JAEA-Evaluation-2010-005-CD.pdf:6.17MB - 日本原子力研究開発機構

スクロマトグラフ挙動を調べるための、気相化学分離装置の開発を行った。
開発した実験装置を図8に示す。本装置はタンデム加速器のビームラインに直結され、
より短時間で生成物を化学反応室に導くよう設計されており、標的槽、等温ガスクロマト
グラフ分離装置、およびガスジェット槽から構成される。等温ガスクロマトグラフ分離装
置は、さらに化学反応室と等温カラムから成る。標的槽内に設置された標的に、タンデム
加速器からの重イオンビームを照射する。生成した核反応生成物は標的槽内のガス中で停
止し、そのままキャリアガス流に乗って、等温ガスクロマトグラフ分離装置へと搬送され
る。化学反応室は約 600 ℃の高温に保たれており、揮発性化合物生成のための反応ガスが
供給される。ここで核反応生成物は揮発性化合物を形成し、キャリアガス流によって、そ
のまま等温カラムへと運ばれる。等温カラムは一定温度に保たれており、化合物の揮発性
に応じて分離が行われる。反応室、等温カラムおよびガスジェット槽は、石英製で一体と
なっている。キャリアガスには He もしくは Ar を用い、反応ガスとしては、塩化チオニル
(SOCl2)蒸気が飽和した、空気もしくは窒素と空気の混合ガスなどを用いた。等温カラム末
端に到達した揮発性化合物は、ガスジェット法により、約 20 m 離れた化学実験室内の放
射線測定系へと迅速に運ばれる。
重イオンビーム
ターゲット
等温カラム(100 ~ 600 ℃)
キャリアガス
核反応生成物
電気炉1
反応室
(600 ℃)
揮発性化合物
反応ガス
(MOCl (MOCl3) 3)
(ex. 空気/SOCl 空気/SOCl2, 2, 0.2 L/min)
図8.ビームライン直結型気相化学分離装置の概要
これまでに、Ge/Gd( 19 F, xn)核反応で生成する短寿命 88 Nb(半減期 14.5 分)ならびに 170 Ta
(半減期 6.7 分)同位体についてビーム実験を行った。等温カラム温度に対する揮発性化
合物の収量の変化を観測したところ、図9の
ような等温クロマトグラフ曲線が得られた。
酸素を積極的に加えた系では、Ta のオキシ塩
化物について初めて等温ガスクロマトグラフ
挙動の観測に成功した。一方 Nb は、より低温
からなだらかに溶出していることがわかる。
まだ予備的な結果ではあるが、Nb と Ta では
オキシ塩化物の生成条件が異なる可能性を示
唆することができた。今後は、本条件を Db に
適用し、Nb や Ta と比べてどのような挙動を
示すのかを明らかにし、水溶液系の結果と合
わせて Db のハロゲン化物形成を議論してい
く予定である。 図9. 88 Nb ならびに 170 30
10 88
Nb
20
170
Ta
10
0
200 400
0
600
Isothermal temp.°C
Ta の等温ガスクロマト曲線
Counts ( 88 Nb)/pnA
エアロゾル(He/KCl, 2.8 L/min)
電気炉2
ガスジェット槽
測定系へ
Counts ( 170 Ta)/pnA