JAEA-Evaluation-2010-005-CD.pdf:6.17MB - 日本原子力研究開発機構
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分間に 1 原子程度またはそれ以下である。しかも寿命が短く数 10 秒以下で壊変してしま<br />
う。このため化学操作で一度に扱える原子の数は 1 個しかなく、それを素早く分離分析し<br />
て化学的性質を決めなければならない。このような化学をシングルアトム化学<br />
(atom-at-a-time chemistry)という。また、放射性のアクチノイド標的を使用して超重元<br />
素の合成を行う重イオン加速器施設や、シングルアトムを対象とした特殊な化学分析装置<br />
を必要とするため、高度な核・放射化学ならびに原子核物理に関する知識と技術が要求さ<br />
れ、しかも限られた研究施設でしか実験が遂行できない。ここ 20 年ほどで加速器技術の<br />
進歩や化学分析装置を含む測定機器の向上が計られ、超重元素の化学的研究は飛躍的な進<br />
歩を遂げてきた。しかしこの研究自体がまだ黎明期にあるといえる。超重核の研究も、同<br />
じく生成量が少ないため、核分光学的なアプローチによる殻構造の研究はほとんど未開拓<br />
といえる。本テーマは元素の存在限界の探求ならびに周期表の構築という挑戦的な研究課<br />
題である。<br />
5.当初の達成目標<br />
1.104 番元素ラザホージウム(Rf)の水溶液中での錯形成や化学種を明らかにする。<br />
2.新規な迅速イオン交換分離装置を開発し、105 番元素ドブニウム(Db)の水溶液中での<br />
化学挙動を調べる。<br />
3.電気化学的分析手法を開発し、重元素の酸化還元反応をシングルアトムレベルで測定<br />
する。<br />
4.超重原子核のα-γ核分光実験から、102 番元素ノーベリウム(No)や Rf 核の基底状態<br />
や励起状態の量子状態を決定し、殻構造との関連を考察する。<br />
6.研究成果<br />
以下は、原子力科学研究所(原科研)タンデム加速器施設(一部、米国アルゴンヌ国立<br />
研究所の加速器施設)を用いて得られた成果である。<br />
6.1.104 番元素 Rf および 105 番元素 Db の溶液化学<br />
超重元素の化学的研究には、未知の元素の性質を調べるという基本的な課題とともに、<br />
重い元素領域で期待される相対論的効果の寄与を明らかにするという興味深いテーマが<br />
ある。すなわち大きな原子核電荷と電子との強い相互作用を受けて、超重元素は特徴的な<br />
性質を示すことが予想されている。最近では、重原子を含む分子系のさまざまな化学現象<br />
に影響を及ぼしている相対論的効果に注目が集まりつつある。また元素の周期表における<br />
新しい系列、第 7 周期元素の開拓という大きな使命もある。<br />
超重元素を対象にしたシングルアトムの化学実験は,以下のような4つの基本操作で行<br />
う。①重イオン加速器を用いた超重元素の合成、②合成された超重元素の化学分離装置へ<br />
の迅速な輸送、③素早い化学分離操作と放射線測定のための試料調製、および ④目的核<br />
種の壊変に伴う放射線(主に〈線)の測定。この一連の操作を迅速に数百回,数千回と繰り<br />
返し行って統計精度を向上させる。③の化学分離法としては,イオン交換法にもとづく液<br />
体クロマトグラフ法を用いた。当然ながらシングルアトムでは通常の分光学的手法は使え<br />
ない。またシングルアトム分析の確かさも十分とはいえない。このため,周期表で同族の<br />
元素と同一条件下で実験を行い,それら元素との類似性や同族内での系統的変化の度合い<br />
などを調べて,超重元素の性質を明かにするという手法を用いる。なお平成20年度からは