のなかった 原 因 とみられる。<br />

一 方 、 太 陽 光 発 電 用 のインバーターでは、 世 界 5 位 (10 年 販 売 実 績 ベース)のインジェ<br />

ティーム(スペイン)、9 位 のスプートニク・エンジニアリングス(スイス)が 出 展 した。<br />

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いずれも「 中 国 の 太 陽 光 発 電 インバーター 市 場 で 一 定 のシェアを 確 保 しているメーカーは<br />

まだないので、 今 が 商 機 と 見 込 んで 出 展 した。 信 頼 のある 技 術 と 実 績 では 地 場 企 業 には 負<br />

けない」と 今 後 のビジネス 拡 大 に 期 待 と 自 信 をみせた。インバーターなど 周 辺 機 器 市 場 で<br />

は、 中 国 企 業 のシェアはまだ 低 く、 実 績 と 力 のある 日 米 欧 企 業 には 商 機 があるといえる。<br />

北 京 真 友 堂 コンサルタントの 白 氏 は、コージェネレーション( 熱 電 併 給 )や 細 かな 電 力<br />

制 御 の 技 術 にも 高 いニーズがあると 示 唆 する。 国 家 電 網 などの 配 電 会 社 としては、 不 安 定<br />

な RE を 系 統 につなぎ、さらに 需 給 に 合 わせて 細 かく 電 力 を 制 御 しなければならない。<br />

また、 政 府 としては、エネルギーの 全 体 供 給 量 が 足 りない 中 で、クリーンでエネルギー<br />

効 率 が 高 い 天 然 ガスによるコージェネレーションの 拡 大 を 並 行 して 進 めている。オースト<br />

ラリア、ロシア、カザフスタン、インドネシアなどから、 天 然 ガスを 調 達 するため 積 極 的<br />

に 動 いているという。 高 効 率 のコージェネレーション、 高 度 な 電 力 制 御 は 日 本 の 強 い 分 野<br />

で、こうした RE 開 発 の 裏 の 動 きもみておくことが 肝 要 だ。<br />

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9. 太 陽 光 発 電 市 場 、 中 国 と 米 国 が 急 成 長 ( 中 国 ・ 米 国 ・ 欧 州 )<br />

世 界 の 太 陽 光 発 電 市 場 は、 牽 引 役 だった 欧 州 各 国 で 固 定 価 格 買 い 取 り 制 度 (FIT)の 価 格<br />

が 引 き 下 げられ、 供 給 超 過 の 状 態 が 続 く 見 込 みだ。2011 年 12 月 に 北 京 で 開 催 されたコン<br />

ファレンス「インターソーラー・チャイナ」では、 中 国 、 米 国 市 場 に 活 路 ありとの 見 方 が<br />

示 された。<br />

(1) 徐 々にシェアを 落 とす 欧 州 市 場<br />

これまで 世 界 の 太 陽 光 発 電 市 場 を 牽 引 してきた 欧 州 各 国 で FIT 価 格 が 引 き 下 げられた 現<br />

在 、 業 界 関 係 者 の 大 きな 関 心 を 集 めているのは、 次 の 有 望 な 市 場 はどこかだ。10 年 の 世 界<br />

の 太 陽 光 発 電 市 場 を 概 観 すると、 需 要 約 17 ギガワット(GW)に 対 して、 供 給 能 力 は 約 40GW<br />

と 2 倍 近 くの 供 給 超 過 になっている( 欧 州 太 陽 光 発 電 産 業 協 会 、EPIA)。ただでさえ 買 い<br />

手 市 場 のところに 主 要 市 場 が 縮 小 となると、 関 連 企 業 には 大 打 撃 だ。 新 たな 市 場 の 開 拓 が<br />

急 がれている。<br />

11 年 12 月 6~8 日 に 北 京 で 開 催 されたコンファレンス「インターソーラー・チャイナ」<br />

では、「 厳 しい 状 況 の 中 でも、まだ 欧 州 市 場 は 巨 大 だ」との 声 も 複 数 あった。 確 かに、10 年<br />

までの 世 界 の 太 陽 光 発 電 導 入 量 ( 累 計 )の 74%は 欧 州 が 占 め、 国 別 の 年 間 導 入 量 でもドイ<br />

ツ、イタリア、チェコがトップ 3 を 占 めた。しかし、 中 長 期 的 にみれば、 欧 州 市 場 が 世 界<br />

市 場 に 占 める 割 合 は 徐 々に 縮 小 していく。 代 わって、 今 後 の 世 界 市 場 を 牽 引 すると 見 込 ま<br />

れているのが 中 国 と 米 国 だ。EPIA が 示 したデータでは、 前 年 比 の 太 陽 光 発 電 設 置 量 の 伸 び<br />

率 で、 中 国 と 米 国 がほかの 国 ・ 地 域 を 大 きく 上 回 っている( 図 参 照 )。<br />

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(2) 「チャイナメリカ」が 世 界 市 場 を 牽 引<br />

調 査 会 社 ソーラーバズは、 米 中 両 国 を 将 来 的 な 太 陽 光 発 電 の 超 大 国 として「チャイナメ<br />

リカ(ChinAmerica)」と 表 現 し、15 年 時 点 での 太 陽 光 発 電 導 入 量 ( 累 計 )はそれぞれ、 二<br />

十 数 GW まで 成 長 すると 予 測 した。 豊 富 な 日 照 量 、 政 府 ・ 自 治 体 による 促 進 策 の 存 在 、 今<br />

後 の 太 陽 光 発 電 システムの 価 格 下 落 を 理 由 に 挙 げた。<br />

両 国 は、 国 土 面 積 がほぼ 同 じで、1 日 の 日 照 量 が 1 平 方 メートル 当 たり 5 キロワット 時<br />

(kWh)を 超 える 地 域 が 国 土 の 半 分 以 上 を 占 めている( 添 付 資 料 参 照 )。<br />

中 国 は 11 年 8 月 に 全 国 レベルの FIT を 開 始 した。 一 部 の 省 でも 独 自 に 実 施 している。プ<br />

ロジェクトごとに 補 助 金 を 付 与 する「 金 太 陽 (Golden Sun)モデルプロジェクト」が 11<br />

年 6 月 に 改 訂 され、1 ワット 当 たり 8~9 元 (1 元 = 約 12.1 円 )が 補 助 されることになった。<br />

これは、 鉄 道 の 駅 や 商 業 モールなどに 設 置 するプロジェクトに 適 用 される。<br />

一 方 、 米 国 は、 州 がイニシアチブをとり、 州 法 で 再 生 可 能 エネルギーポートフォリオ(RPS)<br />

を 決 定 している。 多 くの 州 で、ほかの 再 生 可 能 エネルギー(RE)よりも 太 陽 光 発 電 に 高 い<br />

目 標 値 が 設 置 されている。また 財 務 省 が 管 轄 する「RE 助 成 金 プログラム(The 1603<br />

Treasury Grant Program)」( 注 )も、これまで 太 陽 光 発 電 所 の 建 設 を 後 押 ししてきた。<br />

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太 陽 光 発 電 システムのコストは 今 後 、 一 層 の 下 落 が 予 想 されている。ソーラーバズによ<br />

ると、 中 国 では、10 メガワット(MW) 規 模 のシステムの 場 合 、10 年 第 1 四 半 期 の 1 ワッ<br />

ト 当 たり 約 4 ドルから、12 年 第 4 四 半 期 には 2 ドルを 切 るとみられている。 米 国 では、1MW<br />

規 模 のシステムの 場 合 で、 同 じ 期 間 に 約 6 ドルから 3 ドルを 切 る 見 込 みだ。 現 在 ではまだ<br />

割 高 とみられている 太 陽 光 発 電 も、これで 普 及 に 弾 みがつくだろう。<br />

(3) 最 大 の 懸 念 材 料 は 見 えない 政 策 の 先 行 き<br />

しかし、 両 国 とも 懸 念 材 料 を 抱 えている。ソーラーバズは 以 下 のように 指 摘 している。<br />

【 中 国 】<br />

○ 政 策 変 更 の 恐 れ: 発 電 所 が 乱 立 するなど 市 場 が 過 熱 した 場 合 、 政 府 が 抑 制 策 を 取 る 恐 れが<br />

ある。FIT の 価 格 引 き 下 げ、 導 入 量 の 上 限 の 設 定 、 発 電 所 の 建 設 許 可 の 差 し 止 めなどが 考 え<br />

られる。<br />

○ 政 策 の 不 透 明 性 :FIT の 期 間 が 設 定 されていなかったり、 金 太 陽 モデルプロジェクトをは<br />

じめとする 補 助 策 の 12 年 の 具 体 的 内 容 が 未 発 表 だったり、 現 在 実 施 中 の 政 策 に 不 明 な 点 が<br />

多 い。<br />

○ 系 統 接 続 の 問 題 : 電 力 系 統 に 流 れる 太 陽 光 由 来 電 力 が 増 えることで、 系 統 の 安 定 性 が 損 な<br />

われる 恐 れがある。<br />

【 米 国 】<br />

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○ 政 策 変 更 の 恐 れ: 政 府 の 財 政 状 況 の 悪 化 、ソリンドラに 代 表 される 政 府 支 援 企 業 の 破 綻 な<br />

どを 受 け、 政 府 の 補 助 策 が 縮 小 する 恐 れがある。 発 電 所 の 建 設 を 後 押 ししてきた「RE 助 成<br />

金 プログラム」も、12 年 9 月 末 以 降 は 延 長 される 可 能 性 が 低 い。<br />

○ 貿 易 摩 擦 の 影 響 :ソーラーワールド USA を 中 心 とする 米 国 パネルメーカー7 社 は 11 年 10<br />

月 19 日 、 中 国 から 輸 入 されるパネルに 対 してアンチダンピング 税 (ADD)と 補 助 金 相 殺 関<br />

税 (CVD)を 課 すよう 商 務 省 に 提 訴 した。 商 務 省 は 現 在 、 米 側 の 損 害 などを 精 査 している。<br />

ADD と CVD が 中 国 製 品 に 課 されることになれば、 米 国 での 太 陽 光 発 電 システムの 価 格 下<br />

落 のスピードが 緩 む 可 能 性 がある。<br />

○ 買 い 控 えの 恐 れ: 太 陽 光 発 電 システムの 最 終 消 費 者 ( 個 人 、 法 人 、プロジェクトのデベロ<br />

ッパー)が、 価 格 が 下 がり 切 るまで 購 入 を 控 える 恐 れがある。<br />

(4) 日 本 市 場 には 期 待 と 警 戒<br />

今 回 のコンファレンスでは、 震 災 後 の 日 本 の 再 生 可 能 エネルギー 市 場 の 動 向 や 12 年 7 月<br />

から 実 施 予 定 の FIT の 概 要 を 説 明 するセッションもあった( 表 1 参 照 )。 他 方 、 併 設 された<br />

展 示 会 で 中 国 のパネルメーカーに 話 を 聞 くと「 市 場 の 拡 大 は 見 込 めるが、 日 本 市 場 は 日 本<br />

企 業 がほぼ 独 占 していて 入 りにくいと 聞 いている。 電 気 安 全 環 境 研 究 所 (JET)の 規 格 を 取<br />

得 するのも 大 きなハードルだ」と 語 り、まだ 様 子 見 の 段 階 のようだ。<br />

(5) 戦 いの 場 がインバーター 市 場 にも 拡 大<br />

コンファレンスでは 各 国 ・ 地 域 の 市 場 予 測 に 加 えて、 今 後 競 争 が 過 熱 するとみられるイ<br />

ンバーター 市 場 にも 焦 点 が 当 てられた。インバーター 市 場 は 従 来 、 欧 州 企 業 が 世 界 シェア<br />

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のトップ 10 を 独 占 してきた( 表 2 参 照 )。しかし、 調 査 会 社 IMS リサーチは 今 後 、 中 国 と<br />

米 国 市 場 が 拡 大 するにつれてプレーヤーの 顔 ぶれも 変 わってくるだろうと 予 測 する。<br />

中 国 を 含 むアジアではサングロウ、EHE ニューエナジー、エアロシャープ、PCM( 以 上<br />

中 国 )、モーテック( 台 湾 )、ダステック( 韓 国 )が、 米 国 ではアドバンスドエナジー、ソ<br />

レクトリアが、 新 興 のインバーターメーカーとして 注 目 されている。タイプ 別 では 20~500<br />

キロワット(kW)クラスが 主 流 だったが、 今 後 は 500kW 以 上 の 大 型 と、20kW 未 満 の 小<br />

型 クラス、マイクロインバーターがシェアを 伸 ばしていくとみる。<br />

(6) 業 界 全 体 で 太 陽 光 発 電 の 信 頼 性 向 上 を<br />

さまざまな 予 測 が 飛 び 交 う 今 後 の 太 陽 光 発 電 市 場 。 講 演 者 らはそろって、 企 業 にとって<br />

は 厳 しい 時 期 がしばらく 続 き、 業 界 再 編 の 圧 力 も 加 わってくるとみる。 一 方 で、 市 場 自 体<br />

は 安 定 的 に 拡 大 していくとして、 今 後 業 界 は 以 下 の 取 り 組 みに 力 を 入 れるべきだと 説 いた。<br />

○テクノロジーの 進 化 で 太 陽 光 パネルの 導 入 先 アプリケーションを 広 げる。 例 えば、ドイツ<br />

では、 透 明 な 太 陽 光 パネルが 鉄 道 の 駅 の 屋 根 に 設 置 されている。 既 存 の 概 念 にとらわれな<br />

いことが 重 要 だ。<br />

○ 太 陽 光 発 電 システムの 信 頼 性 を 損 なわないよう、 監 視 システムの 精 度 を 向 上 させる。シス<br />

テムの 不 具 合 で 発 電 されなかった 電 力 は 二 度 と 戻 ってこない。 大 規 模 な 投 資 が 関 係 するプ<br />

ロジェクトなら、なおさら 精 緻 なトラブルシューティングの 仕 組 みが 必 要 だ。<br />

○ 公 正 な 競 争 と 市 場 の 開 放 を 進 める。 自 国 産 業 の 保 護 ・ 育 成 を 優 先 して 保 護 主 義 的 政 策 をと<br />

れば、 太 陽 光 発 電 のコストの 下 落 幅 は 縮 小 する。 競 争 も 停 滞 し、 技 術 革 新 にも 悪 影 響 が 及<br />

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ぶ。 結 果 として、そのほかのエネルギー 源 に 価 格 競 争 力 で 負 け、 市 場 自 体 が 廃 れる 恐 れが<br />

ある。<br />

( 注 )「RE 助 成 金 プログラム」は、RE を 生 産 する 商 業 規 模 プロジェクトに 最 大 30%の 税<br />

額 控 除 を 認 める。「 米 国 再 生 ・ 再 投 資 法 」の 一 環 として 09 年 2 月 に 施 行 された。 申 請 期 限<br />

は 12 年 9 月 末 。<br />

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10. 国 内 産 業 を 育 成 、 洋 上 風 力 大 国 を 目 指 す( 韓 国 ・ 欧 州 ・ 米 国 )<br />

2010 年 末 時 点 で、 韓 国 内 の 風 力 タービン 累 積 設 置 容 量 の 9 割 以 上 を 大 手 タービンメーカ<br />

ーのベスタス(デンマーク)、 総 合 エンジニアリング 企 業 のアクシオナ(スペイン)が 占 め、<br />

韓 国 メーカーのシェアは 数 %にとどまる。しかし、AMSC( 米 国 )をはじめとする 欧 米 企<br />

業 と 組 んだ 国 内 大 手 重 工 や、 独 自 技 術 でタービン 製 造 を 始 めたユニスンが、 政 府 主 導 のプ<br />

ロジェクトの 下 で 台 頭 し、 今 後 は 欧 州 大 手 メーカーの 地 位 を 脅 かすことになりそうだ。<br />

(1) 30 年 には 電 力 供 給 量 の 1 割 を 風 力 発 電 で<br />

政 府 は「グリーン 成 長 戦 略 」を 掲 げ、 再 生 可 能 エネルギー(RE) 導 入 拡 大 を 図 るととも<br />

に、 関 連 する 国 内 産 業 の 育 成 を 推 進 している。 中 でも 風 力 発 電 と 太 陽 光 発 電 は、 商 業 的 な<br />

発 電 が 開 始 された 04 年 時 点 では 国 内 の 発 電 量 の 0.1% 程 度 だったが、10 年 末 には 0.9% 程<br />

度 までその 割 合 を 伸 ばしている。また、00 年 に 6 メガワット(MW) 程 度 にすぎなかった<br />

風 力 発 電 の 累 積 設 備 容 量 は、 世 界 風 力 発 電 協 会 (GWEC)によると、10 年 には 379.3MW<br />

に 拡 大 している。<br />

12 年 1 月 には 従 来 の 固 定 価 格 買 い 取 り 制 度 (FIT)に 代 わり、「 新 ・RE 供 給 義 務 化 制 度<br />

(RPS)」が 実 施 され、 発 電 事 業 者 は 電 力 供 給 量 に 占 める RE の 割 合 を 12 年 は 2%まで 高 め<br />

る 義 務 が 課 された。これにより、 同 年 は 2,390MW の 風 力 発 電 が 導 入 されると 見 込 まれてい<br />

る。この 義 務 は 16 年 まで 0.5 ポイントずつ、その 後 は 1.0 ポイントずつ 引 き 上 げられ、22<br />

年 には 10%になる。<br />

韓 国 風 力 産 業 協 会 (KWEIA)は、 政 府 が 許 認 可 手 続 きの 簡 素 化 や 税 制 上 の 優 遇 措 置 など<br />

に 加 え、 大 規 模 プロジェクトを 主 導 することで、30 年 までに 国 内 の 風 力 発 電 の 累 積 設 備 容<br />

量 は 30 ギガワット(GW)になり、30 年 に 想 定 される 電 力 供 給 量 の 10%に 相 当 する 50 テ<br />

ラワット 時 (TWh、テラは 1 兆 ) 程 度 を 供 給 できるようになると 見 込 んでいる。<br />

(2) 19 年 までに 2,500MW の 洋 上 風 力 ファーム<br />

最 も 注 目 すべきは、 西 南 の 海 上 ( 黄 海 )での 国 家 プロジェクトだ。 政 府 は、10 年 11 月 2<br />

日 、「 海 上 風 力 推 進 協 議 会 」を 開 き、「 海 上 風 力 推 進 ロードマップ」を 発 表 。11 年 11 月 11<br />

日 には「 西 南 海 2.5GW 海 上 風 力 総 合 推 進 計 画 」を 発 表 し、 世 界 トップ 3 に 入 る 洋 上 風 力 大<br />

国 を 目 指 すと 宣 言 。19 年 をめどに、 総 発 電 容 量 2,500MW(2.5GW) 規 模 の 洋 上 風 力 ファ<br />

ームを 建 設 する。<br />

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このプロジェクトは 政 府 が 主 導 、 地 方 自 治 体 と 企 業 が 参 加 し、 約 10 兆 ウォン(1 ウォン<br />

= 約 0.07 円 )を 投 資 する 方 針 。3 段 階 にわたって 2.5GW 規 模 のファームを 建 設 する 計 画 で、<br />

第 1 段 階 は、14 年 までに 100MW 規 模 の 実 証 ファームを 建 設 。 第 2 段 階 は、16 年 までに<br />

400MW 規 模 のモデルファームを、そして 最 終 段 階 として、19 年 までに 2,000MW 規 模 の<br />

ファームを 建 設 する。<br />

韓 国 電 力 公 社 と 韓 国 南 東 発 電 、 韓 国 中 部 発 電 、 韓 国 西 部 発 電 、 韓 国 南 部 発 電 、 韓 国 東 西<br />

発 電 、 韓 国 水 力 ・ 原 子 力 の 発 電 事 業 6 社 は、 事 業 推 進 の 主 体 となる 特 別 目 的 会 社 (SPC)<br />

を 設 立 し、 斗 山 重 工 、 大 宇 造 船 海 洋 、サムスン 重 工 業 、ユニスン、 現 代 重 工 業 、 暁 星 重 工 、<br />

DMS、STX 重 工 といった 韓 国 企 業 8 社 が 風 力 タービンを 供 給 する 予 定 。<br />

(3) 風 力 タービンの 4 分 の 1 が 済 州 島 に<br />

本 土 から 南 に 90 キロ 近 く 離 れた 韓 国 最 大 の 島 、 済 州 島 はリゾート 地 として 有 名 だが、 地<br />

元 住 民 が 昔 から 女 性 と 風 と 石 が 多 い「 三 多 島 」と 呼 ぶほど、 風 況 の 良 い 場 所 でもある。10<br />

年 時 点 で、 国 内 の 4 分 の 1 に 相 当 する 約 90MW の 風 力 タービンが 設 置 されているほか、 国<br />

内 企 業 を 中 心 に 170 社 ほどからなる 12 のコンソーシアムが 島 内 でスマートグリッドの 実 証<br />

試 験 を 行 っている、RE 利 用 の 先 進 地 でもある。<br />

済 州 島 は 特 別 自 治 道 で、 島 内 の 開 発 について 国 から 自 治 体 に 大 幅 な 権 限 委 譲 が 行 われて<br />

いる。 通 常 は 3,000 キロワット(kW)を 超 える 開 発 は 知 識 経 済 部 の 許 可 が 必 要 だが、 済 州<br />

島 は 11 年 5 月 23 日 に 施 行 された 特 別 法 により、3,000kW を 超 える 場 合 でも 自 由 に 開 発 で<br />

きることになった。これにより、30 年 までに 2,200MW( 陸 上 200MW、 洋 上 2,000MW)<br />

に 導 入 量 を 増 やし、 島 内 の 消 費 電 力 の 全 量 を 風 力 発 電 で 賄 う 目 標 を 立 てている。<br />

風 力 発 電 は、 風 速 の 変 動 で 発 電 量 が 不 安 定 になるため、 周 波 数 や 電 圧 変 動 など 連 系 する<br />

系 統 への 影 響 が 懸 念 されている。 現 在 、 済 州 島 は 本 土 との 間 に 300MW の 容 量 の 高 圧 直 流<br />

送 電 線 (HVDC)を 敷 設 しているが、12 年 中 に 400MW、17 年 までに 200MW の HVDC<br />

を 追 加 し、 本 土 と 双 方 向 で 融 通 し 合 うことで 不 安 定 な 電 力 を 調 整 することにしている。<br />

(4) 5 分 野 でスマートグリッドの 実 証 試 験<br />

スマートグリッドについては、 以 下 の 5 分 野 で 実 証 試 験 が 進 められている。<br />

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○「スマート 消 費 者 」:スマートメーターを 活 用 し、 各 家 庭 やビルの 電 力 消 費 を 最 適 化 する<br />

とともに、それらが 生 産 ・ 貯 蔵 した 電 力 を 電 力 事 業 者 に 販 売 するモデルを 構 築 する。<br />

○「スマート 輸 送 」: 電 気 自 動 車 の 充 電 設 備 と 関 連 サービスモデル、それらが 電 力 網 に 与 え<br />

る 影 響 を 軽 減 する 輸 送 システムを 構 築 する。<br />

○「スマート RE」: 風 力 発 電 や 太 陽 光 発 電 など 発 電 が 不 安 定 な RE 発 電 を 安 定 的 に 電 力 網 に<br />

接 続 する 技 術 の 実 証 試 験 を 行 う。<br />

○「スマート 電 力 網 」:スマートグリッドの 実 現 に 向 け、その 土 台 となる 次 世 代 電 力 網 を 構<br />

築 する。<br />

○「スマート 電 力 サービス」: 電 圧 や 周 波 数 といった 電 力 品 質 や 利 用 時 間 に 応 じて 電 力 料 金<br />

が 変 わる 計 算 システムを 構 築 する。<br />

(5) 海 外 進 出 を 見 据 え、 技 術 力 蓄 える 地 場 重 工 大 手<br />

10 年 末 の 韓 国 内 の 風 力 タービン 累 積 設 置 容 量 の 9 割 以 上 は、ベスタスとアクシオナの 欧<br />

州 企 業 2 社 が 占 め、ユニスンをはじめとする 韓 国 メーカーは 数 % 程 度 にとどまる。しかし、<br />

欧 米 企 業 との 提 携 や 買 収 により、 韓 国 の 重 工 業 大 手 が 急 速 に 風 力 発 電 関 連 技 術 を 吸 収 して<br />

おり、11 年 以 降 はその 勢 力 図 に 大 きな 変 化 が 生 じることは 確 実 だ。<br />

米 エネルギー 技 術 大 手 の AMSC と 協 力 関 係 にある 韓 国 重 工 大 手 数 社 は、 既 にさまざまな<br />

容 量 のタービンを 開 発 する 能 力 を 持 つ。AMSC 韓 国 法 人 のアン・クォン 常 務 はジェトロに<br />

対 し「できるだけ 早 く 風 力 発 電 技 術 を 取 得 して 国 外 進 出 したい 韓 国 の 重 工 業 大 手 と、 風 力<br />

発 電 に 多 くの 知 見 を 持 ち、 幅 広 い 輸 出 経 験 を 持 つ AMSC は、ウィン・ウィンの 関 係 にある。<br />

政 府 主 導 の 国 内 プロジェクトもあって、 大 手 重 工 勢 は 今 後 シェアを 伸 ばしていくだろう」<br />

と 述 べている。<br />

一 方 、 西 南 の 海 上 ( 黄 海 )で 行 われるプロジェクトに 参 加 するタービンメーカーの 中 で<br />

「 唯 一 の 中 小 企 業 」( 金 斗 勲 社 長 )のユニスンは、これまでに 米 国 、ジャマイカで 納 入 実 績<br />

を 持 つ。「エクアドルやセーシェルでは、ベスタスなどを 抑 えて 落 札 し、 世 界 の 舞 台 でも 認<br />

められ 始 めている」と 金 社 長 は 自 信 をみせる。 同 社 は 技 術 力 で 定 評 がある 一 方 で、 大 手 重<br />

工 に 比 べその 資 金 力 に 不 安 を 残 していたが、11 年 5 月 に 東 芝 と 業 務 提 携 を 結 んだ。「ブラン<br />

ド 力 と 信 用 力 を 得 たことで、シェアにどのような 変 化 が 出 てくるか 注 目 したい」と KWEIA<br />

のイ・イムテク 会 長 は 語 っている。<br />

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11. 太 陽 電 池 の 発 電 市 場 としても 注 目 (マレーシア・ 米 国 ・ 欧 州 )<br />

マレーシアには、ファーストソーラー、MEMC(ともに 米 国 )、Q セルズ、ボッシュ・ソ<br />

ーラー(ともにドイツ)といった 欧 米 の 太 陽 電 池 関 連 の 企 業 が 生 産 拠 点 を 構 え、2011 年 11<br />

月 には、パナソニックがシリコンウエハーからモジュールまでの 一 貫 生 産 工 場 を 建 設 する<br />

と 発 表 した。アジアの 太 陽 電 池 生 産 拠 点 として 台 頭 する 一 方 、11 年 12 月 からは 再 生 可 能 エ<br />

ネルギー(RE)の 固 定 価 格 買 い 取 り 制 度 (FIT)も 導 入 し、 発 電 市 場 としても 名 乗 りを 挙<br />

げた。 現 地 の 展 示 会 ・コンファレンス「リニューアブルエナジー・ワールド・アジア(REWA)<br />

2011」を 通 じて、 可 能 性 と 課 題 、 外 国 企 業 の 動 きを 報 告 する。<br />

(1) 政 府 による 産 業 誘 致 策 が 奏 功<br />

マレーシアには 欧 米 の 太 陽 電 池 関 連 のトップメーカーともいえる 企 業 が 生 産 拠 点 を 構 え<br />

ており、 日 本 からもパナソニックのほか、トクヤマが 13 年 9 月 の 稼 働 を 目 指 してシリコン<br />

生 産 プラントを 建 設 中 だ。<br />

ファーストソーラーは 生 産 拠 点 設 立 の 理 由 について、 熟 練 した 労 働 者 、 既 存 のインフラ<br />

の 充 実 、 国 や 自 治 体 からの 助 成 の 存 在 、を 挙 げている。 特 に、 政 府 が 産 業 誘 致 に 向 けて 手<br />

厚 い 助 成 制 度 を 設 けていることが 奏 功 している。 今 後 も 外 国 企 業 が 参 入 する 可 能 性 がある。<br />

(2) 発 電 市 場 として FIT や 電 化 プロジェクトを 注 視<br />

生 産 拠 点 としての 地 位 を 確 立 しつつあるマレーシアだが、 発 電 市 場 に 目 を 向 けると、 太<br />

陽 光 による 発 電 量 はまだ 政 府 の 公 式 統 計 にも 数 字 が 出 てこないほど 微 量 だ。クアラルンプ<br />

ールで 11 年 9 月 28~29 日 に 開 催 された「REWA2011」に 出 展 していたマレーシア 太 陽 光<br />

発 電 産 業 協 会 (MPIA)によると、「 現 在 の 主 な 太 陽 電 池 の 導 入 先 は、 地 方 や 離 島 の 無 電 化<br />

地 帯 か、 高 額 所 得 者 の 住 宅 などに 限 られている。 大 容 量 を 系 統 に 連 系 させるようなプロジ<br />

ェクトはまだ 動 いていない」という。<br />

マレーシアでは 11 年 12 月 、2 回 の 延 期 を 経 て FIT が 施 行 された。30 年 までに 1,370 メ<br />

ガワット(MW)の 太 陽 光 発 電 の 導 入 を 目 指 す。<br />

REWA2011 の 数 あるコンファレンスのセッションの 中 で、エネルギー 関 係 のコンサルテ<br />

ィング・リスク 管 理 サービスを 行 う DNV(ノルウェー)は、 今 後 の 東 南 アジアの 太 陽 光 発<br />

電 市 場 を 占 うセッションを 担 当 した。 特 に 有 望 とみられるマレーシア、タイ、フィリピン<br />

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を 取 り 上 げ、 各 国 の 政 策 や 電 力 事 情 などを 基 に、それぞれ 以 下 のとおり 評 価 した。<br />

【マレーシア】<br />

○FIT が 11 年 12 月 に 施 行 され、 期 間 は 21 年 間 と 事 業 者 にとっては 妥 当 だ。しかし、 買 い<br />

取 り 価 格 は 不 十 分 。 買 い 取 り 価 格 は 発 電 規 模 により 異 なり、メガソーラープロジェクトで<br />

多 い 1~10MW、10~30MW でそれぞれ 1 キロワット 時 (kWh) 当 たり 0.95 リンギ(1 リ<br />

ンギ= 約 25.2 円 )、0.85 リンギと 発 電 コストと 比 較 して 低 い。 採 算 性 の 観 点 からやや 不 安<br />

がある。<br />

○ただし、 政 府 主 導 で 既 に 北 部 の 無 電 化 地 域 でのプロジェクトがいくつか 進 んでいる。 特 に、<br />

サバ 州 、サラワク 州 などに、 系 統 に 連 系 されていない 約 40 万 世 帯 に 需 要 がある。<br />

○ 外 資 では、 韓 国 の LG エレクトロニクスがメガソーラープロジェクトへの 参 加 を 決 定 して<br />

おり、 今 後 の 盛 り 上 がりが 期 待 できる。<br />

【タイ】<br />

○ 太 陽 光 向 け FIT は 10 年 間 、1kWh 当 たり 6.5 バーツ(1 バーツ= 約 2.5 円 )。 他 国 に 比 べ<br />

て 低 いが、タイのそのほかの RE よりは 優 遇 されている。 加 えて 投 資 案 件 には、 法 人 税 の 免<br />

除 など 外 資 企 業 に 対 する 優 遇 措 置 が 適 用 される。<br />

○73MW 規 模 の 世 界 最 大 級 のプラントが 12 年 3 月 までに 完 成 予 定 など、 市 場 は 徐 々に 活 気<br />

が 出 てきた。 同 プロジェクトには 日 本 から、 三 菱 商 事 が 子 会 社 を 通 じて 投 資 額 の 33.3%を<br />

出 資 、シャープが 薄 膜 シリコンモジュールを 供 給 、 現 地 でのメンテナンス 企 業 を 設 立 する<br />

などで 深 くかかわっている。<br />

○タイの 銀 行 はプロジェクトファイナンスに 慣 れており、 融 資 に 前 向 きでビジネスを 行 いや<br />

すい。<br />

【フィリピン】<br />

○ 約 7,100 の 島 が 存 在 し、そのほとんどが 系 統 非 連 系 だ。ここに 市 場 がある。<br />

○11 年 10 月 に FIT の 価 格 が 決 まり、 施 行 される 予 定 で、タイよりも 1kWh 当 たりドル 換<br />

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算 で 5 セント 高 くなるとみられる(12 年 2 月 3 日 時 点 で 未 決 定 )。<br />

○ 懸 念 は、 産 業 を 牛 耳 る 企 業 の 経 営 者 が 政 権 中 枢 の 親 族 で 固 められており、 賄 賂 がないと 事<br />

業 が 進 まないなど、 政 治 的 リスクがあることだ。 現 に、 延 期 されているプロジェクトも 多<br />

い。<br />

DNV とは 別 に、 太 陽 光 発 電 システムのサプライヤー、コナジー(ドイツ)は 別 のセッシ<br />

ョンで、 各 国 の 現 在 の 電 力 小 売 価 格 もみる 必 要 があると 指 摘 した。 電 力 小 売 価 格 が 高 けれ<br />

ば、 割 高 な 太 陽 光 発 電 でも 価 格 競 争 力 は 出 る。しかし 低 い 場 合 は、わざわざ 割 高 な 電 力 を<br />

導 入 する 根 拠 が 弱 い。コナジーは「フィリピンは 最 も 電 力 料 金 が 高 いので、FIT の 価 格 にか<br />

かわらず RE が 浸 透 していくとみられる。マレーシア、ラオス、タイ、ミャンマー、ブルネ<br />

イは 電 力 料 金 が 安 いので、スピードは 緩 やかだ」と 分 析 した。<br />

(3) パネルで 一 歩 リードの 日 本 、システムで 勝 負 の 欧 州<br />

展 示 会 場 には、マレーシアを 発 電 市 場 とみて、 各 国 企 業 が 出 展 していた。 太 陽 電 池 では<br />

シャープや、トリナ・ソーラー、LDK ソーラー、チャイナ・サナジー(3 社 とも 中 国 )が<br />

ブースを 構 えていた。シャープの 現 地 販 売 法 人 の 担 当 者 は、マレーシア 市 場 に 関 して「 主<br />

な 導 入 先 は、 政 府 が 主 導 する 無 電 化 地 帯 でのプロジェクトだ。 正 確 な 数 字 は 分 からないが、<br />

恐 らく 当 社 が 現 在 の 市 場 シェアの 5 割 ほどを 占 めている。 高 効 率 で 他 社 のパネルよりも 土<br />

地 利 用 面 積 を 圧 縮 できること、 故 障 が 少 ないことが 選 ばれている 理 由 だ」と 話 す。シャー<br />

プは MPIA の 会 頭 も 務 めており、 他 国 メーカーに 比 べ 一 歩 抜 きん 出 た 存 在 だ。<br />

一 方 、 中 国 メーカー3 社 に 聞 いたところ、いずれもまだマレーシアに 拠 点 は 設 立 していな<br />

いという。REWA2011 には、11 年 12 月 施 行 の FIT で 市 場 が 拡 大 することを 見 越 し、なる<br />

べく 早 く 自 社 の 存 在 を 現 地 の 業 界 に 浸 透 させるために 出 展 したという。しかし、トリナ・<br />

ソーラーは、このイベントに 時 機 を 合 わせて 現 地 エネルギー 企 業 と 覚 書 (MOU)を 締 結 し、<br />

マラッカ 州 で 予 定 される 同 国 初 の 10MW 規 模 の 太 陽 光 発 電 所 に、 太 陽 電 池 を 独 占 供 給 する<br />

ことを 決 めている。 中 国 のパネルメーカーは、 現 地 販 売 法 人 設 立 のタイミングを 見 極 めつ<br />

つ、 取 れる 案 件 は 今 から 取 っていくというスタンスのようだ。<br />

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欧 米 パネルメーカーの 出 展 はなかった。マレーシアでの 採 用 実 績 についても、 現 地 電 力<br />

会 社 のテナガ・ナショナルがソーラーワールド(ドイツ)を 挙 げただけだ。まず 攻 略 すべ<br />

きは 自 国 市 場 で、マレーシアはいまだ 製 造 拠 点 としてとらえているようだ。<br />

他 方 、パネル 以 外 では、ターンキー 式 の 発 電 システムの ABB(スイス)、 太 陽 電 池 を 導 入<br />

した 家 庭 用 エネルギー 制 御 システム(HEMS)のシュナイダー(フランス)、 太 陽 電 池 製 造<br />

用 の 真 空 ポンプメーカーのエドワーズ( 英 国 )が 出 展 していた。いずれも 既 にマレーシア<br />

に 現 地 販 売 法 人 を 構 えており、「 市 場 の 盛 り 上 がりに 合 わせて、 実 績 ある 製 品 ・システムを<br />

売 り 込 んでいきたい」と 意 気 込 む。 欧 州 のシステム 企 業 にとって 太 陽 光 発 電 事 業 は、 従 来<br />

のビジネスの 延 長 線 上 という 感 覚 なのだろう。 既 存 のネットワークを 駆 使 した 効 果 的 なビ<br />

ジネス 展 開 が 予 想 される。<br />

各 国 の 関 連 企 業 はマレーシア 市 場 の 立 ち 上 がりをとらえて、さまざまなレベル、やり 方<br />

で 動 き 出 している。MPIA の 出 展 担 当 者 は「インバーターや、ヒューズホルダー、 直 流 配 線<br />

は 今 後 ニーズが 高 まる。この 分 野 で 欧 州 、 韓 国 、 中 国 のメーカーが 既 に 参 入 を 進 めている<br />

半 面 、 日 本 企 業 が 出 てきていないので、ぜひ 良 い 製 品 を 投 入 してほしい」と 日 本 に 期 待 し<br />

ていた。<br />

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