JAEA-Review-2010-065.pdf:15.99MB - 日本原子力研究開発機構

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Production of Highly Spin-Polarized Positron Source
A. Kawasuso, M. Maekawa, Y. Fukaya and A. Yabuuchi
Advanced Science Research Center, JAEA
We attempt to produce the 68 Ge- 68 Ga radioisotope as a highly spin-polarized positron source. We irradiated 20 MeV or
25 MeV proton beam for 69 Ga targets. We confirmed the production of 68 Ge- 68 Ga radioisotopes by a nuclear reaction of
69 Ga (p, 2n) 68 Ge. From the magnetic field dependence of two-gamma self-annihilation intensity of positronium in a fused
silica, we determined the spin polarization of emitted positrons to be more than 80 % as theoretically predicted using the
positron helicity.
放射性同位元素から放出される陽電子のスピンは、
弱い相互作用に伴うパリティ非保存のため、進行方向
に偏極している。スピン偏極陽電子は、磁性体の新た
な評価手段として期待される。しかし、十分に高いス
ピン偏極率と長い半減期を持つ陽電子線源が実用化さ
れていなため、この分野の研究は立ち遅れている。そ
こで我々は、高エネルギーイオンビームを用いた核反
応により、高スピン偏極陽電子線源を製造し、その磁
性材料研究における可能性を追求している。
陽電子のスピン偏極率は、主に陽電子のヘリシティ
v/c(v:放出陽電子の速度、c:光速度)で決まる。即
ち、高いスピン偏極率の陽電子を得るためには、放出
陽電子の速度(エネルギー)が大きい陽電子線源を用
いることが重要である。本研究では、陽電子の最大エ
ネルギーが 1.9 MeV であり、理論上のスピン偏極率が
94%である 68 Ge- 68 Ga(半減期:288 日)に着目した。
効率的に 68 Ge- 68 Ga を生成するために、分離精製され
た 69 Ga 安定同位体を標的物質とし、これにプロトンビ
ームを照射することで 68 Ge- 68 Ga を生成した。IRAC コ
ードを用いた計算評価の結果、プロトンエネルギー20
~25 MeV、標的物質の厚さ 0.5~1 mm が最適条件であ
った。そこで実験では、厚さ 0.5 mm と 1 mm の 69 Ga タ
ーゲットを各 1 個作製し、それぞれに 20 MeV と 25 MeV
のプロトン照射を行った。また、照射中に融解した Ga
が外部に漏出しないように、特別の線源カプセルを製
作した(Fig. 1)。Ga はカーボン製の皿に格納され、上
部を厚さ 25 m の Be 板で封じる構造になっている。プ
ロトンビームは Be 板を貫通して照射される。
(a)
(b)
(c) (d)
Fig. 1 Positron source capsule components:
(a) pedestal, (b) carbon tray, (c) Be window and
(d) outer cap with Ti window.
JAEA-Review 2010-065
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照射実験の結果、20 MeV と 25 MeV のプロトン照射
(積算照射電流:2.91 Ah、7.31 Ah)に対して、それ
ぞれ 0.452 MBq と 0.985 MBq の 68 Ge- 68 Ga が生成してい
ることが分かった。これらの放射能は、何れも IRAC
計算から期待されるものの 1/10~1/5 程度であった。こ
の原因としては、ビーム電流や核反応断面積の過大評
価が考えられ、今後検討すべき課題である。
陽電子を溶融石英に打ち込むことでポジトロニウム
(陽電子と電子の水素様結合状態:Ps という記号で表
す)が生成される。通常、S=0 のパラ状態(p-Ps)と
S=1 のオルソ状態(o-Ps)が 1:3 の割合で生成する。
磁場中では、p-Ps と m=0 の o-Ps は新たな二つの混合状
態を形成し、これらの二光子消滅率が変化する。この
変化は、陽電子スピンが偏極していると、磁場反転非
対称性を示す。この性質を使うことで、逆に、陽電子
の偏極率を評価することができる 1) 。Fig. 2 は、上で製
造した 68 Ge- 68 Ga と従来の 22 Na から放出される陽電子を
溶融石英に打ち込んだ際に観測される Ps の二光子消滅
強度の磁場依存性を示している。これより、 68 Ge- 68 Ga
に対して観測される Ps の二光子消滅強度は 22 Na と比較
して大きな磁場反転非対称性を示すことが分かる。理
論解析の結果、 68 Ge- 68 Ga から放出される陽電子のスピ
ン偏極率は 80%以上であることが分かった。
Reference
1) Y. Nagai et al., Nucl. Instrum. Meth. B 171 (2000) 199.
S parameter
0.505
0.500
22-Na
68-Ge
0.495
-1.0 -0.5 0.0
Magnetic field (T)
0.5 1.0
Fig. 2 Two-gamma self-annihilation intensity of Ps in
a fused silica observed using 68 Ge- 68 Ga (red circles)
and 22 Na (blue circles).