JAEA-Review-2010-065.pdf:15.99MB - 日本原子力研究開発機構

3-07
Development of New Gunma Original Variety of
Chrysanthemum by Ion Beam Irradiation
T. Okada a) , H. Ikeda b) , Y. Oono c) , R. Yoshihara c) , Y. Hase c) and I. Narumi c)
a) Gunma Agricultural Technology Center, b) General Agricultural Office, Gunma West Area
Regional Administration Center, c) Radiation-Applied Biology Division, QuBS, JAEA
‘Konatsunokaze’ is a white chrysanthemum variety, which has a good flower type and plant type. The purpose of this
study is to obtain red and yellow flower color variants that maintain flower type and plant type of ‘Konatsunokaze’. Leaf
sections of ‘Konatsunokaze’ were irradiated with 12 C 5+ (220 MeV) and 12 C 6+ (320 MeV) beams at a range of doses from 0.1
to 5.0 Gy. In the 12 C 5+ beams, the plant regeneration rate was 71.7% at 0.1Gy and decreased to 3.3% at 2 Gy. In the 12 C 6+
beams, the regeneration rate was 23.7% at 0.1 Gy and decreased to 1.9% at 2 Gy. This result shows that irradiation with
12 C 5+ beams is effective for obtaining regenerated plants. Now, the regenerated plants are under investigation for mutation.
1.はじめに
コギク「小夏の風(仮称)」は、群馬県の気象条件
に適応し、8 月上中旬に安定して開花し、花形、草姿に
非常に優れている白色花弁の品種として群馬県農業技
術センターが開発したものである(2008 年 1 月品種登
録出願)。コギクの品種のブランド化を目指す上では、
更に黄色、赤色の花色セットとすることが必要であり、
また、「小夏の風」の優れた花形、草姿を維持して、
花色を変化させた品種の育成が望まれている。本セン
ターは「小夏の風」に続き、交配育種により黄色品種
として「小夏の月(仮称)」を育成したが(2009 年 12
月品種登録出願)、花形、草姿は異なっている。
イオンビームは花色変異誘導に有効で、局所的変異
を誘発しやすいことが知られている 1, 2) 。そこで、イオ
ンビーム照射により「小夏の風」の形を維持したまま、
赤色、黄色の品種の育成を目指すことにした。
今回の試験では「小夏の風」の葉片培養体へのイオ
ンビーム照射を行うことで、エネルギー及び線量が植
物体再生へ及ぼす影響を調査し、変異誘導に適した照
射条件を検討した。
2.材料及び方法
(1)イオンビーム照射材料の調整
供試材料として「小夏の風」の葉片を用いた。葉片
は 5 mm 角程度に切断し、植物ホルモンとして BA
5.0 mg/L、NAA 3.0 mg/L を添加した MS 培地(ショ糖
3%、寒天 0.8%、pH 5.8)を加えた 60 mmφシャーレ上
に置床した。置床後 2~5 日培養した後にイオンビーム
照射を行った。
(2)イオンビーム照射
原子力機構高崎量子応用研究所の AVF サイクロトロ
ンを用いて、調整した材料にイオンビーム照射を行っ
た。照射条件は加速粒子として 12 C 5+ (エネルギー
220 MeV)及び 12 C 6+ (エネルギー 320 MeV)を用い、線
量を 0、0.1、0.5、1.0、2.0、5.0 Gy で照射を行った。
(3)植物体再生及び順化
イオンビームを照射した葉片は、照射 1 日後に(1)
と同じ培地上に継代し、不定芽が確認されたものから
随時、ホルモンフリー培地へ移植し生育を促した。培
養開始から 60 日後に不定芽形成率を調査した。培養を
継続し順調に生育した植物体は順化後、ガラス温室内
で養生した後、ほ場へ定植した。
JAEA-Review 2010-065
Regeneration rate (%)
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3.結果及び考察
「小夏の風」へのイオンビーム照射の結果、 12 C 5+
(220 MeV)での照射の場合、0.5 Gy 以上で植物体再生
率が下がり始め、2 Gy では植物体の再生は 3.3%となり、
12 C 6+ (320 MeV)では、0.1 Gy で再生率が 23.7%と大き
く下がり、2 Gy では 1.7%まで下がった(Fig. 1)。 12 C 5+ 、
12 C 6+ のどちらも吸収線量に依存して植物体再生率は低
下したが、 12 C 6+ では線量の増加が植物体再生に及ぼす
影響が極めて強いことが示唆された。このことから、
「小夏の風」へのイオンビーム照射は 12 C 5+ で行うこと
が適していると考えられた。
今後は、ほ場での慣行栽培で開花させ、開花時期や
花色、花型、草姿等の線量等による変異発生率の影響
を調査し、最適な照射条件を検討したい。
また、今回、無照射区を含めて葉片 1 枚あたりから
再生した植物体が 1~2 個体程度であったため、葉片の
再分化条件を再検討し、品種育成に重要となる母集団
の増加を図りたい。
100
80
60
40
20
0
220 MeV
320 MeV
0 1 2 3 4 5
Dose (Gy)
Fig. 1 Effect of 12 C 5+ (220 MeV) and 12 C 6+ (320 MeV)
irradiation on shoot regeneration.
References
1) T. Okada et al., JAEA Takasaki Ann. Rep. 2008 (2009)
73.
2) M. Iizuka et al., JAEA Takasaki Ann. Rep. 2007 (2008)
65.