RCE5å¹´éã®æ©ã¿ - UNU-IAS - United Nations University
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Five Years of Regional Centres of Expertise on ESD
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- Page 6 and 7: 目 次 Contents はしがき 1 国
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- Page 51 and 52: ヨーロッパに おけるRCEの
Five Years of<br />
Regional<br />
Centres of<br />
Expertise on ESD
Five Years of<br />
Regional<br />
Centres of<br />
Expertise on ESD
RCE-<br />
ESDに 関 する<br />
地 域 の 拠 点<br />
5 年 間 の 歩 み<br />
国 際 連 合 大 学 高 等 研 究 所<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (ESD)プログラム
世 界 の<br />
国 連 大 学 により 認 定 されている75のRCE<br />
(2010 年 3 月 現 在 )<br />
Europe (22)<br />
Austria<br />
1. Graz-Styria<br />
Belgium<br />
2. Southern North Sea<br />
Germany<br />
3. Hamburg<br />
4. Munich<br />
5. Nuremberg<br />
6. Oldenburger Münsterland<br />
Greece<br />
7. Crete<br />
Ireland<br />
8. Ireland<br />
Netherlands<br />
9. Rhine-Meuse<br />
Portugal<br />
10. Açores<br />
11. Creias-Oeste<br />
12. Porto Metropolitan Area<br />
Russia<br />
13. Nizhny Novgorod<br />
14. Samara<br />
Spain<br />
15. Barcelona<br />
Sweden<br />
16. Skåne<br />
UK<br />
17. East Midlands<br />
18. London<br />
19. North East<br />
20. Severn<br />
21. Wales<br />
22. Yorkshire & Humberside<br />
Asia-Pacific (28)<br />
Cambodia<br />
23. Greater Phnom Penh<br />
China<br />
24. Anji<br />
25. Beijing<br />
India<br />
26. Bangalore<br />
27. Delhi<br />
28. Guwahati<br />
29. Kodagu<br />
30. Lucknow<br />
31. Pune<br />
Indonesia<br />
32. Bogor<br />
33. East Kalimantan<br />
34. Yogyakarta<br />
Japan<br />
35. Chubu<br />
36. Greater Sendai<br />
37. Hyogo-Kobe<br />
38. Kitakyushu<br />
39. Okayama<br />
40. Yokohama<br />
Korea<br />
41. Incheon<br />
42. Tongyeong<br />
Kyrgyzstan<br />
43. Kyrgyzstan
RCE<br />
Malaysia<br />
44. Penang<br />
Fiji and Pacific Islands<br />
45. Pacific<br />
Philippines<br />
46. Cebu<br />
47. Ilocos<br />
48. Northern Mindanao<br />
Thailand<br />
49. Cha-Am<br />
50. Trang<br />
Middle East & Africa (13)<br />
Egypt<br />
51. Cairo<br />
Ghana<br />
52. Ghana<br />
Jordan<br />
53. Jordan<br />
Kenya<br />
54. Greater Nairobi<br />
55. Kakamega-Western Kenya<br />
Malawi<br />
56. Zomba<br />
Mozambique<br />
57. Maputo<br />
Nigeria<br />
58. Kano<br />
59. Lagos<br />
South Africa<br />
60. KwaZulu Natal<br />
61. Makana & Rural Eastern<br />
Cape<br />
Swaziland<br />
62. Swaziland<br />
Uganda<br />
63. Greater Mbarara<br />
Americas (12)<br />
Argentina<br />
64. Chaco<br />
Brazil<br />
65. Curitiba-Paraná<br />
Canada<br />
66. British Columbia<br />
(North Cascades)<br />
67. Greater Sudbury<br />
68. Montreal<br />
69. Saskatchewan<br />
70. Toronto<br />
Colombia<br />
71. Bogotá<br />
Guatemala<br />
72. Guatemala<br />
Mexico<br />
73. Western Jalisco<br />
USA<br />
74. Grand Rapids<br />
75. North Texas
目 次<br />
Contents<br />
はしがき 1<br />
国 際 連 合 大 学 学 長 からのメッセージ 1<br />
国 際 連 合 大 学 高 等 研 究 所 所 長 からのメッセージ 3<br />
謝 辞 4<br />
巻 頭 言 5<br />
環 境 大 臣 からのメッセージ 5<br />
ユネスコ 国 連 教 育 優 先 課 題 調 整 部 長 からのメッセージ 7<br />
国 際 連 合 環 境 計 画 (UNEP) 環 境 教 育 訓 練 主 任 からのメッセージ 9<br />
国 際 大 学 協 会 副 会 長 からのメッセージ 11<br />
アジア 学 術 会 議 事 務 局 長 からのメッセージ 12<br />
アフリカ 大 学 協 会 事 務 局 長 からのメッセージ 13<br />
国 連 DESDに 関 するユネスコハイレベル 委 員 会 メンバーからのメッセージ 15<br />
ヨーク 大 学 ユネスコチェアからのメッセージ 17<br />
1. 国 連 大 学 RCEイニシアティブ― 背 景 と 展 開 19<br />
RCEの 誕 生 と 発 展 についての 一 私 見 37<br />
2. RCEの 発 展 39<br />
アジア 太 平 洋 地 域 におけるRCEの 発 展 40<br />
ヨーロッパにおけるRCEの 発 展 44<br />
北 中 米 地 域 におけるRCEの 発 展 48<br />
ラテンアメリカにおけるRCEの 発 展 54<br />
南 部 アフリカにおけるRCEの 発 展 58<br />
RCEのテーマ 別 ネットワーク 62<br />
3. RCEの 活 動 をふりかえって 69<br />
インドからの 視 点 :RCEプネおよびRCEコダグ 70<br />
日 本 のRCE 76<br />
RCE 統 営 (トンヨン)の 経 験 : 政 府 との 協 力 80<br />
RCEと 高 等 教 育 機 関 の 関 係 82
4. RCE 優 良 実 践 例 85<br />
ヨーロッパ 86<br />
アジア 90<br />
アメリカ 94<br />
アフリカ 96<br />
付 録 99<br />
略 語 ・ 用 語 リスト 99<br />
参 考 文 献 101<br />
RCE 一 覧 103<br />
参 考 資 料 109<br />
ウブントゥ 宣 言 (2002 年 ) 109<br />
ボン 宣 言 (2009 年 ) 111
はしがき<br />
Preface<br />
国 際 連 合 大 学 学 長 からのメッセージ<br />
地 域 の 拠 点 (Regional Centre of Expertise:RCE) 運 動 が 生 まれ<br />
てから5 年 、この 間 に 運 動 は75のメンバーを 擁 するまでに 成 長 しま<br />
した。 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (Education for Sustainable<br />
Development:ESD)にかかわる 多 くの 重 要 な 分 野 において、RCEは<br />
実 績 を 残 してきました。これには、ESDの 題 材 の 設 定 や 開 発 、 持 続 可<br />
能 な 開 発 に 関 連 した 学 習 活 動 の 考 案 と 実 践 、ESDに 関 連 した 政 策 に<br />
関 する 政 策 立 案 者 への 助 言 、それぞれの 地 域 における、あるいは 地 域<br />
を 超 えたESDと 持 続 可 能 な 開 発 (Sustainable Development:SD)<br />
のための 協 力 関 係 の 促 進 などが 挙 げられます。<br />
RCEではこの5 年 間 に、 持 続 可 能 な 未 来 に 向 けた 学 習 システムを 推 し<br />
進 める 多 くの 刺 激 的 なプロジェクトに 着 手 してきました。たとえば、 南<br />
アフリカの2つのRCE、KwaZulu Natal(クワズールー・ナタール)およ<br />
びMakana and Rural Eastern Cape(マカナおよび 東 ケープ 郊 外 )<br />
では、 持 続 可 能 な 開 発 のための 学 習 に 関 して「オープン・プロセス・フ<br />
レームワーク(Open Process Framework)」というプロジェクトを 開<br />
発 し、 試 験 的 に 実 施 しています。このアプローチでは、RCEのパートナ<br />
ーらは、 学 習 や 変 化 に 対 する 単 純 化 された 因 果 関 係 的 な 方 向 づけか<br />
ら 離 れ、むしろリスクを 抱 える 問 題 に 取 り 組 み、フィールドワーク 調 査<br />
を 実 際 に 経 験 し、 情 報 を 求 め、 問 題 に 関 する 報 告 と 問 題 への 対 処 を<br />
行 うことによって 学 習 を 進 めていきます。<br />
RCE 統 営 (トンヨン)( 韓 国 )では、「 世 界 への 架 け 橋 年 間 ユースコン<br />
テスト(Bridge to the World Annual Youth Contest)」というプ<br />
ロジェクトが 開 始 されました。このプロジェクトでは 地 域 規 模 ・ 世 界 規<br />
模 の 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する 研 究 テーマの 下 、 中 等 学 校 の 生 徒 が<br />
チームでコンテストに 応 募 し、 自 主 研 究 した 提 案 をもって 他 のRCEを<br />
訪 問 します。コンテストは、 持 続 可 能 な 未 来 に 向 けて 若 者 のリーダー<br />
シップとRCE 間 のネットワークを 強 化 する 目 的 で 毎 年 実 施 されてい<br />
ます。RCE 統 営 (トンヨン)の 強 力 なESDプログラムが 評 価 され、 統 営<br />
は2007 年 に 韓 国 文 部 省 から 生 涯 学 習 都 市 に 指 定 されました。<br />
2008 年 9 月 には、RCE Penang(ペナン) 事 務 局 のあるマレーシア<br />
科 学 大 学 (Universiti Sains Malaysia:USM)が、マレーシア 高<br />
等 教 育 省 から 優 秀 な 教 育 プログラムを 推 進 する 大 学 Accelerated<br />
Programme for Excellence(APEX) 大 学 に 選 ばれました。これに<br />
は、 当 RCEにおけるその 先 導 的 な 役 割 が 評 価 されたことも 関 係 してい<br />
ます。 現 在 、USMは 潤 沢 な 資 金 とカリキュラムデザインなどの 領 域 にお<br />
ける 自 律 性 を 活 かし、ワールドクラスの 大 学 に 変 身 を 遂 げるべくESD<br />
の 原 則 に 基 づいて 大 学 改 革 を 推 し 進 めており、 地 域 社 会 とのかかわ<br />
りを 一 層 強 化 しつつあります。<br />
1
RCEの 活 動 の 多 くは、 地 域 社 会 、 社 会 学 習 、さまざまな 知 識 形 態 の 尊<br />
重 という 精 神 を 中 心 に 構 築 されています。RCE 運 動 の 土 台 となってい<br />
る 委 員 会 の 名 称 にもなっているウブントゥ(Ubuntu)( 他 者 への 思 い<br />
やりの 精 神 )という 言 葉 があります。 大 司 教 Desmond Tutuはウブン<br />
トゥの 定 義 を 次 のように 語 っています。<br />
ウブントゥをもつ 人 は 開 放 的 で、いつでも 他 者 のためになろ<br />
うとし、 他 者 を 肯 定 している。 他 者 の 能 力 や 善 意 に 対 して 脅<br />
威 を 感 じることがない。なぜなら、ウブントゥをもつ 人 は、 自<br />
分 がより 大 きな 全 体 の 一 部 であること、 他 者 が 屈 辱 を 受 け<br />
貶 められたり、 苦 しめられ 抑 圧 されたりすれば、それは 自 分<br />
が 貶 められたことになるのだということを 知 っており、その<br />
認 識 から 生 まれる 正 しい 自 信 を 身 につけているからである。<br />
バルセロナや 横 浜 、サスカチュワン、ペナンだけでなく、 他 のさまざまな<br />
地 域 においてRCEのパートナーらをひとつにし、 既 存 のRCEの 取 り 組<br />
みを 促 進 し、 動 かしているのは、この 共 同 体 精 神 です。RCEとしての 認<br />
定 を 求 めている 候 補 地 域 に 対 して、 先 輩 RCEはメンターとなり 助 言 を<br />
します。 地 域 内 外 のESD 従 事 者 その 他 関 係 者 (ステークホルダー)を<br />
ひとつにまとめながら、RCE 共 同 体 は 成 長 を 遂 げつつあります。<br />
RCEとその 支 援 者 らがこのような 大 きな 発 展 を 遂 げたことを 祝 福 する<br />
とともに、その 持 続 可 能 性 への 努 力 が 実 を 結 ぶことを 願 っています。わ<br />
が 国 際 連 合 大 学 高 等 研 究 所 (<strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong>)の 同 僚 、 世 界 各 国 のパート<br />
ナーやRCEは、ESDの 概 念 を 明 確 な 形 で 具 現 化 するために 一 致 協 力<br />
して 努 力 してきました。 本 書 を 読 めば、そうした 努 力 がおわかりいただ<br />
けると 思 います。<br />
国 際 連 合 大 学 学 長<br />
国 際 連 合 事 務 次 長<br />
コンラッド・オスターヴァルダー<br />
Konrad Osterwalder<br />
2
国 際 連 合 大 学 高 等 研 究 所 所 長 からのメッセージ<br />
人 間 がもたらした 気 候 や 食 糧 安 全 保 障 、 金 融 ・ 経 済 に 関 する 近 年 の<br />
世 界 的 危 機 は、 弱 者 である 貧 しい 人 々や 権 利 を 剥 奪 された 人 々をさ<br />
らに 社 会 の 周 辺 へと 追 いやる 結 果 となっています。 相 互 に 結 びついた<br />
こうした 複 雑 な 問 題 を 解 決 するには、 持 続 可 能 な 社 会 を 作 り 上 げるべ<br />
く 国 際 社 会 が 創 造 的 な 解 決 策 を 見 いだすことが 必 要 です。ここ 数 年<br />
の 出 来 事 は、 貧 困 や 気 候 変 動 、 生 物 多 様 性 、 水 、 健 康 といった 問 題 に<br />
対 し、より 喫 緊 に、かつ 革 新 的 なアイデアで 対 処 することの 根 本 的 重<br />
要 性 を 改 めて 認 識 させることになりました。こうした 問 題 はいずれも、<br />
学 習 パートナーシップなしには 対 処 不 可 能 であると 国 際 連 合 大 学 高<br />
等 研 究 所 (<strong>United</strong> <strong>Nations</strong> <strong>University</strong> Institute of Advanced<br />
Studies:<strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong>)は 考 えています。<br />
ESDの 意 義 は 広 く 認 識 されています。いくつもの 重 要 な 国 際 的 プ<br />
ロセスを 経 て、 第 57 回 国 連 総 会 (2002 年 )では、 持 続 可 能 な 開 発<br />
のための 教 育 の10 年 (Decade of Education for Sustainable<br />
Development:DESD)を2005 年 から 開 始 するという 決 議 が 採 択 さ<br />
れました。<br />
2003 年 に 国 連 大 学 高 等 研 究 所 は、ESDおよびDESDの 抱 える 難 題<br />
へのひとつの 答 えとしてESDに 関 するプログラムを 導 入 しました。この<br />
プログラムでは 研 究 開 発 を 通 して、DESDの 目 標 実 現 に 向 けた 行 動 を<br />
促 すことを 目 指 しており、ESDに 関 するRCEの 構 築 もこのプログラムの<br />
主 要 なプロジェクトのひとつとなっています。<br />
最 初 に 作 られた7カ 所 のRCEは、 名 古 屋 で 開 かれた 国 連 大 学 ・ユネス<br />
コ 共 催 の 国 際 会 議 「グローバリゼーションとESD」において2005 年 6<br />
月 に 国 連 大 学 によって 認 定 されました。 現 在 、RCE 共 同 体 は75のメン<br />
バーを 擁 するまでになっています。<br />
われわれはRCEを、 国 連 大 学 高 等 研 究 所 の 活 動 にとって、また 国 際<br />
社 会 が 行 動 を 起 こす 上 で 何 よりもふさわしい 重 要 なパートナーと 考 え<br />
ています。RCEは、 学 術 機 関 や 教 育 機 関 が 互 いに 協 力 するための 新<br />
たな 方 法 の 開 発 に 貢 献 しており、また 世 界 各 国 から 集 められた 最 高<br />
の 知 識 を 利 用 して 地 域 社 会 のニーズに 応 えるべく 戦 略 的 に 位 置 づけ<br />
られています。さらに、それぞれの 地 域 におけるさまざまな 種 類 の 知 識<br />
の 発 展 や 統 合 に 助 力 しています。 過 去 2 年 間 の 発 展 の 成 果 は、 持 続 可<br />
能 性 の 主 要 領 域 における 地 域 間 の 協 力 に 向 けて、RCEのもつ 潜 在 的<br />
可 能 性 をはっきりと 示 しています。<br />
5 年 間 の 発 展 の 中 で、RCE 共 同 体 は 長 い 道 のりを 歩 んできました。<br />
いくつもの 難 題 に 挑 み、 苦 闘 を 繰 り 返 すことで、 新 たな 発 見 と 革 新<br />
という 成 果 を 手 に 入 れました。 本 書 は、RCEとそのパートナーから<br />
得 た 教 訓 を 地 域 レベルおよび 国 際 レベルで 共 有 するためのもので<br />
す。DESDの 残 りの5 年 間 、さらにその 先 の、RCE 共 同 体 のおおいな<br />
る 成 功 を 祈 念 しています。<br />
3<br />
国 際 連 合 大 学 高 等 研 究 所<br />
所 長<br />
ゴヴィンダン・パライル<br />
Govindan Parayil
謝 辞<br />
Acknowledgements<br />
DESDの 折 り 返 し 点 にあたる 重 要 なこの 年 に、 本 書 刊 行 の 実 現 にご 協 力 いただいた 方 々に 深<br />
く 感 謝 いたします。なによりもまず、 国 連 大 学 への 拠 出 金 を 賜 っている 日 本 の 環 境 省 には、ESD<br />
への 継 続 的 なご 支 援 と 取 り 組 みに 対 して 深 甚 なる 感 謝 を 申 し 上 げたいと 思 います。また、 国 連<br />
および 国 連 大 学 諸 機 関 や 世 界 各 国 の 教 育 機 関 および 科 学 アカデミーにおいてRCEのイニシ<br />
アティブを 支 援 してくださるパートナー、なかでもウブントゥ 同 盟 (Ubuntu Alliance)および<br />
RCEのためのウブントゥRCE 審 査 委 員 会 (Ubuntu Committee of Peers for the RCEs)の<br />
メンバーに 多 大 なる 感 謝 の 意 を 表 します。われわれを 導 き、RCEを 通 して 何 が 実 現 できるか、<br />
そのビジョンをわれわれにもたらしめ、さらにこのビジョンを 現 実 のものにするためにさまざま<br />
な 形 で 支 援 の 手 を 差 しのべてくださったすべての 方 々に 感 謝 します。<br />
RCEの 概 念 が 世 界 のさまざまな 地 域 のESD 従 事 者 その 他 関 係 者 の 懸 念 や 憂 慮 と 共 鳴 しなか<br />
ったならば、またDESDの 前 半 期 にRCEの 世 界 的 ネットワークが 劇 的 な 成 長 を 遂 げなければ、<br />
本 書 が 実 現 することはなかったでしょう。これもみな、 持 続 可 能 な 開 発 という 共 通 の 目 標 に 向<br />
かって、 取 り 組 みがいのある 問 題 を 提 起 し、RCEで 採 り 上 げるべき 刺 激 的 な 研 究 を 提 案 し、 率<br />
先 して 新 しいRCEを 設 立 し、 専 門 知 識 や 資 源 だけでなくフラストレーションや 苦 労 をも 分 かち<br />
合 うことでわれわれの 活 動 を 支 え 続 けてくれるRCE 共 同 体 の 多 くの 仲 間 のおかげだと 考 えて<br />
います。RCEとの 共 同 作 業 は、たえず 省 察 しながら 学 び 続 けていく、やりがいのある 仕 事 です。<br />
さらに、RCE 設 立 初 期 の 困 難 な 時 代 に、RCEイニシアティブの 立 ち 上 げに 尽 力 してくださった<br />
国 連 大 学 のかつての 同 僚 や 博 士 課 程 研 究 員 およびポスドク 研 究 員 、インターンの 方 々にも 感<br />
謝 しています。とりわけ、 学 長 としてだけでなくESDチームの 最 も 熱 心 なメンバーとして、われわ<br />
れの 活 動 を 支 えてくださったハンス・ファン・ヒンケル(Hans van Ginkel) 氏 には 深 く 感 謝 し<br />
ています。また、チームを 離 れてもそれぞれの 立 場 でESDに 継 続 的 に 取 り 組 み、その 忍 耐 と 積<br />
極 的 な 行 動 力 で 未 だ 幼 胚 期 、 揺 籃 期 にあったRCEネットワークを 育 ててくださった 鈴 木 克 徳<br />
さん、 片 山 万 喜 さん、 秋 元 波 さんの 各 氏 にも 特 に 感 謝 の 意 を 表 したいと 思 います。まだ 歴 史 の<br />
浅 い、 多 くの 難 題 を 抱 えるネットワークではありますが、これからもRCEとともに 学 び 続 けること<br />
で、RCEイニシアティブのもつ 潜 在 的 可 能 性 を 現 実 のものにできるとわれわれは 信 じています。<br />
最 後 に、 本 書 の 作 成 にあたってご 支 援 いただいたすべての 方 々に 心 から 感 謝 申 し 上 げます。<br />
2010 年 5 月<br />
国 連 大 学 高 等 研 究 所 (<strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong>)<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (ESD)プログラム<br />
グローバルRCEサービスセンター<br />
名 執 芳 博<br />
ジナイダ・ファディバ<br />
アウレア・クリスティン・ 田 中<br />
マリオ・タブキャノン<br />
高 木 宏 明<br />
望 月 要 子<br />
安 田 左 知 子<br />
サンプリティ・アイパンジグリー<br />
4
巻 頭 言<br />
Foreword<br />
環 境 大 臣 からのメッセージ<br />
この 度 、 国 連 大 学 において、「RCE-ESDに 関 する 地 域 の 拠 点 5 年<br />
間 の 歩 み」を 取 りまとめられたことを 嬉 しく 思 います。また、 国 連 大 学 に<br />
おいて 日 頃 から 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (ESD)プログラムに 精<br />
力 的 に 取 り 組 まれていることについても、この 場 を 借 りて 深 く 感 謝 申 し<br />
上 げます。<br />
ESDを 推 進 するため、 我 が 国 は、2002 年 のヨハネスブルグサミットに<br />
おいて、「 国 連 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 」(UNDESD)を<br />
制 定 することを 提 案 し、その 年 の 国 連 総 会 で2005 年 からの10 年 間<br />
をUNDESDにする 旨 が 決 議 されました。2010 年 は、このUNDESD<br />
の 前 半 の5 年 を 終 了 し、 後 半 の5 年 に 突 入 する 年 であり、 大 きな 節 目<br />
の 年 です。<br />
地 球 温 暖 化 をはじめとする 環 境 問 題 は、 世 界 中 で 関 心 が 高 まってお<br />
り、 世 界 全 体 で 協 力 して 対 処 すべき 人 類 共 通 の 課 題 となっています。<br />
気 候 変 動 については、 世 界 中 の 国 々が 京 都 議 定 書 後 の 公 平 かつ 実<br />
効 性 のある 枠 組 みの 構 築 に 向 け、 精 力 的 に 国 際 交 渉 に 取 り 組 んでい<br />
ます。 我 が 国 としても、 温 室 効 果 ガスを1990 年 比 で25% 削 減 するとの<br />
野 心 的 な 目 標 を 掲 げ、 国 際 交 渉 に 積 極 的 に 貢 献 するとともに、 達 成 に<br />
向 けた 取 組 を 強 力 に 進 めています。 今 年 の3 月 には、 地 球 温 暖 化 対 策<br />
基 本 法 案 を 国 会 に 提 出 したところであり、この 基 本 法 により、これまで<br />
の 化 石 燃 料 に 依 存 した 社 会 を 脱 化 石 燃 料 社 会 に 変 えていく、そのよ<br />
うな 道 筋 をつけていきたいと 思 います。その 際 、 日 々の 暮 らしの 中 で 私<br />
たち 一 人 ひとりがいかにCO2の 排 出 削 減 を 進 めるかが 重 要 なポイン<br />
トとなります。このため 政 府 においては、「チャレンジ25キャンペーン」<br />
として、 省 エネ 製 品 の 選 択 を 始 めとする6つのチャレンジと25のアクシ<br />
ョンを 掲 げ、 一 人 ひとりによる 具 体 的 な 行 動 を 呼 びかけています。<br />
また、 今 年 は 国 際 生 物 多 様 性 年 であり、 生 物 多 様 性 の 分 野 にも 世 界<br />
の 注 目 が 集 まっています。 多 様 な 生 きものたちが 地 球 の 歴 史 上 かつて<br />
ない 速 度 で 絶 滅 しつつある 中 、10 月 には 日 本 の 愛 知 県 名 古 屋 市 で 生<br />
物 多 様 性 条 約 第 10 回 締 約 国 会 議 (COP10)が 開 催 されます。 我 が 国<br />
は、 未 来 の 世 代 へといつまでも 地 球 のいのちをつないでいくために、<br />
生 物 多 様 性 を 守 る 取 組 を 国 内 外 で 強 化 しており、「 地 球 いきもの 応 援<br />
団 」などを 通 じて 一 人 ひとりの 行 動 を 呼 びかけています。<br />
このようにいずれの 分 野 においても、 世 界 的 に 取 組 を 進 めることが 大 切<br />
であると 同 時 に、 環 境 問 題 の 解 決 のためには、 大 本 にある 世 界 中 の 私 た<br />
ち 一 人 ひとりの 行 動 が 重 要 な 鍵 を 握 っています。ESDは、そうした 行 動<br />
に 結 び 付 けていくための 重 要 な 基 盤 をつくるものだと 考 えています。<br />
5
こうした 考 えの 下 、 日 本 国 環 境 省 では、UNDESDの 提 案 国 とし<br />
て、ESDを 推 進 するため、2003 年 から 国 連 大 学 に 拠 出 を 行 っていま<br />
す。この 拠 出 金 を 元 に、 現 在 国 連 大 学 において、ESDプログラムとして、<br />
• 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 に 関 する 地 域 拠 点 (RCE)<br />
づくりの 推 進<br />
• アジアにおける 大 学 院 レベルでの 環 境 関 連 人 材 の 育 成<br />
を 実 施 していただいています。<br />
ESDの 取 組 においては、 地 域 の 多 様 な 関 係 者 が 持 続 可 能 な 社 会 に<br />
向 けた 地 域 の 課 題 解 決 のために 対 話 し 互 いに 協 力 して 活 動 できる 場<br />
が 必 要 です。RCEは、まさにそのような 地 域 の 連 携 ・ 協 力 を 促 進 する<br />
拠 点 であり、 極 めて 重 要 であると 考 えています。<br />
国 連 大 学 の 御 尽 力 により、 今 や 世 界 各 地 に75のRCEが 形 成 されてお<br />
り、1カ 国 1カ 所 、 世 界 で200カ 所 のRCEを 形 成 するとの 目 標 に 向 け 着<br />
々と 進 んでいます。 日 本 国 内 においては、 既 に6 地 域 がRCEに 認 定 され<br />
ており、 学 校 、 市 民 団 体 、 企 業 、 公 民 館 など 様 々な 組 織 や 市 民 により、<br />
「 持 続 可 能 な 農 業 」や「 水 源 地 域 の 里 山 保 全 」などをテーマとした 様<br />
々な 取 組 が 進 んでいます。 今 後 も、 日 本 国 環 境 省 では、 国 連 大 学 と 連<br />
携 しつつ、RCEを 始 めとするESDの 取 組 を 推 進 してまいりたいと 考 え<br />
ています。<br />
この 書 籍 が、 持 続 可 能 な 社 会 の 構 築 に 関 心 を 持 つ 世 界 の 人 々の 間<br />
で 広 く 読 まれることを 期 待 します。<br />
環 境 大 臣<br />
小 沢 鋭 仁<br />
6
ユネスコ 国 連 教 育 優 先 課 題 調 整 部 長 からのメッセージ<br />
新 しい 千 年 期 の 最 初 の10 年 を 終 え、 次 の10 年 に 入 ろうとする 今 、<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (Education for Sustainable<br />
Development:ESD)の 必 要 性 はより 一 層 明 白 なものとなりつつあ<br />
り、 実 際 問 題 として、より 緊 急 性 を 帯 びてきています。この 世 界 の 未 来<br />
を 思 い 描 くとき、 次 世 代 のリーダーらの 決 断 はさらに 多 くの 人 々の 生<br />
活 に 影 響 を 及 ぼすことになり(2040 年 には 世 界 人 口 は90 億 人 になる<br />
と 予 測 されています)、その 一 方 で、 人 口 の 膨 張 によって 生 じた 需 要<br />
を 満 たすための 資 源 は 今 よりも 少 なくなっていると 考 えられます。 加 え<br />
て、 未 来 の 環 境 ・ 社 会 ・ 経 済 の 状 況 は、 現 在 とは 大 きく 異 なっているこ<br />
とが 予 想 されます。こうしたシナリオを 考 えたとき、 重 要 なのは、 今 の<br />
世 代 に 提 供 される 教 育 によって、 持 続 可 能 な 生 活 や 暮 らしを 追 求 す<br />
るのに 役 立 つ 知 識 や 技 能 、 価 値 や 考 え 方 の 習 得 が 促 され、 地 域 社 会<br />
や 国 家 の 意 思 決 定 プロセスに 生 かされることです。<br />
国 連 の「 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 (Decade of Education<br />
for Sustainable Development:DESD、2005~2014 年 )」は、より 持<br />
続 可 能 な 世 界 を 作 り 上 げるためにあらゆる 年 齢 の 人 々に 教 育 を 行 う 数<br />
多 の 活 動 に 刺 激 を 与 えてきました。RCEはこうした 活 動 の 拡 大 を 示 す<br />
好 例 です。RCEが 設 立 されたところでは 著 しい 変 化 が 見 られます。 持 続<br />
可 能 性 に 対 する 認 識 が 高 まり、 持 続 可 能 性 という 考 えを 採 り 入 れたカリ<br />
キュラムが 作 られ、ESDプログラムが 導 入 されています。このようにRCE<br />
は 教 育 という 形 で、より 持 続 可 能 な 社 会 の 構 築 に 貢 献 しています。<br />
DESDが 始 まった 当 初 は、 持 続 可 能 性 やESDについて 何 度 も 説 明<br />
しなければなりませんでしたが、 今 では「 持 続 可 能 性 とは 何 ですか」、<br />
「ESDとは 何 ですか」といった 質 問 をされることは 少 なくなりました。<br />
これは、ESDの 普 及 啓 発 ・ 唱 道 活 動 と 能 力 育 成 活 動 が 一 定 の 成 功 を<br />
収 めていることを 示 すよい 兆 候 です。ESD 共 同 体 は5 年 という 長 い 道<br />
のりを 歩 んできましたが、 満 足 するにはまだほど 遠 い 段 階 です。 未 来<br />
の 難 題 、 特 に 世 界 中 のさらに 多 くの 国 々で、その 国 の 規 模 に 合 わせて<br />
ESDを 実 践 するには、DESDの 目 標 に 尽 力 するわれわれすべてがその<br />
戦 略 を 見 直 し、 活 動 をステップアップさせ、お 互 いの 力 を 合 わせてより<br />
大 きな 相 乗 効 果 をもたらすことが 必 要 です。<br />
そういった 意 味 で、DESDの 中 間 点 は、ESDをめぐるこれまでの 努<br />
力 をもう 一 度 見 直 し、 将 来 へのプランを 立 てるよい 機 会 です。この 再<br />
評 価 のプロセスで 必 要 なのは、ESDの 制 度 化 に 向 けてレバレッジと<br />
なる 重 要 なポイントや、 変 化 の 担 い 手 は 誰 なのかを 特 定 することで<br />
す。2009 年 のDESDモニタリング・ 評 価 報 告 では、 世 界 中 のさまざま<br />
な 場 所 でESDの 実 践 内 容 が 政 策 よりも 一 歩 先 んじていることが 示 さ<br />
れています。これは、2014 年 にDESDが 終 結 した 後 もESDが 継 続 され<br />
るために、RCEが 今 後 注 力 できそうな 方 向 性 を 指 し 示 しています。たと<br />
えば、 国 のカリキュラムが 存 在 する 国 々では、それぞれの 学 問 分 野 に<br />
ESDを 採 り 入 れるべきであり、その 他 にも 永 続 的 な 変 化 を 実 現 するた<br />
めのレバレッジポイントとして、 評 価 手 段 や 教 師 の 認 定 基 準 などが 考<br />
えられます。こうした 変 化 や 改 善 を 行 うためには 意 思 決 定 機 関 ( 教 育<br />
省 など)との 連 携 が 必 要 ですが、その 際 に 重 要 なのは、 政 策 や 戦 略 、<br />
7
カリキュラム、 評 価 や 基 準 を 改 定 し、また 新 たに 設 定 することでESDが<br />
制 度 化 されるのでなければ、 革 新 は 根 づかないという 点 を 認 識 する<br />
ことです。 現 在 そして 今 後 われわれが 注 意 を 向 けなければならないの<br />
は、この10 年 間 にESDの 中 で 得 られたものを 持 続 可 能 なものにしてい<br />
くことなのです。この 点 でRCEは 重 要 な 貢 献 を 果 たすのです。<br />
DESDの 折 り 返 し 点 に 立 つ 今 、 上 記 の 目 的 を 実 現 するために 重 要 な<br />
のは、ESDについてわれわれが 学 んできたことを 振 り 返 ってみることで<br />
す。 言 うまでもなく、これは 後 ろ 向 きの 考 え 方 によるものであってはなり<br />
ません。 最 終 的 にわれわれが 必 要 としているのは、 根 拠 に 基 づいた、<br />
優 れた 実 践 を 具 体 化 するための 将 来 的 なESDのプログラムであり、<br />
政 策 です。 本 書 はESDにおける 優 れた 実 践 をまとめた 前 向 きなもので<br />
あり、 地 理 的 地 域 内 の 複 数 のESD 従 事 者 その 他 関 係 者 (ステークホ<br />
ルダー)を 統 合 し、ESDを 構 築 ・ 提 供 するというRCEのプロセスを 振 り<br />
返 ることによって、その 経 験 から 教 訓 を 導 き 出 す 絶 好 の 機 会 を 与 えて<br />
くれるものです。こうした 反 省 と 分 析 は、 未 来 のRCEへの 道 を 指 し 示<br />
すのに 最 も 有 用 であると 思 われます。<br />
ESDの 促 進 と 実 践 についての 学 習 を 共 有 できる 重 要 な 手 段 のひとつ<br />
として、ユネスコは 本 書 の 刊 行 を 歓 迎 します。<br />
ユネスコ 教 育 局<br />
国 連 教 育 優 先 課 題 調 整 部 長<br />
マーク・リッチモンド<br />
Mark Richmond<br />
8
国 際 連 合 環 境 計 画 (UNEP) 環 境 教 育 訓 練 主<br />
任 からのメッセージ<br />
国 連 の「 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 (Decade of Education<br />
for Sustainable Development:DESD、2005~2014 年 )」が 端<br />
緒 についたばかりの2004 年 に 始 まった 新 たな 能 力 育 成 プログラ<br />
ム、「アフリカ 各 大 学 の 連 携 による 環 境 および 持 続 可 能 性 の 主 流<br />
(Mainstreaming Environment and Sustainability in African<br />
Universities: MESA)」パートナーシップは、アフリカの 大 学 の 教 育 機<br />
構 に 新 たな 活 力 を 与 え、アフリカ 大 陸 が 直 面 する 教 育 ・ 開 発 面 の 難 題<br />
に 解 決 策 をもたらすことを 目 的 としています。このプログラムは 正 式 に<br />
は2006 年 5 月 に 発 足 し、アフリカの9カ 国 、12 名 の 大 学 教 授 とUNEP、<br />
ユネスコ、アフリカ 大 学 協 会 (AAU)、アフリカ 南 部 開 発 共 同 体 の 地 域<br />
環 境 教 育 プログラム(SADC-REEP)によって 始 められました。<br />
2006 年 の 発 足 は 当 時 の 国 連 大 学 学 長 とUNEP 事 務 局 長 代 行 によって<br />
執 行 されました。そしてこれは、MESAパートナーシップとRCEイニシ<br />
アティブとのきわめて 生 産 的 な 提 携 ・ 協 力 関 係 の 始 まりをも 意 味 して<br />
いました。<br />
ESDを 正 規 教 育 機 関 に 採 り 入 れることの 価 値 は、それが 社 会 の 望 む<br />
市 民 を 育 成 するための 機 動 力 となるという 点 にあります。ESDは 生 涯<br />
教 育 であり、 単 に 学 校 でよい 成 績 を 上 げればよいというものではあり<br />
ません。RCEモデルにはこの 原 則 が 凝 縮 されています。 国 連 機 関 内 で<br />
は、UNEPと 国 連 大 学 のような 長 期 的 パートナーシップが 高 く 評 価 さ<br />
れます。 国 連 大 学 、および 特 にRCEネットワークは、アフリカの 大 学 で<br />
教 育 と 学 習 の 再 活 性 化 を 行 ってきたMESAパートナーシップにとっ<br />
て 不 可 欠 な 存 在 であり、しばしば 象 牙 の 塔 と 呼 ばれる 大 学 機 関 と 社<br />
会 全 体 とをつなぐさまざまなESD 従 事 者 その 他 関 係 者 が 数 多 くかか<br />
わっています。RCEはMESAを 強 化 し、MESAパートナーシップをア<br />
フリカ 大 陸 全 土 に 拡 大 するのに 貢 献 してきました。たとえば、MESA<br />
のパートナーである 南 アフリカ 野 生 生 物 ・ 環 境 協 会 (WESSA)は 南<br />
アフリカ 共 和 国 にRCEを 設 立 し、モザンビーク、マラウィ、スワジラン<br />
ドを 含 むアフリカ 南 部 14カ 国 におけるRCE 発 展 のマネージメントや<br />
調 整 を 行 っています。ケニアでは、ケニヤッタ 大 学 とケニア 環 境 教 育<br />
機 構 (Kenya Organisation of Environmental Education)が<br />
RCE Greater Nairobi(ナイロビ 広 域 圏 ) 設 立 のための 専 門 技 術<br />
や 支 援 の 提 供 を 行 っています。<br />
2008 年 11 月 のMESA 国 際 会 議 から2009 年 7 月 開 催 のユネスコ 高<br />
等 教 育 世 界 会 議 へのメッセージは、MESAパートナーシップにおける<br />
RCEとの 協 力 関 係 をさらに 強 固 なものにするための 機 動 力 となりまし<br />
た。 会 議 のコミュニケには、 世 界 全 体 、 特 にサハラ 以 南 のアフリカにお<br />
ける 高 等 教 育 制 度 の 質 と 持 続 可 能 性 を 保 証 すべく、 国 レベル、 地 域 レ<br />
ベル、 国 際 レベルでの 協 力 関 係 と 一 致 した 行 動 が 必 要 であると 明 言<br />
されています。<br />
9
RCEは 単 に 国 連 大 学 のプログラムのひとつではなく、DESDにとって<br />
なくてはならない 一 部 とみなすべきです。RCEネットワークは、 他 の<br />
ESD 実 践 者 を 動 員 するための 包 括 的 なイニシアティブであり、RCE<br />
は、 持 続 可 能 な 開 発 の 問 題 に 対 処 するための 知 識 を 動 員 する、ESD<br />
実 践 者 と 社 会 を 結 びつけるフォーラムなのです。DESDが 折 り 返 し 地<br />
点 を 回 った 今 、RCEイニシアティブは、ESDの 知 識 および 実 践 規 範 に<br />
統 合 すべきこの10 年 のプログラムのひとつであることは 言 うまでもあ<br />
りません。<br />
RCEのたとえとして、アフリカのナイル 川 を 例 に 挙 げてみましょう。 一 般<br />
に、ナイル 川 は 世 界 最 長 の 川 とみなされていますが、このアフリカの 大<br />
河 は、そこに 流 れ 込 む 数 多 くの 支 流 によって 支 えられています。こうし<br />
た 小 さな 激 しい 支 流 がなければ、ナイルはナイルであり 続 けることはで<br />
きません。 同 じように、RCE 活 動 のさざ 波 は 強 さと 激 しさを 増 し、 大 学<br />
の 象 牙 の 塔 の 壁 をも 引 き 倒 す 可 能 性 を 秘 めています。さざ 波 が 集 まって<br />
持 続 可 能 性 という 川 になれば、アフリカだけでなく 他 の 地 域 にも 波 及<br />
していくはずです。 実 際 に、RCEイニシアティブと 分 かちがたく 結 びつ<br />
いているMESAは、 大 胆 な 新 しい 道 に 乗 り 出 しました。そこでは、プラ<br />
グマティズムが 官 僚 主 義 をうち 負 かし、 教 育 が 持 続 可 能 性 の 繁 栄 へ<br />
の 窓 を 開 くのです。<br />
国 際 連 合 環 境 計 画 (UNEP)<br />
環 境 教 育 訓 練 主 任<br />
アクペジ・オグブイグウェ<br />
Akpezi Ogbuigwe<br />
10
国 際 大 学 協 会 副 会 長 からのメッセージ<br />
国 際 大 学 協 会 (IAU)では、 社 会 的 に 責 任 ある 行 動 をメンバーに 奨 励<br />
するよう 努 めています。われわれは、 高 等 教 育 および 研 究 には、 持 続<br />
可 能 な 開 発 を 実 現 するプロセス 全 体 にわたって 果 たしうる、また 果 た<br />
さねばならない 重 要 な 役 割 があると 長 年 認 識 してきました。<br />
高 等 教 育 機 関 の 長 や 学 術 組 織 に 属 する 研 究 者 は、 持 続 可 能 な 開 発<br />
を 学 問 や 組 織 における 主 要 な 焦 点 のひとつに 位 置 づけることによって、<br />
公 平 かつ 生 態 学 的 に 健 全 な 未 来 の 建 設 に 寄 与 する 重 要 な 立 場 にあ<br />
るとIAUは 考 えます。そのためには、 学 際 的 研 究 や 教 育 、 政 策 立 案 、 能<br />
力 向 上 、 技 術 移 転 によって、 知 識 を 生 み 出 し、 普 及 することが 必 要 で<br />
す。したがって、 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (ESD)はIAUにとって<br />
重 要 な 優 先 課 題 のひとつです。<br />
RCEは、 高 等 教 育 機 関 がさまざまなESD 従 事 者 その 他 関 係 者 とかか<br />
わりをもち、 持 続 可 能 な 開 発 を 目 指 してともに 学 び、 革 新 していく 機 会<br />
を 提 供 してくれます。<br />
2005 年 に、「 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 (DESD)」という<br />
枠 組 みの 中 で 国 連 のアジェンダを 支 援 する 機 構 としてRCEに 関 する<br />
構 想 が 議 論 されたとき、この 概 念 がハンス・ファン・ヒンケル 教 授 によ<br />
る 発 案 であったことをわれわれは 今 も 誇 りに 思 っています。 当 時 、ヒン<br />
ケル 教 授 はIAUの 前 会 長 であり、 国 連 大 学 学 長 でした。さらに、 最 初<br />
に 作 られた7つのRCEのひとつ、RCE Penang(ペナン)の 設 立 にあた<br />
っては、IAUのメンバーであるマレーシア 科 学 大 学 が 指 導 的 な 役 割 を<br />
果 たしました。したがって、 現 在 RCEの 数 が 何 倍 にも 増 え、IAUのメン<br />
バーがこの 活 動 に 積 極 的 にかかわっていることは、われわれにとって<br />
喜 ばしい 限 りです。その 後 、IAUは 国 連 大 学 へのRCE 認 定 の 勧 告 およ<br />
びRCE 候 補 と 既 存 のRCEへの 助 言 と 指 導 をおこなうために2006 年<br />
に 設 立 されたウブントゥRCE 審 査 委 員 会 にも 代 表 を 送 ってきました。<br />
現 在 も、RCEイニシアティブが 提 供 するさまざまな 機 会 について 情 報<br />
の 普 及 を 継 続 的 に 行 っています。<br />
IAUでは、 持 続 可 能 な 開 発 という 概 念 および 原 則 を 世 界 各 国 の 高 等<br />
教 育 の 主 流 に 組 み 入 れるべく 努 力 してきました。RCEの 概 念 が、この<br />
努 力 を 支 える 強 力 な 枠 組 みとなっていることは 言 うまでもありません。<br />
DESDの 中 間 点 を 過 ぎようとしている 今 、IAUはこれからもRCEおよび<br />
国 連 大 学 と 緊 密 に 連 携 し、より 一 層 実 りの 多 い 協 力 関 係 を 築 いてい<br />
きたいと 考 えています。<br />
国 際 大 学 協 会 (IAU) 副 会 長<br />
マレーシア 科 学 大 学 副 総 長<br />
ズルキフリ・アブドゥル・ラザック<br />
Dzulkifli Abdul Razak<br />
11
アジア 学 術 会 議 事 務 局 長 からのメッセージ<br />
アジア 学 術 会 議 (SCA)は、 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (ESD)に<br />
関 する 国 連 大 学 高 等 研 究 所 (<strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong>)の 努 力 に 対 し、 大 いなる 賞<br />
賛 の 意 を 表 したいと 思 います。2005 年 に 始 まった 国 連 の「 持 続 可 能<br />
な 開 発 のための 教 育 の10 年 (DESD)」において、 国 連 大 学 高 等 研 究<br />
所 は 地 域 の 教 育 ・ 学 習 関 係 機 関 の 共 同 基 盤 を 構 築 し、 過 去 5 年 間 に<br />
わたってESDを 促 進 してきました。<br />
SCAは、 特 に2002 年 にヨハネスブルグで 開 催 された「 持 続 可 能 な 開<br />
発 に 関 する 世 界 サミット」でウブントゥ 宣 言 に 名 を 連 ねて 以 来 、 国 連<br />
大 学 高 等 研 究 所 とともに 学 術 関 連 の 活 動 に 参 画 しています。 同 サミット<br />
では 持 続 可 能 な 開 発 のための 科 学 技 術 教 育 強 化 の 重 要 性 が 再 確 認<br />
されました。SCAはウブントゥRCE 審 査 委 員 会 のメンバーとして、 世 界<br />
的 なRCE 共 同 体 の 事 務 局 である 国 連 大 学 高 等 研 究 所 に 対 し、 新 た<br />
な 地 域 の 拠 点 (RCE)の 認 定 に 関 する 助 言 を 行 っています。<br />
国 連 大 学 高 等 研 究 所 のESDプログラムの 支 援 を 受 け、RCEネットワ<br />
ークがESDを 推 し 進 める 効 率 的 で 有 効 な 手 段 となったことで、 活 動 に<br />
も 著 しい 進 展 が 見 られました。RCEネットワークの 活 動 は 多 くの 教 育<br />
機 関 に 刺 激 を 与 え、それぞれの 地 域 社 会 にESDを 普 及 するための 原<br />
動 力 となり、それによってRCEイニシアティブは 世 界 中 に 広 まっていき<br />
ました。<br />
SCAネットワークはアジア 地 域 で、 幅 広 い 学 術 分 野 における 学 問 的 協<br />
力 や 提 携 関 係 を 育 成 促 進 しています。SCAは 学 術 研 究 やプロジェクト<br />
を 通 してアジア 全 体 に 共 通 する 学 術 的 問 題 に 取 り 組 んでおり、その 主<br />
導 的 立 場 は、アジアにおける 持 続 可 能 な 開 発 のビジョンを 確 立 する<br />
上 でますます 重 要 性 を 増 しています。<br />
地 域 の 問 題 はまずこうした 学 術 活 動 によって 検 証 され、その 次 の 段 階<br />
で 地 域 間 の 協 力 関 係 を 拡 大 することで、 蓄 積 された 知 識 や 知 恵 が 世<br />
界 中 に 伝 わります。DESDの 後 半 期 に 向 けてRCEの 活 動 も 次 の 段 階<br />
への 移 行 が 期 待 されるべきであり、RCE 間 をつなぐイニシアティブの<br />
活 発 化 が 求 められることになるでしょう。こうした 図 式 に 大 きな 重 点 を<br />
置 くことによって、ESDを 促 進 するための 地 域 協 力 がより 一 層 活 発 に<br />
なり、 持 続 可 能 性 に 向 けた 前 進 が 現 実 のものになると 考 えられます。<br />
最 後 に、DESDの 前 半 期 に 積 み 重 ねられた 努 力 やイニシアティブに 対<br />
し 改 めて 賞 賛 の 意 を 表 するとともに、 持 続 可 能 な 社 会 を 建 設 するため<br />
に、 今 後 の 継 続 的 な 成 功 を 祈 念 しています。<br />
アジア 学 術 会 議<br />
事 務 局 長 / 会 計 担 当<br />
村 岡 洋 一<br />
12
アフリカ 大 学 協 会 事 務 局 長 からのメッセージ<br />
世 界 規 模 の 持 続 可 能 な 開 発 を 保 証 することは、おそらく 世 界 に 突 きつ<br />
けられた 最 大 の 難 問 のひとつです。 持 続 可 能 な 開 発 という 考 え 方 が<br />
十 分 に 理 解 されるようになるまでには 一 定 の 時 間 を 要 しました。なぜ<br />
なら、 結 局 のところ、これは 容 易 に 理 解 できる 概 念 ではなく、また、 今 も<br />
なお 進 化 し 続 ける 概 念 であるからです。 同 様 に、 定 義 することも 難 しい<br />
ため、しばらくは 純 粋 に 環 境 の 観 点 からのみ 捉 えられていましたが、<br />
ひとたび 持 続 可 能 な 開 発 が 経 済 的 ・ 社 会 的 発 展 や 人 間 の 成 長 のあ<br />
らゆる 側 面 を 包 含 していることが 理 解 されると、あらゆるレベル( 幼 稚<br />
園 から 高 等 教 育 まで)、あらゆる 種 類 (インフォーマル、ノンフォーマ<br />
ル、フォーマル)の 教 育 が 持 続 可 能 性 の 実 現 に 不 可 欠 であることが 明<br />
確 になりました。<br />
2004 年 に 国 連 大 学 が 地 域 の 拠 点 (RCE)を 創 設 するに 至 った 基 本<br />
原 則 はここにあります。RCEは、 世 界 の 特 定 地 域 の 関 連 機 関 や 組 織<br />
間 の 協 力 を 促 し、その 地 域 における 持 続 可 能 な 開 発 の 具 体 的 な 問 題<br />
を 考 慮 に 入 れ、 教 育 や 訓 練 および 啓 発 によって 持 続 可 能 性 を 促 進 す<br />
る 活 動 を 行 っています。 地 域 によってRCEが 大 きく 異 なるのはこのた<br />
めです。ほとんどすべての 場 合 、RCEにはさまざまなレベルの 教 育 機<br />
関 が 含 まれており、RCEが 地 域 のビジネスや 産 業 にかかわっているこ<br />
とも 多 く、また 常 に 地 域 社 会 からの 支 援 と 協 力 を 得 ています。<br />
たとえば 南 アフリカのRCE Makana and Rural Eastern Cape(マ<br />
カナおよび 東 ケープ 郊 外 )を 指 揮 しているのはローズ 大 学 であり、その<br />
目 的 は、この 地 域 の 教 育 ・ 訓 練 の 質 に 影 響 を 及 ぼしている 問 題 に 取 り<br />
組 み、そうした 問 題 を 研 究 することにあります。RCE Cairo(カイロ)の<br />
指 導 的 機 関 であるSEKEM 開 発 基 金 は、 地 域 住 民 が 生 計 手 段 となる<br />
活 動 に 従 事 し、そうした 活 動 を 身 につけられるよう 支 援 を 行 っていま<br />
す。RCE KwaZulu Natal(クワズールー・ナタール)の 指 導 的 機 関 は<br />
南 アフリカ 野 生 生 物 ・ 環 境 協 会 (WESSA)であり、WESSAは 南 アフリ<br />
カで 最 も 歴 史 が 古 く、 最 も 規 模 の 大 きい 会 員 制 の 環 境 系 非 政 府 機 関<br />
(NGO)です。このRCEのメンバーもまた、アフリカ 南 部 の 国 々とその<br />
周 辺 地 域 の 教 師 の 能 力 開 発 を 目 的 として、 目 覚 ましい 活 動 を 展 開 して<br />
います。<br />
RCEの 概 念 全 体 を 豊 かなものにしているのは、それを 構 成 するRCE<br />
の 多 様 性 です。 計 画 では、 最 終 的 にすべてのRCEをつなぐ 世 界 規 模<br />
のネットワークを 作 り、それぞれの 経 験 や 資 源 を 共 有 し、 互 いに 連 携<br />
して 個 別 のプロジェクトを 進 められるようにする 予 定 ですが、 多 数 の<br />
RCE 間 の 調 整 を 行 い、RCE 自 体 を 持 続 可 能 なものにすることは、とり<br />
わけ 財 政 的 な 面 から 見 て 克 服 すべき 重 大 な 問 題 であることに 変 わり<br />
はありません。<br />
13
2005 年 から2008 年 まで 国 際 大 学 協 会 の 会 長 を 務 めていた 私 は、こ<br />
れらRCEの 設 立 に 深 くかかわるという 恩 恵 に 与 りました。2005 年 に<br />
最 初 に 作 られたRCEは7つでしたが、2010 年 にはその 数 は75にまで<br />
増 え、このうち12はアフリカに 存 在 します。 世 界 規 模 のRCEネットワ<br />
ークが 構 築 されれば、 国 連 の「 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年<br />
(DESD)」に 対 する 国 連 大 学 の 真 の 貢 献 となるでしょう。 気 候 変 動 、<br />
健 康 ・ 福 祉 問 題 、 貧 困 根 絶 、その 他 数 多 くの 困 難 な 問 題 の 解 決 を 含<br />
め、 世 界 規 模 の 持 続 可 能 な 開 発 に 向 けてRCEは 有 意 義 かつ 重 要 な<br />
貢 献 をするであろうと 信 じています。<br />
アフリカ 大 学 協 会<br />
事 務 局 長<br />
グーラム・モハメドバイ<br />
Goolam Mohamedbhai<br />
14
国 連 DESDに 関 するユネスコハイレベル 委 員 会<br />
メンバーからのメッセージ<br />
国 連 の 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 (DESD)は、あらゆる 形<br />
態 、あらゆるレベルの 教 育 を 変 革 し、 新 しい 方 向 性 をもたらそうとする<br />
科 学 者 や 大 学 、 教 師 、 国 の 機 関 や 国 際 機 関 のあらゆる 努 力 を 鼓 舞 し、<br />
正 当 性 を 与 えました。それによって 教 育 は、より 持 続 可 能 な 開 発 へと<br />
向 かう 動 きを 現 実 に 支 援 しています。<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (ESD)を 促 進 するためのさまざまな<br />
アイデアの 中 でも 特 に 実 り 多 かったもののひとつ、それがESDに 関 す<br />
る 地 域 の 拠 点 (RCE)の 創 設 です。このアイデアの 基 本 となったのは、<br />
持 続 可 能 な 開 発 を 実 現 するための 活 動 は、 人 々が 日 常 生 活 の 中 で 直<br />
面 する 地 域 の 難 題 を 出 発 点 とすることではじめて 成 功 するのだという<br />
認 識 です。<br />
RCEの 強 みは、 個 人 や 集 団 が 互 いの 存 在 を 認 識 し、 教 育 を 通 して 共<br />
通 の 努 力 目 標 に 向 かって 協 力 できる 機 会 を 広 げることで、 地 域 と 世 界<br />
の 持 続 可 能 性 という 難 題 に 立 ち 向 かうことを 可 能 にするという 点 にあ<br />
ります。たとえば 大 学 間 のつながりなど、RCEメンバー 間 の 国 際 的 つ<br />
ながりは、 地 域 におけるプロセスと 世 界 におけるプロセスの 結 びつき<br />
を 強 化 する 働 きをします。こうした 協 力 を 通 して、 周 辺 地 域 からの 新 し<br />
いアイデアや 知 識 や 教 育 を、 社 会 計 画 ・ 貧 困 根 絶 ・ 環 境 保 護 プログラ<br />
ムに、また 学 校 や 幼 稚 園 および 保 育 園 などに 採 り 入 れることが 可 能 に<br />
なります。このようにしてRCEは 今 や 知 識 の 重 要 な 拠 点 およびインスピ<br />
レーションの 源 となっています。<br />
RCEにはESDを 促 進 するというきわめて 重 要 な 課 題 があり、そのた<br />
めの 備 えも 十 分 に 整 っています。これは 各 国 のユネスコ 国 内 委 員 会 、<br />
その 他 ユネスコのさまざまな 貢 献 活 動 にもあてはまります。<br />
ユネスコ 総 会 で 採 択 されたESDに 関 する2009 年 ボン 宣 言 は、 各 RCE<br />
の 活 動 のアクションプランを 支 える 優 れた 土 台 のひとつです。ボン 宣<br />
言 は 行 動 の 呼 びかけであり、そこでは、ESDの 源 泉 となりえる 学 校<br />
や 大 学 その 他 の 高 等 教 育 機 関 、および 教 育 ネットワークを 特 定 し、<br />
支 援 することの 必 要 性 、ならびに 種 々の 優 先 課 題 や 問 題 に 対 処 する<br />
ためにこうした 源 泉 を 利 用 することの 必 要 性 など、 多 くの 必 要 な 手 段<br />
が 簡 潔 に 提 示 されています。 宣 言 の 中 で 特 に 強 調 されているのは、 持<br />
続 可 能 な 開 発 に 対 する 認 識 を 高 め、 一 般 の 人 々の 参 加 を 促 し、メディ<br />
アを 通 して 持 続 可 能 な 開 発 のための 議 論 を 活 発 化 させることの 重 要<br />
性 です。さらに、 産 業 界 、 市 民 社 会 、 地 域 社 会 や 労 働 組 合 を 取 り 込 み、<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 指 導 者 を 養 成 することも 推 奨 されています。<br />
私 自 身 はこれまでに、 新 たなRCEを 設 立 する 活 動 に 参 画 する 機 会 を<br />
得 てきました。2005 年 に 名 古 屋 で 開 催 されたアジア 太 平 洋 地 域 に<br />
おける 国 連 DESDの 開 始 式 典 において、 最 初 に 設 立 された7カ 所 の<br />
15
RCEに 認 定 証 が 授 けられたときのことを 思 い 出 すと、 今 でも 喜 びがこ<br />
み 上 げてきます。 今 ではRCEの 数 は75にまで 増 えました。その 規 模 や<br />
方 向 性 はさまざまであり、 場 所 も 世 界 各 地 に 散 らばっていますが、そこ<br />
には 共 通 のビジョンがあります。 共 通 の 目 標 に 向 かってそれぞれ 異 な<br />
る 方 法 で 活 動 を 行 っている 姿 は、このアイデアがもつパワーを 実 証 し<br />
ています。<br />
先 の 国 連 大 学 学 長 であったハンス・ファン・ヒンケル 氏 が 望 まれたよう<br />
に、DESD 期 間 中 にRCEの 数 が 増 え 続 け、やがては 世 界 的 な 学 習 の 場<br />
(Global Learning Space)が 現 実 のものとなることを 心 から 期 待 し<br />
ています。 国 連 大 学 のたゆまぬESD 促 進 活 動 およびRCEは、われわれ<br />
すべてを 鼓 舞 する 存 在 です。<br />
国 連 DESD2005~2014 年 に 関 するユネスコハイレベル 委 員 会 メンバー<br />
カール・リンドバーグ<br />
Carl Lindberg<br />
16
ヨーク 大 学 ユネスコチェアからのメッセージ<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (ESD)が 重 点 を 置 いているのは、<br />
教 育 、 普 及 啓 発 、トレーニングプログラムを 通 して 地 域 や 地 域 社 会 、<br />
さらには 市 民 一 人 ひとりがより 深 くかかわることの 必 要 性 であり、これ<br />
は、 持 続 可 能 性 というアジェンダを 前 進 させる 上 で 必 要 不 可 欠 な 要<br />
因 です。ESDを 通 して、 持 続 可 能 な 未 来 を 追 求 する 活 動 に 地 域 社 会 と<br />
地 域 全 体 がかかわっていくという 考 え 方 は、 国 連 大 学 による 地 域 の 拠<br />
点 (RCE)イニシアティブの 中 心 をなすものです。<br />
RCEは、「 持 続 可 能 性 の 原 則 に 対 する 一 般 市 民 の 理 解 が 深 まるほど、<br />
その 地 域 はより 適 切 な 開 発 モデルを 構 築 できるようになる」という 前<br />
提 に 立 ち、この 前 提 を 探 求 することを 目 的 とした 生 きた 実 験 室 です。<br />
さらに、こうしたコミュニティや 地 域 は、そのモデルの 実 現 に 向 けてさ<br />
まざまな 方 法 を 模 索 するであろうことが 予 想 されます。<br />
RCEイニシアティブの 中 心 にあるのは、 主 に 既 存 の 教 育 資 源 を 利 用<br />
して、より 情 報 に 通 じ 統 合 された 社 会 を 築 くという 考 え 方 です。その<br />
ため、RCEではまず 地 域 の 教 育 ・ 普 及 啓 発 ・トレーニング 機 関 をひと<br />
つにまとめ 上 げ、 次 にそれぞれの 役 割 や 能 力 を 明 確 にし、 地 域 が 直 面<br />
している 現 在 と 未 来 の 持 続 可 能 性 に 対 する 脅 威 を 明 らかにし、その<br />
上 で 可 能 な 限 り 多 くの 地 域 住 民 に 情 報 と 教 育 を 提 供 する 共 通 戦 略<br />
を 構 築 します。<br />
RCEの 考 え 方 の 普 及 を 促 進 する 資 金 はさほど 潤 沢 なものではありま<br />
せんでしたが、その 前 提 は 広 く 認 識 されるようになっています。 活 動 が<br />
始 まってから5 年 余 りで、 世 界 の 約 75の 地 域 でRCE 設 立 の 価 値 が 認<br />
識 され、また 多 くの 主 要 都 市 や 主 要 地 域 でその 課 題 が 受 け 入 れられ<br />
るようになってきました。 課 題 とはすなわち、 一 般 市 民 に 情 報 を 提 供 す<br />
ること、 未 来 に 影 響 を 及 ぼす 問 題 への 持 続 可 能 な 解 決 策 を 追 求 する<br />
活 動 に 一 般 市 民 が 取 り 組 むことです。 解 決 すべき 問 題 は、 都 市 のスプ<br />
ロール 化 やゾーン 化 の 問 題 であったり、 移 民 の 問 題 であったりとさま<br />
ざまです。ESDでは 経 済 、 社 会 、 環 境 にかかわる 諸 側 面 を 全 体 的 に 扱<br />
います。そのため、 通 常 はこれら3つの 側 面 がひとつに 絡 み 合 って 地 域<br />
の 問 題 が 出 来 上 がっているということがすぐに 理 解 できます。<br />
本 書 は 地 域 にインスピレーションを 与 え、 情 報 を 提 供 するものです。<br />
それによって、 教 育 に 関 係 した 地 域 のさまざまな 市 民 団 体 、 非 政 府<br />
機 関 (NGO)、 民 間 組 織 を 統 合 し、それぞれの 支 持 者 に 情 報 を 提 供<br />
すること、 情 報 に 基 づく 持 続 可 能 な 地 域 の 解 決 策 に 向 けて 協 力 する<br />
ことを 意 図 しています。 国 連 ・ 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年<br />
(DESD)に 対 する 国 連 大 学 からの 真 に 重 要 な 貢 献 活 動 として、RCE<br />
運 動 は 発 展 を 続 けています。<br />
ヨーク 大 学 ユネスコチェア<br />
チャールズ・ホプキンス<br />
Charles Hopkins<br />
17
1.<br />
国 連 大 学<br />
RCEイニシアティブ<br />
― 背 景 と 展 開<br />
はじめに<br />
2005 年 6 月 、 名 古 屋 における 国 連 大 学 とユネスコ 共 催 の 国 際 会 議 「グローバリゼーシ<br />
ョンと 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (ESD)」において、 国 連 「 持 続 可 能 な 開 発 のための 教<br />
育 の10 年 (DESD)」のアジア 太 平 洋 地 域 の 開 始 式 典 も 併 せて 開 催 されました。この 記 念<br />
すべき 機 会 を 捉 え、 国 連 大 学 は、 会 議 の 最 終 日 に、のちに「イニシャル・セブン」と 呼 ばれる<br />
最 初 の「ESDに 関 する 地 域 の 拠 点 (Regional Centre of Expertise on ESD: RCE)」<br />
7カ 所 の 認 定 を 発 表 しました。 1 それから5 年 、RCEの 数 は 順 調 に 増 え 続 け、2010 年 4<br />
月 現 在 、アジア 太 平 洋 、ヨーロッパ、 中 東 、アフリカ、 北 米 、 南 米 で 展 開 している75の 地 域<br />
ネットワークが 公 式 にRCEとして 国 連 大 学 に 認 定 されています。<br />
この 章 では、DESDの 目 標 達 成 に 貢 献 するために 国 連 大 学 によって 考 案 されたグローバ<br />
ルなプロセスとしてのRCEイニシアティブの 展 開 を 見 ていきます。まず 初 めに、RCEイニシ<br />
アティブがどのように 誕 生 したのかを 紐 解 きます。 次 に、RCEの 概 念 と 実 践 がどのような 変<br />
化 を 遂 げてきたのかを 追 っていきます。<br />
19
RCEイニシアティブの 誕 生 ―グローバルなアジェンダ<br />
からローカルなアクションへ<br />
2002 年 の 国 連 ヨハネスブルグ・サミット( 持 続 可 能 な 開 発 に 関 す<br />
る 世 界 首 脳 会 議 )において、 持 続 可 能 な 開 発 という 共 通 の 目 標 に 向<br />
けて、 多 様 な 主 体 が 力 を 合 わせて 行 動 を 起 こすためのパートナーシ<br />
ップの 重 要 性 が 強 調 されました。RCEイニシアティブは、 持 続 可 能 な<br />
開 発 を「 言 葉 から 行 動 へ」 具 体 的 に 移 すためのパートナーシップ 構<br />
築 を 目 指 して 構 想 されました。 国 連 大 学 は、ヨハネスブルグ・サミット<br />
とDESDに 関 する 国 連 総 会 決 議 を 踏 まえ、2003 年 、 国 連 大 学 高 等 研<br />
究 所 にESDプログラムを 設 立 しました。 当 時 の 国 連 大 学 ハンス・ファ<br />
ン・ヒンケル 学 長 の 指 導 の 下 、RCEのコンセプト・ペーパーが 草 案 さ<br />
れ、2004 年 4 月 の 国 連 持 続 可 能 な 開 発 委 員 会 第 12 会 期 (CSD-12)<br />
において、 国 際 社 会 に 向 けて 発 表 されました。RCEはグローバルなア<br />
ジェンダをローカルなアクション( 地 域 レベルでの 実 践 ・ 行 動 )に 具 体<br />
化 する 方 策 の 一 つとして 位 置 づけることができます。<br />
2004 年 以 来 、 国 連 大 学 と 国 連 大 学 高 等 研 究 所 は、 国 際 会 議 や 学 会 な<br />
ど 様 々な 機 会 を 捉 えて、RCEの 概 念 を 紹 介 してきました。RCE 概 念 は、<br />
広 く 持 続 可 能 な 開 発 およびESD 関 係 者 に 受 け 入 れられ、DESD 前 半 5<br />
年 間 の 経 験 が 如 実 に 示 してるように、 世 界 各 地 で 高 等 教 育 機 関 、 地 方<br />
自 治 体 、 民 間 非 営 利 組 織 (NGO・NPO)などが 手 を 挙 げRCE 設 立 に 尽<br />
力 しました。RCEイニシアティブがこのように 広 範 に 受 け 入 れられた 理<br />
由 のひとつに、RCE 概 念 が、 各 地 域 のESD 従 事 者 ・ 関 係 者 の 手 により<br />
地 域 のニーズにあったかたちで 具 体 化 できるよう 定 義 されていたことが<br />
挙 げられます。 国 連 大 学 は、ESDとRCEの 地 域 に 根 ざした 実 施 の 帰 結 と<br />
して 生 じるRCEの 多 様 性 を 尊 重 し、また 推 奨 してきました。<br />
2005 年 国 連 大 学 ・ユネスコ 共 催 国 際 会 議 「グローバリゼーションとESD」<br />
RCEはグローバルなアジェンダを<br />
ローカルなアクション( 地 域 レベル<br />
での 実 践 ・ 行 動 )に 具 体 化 する 方 策<br />
の 一 つとして 位 置 づけることが<br />
できます。<br />
国 連 大 学 は、ESDとRCEの 地 域 に<br />
根 ざした 実 施 の 帰 結 として<br />
生 じるRCEの 多 様 性 を<br />
尊 重 してきました。
RCEとは 何 か?<br />
RCEイニシアティブは、ESDの 定 義 に 関 して 国 際 的 なコンセンサスを<br />
得 ることの 困 難 さから 来 る 膠 着 状 態 を 打 破 するために 考 案 されまし<br />
た。RCEイニシアティブは、 物 理 的 に 世 界 各 地 にESDセンターを 設 置<br />
するものではなく、 地 域 レベルで 持 続 可 能 な 未 来 構 築 のための 学 び、<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 人 づくりを 推 進 するネットワークを 構 築 する<br />
取 組 みです。RCEは、 地 域 レベルの 分 野 横 断 的 な 学 習 ネットワークと<br />
して、さらには 世 界 のRCEとともにグローバルなネットワークを 形 成 す<br />
ることで、DESDの 目 標 達 成 に 貢 献 します。<br />
RCEが 第 一 義 的 に 目 指 すのは、 地 域 レベルでESDに 係 るさまざまな<br />
関 係 者 が 協 力 できる 環 境 を 整 備 し、 初 等 教 育 から 高 等 教 育 まで 全 て<br />
のレベルの 教 育 ( 者 ) 間 のタテとヨコの 連 携 を 促 進 するとともに、ESD<br />
の 推 進 に 貢 献 するような 各 主 体 ( 地 方 公 共 団 体 ・ 行 政 、NPO・NGO、<br />
企 業 ・ 民 間 セクター、メディアなど)を 結 びつけることです。RCEは、<br />
地 域 でESDを 推 進 するための 多 部 門 間 ならびに 学 際 的 パートナ<br />
ーシップと 定 義 することができます。RCEはDESD 国 際 実 施 計 画<br />
(UNESCO 2005)で 強 調 されているパートナーシップ( 協 働 )・ア<br />
プローチを 具 体 化 し、 地 域 に 根 ざしたESDの 実 施 に 貢 献 する 仕 組 みと<br />
捉 えることができます。<br />
RCEというかたちで 結 実 した 国 連 大 学 のアプローチにおいては、そも<br />
そもは、 平 等 なパートナーシップの 構 築 という 視 点 はあまり 強 調 され<br />
ていませんでした。 平 等 なパートナーシップの 構 築 は、 環 境 管 理 にお<br />
ける 協 働 学 習 に 関 する 文 献 ( 例 えばKeen et al. 2005)においては、<br />
しばしば 利 害 関 係 者 間 の 学 び 合 いとイノベーションを 生 み 出 す 必 要<br />
条 件 と 見 られていますが、 国 連 大 学 が 強 調 したのは、 科 学 に 立 脚 した<br />
ESD 推 進 のために 高 等 教 育 機 関 やその 他 の 知 識 関 連 機 関 が 中 心 的<br />
役 割 を 果 たす「 地 域 の 知 識 ベース」の 構 築 でした。 特 に 高 等 教 育 機 関<br />
は、 最 高 学 府 として 既 存 の 教 育 の 再 編 成 を 先 導 していくことが 期 待 さ<br />
れ、また 政 策 決 定 者 と 教 員 を 養 成 する 機 関 としても 重 要 な 役 割 を 担 う<br />
と 理 解 されました。<br />
RCEにおける「 地 域 (Region)」は、 人 々が 経 済 ・ 社 会 ・ 文 化 ・ 環 境 に<br />
関 する 事 項 に 連 帯 感 を 持 つ 一 定 の 地 理 的 まとまりのある 地 域 、すな<br />
わちブルターニュ、 東 北 、カタルーニャといった 国 内 の 一 地 方 や 地 域<br />
ブロック、あるいはライン=ムーズ 川 流 域 のようないくつかの 国 にまた<br />
がる 地 域 を 指 します。RCEの 地 理 的 範 囲 は、 大 学 、 博 物 館 、 動 物 園 、<br />
植 物 園 、 小 中 学 校 の 学 区 をいくつも 含 む 程 度 には 広 く、RCEのパート<br />
ナーが 比 較 的 容 易 に 集 まれるような 範 囲 を 想 定 してます。RCEを 地<br />
域 に 根 ざした 類 似 のイニシアティブと 比 較 した 場 合 、その 広 範 な 地 理<br />
的 範 囲 が 特 徴 的 です。 例 えばRCEがカバーしている 地 域 の 一 小 学<br />
校 や 一 公 民 館 の 優 良 実 践 を 学 区 全 体 、さらには 他 の 学 区 に 普 及 さ<br />
せたり、RCEに 複 数 の 大 学 や 科 学 館 や 地 方 公 共 団 体 などが 参 加 し<br />
ていることから「 地 域 の 知 識 ベース」として 機 能 することが 可 能 になり<br />
ます。 2 広 範 な 地 理 的 範 囲 によりRCE 参 加 機 関 と 活 動 の 多 様 性 が 担<br />
保 されると 同 時 に、RCE 全 体 の 方 向 性 や 戦 略 に 責 任 を 持 つ 意 思 決 定<br />
主 体 が 必 要 になってきます。このような 主 体 は、 通 常 RCE 中 核 機 関 の<br />
代 表 者 からなるRCE 運 営 委 員 会 やRCE 協 議 会 として 設 置 されます。<br />
21
RCEは、<br />
多 様 かつ 分 野 横 断 的 な<br />
ステークホルダーからなり、<br />
ESDを 推 進 するための<br />
情 報 交 換 、 協 議 、 協 働<br />
のための 場 を 提 供 します。<br />
同 時 に、 活 動 を 支 えるための<br />
情 報 と 経 験 を 蓄 積 する 地 域 の<br />
知 識 ベースとしての 役 割 も<br />
果 たします。<br />
© D. Weisbrot/RCE Saskatchewan<br />
2008 年 アメリカ 地 域 RCE 会 議 ポスターセッション<br />
© S. Aipanjiguly<br />
RCEへのより 広 い 意 味 での 参 加 者 は、 潜 在 的 には 全 ての 地 域 住 民 を<br />
含 み、RCE 運 営 委 員 会 ・ 協 議 会 が 定 めた 活 動 に 画 一 的 に 参 加 すると<br />
いうより、 自 発 的 かつ 創 造 的 にRCE 活 動 に 貢 献 する 組 織 ならびに 個<br />
人 と 捉 えることができるでしょう。RCEは、 設 立 メンバーで 固 定 するの<br />
ではなく、 常 に 新 たな 関 係 者 を 巻 き 込 み、 徐 々にネットワークを 拡 大 し<br />
ていくのが 理 想 的 です。<br />
RCEは 国 連 大 学 のイニシアティブであると 同 時 に 地 域 の 自 発 的 なイニ<br />
シアティブでもあります。RCEイニシアティブでは、 国 連 大 学 が 編 み 出 し<br />
た 地 域 レベルでESDを 進 めていくための 政 策 的 処 方 に 賛 同 した 地 域<br />
ネットワークが、 審 査 を 経 て 国 連 大 学 によりRCEとして 認 定 されます。<br />
通 常 RCEは、 国 際 会 議 ・ワークショップ・ 学 会 などさまざまな 場 でRCE<br />
のコンセプトを 知 った 個 人 やグループが、 自 発 的 に 地 域 の 関 連 団 体 に<br />
働 き 掛 け、 中 核 機 関 のネットワークを 形 成 し、 協 議 を 重 ねてRCEの 青 写<br />
22
真 を 描 くことから 始 まります。 多 くの 地 域 においては、 初 めから 全 地 域 住<br />
民 を 巻 き 込 んでRCEのデザインをすることは 現 実 的 ではありませんが、<br />
RCEが 大 学 や 地 方 公 共 団 体 など 中 核 機 関 だけのものになってしまい、<br />
地 域 住 民 に 浸 透 しないのでは 地 域 のイニシアティブとして 十 分 とは 言 え<br />
ません。RCE 運 営 委 員 会 ・ 協 議 会 は、どのように 住 民 参 加 型 で「 地 域 の<br />
知 識 ベース」を 発 展 させていくのか、 検 討 する 必 要 があります。<br />
国 連 大 学 RCEコンセプトの 基 礎 的 前 提<br />
もともとRCEは、1980 年 代 後 半 から 学 校 教 育 で 環 境 教 育 を 推 進 して<br />
いく 上 で 特 定 された 問 題 点 を 改 善 するために、2004 年 当 時 の 国 連<br />
大 学 の 学 長 とESDプログラムの 研 究 員 によって 考 案 された 方 策 でし<br />
た。その 問 題 点 とは、 最 新 の 科 学 技 術 の 知 識 が、 学 校 で 教 えられてい<br />
る 内 容 に 反 映 されていないというものでした。 科 学 者 と 教 育 者 の 間 の<br />
コミュニケーション・ギャップを 埋 める 必 要 性 の 認 識 が、2002 年 のヨ<br />
ハネスブルグ・サミットにおいて 署 名 された『 持 続 可 能 な 開 発 のため<br />
の 教 育 と 科 学 技 術 のためのウブントゥ 宣 言 』( 参 考 資 料 参 照 )の 根 本<br />
にあり、 初 期 の 国 連 大 学 高 等 研 究 所 ESDプログラムの 考 え 方 の 重<br />
要 な 基 礎 とりました。 3<br />
2004 年 に 発 表 された 当 初 のRCE 概 念 の 基 礎 的 前 提 となっていたの<br />
は、「 持 続 可 能 な 開 発 のための 世 界 的 な 学 習 の 場 (Global Learning<br />
Space)」を 構 築 するために、 出 来 る 限 り 多 くのアクター( 主 体 )、すなわち<br />
産 官 学 民 全 ての 社 会 セクター、 幼 稚 園 から 大 学 院 まで 全 てのレベルの<br />
フォーマル( 学 校 ) 教 育 とノンフォーマル( 学 校 外 ) 教 育 、あらゆる 年 齢<br />
層 の 学 習 者 をESDに 動 員 するという 考 え 方 でした。1992 年 のリオ 地 球<br />
サミット( 環 境 と 開 発 に 関 する 国 連 会 議 )から10 年 間 、ユネスコが 旗 振<br />
り 役 となりESDを 推 進 してきたものの、はかばかしい 成 果 が 上 がらなか<br />
った、というヨハネスブルグ・サミットでの 反 省 に 基 づき、 地 域 レベルの<br />
ESD 推 進 を 支 える 仕 組 みとしてRCEを 考 案 したと 言 うことができます。<br />
元 来 RCEコンセプトは、 高 等 教 育 も 含 めたフォーマル 教 育 の 経 験 から<br />
考 案 されたものでした。このことはRCE 活 動 をフォーマル 教 育 に 限 定 は<br />
しませんでしたが、RCEの 最 重 要 課 題 は、フォーマル 教 育 を 補 完 し 再 編<br />
成 することと 捉 えられていました。 当 初 RCEコンセプトは、フォーマル 教<br />
育 セクターにおけるタテとヨコのつながりの 強 化 を 強 調 しました。 初 期<br />
のRCEの 概 念 図 ( 図 1 参 照 )が 示 しているように、 科 学 館 、 植 物 園 、 自 然<br />
公 園 といったノンフォーマル 教 育 機 関 は、「 知 識 関 連 機 関 」として 特 別<br />
な 重 要 性 を 付 与 され、 地 方 公 共 団 体 、コミュニティ 指 導 者 、 地 元 企 業 、<br />
メディア、 地 元 NPO・NGOなどと 一 線 を 画 すものとして 提 示 されました。<br />
また、 図 1の 右 側 には 横 方 向 の 矢 印 がないことから 分 かるように、これ<br />
らのノンフォーマル 教 育 機 関 間 のヨコの 連 携 は 強 調 されず、ノンフォー<br />
マル 教 育 機 関 はフォーマル 教 育 機 関 に 側 面 的 支 援 を 与 えるとの 位 置<br />
づけでした。あくまで 中 心 はフォーマル 教 育 だったと 言 えます。<br />
23
図 1: RCE における 連 携<br />
出 典 : RCEコンセプトペーパー(<strong>UNU</strong> 2004 )<br />
RCEイニシアティブの 出 発 点 がフォーマル 教 育 だったということは、<br />
国 連 大 学 がノンフォーマル 教 育 におけるESDを 重 視 しないというこ<br />
とではなく、 逆 に、 環 境 教 育 が 学 校 外 教 育 では 市 民 権 を 得 てきてお<br />
り、フォーマル 教 育 にESDを 統 合 する 必 要 性 がより 強 く 意 識 された<br />
ことを 示 しています。また、 国 連 大 学 が 自 ら「 大 学 」として、 高 等 教 育 機<br />
関 が 教 育 ・ 研 究 ・ 地 域 貢 献 の 全 ての 分 野 で 持 続 可 能 な 社 会 の 構 築 に<br />
貢 献 することを 促 進 するイニシアティブとして、RCEを 構 想 したことに<br />
も 留 意 する 必 要 があります。<br />
当 初 RCEコンセプトは、「 知 識 」を、 主 に 研 究 機 関 の 専 門 家 がもっている<br />
科 学 的 知 識 と 同 一 視 しており、 4 教 育 者 は「 知 識 」を 受 け 取 る 側 に 置 か<br />
れ、NPO・NGOや 市 民 社 会 組 織 が 持 続 可 能 な 地 域 社 会 づくりに 専 門<br />
知 識 で 貢 献 することは 想 定 されていませんでした。さらに 言 えば、 当 初<br />
RCEはしばしば「ESDを 地 域 社 会 に 届 けるネットワーク」と 定 義 されて<br />
おり、 地 域 社 会 やコミュニティは 専 門 知 識 の 受 け 手 として 受 動 的 な 役<br />
割 しか 与 えられていなかったと 言 えます。RCEの 概 念 図 の 修 正 版 ( 図 2<br />
参 照 )では、 誰 もが 貢 献 できる 平 等 なマルチ・ステークホルダー 連 携 の<br />
プラットフォームとしてのRCEの 性 格 をより 強 く 打 ち 出 すようにしています。<br />
24
図 2: RCE 概 念 図<br />
出 典 : 地 域 のRCE 実 践 者 ならびに 国 内 外 のESD 専 門 家 との 過 去 5 年 の 協 議 を 踏 まえて 筆 者 作 成 。<br />
25
国 連 大 学 はRCEの 核 となる 要 素 (コア・エレメント)として 以 下 4つを<br />
挙 げています。ガバナンス、 連 携 、 研 究 開 発 (R&D)、そして 変 革 を 促<br />
す 教 育 (transformative education)です(<strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong> 2005)。RCE<br />
を 立 ち 上 げることは、RCEのコア・エレメントと 照 らし 合 わせ、 例 えば<br />
ESD・RCE 協 議 会 を 立 ち 上 げたり、 地 域 の 大 学 のESDへの 取 組 みを<br />
強 化 したり、 新 しい 連 携 を 築 いたりすることで、 地 域 の 既 存 の 取 組 み<br />
では 足 りない 点 を 補 うかたちで 国 連 大 学 の 政 策 的 処 方 に 従 うという<br />
側 面 があります。RCEとして 認 定 されるために 絶 対 に 満 たさなければ<br />
ならない 条 件 は、「 持 続 可 能 な 開 発 」の 環 境 ・ 経 済 ・ 社 会 の 側 面 を 包<br />
括 的 に 扱 うこと、そして 高 等 教 育 機 関 と 学 校 がネットワークに 加 わる<br />
ことです。 例 えば 地 域 の 動 物 園 やメディアがRCEのメンバーにならな<br />
くてもRCEを 立 ち 上 げることはできますが、 地 域 の 大 学 が 参 加 しなけ<br />
ればRCEとして 認 定 されることはありません。このようなトップダウン<br />
式 の 地 域 でのESD 実 施 の 側 面 がある 一 方 、 地 域 の 課 題 に 根 ざした<br />
ボトムアップ 的 なアプローチ 抜 きにRCEを 立 ち 上 げることはできませ<br />
ん。RCEの 重 要 な 機 能 の 一 つは、 地 域 のさまざまな 社 会 的 グループ<br />
のニーズや 関 心 を 汲 み 取 り、 地 域 のESD 推 進 の 方 策 に 反 映 させるこ<br />
とです。RCEは 既 存 の 地 域 ネットワークと 既 存 の 実 践 に 立 脚 し、それ<br />
らをさらに 発 展 させて 行 くことを 目 指 しています。<br />
国 連 ESDの10 年 へのRCEの 貢 献<br />
具 体 的 に、RCEはどのように 地 域 に 根 ざした 包 括 的 なESD 実 施 を 支<br />
援 するのでしょうか。RCEは、 公 的 に 設 置 される 機 関 とは 対 照 的 に、 地<br />
域 や 地 方 の 主 体 間 の 自 発 的 かつ 柔 軟 で 緩 やかなネットワークとして<br />
機 能 することを 目 指 します。 言 うまでもなくESDという 名 のつく 実 践 お<br />
よびその 他 の「より 良 い 未 来 」を 目 指 した 地 域 活 動 は、 多 岐 に 渡 ってお<br />
り、 非 常 に 多 様 です。ESDが 主 に 公 教 育 や 高 等 教 育 と 結 び 付 けて 考<br />
えられるか、あるいは 地 域 づくり・まちづくり 活 動 やNPO・NGOによる<br />
環 境 教 育 活 動 などのノンフォーマル 教 育 と 親 和 性 が 高 いものと 捉 えら<br />
れるかは、 地 域 の 教 育 問 題 や 持 続 可 能 性 の 課 題 によってさまざまで<br />
す。RCEモデルの 強 みの 一 つは、 地 域 のステークホルダー 自 身 が、 地<br />
域 のニーズに 基 づいて、ESD 推 進 体 制 を 強 化 できることです。 例 えば、<br />
インドにおいては、ESD 活 動 はNGOの 活 動 だとの 認 識 が 主 流 でした<br />
が、RCE 設 立 を 通 じて、それまで 地 域 連 携 活 動 に 無 関 心 だった 高 等<br />
教 育 機 関 をESDに 巻 き 込 むことに 成 功 しました。<br />
RCEイニシアティブのもうひとつの 強 みは、ローカルとグローバルをつな<br />
ぐ 点 です。RCEは、グローバルなESDのビジョンをローカルなビジョン<br />
に 具 体 化 するプラットフォームを 提 供 することで、DESDに 貢 献 しま<br />
す。RCEイニシアティブは、 各 地 域 において、さまざなセクターをつなぐ<br />
ネットワークを 形 成 するのみならず、 地 域 間 でESD 関 係 者 のネットワー<br />
クを 築 きます。RCEの 認 定 数 は、DESDに 貢 献 する 地 域 の 取 組 みの 数<br />
量 的 指 標 となり、RCEのグローバルなネットワークの 拡 がりは、DESD<br />
の 目 に 見 える 具 体 的 な 成 果 の 一 つとなることが 期 待 されます。<br />
26
RCEの 概 念 と 実 践 の 展 開<br />
グローバルなRCEコミュニティの 誕 生<br />
2006 年 4 月 、 国 連 大 学 高 等 研 究 所 は、 横 浜 において 第 1 回 国 際 RCE<br />
会 議 を 開 催 しました。 当 時 既 に 認 定 されていた10カ 所 のRCEやRCE<br />
候 補 地 域 の 代 表 者 、その 他 の 専 門 家 など100 名 以 上 が 参 加 し、RCE<br />
間 連 携 などRCEの 展 開 に 関 する 議 論 を 交 わしました。この 会 議 と 併<br />
せて 開 催 されたウブントゥ 同 盟 ( 参 考 資 料 ウブントゥ 宣 言 参 照 )の 会 合<br />
では、RCE 認 定 のプロセスの 透 明 性 を 高 めるため、ウブントゥRCE 審<br />
査 委 員 会 を 設 立 することが 決 定 されました。ウブントゥRCE 審 査 委 員<br />
会 は、2006 年 冬 より 毎 年 開 催 され、RCE 候 補 地 域 からの 応 募 書 類 を<br />
審 査 し、 国 連 大 学 に 認 定 の 勧 告 をしています。 5 また 同 年 、 国 連 大 学<br />
高 等 研 究 所 は、 各 RCEとRCE 間 連 携 を 支 援 するため、 所 内 にグロー<br />
バルRCEサービスセンターを 設 置 しました。<br />
世 界 的 なRCEのネットワークの 拡 がりとともに、 大 陸 別 やテーマ 別<br />
のRCE 間 ネットワークが 形 成 され、 活 動 が 深 まっています( 詳 しくは<br />
第 2 章 参 照 )。グローバルRCEサービスセンターは、 引 き 続 き、RCE 間<br />
ネットワーク 設 立 とRCEによる 共 同 研 究 開 発 活 動 の 支 援 を 行 います<br />
が、RCEの 自 主 性 と 自 発 的 取 組 みを 推 奨 し、RCE 自 身 が 先 導 的 な 役<br />
割 を 担 うことを 重 視 しています。また、 生 物 多 様 性 、 持 続 可 能 な 消 費 と<br />
生 産 、 健 康 ・ 保 健 といったテーマ 別 のネットワークに 加 えて、RCE 運<br />
営 上 の 課 題 を 検 討 するワーキング・グループが 立 ち 上 がり、 資 金 調<br />
達 、ESD 教 材 の 共 有 化 、RCEの 評 価 などもRCE 間 で 活 発 に 議 論 され<br />
ています。<br />
図 3: グローバルなRCEコミュニティの 進 展<br />
27
表 1:「 国 連 ESDの10 年 (DESD:2005〜2014 年 )」に 連 なる 主 な 動 き<br />
年<br />
1972<br />
国 内 の 取 組<br />
国 際 会 の 動 き<br />
国 連 人 間 環 境 会 議 の 開 催 (スウェーデン・ストックホルム/<br />
6 月 )<br />
1984<br />
1987<br />
1992<br />
2002<br />
日 本 政 のによる、「 環 境 と 開 発 に 関 する 世 界 委 員 会 」(ブルントラント・ノルウェーが 委 員 長 ) 発 (5 月 )<br />
「 持 続 可 能 な 開 発 」を 有 名 にしたブルントラント 委 員 会 の<br />
報 告 書 “Our Common Future” 刊 行 (4 月 )<br />
リオ・サミット( 国 連 環 境 開 発 会 議 )で 採 択 された「アジェ<br />
ンダ21」に 教 育 の 重 要 性 が 明 記 される(6 月 )<br />
ヨハネスブルグ・サミットにおいて、 日 本 政 が 日 本 のNGOととにDESDをし、 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する<br />
世 界 会 議 実 計 画 にりまれる(9 月 )<br />
第 57 回 国 連 総 会 において、2005 年 からまる10 年 をDESDとする 議 を 日 本 政 が46カ 国 の 共 同 国<br />
ととに 出 、 一 される(12 月 )<br />
2003<br />
2005<br />
日 本 環 境 から 国 連 大 学 への 拠 出 金 により 国 連 大 学 高 等 研 究 所 にESDプログラム<br />
名 において 国 連 大 学 ・ユネスコ 国 際 会 議 「グローバリゼーションとESD」ならびにアジア 太 平 洋 地 域 DESD<br />
開 開 。 会 議 日 に 国 連 大 学 が 仙 台 広 域 圏 と 岡 山 をのつのRCEの 認 定 を 発 表 (6 月 )<br />
2006<br />
「 国 連 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 」 関 係 省<br />
庁 連 絡 会 議 の 設 置 (12 月 )<br />
わが 国 における「 国 連 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育<br />
の10 年 」 実 施 計 画 を 政 府 が 策 定 (3 月 )。 初 期 段 階 に<br />
おける 重 点 的 取 組 事 項 の 一 つに 地 域 における 実 践<br />
を 挙 げ、 具 体 例 として 国 連 大 学 の 地 域 の 拠 点 に 言 及<br />
(4-1-ロ)<br />
DESD 国 際 実 施 計 画 をユネスコが 策 定 (9 月 )<br />
国 連 総 会 において 同 計 画 を 承 認 (10 月 )<br />
第 1 回 国 際 RCE 会 議 開 催 ( 横 浜 /4 月 )<br />
2007<br />
ESD 推 進 議 員 連 盟 発 足 (6 月 ) 第 4 回 世 界 環 境 教 育 会 議 開 催 ( 南 アフリカ・ダーバン/7 月 )<br />
教 育 基 本 法 改 正 (6 月 ) 第 2 回 国 際 RCE 会 議 開 催 (マレーシア・ペナン/8 月 )<br />
第 4 回 環 境 教 育 国 際 会 議 (インド・アーメダバード/11 月 )<br />
2008<br />
2009<br />
2010<br />
2014<br />
小 学 校 ・ 中 学 校 学 習 指 導 要 領 を 改 、ESDの 理 念 に<br />
沿 った 学 習 内 容 の 充 実 が 図 られる(3 月 )<br />
教 育 振 興 基 本 計 画 を 策 定 、ESDの 理 念 が 盛 り 込 まれ<br />
る(7 月 )<br />
国 連 大 学 本 部 にてESD 国 際 フォーラム2008 開 催<br />
(12 月 )<br />
生 物 多 様 性 約 第 10 回 約 国 会 議 (CBD-COP10) 名 にて 開 (10 月 )<br />
日 本 政 がDESD 会 合 をユネスコと 共 同 主 予 定<br />
第 3 回 国 際 RCE 会 議 開 催 (スペイン・バルセロナ/7 月 )<br />
ドイツ・ボンにてDESD 中 間 年 における 進 捗 状 況 レビュー<br />
のためのユネスコESD 世 界 会 議 開 催 (3 月 末 ―4 月 )<br />
第 5 回 世 界 環 境 教 育 会 議 ならびに 第 4 回 国 際 RCE 会 議<br />
開 催 (カナダ・モントリオール/5 月 )<br />
第 5 回 国 際 RCE 会 議 開 催 (ブラジル・クリチバ/5 月 )<br />
* 日 本 政 府 がイニシアティブを 取 った 国 際 的 な 取 組 は、 左 右 にまたがる 欄 に 緑 色 で 示 しています。<br />
**スペースの 関 係 上 、 環 境 教 育 ( 例 :1977 年 トビリシ 宣 言 )、 教 育 開 発 ( 例 :1990 年 万 人 のための 教 育 世 界 会 議 )、 国 際 開 発 協 力<br />
( 例 :2000 年 国 連 ミレニアム・サミット)、 成 人 教 育 、 高 等 教 育 などにおける 重 要 な 会 合 や 宣 言 などを 割 愛 していることをご 了 承 ください。<br />
出 典 :ACCU, 2009, p.137 および「 国 連 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 」 関 係 省 庁 連 絡 会 議 , 2009 年 , p.2. 一 部 修 正 ・ 加 筆
特 筆 すべきは、グローバルなRCEネットワークが、ESD 推 進 に 向 けた<br />
国 連 機 関 の 連 携 や 南 北 協 力 および 南 南 協 力 にも 貢 献 している 点 で<br />
す。 例 えば、アフリカの 全 てのRCEに、 国 連 環 境 計 画 のMESA(アフリ<br />
カ 各 大 学 への 環 境 およびサステナビリティ 主 流 化 )イニシアティブ 参<br />
加 大 学 が 関 与 しています。ユネスコのイニシアティブとの 具 体 的 な 連<br />
携 については、ESD 関 連 のユネスコチェアが 中 核 機 関 になっている<br />
RCEに、RCE 岡 山 ( 岡 山 大 学 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 と 研 究<br />
ユネスコチェアUNESCO Chair in Education and Research for<br />
Sustainable Development)、RCEクレタ(クレタ 大 学 ESDにおける<br />
情 報 通 信 技 術 ユネスコチェアUNESCO Chair in ICT in ESD)、RCE<br />
ハンブルク(リューネブルク・ロイファナ 大 学 持 続 可 能 な 開 発 のための<br />
高 等 教 育 ユネスコチェア UNESCO Chair in Higher Education for<br />
Sustainable Development)などがあります。また、 日 本 のRCEの 中<br />
核 機 関 である 大 学 の 多 くは、 文 部 科 学 省 の 国 際 協 力 イニシアティブの<br />
下 、アジアやアフリカの 大 学 と 共 同 ESDプロジェクトを 実 施 しています。<br />
RCEの 多 様 な 解 釈<br />
これまで 見 てきたように、 国 連 大 学 は、 地 域 のステークホルダーの 意<br />
見 を 取 り 入 れながら、RCEコンセプトを 洗 練 させてきました。RCEの<br />
数 が 増 えるにつれ、 元 来 は 国 連 大 学 が 意 図 していなかったようなか<br />
たちでRCEを 捉 える 地 域 も 出 てきました。 一 般 的 にRCEのイメージ<br />
は、ESD 推 進 拠 点 、 情 報 センター、 情 報 交 換 と 共 有 のプラットフォーム<br />
といったものが 主 流 をなしています。このようなネットワークのハブと<br />
いうイメージは、 元 来 国 連 大 学 が 提 示 した、「 地 域 にESDを 届 ける」た<br />
めの「 知 識 関 連 機 関 による 知 識 伝 達 重 視 型 」のRCEのイメージに 近<br />
いと 言 えます。このようなRCEの 捉 え 方 においては、RCEの 主 な 役 割<br />
は 知 識 管 理 (knowledge management)と 正 しい 知 識 の 普 及 になる<br />
ため、データベースやウェブサイトの 構 築 など 知 識 共 有 の 技 術 的 な 側<br />
面 がクローズ・アップされます。 一 方 で、RCEを「 実 践 共 同 体 」、 分 野 横<br />
断 的 な「 社 会 学 習 (ソーシャル・ラーニング)」を 支 援 する 仕 組 み、「 学 習<br />
ネットワーク」と 捉 える 人 たちもいます。 知 識 伝 達 重 視 型 モデルとは 対<br />
照 的 に、 社 会 学 習 重 視 型 モデルでは、RCEを 学 びの 場 と 捉 え、 多 様 な<br />
ステークホルダーがさまざまな( 時 に 対 立 する) 利 害 や 見 解 を 同 じテー<br />
ブルに 持 ち 寄 り、 地 域 の 課 題 の 解 決 策 を 模 索 することにRCEの 価 値<br />
を 見 出 します。<br />
知 識 伝 達 重 視 型 モデルでは、 既 存 の 知 識 を 伝 えることが 中 心 となりま<br />
すが、 社 会 学 習 重 視 型 では、 新 しい 知 識 の 創 造 が 重 要 視 されます。ど<br />
のRCEにとっても、 地 域 のESD 関 連 活 動 をどのように 整 理 し 共 有 する<br />
かはRCE 運 営 上 の 重 要 検 討 事 項 だと 言 えます。また、RCE 間 の 情 報<br />
や 経 験 の 共 有 は、グローバルなRCEネットワークの 最 重 要 課 題 のひ<br />
とつです。グローバルRCEサービスセンターは、 国 際 RCE 会 議 (RCE<br />
年 次 総 会 )を 開 催 しRCE 同 士 の 対 面 的 な 意 見 交 換 と 交 流 の 場 を 設<br />
ける 一 方 、 世 界 のRCEに 関 する 情 報 のゲートウェイとなるRCEポータ<br />
ルサイトを 構 築 中 です。すでに2010 年 からRCE 年 次 報 告 書 が 実 験 的<br />
にオンライン 提 出 できるようになっています。このように、 情 報 通 信 技<br />
術 を 活 用 した 情 報 共 有 の 技 術 的 側 面 は、 当 然 ながら 軽 視 するべきで<br />
はありませんが、RCEの 活 動 が 深 化 するにつれて、 組 織 横 断 的 な 知<br />
識 創 造 の 場 、「 実 践 共 同 体 」としてのRCEの 価 値 を 高 めて 行 くことが、<br />
ますます 必 要 となってくると 言 えるでしょう。<br />
29
RCEは、 革 新 的 な 対 話 の 場 、<br />
地 域 の 知 識 ベース、<br />
ESD 推 進 拠 点 、 情 報 交 換 と<br />
共 有 のプラットフォーム、<br />
「 実 践 共 同 体 」、 分 野 横 断 的 な<br />
「 社 会 学 習 (ソーシャル・ラーニング)」<br />
を 支 援 する 仕 組 み、<br />
「 学 習 ネットワーク」など、<br />
さまざまに 定 義 されてきました。<br />
© Marta Pinto/RCE Porto<br />
2009 年 第 4 回 国 際 RCE 会 議 会 場 バイオスフィア(カナダ、モントリオール)<br />
© Marta Pinto/RCE Porto<br />
第 4 回 国 際 RCE 会 議 ポスターセッション<br />
© RCE Penang<br />
RCEペナンによるリサイクル・ワークショップ
UNESCO World<br />
Conference<br />
on ESD<br />
2009 年 3 月 31 日 〜4 月 2 日<br />
ユネスコESD 世 界 会 議<br />
(ドイツ・ボン 国 連 ESDの10 年 中 間 年 会 合 )<br />
写 真<br />
上 : 国 連 大 学 展 示 ブース<br />
中 央 右 : 全 体 会 議<br />
中 央 左 、 下 :RCEサイドイベント
今 後 の 展 望<br />
RCEイニシアティブは、DESD 前 半 の5 年 間 で、 地 域 レベルでESDを 推 進 するネットワー<br />
クを 世 界 中 で 立 ち 上 げることに 成 功 しました。DESD 後 半 にますます 重 要 となってくるの<br />
は、どのように 個 々のRCEの 実 践 、 各 RCE、ならびにRCEイニシアチブ 全 体 を 評 価 するの<br />
か、という 難 題 の 答 えを 模 索 し 続 けることです。 各 RCEの 評 価 は、RCEの 実 績 を 値 踏 みし<br />
たり 他 のRCEと 比 較 するための 評 価 ではなく、 各 地 域 のESD 実 践 を 向 上 させるための 評<br />
価 でなければなりません。RCEが 質 を 高 め 持 続 可 能 なネットワークとなっていくためにも、<br />
評 価 は 必 要 です。また、RCEの 評 価 をめぐるRCE 自 身 による 議 論 と 試 行 錯 誤 のプロセス<br />
は、DESDの 重 要 な 成 果 のひとつとなり、 持 続 可 能 な 社 会 づくりへの 示 唆 を 提 供 すること<br />
が 期 待 されます。<br />
DESD 国 際 実 施 計 画 (UNESCO 2005)は、DESDを 推 し 進 める7つの 戦 略 のひとつに<br />
「パートナーシップとネットワーク」を 挙 げています。RCE 自 体 が、パートナーシップであ<br />
りネットワークであるばかりでなく、その 他 の 戦 略 (ビジョン 構 築 と 提 言 活 動 、 協 議 と 主 体<br />
者 意 識 、 能 力 開 発 と 訓 練 、 研 究 開 発 とイノベーション、 情 報 通 信 技 術 の 活 用 、モニタリング<br />
と 評 価 )を 網 羅 的 に 取 り 入 れた 社 会 実 験 と 捉 えることができます。<br />
国 連 大 学 高 等 研 究 所<br />
ESDスペシャリスト<br />
望 月 要 子<br />
32
注<br />
1. 最 初 の7つのR C Eは、 正 式 なR C E 認 定 申 請 プロセスを 設 ける 前 に、パイロットR C Eとして<br />
承 認 されました。2005 年 6 月 に 作 られた7つのRCEは、RCE Barcelona(バルセロナ)(スペイン)、<br />
仙 台 広 域 圏 ( 日 本 )、 岡 山 ( 日 本 )、Pacific( 太 平 洋 )( 太 平 洋 島 嶼 国 )、Penang(ペナン)(マレーシア)、<br />
Rhine-Meuse region(ライン-ムーズ 川 流 域 )(オランダ、ベルギー、ドイツ)、Toronto(トロント)(カナダ)<br />
です。さらに5つのRCE、すなわちRCE Ghana(ガーナ)、 Jordan(ヨルダン)、 統 営 (トンヨン)、Cebu<br />
(セブ)、 横 浜 が 承 認 された 後 、2006 年 4 月 にウブントゥRCE 審 査 委 員 会 が 作 られました。<br />
2. 高 等 教 育 機 関 のない 村 にRCEを 作 ることはできませんが、 村 の 学 校 での 環 境 教 育 プロジェクトなど、<br />
小 規 模 なコミュニティを 中 心 とした 活 動 もRCEの 活 動 を 構 成 する 要 素 となり 得 ます。 各 RCE 専 用 のウェ<br />
ブサイトやその 地 域 の 学 校 教 師 用 の 教 材 作 りなど、RCEの 地 理 的 範 囲 全 体 をカバーする 活 動 もありま<br />
すが、 注 意 しなければならないのは、RCEの 各 活 動 の 地 理 的 範 囲 は 必 ずしもそのRCEの 地 理 的 範 囲<br />
と 一 致 しているわけではないということです。<br />
3. 2002 年 のヨハネスブルグ・サミットでは、 国 連 大 学 高 等 研 究 所 のリーダーシップの 下 で、11の 代 表 的 な<br />
教 育 ・ 学 術 機 関 がウブントゥ 宣 言 に 署 名 しました。その 目 的 は、 科 学 技 術 分 野 の 研 究 者 と 教 育 者 の 協 力<br />
関 係 を 強 化 し、 持 続 可 能 な 開 発 のための 最 新 の 科 学 技 術 を 教 育 プログラムに 適 切 に 採 り 入 れ(あらゆ<br />
る 教 科 、あらゆるレベル)、フォーマル 教 育 とノンフォーマル 教 育 の 協 力 を 強 化 することにあります。 詳 しく<br />
は 参 考 資 料 をご 覧 ください。<br />
4. RCEの 概 念 では、「 科 学 」には 自 然 科 学 と 社 会 科 学 の 両 方 が 含 まれます。<br />
5. 2005 年 6 月 に 名 古 屋 で 開 かれたウブントゥ 同 盟 の 会 議 では、 本 同 盟 の 枠 組 みの 中 で、 国 連 大 学 が<br />
ESDの 地 域 的 多 様 性 を 尊 重 するかたちでRCE 設 立 を 推 進 することが 合 意 されました。 最 初 に 作 ら<br />
れた7つのRCEに 続 き、2005 年 の 終 わりから2006 年 初 めにかけてさらに5つのRCEが 設 立 されまし<br />
た( 詳 細 は 注 1 参 照 )。ウブントゥRCE 審 査 委 員 会 は2006 年 12 月 6 日 の 第 1 回 パリ 会 議 で、 新 たに23<br />
のRCEの 認 定 を 国 連 大 学 に 勧 告 し、さらに、 新 規 RCE 認 定 基 準 も 採 択 しました。 国 連 機 関 の 認 定 枠<br />
組 みとしてRCEイニシアティブをグローバルコンパクトやユネスコの 世 界 遺 産 と 比 較 した 論 考 として<br />
は、Mochizuki(2008 年 )を 参 照 のこと。<br />
参 考 文 献<br />
ACCU (2009). ESD 教 材 活 用 ガイド: 持 続 可 能 な 未 来 への 希 望 、 東 京 :ユネスコ・アジア 文 化 センター<br />
(Asia-Pacific Cultural Centre for UNESCO: ACCU)<br />
Keen, M., Brown, V. A. & Dyball, R. (2005). Social Learning in Environmental Management:<br />
Towards a Sustainable Future. Sterling, VA: Earthscan.<br />
Mochizuki, Y. (2008). The RCE Initiative as a Policy Instrument for Sustainable<br />
Development: Can It Match the World Heritage List and the Global Compact? Journal of<br />
Education for Sustainable Development, 2(1):61-71.<br />
UNESCO (2005). <strong>United</strong> <strong>Nations</strong> Decade of Education for Sustainable Development (2005-<br />
2014) International Implementation Scheme, Paris: UNESCO.<br />
<strong>UNU</strong> (2004). Regional Centres of Expertise on Education for Sustainable Development:<br />
Concept Paper [Online], Available at: www.ias.unu.edu/efsd/rceconceptpaper<br />
<strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong> (2005). Mobilising for Education for Sustainable Development: Towards a Global<br />
Learning Space based on Regional Centres of Expertise, Yokohama, Japan: <strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong><br />
「 国 連 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 」 関 係 省 庁 連 絡 会 議 (2009).ジャパンレポート: 我 が 国 の<br />
UNDESDに 関 する 取 組 及 び 優 良 事 例 (2005-2008 年 ),<br />
Available at: http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokuren/090709report.pdf<br />
33
© RCE Montreal<br />
RCEモントリオール 作 成 の2009 年 第 4 回 国 際 RCE 会 議 のポスター(デザイン Perennia)
Fifth<br />
International<br />
RCE Conference<br />
2010 年 5 月 18 日 ~20 日<br />
第 5 回 国 際 RCE 会 議<br />
(ブラジル・クリチバ)
写 真<br />
( 左 ページ)<br />
上 : 生 物 多 様 性 、 経 済 危 機 、 科 学 技 術 などの 専 門 家 に<br />
よるESDトークショー<br />
下 : 参 加 者 の 集 合 写 真 会 場 となったパラナ 工 業 連 盟<br />
(FIEP)の 庭 にて。41カ 所 のRCE、100 名 以 上 が 終 結 。<br />
( 右 ページ)<br />
上 左 :テーマ 別 分 科 会<br />
上 右 :ブラジル 出 身 の 国 連 大 学 第 三 代 学 長 (1987<br />
~1997 年 ) エイトール・グルグリーノ・デソウザ<br />
(Heitor Gurgulino de Souza) 氏<br />
中 央 :ワールドカフェ 方 式 によるRCE 運 営 上 の 課 題 の<br />
議 論<br />
下 : 最 終 日 のディナーレセプションの 帰 りのバスの 中 で
RCEの 誕 生 と 発 展 についての 一 私 見<br />
RCEの 概 念 は、2003 年 初 め、 当 時 の 国 連 大 学 学 長 であるハンス・ファ<br />
ン・ヒンケル 教 授 によって 初 めて 提 案 されました。ヒンケル 教 授 の 提 案<br />
は、ESDを 世 界 中 に 普 及 するための 対 話 の 足 がかりとなる 場 を 作 るこ<br />
とでしたが、 当 時 の 私 にはそのアイデアの 是 非 はよくわかりませんでし<br />
た。なぜなら、 特 に 地 域 ・ 地 方 レベルでは、 教 育 界 にはすでに 良 好 なコ<br />
ミュニケーションと 協 力 関 係 が 存 在 するはずだと 思 われたからです。<br />
そこでわれわれは、 実 際 に 複 数 の 地 域 でこの 概 念 の 検 証 を 試 み、その<br />
アイデアの 有 効 性 を 検 討 することにしました。<br />
国 連 大 学 からのアクセスを 考 慮 に 入 れ、 日 本 では 宮 城 県 仙 台 広 域 圏<br />
と 岡 山 県 岡 山 市 という2つの 地 域 が 選 ばれました。 実 際 、これらの 地<br />
域 ではESDに 関 連 したさまざまな 活 動 が 行 われており、それらの 活 動<br />
は 地 方 自 治 体 や 公 民 館 などの 地 域 住 民 を 対 象 とした 機 関 、NGO、 学<br />
校 などによって 導 入 されたものでした。しかし、 何 よりも 驚 いたのは、 小<br />
学 校 同 士 や 中 学 校 同 士 など、 同 じレベルの 学 校 間 でもコミュニケーシ<br />
ョンや 協 力 関 係 がほとんどなく、 小 学 校 と 中 学 校 といったレベルの 異<br />
なる 学 校 間 や 学 校 と 他 の 機 関 との 間 にはまったく 交 流 がないという 話<br />
を 聞 いたときです。この 最 初 の 調 査 によって、われわれは、ESDに 関 す<br />
る 国 連 大 学 プログラムの 中 で 最 優 先 すべきはRCEであると 確 信 しまし<br />
た。RCEに 関 する 最 初 のコンセプト・ペーパーは、2004 年 の 国 連 持 続<br />
可 能 な 開 発 委 員 会 第 12 会 期 (CSD-12)で 正 式 に 提 示 されました。<br />
最 初 に 作 られた7つのRCEは、2005 年 6 月 に 名 古 屋 で 開 かれたアジ<br />
ア 太 平 洋 地 域 におけるDESDの 開 始 式 典 において 承 認 されました。<br />
それまで、われわれはRCEの 概 念 について 世 界 中 の 組 織 ・ 機 関 と 議<br />
論 してきましたが、 実 際 にどのように 着 手 すればよいかについては 決<br />
定 的 な 結 論 は 見 いだせないままでした。 名 古 屋 会 議 の 際 に 国 連 大 学<br />
は、それぞれの 地 域 のRCE 設 立 に 積 極 的 な、 志 を 同 じくする 組 織 や<br />
37
機 関 による 集 まりを 設 けました。RCEを 促 進 するには 政 治 的 勢 いが 必<br />
要 だというのが 参 加 者 らの 感 想 であり、 国 連 大 学 に 対 して 認 定 書 の<br />
発 行 を 要 求 しました。これは 予 想 外 のことでした。 名 古 屋 会 議 の 最 終<br />
日 に、 国 連 大 学 は 会 議 に 参 加 したすべてのRCE 候 補 に 承 認 を 与 えま<br />
したが、ほとんどの 候 補 は 未 だRCEの 基 準 を 満 たすまでには 至 ってい<br />
ませんでした。ここ 数 年 はRCE 候 補 に 対 してより 厳 格 な 基 準 が 要 求 さ<br />
れるようになっています。<br />
数 ヵ 月 前 、 私 はRCE 仙 台 広 域 圏 とRCE 岡 山 を 訪 問 する 機 会 を 得 まし<br />
た。 両 者 は 最 初 に 作 られた7つのRCEのうちの2つです。2005 年 に 国<br />
連 大 学 は 両 RCEを 承 認 しましたが、その 際 に 複 数 の 改 善 要 求 が 出 さ<br />
れました。その 後 の 両 RCEの 継 続 的 な 努 力 によって、 今 回 私 が 訪 れた<br />
ときには 要 求 された 点 の 多 くはすでに 修 正 されており、この5 年 間 で<br />
RCE 活 動 は 大 いに 改 善 されていました。 最 初 に 作 られた7つのRCEは<br />
当 初 完 璧 には 程 遠 い 状 態 でしたが、その 後 大 きく 進 歩 し、 今 では 他 の<br />
RCEを 牽 引 するまでになりました。これは 喜 ばしい 限 りです。<br />
しかしながら、RCEは 生 きたネットワークです。 過 去 5 年 間 にRCEは 大<br />
きく 向 上 しましたが、 成 長 の 余 地 はまだ 十 分 あります。 今 後 も、 持 続 可<br />
能 な 社 会 の 実 現 に 向 けて 歩 みを 止 めることなく 成 熟 し 続 けることが 必<br />
要 です。<br />
金 沢 大 学 教 授<br />
( 前 国 連 大 学 高 等 研 究 所 ESDプログラムコーディネーター)<br />
鈴 木 克 徳<br />
38
2.<br />
RCEの 発 展<br />
39
はじめに<br />
世 界 人 口 全 体 の 半 数 以 上 を 擁 するア<br />
ジア 太 平 洋 地 域 は 広 大 であり、 地 理<br />
的 、 文 化 的 、 社 会 的 経 済 的 にもきわめ<br />
て 多 様 です。この 地 域 には、 世 界 の 中<br />
でも 国 土 面 積 がきわめて 広 く、 人 口 の<br />
最 も 多 い 国 が 存 在 する 一 方 で、 国 土<br />
面 積 がきわめて 狭 く、 人 口 の 最 も 少 な<br />
い 国 も 存 在 します。 先 進 国 、 発 展 途 上<br />
国 、 後 発 発 展 途 上 国 、 内 陸 国 、 小 島<br />
嶼 開 発 途 上 国 といった 多 様 な 国 々で<br />
構 成 されており、 人 口 の70% 以 上 が1<br />
日 当 たり1 米 ドル 未 満 で 生 活 していま<br />
す。2025 年 までには、 巨 大 都 市 の 数 が 大 幅 に 増 え、 地 域 人 口 全 体 の 半 分 以 上 がこうした 巨 大 都<br />
市 に 集 中 するであろうと 考 えられています。 桁 外 れの 人 口 増 加 は、 経 済 成 長 を 実 現 するためにます<br />
ます 多 くの 天 然 資 源 を 消 費 するようになると 予 想 されており、そのことによる 環 境 への 悪 影 響 も 懸<br />
念 されています。<br />
アジア 太 平 洋 地 域 における 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (ESD)は、 計 り 知 れないほど 大 きな 問<br />
題 に 直 面 しています。 一 般 的 に、ESDの 概 念 はよく 理 解 されていません。こうした 理 解 の 欠 如 を 考 え<br />
ると、この 地 域 では 啓 発 のためのキャンペーン 強 化 が 急 務 であり、 特 に 自 らの 将 来 がかかっている<br />
若 い 世 代 や、 必 然 的 に 未 来 のリーダーとなり、 変 化 の 担 い 手 となる 若 者 を 取 り 込 むことが 必 要 不 可<br />
欠 です。 質 の 高 い 基 礎 教 育 を 受 けられるようにすることは、 国 連 の「 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育<br />
の10 年 (DESD)」における 主 眼 点 のひとつですが、この 地 域 ではそれも 難 しいのが 現 状 です。 貧 し<br />
い 国 々では 学 校 が 不 足 しており、 教 師 の 資 格 をもつ 者 は 少 なく、 必 要 な 学 校 設 備 もありません。 教<br />
育 施 設 やカリキュラムの 質 どころではなく、 教 育 を 受 ける 機 会 すらなかなか 得 られない 状 況 では、<br />
持 続 可 能 性 の 概 念 に 基 づく 変 革 をもたらすような 教 育 を 導 入 することは 途 方 もなく 大 きな 課 題 とな<br />
り、DESDの 目 標 実 現 には 程 遠 い 状 況 です。アジア 太 平 洋 地 域 のすべての 社 会 において、 人 々の 頭<br />
と 心 にESDを 植 えつけるという 努 力 目 標 を 掲 げる「 地 域 の 拠 点 」(RCE)の 役 割 は 非 常 に 重 要 です。<br />
アジア 太 平 洋 地 域 に<br />
おけるRCEの 発 展<br />
40
アジア 太 平 洋 地 域 におけるRCEの 歴 史<br />
2010 年 3 月 現 在 、アジア 太 平 洋 地 域 には28カ 所 のRCEが 存 在 しま<br />
す。2005 年 に 世 界 的 に 認 定 された 最 初 の7つのRCEのうち、5つはア<br />
ジア 太 平 洋 地 域 にあります。その 後 、 認 定 されるRCEの 数 は 着 実 に<br />
増 え、ますます 多 くのESD 従 事 者 および 関 係 者 (ステークホルダー)が<br />
RCEネットワークの 価 値 やすばらしさを 認 識 するようになっています。<br />
これまで、アジア 太 平 洋 の 地 域 社 会 においてRCE 推 進 の 主 な 手 段 と<br />
なってきたのは、 国 連 大 学 高 等 研 究 所 (<strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong>)に 拠 点 を 置 くグロ<br />
ーバルRCEサービスセンターによる 直 接 的 な 接 触 、すでに 認 定 され<br />
たRCEを 通 して 行 われるプロモーションと、ESDや 関 連 テーマに 関 す<br />
る 地 域 会 議 や 会 合 を 通 したプロモーションであり、これらの 組 み 合 わ<br />
せにより 行 われてきました。<br />
アジア 太 平 洋 地 域 におけるRCEネットワークの40% 以 上 を 占 める12<br />
のRCEは 高 等 教 育 機 関 が 主 体 となっており、 約 4 分 の1(8つのRCE)<br />
は 地 方 公 共 団 体 が、 残 りはNGO(6つのRCE)または 研 究 機 関 (2つ<br />
のRCE)が 主 体 となっています。<br />
現 在 、アジア 太 平 洋 地 域 のRCEが 取 り 組 んでいる 問 題 やプロジェクト<br />
は、 生 物 多 様 性 の 保 全 、 若 者 、エネルギー、 教 員 の 養 成 、 災 害 の 軽 減 、<br />
天 然 資 源 の 管 理 、 気 候 変 動 、 学 校 カリキュラムの 新 たな 方 向 づけ、モ<br />
デル 校 の 推 進 、 持 続 可 能 な 廃 棄 物 管 理 、 環 境 教 育 などです。<br />
認 定 されるRCEの 数 は<br />
神 戸 で 開 かれたESDシンポジウム<br />
2006 年 のノーベル 平 和 賞 受 賞 のムハマド・ユヌス 氏 を 囲 んで<br />
© RCE Hyogo-Kobe<br />
着 実 に 増 え、<br />
ますます 多 くの<br />
ステークホルダーが<br />
RCEネットワークの<br />
価 値 やすばらしさを<br />
認 識 するようになっています。
地 域 フォーラム、 地 域 のつながり<br />
最 近 、2つのアジア 太 平 洋 年 次 フォーラムにおいて、アジア 太 平 洋 地<br />
域 のRCEの 活 動 が 紹 介 されました。ひとつはユネスコ・アジア 太 平<br />
洋 地 域 教 育 開 発 計 画 (UNESCO-APEID) 会 議 、もうひとつは、 国<br />
連 大 学 高 等 研 究 所 ・ 東 南 アジア 諸 国 連 合 (ASEAN) 事 務 局 ・ 主 催<br />
国 タイ 環 境 省 の 共 同 開 催 による、 持 続 可 能 な 生 産 と 消 費 に 関 する<br />
ASEAN+3( 中 国 ・ 日 本 ・ 韓 国 )リーダーシッププログラムです。この<br />
2つの 地 域 会 議 で 紹 介 されたプロジェクトは、 韓 国 のRCE 統 営 (トン<br />
ヨン)による 持 続 可 能 な 社 会 に 対 する 意 識 向 上 プロジェクト、 日 本 の<br />
RCE 仙 台 広 域 圏 におけるESDに 関 する 教 員 養 成 プロジェクト、グリー<br />
ンマーケット、 持 続 可 能 な 農 業 、 企 業 の 社 会 的 責 任 などです。<br />
アジア 太 平 洋 地 域 のRCEは、 半 年 ごとに 開 催 される2つの 会 議 を 通<br />
して 結 びつきを 強 めてきました。ひとつは 国 際 RCE 会 議 (RCE 年 次 総<br />
会 )とともに 開 かれる 会 議 、もうひとつはアジア 太 平 洋 地 域 のいずれか<br />
のRCEが 主 催 国 となって 開 かれる 地 域 会 議 です。これらの 会 議 では、<br />
共 同 プロジェクトおよび 共 同 プログラムを 通 してRCEの 共 通 の 関 心 事<br />
となっている 問 題 を 採 り 上 げ、 討 論 を 行 います。 前 回 、2009 年 11 月 に<br />
インドのデリーで 開 催 されたアジア 太 平 洋 RCE 会 議 で 採 り 上 げられ<br />
た 関 心 領 域 は、 持 続 可 能 な 資 源 利 用 、 持 続 可 能 な 生 活 様 式 、 気 候 変<br />
動 の 社 会 的 影 響 、 気 候 変 動 と 沿 岸 地 域 です。<br />
現 在 、アジア 太 平 洋 地 域 のRCEは、 若 者 、 学 校 、 地 域 社 会 、 生 物<br />
多 様 性 といったテーマで 共 同 ESDプロジェクトを 進 めています。ま<br />
た、Sejahtera(マレー 語 で 平 和 ・ 調 和 ・ 健 康 ・ 福 祉 の 意 )プロジェクト<br />
に 着 手 することで、 健 康 ・ 福 祉 というなによりも 重 要 なテーマにアジア<br />
太 平 洋 地 域 のRCE 全 体 で 取 り 組 もうという 構 想 もあり、 現 在 、このプ<br />
ロジェクトは 概 念 化 の 段 階 にあります。<br />
さらにアジア 太 平 洋 地 域 のRCEは、 高 等 教 育 機 関 におけるESD 活 動<br />
の 強 化 を 含 め、DESDの 抱 負 を 実 現 するための 国 連 大 学 のさまざま<br />
な 活 動 にも 貢 献 しています。 本 地 域 のRCEを 牽 引 する 機 関 の 多 くはア<br />
ジア 環 境 大 学 院 ネットワーク・プロスパーネット( 英 語 名 :ProSPER.<br />
Net、The Promotion of Sustainability in Postgraduate<br />
Education and Research Networkの 頭 文 字 )のメンバーです。プ<br />
ロスパーネットは、 持 続 可 能 な 開 発 を 大 学 院 コース、カリキュラム、 研<br />
究 プログラムに 統 合 することを 目 指 した、アジア 太 平 洋 地 域 の 代 表 的<br />
な 高 等 教 育 機 関 からなる 同 盟 組 織 であり、 国 連 大 学 高 等 研 究 所 の<br />
後 援 ・ 総 指 揮 の 下 に 活 動 を 行 っています。<br />
42
今 後 の 展 望<br />
アジア 太 平 洋 地 域 におけるRCEの 将 来 のビジョンは、 強 いリーダーシップ、コミットメント、<br />
コミュニケーション、 参 加 を 確 保 することです。これらはRCEの 持 続 可 能 性 の 鍵 となるもの<br />
です。すべてのRCEには、 中 核 となる 組 織 を 代 表 し、RCEのビジョンと 使 命 を 追 求 する 擁<br />
護 者 の 役 目 を 果 たす、 中 核 的 な 人 々の 集 団 が 必 要 です。またリーダーシップには、 効 果 的<br />
かつ 効 率 的 なRCEの 意 思 決 定 構 造 を 有 することも 含 まれます。さらに、RCEのステークホ<br />
ルダーは 時 間 と 資 源 をこの 活 動 に 注 ぎ 込 むことが 必 要 であり、なおかつそのコミットメント<br />
は 単 に 個 人 的 なものではなく、 組 織 的 であることが 求 められます。コミュニケーションは 持<br />
続 可 能 性 のもうひとつの 必 須 要 素 であり、RCE 内 ( 各 RCEのメンバー 間 )のコミュニケー<br />
ションだけでなく、RCE 間 ( 大 陸 規 模 、 世 界 規 模 でのRCE 間 )のコミュニケーションも 必<br />
要 です。 最 後 に、RCEが 持 続 するには、RCE 内 のステークホルダーの 幅 広 い 参 加 と、 国 際<br />
的 なRCEの 活 動 への 参 加 が 必 要 といえます。<br />
国 連 大 学 高 等 研 究 所 客 員 教 授<br />
アジア 工 科 大 学 院 教 授<br />
マリオ・タブキャノン<br />
Mario T. Tabucanon<br />
43
ヨーロッパに<br />
おけるRCEの 発 展<br />
はじめに<br />
他 の 大 陸 と 同 じく、<br />
ヨ ー ロッパ に お け る<br />
R C E の 歴 史 は 比 較<br />
的 浅 く、 最 初 に で き<br />
た 2 つ の R C E 、R C E<br />
Rhine-Meuse(ライン<br />
=ムーズ 川 流 域 )とRCE<br />
Barcelona(バルセロ<br />
ナ)が 認 定 されたのは<br />
2005 年 6 月 でした。その<br />
後 ほどなくして 他 のRCE<br />
も 設 立 されました。ヨー<br />
ロッパでは 大 陸 の 北 西<br />
部 を 中 心 に 急 速 にネット<br />
ワークが 拡 大 し、22の<br />
RCEが 作 られましたが、<br />
ヨーロッパ 南 部 や 東 部<br />
では 数 が 少 なく、ポルト<br />
ガルに3カ 所 、スペイン<br />
に1カ 所 存 在 するにとど<br />
まっています。こうしたヨ<br />
ーロッパにおけるRCE<br />
の 分 布 不 均 衡 は、これま<br />
でRCEの 設 立 が 主 に 民<br />
間 主 導 で 行 われてきたこ<br />
と、また 既 にRCEが 存 在<br />
する 国 でさらにRCEを 発 展 させようという 機 運 が 高 まること( 例 えば 英 国 には6つ、ドイツ<br />
には4つのRCEがあります)に 主 に 由 来 しています。<br />
RCEの 分 布 不 均 衡 に 対 し、RCEの 設 立 に 向 けた 動 きを 促 すために、 欧 州 連 合 (EU) 主<br />
催 の3-LENSUS(www.3-lensus.eu)と 呼 ばれるプロジェクトが 発 足 しました。このプロ<br />
ジェクトには、 既 存 のESDネットワークのうちRCE Graz-Styria(グラーツ=シュタイア)と<br />
RCEライン=ムーズ 川 流 域 がかかわっており、 地 中 海 ヨーロッパおよび 東 欧 地 域 における<br />
RCE 設 立 を 支 援 しています。<br />
従 来 、ヨーロッパにおけるRCEは 申 請 内 容 の 質 が 高 く、 前 回 のウブントゥRCE 審 査 委 員<br />
会 会 議 (2009 年 )では、ヨーロッパ 地 域 からの7つの 申 請 のうち6つに 認 定 の 勧 告 が 出 さ<br />
れ、 無 事 国 連 大 学 によりRCEとして 認 定 されました。<br />
44
共 通 のアイデンティティ<br />
ヨーロッパ 地 域 のRCEには 多 くの 共 通 点 があります。2009 年 5 月 に 開<br />
かれた 前 回 の 戦 略 会 議 では、ESDに 関 する 複 数 の 共 通 した 課 題 が 明<br />
らかになりました。 例 えば、 地 域 交 流 を 通 して 社 会 と 教 育 の 間 の 橋 渡<br />
しをすること、 経 済 のパラダイムを 見 直 し、 政 治 的 議 論 に 加 わること、<br />
ヨーロッパとアフリカ 間 の 交 流 と 学 習 の 拡 充 などが 問 題 として 採 り 上<br />
げられました。<br />
RCEの 発 展 に 関 してヨーロッパ 全 体 に 共 通 するアイデンティティがあ<br />
るとすれば、それは 若 者 を 対 象 としたプログラムに 重 点 が 置 かれてい<br />
ること、 大 陸 における 政 治 的 対 話 への 参 加 が 全 体 として 重 視 されて<br />
いることです。ヨーロッパ 地 域 のRCEが 直 面 する 共 通 の 利 害 や 難 題<br />
は、 青 少 年 の 育 成 に 焦 点 を 当 てたプログラム(ロシアのニジニノヴゴ<br />
ロドにおける 国 連 環 境 計 画 (UNEP) 青 少 年 交 換 プログラムなど)や、<br />
教 育 と 持 続 可 能 性 をテーマとした 雑 誌 の 発 行 (RCEバルセロナで 発<br />
行 している 雑 誌 など)、EU 政 策 を 含 む 国 内 外 のESD 政 策 の 立 案 への<br />
関 与 、ヨーロッパとアフリカの 学 生 ・スタッフ 交 換 プログラムの 構 築 な<br />
ど、ESDをめぐるさまざまな 活 動 へとつながっています。<br />
ヨーロッパのRCEネットワークの 強 さはその 年 次 会 議 にも 表 れてい<br />
ます。ヨーロッパ 地 域 のRCE 会 議 が 最 初 に 開 かれたのは2007 年 、<br />
スウェーデンのマルメ 市 においてであり、その 後 も 毎 年 自 発 的 に 開 催<br />
されています。2008 年 にはRCEアイルランド、2009 年 にはRCEグラ<br />
ーツ=シュタイアがホストになり 地 域 会 議 が 開 かれました。<br />
RCEの 連 携 と 貢 献<br />
一 般 に 認 識 されているように、ヨーロッパにはRCEを 支 援 する 調 整 機<br />
関 が 必 要 です。 調 整 機 関 はEUと 協 力 して 資 金 調 達 を 助 け、ヨーロッ<br />
パ 地 域 の 既 存 のネットワークと 相 互 リンクし、RCE 間 およびRCEと 社<br />
会 とのコミュニケーションを 促 し、RCEがほとんどあるいは 全 く 存 在 し<br />
ない 国 々におけるRCE 設 立 への 動 きを 促 進 する 役 目 を 果 たします。<br />
こうした 調 整 機 関 の 設 置 によって、ヨーロッパ 地 域 のRCEネットワー<br />
クをさらに 強 化 することができると 考 えられます。ヨーロッパ 地 域 の 強<br />
固 なRCEネットワークの 価 値 を 理 解 するには、 各 国 の 政 策 と 国 際 協<br />
力 との 調 整 が 求 められるに 至 った 今 日 の 世 界 において、EUは 最 も 強<br />
力 な 政 治 機 関 のひとつであるということを 考 慮 に 入 れる 必 要 がありま<br />
す。ヨーロッパ 地 域 にRCEの 概 念 を 普 及 させる 最 適 の 方 法 は、ESD<br />
に 関 するヨーロッパ 地 域 の 政 策 立 案 をサポートすることです。そのた<br />
め、2010 年 1 月 現 在 、RCEネットワークではEUのESD 専 門 家 に 対 し<br />
支 援 を 行 っています。 支 援 のもうひとつの 形 態 は、 地 域 における 好 事<br />
例 となる 現 場 の 視 察 を 企 画 することです。2013~2020 年 期 の 準 備<br />
段 階 にあるEUに 対 して、ヨーロッパのRCEネットワークはESD 専 門 家<br />
として 助 言 を 行 うことを 申 し 出 ています。 具 体 的 には、 政 策 文 書 の 作<br />
成 やEUにおけるESD 戦 略 の 構 築 、ヨーロッパ 各 地 からの 経 験 の 収<br />
集 、 学 術 機 関 との 提 携 などを 支 援 することを 提 案 し、EU 以 外 の 国 々<br />
を 対 象 とした 欧 州 近 隣 諸 国 政 策 の 枠 組 み 内 で、EUのESD 政 策 と 関<br />
連 パートナーとを 結 びつける 方 法 を 探 ろうとしています。<br />
45
国 境 を 越 えたESDへの 取 り 組 み<br />
ヨーロッパ 地 域 のいくつかのRCEは、ヨーロッパ 以 外 のRCEやネット<br />
ワークとも 共 同 で 活 動 を 行 っています。ヨーロッパの 政 策 、 特 に 東 欧<br />
や 北 アフリカの 国 々との 協 力 促 進 を 目 的 とした 欧 州 近 隣 諸 国 政 策 や、<br />
ヨーロッパとサハラ 以 南 の 国 々の 協 力 関 係 樹 立 を 目 的 としたEU-ア<br />
フリカ 政 策 は、こうした 大 陸 間 の 協 力 関 係 を 促 進 する 役 目 を 果 たして<br />
います。 持 続 可 能 な 生 産 と 消 費 、ESDと 若 者 、 持 続 可 能 なエネルギー<br />
などは、RCE 同 士 が 協 力 すべき 関 心 の 高 い 問 題 です。<br />
ヨーロッパの<br />
RCEは、<br />
ESDに 関 するEUの<br />
政 策 ・ 戦 略 構 築 を<br />
積 極 的 に<br />
支 援 しています。<br />
© RCE Graz-Styria<br />
持 続 可 能 な 開 発 に 関 する 世 代 を 超 えた 授 業 -<br />
持 続 可 能 性 のシナリオについて 考 える 学 生 らと 地 域 の 活 動 家 たち
今 後 の 展 望<br />
ヨーロッパのRCEの 間 には、ヨーロッパ 地 域 のESDに 真 に 貢 献 できるという 強 い 信 念 が<br />
あります。EUによれば、ヨーロッパは 今 、 大 きな 変 革 の 時 を 迎 えており、ヨーロッパのRCE<br />
コミュニティはこのプロセスに 積 極 的 にかかわっていくことを 決 意 しています。 今 後 、RCE<br />
コミュニティの 成 長 とともに、RCEの 数 が 少 ない 地 域 、 特 に 南 欧 やEUの 新 規 加 盟 国 に 新<br />
たなメンバーが 加 わることが 求 められます。<br />
ヨーロッパRCEコーディネーター<br />
ヨーゼフ・ハーマン<br />
Jos Hermans<br />
47
北 中 米 地 域 に<br />
おけるRCEの 発 展<br />
はじめに<br />
北 中 米 地 域 におけるRCEは、 地 理 的 にも、 言 葉 の 上 でも、また 組 織 的 にもきわめて 困 難<br />
な 課 題 を 乗 り 越 えて 発 展 してきました。 北 中 米 地 域 は 広 大 で、 人 口 が 集 中 する 都 市 部 と、<br />
広 大 な 面 積 を 有 する 比 較 的 人 口 のまばらな 地 域 に 分 かれています。それと 同 時 に、この<br />
大 陸 には3つの 主 要 な 言 語 グループ( 英 語 、フランス 語 、スペイン 語 )が 存 在 し、さらにそ<br />
れぞれの 国 の 中 に 言 葉 や 文 化 を 異 にする 先 住 民 族 の 集 団 が 相 当 数 存 在 しており、こうし<br />
た 特 徴 が、コミュニケーションや 教 育 資 源 の 共 有 をめぐる 困 難 な 問 題 を 作 り 出 していま<br />
す。 加 えて、カナダ、メキシコ、 米 国 はいずれも 連 邦 国 家 であり、 教 育 や 環 境 といった 側 面<br />
は 州 に 管 轄 権 が 存 在 するため、 連 邦 政 府 と 州 政 府 の 間 の 調 整 も 必 要 になります。しかし<br />
ながら、こうした 協 調 を 阻 む 障 碍 は、 結 局 のところRCEが 新 たな 道 を 進 む 機 会 となり、そ<br />
うでなければ 生 まれなかったであろう 考 え 方 や 資 源 を 共 有 する 機 会 になります。RCEは<br />
組 織 同 士 をつなぐ 有 用 な 架 け 橋 として、さまざまなパートナー 組 織 からESDへの 支 援 を<br />
とりつける 役 目 を 果 たしています。<br />
48
北 中 米 地 域 におけるRCE 発 展 の 歴 史<br />
2010 年 1 月 現 在 、 北 中 米 地 域 には 既 に 認 定 された8つのRCEが 存 在<br />
します。カナダなど、 国 連 が 非 常 に 高 く 評 価 されている 地 域 ではRCE<br />
の 概 念 は 比 較 的 容 易 に 発 展 し、また、ESDに 取 り 組 む 既 存 の 関 係 や<br />
ネットワークの 上 にRCEが 作 られた 地 域 でも、RCEは 比 較 的 容 易 に<br />
根 づきました。<br />
北 中 米 大 陸 では、 国 レベルの 政 府 が 重 要 な 役 割 を 果 たしてきました。カ<br />
ナダ 環 境 省 はこれまでに、DESDに 対 して100 万 カナダドル 以 上 の 資 金<br />
提 供 を 行 っています。また、ESDプロジェクトの 文 書 化 や 指 標 の 作 成 を<br />
率 先 して 行 っているだけでなく、モントリオールとハリファックスで2つの<br />
スコーピングを 実 施 し、RCEの 設 立 が 現 実 に 可 能 か 否 かを 検 討 しまし<br />
た。その 結 果 作 られたのがRCE Montreal(モントリオール)です。<br />
州 政 府 も 一 定 の 役 割 を 果 たしています。RCE Saskatchewan(サスカ<br />
チュワン)(カナダ)は、 最 初 の2 年 間 は 主 にパートナーである 高 等 教 育<br />
機 関 ( 当 初 はレジャイナ 大 学 の 持 続 可 能 なキャンパスグループ)が 中 心<br />
となって 活 動 を 行 っていましたが、その 主 要 な 活 動 はサスカチュワン 州<br />
政 府 環 境 省 からの 助 成 金 によって 主 に 賄 われていました。RCEサスカ<br />
チュワンやRCE British Columbia (North Cascades)[ブリティッシュ・<br />
コロンビア(ノースカスケード)]など、 一 部 のカナダのRCEは、カナダの<br />
NPO「 持 続 可 能 な 未 来 のための 学 習 」(LSF)の 傘 下 で 活 動 を 行 う 州<br />
のESD 活 動 グループにも 属 しており、そのことがRCEに 有 益 な 効 果 を<br />
もたらしています。<br />
市 政 府 と 地 元 のパートナーもRCE 形 成 に 重 要 な 役 割 を 果 たしてい<br />
ます。たとえば、ミシガン 州 グランドラピッズ 市 はRCE Grand Rapids<br />
(グランド・ラピッズ)を 設 立 する 際 の 重 要 なパートナーでした。 同 様<br />
に、グレーター・サドベリー 市 は「 健 全 なコミュニティ 内 閣 (Healthy<br />
Community Cabinet)」を 組 織 することで、RCE Greater Sudbury<br />
(サドベリー 広 域 圏 ) 設 立 に 重 要 な 指 導 的 役 割 を 果 たしました。<br />
「 健 全 なコミュニティ 内 閣 」とその 組 織 メンバーは、 今 もRCEサド<br />
ベリー 広 域 圏 の 統 轄 機 構 の 礎 となっています。 同 じく、モントリオー<br />
ル 市 は、2007~2009 年 期 の 持 続 可 能 な 開 発 のための 第 一 次 戦<br />
略 プランにおいてRCEモントリオールの 設 立 を 目 標 のひとつに 掲<br />
げ、リーダー 的 な 役 割 を 果 たしました。また、 大 学 間 のリーダーシッ<br />
プもRCE 設 立 の 一 助 となりました。RCE Western Jalisco( 西 ハ<br />
リスコ)(メキシコ)の 土 台 となったのは、 既 存 の 複 数 の 研 究 組 織 と<br />
地 域 社 会 に 広 がるそのネットワーク、 特 にマナントラン 生 態 学 ・ 生<br />
物 多 様 性 保 持 研 究 所 (Manantlan Institute of Ecology and<br />
Conservation of Biodiversity: IMECBIO)と、グアダラハラ 大 学<br />
サウスコーストキャンパスにある 沿 岸 地 域 の 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する<br />
研 究 部 門 (<strong>University</strong> of Guadalajara’s South Coast Campus’s<br />
Department for the Study of Coastal Zone Sustainable<br />
Development: DEDSZC)です。これらの 組 織 は、この 地 域 の 自 治 体<br />
で 構 成 される 共 同 グループと 協 力 して 活 動 を 行 っています。<br />
49<br />
大 陸 としてのアイデンティティ<br />
北 中 米 地 域 の 大 陸 としてのRCEネットワークのアイデンティティは、 共<br />
通 の 言 語 や 文 化 、 組 織 的 枠 組 みなどからではなく、 共 通 のニーズから<br />
生 まれたものです。 共 通 のニーズとは、 大 陸 規 模 のネットワークに 対 す
北 中 米 地 域 に<br />
おけるRCEは、<br />
地 理 的 にも、<br />
言 葉 の 上 でも、<br />
また 組 織 的 にも<br />
きわめて 困 難 な 課 題 を<br />
乗 り 越 えて 発 展<br />
してきました。<br />
© Crystal Stinson/RCE Saskatchewan<br />
サスカチュワン 州 クレイクで 行 われたRCE Saskatchewan<br />
(サスカチュワン)の 案 内 板 除 幕 式<br />
© D.Weisbrot/RCE Saskatchewan<br />
2008 年 RCEアメリカ 会 議 の 際 に 実 施 されたネイティブプレーリーの 調 査<br />
るニーズです。 北 中 米 地 域 では、 共 通 の 問 題 をめぐる 情 報 や 資 源 の<br />
共 有 が 現 実 的 な 動 機 づけとなっているほか、RCE 間 の 地 理 的 距 離 が<br />
大 きいことも、 大 陸 規 模 での 意 図 的 な 協 力 の 必 要 性 を 高 めています。<br />
共 通 の 問 題 には、ESDトレーニングプログラムに 関 する 共 同 作 業 の 必<br />
要 性 、RCE 間 の 交 流 の 必 要 性 があり、さらに、RCEへの 若 者 の 関 与 を<br />
推 進 すること、 生 物 多 様 性 、 持 続 可 能 性 のための 実 践 共 同 体 の 形 成<br />
( 社 会 学 習 )などが、 重 要 な 具 体 的 テーマとして 挙 げられています。 北<br />
中 米 大 陸 は 言 語 的 に 多 様 であるため、 資 源 を 動 員 して 翻 訳 し、そうし<br />
た 資 源 の 共 有 手 段 (e-ラーニングなど)を 開 発 することが 優 先 課 題 の<br />
ひとつとなっています。<br />
RCEの 価 値 は 広 く 認 識 されていますが、 全 体 として 北 中 米 地 域 の<br />
RCEには 活 動 資 源 が 不 足 しています。したがって、 大 陸 としてのアイデ<br />
ンティティを 形 成 することで 地 域 間 のネットワーク 化 が 可 能 になれば、<br />
こうした 資 源 不 足 が 相 殺 され、 総 体 的 な 資 源 強 化 の 手 段 となります。<br />
50
RCEの 概 念 の 普 及<br />
RCEの 概 念 は、 会 議 体 制 をオープンにし、 既 存 のRCEメンバー 以 外 に<br />
も 参 加 を 認 めたことによって 普 及 しました。たとえば、モントリオールで<br />
開 催 された 国 際 RCE 会 議 での 大 陸 ミーティングには、RCE 会 議 の 直<br />
前 に 開 催 された 第 5 回 世 界 環 境 教 育 会 議 の 参 加 者 も 含 まれていまし<br />
たが、 彼 らは、 環 境 教 育 会 議 でRCEメンバーが 発 表 した 持 続 可 能 性<br />
に 関 するさまざまなトピックから、RCEの 概 念 に 興 味 をもった 人 々でし<br />
た。 具 体 的 な 目 標 を 達 成 しようとする 政 府 も、RCEの 概 念 の 普 及 を 行<br />
っています。カナダ 環 境 省 は 国 内 のRCEに 対 して 金 銭 的 にではありま<br />
せんが、 支 援 を 行 ってきました。 例 えば、RCEと 共 同 で 国 際 生 物 多 様<br />
性 年 (2010 年 )の 普 及 啓 発 や 生 物 多 様 性 プロジェクトの 推 進 を 行 っ<br />
ています。<br />
地 域 レベルでも、RCEの 概 念 を 普 及 させるために 多 くの 活 動 が 行 われ<br />
ており、 地 域 規 模 でできる 持 続 可 能 性 の 推 進 に 関 心 が 集 まっています。<br />
米 国 のミシガン 州 西 部 では、RCE Grand Rapids(RCEグランド・ラピ<br />
ッズ)の 先 例 に 続 き 他 のコミュニティでも、 地 域 社 会 の 持 続 可 能 性 パー<br />
トナーシップ(Community Sustainability Partnerships:CSPs)が 創<br />
設 されました。<br />
さらに、ESDに 関 する 啓 発 イベントを 通 してRCEの 概 念 を 普 及 させる<br />
活 動 も 行 われています。 地 元 が 主 体 となって 行 われるこれらのイベン<br />
トには、RCE サドベリー 広 域 圏 のヘルシー・コミュニティ 賞 (Healthy<br />
Community Recognition Award)や、RCEサスカチュワンで 毎 年<br />
行 われるESD 表 彰 プログラムなどがあります。 他 にもRCEイベントとし<br />
て、ESDに 関 する 具 体 的 な 問 題 をテーマとした 会 議 ( 多 くは、パートナ<br />
ーである 高 等 教 育 機 関 が 主 催 し、 一 般 公 開 されています)や、それを<br />
補 足 するRCEの 定 期 会 合 、 年 次 総 会 、 地 域 参 加 型 セッションなどが<br />
行 われています。これらは、RCEの 方 向 性 を 示 し、RCEの 活 動 やESD<br />
の 問 題 について 一 般 に 広 く 情 報 を 提 供 するのに 役 立 っています。たと<br />
えば、RCEは 他 のネットワークでも 紹 介 されています。RCEモントリオ<br />
ールはモントリオールの 持 続 可 能 な 開 発 計 画 に 参 加 しており、RCEサ<br />
スカチュワンは、サスカチュワンのエネルギーの 未 来 に 関 する 州 議 会<br />
公 聴 会 に 参 加 しました。<br />
多 くの 場 合 、RCEではコミュニケーション 手 段 として、また 人 々の 関 心<br />
をひくための 手 段 としてインターネットを 利 用 しています。 文 書 や 写 真<br />
の 掲 載 やイベント 告 知 、RCEメンバーやワーキンググループへのメー<br />
ル 送 信 、 調 査 への 回 答 、 特 定 の 問 題 に 関 する 世 論 調 査 は、インタラク<br />
ティブなコンテンツ 管 理 システムを 使 って 行 われています。<br />
51
RCE 間 のコミュニケーション、つながり、 国 境 を<br />
越 えたネットワーク 化<br />
北 米 は 連 邦 政 府 制 度 とっているため、 州 政 府 が 強 い 司 法 管 轄 権 や 自<br />
治 権 をもつことができます。そのため、 国 境 だけでなく 州 同 士 の 境 界 を<br />
越 えたネットワーク 化 が 必 要 とされます。 北 中 米 地 域 ではRCE 主 催 に<br />
よる 会 議 が 数 多 く 開 かれていますが、その 際 、ネットワーク 化 のかなり<br />
の 部 分 が( 必 然 的 に)テクノロジーに 依 存 しています。さらに、 資 料 など<br />
も 翻 訳 されてRCE 間 で 共 有 されます。 他 にも、 国 連 大 学 高 等 研 究 所<br />
定 期 刊 行 物 への 参 加 を 通 じてRCE 間 のネットワーキングが 促 進 され、<br />
多 くの 場 合 、 北 米 のRCEは 国 連 大 学 高 等 研 究 所 の 発 行 する 会 報<br />
(RCE Bulletin)からお 互 いの 活 動 について 情 報 を 得 ています。また、<br />
RCE Bulletinも 各 地 のRCEのウェブサイトを 通 して 紹 介 されています。<br />
北 米 におけるRCEプロジェクト<br />
北 米 のRCEが 実 施 するESDプロジェクトは、それぞれの 地 域 で 歴 史<br />
的 に 中 心 的 役 割 を 果 たしてきた 教 育 部 門 が 基 盤 となっており、 多 様<br />
な 教 育 形 態 (フォーマル、ノンフォーマル、インフォーマル)の 例 を 見 る<br />
ことができます。たとえば、RCEグランド・ラピッズ(ミシガン 州 )はフォ<br />
ーマル 教 育 部 門 でリーダーシップをとり、 地 元 の4 大 学 で 持 続 可 能 な<br />
開 発 プログラムを 実 施 しています。RCEサドベリー 広 域 圏 は 最 近 、サド<br />
ベリー 広 域 圏 の 生 物 多 様 性 アクションプランをまとめましたが、この<br />
プランに 含 まれている 生 物 多 様 性 フォーラムは、 生 物 多 様 性 に 関 する<br />
普 及 啓 発 や、 地 元 の 専 門 家 グループと 一 般 市 民 との 結 びつきを 目 的<br />
としています。<br />
RCEモントリオールは 政 府 や 大 学 と 協 力 して、 若 年 労 働 者 のためのエ<br />
コリーダーシッププログラムを 作 成 しました。このプログラムは、モント<br />
リオール 市 、カナダ 環 境 省 の 生 物 圏 部 門 、ICI Environment( 持 続<br />
可 能 な 開 発 のための 工 学 技 術 を 専 門 とするケベック 州 の 大 学 ネット<br />
ワーク)の 協 力 によって 実 施 されています。プログラムの 目 的 は、 職 場<br />
で 既 にリーダーシップを 発 揮 している18~30 歳 の 若 年 成 人 を 支 援<br />
し、それぞれが 選 択 した 持 続 可 能 な 開 発 のイニシアティブを 推 進 する<br />
ことであり、プログラムを 通 してそれぞれのプロジェクトを 明 確 にし、 専<br />
門 機 関 からの 指 導 や 訓 練 も 受 けられるようになっています。<br />
メキシコのRCE 西 ハリスコは、アユキラ 川 流 域 にある10 都 市 をメンバ<br />
ーとする 都 市 間 機 関 の 創 設 に 参 画 しています。この 分 散 型 の 公 共 機 関<br />
は、この 種 の 組 織 としてはメキシコ 初 の、 地 方 都 市 同 士 が 連 携 した 環<br />
境 局 であり、 固 形 廃 棄 物 のリサイクル 施 設 の 建 設 やそれに 付 随 した 教<br />
育 プログラムを 積 極 的 に 推 し 進 めています。またRCE 西 ハリスコは、ラ<br />
ジオやテレビ、 新 聞 を 含 むマスメディアを 積 極 的 に 利 用 して 持 続 可 能<br />
な 開 発 に 関 する 啓 発 を 行 い、ESDプロジェクトの 裾 野 を 広 げていると<br />
いう 点 でも、 北 中 米 地 域 のリーダー 的 存 在 のひとつとなっています。<br />
結 論 : 今 後 の 展 望<br />
52
RCEはそれぞれが 独 自 の 課 題 を 抱 えながら 持 続 可 能 性 の 旅 の 途 上 にあります。その 旅 を<br />
記 録 することは 単 なる 学 術 的 訓 練 ではなく、 大 陸 規 模 での 継 続 的 な 向 上 やイノベーション、<br />
能 力 開 発 に 必 要 な 相 互 共 有 を 可 能 にするものです。そして、こうした 共 有 が 人 々の 認 識 を<br />
高 め、 活 動 への 参 加 を 促 すことになります。 北 中 米 地 域 のRCEは、 地 理 的 距 離 、 言 葉 の<br />
違 い、 多 様 な 管 轄 権 、ESDに 対 する 組 織 的 支 援 の 程 度 の 違 いなど、 他 とは 異 なる 多 くの<br />
難 題 を 抱 えています。それと 同 時 に、こうしたニーズが 強 力 なインセンティブとなって、 北 中<br />
米 大 陸 におけるRCE 間 の 協 力 と 新 たなRCEの 設 立 を 促 進 しているのです。<br />
レジャイナ 大 学 ルーテルカレッジ<br />
RCE Saskatchewan(サスカチュワン) 共 同 コーディネーター<br />
ロジャー・A・ペトリー<br />
Roger A. Petry<br />
53
ラテンアメリカにRCEイニシアティブが<br />
最 初 に 紹 介 されたのは2006 年 、ブラ<br />
ジルのクリチバで 第 8 回 生 物 多 様 性 条<br />
約 締 約 国 会 議 (CBD-COP8)と 併 せて<br />
国 連 大 学 高 等 研 究 所 が 開 催 したイベ<br />
ントにおいてでした。2007 年 にはラテ<br />
ンアメリカ 地 域 初 のRCEとして、RCE<br />
Curitiba-Parana(クリチバ=パラナ)<br />
(ブラジル)が 設 立 されました。<br />
その 後 、2008 年 にブラジルで 開 かれた「 持<br />
続 可 能 な 大 学 に 関 するラテンアメリカ<br />
会 議 (Encontro Latino Americano<br />
de Universidades Sustentaveis)」<br />
や、2008 年 にコロンビアのカルタヘナで<br />
開 かれた「ラテンアメリカ・カリブ 海 地 域<br />
の 高 等 教 育 に 関 する 地 域 会 議 (CRES)」<br />
などの 地 域 教 育 会 議 で、RCEモデルに<br />
ついて 議 論 が 行 われ、さらに3つのRCE<br />
がこの 地 域 に 設 立 されました。ラテンア<br />
メリカにおけるRCE 発 展 の 次 の 段 階 は、<br />
この 地 域 内 の 他 のエリア、 特 にカリブ 海<br />
地 域 におけるRCEの 普 及 です。<br />
現 在 、 中 南 米 には、RCEクリチバ=パラナを 含 め、RCE Western Jalisco( 西 ハリスコ)(メキシ<br />
コ)、RCE Guatemala(グアテマラ)、RCE Bogota(ボゴタ)(コロンビア)、RCE Chaco(チャ<br />
コ)(アルゼンチン)の 合 計 5つのRCEがあります。 一 般 に、 地 域 運 動 が 確 立 するまでに 数 年 を<br />
要 する 大 陸 において、 短 期 間 で 成 長 を 遂 げたRCEには 目 をみはるものがあります。RCEの 概<br />
念 が 早 期 に 根 づいた 主 な 理 由 のひとつは、 多 くのパートナーを 取 り 込 むRCEの 器 の 広 さにあ<br />
ります。また、RCEの 概 念 は 柔 軟 性 に 富 んでおり、それぞれの 組 織 の 特 性 や 地 域 のニーズに<br />
応 じて 活 動 を 行 えるため、パートナーの 創 造 性 が 発 揮 されます。さらに、そのモデルは 従 来 と<br />
は 異 なる 教 育 パートナーにも 参 与 の 機 会 を 与 え、ときに 政 治 的 制 約 のため 対 話 が 制 限 され<br />
ることもある 地 域 において、 教 育 機 構 に 付 加 価 値 を 付 与 する 役 目 も 果 たしています。<br />
ラテンアメリカに<br />
おけるRCEの 発 展<br />
54
中 南 米 のRCEは、<br />
伝 統 的 な 知 識 、 都 市 開 発 、<br />
教 師 の 能 力 開 発 、<br />
環 境 正 義 、<br />
貧 困 の 軽 減 といった<br />
共 通 のテーマを 通 して、<br />
互 いに、また 世 界 的 に<br />
絆 を 強 めることが 必 要 です。<br />
© S. Aipanjiguly<br />
クリチバ<br />
© S. Aipanjiguly<br />
© S. Aipanjiguly
ラテンアメリカにおけるRCEプロジェクト<br />
ラテンアメリカにおける 多 くのESD 活 動 は、 貧 困 の 軽 減 、 災 害 管 理 、<br />
食 糧 安 全 保 障 に 関 係 しています。RCE 独 自 の 貢 献 が 見 られるのは、<br />
変 革 を 促 す 教 育 (transformative education)、コミュニティ・アウト<br />
リーチ、 環 境 ・ 経 済 ・ 地 域 開 発 を 考 慮 に 入 れ 相 乗 効 果 を 狙 ったプロジ<br />
ェクトの 分 野 です。RCEグアテマラが 実 施 する 興 味 深 いプロジェクト<br />
では、 現 在 の 教 育 システムにESDを 導 入 し、 先 住 民 社 会 における 教<br />
育 の 機 会 を 増 やすことを 提 案 しています。またRCEボゴタでは、コロン<br />
ビア 首 都 ボゴタの 中 でも 最 も 危 険 で 貧 しい 都 市 部 地 域 、シウダード・<br />
ボリバルの 地 域 開 発 問 題 について、 革 新 的 な 教 育 モデルや 教 育 理 論<br />
を 適 用 しています。RCE 西 ハリスコ(メキシコ 中 央 部 )は、 社 会 環 境 正<br />
義 や 地 域 開 発 とともに 地 元 の 天 然 資 源 管 理 の 問 題 を 採 り 上 げ、フォ<br />
ーマル 教 育 とノンフォーマル 教 育 を 統 合 した 研 究 や 環 境 教 育 を 行 っ<br />
ています。ブラジルのRCEクリチバ=パナラでは、 環 境 保 護 と 都 市 開<br />
発 に 関 する 教 育 活 動 に 焦 点 を 当 てています。<br />
今 後 の 課 題<br />
RCEの 発 展 には、 新 たなRCE 設 立 に 向 けた 動 きとともに、 既 存 のRCE<br />
の 強 化 が 必 要 です。ラテンアメリカ 地 域 におけるRCEのステークホル<br />
ダーは、 教 育 ・ 研 究 だけでなく 環 境 問 題 に 関 しても 豊 富 な 経 験 をもっ<br />
ていますが、プロジェクトの 策 定 や 管 理 、プログラムの 開 発 や 実 施 には<br />
組 織 的 な 能 力 育 成 が 必 要 であり、さらにコミュニケーション 能 力 や 交<br />
渉 能 力 、 資 金 調 達 能 力 も 必 要 です。この 地 域 の 今 後 の 課 題 は、 活 動 努<br />
力 を 最 大 限 に 発 揮 し、その 影 響 力 を 高 めるためのコミュニケーション<br />
システムを 構 築 することであると 思 われます。 会 議 や 刊 行 物 は、 理 論 家<br />
や 研 究 者 、 教 育 者 、 実 務 家 に 情 報 を 提 供 し、これらの 人 々を 取 り 込 む<br />
ための 典 型 的 なコミュニケーション 手 段 ですが、 今 後 はそれ 以 外 の 情<br />
報 交 換 システムも 追 求 する 必 要 があります。たとえばRCEグアテマラで<br />
は、 特 に 教 育 施 設 が 不 足 している 地 域 社 会 に 対 し、 非 営 利 のラジオ 教<br />
育 プログラムを 通 してESDを 広 く 普 及 することを 計 画 しています。<br />
中 南 米 地 域 におけるRCEの 発 展 には、 持 続 可 能 な 開 発 に 向 けた 政 府<br />
のリーダーシップや 資 源 に 重 点 を 置 く、 国 家 を 越 えたイニシアティブと<br />
の 関 係 も 必 要 です。 持 続 可 能 な 開 発 のための 中 米 同 盟 (ALIDES)の<br />
目 的 は、 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する 地 域 の 戦 略 的 アジェンダを 構 築 す<br />
ることにあり、この 枠 組 みは、 各 国 におけるESDの 提 供 に 環 境 省 が 積<br />
極 的 にかかわるための 試 みを 含 め、ESDを 国 家 プランに 統 合 するの<br />
に 役 立 っています。<br />
さらにRCEの 発 展 には、 環 境 教 育 を 行 う 教 育 機 関 のネットワークとの<br />
結 びつきも 必 要 であり、それとともに 国 際 連 合 環 境 計 画 (UNEP)や<br />
ラテンアメリカ 社 会 科 学 大 学 院 (FLACSO)、ユネスコといった 国 際<br />
機 関 からの 支 援 も 必 要 であると 考 えられます。FLACSOには、 学 術 研<br />
究 、 高 等 教 育 、 政 府 職 員 や 非 営 利 組 織 の 能 力 開 発 に 関 するプログラ<br />
ムがあります。ユネスコは 主 に 政 府 と 協 力 してラテンアメリカ 地 域 にお<br />
けるDESDアジェンダを 実 施 しており、また 高 等 教 育 政 策 に 重 点 を 置<br />
くラテンアメリカ・カリブ 海 高 等 教 育 エリア(ENLACES)といった 高 等<br />
教 育 機 関 のネットワークを 支 援 しています。<br />
56
ラテンアメリカ 地 域 におけるRCEがさらに 発 展 するには、 共 通 の 関 心<br />
領 域 を 通 して 中 南 米 大 陸 や 世 界 各 地 のRCE 間 の 関 係 強 化 が 必 要 で<br />
す。こうした 共 通 の 関 心 領 域 には、 伝 統 医 療 、 伝 統 的 な 知 識 、 都 市 開<br />
発 、 学 校 開 発 、 教 師 の 能 力 開 発 、ESD 研 究 、 環 境 正 義 、 貧 困 の 軽 減 、<br />
先 住 民 族 コミュニティなどが 挙 げられます。<br />
RCEは、ESD 戦 略 を 考 案 し、さまざまな 教 育 上 の 難 題 に 対 処 すること<br />
ができます。たとえば 高 等 教 育 に 関 して 言 えば、RCEでは、 教 師 の 能<br />
力 開 発 や 大 学 の 方 針 、コミュニティ・アウトリーチ、 環 境 意 識 を 培 うカ<br />
リキュラムのための 新 たな 戦 略 を 実 施 することが 可 能 です。また、 国 際<br />
機 関 と 地 元 のステークホルダーの 橋 渡 しを 行 ったり、あるいは 開 発 に<br />
伴 う 問 題 解 決 策 の 考 案 にさまざまな 利 害 関 係 者 を 取 り 込 むことで、<br />
高 等 教 育 プログラムの 検 証 システムとして 機 能 することも 可 能 です。<br />
ラテンアメリカ 地 域 のRCEは、これまで 同 じテーブルに 着 いたことのな<br />
いさまざまな 分 野 が 参 加 ・ 関 与 するためのスペースを 作 り 出 すことに<br />
よって、 今 後 も 成 長 ・ 発 展 を 続 けるでしょう。<br />
前 JSPS- 国 連 大 学 ・ 博 士 課 程 修 了 研 究 員 (2007〜2009 年 )<br />
ミゲール・チャコン<br />
Miguel Chacon<br />
57
南 部 アフリカに<br />
おけるRCEの 発 展<br />
今 日 、 特 に 緊 急 性 の 高 い<br />
世 界 的 問 題 を 解 決 するに<br />
は、 人 々の 意 識 を 高 めるだ<br />
けでは 不 十 分 です。 問 題 を<br />
解 決 するには、 変 化 を 可 能<br />
にし、この 地 球 上 で 多 様 な<br />
生 活 を 可 能 にする 社 会 的<br />
プロセスを 支 援 する 解 決<br />
策 が 必 要 であり、こうした<br />
解 決 策 は、ESDを 実 践 して<br />
いる 地 元 や 地 域 の 共 同 体<br />
との 関 わりを 通 じて 実 現<br />
することが 可 能 です。 特 に 有 効 なのは、 実 践 活 動<br />
やスキル、 専 門 知 識 や 経 験 をいつでも 共 有 でき、<br />
お 互 いから 継 続 的 に 学 べるようにすることです。<br />
南 部 アフリカ 開 発 共 同 体 ・ 地 域 環 境 教 育 プログ<br />
ラム(SADC-REEP)ではこうした 点 に 配 慮 しなが<br />
ら、RCEの 設 立 ・ 強 化 を 支 援 し、さまざまな 実 践 共<br />
同 体 同 士 の 協 力 とESD 活 動 の 普 及 を 図 っており、<br />
そのためにスウェーデン 国 際 開 発 協 力 庁 (SIDA)<br />
から 資 金 調 達 を 行 っています。SIDAでは、すべて<br />
のSADC 国 におけるRCE 設 立 に 向 けて、 初 期 のス<br />
テークホルダー 間 協 議 のためのシード 資 金 を 提<br />
供 しています。<br />
南 部 アフリカ 開 発 共 同 体 South African Development Community (SADC)<br />
現 在 、S A D Cに 加 盟 している 国 々は、アンゴラ、ボツワナ、コンゴ 民 主 共 和 国 、<br />
レソト、マダガスカル、マラウィ、モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、セイシェル、<br />
南 アフリカ、スワジランド、タンザニア 連 合 共 和 国 、ザンビア、ジンバブエです。<br />
現 在 、この 地 域 で 認 定 されているRCEは、RCE Swaziland(スワジランド)、RCE Maputo<br />
(マプト)(モザンビーク)、RCE Zomba(ゾンバ)(マラウィ)、RCE Makana and<br />
Rural Eastern Cape(マカナおよび 東 ケープ 郊 外 )およびRCE KwaZulu Natal(クワズ<br />
ールー・ナタール)( 南 アフリカ)の5つです。RCEを 設 立 する 際 には、さまざまなフォー<br />
ラムや 会 議 の 場 で 多 くのステークホルダー 候 補 がRCEの 概 念 を 共 有 し、 慎 重 に 審 議<br />
することで、 活 動 への 取 り 組 みを 促 しています。その 後 、さらにステークホルダー 協 議 を<br />
行 い、RCEのガバナンス 体 制 、ビジョン、 目 標 について 検 討 します。<br />
南 部 アフリカ 地 域 に「 実 践 共 同 体 」 体 制 が 存 在 することにより、RCEの 設 立 は 容 易 に<br />
なっています。なぜなら、RCEは 基 本 的 にESDに 関 する 実 践 共 同 体 だからであり、 既<br />
存 の 体 制 の 上 にRCEが 作 られ、 持 続 可 能 な 実 践 が 奨 励 されることになるからです。<br />
たとえばこの 地 域 には、 天 然 資 源 に 依 存 する 人 々の 生 計 を 支 援 するために、 資 源 の 普<br />
及 と 持 続 可 能 な 活 用 に 焦 点 を 当 てたいくつかのネットワークが 存 在 します。<br />
58
SADC 地 域 におけるRCEのネットワーク 化<br />
SADC-REEPでは 既 存 のネットワークやプロセスを 支 援 し、ESDに<br />
かかわる 機 関 の 参 加 を 奨 励 しています。RCE 同 士 は、 南 部 アフリカ 環<br />
境 教 育 連 合 (EEASA)による 会 議 など、さまざまな 地 域 会 議 やワーク<br />
ショップ、 研 修 、その 他 の 会 合 で 顔 を 合 わせ、ESDを 普 及 するための<br />
それぞれの 取 り 組 みにおけるさまざまな 実 践 を 共 有 しています。たと<br />
えば2008 年 には、RCEスワジランドが、スワジランド 大 学 で 開 催 され<br />
たEEASA 会 議 を 積 極 的 にサポートし、 他 の 多 くの 国 々におけるRCE<br />
設 立 を 奨 励 しました。こうした 地 域 会 議 やワークショップの 期 間 中<br />
は、RCEによるプレゼンテーションが 主 要 議 題 として 採 り 上 げられて<br />
います。<br />
南 部 アフリカ 地 域 全 体 のRCEおよびESD<br />
ネットワーク 組 織 として、RCEの 地 域 アプローチが 目 指 しているのは<br />
実 践 共 同 体 の 強 化 です。ここでいう 実 践 共 同 体 とは、 地 域 社 会 の 問<br />
題 に 対 し、 教 育 に 関 する 知 識 や 専 門 性 を 深 めるための 場 の 提 供 を 目<br />
的 としたものです。 特 定 の 関 心 領 域 の 問 題 に 対 処 するために、 共 同<br />
で 活 動 を 行 う 実 践 共 同 体 としてRCEを 設 立 するだけでは 不 十 分 で<br />
あり、 設 立 された 組 織 が 有 効 に 機 能 することがさらに 必 要 です。このこ<br />
とはこれまでも 繰 り 返 し 強 調 されてきました。<br />
一 般 に、 地 域 のRCEネットワーク 化 には、 定 期 的 な 会 議 の 開 催 を 促<br />
すことが 必 要 であり、またESDを 実 践 する 人 々に 以 下 のような 要 求 を<br />
することで、 人 々の 態 度 や 価 値 観 、 行 動 とすり 合 せる 努 力 が 必 要 です。<br />
• 行 動 からよりよい 行 動 へと 活 動 を 広 げていくこと<br />
• 後 ろ 向 きに 人 間 の 行 為 がもたらしたマイナスの 影 響 を 測 るの<br />
ではなく、 持 続 可 能 性 に 向 かって 前 向 きに 歩 を 進 めること。<br />
このアプローチは、インドの5つのRCEをまとめている 環 境 教<br />
育 センター(Centre for Environment Education: CEE)<br />
とRCEの 共 同 パートナーシップにおいて 実 践 されています。<br />
• 応 用 的 ・ 実 践 的 な 研 究 プログラムを 促 進 すること<br />
• 関 連 のある 適 切 な 土 着 の 技 術 の 奨 励 と 適 用 に 努 めること<br />
• 地 球 への 影 響 が 穏 やかな 新 たな 技 術 を 追 求 し、 開 発 すること<br />
RCEのつながりおよび 情 報 の 流 れ<br />
南 部 アフリカ 地 域 の 各 RCEは、 持 続 可 能 な 開 発 のそれぞれ 異 なる 分<br />
野 に 焦 点 を 当 てています。たとえば、RCEスワジランドは、 環 境 および<br />
持 続 可 能 な 社 会 経 済 開 発 のための 革 新 的 な 教 育 アプローチを 推 進<br />
し、その 利 用 可 能 性 を 広 げることに 重 点 を 置 いています。また、モザン<br />
ビークのRCEマプトは、 持 続 可 能 な 開 発 の 原 則 を 支 える 社 会 的 ・ 文<br />
化 的 価 値 および 科 学 的 知 識 が 浸 透 した 社 会 を 築 くことに 重 点 を 置 い<br />
ています。<br />
59
RCEクワズールー・ナタールは 幅 広 い 視 点 から、さまざまなパートナ<br />
ーと 協 力 して 持 続 可 能 性 の 実 践 を 奨 励 しており、 特 にESDの 概 念 的<br />
深 化 を 追 求 し、 発 展 させる 活 動 を 奨 励 しています。RCEマカナおよび<br />
東 ケープ 郊 外 では、 人 々の 健 康 ・ 福 祉 および 環 境 に 影 響 を 及 ぼす 問<br />
題 やリスクに 対 する 解 決 策 として、 教 育 や 訓 練 面 の 向 上 と 協 調 のため<br />
の 専 門 知 識 を 育 成 し、 共 有 することを 目 標 に 掲 げています。またRCE<br />
Makana and Rural Eastern Capeは、ESDの 特 定 分 野 に 焦 点 を 絞<br />
り、さまざまなステークホルダーを 取 り 込 むことによって、 実 践 共 同 体<br />
としての 学 習 空 間 を 提 供 しているRCEの 一 例 です。そこでは6つの 領<br />
域 を 掲 げ、 以 下 のような 目 標 の 実 現 に 努 力 しています。<br />
i. 教 師 の 教 育 :さまざまな 学 習 分 野 において、 環 境 および 持<br />
続 可 能 性 に 焦 点 を 当 てた 教 師 向 けのモジュールを 開 発<br />
すること<br />
ii. 教 育 の 質 : 教 育 の 質 や 政 策 対 応 のモニタリングを 行 い、 質<br />
の 高 い 教 育 を 望 む 地 域 社 会 を 支 援 すること<br />
iii. 学 校 と 持 続 可 能 性 : 学 校 カリキュラムを 通 して、さまざまな<br />
プログラムへの 学 校 の 関 与 や 持 続 可 能 性 を 促 すこと<br />
iv. 若 者 とボランティア 学 習 :どうすればリスクにさらされてい<br />
る 人 々をESDの 学 習 プロセスにかかわらせることができる<br />
かを 検 討 し、 弱 い 立 場 にある 若 者 に 学 習 の 機 会 を 与 える<br />
方 策 を 検 討 すること<br />
v. 職 場 を 中 心 とした 学 習 : 人 々が 自 分 の 職 場 について 知 り、<br />
日 常 生 活 を 持 続 可 能 なものにするための 方 法 を 身 につけ<br />
られるように 支 援 すること<br />
vi. 生 物 多 様 性 、 文 化 、 健 康 : 環 境 意 識 を 培 う 教 育 プログラム<br />
を 検 討 すること<br />
南 部 アフリカ 地 域 に<br />
「 実 践 共 同 体 」 体 制 が 存 在<br />
することにより、RCEの 設 立<br />
は 容 易 になっています。<br />
なぜなら、 既 存 の 体 制 の 上 に<br />
RCEが 作 られ、 持 続 可 能 な<br />
実 践 が 奨 励 されることに<br />
なるからです。
今 後 の 展 望<br />
南 部 アフリカ 地 域 のさまざまな 国 で 新 しいRCEが 作 られ、 既 存 のRCEがESD 活 動 を 継 続<br />
的 に 行 う 中 で、SADC-REEPの 関 心 は、これらのRCEと 協 力 し、 実 践 活 動 や 能 力 、 専 門 技<br />
術 や 知 識 をどのように 共 有 するかという 点 にあります。 人 々が 定 期 的 に 集 い、それぞれの<br />
実 践 活 動 を 共 有 し、ともに 学 んでいくことで、ESDによる 解 決 策 はより 一 層 明 確 なものにな<br />
ると 考 えられます。それぞれに 異 なる 実 践 共 同 体 がさまざまな 文 脈 で 協 力 すれば、より 持<br />
続 可 能 な 未 来 という 夢 は 現 実 のものになる 可 能 性 があります。<br />
SADC 地 域 環 境 教 育 プログラム<br />
ディック・カチロンダ / ジム・テイラー<br />
Dick D. K. Kachilonda / Jim Taylor<br />
61
RCEのテーマ 別<br />
ネットワーク<br />
RCEネットワークの 強 みは、 多 様 な 人 々がかかわっていることにあります。 具 体 的 に 挙 げ<br />
るならば、 学 校 教 師 、 高 等 教 育 機 関 の 教 授 、NGO 職 員 、 科 学 者 、 研 究 者 、 博 物 館 ・ 美 術<br />
館 のキュレーター、 動 植 物 園 の 専 門 家 、 政 府 官 僚 、 地 元 企 業 、メディア、 市 民 団 体 、あら<br />
ゆるレベルの 学 生 および 学 習 者 などがこの 活 動 にかかわっています。こうした 多 様 な 人<br />
々の 集 団 がRCEによってひとつになり、 持 続 可 能 性 をめぐる 難 題 に 立 ち 向 かうための 能<br />
力 開 発 に 取 り 組 んでいます。<br />
ユネスコによるDESD 前 半 5 年 間 の 中 間 報 告 は<br />
次 のように 述 べています。<br />
国 連 大 学 高 等 研 究 所 の 支 援 を 受 け、ネットワークでつなが<br />
った 地 域 の 拠 点 (RCE)は、 社 会 の 中 で 普 段 は 協 力 し 合 うこ<br />
とのないさまざまな 地 域 グループが、 共 通 の 持 続 可 能 性 と<br />
いう 問 題 によってひとつになり、よりよい 状 況 に 向 かって 創<br />
造 的 に 活 動 する、ひとつの 例 であるといえます。<br />
(UNESCO、2009 年 、p.56)<br />
RCEイニシアティブはDESDに 応 える 形 で 始 まった、さまざまなステークホルダーの 社<br />
会 学 習 に 関 する 唯 一 の 世 界 的 イニシアティブです。それぞれのRCEが 特 定 の 地 元 地<br />
域 の 中 で、 知 識 の 壁 や 行 政 管 理 上 の 境 界 を 超 えた 革 新 的 な 学 習 基 盤 となるだけでな<br />
く、RCEネットワークは 地 理 的 境 界 を 超 えて、テーマ 別 の 研 究 開 発 (R&D)の 基 盤 とし<br />
て 機 能 しています。<br />
2010 年 4 月 現 在 、75のRCEが 国 連 大 学 によって 正 式 に 認 定 されています。 情 報 通 信 技<br />
術 と 国 際 会 議 によって 世 界 各 地 のRCEがひとつにまとまれば、 境 界 を 越 えた 学 習 の 基<br />
盤 としてのRCEの 潜 在 能 力 は 一 気 に 高 まります。RCEの 世 界 的 ネットワークは、 国 際 的<br />
な 情 報 ・ 知 識 の 交 換 、R&Dの 実 施 を 可 能 にするものです。たとえば、エラスムス 生 涯 学<br />
習 プログラムの 下 で 資 金 提 供 を 受 けているプロジェクト(3-LENSUS)には、3つのRCE<br />
のパートナー 機 関 がかかわっています。3-LENSUSプロジェクトの 活 動 は、コペルニク<br />
ス・キャンパス( 持 続 可 能 な 開 発 に 向 けて、 知 識 や 経 験 の 共 有 を 通 して 活 動 を 行 うヨー<br />
ロッパの 大 学 ネットワーク)の 再 活 性 化 プロセスとつながっています。<br />
62
3-LENSUSプロジェクト(www.3-lensus.eu)では、 地 域 における 持<br />
続 可 能 な 開 発 のための 教 育 ・ 研 究 ・イノベーションに 焦 点 が 当 てられ<br />
ています。このプロジェクトでは 今 後 、ESDネットワークとヨーロッパに<br />
おけるヴァーチャル 学 習 スペースを 構 築 し、 持 続 可 能 な 開 発 のための<br />
地 域 学 習 ネットワーク 間 で 革 新 的 なアプローチを 共 有 ・ 発 展 させるこ<br />
と、これらの 活 動 を 推 進 するための 能 力 を 育 成 すること、 地 域 におけ<br />
る 持 続 可 能 な 開 発 のための 生 涯 学 習 活 動 を 提 供 することを 目 指 して<br />
います。3-LENSUSは 以 下 の3つのニーズに 応 えるものです:(1) 背 景<br />
の 文 脈 を 考 慮 した 総 合 的 (ホリスティック)な 生 涯 学 習 に 向 けて、 学 校<br />
と 学 校 以 外 の 場 での 学 習 の 垣 根 を 超 えること、(2) 能 力 開 発 のための<br />
自 発 的 学 習 の 可 能 性 、(3) 実 生 活 の 場 面 で 知 識 を 有 効 活 用 するため<br />
の 学 際 的 な 環 境 。<br />
注 目 すべきは、RCEが 互 いに 力 を 合 わせてRCE 間 のR&D 活 動 を 支 え<br />
ていることです。 共 同 での 資 金 調 達 努 力 が 失 敗 したとしても、その 努 力<br />
は、RCEがお 互 いから 学 び、 資 源 を 共 有 し、アジェンダを 明 確 にし、 実<br />
践 共 同 体 を 形 成 するのに 役 立 っています。<br />
多 くの 場 合 、RCEのテーマ 別 グループはRCE 自 身 によって 自 発 的 に<br />
始 まったものですが、グローバルRCEサービスセンターも、プロジェク<br />
トの 構 築 にコンセプトを 提 供 したり、 関 連 の 国 際 的 事 業 とRCEの 橋<br />
渡 しをしたり、RCE 同 士 が 対 面 で 国 際 的 協 議 を 行 えるようにすること<br />
で、テーマ 別 ネットワークの 構 築 を 支 援 しています。 対 面 による 協 議 の<br />
一 例 は、2010 年 に 名 古 屋 で 開 かれる 第 10 回 生 物 多 様 性 条 約 締 約<br />
国 会 議 (CBD-COP10)において、 生 物 多 様 性 をテーマとするグルー<br />
プが 計 画 しているサイドイベントです。このサイドイベントの 準 備 にあた<br />
り、RCEは、 生 物 多 様 性 の 問 題 全 般 に 対 するESD 独 自 の 貢 献 と、 特 に<br />
生 物 多 様 性 条 約 締 結 プロセスに 対 するRCEの 貢 献 をじっくり 考 察 す<br />
る 機 会 を 得 ました。<br />
RCEのテーマ 別 ネットワーキング<br />
• E ラーニング: RCEでは、 持 続 可 能 な 開 発 のための 能 力 を 身 につける 自 発 的 学 習 を 奨 励<br />
しています。<br />
• 持 続 可 能 な 消 費 と 生 産 : RCEが 推 し 進 める 学 習 を 通 して、 生 産 者 や 消 費 者 、 政 策 に 影 響<br />
を 及 ぼす 人 々らが、 持 続 可 能 な 新 しい 消 費 ・ 生 産 システムを 見 いだしています。<br />
• ESDのための 教 員 養 成 : RCEは、 持 続 可 能 な 開 発 のための 学 習 における 教 師 や 運 営 管<br />
理 者 の 教 育 を 支 援 しています。<br />
• 生 物 多 様 性 、 生 態 系 およびESD: RCEでは、 生 態 系 の 健 全 性 と 地 域 社 会 の 健 康 ・ 福 祉 の<br />
バランスを 重 視 した 教 育 を 奨 励 しています。<br />
• 若 者 とESD: RCEが 推 し 進 める 学 習 を 通 して、 若 者 は、 持 続 可 能 な 開 発 に 向 けた 変 化 の<br />
受 け 手 となり、 同 時 に 送 り 手 ともなります。<br />
• 健 康 ・ 保 健 とESD: RCEの 活 動 は、 地 域 社 会 を 元 気 にし、 地 域 社 会 の 健 康 問 題 への 取 り<br />
組 みにおける 大 学 の 力 を 高 めることに 重 点 を 置 いています。
前 ページに 挙 げたテーマは、2007 年 以 降 に3 回 以 上 の 作 業 部 会 会<br />
議 で 議 論 されたテーマですが、RCEはこれらのテーマ 以 外 にも、 貧 困<br />
と 環 境 、 気 候 変 動 、ESDにおける 高 等 教 育 機 関 の 役 割 、 宗 教 団 体 と<br />
ESDといった 重 要 なテーマについて 議 論 し、あるいはグループを 作 る<br />
ことを 提 案 してきました。<br />
RCEのテーマ 別 グループの 中 で、 健 康 をテーマとしたグループは、 多<br />
くの 国 際 的 協 議 を 通 してRCE 間 のアジェンダを 提 起 しているという 点<br />
で 最 も 先 進 的 です。 以 下 のページでは、 特 に 積 極 的 に 活 動 を 行 ってい<br />
る2つのテーマ 別 ネットワーク、(1) 健 康 ・ 保 健 、および(2) 持 続 可 能 な<br />
消 費 と 生 産 (SCP)について 詳 しく 紹 介 します。<br />
健 康 ・ 保 健 をテーマとしたRCEネットワーク<br />
ビジョンおよび 目 標<br />
世 界 保 健 機 関 (WHO)によれば、<br />
健 康 は、 持 続 可 能 な 開 発 のための 資 源 であるとともに、その 結 果 でもあります。 衰<br />
弱 をもたらす 疾 患 の 有 病 率 や 貧 困 率 が 高 い 状 況 では、 持 続 可 能 な 開 発 の 目 標<br />
を 達 成 することは 不 可 能 であり、 敏 速 に 対 応 できる 医 療 制 度 および 健 全 な 環 境<br />
がなければ、 人 々の 健 康 を 維 持 することはできません。 環 境 の 悪 化 、 自 然 資 源 の<br />
誤 った 管 理 、 不 健 康 な 消 費 パターンや 生 活 習 慣 は 健 康 に 影 響 を 及 ぼし、また 反<br />
対 に、 健 康 不 良 は 貧 困 の 軽 減 や 経 済 発 展 の 妨 げとなります。<br />
健 康 をテーマとしたRCEネットワークのビジョンは、 効 果 が 高 く、 人 を<br />
差 別 しない、 誰 にでも 利 用 可 能 な、 統 合 された 総 合 的 (ホリスティック)<br />
な 医 療 制 度 の 構 築 に 貢 献 することです。ネットワークでは、 以 下 の3つ<br />
の 目 標 を 掲 げています。<br />
• ESDの 原 則 を 活 用 して、 医 療 制 度 における 教 育 の 改 善 を 行 うこと<br />
• 医 療 専 門 家 や 地 域 社 会 を 対 象 とした 能 力 開 発 を 行 う 国 際 機 関<br />
との 協 力 を 進 めること<br />
• 施 設 ・ 組 織 レベルでの 能 力 を 育 てる 環 境 作 りの 中 で、さまざまな<br />
レベルの 能 力 開 発 に 貢 献 すること<br />
RCEの 国 際 会 議 や 地 域 会 議 とは 別 に、RCEではこれまでに4 回 、 健 康<br />
をテーマとしたネットワーク 活 動 を 推 進 するための 対 面 会 議 が 開 か<br />
れました(2008 年 にマレーシアのコタバルで1 回 、2009 年 に 横 浜 で2<br />
回 、インドのバンガロールで1 回 )。
© Theeradech U<br />
2009 年 11 月 にインドのバンガロールで 開 催 された 国 際 伝 統 的 医 療 者<br />
(Traditional Healer) 会 議 にて<br />
コタバルおよび 横 浜 での 協 議<br />
2008 年 5 月 にマレーシアで 開 かれたコタバル 会 議 では、ESDと 持 続<br />
可 能 な 健 康 について 議 論 が 行 われ、この 分 野 の 主 要 な 課 題 と 機 会<br />
が 明 示 されました。 参 加 者 はさらに、ネットワークの 活 動 範 囲 、 目 標 、<br />
戦 略 とその 当 面 のフォローアップについて 話 し 合 い、2 日 間 のプログラ<br />
ムでは、 動 員 可 能 な 資 源 やパートナーに 関 する 議 論 も 行 われました。<br />
この 会 議 には13のRCE、 国 連 大 学 の 国 際 グローバルヘルス 研 究 所<br />
(<strong>UNU</strong>-IIGH)、アジア 工 科 大 学 院 (AIT)が 参 加 しました。<br />
2009 年 1 月 に、アジアの3つのRCE、すなわちRCE 横 浜 、RCE<br />
Penang(ペナン)(マレーシア)、RCE Cebu(セブ)(フィリピン)が 横<br />
浜 で 会 合 を 開 き、4つのテーマ 領 域 、(1) 持 続 可 能 性 と 医 療 教 育 改<br />
革 のための 医 学 カリキュラムの 再 方 向 づけ、(2) 伝 統 知 識 の 復 興 と<br />
統 合 、(3) 国 外 からの 医 療 専 門 家 の 倫 理 的 採 用 と 移 民 の 問 題 、(4)<br />
食 べ 物 と 健 康 について 審 議 を 行 いました。2009 年 8 月 に、 上 記 3つの<br />
RCEは 再 び 横 浜 で 会 合 を 開 き、 持 続 可 能 な 健 康 における 大 学 の 役 割<br />
と、ESDにおける 人 材 開 発 のためのリンケージプログラムについて 議<br />
論 しました。8 月 の 会 議 では、 前 回 のワークショップのフォローアップと<br />
して、 以 下 の3つのトピックが 採 り 上 げられました。<br />
• 健 康 、 栄 養 、 食 べ 物 、 生 活 習 慣<br />
• 伝 統 的 な 知 識 と 現 代 医 療 ・ 医 療 の 関 係 づけ<br />
• 医 療 専 門 家 の 教 育 と 訓 練<br />
さらに、3つのRCEの 協 力 的 枠 組 みの 中 で、マレーシア 科 学 大 学<br />
(RCEペナン)、フィリピン 大 学 (RCEセブ)、 横 浜 国 立 大 学 (RCE 横<br />
浜 )の3 大 学 により、 環 境 ・ 健 康 ・ 持 続 可 能 性 をテーマとした 夏 期 学 生<br />
交 換 プログラムが 実 施 されています。
RCEによる 伝 統 医 療 に 関 するワークショップの 計 画<br />
2009 年 11 月 21~22 日 にインドのバンガロールで 行 われた2 日 間 のプ<br />
ランニングワークショップにおいて、8つのRCEの 代 表 が、ESDと 伝 統<br />
医 療 に 関 するプロジェクトについて 議 論 し、 立 案 しました。この「 伝 統 医<br />
療 と 健 康 に 関 するRCEプランニングワークショップ」は、 世 界 18ヵ 国 の<br />
人 々が 参 加 した 伝 統 的 医 療 者 の 国 際 交 換 会 議 に 続 いて 開 催 されたも<br />
のです。 会 議 とワークショップを 主 催 したのは、FRLHT(Foundation<br />
for the Revitalisation of Local Health Traditions: 地 域 医 療 伝<br />
統 復 興 財 団 )、ETC-COMPAS(オランダETC 財 団 のComparing and<br />
Supporting Endogenous Development: 内 発 的 開 発 比 較 支 援 ネッ<br />
トワーク)、 国 連 大 学 高 等 研 究 所 などのパートナーです。<br />
バンガロール・ワークショップは、コタバルと 横 浜 での 議 論 を 踏 まえて<br />
行 われました。ワークショップの 目 的 は、ESD、 健 康 、 伝 統 医 療 に 関 す<br />
る 問 題 について 検 討 すること、 持 続 可 能 な 医 療 の 発 展 のためRCE 間<br />
で 既 存 の 伝 統 医 療 の 資 源 を 統 合 すること、このテーマに 関 するRCE<br />
活 動 の 世 界 的 枠 組 みを 作 ることでした。 参 加 したRCE Bangalore<br />
(バンガロール)、Cairo(カイロ)、Cebu(セブ)、Kodagu(コダグ)、<br />
Kyrgyzstan(キルギスタン)、Makana and Rural Eastern Cape<br />
(マカナおよび 東 ケープ 郊 外 )、Penang(ペナン)、Yogyakarta(ジョ<br />
グジャカルタ)は、プライマリヘルスケア、 薬 用 植 物 の 保 護 、 伝 統 医 療 に<br />
よる 持 続 可 能 な 暮 らしなどのプロジェクトについてアイデアを 発 表 し、<br />
協 力 の 可 能 性 を 話 し 合 いました。<br />
今 後 の 展 望<br />
現 在 、 健 康 をテーマとするグループは、コタバル、 横 浜 、バンガロール<br />
における 協 議 や 情 報 通 信 技 術 を 利 用 したRCE 間 のコミュニケーショ<br />
ンに 基 づき、 資 金 提 供 機 関 に 提 出 するための 共 同 プロジェクト 案 を 作<br />
成 しています。<br />
持 続 可 能 な 消 費 と 生 産 をテーマとしたRCE<br />
ネットワーク<br />
持 続 ( 不 ) 可 能 性 をめぐる 多 くの 難 題 は、 社 会 におけるモノやサービス<br />
の 生 産 ・ 消 費 方 法 に 関 係 があります。RCEではこうした 難 題 を 認 識 し、<br />
それぞれの 地 域 において、より 持 続 可 能 な 消 費 と 生 産 (Sustainable<br />
Consumption and Production:SCP)を 実 践 するための 一 連 の 教<br />
育 ・ 開 発 活 動 を 推 進 しています。<br />
次 ページに、SPCを 推 進 するためのRCE 活 動 の 一 部 を 紹 介 します。<br />
66
SCPの 実 践<br />
「 事 業 資 本 共 有 プロジェクト」は、レジャイナ 大 学 ルーテルカレッジ、<br />
同 大 学 コンピュータサイエンス 学 部 、および 持 続 可 能 な 学 習 に 関 す<br />
るCraik(クレイク)プロジェクトの 支 援 を 受 け、RCE Saskatchewan<br />
(サスカチュワン)が 中 心 となって 実 施 する 応 用 研 究 プロジェクト<br />
です。プロジェクトでは、 地 域 の 人 々や 組 織 が、 機 械 や 機 器 類 、 建 物 な<br />
どの 生 産 資 本 を 自 発 的 に 提 供 し、ソフトウェアを 使 って 資 産 の 追 跡 を<br />
行 います。プロジェクト 参 加 者 は、 消 費 ・ 生 産 システムにおける 自 分 の<br />
立 場 や、 地 域 社 会 におけるサービス 供 給 の 機 会 について 学 びます。<br />
RCE Skåne(スコーネ)では、マルメ 市 の 自 治 体 パートナーが 持 続 可<br />
能 な 食 料 システムに 関 する 知 識 を 身 につけることを 目 的 としたプロジ<br />
ェクトが 推 し 進 められました。マルメ 市 は、スウェーデン 国 内 で 最 初<br />
にフェアトレードの 認 定 を 受 けた 自 治 体 です。プロジェクトは、 学 校 で<br />
の 食 事 にオーガニックフードを 多 く 採 り 入 れるという 目 標 の 下 に 展 開<br />
されました。このプロジェクトでは、 市 自 治 体 、 食 料 供 給 者 、 学 校 の 三<br />
者 が 新 しいオーガニックフード・サプライチェーンの 構 築 にとり 組 む<br />
一 方 、 保 護 者 や 生 徒 は、このプロジェクト 用 に 作 られた 教 材 を 使 って<br />
SCPや 家 庭 での 食 事 について 学 びました。また、 食 べ 物 と 持 続 可 能 性<br />
をテーマとする、 教 師 を 対 象 とした 会 議 や 研 修 も 行 われました。フェア<br />
トレード 都 市 として 認 定 される 過 程 で、マルメ 市 はSCPのための 活 動<br />
や 学 習 にさまざまなレベルで 貢 献 しました。<br />
経 済 的 貧 困 地 域 のニーズに 応 えるSCPシステムを 作 ろうと 努 力 する<br />
RCE Penang(ペナン)は、マレーシア 科 学 大 学 (USM)と 地 元 の 農 村<br />
を 結 ぶプロジェクトを 立 ち 上 げました。USMが 土 壌 生 物 を 豊 富 に 含<br />
む 土 壌 を 作 る 技 術 を 開 発 し、 地 域 社 会 がこれを 実 行 に 移 すことで、 農<br />
村 の 土 地 生 産 力 は 飛 躍 的 に 増 大 しました。<br />
67
RCEは、それぞれ 地 域 の 課 題 を 採 り 上 げるだけでなく、RCEの 会<br />
報 記 事 や 学 術 論 文 、RCE 国 際 会 議 を 含 む 種 々の 国 際 会 議 でのデ<br />
ィスカッションを 通 して、それぞれの 実 践 活 動 について 情 報 交 換 を<br />
行 っています。 言 うまでもなく、こうした 情 報 交 換 からRCE 間 でのプ<br />
ロジェクトやアクションプランが 生 まれることもあります。 最 近 であ<br />
れば、ヨーロッパ、アジア、 北 米 、 南 米 の12のRCEが 協 力 して、 複 数<br />
の 新 しい 教 育 アプローチの 併 用 によりSCPの 概 念 を 効 果 的 に 実 践<br />
する 方 法 の 分 析 を 試 みる、「 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 地 域 と<br />
世 界 の 生 産 システムに 関 する 地 域 ベースの 研 究 」(Education for<br />
Sustainable Development Community-Based-Research on<br />
Local-International Production Systems:ESD-CLIPS)という<br />
プロジェクトが 作 られました。100 万 ユーロ 規 模 のこの 国 際 ESD 研 究<br />
プロジェクトでは、「 持 続 可 能 な 生 産 と 消 費 」と「 食 」を 切 り 口 とした 中<br />
等 教 育 レベルのESD 実 践 モデル 構 築 を 目 指 します。 具 体 的 には、 欧<br />
州 連 合 (EU)の6RCE 関 連 機 関 (ユネスコ・チェアを 含 む)、 国 際 協 力<br />
パートナー 国 (International Cooperation Partner Countries:<br />
ICPC)の4RCE、EUには 属 さない 先 進 国 の2RCEおよび 国 連 大 学<br />
高 等 研 究 所 がEUの 行 政 執 行 機 関 である 欧 州 委 員 会 (European<br />
Commission、EC)の 研 究 総 局 に 共 同 提 出 したプロジェクトです。<br />
ププロジェクトの 対 象 は、13 歳 から18 歳 までの 生 徒 ならびに 中 等 教<br />
育 学 校 の 教 員 で、 実 践 参 加 校 の 生 徒 は、 地 域 での 視 察 ・ 調 査 ・ 取 材 な<br />
どを 通 じて 特 定 の 穀 物 ( 具 体 的 には 米 、 大 豆 、 小 麦 )の 生 産 と 消 費 に<br />
関 するケース・スタディを 書 きます。このプロジェクトについては2010<br />
年 4 月 現 在 、EUと 交 渉 が 行 われています。<br />
今 後 の 展 望<br />
SCPというテーマは、 健 康 や 伝 統 的 知 識 のテーマ 領 域 と 密 接 に 結 び<br />
ついています。SCPが、 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する 先 進 国 の 考 え 方 と 共<br />
鳴 する 部 分 が 多 いとすれば、 健 康 と 伝 統 医 療 のテーマは、 途 上 国 に<br />
おける 持 続 可 能 な 暮 らしにより 重 点 を 置 いています。これらテーマ 間<br />
の 相 互 作 用 によって、 今 後 RCEは、SCPと 地 域 社 会 における 暮 らしと<br />
いう 複 雑 な 問 題 により 一 貫 した 方 法 で 対 処 し、 先 進 国 と 途 上 国 の 考<br />
え 方 やニーズの 差 異 を 調 整 できるようになると 期 待 されます。<br />
参 考 文 献<br />
UNESCO (2009). Review of Contexts and Structures for<br />
Education for Sustainable Development: Learning for a<br />
Sustainable World (Prepared by Arjen Wals), Paris: UNESCO.<br />
WHO (2010). World Summit on Sustainable Development.<br />
オンライン:http://www.who.int/wssd/en/<br />
68
3.<br />
RCEの 活 動 を<br />
ふりかえって<br />
69
インドからの 視 点 :<br />
RCEプネ<br />
および<br />
RCEコダグ<br />
はじめに<br />
世 界 各 地 に 存 在 する75の 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (Education for Sustainable<br />
Development:ESD)に 関 する 地 域 の 拠 点 (Regional Centre of Expertise:RCE)の<br />
うち、6つはインドにあります。ほとんどの 場 合 、 地 域 の 問 題 に 対 処 するためのこうした 専<br />
門 知 識 のネットワーク 設 立 は 高 等 教 育 機 関 が 中 心 になって 行 われますが、インドでは<br />
これまでのところ、6つのRCEはいずれもNGOが 始 めたもので、5つは 環 境 教 育 センター<br />
(Centre for Environment Education: CEE)、1つはエネルギー・ 資 源 研 究 所 (The<br />
Energy and Resources Institute: TERI)が 中 心 となっています。<br />
ここでは、インド 国 内 で 初 期 に 設 立 されたRCE Pune(プネ)とRCE Kodagu(コダグ)の<br />
2つの 例 を 挙 げ、どのようにグループが 集 まり、どのようにRCE 活 動 を 行 っているかを 紹<br />
介 し、さらにこうした 活 動 様 式 の 利 点 と 両 RCEが 直 面 した 制 約 について 説 明 します。 両<br />
RCEの 発 展 を 推 進 してきたのはCEEです。プネでもコダグでも、CEEが 既 存 のネットワー<br />
クを 強 化 し、 他 の 利 害 関 係 者 (ステークホルダー)の 参 加 を 募 ってRCEが 作 られました。
RCE プネ<br />
プネ 市 には 市 民 運 動 の 歴 史 があり、 人 々や 組 織 は 新 しいスローガン<br />
の 下 、さまざまな 理 由 で 協 力 し 合 ってきました。2005 年 にプネ 市 の 持<br />
続 可 能 な 開 発 をめぐって、こうしたグループのひとつが 生 まれました。<br />
開 発 計 画 連 合 と 呼 ばれるこのグループのメンバーは、スラム 街 の 再 建<br />
や 廃 棄 物 管 理 、インフォーマルな 経 済 活 動 、 交 通 、 水 など、プネの 開 発<br />
計 画 プロセスに 影 響 を 及 ぼすさまざまな 分 野 で 協 力 して 活 動 を 行 い、<br />
これがRCE 認 定 に 向 けてのネットワーク 基 盤 となりました。<br />
開 発 計 画 連 合 は 地 域 の 優 先 課 題 を 明 確 にし、 他 にもフォーラムやネ<br />
ットワークを 作 り、プネにおける 持 続 可 能 な 都 市 開 発 のためのESDを<br />
推 進 してきました。これらのフォーラムやネットワークでは 使 命 は 共 通<br />
しているものの、それぞれ 異 なる 領 域 に 焦 点 を 当 てています。 利 害 関<br />
係 者 の 顔 ぶれは、それぞれの 焦 点 と 問 題 によって 異 なります。たとえば<br />
プネ 市 民 の 環 境 フォーラム(PCEF)は、 地 域 行 政 改 善 のために 市 民<br />
の 取 り 組 みを 役 立 てる 目 的 で 作 られました。CEEでは、 開 発 計 画 連 合<br />
およびその 他 のメンバーの 勧 誘 も 率 先 して 行 い、PCEFは、 報 告 が 義<br />
務 づけられている 環 境 現 況 報 告 書 (ESR)の 枠 組 みで 用 いる 指 標 作<br />
成 に 助 力 し、 中 核 的 なグループがプネ 市 自 治 体 (PMC) 環 境 課 と 密 接<br />
に 連 携 して 報 告 書 を 作 成 しました。<br />
PCEFのある 会 議 において、ESDについて 議 論 し、PCEFの 他 の 下<br />
位 グループに 助 言 や 協 力 を 行 う 新 たなグループの 設 置 が 決 定 さ<br />
れました。 下 位 グループのひとつである「 市 立 学 校 に 関 係 する 市 民 」<br />
(CCMS)グループは 教 育 に 重 点 を 置 き、そのメンバーには、 廃 品 回<br />
収 業 者 組 合 、CEEなどのNGO、プネ 大 学 教 育 学 部 、プネ 大 学 政 治 科<br />
学 部 の 研 究 者 、その 他 の 関 係 者 が 含 まれています。グループの 活 動 の<br />
焦 点 は、 質 の 高 い 教 育 、 試 験 、 初 等 教 育 への 予 算 の 割 り 当 てとその 有<br />
効 活 用 、 水 や 衛 生 面 のインフラなどにあり、そうした 活 動 によって、 地<br />
域 に 最 も 必 要 とされる 質 の 高 い 教 育 の 機 会 を 増 やすというESDの 目<br />
標 を 実 現 しようとしています。<br />
水 や 衛 生 面 の 問 題 は、あるプログラムの 下 でキルロスカ 財 団 (エンジ<br />
ニアリング 商 社 キルロスカ・グループの 企 業 社 会 責 任 部 門 )とCEEの<br />
間 にもうひとつのパートナーシップを 生 み 出 しました。WASH(Water,<br />
Sanitation, Hygiene)( 水 ・ 公 衆 衛 生 ・ 衛 生 学 )と 呼 ばれるこのプロ<br />
グラムは、 現 在 、プネ 市 の19の 市 立 学 校 で 実 施 されており、 参 加 型 ア<br />
プローチによって、 水 ・ 衛 生 教 育 の 改 善 、 学 校 インフラの 向 上 とその 維<br />
持 を 促 進 しようとしています。キルロスカ・グループの 技 術 者 は 学 校 で<br />
技 術 指 導 やボランティア 活 動 を 行 い、CEEは 教 育 面 のインプットを 企<br />
画 しています。ESDのために 協 同 して 活 動 する 地 域 機 関 のネットワー<br />
ク 作 りの 中 で、このプログラムは、 変 容 を 促 す 教 育 を 目 標 として、 企 業<br />
の 社 会 的 責 任 (CSR)に 関 する 専 門 知 識 を 採 り 入 れることでRCEの<br />
枠 組 みに 貢 献 しています。<br />
71
RCEのパートナーであるプネ 大 学 の 講 師 の 中 には、 地 元 のNGOと 協<br />
力 して 学 生 の 実 地 学 習 に 役 立 つようなプロジェクトを 作 成 したり、 目<br />
標 実 現 のため 地 域 社 会 を 支 援 するNGOを 援 助 したりする 人 々もいま<br />
す。たとえばプネ 大 学 経 済 学 部 の 学 生 グループに 対 して 訓 練 を 行 い、<br />
プネのスラムに 暮 らす 人 々が 参 加 型 予 算 に 関 与 できるよう 支 援 しまし<br />
た。これは、スラムの 住 民 が 自 治 体 に 対 して、 政 府 からの 資 金 を 優 先<br />
的 に 配 分 してほしいところを 伝 えたり、 公 共 支 出 の 監 視 を 行 うことを<br />
可 能 にするものです。<br />
© RCE Lucknow<br />
インドのウッタルプラデシュにおける 安 全 な 学 校 環 境 に 関 する 人 材 トレーニング<br />
ほとんどの 場 合 、<br />
RCE 設 立 は 高 等 教 育 機 関 が<br />
中 心 になって 行 われていますが、<br />
インドではこれまでのところ、<br />
6つのRCEはいずれもNGOが<br />
始 めたものです。
RCEコダグ<br />
CEEはコダグ(クールグ) 地 方 で、「クールグ:もうひとつのモデル」と<br />
呼 ばれるプロジェクトを 実 施 しました。このプロジェクトでは、 丘 が 多<br />
く 風 光 明 媚 な、インド 南 部 のコーヒー 生 産 地 域 であるコダグの 植 生<br />
を80% 保 存 すること、それと 同 時 に、 自 然 および 天 然 資 源 に 基 づく 持<br />
続 可 能 な 暮 らしと 教 育 のための 道 を 切 り 開 くことが 目 標 でした。カナ<br />
ダの 国 際 モデル 森 林 ネットワーク(International Model Forest<br />
Network)は、クールグ・プロジェクトの 総 体 的 な 参 加 型 アプローチに<br />
感 銘 を 受 け、 地 元 の 組 織 や 機 関 に 対 し、コダグの 森 林 風 景 、 天 然 資<br />
源 、および 独 特 な 文 化 の 持 続 可 能 な 管 理 のために、コダグモデル 森 林<br />
トラスト(KMFT)の 設 立 を 申 請 するよう 呼 びかけました。その 後 、CEE<br />
はRCEコダグを 設 立 するために、トラストの 受 託 組 織 を 含 む 複 数 の<br />
組 織 を 動 員 しました。パートナーはいずれもコダグにおける 持 続 可 能<br />
な 開 発 の 利 害 関 係 者 でした。KMFTは 行 動 に 重 点 を 置 いていました<br />
が、CEEはコダグにおける 過 去 の 活 動 を 土 台 として、 持 続 可 能 な 開 発<br />
のための 教 育 の 重 要 性 を 強 調 することに 成 功 しました。<br />
コダグにおいて 利 害 関 係 者 が 協 力 するに 至 った 主 な 理 由 は、この 土 地<br />
の 住 民 が、 自 分 たちのアイデンティティや 文 化 や 周 囲 の 環 境 に 強 い 誇<br />
りをもっていることにありました。クールグ・プロジェクトにおける 成 果 も<br />
手 伝 って、 自 分 たちに 何 ができるかということを 自 覚 するようになった<br />
彼 らは、コダグにおける 持 続 可 能 な 開 発 に 貢 献 したいと 考 えました。ス<br />
テークホルダーの 顔 ぶれはそれぞれに 異 なりますが、 彼 らの 活 動 は、エ<br />
コツーリズム、 学 校 および 大 学 教 育 、 教 員 養 成 、 固 形 廃 棄 物 の 管 理 、<br />
政 府 職 員 の 研 修 、 女 性 のリテラシー、 若 者 や 女 性 が 生 計 を 立 てるため<br />
の 選 択 肢 、 有 機 コーヒー 栽 培 などの 分 野 で 展 開 されてきました。これ<br />
らの 活 動 はESDの 目 標 とも 一 致 しています。ESDの 目 標 は、 地 域 固 有<br />
の 問 題 に 合 わせてプログラムを 組 み 立 てること、 環 境 への 責 務 や 社 会<br />
正 義 、 生 活 の 質 の 向 上 といった 長 期 目 標 を 推 進 することにあります。<br />
パートナーシップの 恩 恵 と、RCEプネおよび<br />
RCEコダグが 直 面 した 制 約<br />
RCEプネおよびコダグでは 包 括 的 なフォーラムを 主 催 しています。ステ<br />
ークホルダーの 中 には 活 動 内 容 によって、 一 時 的 に、あるいは 間 欠 的<br />
に 参 加 するメンバーもいますが、 共 に 作 業 することでそれぞれが 活 力<br />
をもらっています。 総 体 的 に 見 れば、 彼 らはRCEの 活 動 に 参 加 するこ<br />
とで 力 を 伸 ばしてきました。たとえばコダグでホームステイの 受 け 入 れ<br />
を 行 っている 人 々は、 互 いに 協 力 することで、この 人 気 観 光 地 を 大 規<br />
模 商 業 ホテルやリゾートチェーンの 手 から 守 ってきました。<br />
プネには、 地 域 の 問 題 を 扱 う 非 公 式 の、 非 永 続 的 なネットワークが 既<br />
に 存 在 していました。そこに 登 場 したさらに 別 の 組 織 間 イニシアティブ<br />
として、 当 初 、RCEの 意 義 は 疑 問 視 されていましたが、 共 通 の 利 害 や<br />
優 先 課 題 がステークホルダーをひとつにし、 公 的 ではあるが 柔 軟 な<br />
統 轄 機 構 との 長 期 的 な 関 わりという 位 置 づけで、RCEの 概 念 は 彼 ら<br />
に 受 け 入 れられていきました。RCEの 新 しい 包 括 的 なアイデンティテ<br />
ィと 活 動 の 推 進 力 は、 多 様 なグループをひとつにまとめるのに 有 益 で<br />
した。ステークホルダーたちは、パートナーが 専 門 知 識 や 実 地 経 験 を<br />
73
もたらすこと、また 自 分 たちの 立 場 を 表 明 し、 活 動 を 共 有 し、 無 駄 な 努<br />
力 を 省 くのに 共 同 作 業 が 有 益 であることを 認 識 しました。 特 定 のネッ<br />
トワークのメンバーになれば、 他 のステークホルダーのもつ 情 報 を 安<br />
心 して 共 有 し, 活 用 することができます。<br />
プネには 市 民 運 動 のネットワーク 化 の 歴 史 がありますが、パートナー<br />
間 の 信 頼 は 容 易 に 生 まれるものではありません。 活 動 資 金 や 活 動 に<br />
対 する 認 知 、 活 動 のブランド 化 をめぐって、 地 域 には 競 争 も 生 まれま<br />
す。さらに 経 験 的 に 言 えることは、 明 確 な 課 題 があれば、ステークホル<br />
ダーが 互 いに 短 期 間 のパートナーシップを 組 むことは 可 能 ですが、ガ<br />
バナンスの 向 上 といった 長 期 的 プロセスに 関 しては 難 しいということ<br />
です。さまざまなステークホルダーが 共 通 の 具 体 的 な 問 題 に 取 り 組 む<br />
ことは 比 較 的 容 易 であっても、ESDのような 抽 象 的 で 長 期 的 な 問 題<br />
は、 直 ちに 目 に 見 える 成 果 が 上 がるわけではないため、 問 題 に 対 する<br />
関 心 を 維 持 することは 容 易 ではありません。ステークホルダーがきわ<br />
めて 特 殊 な 分 野 にかかわっている 場 合 は、より 広 い 視 点 から 持 続 可<br />
能 性 の 問 題 を 認 識 することが 難 しいということもしばしばあります。<br />
興 味 深 いことに、コダグでは 過 去 の 相 互 関 係 が、 新 たなパートナーシ<br />
ップを 強 化 する 役 目 を 果 たしました。 過 去 には、さまざまなパートナー<br />
がCEEと 協 力 してそれぞれ 異 なるプロジェクトに 従 事 していたため、パ<br />
ートナー 同 士 は 互 いに 知 り 合 うこともなく、お 互 いに 共 通 点 はほとんど<br />
ないと 思 っていました。RCEは、 地 域 の 持 続 可 能 な 開 発 の 種 々の 側 面<br />
において、こうしたさまざまなステークホルダーが 協 働 で 活 動 する 場<br />
を 提 供 することになりました。 懐 疑 的 な 考 え 方 も 軟 化 し、 他 のステーク<br />
ホルダーと 積 極 的 に 協 力 するようになりました。<br />
RCEコダグのステークホルダーらが 経 験 した 主 な 制 約 のひとつは、 地<br />
域 行 政 当 局 との 協 力 です。 地 域 行 政 当 局 は、 開 発 を 従 来 の 意 味 でし<br />
か 理 解 していないため、 大 抵 の 場 合 、RCEの 活 動 に 全 く 協 力 的 ではあ<br />
りません。<br />
共 通 の 利 害 はステークホルダーをひとつにし、RCEという 活 動 に 結 実<br />
しますが、RCEの 概 念 が 構 想 した 通 りに 実 行 されるには、 法 に 則 っ<br />
た、 公 共 心 のある、 民 主 的 で 非 階 層 的 な 社 会 が 必 要 です。 理 想 と 現 実<br />
が 一 致 することはまれですが、それぞれのRCEは 発 展 を 続 ける 活 動<br />
(ネットワーク)であり、RCEのパートナーは、 民 主 主 義 、 忍 耐 、 受 容 、<br />
チームワークの 原 則 を 常 に 学 び 続 けています。 彼 らが 協 力 して 行 って<br />
いる 活 動 だけでなく、こうしたあり 方 自 体 が、 持 続 可 能 な 開 発 に 向 け<br />
ての 運 動 に 対 する 重 要 な 貢 献 となっています。<br />
インド 環 境 教 育 センター<br />
高 等 教 育 プログラムディレクター<br />
キラン・B・チョーカー<br />
Kiran B. Chhokar<br />
74
日 本 のRCE<br />
現 在 国 内 RCEの 数 は6つまで 増 えました。 仙 台 広 域 圏 、 横 浜 、 中 部 、 兵 庫 — 神 戸 、 岡 山 、<br />
北 九 州 の 各 RCEは、 持 続 可 能 な 社 会 を 構 築 するため、 地 域 の 様 々な 課 題 に 対 し、 地 域 の<br />
多 様 性 を 尊 重 しつつ 取 り 組 んでいます。<br />
2004 年 初 め、RCEイニシアティブが 具 体 化 しつつあったとき、 日 本 においては、すでに<br />
各 地 でESDの 冠 でさまざまな 取 り 組 みがなされていました。ESDが 早 くから 日 本 で 積 極<br />
的 に 取 り 組 まれてきた 理 由 の 一 つとして、2002 年 に 南 アフリカ 共 和 国 のヨハネスブル<br />
グで 開 催 された「 持 続 可 能 な 開 発 のための 世 界 首 脳 会 議 (ヨハネスブルグ・サミット)」<br />
おいて、 日 本 政 府 が、 日 本 のNGOの 提 言 を 踏 まえ、「 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10<br />
年 (DESD)」を 提 案 したことがあげられます。 提 案 国 として、2005 年 のDESD 開 始 以 前<br />
から、ESDという 言 葉 が 使 われ 始 めたのです。<br />
実 際 、 宮 城 県 気 仙 沼 市 の 面 瀬 小 学 校 の 体 系 的 な 環 境 教 育 カリキュラムや 公 民 館 を 中 心<br />
とした 岡 山 市 京 山 地 区 ESD 環 境 プロジェクト(Kyoyama ESD Environment Project:<br />
KEEP) などの、 地 域 に 根 ざし、 地 域 と 連 携 した「 優 良 実 践 」が、RCE 構 想 を 練 る 際 のヒン<br />
トとなりました。また、これらの 実 践 例 があったからこそ、 国 連 大 学 高 等 研 究 所 は、 抽 象<br />
的 なモデルとしてだけでなく、 具 体 的 な 実 践 を 支 える 仕 組 みとしてRCEを 語 ることがで<br />
きました。5 年 前 には、RCE 仙 台 広 域 圏 の 一 小 学 校 のESD 実 践 、RCE 岡 山 の 一 公 民 館<br />
のESD 実 践 だったものが、 現 在 では、それぞれ 気 仙 沼 市 の 新 たに 認 定 されたユネスコ・<br />
スクール 群 (ASPnet)と 岡 山 市 や 倉 敷 市 の 公 民 館 を 通 じて、 広 がりを 見 せています。<br />
これまで 東 北 、 関 東 、 東 海 、 近 畿 、 中 国 、 九 州 地 方 に 設 立 された6カ 所 のRCEですが、<br />
それぞれ 地 域 の 持 続 可 能 性 の 課 題 、 力 を 入 れているテーマ、 教 育 上 のニーズ、ネットワー<br />
ク 構 成 や 運 営 の 面 などで、 違 った 顔 を 見 せています。 日 本 という 従 来 極 めて 同 質 的 だと<br />
考 えられている 国 に 位 置 するRCEの 多 様 性 は、RCEが 地 域 のニーズと 優 先 課 題 によって<br />
形 作 られるものだということ、ひいてはRCEが 世 界 的 なDESDのビジョンを 地 域 の 実 践<br />
に 移 すのに 有 効 な 仕 組 みであるということを 如 実 に 示 しています。RCEは、 各 地 域 そして<br />
RCE 間 での 多 様 性 を 尊 重 し、DESDの 目 標 達 成 に 貢 献 することを 目 指 します。<br />
76
国 内 RCEの 活 動<br />
RCE 仙 台 広 域 圏 は、4 地 域 1 大 学 ( 循 環 型 都 市 の 仙 台 地 域 、 持 続<br />
発 展 教 育 の 気 仙 沼 地 域 、 湿 地 水 田 生 態 系 と 生 物 多 様 性 を 活 かした<br />
大 崎 ・ 田 尻 地 域 、 水 源 地 域 の 里 山 保 全 の 白 石 ・ 七 ヶ 宿 地 域 、ESDの<br />
人 材 養 成 の 宮 城 教 育 大 学 )からなる 各 地 域 で、 地 域 ごとの 課 題 と<br />
地 域 共 通 の 課 題 「 持 続 可 能 な 食 とくらし」に 取 り 組 んでいます。<br />
RCE 横 浜 は、 大 学 生 などの 若 者 の 環 境 活 動 を 支 援 する 場 として 機 能<br />
しています。 横 浜 市 内 には29の 大 学 がありますが、それぞれの 大 学 が<br />
多 様 な 環 境 活 動 を 行 っています。これらの 活 動 の 相 互 連 携 を 図 り、ネ<br />
ットワークを 形 成 するための 情 報 交 換 や 人 の 交 流 の 場 である「 大 学<br />
生 ECOネットワーキングカフェ」を 定 期 的 に 開 催 しています。さらに、<br />
各 大 学 の 環 境 活 動 サークルのメンバーに 対 して、それぞれの 活 動 を<br />
活 性 化 させるためのスキルや 手 法 を 学 ぶための 宿 泊 研 修 会 を 開 催 し<br />
たり、 市 内 の 各 大 学 が 期 日 を 定 めて 一 斉 に 環 境 行 動 を 行 うことで 内<br />
外 にアピールする「 一 斉 環 境 行 動 」の 実 施 、RCE Penang(ペナン)や<br />
RCE Cebu(セブ)の 協 力 を 得 て 国 際 シンポジウムを 開 催 するなど、<br />
ESDの 更 なる 普 及 を 目 指 して 様 々な 活 動 を 行 っています。<br />
RCE 中 部 は、 対 象 地 域 を 伊 勢 湾 ・ 三 河 湾 に 注 ぎ 込 む 河 川 の 流 域<br />
( 伊 勢 ・ 三 河 湾 流 域 圏 )としており、 愛 知 県 ・ 岐 阜 県 ・ 三 重 県 をほぼ<br />
カバーする 範 囲 で 持 続 可 能 な 社 会 づくりの 取 り 組 みを 行 っています。<br />
主 たるプロジェクトとしては、 流 域 圏 におけるさまざまなテーマの 関<br />
連 性 の 調 査 や 活 動 の 連 携 を 促 進 する 伊 勢 ・ 三 河 湾 流 域 圏 プロジェ<br />
クトや、2010 年 に 名 古 屋 で 開 催 される 生 物 多 様 性 条 約 締 約 国 会 議<br />
(CBD-COP10)への 貢 献 活 動 、 伊 勢 湾 再 生 計 画 のモニタリング・ 協<br />
働 事 業 、 温 暖 化 防 止 に 向 けた 伊 勢 ・ 三 河 湾 流 域 圏 マイナス80 計 画 な<br />
どを 進 めています。<br />
RCE 岡 山 は、 学 校 、 市 民 団 体 、 企 業 、 公 民 館 など、さまざまな 組 織 や<br />
市 民 による、 環 境 や 国 際 理 解 を 中 心 としたESD 活 動 を 緩 やかにネット<br />
ワークしており、 現 在 100 以 上 の 組 織 が 活 動 に 参 加 しています。また、<br />
大 学 や 中 間 支 援 組 織 と 連 携 し、 各 分 野 の 専 門 家 の 協 力 を 得 ながら、<br />
広 く 市 民 への 啓 発 広 報 、ESD 活 動 支 援 、 研 修 、 交 流 の 場 の 提 供 を 行<br />
っており、 特 に、 地 域 の 社 会 教 育 の 拠 点 である 公 民 館 と 環 境 分 野 の<br />
研 究 を 行 っている 大 学 を 中 心 にESD 活 動 が 少 しずつ 広 がっています。<br />
事 務 局 は 岡 山 市 環 境 保 全 課 にあります。<br />
77
© RCE Greater Sendai<br />
日 本 のRCEの 多 様 性 は、<br />
RCEが 地 域 のニーズと<br />
優 先 課 題 によって<br />
形 作 られること、<br />
RCEがDESDのビジョンを<br />
地 域 実 践 に 移 すのに<br />
有 効 な 仕 組 みであるという<br />
ことを 示 しています。<br />
RCE 兵 庫 — 神 戸 は、 環 境 、 防 災 、 国 際 交 流 などの 領 域 の 専 門 性 を 有<br />
する 機 関 を 中 核 メンバーとし、 神 戸 大 学 に 事 務 局 が 置 かれています。<br />
神 戸 大 学 での 地 域 社 会 との 連 携 のもとでのESDプログラムの 開 発 と<br />
実 施 、 兵 庫 県 立 人 と 自 然 の 博 物 館 を 中 心 とした 生 物 多 様 性 保 全 な<br />
どに 関 する 市 民 の 取 り 組 みへの 専 門 家 の 支 援 などが 進 められていま<br />
す。 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 を 経 験 した 地 域 として、ESDの 重 要 な 要 素 とし<br />
て 防 災 ・ 減 災 を 位 置 づける 取 り 組 みを 重 点 的 取 組 の 一 つとして 進 め<br />
てゆきます。<br />
RCE 北 九 州 は、「 公 正 で 持 続 可 能 な 社 会 (= 世 界 の 環 境 首 都 )」 構<br />
築 を 目 指 して、 北 九 州 100 万 人 市 民 一 人 一 人 が、 持 続 可 能 な 開 発<br />
という 概 念 を 理 解 し、 達 成 するための 実 践 活 動 を 行 えるよう、 教 育 ・<br />
研 究 機 関 ・ 市 民 団 体 ・ 企 業 ・ 行 政 など、 現 在 57のさまざまな 機 関 ・<br />
団 体 が 連 携 し、3つのチーム(プロジェクトチーム・ 調 査 研 究 チーム・<br />
広 報 チーム)を 組 織 し、 活 動 を 展 開 しています。プロジェクトチーム<br />
では、ESD 出 前 講 座 、ESD 学 習 会 を 中 心 に、ESDを 視 野 に 入 れた 各<br />
団 体 のコラボ 事 業 も 展 開 しており、 調 査 研 究 チームではESDモニタ<br />
リング 調 査 やESD 教 材 の 開 発 、 広 報 チームでは 会 報 誌 の 編 集 を 主<br />
に 行 っています。<br />
78
平 成 18 年 3 月 には、「 国 連 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 」 関<br />
係 省 庁 連 絡 会 議 により、「わが 国 における『 持 続 可 能 な 開 発 のための<br />
教 育 の10 年 』 実 施 計 画 」が 発 表 されました。この 実 施 計 画 は、 初 期 段<br />
階 における 重 点 的 取 組 事 項 として、 普 及 啓 発 、 地 域 における 実 践 、 高<br />
等 教 育 機 関 における 取 組 の3 点 を 挙 げています。2 点 目 の「 地 域 にお<br />
ける 実 践 」において、その 具 体 例 として 国 連 大 学 の 地 域 の 拠 点 づくり<br />
を 取 り 上 げおり(4-1-ロ)、RCEが 国 内 実 施 計 画 に 位 置 づけられた<br />
かたちとなっています。<br />
国 内 RCEは、メーリングリストで 頻 繁 に 情 報 交 換 を 行 い、 互 いのイ<br />
ベントに 参 加 し 合 うなどして、 定 期 的 に 交 流 しています。さらには、 年<br />
に 一 度 国 内 RCE 実 務 者 会 議 がRCEの 持 ち 回 りで 開 催 され、 国 内<br />
RCEが 直 面 している 問 題 や 制 約 、それらを 克 服 する 手 段 などを 共<br />
有 し、RCE 間 の 学 びあいの 場 を 持 ちます。 国 内 RCE 実 務 者 会 議 には<br />
グローバルRCEサービスセンターからも 必 ず 出 席 し、 世 界 のESDや<br />
RCEの 動 向 などを 踏 まえて、 国 内 RCEにアドバイスをしています。<br />
日 本 のRCEの 活 動 からは、RCEイニシアティブが 各 地 域 や 国 内 の<br />
ESD 実 践 ばかりでなく、ESDの 国 際 協 力 も 推 進 していることもわか<br />
ります。 例 えば、RCE 仙 台 広 域 圏 では、アジアRCE 若 者 会 議 (ESD<br />
Asian RCE Leaders Youth: 通 称 EARLY)を2008 年 、2009 年 と 開<br />
催 し、アジアのRCEから 仙 台 へ 若 者 代 表 を 招 聘 しました。また 日 本 の<br />
RCEは、RCE 候 補 や 海 外 RCE( 特 に 近 隣 の 韓 国 )からの 訪 問 を 頻 繁<br />
に 受 けています。<br />
2009 年 のユネスコESD 世 界 会 議 (DESD 中 間 年 会 合 )で 採 択 さ<br />
れたボン 宣 言 ( 付 録 参 照 )において、 会 議 参 加 者 は、DESD 最 終 会<br />
合 をユネスコと 共 同 主 催 するという 日 本 政 府 の 意 向 を 歓 迎 しまし<br />
た。2014 年 のDESD 締 めくくりの 会 合 に 向 けて、 日 本 のRCEは、ますま<br />
す 国 内 外 のRCEとの 連 携 を 強 化 し、ESDを 盛 り 上 げていくことが 期 待<br />
されています。<br />
国 連 大 学 高 等 研 究 所<br />
ESDスペシャリスト<br />
望 月 要 子<br />
79
RCE 統 営<br />
(トンヨン)の 経 験 :<br />
政 府 との 協 力<br />
2005 年 に 承 認 された 初 期 のRCEのひとつであるRCE 統 営 (トンヨン)は、 韓 国 の 統 営 市<br />
が 延 世 大 学 および 慶 尚 大 学 と 共 同 で 設 立 を 推 進 しました。RCE 統 営 の 経 験 は、 当 初 から<br />
あらゆるレベル( 市 、 道 、 国 )で、 特 定 のステークホルダーグループ、すなわち 政 府 と 密 接 に<br />
結 びついています。<br />
2005 年 春 に、 延 世 大 学 の 研 究 者 らは 統 営 市 長 および 地 方 の 大 学 研 究 者 らに、ESDの<br />
世 界 的 イニシアティブに 取 り 組 むことを 呼 びかけました。この 呼 びかけは 快 く 受 け 入 れら<br />
れ、6 月 から10 月 の 間 に、 統 営 市 が 先 頭 となって 国 際 会 議 に 参 加 し、 地 元 のステークホル<br />
ダーとともに 国 際 セミナーや 会 議 を 主 催 し、 市 の 強 力 な 部 隊 である 計 画 ・ 監 査 部 局 内 に<br />
事 務 局 を 設 置 することで、RCEが 設 立 されました。<br />
2005 年 10 月 にRCEが 認 定 されて 以 降 、RCE 事 務 局 は 市 当 局 の 教 育 チーム 内 でその 機<br />
能 を 発 揮 してきました。 学 校 給 食 の 予 算 援 助 など 通 常 の 教 育 支 援 プログラムとは 別 に、<br />
教 育 チームの 主 な 仕 事 は、RCEを 通 してESDを 推 進 することにありました。そのために 職<br />
員 1 名 を 雇 い、 複 数 の 地 方 自 治 体 職 員 にRCE 関 係 の 仕 事 を 委 託 しました。<br />
さらに2005 年 以 降 、RCEの 年 間 予 算 のほとんどは 統 営 市 が 賄 っています。 例 外<br />
は、2007 年 から2010 年 に 道 および 国 が 支 出 したプロジェクト 予 算 です。 慶 尚 南 道 政 府<br />
はESDに 関 する 統 営 市 のイニシアティブを 承 認 し、RCEセンターならびにエコパーク 設<br />
置 プロジェクトの 予 算 の25%を 出 資 しています。このプロジェクトは、アジア 太 平 洋 地 域<br />
におけるRCEの 活 動 を 紹 介 するセンターを 建 設 し、 同 地 域 のESD 拠 点 の 形 成 を 目 指 し<br />
ます。 国 レベルでは、 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する 大 統 領 委 員 会 (PCSD)が、2009 年 に 委<br />
員 会 が 解 散 されるまでRCEの 活 動 を 支 援 しました。 現 在 は、エコパークプロジェクトの 予<br />
算 2000 万 米 ドルの 半 分 を 環 境 省 が 支 援 しています。2007 年 に 統 営 市 は、 教 育 科 学 技<br />
術 省 から 生 涯 学 習 都 市 に 認 定 され、3 年 間 にわたって 年 間 16 万 米 ドルの 予 算 を 得 ること<br />
になりました。<br />
統 営 市 とともに 行 っているRCEの 活 動 の 一 例 として、 市 職 員 研 修 プログラムがあり<br />
ます。このプログラムでは、 市 の 人 材 チーム、 慶 尚 大 学 、 延 世 大 学 、 希 望 製 作 所 (Hope<br />
Institute)が 共 同 で、 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する3ヵ 月 単 位 の 講 義 (RCEフォーラム)、<br />
エコシティの 政 策 立 案 に 関 するセミナー、 持 続 可 能 な 都 市 に 関 する3 日 間 の 研 修 ワーク<br />
ショップ(Lee SunShinアカデミー)を 実 施 しています。<br />
80
RCE 統 営 事 務 局 は 市 当 局 によって 設 置 されたものですが、RCE 統 営<br />
運 営 委 員 会 と 傘 下 の6つの 作 業 部 会 は、 徐 々に 市 の 管 理 から 独 立 して<br />
機 能 するようになってきました。 公 務 員 は1~3 年 ごとに 部 署 が 変 わり、<br />
またRCEのプロジェクトが 次 第 に 専 門 化 してきていることから、これは<br />
必 然 的 な 流 れでした。2010 年 にRCE 統 営 事 務 局 は 市 の 担 当 部 署 を<br />
離 れ、 統 営 ESD 財 団 として 独 立 することになっています。<br />
RCE 事 務 局 が 市 当 局 の 中 に 存 在 していたことで、 教 育 庁 やメディアを<br />
含 む 地 元 のステークホルダーの 参 加 を 幅 広 く 募 ることが 可 能 だった<br />
一 方 で、 利 害 や 考 え、 組 織 の 仕 組 みの 違 いから、RCEの 活 動 方 法 をめ<br />
ぐって 一 部 のステークホルダーグループと 市 当 局 の 間 に 緊 張 が 生 じる<br />
こともありました。さらに 政 治 的 状 況 の 変 化 によって、 特 にRCEに 対 す<br />
る 年 間 支 援 予 算 をめぐり 難 しい 問 題 が 生 じることもありました。<br />
全 体 として、 政 府 による 取 り 組 みは、 教 育 制 度 の 中 でRCEを 適 時 に、<br />
しっかりと 確 立 するのに 役 立 っています。 制 約 もありますが、さまざ<br />
まなレベルの 政 府 とのかかわりは、 特 に 資 金 援 助 や 組 織 的 サポー<br />
トの 面 でESDの 目 標 実 現 に 役 立 っています。 国 連 大 学 やユネスコな<br />
ど、DESDの 活 動 を 行 う 国 際 機 関 の 支 援 があれば、RCEはあらゆるレ<br />
ベルの 政 府 と 共 同 でESDの 世 界 的 目 標 を 推 進 する 部 隊 になることが<br />
できるということを、RCE 統 営 の 例 は 示 しています。<br />
RCE 統 営 (トンヨン)<br />
ウォン・ジュン・ビュン<br />
Won Jung BYUN<br />
81
RCEと<br />
高 等 教 育 機 関 の<br />
関 係<br />
すべてのRCEはそのネットワークの 中 に、 少 なくともひとつの 高 等 教 育 機 関 ないしは<br />
研 究 機 関 をパートナーとして 擁 しています。2009 年 に 回 答 のあった41のRCEのうち、<br />
18は 高 等 教 育 機 関 をその 受 け 入 れ 機 関 として 挙 げています。RCEが 作 られてか<br />
ら5 年 、この 数 字 はRCEにおける 高 等 教 育 機 関 の 重 要 性 を 明 確 に 示 しています。<br />
しかし、RCEと 高 等 教 育 機 関 の 間 にこうした 強 いパートナーシップが 存 在 するのはな<br />
ぜでしょうか。その 利 点 と 欠 点 は 何 でしょうか。この 関 係 はESDの 世 界 的 目 標 にどのよ<br />
うに 貢 献 しているのでしょうか。<br />
以 下 の 表 は、RCEのホスト 機 関 の 種 類 (NGO、 高 等 教 育 機 関 、 自 治 体 など)と、 世 界 のそ<br />
れぞれの 地 域 における 各 ホスト 機 関 の 数 を 示 したものです。<br />
表 1: 世 界 各 地 におけるRCEのホスト 機 関<br />
出 典 :2009 年 RCE 年 次 報 告 書<br />
82
パートナーに 高 等 教 育 機 関 の 数 が 多 い 主 な 理 由 のひとつは、 新 規<br />
RCEに 対 する 要 件 として、そのネットワークに 高 等 教 育 機 関 をパート<br />
ナーにすることが 挙 げられているためです。その 理 由 は、 高 等 教 育 機<br />
関 が、 境 界 を 超 えたネットワーク 化 やイノベーションのための 活 動 経<br />
験 を 豊 富 にもつことにあります。さらに 高 等 教 育 機 関 には、 教 育 の 分<br />
野 における 指 針 やリーダーシップを 示 し、 持 続 可 能 性 という 難 題 に 取<br />
り 組 む 社 会 的 責 任 と 倫 理 的 義 務 をもつことが 期 待 されています。<br />
翻 って、 社 会 のさまざまな 集 団 を 含 む 参 加 型 プロセスとして 概 念 化 さ<br />
れているRCEは、 学 問 と 社 会 の 架 け 橋 となることによって、 高 等 教 育<br />
機 関 のさらなる 発 展 に 貢 献 することができます。RCEは、 学 問 と 社 会<br />
の 相 互 学 習 というヴィジョンの 上 に 築 かれており、したがって、それぞ<br />
れの 地 域 にネットワーク 拠 点 をもつグローバルな 運 動 として、 研 究 と<br />
実 践 の 結 びつきを 強 化 する 可 能 性 を 秘 めています。<br />
国 連 大 学 は、 地 域 の 統 合 的 ESDアプローチの 考 案 と、 最 良 の 科 学 知<br />
識 と 最 良 の 教 育 実 践 の 融 合 に、 高 等 教 育 機 関 が 中 心 的 役 割 を 果 た<br />
すことを 期 待 しています。<br />
架 け 橋 を 築 く<br />
オーストリアのRCE Graz-Styria(グラーツ=シュタイア)が 生 涯 教 育<br />
センターと 共 同 で 考 案 した 世 代 間 コースの 事 例 は、 研 究 実 践 や 大 学<br />
教 育 を 社 会 に 移 転 することの 利 点 を 示 しています。この4 日 間 のコース<br />
では、さまざまな 学 科 の 大 学 生 、さまざまな 背 景 をもつ 現 役 ・ 退 職 者<br />
が、 地 域 や 世 界 の 持 続 可 能 性 に 関 する 問 題 について 最 新 の 研 究 成<br />
果 を 学 び、 事 例 研 究 ワークショップで 学 んだことを 応 用 します。 学 生<br />
は、 地 域 ・ 事 業 ・ 環 境 管 理 における 現 実 の 問 題 について 学 び、 大 学 で<br />
学 んだ 知 識 を 実 際 の 問 題 解 決 に 応 用 します。 現 役 で 働 く 人 々は、 自 身<br />
の 経 験 を 持 ち 込 み、 学 生 の 斬 新 なアイデアや、 講 師 やワークショップ<br />
指 導 者 の 研 究 経 験 を 学 びます。こうしたコースは、 社 会 に 大 学 の 門 を<br />
開 き、 持 続 可 能 な 開 発 に 対 する 地 域 社 会 の 認 識 を 高 めるのに 有 用 で<br />
す。 上 記 の 例 では、RCEが 大 学 の 研 究 プログラムと 生 涯 教 育 センター<br />
の 架 け 橋 の 役 目 を 果 たしています。<br />
83
学 際 的 研 究<br />
RCEは 以 下 の 中 核 的 原 則 に 基 づき、 学 際 的 研 究 プロジェクトを 推<br />
進 ・ 実 践 することで、 応 用 研 究 にも 貢 献 しています。<br />
• 学 問 と 実 践 の 協 力<br />
• 社 会 が 抱 える 問 題 から 生 まれる 研 究 課 題<br />
• 学 際 的 アプローチ<br />
• 研 究 プロセスにおける 相 互 学 習 と 教 育<br />
大 学 と 社 会 がともに 関 与 した 学 際 的 研 究 推 進 の 好 例 は、スウェーデ<br />
ンのRCE Skåne(スコーネ)に 見 ることができます。RCEスコーネは、<br />
マルメ 大 学 、マルメ 市 、ルンド 大 学 、ルンド 市 、スコーネ 地 方 による 地<br />
域 パートナーシップが 組 織 の 中 心 となっています。このRCEのフラッグ<br />
シップ・プロジェクトのひとつは、 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する 学 習 手 段 と<br />
して 食 を 扱 ったものです。プロジェクトの 目 的 は、 持 続 可 能 な 開 発 のた<br />
めの 教 育 および 食 について 教 材 やツールの 評 価 と 開 発 を 行 い、その<br />
教 育 成 果 を 評 価 することにあります。このプロセスにかかわっているの<br />
は、マルメ 大 学 とマルメ 市 、ルンド 市 、その 他 スコーネの 自 治 体 、NGO<br />
のWWFスウェーデン・エコロジカル・ガーデン・センターです。 研 究 、<br />
教 育 、NGO、 公 共 機 関 が 協 力 することで、 高 等 教 育 機 関 と 社 会 が 互<br />
いに 知 識 交 流 を 行 っています。さらに、 学 際 的 アプローチはESDのモ<br />
ジュールにも 反 映 されています。<br />
上 記 のオーストリアとスウェーデンの 事 例 は、RCEと 高 等 教 育 機 関 の<br />
協 力 によって 生 まれる 相 乗 効 果 を 実 証 しています。<br />
RCE Graz-Styria(グラーツ=シュタイア)<br />
クレメンス・マーダー<br />
Clemens Mader
4.<br />
RCE 優 良 実 践 例<br />
最 後 の 章 では、 世 界 のRCEのリーダー 的 存 在 として、 年 に 一 度 開 催 される 国 際 RCE 会 議<br />
での 分 科 会 のファシリテーター、RCE 間 テーマ 別 ネットワークのプロジェクトリーダーを<br />
務 めるなどして 活 躍 しているRCEの 地 域 での 具 体 的 な 活 動 を 見 ていきます。ヨーロッパか<br />
らオーストリアのRCEグラーツ=シュタイアとRCEバルセロナ、アジアから 韓 国 のRCE 統<br />
営 (トンヨン)とマレーシアのペナン、アフリカから 南 アフリカ 共 和 国 のRCEクワズールー・<br />
ナタール、アメリカ 大 陸 からカナダのRCEサスカチュワンの6つのRCEの 活 動 を 中 心 に 紹<br />
介 します。RCEペナンは 第 2 回 国 際 RCE 会 議 (2007 年 )、RCEバルセロナは 第 3 回 国 際 R<br />
CE 会 議 (2008 年 )、RCE 統 営 は 第 2 回 アジア 地 域 RCE 会 議 (2008 年 )、RCEサスカチュワ<br />
ンは 第 1 回 アメリカ 地 域 RCE 会 議 (2008 年 )、RCEグラーツ=シュタイアは 第 3 回 ヨーロッ<br />
パ 地 域 RCE 会 議 (2009 年 )をホストした 実 績 があります。またRCEクワズールー・ナタール<br />
は、スウェーデン 国 際 開 発 協 力 庁 (SIDA)より、 南 部 アフリカ 開 発 共 同 体 (SADC)の14カ 国<br />
にRCEの 設 立 を 支 援 するための 資 金 を 獲 得 することに 成 功 しました。この 章 で 紹 介 する<br />
RCEは、グローバルなRCEのネットワーキング 強 化 に 多 大 に 貢 献 するとともに、 各 地 域<br />
でも、 足 元 の 課 題 からESD 推 進 に 取 り 組 んでいます。<br />
85
ヨーロッパ<br />
RCEグラーツ=シュタイア(オーストリア)<br />
若 者 ・ 大 学 生 ・ 地 域 住 民 をESDへ 動 員 し、 世 代 間 の 学 びを 促 進<br />
オーストリア 人 口 第 2の 都 市 グラーツは、シュタイアーマルク 州 の 州 都<br />
です。グラーツ 大 学 が 中 心 となってネットワークを 形 成 し2007 年 8 月<br />
に 正 式 にRCEとして 認 定 されて 以 来 、RCEグラーツ=シュタイアは、<br />
革 新 的 な 共 同 プロジェクトを 実 施 してきました。<br />
サステナビリティ・トレイル(Sustainability Trail)<br />
シュタイアーマルク 州 政 府 とオーストリア 経 済 労 働 省 からの 資 金 援 助<br />
を 受 けて、RCEグラーツ・シュタイアは 地 元 のパートナー 団 体 と 協 力<br />
しながら、トローファイアッハ(Trofaiach: 北 シュタイアにある 人 口 約<br />
8,500 人 の 町 )の 森 林 に「サステナビリティ・トレイル(Sustainability<br />
Trail)」を 作 るプロジェクトを 実 施 しています。このプロジェクトでは、さ<br />
ユースセンターでのワークショップ<br />
サステナビリティ・トレイルの 水 資 源 に 関 する 標 識<br />
© RCE Graz-Styria © RCE Graz-Styria
© RCE Barcelona<br />
RCEバルセロナ『Education and Sustainability』 誌
まざまな 学 部 から 集 まった 大 学 生 が 中 心 となって、 大 学 で 学 んだ 専<br />
門 分 野 の 知 識 を 活 かしながら、 森 林 のハイキングコースに、 持 続 可 能<br />
な 環 境 づくりを 啓 蒙 する 標 識 を 作 っています。 標 識 の 内 容 は、ミレニア<br />
ム 開 発 目 標 に 関 するものから 水 資 源 、 気 候 変 動 、 貧 困 削 減 、エネルギ<br />
ー 節 約 、ESDなど 多 岐 にわたっています。これらの 標 識 を 作 成 する 作<br />
業 には、 地 元 のユースセンターに 所 属 する8から18 歳 の 若 者 も 積 極 的<br />
に 参 加 し、 創 造 的 なワークショップを 通 して 専 門 家 と 交 流 しながら、<br />
持 続 可 能 な 環 境 づくりについて 学 ぶ 機 会 を 得 ています。また、 町 の 役<br />
所 では、より 詳 しく 持 続 可 能 な 環 境 づくりについてまとめたパンフレッ<br />
トを 無 料 で 配 布 しています。この 活 動 の 優 れた 点 は、RCEグラーツ・<br />
シュタイアがイニシアティブをとり、 大 学 生 、 地 元 の 若 者 、 地 域 住 民 、<br />
学 校 、 幼 稚 園 といった 複 数 のステークホルダーが 協 力 して、 地 域 の 自<br />
然 を 利 用 しながら、 地 域 および 地 球 レベルの 持 続 可 能 な 環 境 づくりに<br />
ついて 取 り 組 んでいるところにあります。<br />
RCEバルセロナ 発 行 Education and<br />
Sustainability 誌 の 成 功<br />
スペインのRCEバルセロナ 発 行 の 雑 誌 『Education and Sustainability<br />
( 教 育 とサステナビリティ)』は、2007 年 に 創 刊 され、カタルーニャ 地 方<br />
の 小 中 高 等 学 校 に 配 布 されています。もともとカタルーニャ 語 のみで<br />
発 行 されていたEducation and Sustainability 誌 の 成 功 は、 同 誌<br />
のスウェーデン 語 版 が、RCEスコーネの 協 力 により 作 成 され、スウェ<br />
ーデンの 欧 州 連 合 (EU) 議 長 国 就 任 を 記 念 したESDの 国 際 イベント<br />
「ルンド・コーリング(Lund Calling)」(2009 年 9 月 開 催 )で 配 布 され<br />
たことからも 伺 えます。Lund Calling は、ルンド 市 の 十 代 の 若 者 とル<br />
ンド 大 学 の 教 員 や 研 究 者 、 政 策 決 定 者 や 専 門 家 が 関 わり、 持 続 可 能<br />
な 社 会 の 構 築 への 若 者 参 加 を 目 指 し、ESDの 重 要 性 を 謳 いました。<br />
RCEバルセロナのメンバー 機 関 は、Education and Sustainability<br />
誌 の 内 容 作 成 を 通 じて、 地 域 にとって 重 要 なトピックを 同 定 し、 互 いの<br />
イニシアティブを 共 有 しています。また、それぞれのパートナーのネット<br />
ワーク、 例 えば 学 校 、 教 材 センター、 図 書 館 、 地 方 公 共 団 体 、 環 境 教<br />
育 センターなどのネットワークを 活 用 して、 広 くESD 関 係 者 に 配 布 して<br />
います。<br />
2010 年 4 月 までに、7 号 が 刊 行 されており、 延 べ2 万 冊 が150 以 上<br />
の 組 織 ・ 機 関 に 配 布 されました。 毎 号 特 集 号 のかたちを 取 ってお<br />
り、2010 年 には、 生 物 多 様 性 、 健 康 ・ 保 健 、 倫 理 的 金 融 をテーマに、3<br />
号 を 刊 行 します。 配 布 に 関 する 手 続 きなどは、RCEのメンバー 機 関 で<br />
ある 非 営 利 協 同 組 合 のバルセローニャ(Barcelonya)が 担 当 していま<br />
す。RCEバルセロナは、2010 年 末 までに、 同 誌 の 英 語 版 とスペイン 語<br />
版 を 併 せて 発 行 する 予 定 です。<br />
88
89 © RCE Severn<br />
英 国 RCE Severn(セバーン) のイベントのポスター
アジア<br />
多 様 なアジア 太 平 洋 地 域 においては、 現 在 28のRCEが 認 定 されてお<br />
り、リーダー 的 なRCEが 育 っています。インドのRCEのフォーカル・ポ<br />
イントを 務 めるCEE(Centre for Environmental Education: 環 境<br />
教 育 センター)は、 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 (DESD)のナ<br />
ショナル・フォーカル・ポイントでもあり、インド 国 内 の6つのRCEをま<br />
とめています。インドの6RCEには、 全 てCEEの 現 地 支 部 がかかわっ<br />
ていますが、 唯 一 CEEがRCE 事 務 局 を 務 めていないRCEは、インド 資<br />
源 エネルギー 研 究 所 (TERI)に 事 務 局 を 置 くRCE Delhi(デリー)で<br />
す。2009 年 11 月 には、RCEデリーは、 第 3 回 アジア 太 平 洋 地 域 RCE 会<br />
議 をホストし、2010 年 2 月 にはデリー 持 続 可 能 な 開 発 サミット(Delhi<br />
Sustainable Development Summit:DSDS)において 開 催 された 気<br />
候 変 動 の 若 者 会 議 (YUVA-Youth Unite for Voluntary Action)<br />
と 併 せて、アジアRCE 若 者 会 議 を 開 催 しました。デリーでのアジア<br />
RCE 若 者 会 議 は、2008 年 と2009 年 にRCE 仙 台 広 域 圏 が 主 催 した<br />
アジアRCE 若 者 会 議 (EARLY)に 続 いての 開 催 になりました。<br />
以 下 、アジアのRCEの 代 表 格 として、 第 1 回 地 域 会 議 をホストしたRCE<br />
ペナンと 第 2 回 会 議 をホストしたRCE 統 営 の 実 践 活 動 を 紹 介 します。<br />
RCE 統 営 ( 韓 国 )― 行 政 を 中 心 とした 地 域 の<br />
ESD 推 進<br />
学 校 教 育 と 若 者 へESDをひろめよう<br />
統 営 RCE 運 営 委 員 会 の 下 に【1】 教 育 ( 市 民 教 育 、 学 校 教 育 、ユース・<br />
若 者 、 専 門 家 研 修 の4 委 員 会 を 統 括 )【2】 研 究 開 発 ( 研 究 と 評 価 )【3】<br />
協 力 ( 国 際 協 力 )の 三 つの 作 業 部 会 が 設 けられており、それぞれが 統<br />
営 地 域 におけるESD 推 進 に 具 体 的 な 事 業 で 貢 献 しています。<br />
例 えば、 学 校 教 育 の 委 員 会 においては、 韓 国 の 英 語 教 育 に 費 やさ<br />
れる 国 家 予 算 が 年 間 15 兆 ウオンにも 上 ることに 鑑 み、 英 語 教 育<br />
(English as Second Language: ESL)とESDを 結 びつけた 実 践 を<br />
90
推 進 しています。『Around the World in 5 Days: ESD English<br />
Camp(5 日 間 世 界 一 周 :ESD 英 語 キャンプ)』 事 業 では、キャンプの 参<br />
加 者 ( 小 中 学 生 対 象 )は、5 日 間 に 渡 って、5つのRCEとそれぞれのRCE<br />
に 関 連 したテーマ(バルセロナ→ 文 化 、トロント→ 国 立 公 園 、 仙 台 広<br />
域 圏 →ライフスタイル、パシフィック→ 温 暖 化 、ヨルダン→ 宗 教 の 多 様<br />
性 )を 英 語 で 学 び、 最 終 日 に 自 らの 学 びを 英 語 で 発 表 することによっ<br />
て、 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する 理 解 を 深 めるとともに、 英 語 力 とプレゼ<br />
ンテーションスキルを 向 上 させます。キャンプでの 食 事 には、 地 域 に 住<br />
む 外 国 人 を 招 待 し、 食 を 共 にすることによって 文 化 的 多 様 性 を 学 びま<br />
す。この 事 業 の 成 功 に 基 づき、 現 在 、 同 様 の 手 法 を 学 校 の 授 業 にも 取<br />
り 込 む 議 論 がなされています。<br />
© RCE Tongyeong<br />
RCE 統 営 の『Bridge to the World( 世 界 への 架 け 橋 )』コンテスト 参 加 者 の 中 高 生 2008 年 の『Bridge to the World( 世 界 への 架 け 橋 )』<br />
インド・デリーでの 気 候 変 動 の 若 者 会 議 YUVAに 参 加 したRCE 中 部 の 学 生 ( 左 端 )<br />
で 海 外 RCEへのチケットを 手 にした 中 高 生<br />
© RCE Chubu © RCE Tongyeong
また、 同 じく2008 年 より、『Bridge to the World( 世 界 への 架 け 橋 )』<br />
という 中 高 生 向 けの 持 続 可 能 な 未 来 への 鍵 を 探 るコンテストを 開 催<br />
しています。 参 加 者 は、まず 統 営 地 域 が 直 面 している 問 題 を 特 定 し、<br />
海 外 のRCEを1カ 所 選 んで、その 活 動 をリサーチし、 実 際 にそのRCE<br />
を 訪 れるツアーの 計 画 を 立 てます。 海 外 RCE 訪 問 ・ 視 察 を 通 して 何 を<br />
学 び、 地 元 の 問 題 解 決 にどのように 役 立 てたいかまでを、 総 合 的 にプ<br />
ロポーザルに 盛 り 込 みます。<br />
このコンテスト 事 業 では、 未 来 を 担 う 若 者 が、 海 外 のRCEについての<br />
リサーチと 実 際 の 訪 問 を 通 じて 得 た 学 びを、 地 元 の 具 体 的 な 問 題 解<br />
決 策 に 結 びつけることを 狙 いとしています。2008 年 には257 名 、2009<br />
年 と2010 年 には150 名 ずつの 応 募 があり、16―17 名 がファイナリス<br />
トとして 選 ばれました。ファイナリストは、3つのチームに 分 かれ、チー<br />
ム 毎 に 考 案 したプランに 沿 って、 実 際 に 海 外 のRCEを1カ 所 を 訪 れる<br />
機 会 を 得 ています。2008 年 はRCEミュンヘン、RCEトロント、RCEパシ<br />
フィック、2009 年 は、RCEカイロ、RCE 岡 山 、RCEイースト・ミッドラン<br />
ズ( 英 国 )、2010 年 にはRCEプネ、RCEバルセロナ、RCE 横 浜 を 訪 れま<br />
した。 例 えば、2008 年 にRCEパシフィックへのチケットを 手 に 入 れた<br />
チームは、 気 候 変 動 の 現 実 に 触 れるため、ツバルを 訪 れています。 帰<br />
国 後 は、 自 分 たちがデザインしたRCE 訪 問 ツアーの 視 察 ・インタビュ<br />
ー・ 交 流 などを 通 じて 得 た 気 づきや 学 びをレポートにまとめ、 一 般 向<br />
けに 報 告 会 を 行 います。『Bridge to the World』は、RCEにおけるユ<br />
ース( 若 者 )のリーダーシップとネットワークを 強 化 するため、 毎 年 開 催<br />
される 予 定 です。<br />
『Around the World in 5 Days: ESD English Camp(5 日 間 世 界<br />
一 周 :ESD 英 語 キャンプ)』 事 業 や『Bridge to the World( 世 界 への 架<br />
け 橋 )』 事 業 は、RCE 統 営 運 営 委 員 会 が 実 施 主 体 となっており、 内 容 も<br />
統 営 がグローバルなRCEのネットワークに 参 加 しているからこそ 可 能<br />
になっています。RCE 統 営 の 活 動 は、ESD 推 進 上 の 課 題 である「ひろが<br />
る・つながる・みえる」を 進 める 上 で 大 きな 牽 引 力 となっています。<br />
RCEペナン(マレーシア)― 大 学 を 中 心 とした 地<br />
域 のESD 推 進<br />
RCEペナンの 事 務 局 を 務 めるマレーシア 科 学 大 学 (Universiti Sains<br />
Malaysia:USM)は、RCE 認 定 を 受 けたことをきっかけに、マレーシ<br />
アのESDリーダーとして、ユネスコからマレーシアの 初 等 教 育 にお<br />
けるESDの 状 況 分 析 を 実 施 する 助 成 を 獲 得 するなど、さまざまな<br />
ESD 事 業 に 参 画 してきました。 中 でも 特 筆 すべきなのは、2008 年 9 月<br />
に、マレーシア 高 等 教 育 省 により、 国 内 唯 一 のAPEX(Accelerated<br />
Program for Excellence) 大 学 に 選 ばれ、5 年 の 期 間 内 に 世 界 レベ<br />
ルの 大 学 となるため、 財 務 ・サービス・ 経 営 ・ 学 生 の 受 け 入 れ 人 数 ・ 学<br />
費 ・ 大 学 の 重 要 ポストの 選 考 において 自 治 権 が 付 与 されたことです。<br />
現 在 USMはESD 理 念 に 基 づき 全 学 的 な 大 学 改 革 を 推 し 進 めていま<br />
す。カリキュラムにサステナビリティを 統 合 することに 加 えて、 地 域 貢 献<br />
の 分 野 においても、RCEペナンの 枠 組 みで、 革 新 的 な 取 り 組 みを 行 っ<br />
ています。USMは、『Inside Outアプローチ』と 呼 ぶ 手 法 で、キャンパス<br />
から 地 域 へESDの 波 及 を 図 っています。<br />
92
• White Coffin Campaign (「 白 い 棺 」<br />
キャンペーン)<br />
ポリスチレン 使 用 に 反 対 するUSM 学 生 によ<br />
るキャンペーン。ポリスチレンは 安 価 だが 健<br />
康 に 害 があるとして、USMの 学 生 リーダー<br />
がポリスチレンを 白 い 棺 に 見 立 てキャンペー<br />
ンを 展 開 し、まずは 学 生 食 堂 での 使 用 を 禁<br />
止 することに 成 功 しました。RCEパートナー<br />
から 強 い 支 援 を 受 け、キャンパス 外 にも 運 動<br />
を 広 めています。 現 在 マレーシアの19 国 公<br />
立 大 学 にもキャンペーンをひろげようとして<br />
います。<br />
http://thewhitecoffin.USM.my/<br />
© RCE Penang<br />
『 白 い 棺 』キャンペーンのポストカード<br />
• Campus-wide Recycling Program(キャンパス 内 リサイクル・プログラム)<br />
キャンパスをあげてのリサイクル・プログラム。まず50 人 の 学 生 が 地 元 NGOの 協 力 を 得 て『リサイク<br />
ル・チャンピオン』になるための 研 修 を 受 け、 最 新 のリサイクルに 関 する 知 識 を 得 た 上 で、 普 及 啓 発<br />
活 動 の 一 環 としてリサイクル 活 動 に 従 事 します。これをきっかけに、キャンパスから 地 域 コミュニティ<br />
へとリサイクル 活 動 が 広 がっています。<br />
• Sustainability Literacy Week (サステナビリティ・リテラシー 週 間 )<br />
RCEパートナー 団 体 であるSahabat Alam Malaysia (SAM)( 英 語 ではFriends of the Earth)<br />
とUSMが 共 同 実 施 。USMキャンパスで、さまざまな 展 示 、 映 画 上 映 、 講 演 、セミナーなどをおこない<br />
ます。<br />
• Anak-anak-Kota (Children of the City)<br />
SAMが 実 施 するプログラムで、 高 校 生 とUSMの 大 学 生 がマレーシアの 伝 統 的 衣 装 や 料 理 の 作 成<br />
過 程 に 触 れ、 歴 史 的 なモスクを 訪 ねるなどして、 地 域 文 化 の 理 解 を 深 めます。<br />
• Citizenship Initiative Project(シチズンシップ・イニシアティブ 事 業 )<br />
USMのインターナショナル・オフィスが 実 施 する 高 校 生 向 けの 地 域 の 課 題 解 決 学 習 。 参 加 者 は 地<br />
域 の 課 題 を 特 定 し、 調 査 に 基 づき、 解 決 策 を 提 案 します。これまでにマレーシア 全 国 の50 校 から<br />
5000 人 が 参 加 。 地 元 団 体 や 地 元 各 自 治 体 が 協 力 しています。
アメリカ<br />
RCEサスカチュワン(カナダ)<br />
先 住 民 と 農 村 部 と 都 市 部 をつなぐESD<br />
RCEの 中 には、ESDとRCEの 周 知 のため<br />
にロゴやニックネームを 公 募 したり、 作 成<br />
したりした 地 域 がいくつかあります。 例 え<br />
RCEサスカチュワンのロゴ<br />
ばRCE 北 九 州 では 公 募 で「 未 来 パレット」<br />
というニックネームを 採 用 し、RCEバルセロナ、RCEグラーツ=シュタ<br />
イア、RCEライン=ムーズ 川 流 域 、RCE 中 部 はロゴを 作 成 しました。<br />
その 中 でも、RCEサスカチュワンのロゴは 熟 考 を 重 ねた 上 にデザイン<br />
されており、ロゴ 作 成 の 過 程 自 体 がESD/RCEとは 何 か、 何 を 目 指 す<br />
のか、というビジョン 構 築 に 大 きな 役 割 を 果 たしました。<br />
RCEサスカチュワンのロゴの 対 称 性 は 多 様 なステークホルダーの 平 等<br />
を、 青 い 円 は 包 摂 ・ 結 束 ・ 全 体 を 表 現 しています。4つのこげ 茶 の 点 は、<br />
北 米 先 住 民 族 の 伝 統 において 重 要 な4 方 向 をあらわしており、RCEが<br />
地 域 をサステナビリティに 導 くという 意 味 が 込 められています。4 人 の<br />
人 間 が 左 手 を 伸 ばして 中 心 に 向 かっている、すなわちひとつのゴール<br />
に 向 かって 協 働 していると 解 釈 できると 同 時 に、オレンジ 色 の4 枚 の<br />
花 びらはサスカチュワンの 州 花 であるオニユリ(Western Red Lily)、<br />
緑 の 部 分 は 芝 生 、 青 い 円 は 空 を 表 し、ロゴ 全 体 でカナダの 大 草 原 (プ<br />
レーリー)エコシステムを 表 現 しています。<br />
また、このロゴを 鳥 瞰 的 視 点 で 見 ると、 無 限 大 のシンボル(∞)が 二 つ<br />
あるように 見 えます。 無 限 の 概 念 は、 持 続 可 能 性 を 達 成 するために 必<br />
要 な 時 間 の 流 れと 空 間 的 次 元 を 考 える 上 で 有 効 です。 時 間 的 には、<br />
悠 久 の 時 の 流 れの 中 で、これまでの 人 類 の 足 跡 を 理 解 し、どうすれ<br />
ばわれわれに 続 く 世 代 にとっても 持 続 可 能 な 開 発 を 達 成 できるのか<br />
を 考 えなければなりません。 空 間 的 には、ローカルな 視 点 のみならず<br />
グローバルな 視 点 も 必 要 となってきます。グローバルなRCEのネット<br />
ワークは、 地 球 規 模 の 視 座 を 地 域 の 取 組 に 提 供 してくれます。さらに<br />
無 限 大 のシンボルは、プレーリー 地 区 のメティまたはメティス(Métis)<br />
の 旗 のシンボルでもあります。メティはカナダインディアン(ファースト<br />
94
ネーション)とヨーロッパ 人 の 混 血 子 孫 で、カナダの 先 住 民 族 のひと<br />
つです。メティスの 抵 抗 運 動 のリーダー、ルイ・リエル(Louis Riel,<br />
1844-1885)がたどった 足 跡 は、 現 在 のハイウェイ11 号 線 にあたり、<br />
サスカチュワン 州 の 中 心 を 走 っています。<br />
また、これまで 世 界 でRCEイニシアティブを 進 めていく 上 で、 何 度 か 優<br />
良 実 践 に 対 して 賞 を 与 えるという 案 が 議 論 されてきましたが、RCEサ<br />
スカチュワンでは、 地 域 の 優 良 ESDプロジェクトを 表 彰 する 式 典 を 年<br />
一 回 開 催 しています。<br />
RCEサスカチュワンは、サスカチュワン 州 のグリーン・イニシティブ 基 金 か<br />
ら 約 7 万 カナダドルをRCE 活 動 のために 獲 得 しており、その 活 動 資 金 を<br />
一 部 使 って、 地 域 のESDプロジェクトのデータベースを 作 成 しています。<br />
RCEサスカチュワンのフラッグシップ・プロジェクトは、 若 者 向 け<br />
の“YouthBuild Saskatchewan” 事 業 と 大 学 生 と 大 学 教 員 向 けの<br />
“Engineering Education for Sustainability Initiative” 事 業 です。<br />
1. YouthBuild Saskatchewan<br />
YouthBuild USA のグリーン・ビルディング・イニシアティブをモデルし<br />
て、レジャイナ 中 北 部 地 域 協 会 (Regina North Central Community<br />
Association)と 協 力 して、 地 域 ( 具 体 的 にはレジャイナ、 サスカトゥーン、<br />
およびサスカチュワン 農 村 部 )に 手 ごろでエネルギー 効 率 の 良 い 家 を 建<br />
てることを 目 指 します。 統 計 によると、 地 域 の5 万 世 帯 が 最 低 限 の 住 環 境<br />
を 余 儀 なくされており、 手 ごろでサステナブルな 住 居 が 必 要 とされてい<br />
ます。このプロジェクトによって 建 設 される 住 居 は、 一 部 サスカチュワン<br />
研 究 協 議 会 が 開 発 したデザインに 基 づいており( 例 えば 水 のリサイクル<br />
やR60インシュレーション、 太 陽 熱 暖 房 などが 採 用 されています)、1970<br />
年 に 建 てられた 同 じサイズの 一 般 的 な 住 居 に 比 べて、エネルギー 使 用<br />
を90%カット、 水 使 用 を50%カットできます。この 事 業 では、 約 3 万 人 の<br />
16 歳 から24 歳 の 若 者 を 対 象 に、 高 校 中 退 者 やニートも 含 めて、 職 業 訓<br />
練 を 行 います。RCEは、YouthBuild Saskatchewanを 持 続 可 能 な 地 域<br />
づくりに 向 けた 長 期 事 業 と 捉 え、ステークホルダー 間 の 協 働 を 促 進 し、<br />
事 業 成 果 を 広 め、 事 業 資 金 獲 得 のためにも 尽 力 しています。<br />
2. Engineering Education for Sustainability Initiative<br />
サステナビリティに 向 けたエンジニアリング 教 育 のイニシアティブに<br />
おいては、 再 生 可 能 エネルギーと 建 築 技 術 を 草 原 地 帯 に 応 用 するた<br />
めの 研 究 ・ 研 修 センターの 設 立 を 目 指 しています。RCE、レジャイナ<br />
大 学 、マックマスター 大 学 、サスカチュワン 応 用 科 学 技 術 研 究 所 なら<br />
びに 企 業 (Cleanfield Energy Corporation, Shamrock Energy<br />
Systems Limited)との 共 同 プロジェクトです。まずは、レジャイナ 大 学<br />
とクレイク(Craik)に 風 車 が 設 置 され、 教 育 ・ 研 究 ・デモンストレーショ<br />
ンの 目 的 で 使 用 されます。この 事 業 は、 行 政 区 をまたぐ 点 、さまざまな<br />
教 育 セクターと 教 育 活 動 ( 学 術 界 、 初 等 中 等 教 育 、 大 学 カリキュラム、<br />
大 学 の 地 域 貢 献 )と 産 官 学 民 の 連 携 である 点 で 極 めてRCE 的 実 践 で<br />
あると 言 えます。<br />
上 記 ふたつのフラッグシップ・プロジェクトは、いずれも、6つあるRCE<br />
サスカチュワンの 作 業 部 会 のうち、 気 候 変 動 、 保 健 ・ 健 康 、 持 続 可 能<br />
な 社 会 基 盤 (Sustainable Infrastructure)の3つを 扱 っています。<br />
95
アフリカ<br />
アフリカにおいて 国 連 大 学 のR C Eイニシアティブは、ナイロビ<br />
に 本 部 を 置 く 国 連 環 境 計 画 (UNEP)のDESDへの 貢 献 である<br />
MESA(Mainstreaming Environment and Sustainability in<br />
African Universities:アフリカ 各 大 学 への 環 境 およびサステナビリ<br />
ティ 主 流 化 )イニシアティブと 連 動 しており、 全 てのRCEにMESA 参 加<br />
大 学 が 関 与 しています。またアフリカのRCEは、アフリカの 高 等 教 育 を<br />
再 活 性 化 させ、アフリカの 大 学 の 地 域 貢 献 を 強 化 するというアフリカ<br />
連 合 が 掲 げた 目 標 に 貢 献 していると 言 えます。<br />
大 学 ではなくNGOが 中 心 的 役 割 を 果 たしているRCEには、 南 アフリカ<br />
共 和 国 のRCEクワズールー・ナタール、ケニヤのRCE Greater Nairobi<br />
(ナイロビ 広 域 圏 )、エジプトのRCE Cairo(カイロ)などがあります。 下<br />
記 では、まず、RCEクワズールー・ナタールの 地 域 実 践 を 見 ていきます。<br />
それに 続 き、ヨーロッパとアフリカの 間 のRCEの 交 流 について 紹 介 します。<br />
RCEクワズールー・ナタール( 南 アフリカ)― 環 境<br />
NGO を 中 心 とした 地 域 のESD 推 進<br />
環 境 教 育 ・ESD 実 践 者 の 能 力 育 成 と 実 践 強 化<br />
RCEクワズールー・ナタールの 事 務 局 は、1926 年 設 立 の 南 アフリカで<br />
最 も 古 い 環 境 NGOである 南 アフリカ 野 生 生 物 ・ 環 境 協 会 (Wildlife<br />
and Environment Society of South Africa: WESSA)が 務 め<br />
ています。80 年 以 上 に 渡 って 形 成 されてきた 環 境 教 育 ネットワー<br />
クを 活 用 し、レソト、ジンバブエ、ナミビア、ザンビアにおいて、 新 たな<br />
RCE 設 立 に 積 極 的 に 関 わっています。また、ナイル 川 流 域 越 境 環 境<br />
行 動 計 画 (Nile Basin Transboundary Environmental Action<br />
Project:NTEAP)という、ナイル 川 沿 いの10カ 国 を 巻 き 込 んだ 持 続 可<br />
能 な 水 管 理 のための 環 境 枠 組 み 作 成 事 業 にも 参 画 しています。RCE<br />
クワズールー・ナタールでの 協 議 に 基 づき、NTEAPは 戦 略 的 な 環<br />
境 教 育 枠 組 みを 策 定 ・ 実 施 する 共 通 のベースともなり 得 るという 理<br />
解 から、WESSAはRCEのパートナーである2 団 体 Isikhungusethu<br />
Environmental Services( 環 境 サービス 会 社 )とGroundTruth( 環<br />
境 モニタリング・ 環 境 コンサルティング 会 社 )と 共 にNTEAPに 参 画 する<br />
96
ことで 合 意 しました。 既 にナイル 川 流 域 の 各 国 の 大 学 においてナイル<br />
川 流 域 の 環 境 問 題 は 関 連 コースにおいて 取 り 扱 われているものの、さ<br />
らに 包 括 的 な 視 点 を 取 り 入 れることによって 改 善 されるという 見 解 に<br />
基 づき、RCEクワズールー・ナタールは、 環 境 教 育 とESDがナイル 川 流<br />
域 の 高 等 教 育 機 関 でどのように 教 えられているかを 調 査 し、より 効 果<br />
的 にESDを 高 等 教 育 に 統 合 するためのリソース(テキスト、ウェブサイト)<br />
にまとめています。<br />
このようなナイル 川 流 域 のESD 教 材 開 発 に 加 え、RCEクワズール<br />
ー・ナタールは、WESSAを 実 施 主 体 として、 南 アフリカの 国 家 資 格<br />
『Environmental Education, Training and Development<br />
Practice(EETDP: 環 境 教 育 ・ 研 究 ・ 開 発 実 践 )レベル5』 獲 得 につ<br />
ながる『 環 境 教 育 ラーナーシップ(Learnership)』(リーダーシップと<br />
かけて、Learnerすなわち 学 習 者 の 主 体 性 を 強 調 した 言 い 方 )とい<br />
うプログラムを 実 施 し、ESDの 担 い 手 づくりに 貢 献 しています。この<br />
Learnershipプログラムは、1 年 間 にわたり、5 日 間 のセッションに4<br />
回 参 加 することを 義 務 付 けるもので、これまでに50 名 以 上 が 国 家 資<br />
格 を 獲 得 しました。WESSAは、 意 図 的 に、 現 在 勤 務 している 組 織 ( 政<br />
府 、NGO、 民 間 企 業 など)でキャリアアップとスキルアップを 目 指 す 参<br />
加 者 と 現 在 失 業 中 の 参 加 者 をバランスよく 採 用 して、ESD 実 践 者 とし<br />
て 自 活 する 道 も 開 いています。<br />
RCE 間 交 流 と 活 動 の 広 がり<br />
2010 年 4 月 現 在 、ヨーロッパには22のRCE、アフリカには12のRCEが<br />
あります。 外 部 資 金 を 獲 得 してのヨーロッパとアフリカのRCE 間 の 研<br />
究 事 業 や 能 力 育 成 活 動 が、RCEの 手 で 自 発 的 に 進 められています。<br />
RCEカイロは2008 年 11 月 に 認 定 された 比 較 的 新 しいRCEですが、<br />
その 設 立 に 直 接 的 契 機 を 与 えたのはRCEグラーツ=シュタイアでし<br />
た。RCEグラーツ=シュタイアやその 他 のヨーロッパのRCEが 中 心 に<br />
なって 進 めているRCE 間 協 働 プロジェクト( 例 えば 第 2 章 で 紹 介 した<br />
ESD-CLIPS 事 業 )に、RCEカイロは 積 極 的 に 参 加 しています。<br />
世 界 最 大 規 模 のスラムであるキベラ(ナイロビ)で 開 催 されたRCE Greater Nairobi(ナイロビ 広 域 圏 )の 立 ち 上 げ 式 典 。 写 真 中 央 にRCE 認 定 証 を 手 渡 す 名 執 芳 博 ( 国 連 大 学 高 等 研 究<br />
所 )、その 左 手 に 写 っているのが、RCE Rhine-Meuse(ライン=ムーズ 川 流 域 )のコーディネーターのJos RikersとJos Hermans
RCEカイロの 事 務 局 を 務 めるのは、エジプト 最 大 の 茶 葉 メーカー<br />
で、 大 手 有 機 食 品 会 社 であるセケム(SEKEM)の 財 団 であるセケ<br />
ム 開 発 財 団 です。セケム 社 の 若 手 経 営 者 アブーレイシュ(Ibrahim<br />
Abouleish) 氏 は、 持 続 可 能 な 開 発 に 向 けた21 世 紀 のビジネスモデ<br />
ルを 構 築 したとして2003 年 にオルタナティブ・ノーベル 賞 として 知 ら<br />
れるRight Livelihood Awardを 受 賞 しています。RCEカイロは 民 間<br />
部 門 、 政 府 、 教 育 機 関 、NGOを 効 果 的 につないでいます。2009 年 5<br />
月 には、 国 連 工 業 開 発 機 関 (UNIDO)と 国 連 大 学 高 等 研 究 所 と 共 催<br />
でESDと 高 等 教 育 に 関 する 会 議 を 開 き、MENA(Middle East and<br />
North Africa: 中 東 と 北 アフリカ) 地 域 の 高 等 教 育 機 関 へのESDの 普<br />
及 ・ 啓 発 に 貢 献 しました。<br />
RCE Rhine-MeuseRCEライン=ムーズ 川 流 域 は、 衰 退 している 工 業<br />
地 帯 の 活 性 化 を 目 指 した『Building New Futures ( 新 しい 未 来 をつ<br />
くる)』というプロジェクトにおいて、RCEナイロビ 広 域 圏 (ケニヤ)と 協 力<br />
して、 若 者 の 能 力 育 成 を 実 施 しました。このプロジェクトでは、 建 設 業<br />
界 で 働 くオランダ 人 青 年 を、ガーナかケニヤの 建 設 現 場 に 送 り、ガー<br />
ナとケニヤの 農 村 やスラムから 若 者 をオランダに 呼 び 寄 せました。オ<br />
ランダとアフリカからの 参 加 者 は、 企 業 家 精 神 と 建 設 技 術 に 関 する 特<br />
別 な 訓 練 を 受 けました。これまでに3 回 開 催 されており、70 名 以 上 が<br />
参 加 しています。ESDを「 地 域 の 課 題 解 決 学 習 」と 捉 えると、ライン=ム<br />
ーズ 地 域 にとっては 工 業 地 帯 の 若 者 の 職 業 訓 練 が、まさにサステナビ<br />
リティの 課 題 を 解 決 するESDと 言 えます。この 事 例 は、 過 疎 化 や 産 業<br />
の 空 洞 化 という 共 通 の 課 題 を 抱 える 先 進 国 でのESDを 考 える 際 の 参<br />
考 にもなると 言 えるでしょう。<br />
大 陸 間 でのESD 教 材 の 共 有 化 も 始 まっています。 前 述 したRCEバル<br />
セロナ 発 行 のEducation and Sustainability 誌 は、RCEクワズール<br />
ー・ナタールのWESSAの 環 境 教 育 ネットワーキング・ 教 材 共 有 プロジ<br />
ェクト『Share-net』と 協 働 で、ESD 実 践 とESD 教 材 を 収 集 ・ 分 析 する<br />
作 業 を 開 始 しました。 現 在 、 他 のRCEにも 参 加 を 呼 びかけています。
付 録<br />
Annexes<br />
略 語 リスト<br />
ASEAN<br />
CBD<br />
CEE<br />
COP<br />
CSD<br />
CSR<br />
DESD<br />
EFA<br />
ESD<br />
EU<br />
ICT<br />
MDGs<br />
MESA<br />
NGO<br />
RCE<br />
R&D<br />
SADC<br />
SADC-REEP<br />
SCP<br />
Association of Southeast Asian <strong>Nations</strong><br />
東 南 アジア 諸 国 連 合<br />
Convention on Biological Diversity<br />
生 物 多 様 性 条 約<br />
Centre for Environment Education, India<br />
インド 環 境 教 育 センター<br />
Conference of Parties (of <strong>United</strong> <strong>Nations</strong> Conventions)<br />
( 各 種 国 連 条 約 の) 締 約 国 会 議<br />
Commission on Sustainable Development<br />
( 国 連 ) 持 続 可 能 な 開 発 委 員 会<br />
Corporate Social Responsibility<br />
企 業 の 社 会 的 責 任<br />
Decade of Education for Sustainable Development<br />
( 国 連 ) 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年<br />
Education for All<br />
万 人 のための 教 育<br />
Education for Sustainable Development<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育<br />
European Union<br />
欧 州 連 合<br />
Information and Communications Technology<br />
情 報 通 信 技 術<br />
Millennium Development Goals<br />
ミレニアム 開 発 目 標<br />
Mainstreaming Environment and Sustainability in African Universities<br />
アフリカ 各 大 学 への 環 境 およびサステナビリティ 主 流 化<br />
(UNEPのDESD 関 連 イニシアティブ)<br />
Non-Governmental Organization<br />
非 政 府 組 織<br />
Regional Centre of Expertise on ESD<br />
ESDに 関 する 地 域 の 拠 点<br />
Research and Development<br />
研 究 開 発<br />
South African Development Community<br />
南 部 アフリカ 開 発 共 同 体<br />
SADC-Regional Environmental Education Programme<br />
SADC 環 境 教 育 プログラム<br />
Sustainable Consumption and Production<br />
持 続 可 能 な 消 費 と 生 産<br />
99
SIDA<br />
Swedish International Development Cooperation Agency<br />
スウェーデン 国 際 開 発 協 力 庁<br />
UN<br />
<strong>United</strong> <strong>Nations</strong><br />
国 際 連 合 ( 国 連 )<br />
UNEP <strong>United</strong> <strong>Nations</strong> Environment Programme<br />
国 連 環 境 計 画<br />
UNESCO <strong>United</strong> <strong>Nations</strong> Educational, Scientific and Cultural Organization<br />
ユネスコ、 国 連 教 育 科 学 文 化 機 関<br />
UNESCO-APEID UNESCO Asia-Pacific Programme of Educational Innovation for Development<br />
ユネスコ・アジア 太 平 洋 地 域 教 育 開 発 計 画<br />
<strong>UNU</strong><br />
<strong>United</strong> <strong>Nations</strong> <strong>University</strong><br />
国 際 連 合 大 学<br />
<strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong> <strong>United</strong> <strong>Nations</strong> <strong>University</strong>-Institute of Advanced Studies<br />
国 際 連 合 大 学 高 等 研 究 所<br />
WHO World Health Organization<br />
世 界 保 健 機 関<br />
WSSD World Summit on Sustainable Development<br />
持 続 可 能 な 開 発 に 関 する 世 界 首 脳 会 議<br />
用 語 リスト<br />
フォーマル 教 育 制 度 化 された 学 校 教 育 制 度 内 での 教 育 活 動 。<br />
ノンフォーマル 教 育<br />
インフォーマル 学 習<br />
正 規 の 学 校 教 育 以 外 に、ある 目 的 をもって 組 織 された 教 育 活 動 。 例 と<br />
してはNGOによる 環 境 教 育 や 国 際 援 助 団 体 による 識 字 教 育 などが 挙<br />
げられる。<br />
日 常 の 経 験 、メディアやピアーインタラクションなどに 基 づく、 組 織 的 で<br />
はない 学 習 過 程 全 般 。 厳 密 には、「インフォーマル 教 育 」という 表 現 は、<br />
教 育 が「ある 目 的 をもって 組 織 された 学 習 活 動 」を 指 すと 考 える 場 合 、<br />
正 しくない。<br />
スコーピング プロジェクトが 対 象 とする 範 囲 を、プロジェクトの 予 算 や 期 間 に 見 合 った<br />
規 模 規 定 すること。 検 討 範 囲 の 絞 込 み。 環 境 アセスメント 用 語 では、アセ<br />
スメントを 行 う 前 にその 項 目 や 方 法 を 公 開 して、 広 く 意 見 を 求 めることを<br />
意 味 し、 公 開 討 論 会 、ヒアリング、アンケートなどが 含 まれる。<br />
100
国 連 大 学 高 等 研 究 所 ESDプログラム 出 版 物<br />
RCEに 関 する 出 版 物<br />
査 読 付 き 学 術 誌 の 特 集 号 と 特 集<br />
• International Journal of Sustainability in Higher Education, 9(4), Special Issue on the Role of<br />
Higher Education Institutions in RCEs. Edited by Rietje van Dam-Mieras, Zinaida Fadeeva,<br />
and Yoko Mochizuki (2008).<br />
• Journal of Education for Sustainable Development, 4(1), Special section on the case studies<br />
of RCEs. Edited by Zinaida Fadeeva and Yoko Mochizuki (2010).<br />
査 読 付 き 学 術 誌 掲 載 論 文<br />
• Fadeeva, Zinaida & Mochizuki, Yoko (2007). Regional Centres of Expertise: Innovative<br />
Networking for Education for Sustainable Development. Journal of Education for<br />
Sustainable Development, 1(2): 229–237.<br />
• Mochizuki, Yoko (2008). The RCE Initiative as a Policy Instrument for Sustainable<br />
Development: Can it Match the World Heritage List and the Global Compact? Journal of<br />
Education for Sustainable Development, 2(1): 61–71.<br />
• Mochizuki, Yoko & Fadeeva, Zinaida (2008). Regional Centres of Expertise on Education<br />
for Sustainable Development: An Overview. International Journal of Sustainability in Higher<br />
Education, 9(4): 369–381. Special Issue on RCE.<br />
• Glasser, Harold (2008). Hans van Ginkel: On the Vision, History and Status of the Regional<br />
Centres of Expertise in ESD Programme (Interview). Journal of Education for Sustainable<br />
Development, 2(1): 109–117.<br />
• Fadeeva, Zinaida & Mochizuki, Yoko (2010). Roles of Regional Centres of Expertise on<br />
Education for Sustainable Development: Lessons Learnt in the First Half of the UNDESD.<br />
Journal of Education for Sustainable Development, 4(1): 51-59.<br />
査 読 付 き 学 術 誌 掲 載 レポート<br />
• Aipanjiguly, Sampreethi, Mochizuki, Yoko, & Fadeeva, Zinaida (2008). Emerging<br />
Communities of Practice: Regional Centres of Expertise Discuss Themes and Evaluations.<br />
Journal of Education for Sustainable Development, 2(1): 17–20.<br />
• Aipanjiguly, Sampreethi & Mochizuki, Yoko (2009). Third International RCE Conference<br />
Convened in Barcelona. Journal of Education for Sustainable Development, 3(1): 27–31.<br />
• Aipanjiguly, Sampreethi (2009). 4th International RCE Conference: From Mobilisation to<br />
Assessment. Journal of Education for Sustainable Development, 3(2): 147–150.<br />
書 籍<br />
• Fadeeva, Zinaida (2007). From Centre of Excellence to Centre of Expertise: Regional<br />
Centres of Expertise on Education for Sustainable Development. In Arjen E.J. Wals,<br />
ed., Social Learning towards a Sustainable World: Principles, Perspectives, and Praxis,<br />
Wageningen, The Netherlands: Wageningen Academic Publishers: Chapter 13: 245-264.<br />
• Mochizuki, Yoko (2007). Partnerships between Environmentalists and Farmers for<br />
Sustainable Development: A Case of Kabukuri-numa and the Adjacent Rice Fields in<br />
the Town of Tajiri in Northern Japan. In Arjen E.J. Wals, ed., Social Learning towards a<br />
Sustainable World: Principles, Perspectives, and Praxis, Wageningen, The Netherlands:<br />
Wageningen Academic Publishers: Chapter 21: 385-404.<br />
101
ポリシーレポートとワーキングペーパー<br />
• Mochizuki, Yoko (2005). Articulating a Global Vision in Local Terms: A Case Study of a<br />
Regional Centre of Expertise on Education for Sustainable Development (RCE) in the<br />
Greater Sendai Area of Japan, <strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong> Working Paper No. 139.<br />
• Mochizuki, Yoko (2006). Initial Lessons Learnt from the <strong>UNU</strong> Initiative Regional Centre of<br />
Expertise on Education for Sustainable Development (RCE), <strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong> Working Paper No. 150.<br />
• <strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong> (2005). Mobilising for Education for Sustainable Development: Towards a Global<br />
Learning Space based on Regional Centres of Expertise. Yokohama: <strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong>.<br />
• <strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong> (2010). Five Years of Regional Centres of Expertise on ESD. Yokohama: <strong>UNU</strong>-<strong>IAS</strong>.<br />
その 他 の 出 版 物<br />
• Aipanjiguly, Sampreethi (2009). Networking for ESD. ESD Currents: Changing Perspectives<br />
from the Asia-Pacific, Bangkok: UNESCO Bangkok: 10-11.<br />
• Fadeeva, Zinaida (2009). An Academic Network for ESD. ESD Currents: Changing<br />
Perspectives from the Asia-Pacific, Bangkok: UNESCO Bangkok: 13.<br />
• Fadeeva, Zinaida & Mochizuki, Yoko (2008). “Sustainable Production and Consumption.”<br />
In APCEIU, Teacher Training for Learning to Live Together: A Training Manual for EIU and ESD,<br />
pp. 251-266. Seoul, Korea: Asia-Pacific Centre of Education for International Understanding<br />
(APCEIU) (under the auspices of UNESCO.): 251-266.<br />
• Fadeeva, Zinaida & Mochizuki, Yoko (2010). Higher Education for Today and Tomorrow:<br />
<strong>University</strong> Appraisal for Diversity, Innovation and Change towards Sustainable<br />
Development. Sustainability Science,5 (2). DOI 10.1007/s11625-010-0106-0 (Online first)<br />
• Mochizuki, Yoko (2008). “Convergence and Divergence between EIU and ESD: Towards a<br />
Culture of Peace and a Sustainable Future.” In APCEIU, Teacher Training for Learning to Live<br />
Together: A Training Manual for EIU and ESD. Seoul, Korea: Asia-Pacific Centre of Education<br />
for International Understanding (APCEIU) (under the auspices of UNESCO): 49-58.<br />
• Mochizuki, Yoko (2010). Global Circulation and Local Manifestations of Education for<br />
Sustainable Development with a Focus on Japan. International Journal of Environment and<br />
Sustainable Development, 9(1/2/3): 37–57 (Special Issue on Sustainable Development and<br />
Environmental Education).<br />
• Tabucanon, Mario (2008). Asia-Pacific <strong>University</strong> Network Formed to Integrate ESD and SD<br />
into Higher Education. Journal of Education for Sustainable Development, 2(1): 73–75.<br />
• Tabucanon, Mario (2009). Asia-Pacific Higher Education Institutions Form Alliance on<br />
Sustainability in Postgraduate Education and Research. Journal of Education for Sustainable<br />
Development, 3(1): 23–25.<br />
近 刊 予 定<br />
• International Journal of Sustainability in Higher Education,11(4), Special issue on Core<br />
Competencies and Capabilities for Sustainable Development and Education for<br />
Sustainable Development—with a focus on institutions of higher education. Edited by<br />
Zinaida Fadeeva and Yoko Mochizuki (forthcoming/autumn 2010).<br />
• Global Environmental Research, 14(2), Special Issue on Education for Sustainable<br />
Development (ESD): Creating Synergies for Learning for a Sustainable World. Edited by<br />
Frans Lenglet, Zinaida Fadeeva and Yoko Mochizuki (forthcoming/spring 2011).<br />
102
RCE 一 覧 ( 2010 年 4 月 現 在 )<br />
アジア 太 平 洋 地 域 (28)<br />
国 名<br />
RCE 名<br />
RCE 認 定 時 期 *<br />
ネットワーク 連 絡 先 **<br />
カンボジア<br />
プノンペン 広 域 圏<br />
Greater Phnom Penh<br />
2009 年 12 月<br />
王 立 農 業 大 学<br />
Royal <strong>University</strong> of Agriculture (RUA)<br />
中 国<br />
安 吉<br />
Anji<br />
2007 年 1 月<br />
国 連 環 境 計 画 ― 同 済 大 学 持 続 可 能<br />
な 開 発 のための 環 境 研 究 所 (UNEP- 同<br />
济 大 学 环 境 与 可 持 续 发 展 学 院 )<br />
UNEP-Tongji Institute of Environment<br />
for Sustainable Development<br />
北 京<br />
Beijing<br />
2007 年 1 月<br />
北 京 師 範 大 学<br />
Beijing Normal <strong>University</strong><br />
インド<br />
バンガロール<br />
Bangalore<br />
2008 年 11 月<br />
環 境 教 育 センター 南 部 地 域 支 部<br />
CEE Southern Regional Cell<br />
デリー<br />
Delhi<br />
2008 年 11 月<br />
エネルギー・ 資 源 研 究 所<br />
The Energy and Resources Institute<br />
(TERI)<br />
グワハティ<br />
Guwahati<br />
2007 年 1 月<br />
環 境 教 育 センター 北 東 部 地 域 支 部<br />
Centre for Environment Education (CEE)<br />
North Eastern Regional Cell<br />
コダグ<br />
Kodagu<br />
2007 年 5 月<br />
環 境 教 育 センター マディケリ<br />
CEE Madikeri, Kodagu Heritage<br />
Interpretation Center<br />
ラクナウ<br />
Lucknow<br />
ラクナウ<br />
環 境 教 育 センター 北 部 地 域 支 部<br />
CEE Northern Regional Cell<br />
プネー<br />
Pune<br />
2007 年 1 月<br />
環 境 教 育 センター 中 央 地 域 支 部<br />
CEE Central Regional Cell<br />
インドネシア<br />
ボゴール<br />
Bogor<br />
2007 年 1 月<br />
東 南 アジア 文 相 機 構 ・ 熱 帯 生 物 学 セン<br />
ター<br />
SEAMEO BIOTROP (Southeast Asian<br />
Regional Centre for Tropical Biology)<br />
東 カリマンタン<br />
East Kalimantan<br />
2008 年 11 月<br />
ムラワルマン 大 学<br />
Gedung Rektorat Universitas<br />
Mulawarman<br />
ジョグジャカルタ<br />
Yogyakarta<br />
2007 年 8 月<br />
ガジャマダ 大 学<br />
Universitas Gadjah Mada<br />
日 本<br />
中 部<br />
Chubu<br />
2007 年 8 月<br />
中 部 大 学 ( 中 部 ESD 拠 点 事 務 局 )<br />
http://chubu-esd.net/<br />
103<br />
仙 台 広 域 圏<br />
Greater Sendai<br />
2005 年 6 月<br />
宮 城 教 育 大 学 ESD・RCE 運 営 委 員 会<br />
http://rce.miyakyo-u.ac.jp/
兵 庫 ― 神 戸<br />
Hyogo-Kobe<br />
2007 年 8 月<br />
神 戸 大 学<br />
北 九 州<br />
Kitakyushu<br />
2007 年 1 月<br />
北 九 州 市 環 境 局 ( 北 九 州 ESD 協 議 会<br />
事 務 局 )<br />
http://www.k-esd.jp/<br />
岡 山<br />
Okayama<br />
2005 年 6 月<br />
岡 山 市 環 境 保 全 課 ( 岡 山 ESD 推 進 協 議<br />
会 事 務 局 )<br />
横 浜<br />
Yokohama<br />
2006 年 4 月<br />
横 浜 市 環 境 創 造 局 企 画 課 (よこはま<br />
RCEネットワーク 推 進 協 議 会 事 務 局 )<br />
http://www.city.yokohama.jp/me/<br />
kankyou/kyouiku/rce/<br />
キルギス 共 和 国<br />
キルギスタン<br />
Kyrgyzstan<br />
2007 年 5 月<br />
環 境 保 護 ・ 森 林 庁 、ビシュケク 人 文 大 学<br />
State Agency of Environmental<br />
Protection and Forestry; Bishkek<br />
Humanitarian <strong>University</strong><br />
マレーシア<br />
ペナン<br />
Penang<br />
2005 年 6 月<br />
マレーシア 科 学 大 学<br />
Universiti Sains Malaysia<br />
フィリピン<br />
セブ<br />
Cebu<br />
2006 年 4 月<br />
フィリピン 大 学 セブ 校<br />
<strong>University</strong> of the Philippines Visayas –<br />
Cebu College<br />
イロコス<br />
Ilocos<br />
2009 年 9 月<br />
マリアノ・マルコス 州 立 大 学<br />
Mariano Marcos State <strong>University</strong><br />
北 ミンダナオ<br />
Northern Mindanao<br />
2008 年 11 月<br />
ザビエル 大 学<br />
Xavier <strong>University</strong><br />
韓 国<br />
仁 川<br />
Incheon<br />
2007 年 1 月<br />
仁 川 国 際 協 力 交 流 センター、<br />
Agenda21のための 地 方 審 議 会<br />
Incheon Center for International<br />
Cooperation and Exchange (ICICE);<br />
Local Agenda 21 for Incheon<br />
統 営<br />
Tongyeong<br />
2005 年 11 月<br />
統 営 ESD 財 団<br />
Tongyeong ESD Foundation<br />
タイ<br />
チャアム<br />
Cha-am<br />
2008 年 3 月<br />
シリンドーン 国 際 環 境 公 園 (NGO)<br />
The Sirindhorn International<br />
Environmental Park Foundation under<br />
the Patronage of Her Royal Highness<br />
Princess Maha Chakri Sirindhorn (NGO)<br />
トラン<br />
Trang<br />
2007 年 1 月<br />
トラン 市<br />
City of Trang<br />
太 平 洋 諸 島<br />
パシフィック<br />
( 太 平 洋 諸 島 )<br />
Pacific<br />
2005 年 6 月<br />
南 太 平 洋 大 学<br />
<strong>University</strong> of South Pacific<br />
104
ヨーロッパ (22)<br />
国 名<br />
RCE 名<br />
RCE 認 定 時 期 *<br />
ネットワーク 連 絡 先 **<br />
オーストリア<br />
グラーツ=シュタイア<br />
Graz-Styria<br />
2007 年 8 月<br />
グラーツ 大 学<br />
<strong>University</strong> of Graz (Karl-Franzens-<br />
Universität Graz)<br />
オランダ 1<br />
ライン=ムーズ 川 流 域<br />
Rhine-Meuse<br />
2005 年 6 月<br />
RCE ライン=ムーズ(オランダの 法 律 によ<br />
り 財 団 として 登 録 )<br />
RCE Rhine-Meuse<br />
ベルギー 2<br />
南 北 海<br />
Southern North Sea<br />
2007 年 1 月<br />
国 連 大 学 地 域 統 合 比 較 研 究 プログラム<br />
<strong>UNU</strong>-CRIS (<strong>United</strong> <strong>Nations</strong> <strong>University</strong><br />
- Comparative Regional Integration<br />
Studies)<br />
ドイツ<br />
ハンブルク<br />
Hamburg<br />
2008 年 3 月<br />
ハンブルク 応 用 科 学 大 学<br />
Hamburg <strong>University</strong> of Applied Sciences<br />
(chair); Ausbildungszentrum-Bau in<br />
Hamburg, the vocational training centre<br />
for the main crafts (coordination)<br />
ミュンヘン<br />
Munich<br />
2007 年 1 月<br />
ミュンヘン 市<br />
City of Munich<br />
ニュルンベルク<br />
Nuremberg<br />
2008 年 3 月<br />
ニュルンベルク 市 教 育 局<br />
H-46 Future Agency for Schools (under<br />
the school administration of the City of<br />
Nuremberg)<br />
オルデンブルク・ミュン<br />
スターランド<br />
Oldenburger<br />
Münsterland<br />
2009 年 12 月<br />
フェヒタ 大 学<br />
<strong>University</strong> of Vechta<br />
ギリシャ<br />
クレタ<br />
Crete<br />
2009 年 12 月<br />
クレタ 大 学<br />
<strong>University</strong> of Crete<br />
アイルランド<br />
アイルランド<br />
Ireland<br />
2007 年 8 月<br />
リムリック 大 学<br />
Limerick <strong>University</strong><br />
ポルトガル<br />
アソレス<br />
Açores<br />
2009 年 12 月<br />
アソレス 大 学<br />
<strong>University</strong> of the Azores<br />
クレイアス=オエステ<br />
Creias-Oeste<br />
2007 年 8 月<br />
環 境 研 究 情 報 教 育 センター<br />
The Centre of Environmental Studies,<br />
Information and Education (CEIFA<br />
ambiente, Lda)<br />
ポルト 大 都 市 圏<br />
Porto Metropolitan<br />
Area<br />
2009 年 2 月<br />
ポルトガル・カトリック 大 学<br />
Portuguese Catholic <strong>University</strong><br />
105<br />
1 RCEライン=ムーズ 流 域 はもともとベルギー、オランダ、ドイツの 三 カ 国 にまたがる 地 域 であったが、RCE 立 ち 上 げ 後 のRCE<br />
活 動 見 直 しを 経 て、 現 在 はオランダを 中 心 に 活 動 している。<br />
2 RCE 南 北 海 は、ベルギー、オランダ、ドイツ、フランス、イギリスにまたがる 地 域 を 地 理 的 範 囲 としているが、ベルギーを 中 心 に<br />
活 動 している。
ロシア<br />
ニジニ・ノヴゴロド<br />
Nizhny Novgorod<br />
2009 年 12 月<br />
ニジニ・ノヴゴロド 州 立 建 築 土 木 工 学<br />
大 学<br />
Nizhny Novgorod State <strong>University</strong> of<br />
Architecture and Civil Engineering<br />
(NNGASU); Volgo-Vyatsky Public<br />
Administration Academy (VVAGS)<br />
サマラ<br />
Samara<br />
2007 年 8 月<br />
サマラ 建 築 ・ 土 木 工 学 州 立 大 学<br />
Samara State <strong>University</strong> of Architecture<br />
and Civil Engineering (SSUACE)<br />
スペイン<br />
バルセロナ<br />
Barcelona<br />
2005 年 6 月<br />
カタルーニャ 工 科 大 学<br />
Politècnica de Catalunya (UPC)<br />
スウェーデン<br />
スコーネ<br />
Skåne<br />
2007 年 1 月<br />
マルメ 大 学<br />
Malmö <strong>University</strong> (Malmö högskola)<br />
イギリス<br />
イースト・ミッドランズ<br />
East Midlands<br />
2007 年 1 月<br />
運 営 、 高 等 教 育 、 生 涯 教 育 、 学 校 教 育 な<br />
どの 分 科 会 が 活 発 に 活 動 しており、 特 に<br />
事 務 局 は 設 けていない。 運 営 部 会 のチェ<br />
アがRCEコーディネーターを 務 める。<br />
ロンドン<br />
London<br />
2009 年 12 月<br />
ロンドン・サウスバンク 大 学<br />
London South Bank <strong>University</strong><br />
ノースイースト<br />
North East<br />
2007 年 8 月<br />
ニューキャッスル 大 学<br />
Newcastle <strong>University</strong><br />
セバーン 3<br />
Severn<br />
2008 年 3 月<br />
グロスターシャー 大 学<br />
Gloucestershire <strong>University</strong><br />
ウェールズ<br />
Wales<br />
2009 年 12 月<br />
スウォンジー 大 学<br />
Swansea <strong>University</strong><br />
ヨークシャーおよび<br />
ハンバーサイド<br />
Yorkshire &<br />
Humberside<br />
2008 年 11 月<br />
ブラッドフォード 大 学<br />
Bradford <strong>University</strong><br />
中 東 およびアフリカ (13)<br />
エジプト<br />
カイロ<br />
Cairo<br />
2008 年 11 月<br />
セケム 開 発 財 団<br />
Sekem Development Foundation<br />
ガーナ<br />
ガーナ<br />
Ghana<br />
2005 年 6 月<br />
クマシ 科 学 技 術 大 学<br />
Kwame Nkrumah <strong>University</strong> Of Science<br />
and Technology (KNUST)<br />
ヨルダン<br />
ヨルダン<br />
Jordan<br />
2005 年 11 月<br />
事 務 局 移 行 中 ( 事 務 局 を 務 めていた 国 連<br />
大 学 国 際 リーダーシップ 研 究 所 閉 鎖 の<br />
ため)<br />
3 RCEセバーンは、RCEウェスト・ミッドランズ(RCE West Midlands)として 認 定 されたが、2008 年 9 月 にRCEセバーンへ<br />
と 正 式 に 名 称 変 更 をした。<br />
106
国 名<br />
RCE 名<br />
RCE 認 定 時 期 *<br />
ネットワーク 連 絡 先 **<br />
ケニヤ<br />
ナイロビ 広 域 圏<br />
Greater Nairobi<br />
2007 年 6 月<br />
ケニア 国 家 環 境 管 理 局<br />
National Environment Management<br />
Authority (NEMA)<br />
カカメガ= 西 ケニヤ<br />
Kakamega-Western<br />
Kenya<br />
2009 年 9 月<br />
ケニア 国 家 環 境 管 理 局 カカメガ 事<br />
務 所<br />
Kakamega Office, National<br />
Environment Management Authority<br />
(NEMA); iEARN Kenya-International<br />
Education and Resource Network<br />
マラウィ<br />
ゾンバ<br />
Zomba<br />
2008 年 3 月<br />
マラウィ 大 学<br />
<strong>University</strong> of Malawi<br />
モザンビーク<br />
マプト<br />
Maputo<br />
2008 年 3 月<br />
エドゥアルド・モンドラーネ 大 学<br />
Universidade Eduardo Mondlane<br />
ナイジェリア<br />
カノ<br />
Kano<br />
ラゴス<br />
Lagos<br />
2007 年 11 月<br />
2007 年 11 月<br />
バエロ 大 学<br />
Byero <strong>University</strong>; ECOSEC Services &<br />
Investment Ltd.<br />
ホレブ 教 育 コンサルティング<br />
Horeb Educational Consulting<br />
南 アフリカ<br />
クワズールー・ナタール<br />
KwaZulu Natal<br />
2007 年 1 月<br />
南 アフリカ 野 生 生 物 ・ 環 境 協 会<br />
Wildlife and Environment Society of<br />
South Africa (WESSA)<br />
マカナおよび 東 ケープ<br />
郊 外<br />
Makana & Rural<br />
Eastern Cape<br />
2007 年 1 月<br />
ローズ 大 学<br />
Rhodes <strong>University</strong><br />
スワジランド<br />
スワジランド<br />
Swaziland<br />
2008 年 3 月<br />
スワジランド 大 学<br />
<strong>University</strong> of Swaziland<br />
ウガンダ<br />
ムバララ 広 域 圏<br />
Greater Mbarara<br />
2008 年 3 月<br />
ムバララ 科 学 技 術 大 学<br />
Mbarara <strong>University</strong> of Science and<br />
Technology<br />
アメリカ (12)<br />
アルゼンチン<br />
チャコ<br />
Chaco<br />
2010 年 3 月<br />
国 立 北 東 大 学 環 境 管 理 ・ 生 態 センター<br />
Center of Environmental Management<br />
and Ecology (CEGAE) National<br />
<strong>University</strong> of Northeast<br />
ブラジル<br />
クリチバ=パラナ<br />
Curitiba-Paraná<br />
2007 年 1 月<br />
パラナ 連 邦 大 学<br />
Federal <strong>University</strong> of Parana (UFPR)<br />
107
カナダ<br />
ブリティッシュ・コロンビ<br />
ア(ノースカスケード)<br />
British Columbia<br />
(North Cascades)<br />
モントリオール<br />
Montreal<br />
2009 年 12 月<br />
2007 年 8 月<br />
サイモン・フレーザー 大 学<br />
Science and Environmental Education,<br />
Faculty of Education, Simon Fraser<br />
<strong>University</strong><br />
バイオスフィア( 体 験 型 環 境 学 習 施 設 )<br />
Biosphère; ICI Environment<br />
サスカチュワン<br />
Saskatchewan<br />
2007 年 1 月<br />
レジャイナ 大 学 ルーサー・カレッジおよ<br />
びサスカチュワン 応 用 科 学 技 術 研 究 所<br />
Luther College, <strong>University</strong> of Regina;<br />
Saskatchewan Institute of Applied<br />
Science and Technology (S<strong>IAS</strong>T)<br />
サドベリー 広 域 圏<br />
Greater Sudbury<br />
2007 年 1 月<br />
グレーター・サドベリー 市<br />
City of Greater Sudbury<br />
トロント<br />
Toronto<br />
2005 年 6 月<br />
事 務 局 移 行 中<br />
コロンビア<br />
ボゴタ<br />
Bogotá<br />
2009 年 9 月<br />
コロンビア 国 立 大 学 、 国 立 教 育 大 学<br />
Institute for Environmental Studies<br />
(IDEA)- National <strong>University</strong> of Colombia;<br />
National Pedagogical <strong>University</strong><br />
グアテマラ<br />
グアテマラ<br />
Guatemala<br />
2009 年 9 月<br />
サン・カルロス 大 学<br />
Institute of Interethnic Studies, San<br />
Carlos <strong>University</strong><br />
メキシコ<br />
西 ハリスコ<br />
Western Jalisco<br />
2007 年 8 月<br />
グアダラハラ 大 学<br />
<strong>University</strong> Center of the South<br />
Costa, <strong>University</strong> of Guadalajara<br />
(Centro Universitario de la Costa Sur,<br />
Universidad de Guadalajara)<br />
アメリカ 合 衆 国<br />
グランド・ラピッズ<br />
Grand Rapids<br />
2007 年 1 月<br />
グアダラハラ 大 学<br />
Grand Valley State <strong>University</strong><br />
北 テキサス<br />
North Texas<br />
2007 年 8 月<br />
事 務 局 移 行 中<br />
このRCE 一 覧 表 において、 基 本 的 には、 各 RCEは 大 陸 ごとに 英 語 の 国 名 のアルファベット 順 、さらに<br />
は 国 ごとにRCE 名 の 英 語 表 記 のアルファベット 順 にリストされています。<br />
*この 一 覧 表 におけるRCE 認 定 時 期 は、 国 連 大 学 学 長 が 各 RCEに 認 定 を 伝 える 手 紙 に 署 名 した 日 付<br />
に 基 づいています。RCEは、 地 域 の 大 規 模 な 会 合 や 一 般 聴 衆 を 集 めての 式 典 などで 正 式 に 立 ち 上 げら<br />
れる 場 合 があるため、 認 定 時 期 は、 各 RCEの 認 定 証 に 記 されている 日 付 と 必 ずしも 一 致 しないことをご<br />
了 承 ください。<br />
** 各 RCEとコンタクトを 希 望 する 場 合 はグローバルRCEサービスセンター<br />
(rceservicecentre@ias.unu.edu)までお 問 い 合 わせください。( 日 本 語 対 応 可 )<br />
108
参 考 資 料<br />
ウブントゥ 宣 言<br />
ウブントゥ 宣 言 は、2002 年 の 国 連 ヨハネスブルグ・サミット( 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する 世 界 首 脳 会 議 :WSSD)において 署<br />
名 されました。ウブントゥ 宣 言 に 署 名 した 機 関 は、のちにウブントゥ 同 盟 と 呼 ばれるようになり、2006 年 にはウブントゥRCE<br />
審 査 委 員 会 を 設 立 しました。2006 年 には、 国 際 自 然 保 護 連 合 (IUCN)と 国 際 連 合 環 境 計 画 (UNEP)が、2009 年 にはア<br />
フリカ 大 学 協 会 (AAU)がウブントゥ 同 盟 に 加 わりました。<br />
ウブントゥ 宣 言 は、 国 連 大 学 高 等 研 究 所 のESDプログラムのストラテジーとRCEコンセプトの 基 礎 をなしています。<br />
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 と 科 学 ・ 技 術 に 関 する<br />
ウブントゥ 宣 言<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 統 合 的 な 解 決 を 機 能 させるため、また、 教 育 セクターが 持 続 可 能 な 開 発 に 貢 献 するように 動 員<br />
させるために、<br />
我 々 世 界 の 教 育 ・ 科 学 関 連 機 関 、<br />
国 際 連 合 大 学 (<strong>UNU</strong>)<br />
国 際 連 合 教 育 科 学 文 化 機 関 (UENSCO)<br />
アフリカ 科 学 アカデミー(AAS)<br />
国 際 科 学 会 議 (ICSU)<br />
国 際 大 学 協 会 (IAU)<br />
コペルニクス・キャンパス(Copernicus-Campus)<br />
持 続 可 能 性 パートナーシップのための 世 界 高 等 教 育 (GHESP)<br />
アジア 学 術 会 議 (SCA)<br />
第 三 世 界 科 学 アカデミー (TWAS)<br />
持 続 可 能 な 未 来 のための 大 学 リーダー (ULSF)<br />
世 界 工 学 機 関 連 盟 (WFEO)<br />
は、 持 続 可 能 な 開 発 のための 科 学 ・ 技 術 教 育 を 強 化 するイニシアティブを 求 める。<br />
持 続 可 能 な 開 発 のための 統 合 された 解 決 は、 科 学 と 技 術 の 持 続 的 で 効 果 的 な 応 用 に 依 存 すること、また、 教 育<br />
は、 持 続 可 能 な 開 発 の 挑 戦 に 対 するアプローチを 活 気 付 ける 上 で 重 要 であることを 認 識 し、<br />
地 球 憲 章 が、21 世 紀 において 公 正 かつ 持 続 可 能 で 平 和 的 なグローバル 社 会 を 築 くための 勇 気 付 けられる 根 本<br />
的 でバランスの 取 れた 原 則 及 び 指 針 であり、 教 育 の 全 ての 段 階 と 全 てのセクターに 浸 透 すべきであることを 認 め、<br />
科 学 とは、 全 ての 科 学 ― 自 然 科 学 、 社 会 科 学 、 人 文 科 学 であるということを 踏 まえ、<br />
世 界 中 の 国 々の 知 識 格 差 を 緩 和 する 必 要 性 を 認 識 し、 持 続 可 能 性 のための 教 育 の 配 分 に 根 本 的 な 均 衡 を 取 り<br />
戻 す 必 要 性 があることを 認 識 し、<br />
全 ての 形 態 の 教 育 の 最 終 的 な 目 標 というのは、 人 々が 変 化 をもたらすことができるように 知 識 ・ 技 能 ・ 価 値 基 準<br />
を 与 えることであることを 認 め、<br />
教 育 が、 持 続 可 能 な 開 発 を 達 成 するための 手 段 として 活 用 されていないことを 懸 念 し、<br />
持 続 可 能 な 開 発 を 達 成 するために 教 育 が 果 たす 必 要 不 可 欠 な 役 割 と、アジェンダ21の 第 36 章 に 述 べられてい<br />
る 持 続 可 能 性 のために 科 学 と 技 術 を 動 員 する 上 での 教 育 の 重 要 な 役 割 を 再 確 認 し、<br />
2001 年 10 月 10 日 の 持 続 可 能 な 開 発 のための 高 等 教 育 に 関 するリュ-ネブルク 宣 言 、そしてその 宣 言 が 持 続 可<br />
能 な 開 発 の 決 定 的 な 挑 戦 に 対 処 するに 当 たり、 全 ての 教 育 に 情 報 を 与 え、サポートしている 高 等 教 育 の 必 要 不<br />
可 欠 な 役 割 を 強 調 してしていることを 想 起 し、 国 際 科 学 会 議 、 第 三 世 界 科 学 アカデミー、 世 界 工 学 機 関 連 盟 に<br />
代 表 される 科 学 ・ 技 術 のコミュニティーが、WSSDのプロセスにおいて 持 続 可 能 な 開 発 のための 科 学 ・ 技 術 と 社<br />
会 との 間 の 新 しい 社 会 的 な 契 約 を 要 求 したことを 認 識 し、<br />
ミレニアム 宣 言 、モンテレイ 合 意 、ドーハ 開 発 宣 言 に 含 まれた 目 標 に 向 かって 努 力 することを 決 意 する。<br />
109
WSSDの 参 加 各 国 政 府 に 対 して、また、サミット 後 のアジェンダに 対 して、 次 のことを 求 める。<br />
WSSDのプロセスにおいて、 教 育 者 を 第 10 番 目 の 利 害 関 係 グループとして 指 定 すること。<br />
教 育 者 、 政 府 及 び 全 ての 関 連 する 利 害 関 係 者 に、 以 下 のことを 求 める。<br />
次 の 点 に 焦 点 を 当 て、 持 続 可 能 な 開 発 の 挑 戦 と 機 会 により 良 く 対 処 するために、 学 校 や 大 学 のプログラムや<br />
カリキュラムを 見 直 すこと。<br />
• 地 元 ・ 地 域 ・ 国 レベルで 計 画 を 立 てる。<br />
• 技 能 、 知 識 、 考 察 、 倫 理 、 価 値 基 準 を 一 緒 にバランス 良 く 備 えた 学 習 モジュールを 作 る。<br />
• 教 育 サイクルの 早 期 段 階 において 問 題 解 決 の 統 合 的 で 非 手 段 的 なアプローチ<br />
• 教 育 学 的 アプローチとして 及 び 科 学 研 究 の 機 能 としての 高 等 教 育 における 問 題 解 決 型 の 科 学 的 研 究 。<br />
初 等 ・ 中 等 ・ 高 等 教 育 を 更 に 強 化 するため、そして、 初 等 教 育 に 全 ての 人 がアクセスできるようにするミレニアム 開 発 目 標<br />
を 達 成 するために、 若 者 が 教 職 に 惹 きつけられるようにする 努 力 を 促 進 する。 先 進 国 において 今 後 直 面 する 主 な 挑 戦 は、<br />
定 年 に 達 したり、 他 の 職 業 に 就 くことによって 生 じる 経 験 豊 富 な 教 員 の 大 きな 流 出 を 埋 合 わせることである。<br />
持 続 可 能 な 開 発 に 関 連 のある 科 学 ・ 技 術 の 知 識 の 主 な 進 歩 について 継 続 的 に 教 員 に 知 らせ、プログラムを 更 新 するメカ<br />
ニズムを 開 発 する。<br />
知 識 の 格 差 及 び 不 平 等 を 緩 和 するプロセスを 加 速 するために、 革 新 的 な 手 法 での 知 識 の 移 転 を 促 進 する。これは、 教<br />
員 、 学 校 、 研 究 ・ 教 育 機 関 及 び 政 府 が、 共 に 負 う 責 任 である。<br />
これらの 挑 戦 と 目 的 を 達 成 するために、 我 々は、 世 界 中 の 全 ての 段 階 、 全 てのセクターの 教 育 機 関 の 間 の 協 力 と 交 流 を<br />
促 進 するための、 教 育 と 持 続 可 能 性 に 関 する 新 しいグローバルな 学 習 空 間 のために 努 力 することを 決 意 している。この 空<br />
間 は、 大 学 、 専 門 学 校 、 中 等 教 育 機 関 、 初 等 教 育 機 関 を 糾 合 した 機 関 の 国 際 的 ネットワークと 地 域 のセンター・オブ・エ<br />
クセレンスの 設 立 に 基 いて 開 発 されなければならない。 我 々は、 他 の 責 任 を 持 って 協 力 できる 利 害 関 係 者 全 てが、この 試<br />
みに 参 加 することを 歓 迎 する。<br />
出 典 :http://www.unu.edu/hq/japanese/news/news2002/prej37-02.html<br />
110
ボン 宣 言<br />
ボン 宣 言 の15-n)は、「 知 を 構 築 ・ 共 有 し、ESDのための 資 源 を 作 り 出 せる 研 究 や 革 新 の 拠 点 (centre of expertise and<br />
innovation)」を 支 援 すると 述 べ、RCEの 重 要 性 を 認 識 しています。<br />
下 記 は、 立 教 大 学 ESD 研 究 センターおよびNPO 法 人 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 推 進 会 議 (ESD-J)が 共 同 で<br />
翻 訳 したものを 一 部 修 正 の 上 掲 載 しています。<br />
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------<br />
ボン 宣 言<br />
我 々、2009 年 3 月 31 日 から4 月 2 日 にドイツのボン 市 で 開 催 された「ユネスコESD 世 界 会 議 」に 集 った 参 加 者 は、 以 下 の 声<br />
明 文 および 行 動 への 呼 びかけを 発 表 する。<br />
1. 20 世 紀 、かつてない 経 済 成 長 が 成 し 遂 げられたにも 関 わらず、いまもなお 非 常 に 多 くの 人 びと、とりわけ 最 も 弱 い 立<br />
場 の 人 びとが、 根 強 い 貧 困 や 不 平 等 の 影 響 を 受 けている。 絶 え 間 なく 紛 争 は 続 き、 平 和 の 文 化 を 構 築 する 必 要 性<br />
が 叫 ばれている。 世 界 金 融 ・ 経 済 危 機 によって、 短 期 的 利 益 に 基 づく 持 続 不 可 能 な 経 済 開 発 モデルや 実 践 にはリ<br />
スクがあることが 明 らかになった。 食 糧 危 機 および 世 界 の 飢 餓 は、ますます 深 刻 な 問 題 となっている。 持 続 不 可 能 な<br />
生 産 ・ 消 費 パターンは 生 態 系 に 影 響 を 及 ぼし 続 け、 気 候 変 動 の 例 に 見 られる 通 り、 現 世 代 と 未 来 の 世 代 の 選 択 肢<br />
や、 地 球 上 の 生 命 の 持 続 可 能 性 を 危 ういものにしている。<br />
2. 21 世 紀 初 頭 のこの10 年 間 、 世 界 は 大 規 模 で 複 雑 に 関 連 しあった 開 発 と、ライフスタイルにかかわる 課 題 や 問 題 に<br />
直 面 している。これらの 課 題 は、 持 続 不 可 能 な 社 会 を 生 み 出 した 価 値 観 に 由 来 するものであり、 相 互 に 関 連 し 合 っ<br />
ている。ゆえに、これらの 課 題 への 解 決 には、よりいっそうの 力 強 い 政 治 的 コミットメント、 確 固 たる 行 動 が 求 められ<br />
る。そして、 我 々は、この 状 況 を 覆 せるだけの 知 見 、 技 術 、 技 能 を 持 ちえている。いまこそ 我 々は、よりよい 行 動 と 変 革<br />
に 向 けてあらゆる 好 機 を 活 用 すべく、 自 らの 潜 在 力 を 結 集 するべきである。<br />
3. 持 続 不 可 能 な 開 発 、 優 先 事 項 、 責 任 、 能 力 による 影 響 は、 地 域 (リージョン) 間 や、 発 展 途 上 国 と 先 進 国 の 間 ででも<br />
異 なる。すべての 国 ぐには 協 力 しあい、 現 在 と 未 来 における 持 続 可 能 な 開 発 を 確 固 たるものにしていかなければなら<br />
ない。 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 (ESD)への 投 資 は、 未 来 への 投 資 であり、とりわけ 紛 争 終 結 地 域 や 後 発 発 展<br />
途 上 国 においては、 命 を 救 う 対 策 となりうる。<br />
4. ジョムティエン、ダカール、およびヨハネスブルクでの 約 束 に 基 づいて、 我 々は、 人 びとに 変 革 のための 力 づけをする<br />
ための 教 育 に、 共 に 取 り 組 む 必 要 がある。そしてこのような 教 育 は、 持 続 可 能 な 生 活 や、 社 会 、 適 正 な 職 業 への 参 画<br />
のための 価 値 観 、 知 見 、 技 能 、および 能 力 を 育 む「 質 ある 教 育 」でなければならない。 万 人 のための 教 育 (EFA)の 重<br />
点 項 目 では、 基 礎 教 育 を 受 けられるようになることが、 持 続 可 能 な 開 発 において 極 めて 重 要 であると 強 調 されてい<br />
る。また、 就 学 前 の 学 習 、 農 村 地 域 の 人 びとのための 教 育 、および 成 人 識 字 教 育 も、 同 様 に 強 調 されている。 識 字 お<br />
よび 計 算 能 力 における 目 標 達 成 は、 教 育 の 質 に 貢 献 するものであり、ESDの 成 功 においても 極 めて 重 要 である。<br />
5. 教 育 や 生 涯 学 習 を 通 して、 我 々は、 経 済 や 社 会 的 公 正 に 基 づいた 生 活 様 式 や、 食 糧 安 全 保 障 、 生 態 系 の 健 全 性 、<br />
持 続 可 能 な 生 活 、あらゆる 生 命 に 対 する 尊 重 、そして 社 会 的 連 帯 感 や 民 主 主 義 、 集 団 による 行 動 を 育 む 力 強 い 価<br />
値 観 を 獲 得 することができる。ジェンダーの 公 正 、 特 に 女 性 や 女 児 の 教 育 への 参 画 は、 開 発 と 持 続 可 能 性 を 実 現 す<br />
る 上 で 極 めて 重 要 である。 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 は、 若 者 の 持 続 可 能 な 生 活 の 機 会 や 願 い、 未 来 を 確 たる<br />
ものにしていく 上 で、 今 まさに 必 要 とされている。<br />
21 世 紀 における 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育<br />
6. 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 は、あらゆる 人 びとにかかわる 教 育 および 学 習 に、 新 しい 方 向 性 を 提 示 してい<br />
る。ESDは、 質 ある 教 育 を 促 進 するものであり、あらゆる 人 びとを 包 括 するものである。また、 現 在 と 未 来 の 課 題 に 効<br />
果 的 に 対 応 するために 必 要 な 価 値 観 、 理 念 、および 実 践 に 基 づくものである。<br />
7. とりわけ、 水 、エネルギー、 気 候 変 動 、 災 害 とリスク 軽 減 、 生 物 多 様 性 の 喪 失 、 食 糧 危 機 、 健 康 危 機 、 社 会 的 脆 弱 性 ・<br />
不 安 定 といった 異 なる 優 先 事 項 や 問 題 に、 社 会 が 取 り 組 んで 行 く 上 で 手 助 けとなるのがESDである。また、 新 たな<br />
経 済 学 的 思 考 を 構 築 する 上 で、ESDは 極 めて 重 要 である。 体 系 的 ・ 統 合 的 アプローチを 通 して、ESDは、 弾 力 性 に<br />
富 み、 健 全 で 持 続 可 能 な 社 会 の 構 築 に 貢 献 する。ESDは、 教 育 および 訓 練 の 仕 組 みに、 新 たな 妥 当 性 、 質 、 意 義 、そ<br />
して 目 的 をもたらす。ESDは、フォーマル 教 育 、ノンフォーマル、インフォーマル 教 育 の 文 脈 や、 生 涯 学 習 のプロセスに<br />
ある 社 会 のあらゆるセクターを 含 有 する。<br />
8. ESD は 正 義 、 公 正 、 寛 容 、 充 足 性 、 責 任 という 価 値 観 に 基 づいている。「 地 球 憲 章 」に 明 示 されているように、ESDで<br />
は、ジェンダーの 公 正 、 社 会 の 連 帯 感 、および 貧 困 削 減 の 推 進 、 配 慮 、 高 潔 さ、 誠 実 さが 重 要 視 されている。ESDは、<br />
持 続 可 能 なくらし、 民 主 主 義 、 人 間 の 幸 福 を 支 える 理 念 によって 裏 打 ちされている。 環 境 保 護 と 修 復 、 天 然 資 源 の<br />
保 全 とその 持 続 可 能 な 利 活 用 、 持 続 不 可 能 な 生 産 および 消 費 パターンに 対 する 取 り 組 むことや、 公 正 で 平 和 な 社<br />
会 づくりも、ESDを 裏 打 ちする 重 要 な 理 念 である。<br />
111
9. ESDでは、 不 確 実 性 への 対 処 や 複 雑 な 課 題 の 解 決 へとつながる、 創 造 的 で 批 判 的 なアプローチ、 長 期 的 思 考 、 革<br />
新 性 やエンパワーメントを 重 要 視 している。ESDは、 地 域 レベルからグローバルレベルにいたるまでの 環 境 、 経 済 、<br />
社 会 、 文 化 的 多 様 性 の 相 互 依 存 関 係 を 強 調 し、 過 去 、 現 在 、そして 未 来 といった 点 も 考 慮 している。<br />
10. 人 びとの 多 様 なニーズや 現 実 の 生 活 環 境 と 関 連 づけながら、ESDは、 新 しいアイデアや 技 術 と 同 様 に、 地 域 の 文<br />
化 に 組 み 込 まれている 実 践 や 知 識 に 解 決 策 を 見 出 し、 活 用 する 技 能 を 提 供 する。<br />
国 連 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 における 進 捗<br />
11. 国 連 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 の 前 半 5 年 間 、ユネスコ 主 導 、 協 力 のもと、 多 くの 国 々においてESD<br />
実 施 の 進 捗 がみられ、 革 新 的 な 政 策 の 枠 組 みが 策 定 された。 数 多 くの 国 連 機 関 、NGO、 地 域 組 織 、および 連 携 ネ<br />
ットワークが、ESD 特 有 の 分 野 を 支 援 する 具 体 的 な 活 動 に 従 事 している。 多 くの 人 びとや 組 織 が、 行 動 に 向 けて<br />
最 大 限 の 努 力 を 投 じ、 取 り 組 んでいる。よりよい 理 解 、 促 進 、 実 施 、そしてESDの 質 の 評 価 にむけた 取 組 がなされて<br />
いる。 国 際 的 なモニタリングおよび 評 価 の 枠 組 みが 策 定 されている。 国 際 レベルでの 取 り 組 みは、 地 域 (リージョナ<br />
ル)レベルでの 戦 略 や 計 画 によって 補 完 されている。<br />
12. 我 々は、 人 間 の 幸 福 を 高 める 上 で、 教 育 は 重 要 な 要 素 であると 認 識 している。 今 日 我 々は、 教 育 の 内 容 、 手 法 、およ<br />
び 目 的 を 大 きく 改 善 させることのできる 知 見 と 経 験 を 持 ち 合 わせている。 我 々は、 生 涯 学 習 をさらに 重 要 視 するた<br />
めに、どのように 教 育 システムを 再 構 築 し 始 めればいいのかということをわかっている。ESDを 通 し、 我 々は、フォー<br />
マル 教 育 、ノンフォーマル、インフォーマル 教 育 間 のつながりをどう 改 善 すればよいかということを 学 びつつある。<br />
我 々は、 教 育 的 変 革 のプロセスに 関 する 知 見 を 高 め、 共 有 することが 重 要 であると 理 解 している。<br />
13. 科 学 は、 我 々に 気 候 変 動 や 地 球 の 生 命 維 持 システムに 関 するよりよい 知 見 を 与 えてくれた。 科 学 によってHIVや<br />
AIDS、マラリア、 結 核 、 心 臓 疾 患 、またその 他 の 深 刻 な 健 康 上 の 問 題 に 関 する 多 大 なる 知 識 が 収 集 されてきた。 我<br />
々は、 自 然 のシステムやそこに 人 間 が 与 える 影 響 、そして 生 物 多 様 性 が 我 々の 幸 福 や 健 康 をいかに 支 えているのか<br />
ということについて、より 多 くのことを 理 解 している。 我 々は、 現 在 の 経 済 的 思 考 を 変 え、 持 続 不 可 能 な 生 産 や 消 費<br />
を 回 避 し、「 持 続 可 能 に 開 発 された」 国 の 出 現 を 促 進 ・ 支 援 する 必 要 があると 理 解 している。 社 会 科 学 は、 人 類 の<br />
発 展 における 倫 理 的 、 文 化 的 、 認 知 的 、 情 緒 的 側 面 、および 変 革 のための 社 会 学 に 対 し 洞 察 を 提 供 している。<br />
14. 今 こそ 我 々は、このような 知 見 を 行 動 に 移 さなければならない。とりわけ、UNDESDの 後 半 5 年 間 における 成 果 をさら<br />
に 高 め、 広 げるためだけでなく、より 長 期 にわたってESDが 確 実 に 実 施 されていくために、 行 動 に 移 すことが 重 要 だ。<br />
行 動 への 呼 びかけ<br />
15. ESDの 進 捗 は 未 だ 偏 在 しており、さまざまな 状 況 下 で、さまざまなアプローチが 求 められている。これからの 数 年<br />
間 、 先 進 国 および 発 展 途 上 国 の 双 方 や、 市 民 社 会 、 国 際 組 織 において、 次 のような 有 意 な 取 り 組 みが 必 要 とされて<br />
いることは 明 白 である。<br />
加 盟 国 における 政 治 レベルにおいて:<br />
a) あらゆる 教 育 そして 質 ある 教 育 の 実 現 に 向 けてESDが 貢 献 するよう 促 進 する。 特 に、 一 貫 した 体 系 的 なアプローチ<br />
の 中 で、ESDとEFAとの 間 のつながりを 発 展 させることに 注 力 する。 国 際 フォーラムの 場 や 国 家 レベルにおいて、ESD<br />
課 題 の 目 標 を 発 展 させる。<br />
b) 持 続 可 能 な 開 発 およびESDに 関 する 社 会 の 意 識 と 理 解 を 高 める。 具 体 的 には、UNDESDの 前 半 5 年 間 で 得 られた<br />
学 びや 洞 察 を、 社 会 の 意 識 向 上 のための 政 策 やプログラム、 様 々なインフォーマル 学 習 へと 主 流 化 させ、 展 開 する。こ<br />
こには、 持 続 可 能 性 の 問 題 に 対 する 社 会 の 意 識 や 理 解 を 育 成 するメディアの 役 割 と 貢 献 を 促 進 していくということも<br />
含 まれる。また、メディアの 専 門 家 の 能 力 育 成 も 含 まれなければならない。<br />
c) ESDを 支 援 する 適 正 な 資 源 および 資 金 を 結 集 する。 具 体 的 には、これらを、EFAや「ミレニアム 開 発 目 標 」の 取 り 組 み<br />
へと 統 合 していくのと 同 時 に、ESDを 国 家 開 発 政 策 や 予 算 枠 組 みに、 国 連 共 通 国 家 計 画 策 定 のプロセスに、その 他<br />
国 レベルでの 政 策 枠 組 み(セクター 横 断 的 アプローチなど)に 統 合 していく。また、 財 団 や 資 金 提 供 側 の 優 先 事 項 に<br />
おいても、ESDが 促 進 ・ 網 羅 されるようにする。<br />
d) 教 育 および 訓 練 システムを 再 構 築 し、 国 家 および 地 域 レベルでの 一 貫 した 政 策 を 通 して、 持 続 可 能 性 に 関 する 事 項<br />
に 対 処 する。ビジネス、 企 業 セクター、 市 民 社 会 、 地 域 社 会 、そして 科 学 分 野 も 巻 き 込 んだ、セクター 間 / 省 庁 間 の 連<br />
携 アプローチを 通 してESD 政 策 を 確 立 し、 実 施 する。<br />
e) 国 際 ・ 地 域 (リージョン)・ 国 家 レベルで、 既 存 の 文 化 的 多 様 性 を 尊 重 したESD 実 施 のための 仕 組 みや 協 力 体 制 を<br />
発 展 ・ 強 化 させる。ESDの 実 践 を 担 う 地 域 (リージョン)、 国 家 レベルの 委 員 会 、ネットワーク、および 共 同 体 を 確 立 し、<br />
地 域 (ローカル)と 国 家 間 、 国 家 と 世 界 間 のつながりを 強 化 し、 南 北 、 南 南 協 力 体 制 を 推 進 する。<br />
112
実 践 レベルにおいて:<br />
f) フォーマル 教 育 やあらゆるレベルにおけるノンフォーマル、インフォーマル 教 育 において、 統 合 的 かつ 体 系 的 アプロー<br />
チを 駆 使 し、 持 続 可 能 な 開 発 の 課 題 を 組 み 込 んでいくことを 支 援 する。とりわけ、ノンフォーマル 教 育 、インフォーマル<br />
学 習 、 職 業 学 習 、 職 場 学 習 が 果 たす 多 大 な 貢 献 を 評 価 し、 効 果 的 な 教 育 学 的 アプローチ、 教 員 教 育 、 教 育 実 践 、カリ<br />
キュラム、 学 習 教 材 および 教 育 指 導 者 育 成 に、 持 続 可 能 な 開 発 課 題 を 統 合 していく 支 援 を 行 う。 持 続 可 能 な 開 発 と<br />
は、あらゆる 分 野 、セクターに 関 連 する 分 野 横 断 的 テーマである。<br />
g) ESDが 教 員 養 成 および 現 職 研 修 に 統 合 されるよう、カリキュラムおよび 教 員 教 育 プログラムを 再 構 築 する。 教 員 教 育 機<br />
関 、 教 員 、そして 専 門 家 のネットワークを 構 築 ・ 発 展 させ、 適 切 な 教 育 実 践 を 研 究 できるよう 支 援 する。とりわけ 教 員 が、<br />
大 人 数 を 対 象 とした 授 業 でもうまく 機 能 するESD 戦 略 を 策 定 し、ESD 学 習 プロセスの 評 価 ができるよう 支 援 をする。<br />
h) 関 連 研 究 、モニタリング・ 評 価 戦 略 、 優 良 事 例 の 共 有 と 認 知 といった 確 かな 根 拠 に 基 づく、ESDの 政 策 対 話 を 奨 励 する。<br />
効 果 的 な 実 施 を 周 知 し、ESDの 成 果 およびプロセスを 評 価 するため、 国 家 レベルでのESD 指 標 を 確 立 する。<br />
i) 訓 練 や 職 業 教 育 、 職 場 学 習 にESDが 統 合 されるよう、ESDにおける 連 携 を 発 展 ・ 拡 大 し、そこに 市 民 社 会 、 公 的 セク<br />
ター、 民 間 セクター、NGO、 開 発 パートナーを 巻 き 込 んでく。ESDは、ビジネス 界 、 産 業 界 、 労 働 組 合 、 非 営 利 団 体 、<br />
任 意 団 体 、 公 益 事 業 界 の 指 導 者 育 成 において 不 可 欠 な 要 素 となるべきである。また、 職 業 訓 練 教 育 (TVET)プログ<br />
ラムを 再 構 築 し、ESDが 組 み 込 まれるようにする。<br />
j) ESD 策 定 および 実 施 において 青 少 年 を 巻 き 込 む。ESD の 推 進 に、 青 少 年 、 青 少 年 組 織 やネットワークのもつコミット<br />
メント、 団 結 力 、 潜 在 力 を 活 用 する。ESD に 関 する 疑 問 や 課 題 に 対 する、 青 少 年 の 主 体 者 意 識 を 育 む。<br />
k) 議 論 を 起 こし、 市 民 の 参 画 を 盛 り 上 げ、ESDにおける 行 動 の 先 駆 けとなってきた、 市 民 社 会 の 多 大 なる 貢 献 と 重 要 な<br />
役 割 を 強 化 する。 市 民 社 会 のさらなる 関 与 とコミットメントを 引 き 出 す 方 法 を 探 求 する。<br />
l) ESDに 対 する 伝 統 知 、 先 住 知 、 地 域 知 (ローカル・ナレッジ)の 果 たしてきた 役 目 を 重 んじ、 正 当 な 評 価 を 与 え、ESD 推<br />
進 における 多 様 な 文 化 の 果 たしてきた 役 割 を 重 んじる。<br />
m) ESDは、 積 極 的 にジェンダーの 公 正 を 推 進 するとともに、 女 性 が、 社 会 変 革 や 人 間 の 幸 福 につながるような 知 見 や 経<br />
験 を 共 有 できる 状 況 や 戦 略 を 整 えることにつながるべきである。<br />
n) ESDのネットワークを 通 して 知 を 構 築 する。 知 を 構 築 ・ 共 有 し、ESDのための 資 源 を 作 り 出 せる 研 究 や 革 新 の 拠 点 と<br />
して 貢 献 する 学 校 、 大 学 、その 他 の 高 等 教 育 機 関 や 研 究 機 関 、 教 育 センターおよび 教 育 ネットワークを 特 定 し、 支 援<br />
する。ESDのための 空 間 的 「 研 究 所 」と 定 義 され、そのような 役 割 を 果 たすことのできる 特 定 の 地 域 や、バイオリージョ<br />
ンの 潜 在 力 を 探 求 する。<br />
o) ESDに 高 等 教 育 機 関 や 研 究 ネットワークを 巻 き 込 むことで、ESDの 科 学 的 卓 越 性 、 研 究 および 新 しい 知 の 確 立 を 支<br />
援 ・ 促 進 する。 大 学 の 主 要 機 能 を 結 集 する。 具 体 的 には、 教 えるという 機 能 、また 研 究 や 共 同 体 としての 関 与 という 機<br />
能 を 結 集 し、ESDのグローバルな 知 、ローカルな 知 を 高 めることにつなげる。また、このプロセスにおいては、ユネスコ<br />
ESDチェア、およびユネスコプログラムのネットワークを 活 用 する。 制 度 的 、 組 織 的 体 制 を 確 立 することで、 柔 軟 性 や<br />
学 生 の 参 画 、 分 野 横 断 的 プログラムを 促 進 し、ESDの 複 雑 性 および 緊 急 性 に 対 応 しうるモデルプロジェクトを 展 開 す<br />
る。 高 等 教 育 におけるESDの 取 り 組 み、および 研 究 を 支 援 する 報 奨 制 度 を 作 り、 実 施 する。<br />
p) 国 連 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 の10 年 (UNDESD)や 現 在 進 行 している「 生 命 の 水 」のための 国 連 10 年 アクショ<br />
ンといった、 国 連 の「10 年 」の 期 間 中 に 制 度 的 な 仕 組 みを 確 立 し、これら「10 年 」の 期 間 を 超 えても、ESDが 確 実 に 継<br />
続 されるようにする。<br />
q) 生 物 多 様 性 、 気 候 変 動 、 砂 漠 化 、 無 形 文 化 財 などに 焦 点 を 絞 った 主 要 な 持 続 可 能 な 開 発 に 関 する 国 連 の 会 合 で<br />
ESDの 視 点 を 強 化 するため、 国 連 システムにある 活 用 可 能 な 専 門 的 視 点 と 連 動 する。<br />
r) UNDESDの 傘 下 や 連 携 の 枠 組 みの 中 に、 特 定 の 行 動 計 画 および/または、プログラムを 策 定 することで、 気 候 変<br />
動 、 水 、フードセキュリティ( 食 糧 安 全 保 障 )といった 持 続 可 能 性 に 関 連 した 極 めて 重 要 かつ 緊 急 の 課 題 に 対 処 でき<br />
るよう、 教 育 、 研 修 システムにおける 取 り 組 みを 強 化 する。<br />
16. 2009 年 ESD 世 界 会 議 の 参 加 者 は、UNDESDを 担 う 主 導 機 関 としてのユネスコに 対 し、 以 下 の 通 り 要 請 する:<br />
a) 国 連 環 境 計 画 、 国 連 大 学 、EFA 支 持 機 関 (ユニセフ、 国 連 開 発 計 画 、 国 連 人 口 基 金 、 世 界 銀 行 )、その 他 機 関 との 連<br />
携 のもと、 国 際 実 施 計 画 に 基 づいて、UNDESDに 対 するユネスコのリーダーシップおよび 調 整 の 役 割 を 強 化 する。そ<br />
して、 特 に「 国 連 開 発 援 助 枠 組 み」プロセスを 通 して、ESDを 国 家 レベルでの「ひとつの 国 連 (One UN)」 戦 略 に 組 み<br />
込 んでいく。<br />
113
) UNDESDの 実 施 において、 加 盟 国 およびその 他 の 連 携 機 関 を 支 援 し、とりわけ、 紛 争 終 結 地 域 や 後 発 発 展 途 上 国<br />
に 対 する 十 分 な 配 慮 をしながら、 立 ち 上 げ 段 階 にある 能 力 育 成 や、 一 貫 した 国 家 戦 略 の 策 定 に 対 する 政 策 的 助 言 、<br />
モニタリングと 評 価 、ESDの 優 良 事 例 の 認 知 と 共 有 、アドボカシーおよびグローバルパートナーシップの 構 築 を 行 う。<br />
c) G8、G20、コペンハーゲン 気 候 変 動 会 議 、EFAハイレベルグループ、 国 連 主 要 執 行 理 事 会 、ユネスコ 世 界 会 議 (また<br />
その 他 の 進 行 中 のイベントや 活 動 )といった 国 際 会 議 および 交 渉 の 場 のような 主 要 な 教 育 および 開 発 フォーラムに<br />
おいて、ESDという 議 題 を 主 張 および/または 推 進 する。<br />
d) ESDの 目 標 の 更 なる 促 進 にむけ、ユネスコ 生 物 圏 保 護 区 、 世 界 遺 産 、「サブ・サハラアフリカ 教 員 教 育 イニシアティブ<br />
(TTISSA)」、ユネスコスクール、「エンパワメントのための 識 字 イニシアティブ(LIFE)」といったその 他 の 科 学 、 文 化 、<br />
教 育 プログラムの 中 にある 既 存 の 専 門 知 識 を 活 用 し、ESDの 主 要 優 先 事 項 がユネスコ 内 での 長 期 プログラムおよび<br />
戦 略 に 確 実 に 統 合 されていくようにする。<br />
e) ESDをその 質 と 根 拠 に 基 づくものにするため、ユネスコのプログラムを 通 し、ESD 関 連 の 研 究 を 推 進 する。ESDの 国<br />
際 的 なモニタリングおよび 評 価 システムをさらに 確 立 し、 目 に 見 える 具 体 的 な 成 果 を 伴 うUNDESDの 成 功 ・ 終 結 に 導<br />
くような 国 際 戦 略 、および 実 践 の 確 立 にむけてイニシアチブを 取 る。<br />
f) 他 の 連 携 機 関 との 協 議 ・ 協 力 のもと、2009 年 12 月 デンマークのコペンハーゲンで 開 催 される 第 15 回 国 連 気 候 変 動<br />
枠 組 み 条 約 締 約 国 会 議 (COP15)において、 教 育 や 訓 練 との 関 連 性 及 び 重 要 性 を 主 張 する。<br />
g) 気 候 変 動 に 関 する 行 動 に 向 けたユネスコ 戦 略 の 文 脈 において、そして 国 連 全 体 としての 行 動 の 一 環 として、DESDの<br />
枠 組 みの 中 で、 気 候 変 動 に 関 する 教 育 を 国 際 的 な 課 題 の 位 置 づけにまで 高 めるよう、 取 り 組 みを 強 化 する。<br />
17. さらに、 本 会 議 の 参 加 者 は、 本 宣 言 の 実 施 にむけた 働 きかけを 進 めて 行 く。<br />
18. 参 加 者 は、 本 宣 言 にて 網 羅 されている 提 言 支 援 のため、 適 切 な 資 金 を 結 集 していくことを 奨 励 する。<br />
19. ESD 世 界 会 議 の 参 加 者 は、 本 会 議 を 主 催 したドイツ 政 府 への 感 謝 の 意 を 表 明 し、ESDの10 年 最 終 年 会 合 をユネ<br />
スコと 共 同 主 催 するという 日 本 政 府 の 意 向 を 歓 迎 する。<br />
翻 訳 : 三 宅 彩 以 、 野 口 扶 弥 子 監 訳 : 阿 部 治<br />
出 典 :http://www.esd-world-conference-2009.org/fileadmin/download/ESD2009_BonnDeclarationJapanese.pdf<br />
114
) UNDESDの 実 施 において、 加 盟 国 およびその 他 の 連 携 機 関 を 支 援 し、とりわけ、 紛 争 終 結 地 域 や 後 発 発 展 途 上 国<br />
に 対 する 十 分 な 配 慮 をしながら、 立 ち 上 げ 段 階 にある 能 力 育 成 や、 一 貫 した 国 家 戦 略 の 策 定 に 対 する 政 策 的 助 言 、<br />
モニタリングと 評 価 、ESDの 優 良 事 例 の 認 知 と 共 有 、アドボカシーおよびグローバルパートナーシップの 構 築 を 行 う。<br />
c) G8、G20、コペンハーゲン 気 候 変 動 会 議 、EFAハイレベルグループ、 国 連 主 要 執 行 理 事 会 、ユネスコ 世 界 会 議 (また<br />
その 他 の 進 行 中 のイベントや 活 動 )といった 国 際 会 議 および 交 渉 の 場 のような 主 要 な 教 育 および 開 発 フォーラムに<br />
おいて、ESDという 議 題 を 主 張 および/または 推 進 する。<br />
d) ESDの 目 標 の 更 なる 促 進 にむけ、ユネスコ 生 物 圏 保 護 区 、 世 界 遺 産 、「サブ・サハラアフリカ 教 員 教 育 イニシアティブ<br />
(TTISSA)」、ユネスコスクール、「エンパワメントのための 識 字 イニシアティブ(LIFE)」といったその 他 の 科 学 、 文 化 、<br />
教 育 プログラムの 中 にある 既 存 の 専 門 知 識 を 活 用 し、ESDの 主 要 優 先 事 項 がユネスコ 内 での 長 期 プログラムおよび<br />
戦 略 に 確 実 に 統 合 されていくようにする。<br />
e) ESDをその 質 と 根 拠 に 基 づくものにするため、ユネスコのプログラムを 通 し、ESD 関 連 の 研 究 を 推 進 する。ESDの 国<br />
際 的 なモニタリングおよび 評 価 システムをさらに 確 立 し、 目 に 見 える 具 体 的 な 成 果 を 伴 うUNDESDの 成 功 ・ 終 結 に 導<br />
くような 国 際 戦 略 、および 実 践 の 確 立 にむけてイニシアチブを 取 る。<br />
f) 他 の 連 携 機 関 との 協 議 ・ 協 力 のもと、2009 年 12 月 デンマークのコペンハーゲンで 開 催 される 第 15 回 国 連 気 候 変 動<br />
枠 組 み 条 約 締 約 国 会 議 (COP15)において、 教 育 や 訓 練 との 関 連 性 及 び 重 要 性 を 主 張 する。<br />
g) 気 候 変 動 に 関 する 行 動 に 向 けたユネスコ 戦 略 の 文 脈 において、そして 国 連 全 体 としての 行 動 の 一 環 として、DESDの<br />
枠 組 みの 中 で、 気 候 変 動 に 関 する 教 育 を 国 際 的 な 課 題 の 位 置 づけにまで 高 めるよう、 取 り 組 みを 強 化 する。<br />
17. さらに、 本 会 議 の 参 加 者 は、 本 宣 言 の 実 施 にむけた 働 きかけを 進 めて 行 く。<br />
18. 参 加 者 は、 本 宣 言 にて 網 羅 されている 提 言 支 援 のため、 適 切 な 資 金 を 結 集 していくことを 奨 励 する。<br />
19. ESD 世 界 会 議 の 参 加 者 は、 本 会 議 を 主 催 したドイツ 政 府 への 感 謝 の 意 を 表 明 し、ESDの10 年 最 終 年 会 合 をユネ<br />
スコと 共 同 主 催 するという 日 本 政 府 の 意 向 を 歓 迎 する。<br />
翻 訳 : 三 宅 彩 以 、 野 口 扶 弥 子 監 訳 : 阿 部 治<br />
出 典 :http://www.esd-world-conference-2009.org/fileadmin/download/ESD2009_BonnDeclarationJapanese.pdf<br />
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) UNDESDの 実 施 において、 加 盟 国 およびその 他 の 連 携 機 関 を 支 援 し、とりわけ、 紛 争 終 結 地 域 や 後 発 発 展 途 上 国<br />
に 対 する 十 分 な 配 慮 をしながら、 立 ち 上 げ 段 階 にある 能 力 育 成 や、 一 貫 した 国 家 戦 略 の 策 定 に 対 する 政 策 的 助 言 、<br />
モニタリングと 評 価 、ESDの 優 良 事 例 の 認 知 と 共 有 、アドボカシーおよびグローバルパートナーシップの 構 築 を 行 う。<br />
c) G8、G20、コペンハーゲン 気 候 変 動 会 議 、EFAハイレベルグループ、 国 連 主 要 執 行 理 事 会 、ユネスコ 世 界 会 議 (また<br />
その 他 の 進 行 中 のイベントや 活 動 )といった 国 際 会 議 および 交 渉 の 場 のような 主 要 な 教 育 および 開 発 フォーラムに<br />
おいて、ESDという 議 題 を 主 張 および/または 推 進 する。<br />
d) ESDの 目 標 の 更 なる 促 進 にむけ、ユネスコ 生 物 圏 保 護 区 、 世 界 遺 産 、「サブ・サハラアフリカ 教 員 教 育 イニシアティブ<br />
(TTISSA)」、ユネスコスクール、「エンパワメントのための 識 字 イニシアティブ(LIFE)」といったその 他 の 科 学 、 文 化 、<br />
教 育 プログラムの 中 にある 既 存 の 専 門 知 識 を 活 用 し、ESDの 主 要 優 先 事 項 がユネスコ 内 での 長 期 プログラムおよび<br />
戦 略 に 確 実 に 統 合 されていくようにする。<br />
e) ESDをその 質 と 根 拠 に 基 づくものにするため、ユネスコのプログラムを 通 し、ESD 関 連 の 研 究 を 推 進 する。ESDの 国<br />
際 的 なモニタリングおよび 評 価 システムをさらに 確 立 し、 目 に 見 える 具 体 的 な 成 果 を 伴 うUNDESDの 成 功 ・ 終 結 に 導<br />
くような 国 際 戦 略 、および 実 践 の 確 立 にむけてイニシアチブを 取 る。<br />
f) 他 の 連 携 機 関 との 協 議 ・ 協 力 のもと、2009 年 12 月 デンマークのコペンハーゲンで 開 催 される 第 15 回 国 連 気 候 変 動<br />
枠 組 み 条 約 締 約 国 会 議 (COP15)において、 教 育 や 訓 練 との 関 連 性 及 び 重 要 性 を 主 張 する。<br />
g) 気 候 変 動 に 関 する 行 動 に 向 けたユネスコ 戦 略 の 文 脈 において、そして 国 連 全 体 としての 行 動 の 一 環 として、DESDの<br />
枠 組 みの 中 で、 気 候 変 動 に 関 する 教 育 を 国 際 的 な 課 題 の 位 置 づけにまで 高 めるよう、 取 り 組 みを 強 化 する。<br />
17. さらに、 本 会 議 の 参 加 者 は、 本 宣 言 の 実 施 にむけた 働 きかけを 進 めて 行 く。<br />
18. 参 加 者 は、 本 宣 言 にて 網 羅 されている 提 言 支 援 のため、 適 切 な 資 金 を 結 集 していくことを 奨 励 する。<br />
19. ESD 世 界 会 議 の 参 加 者 は、 本 会 議 を 主 催 したドイツ 政 府 への 感 謝 の 意 を 表 明 し、ESDの10 年 最 終 年 会 合 をユネ<br />
スコと 共 同 主 催 するという 日 本 政 府 の 意 向 を 歓 迎 する。<br />
翻 訳 : 三 宅 彩 以 、 野 口 扶 弥 子 監 訳 : 阿 部 治<br />
出 典 :http://www.esd-world-conference-2009.org/fileadmin/download/ESD2009_BonnDeclarationJapanese.pdf<br />
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